(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173098
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】学習モデル作成支援装置及び学習モデル作成支援システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/38 20180101AFI20241205BHJP
G05B 23/02 20060101ALI20241205BHJP
F24F 11/64 20180101ALI20241205BHJP
G01M 99/00 20110101ALI20241205BHJP
G01H 17/00 20060101ALI20241205BHJP
G06N 20/00 20190101ALN20241205BHJP
F24F 110/10 20180101ALN20241205BHJP
F24F 110/12 20180101ALN20241205BHJP
【FI】
F24F11/38
G05B23/02 302T
F24F11/64
G01M99/00 Z
G01H17/00 Z
G06N20/00 160
F24F110:10
F24F110:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091244
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】517359668
【氏名又は名称】コンピュートロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001612
【氏名又は名称】弁理士法人きさらぎ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】古井戸 邦彦
【テーマコード(参考)】
2G024
2G064
3C223
3L260
【Fターム(参考)】
2G024AD01
2G024CA13
2G024FA04
2G024FA06
2G024FA15
2G064AA11
2G064AB02
2G064BA02
2G064BD02
2G064CC03
2G064CC41
2G064CC42
2G064CC43
2G064DD02
3C223AA01
3C223BA03
3C223CC02
3C223DD03
3C223FF02
3C223FF03
3C223FF12
3C223FF13
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3C223FF26
3C223FF35
3C223FF42
3C223FF52
3C223GG01
3L260AB02
3L260BA23
3L260BA54
3L260CA12
3L260CA32
3L260CB03
3L260CB23
3L260DA01
3L260EA07
3L260EA22
(57)【要約】
【課題】空調機の異常を好適に検知可能な学習モデルを作成する学習モデル作成支援装置を提供する。
【解決手段】空調機200の設備に設置された、振動センサを含む複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶装置13から、第1の期間の時系列データを取得する取得部101と、第1の期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量と閾値とから空調機200の異常を検知するための第1の学習モデルを作成する学習モデル作成部102とを備える。学習モデル作成部102は、空調機200の環境変化に基づいて第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルを作成する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空調機の設備に設置された、振動センサを含む複数のセンサのセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶部から、第1の期間の時系列データを取得する取得部と、
前記第1の期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量と閾値とから前記空調機の異常を検知するための第1の学習モデルを作成する学習モデル作成部とを備え、
前記学習モデル作成部は、前記空調機の環境変化に基づいて、前記第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルを作成する、
学習モデル作成支援装置。
【請求項2】
前記取得部は、前記第1の学習モデルの作成後の第2の期間における時系列データである新規評価データのうち、前記第1の学習モデルによる予測結果が前記閾値を超えたデータである閾値超えデータを、前記記憶部から取得し、
前記学習モデル作成部は、前記閾値超えデータを用いて、前記第1の学習モデルを更新する、
請求項1記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項3】
前記学習モデル作成部は、
更新した前記第1の学習モデルに前記第2の期間と等しいか、又は前記第2の期間よりも長い第3の期間における時系列データである過去分評価データに対する予測結果のすべてが、前記閾値以下であるかを判定し、
前記閾値を超える前記予測結果がある場合、前記閾値超えデータを用いて教師なし学習を行うことにより、前記第2の学習モデルを作成し、前記第1の学習モデル及び前記第2の学習モデルのうちの少なくとも前記第2の学習モデルに用いる閾値を決定する、
請求項2記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項4】
前記学習モデル作成部は、さらに、
前記空調機の異常が検知された物理量のデータである異常データを取得した場合、前記閾値超えデータ及び前記異常データに基づいて、前記少なくとも第2の学習モデルに用いる閾値を決定する、
請求項3記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項5】
前記複数のセンサは、前記振動センサと温度センサとを含み、
前記物理量は、前記振動センサのセンサ値から得られた前記空調機の第1設備における加速度と、前記温度センサのセンサ値から得られた前記空調機の第2設備における温度又は圧力とを含む、
請求項1記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項6】
前記学習モデル作成部は、
前記取得部で取得した前記第1の期間の時系列データをフーリエ変換処理し、フーリエ変換処理して得たパワースペクトルからなる時系列データを用いて、前記教師なし学習を行うことにより、前記第1の学習モデル及び前記第2の学習モデルを作成する、
請求項1記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項7】
前記学習モデル作成部は、外気温の変化に基づいて、夏季用の前記第1の学習モデル、及び、冬季用の前記第2の学習モデルを作成する、
請求項1記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項8】
前記空調機の環境変化は、前記第1の期間以降において観測されていない外気温度が観測されたことである、
請求項1記載の学習モデル作成支援装置。
【請求項9】
振動センサを含む複数のセンサであって、空調機の設備に設置され、前記空調機の設備における所定の物理量を検出し、得られた所定の物理量をセンサ値として出力する複数のセンサと、
前記複数のセンサから出力されたセンサ値から得た物理量を取得する受信部と、
前記受信部で取得された前記センサ値から得た物理量と、閾値と、作成された学習モデルとから前記空調機の異常を検知し、前記異常に関する情報を出力する監視部と、
前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶部から、第1の期間の時系列データを取得する取得部と、
前記取得部で取得された前記第1の期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量と閾値とから前記空調機の異常を検知する第1の学習モデルを作成する学習モデル作成部と、
を備え、
前記学習モデル作成部は、前記空調機の環境変化に基づいて、前記第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルを作成する、
学習モデル作成支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、学習モデル作成支援装置及び学習モデル作成支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、製造現場においては、機械学習を応用して装置の故障予知等を行う技術が開発されている。例えば、下記特許文献1には、学習モデルの生成を支援する情報を提供することが可能な学習モデル生成支援装置等が開示されている。この学習モデル生成支援装置によれば、学習モデルの生成に用いる特徴を効率よく適切に特定することができるので、学習モデルの性能を確保しつつ効率よく学習モデルを生成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、空調機の異常を好適に検知可能な学習モデルを作成する学習モデル作成支援装置等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一実施形態に係る学習モデル作成支援装置は、空調機の設備に設置された、振動センサを含む複数のセンサのセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶部から、第1の期間の時系列データを取得する取得部と、前記第1の期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量と閾値とから前記空調機の異常を検知するための第1の学習モデルを作成する学習モデル作成部とを備え、前記学習モデル作成部は、前記空調機の環境変化に基づいて、前記第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルを作成する。
【0006】
本発明の一実施形態において、前記取得部は、前記第1の学習モデルの作成後の第1の期間における時系列データである新規評価データのうち、前記第1の学習モデルによる予測結果が前記閾値を超えたデータである閾値超えデータを、前記記憶部から取得し、前記学習モデル作成部は、前記閾値超えデータを用いて、前記第1の学習モデルを更新するようにしても良い。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記学習モデル作成部は、更新した前記第1の学習モデルに前記第2の期間と等しいか、又は前記第2の期間よりも長い第3の期間における時系列データである過去分評価データに対する予測結果のすべてが、前記閾値以下であるかを判定し、前記閾値を超える前記予測結果がある場合、前記閾値超えデータを用いて教師なし学習を行うことにより、前記第2の学習モデルを作成し、前記第1の学習モデル及び前記第2の学習モデルのうちの少なくとも前記第2の学習モデルに用いる閾値を決定するようにしても良い。
【0008】
本発明の一実施形態において、前記学習モデル作成部は、さらに、前記空調機の異常が検知された物理量のデータである異常データを取得した場合、前記閾値超えデータ及び前記異常データに基づいて、前記少なくとも第2の学習モデルに用いる閾値を決定するようにしても良い。
【0009】
本発明の他の実施形態において、前記複数のセンサは、前記振動センサと温度センサとを含み、前記物理量は、前記振動センサのセンサ値から得られた前記空調機の第1設備における加速度と、前記温度センサのセンサ値から得られた前記空調機の第2設備における温度又は圧力とを含むようにしても良い。
【0010】
本発明の他の実施形態において、前記学習モデル作成部は、前記取得部で取得した前記第1の期間の時系列データをフーリエ変換処理し、フーリエ変換処理して得たパワースペクトルからなる時系列データを用いて、前記教師なし学習を行うことにより、前記第1の学習モデル及び前記第2の学習モデルを作成するようにしても良い。
【0011】
本発明の他の実施形態において、学習モデル作成部は、外気温の変化に基づいて、夏季用の前記第1の学習モデル、及び、冬季用の前記第2の学習モデルを作成するようにしても良い。
【0012】
本発明の他の実施形態において、前記空調機の環境変化は、前記第1の期間以降において観測されていない外気温度が観測されたことであっても良い。
【0013】
本発明の一実施形態に係る学習モデル作成支援システムは、振動センサを含む複数のセンサであって、空調機の設備に設置され、前記空調機の設備における所定の物理量を検出し、得られた所定の物理量をセンサ値として出力する複数のセンサと、前記複数のセンサから出力されたセンサ値から得た物理量を取得する受信部と、前記受信部で取得された前記センサ値から得た物理量と、閾値と、作成された学習モデルとから前記空調機の異常を検知し、前記異常に関する情報を出力する監視部と、前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶部から、第1の期間の時系列データを取得する取得部と、前記取得部で取得された前記第1の期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量と閾値とから前記空調機の異常を検知する第1の学習モデルを作成する学習モデル作成部とを備える。前記学習モデル作成部は、前記空調機の環境変化に基づいて、前記第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルを作成する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、空調機の異常を好適に検知可能な学習モデルを作成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態に係る学習モデル作成支援システムを説明するための模式図である。
【
図2】実施形態に係る空調機の構成と空調機に設置されるセンサの設置場所を説明するための模式図である。
【
図3】実施形態に係る学習モデルを教師なし学習させる際に用いる入力データの一例を示すデータ図である。
【
図4】冬季に作成された学習モデルを用いて冬季に異常検知試験を行った場合における異常度及び時間の関係の一例を示す図である。
【
図5】冬季に作成された学習モデルを用いて夏季に異常検知試験を行った場合における異常度及び時間の関係の一例を示す図である。
【
図6】実施形態に係る第1の学習モデルを用いた検知処理を説明するための模式図である。
【
図7】実施形態に係る学習モデル作成支援装置が第1の学習モデルを作成する場合の動作例を示すフローチャートである。
【
図8】実施形態に係る学習モデル作成支援装置が第1の学習モデルを更新する場合の動作例を示すフローチャートである。
【
図9】実施形態に係る第1の学習モデルの更新を説明するための模式図である。
【
図10】実施形態に係る学習モデル作成支援装置が第1の学習モデルを更新又は新たに第2の学習モデル生成する場合の動作例を示すフローチャートである。
【
図11A】実施形態に係る第1の学習モデルと異なる第2の学習モデルの作成を説明するための模式図であり、
【
図11B】実施形態に係る第1の学習モデルの更新を完了するか第2の学習モデルの作成を行うかを説明するための模式図である。
【
図12】実施形態に係る第2の学習モデルの作成後の検知処理を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付の図面を参照して、本発明の実施形態に係る学習モデル作成支援システム等を詳細に説明する。ただし、以下の実施形態は、いずれも包括的又は具体的な例を示すものである。以下の実施形態で示される数値、形状、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態、ステップ、ステップの順序等は、一例であり、各請求項に係る発明を限定する主旨ではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
[実施形態]
[構成]
図1は、実施形態に係る学習モデル作成支援システム100を説明するための模式図である。
図2は、実施形態に係る空調機200の構成と空調機200に設置されるセンサ11の設置場所を説明するための模式図である。本実施形態では、空調機200の異常を検知するための学習モデルを期間ごとに複数作成することを支援する学習モデル作成支援システム100を例に挙げて説明する。
【0018】
図1に示すように、実施形態に係る学習モデル作成支援システム100は、空調機200の異常を検知するための学習モデルを作成等する学習モデル作成支援装置10と、空調機200の設備に設置された複数のセンサ11と、これらのセンサ11から出力されたセンサ値を取得するIoTゲートウェイ12と、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶部としての記憶装置13と、IoTゲートウェイ12を介して取得された物理量等に基づいて空調機200の異常を検知し、異常に関する情報を出力する監視装置14とを備える。なお、学習モデル作成支援システム100は、IoTゲートウェイ12、記憶装置13及び監視装置14を備えなくても良い。
【0019】
[空調機200]
空調機200は、対象とする室内もしくは特定の空間における、空気の温度、湿度、清浄度を調整するための機器である。空調機200は、例えばエアコン(エアーコンディショナー)であるが、これに限らない。空調機200は、
図2に示すように、空調機200の設備として、例えば、対象とする室内の外もしくは特定の空間の外に設置される室外機21と、対象とする室内もしくは特定の空間内に設置される室内機22とで構成される。
【0020】
室外機21は、インバータ211と、コンプレッサ212と、ファンモータ213と、熱交換器214と、膨張弁215とを有する。室内機22は、膨張弁221と、熱交換器222と、ファンモータ223とを有する。インバータ211は、コンプレッサ212を制御する。インバータ211は、例えばコンプレッサ212に使用されるモータの回転数を自在に変化させる等の制御を行う。コンプレッサ212は、室外機21側で使用されている冷媒の温度を制御する。コンプレッサ212は、例えば、冷媒を圧縮して冷媒の温度を高めることで、冷媒の温度を冷媒が熱を放出しやすい温度に調節する。ファンモータ213,223は、ファンを回転駆動する。ファンモータ213,223は、ファンを回すことにより、風力で熱交換器214,222による熱移動を行う。熱交換器214,222は、熱が高温から低温へ移る性質を利用して、温度の高い流体から温度の低い流体へ熱を移動させる。熱交換器214,222は、効率的に熱を移動させることで、加熱や冷却を行う。膨張弁215,221は、冷媒の温度と圧力とを下げるための部品である。膨張弁215,221は、例えば、冷媒を狭い隙間に通すことで、入口側では高温高圧だった冷媒を、出口側では低温低圧の冷媒に変化させる。
【0021】
[センサ11]
複数のセンサ11は、例えば振動センサであり、温度センサを含んでいても良い。また、複数のセンサ11は、圧力センサをさらに含んでいても良い。振動センサは、例えば、互いに直交するX,Y,Z軸方向のそれぞれの加速度をセンサ値として検出するIoT(Internet of Things)デバイスであり、所定の無線又は有線での通信方式により、検出したセンサ値を出力する。温度センサは、温度をセンサ値として検出するIoTデバイスであり、所定の無線又は有線での通信方式により、検出したセンサ値を送信出力する。これらの複数のセンサ11は、例えば0.1Hz~50Hzの所定の周波数でサンプリングすることで、センサ値を検出するようにしても良い。
【0022】
例えば
図2に示す例では、振動センサ112,114,116,118,120と、温度センサ111,113,115,117,119,121とが、空調機200の設備の主要部位に設置されている。より具体的には、コンプレッサ212には、温度センサ111と振動センサ112とが設置され、膨張弁215には、温度センサ113と振動センサ114とが設置され、ファンモータ213には、温度センサ115と振動センサ116とが設置されている。また、膨張弁221には、振動センサ118が設置され、ファンモータ223には、温度センサ119と振動センサ120とが設置されている。また、室外機21には、さらに、外気温を測定するための温度センサ117が設置され、室内機22には、さらに、対象とする室内もしくは特定の空間の気温を測定するための温度センサ121が設置されている。なお、振動センサ112等や温度センサ111等の上述した設置場所は一例であり、少なくとも、コンプレッサ212、膨張弁215,221等の複数の部位のそれぞれに振動センサが設置されていれば良い。
【0023】
[IoTゲートウェイ12]
IoTゲートウェイ12は、受信部又は中継器として機能し、複数のセンサ11からそれぞれのセンサ値を受信する。IoTゲートウェイ12は、受信したそれぞれのセンサ値を、時系列データとして記憶装置13に送信出力する。なお、IoTゲートウェイ12は、学習モデル作成支援システム100の外部に設けられても良い。
【0024】
[記憶装置13]
記憶装置13は、例えばクラウド上のストレージサーバであるが、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)であっても良い。
【0025】
記憶装置13は、IoTゲートウェイ12から受信した時系列データを記憶する。この時系列データは、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量の時系列データである。この物理量は、振動センサのセンサ値から得られた空調機200の設備における加速度であっても良く、温度センサのセンサ値から得られた空調機200の設備における温度又は圧力を含んでいても良い。なお、記憶装置13は、学習モデル作成支援システム100の外部に設けられても良い。
【0026】
[学習モデル作成支援装置10]
学習モデル作成支援装置10は、空調機200の異常を検知するための学習モデルを、空調機200の環境変化に基づく所定期間ごとに作成するための装置である。本実施形態では、学習モデル作成支援装置10は、
図1に示すように、取得部101と、学習モデル作成部102と、表示部103とを備える。
【0027】
取得部101は、例えば通信インターフェースであり、ネットワークに接続可能である。取得部101は、ネットワークを介して、記憶装置13から、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量の時系列データを取得する。取得部101は、時系列データとして、物理量の時系列データをフーリエ変換処理(例えばFFT(Fast Fourier Transform)処理)して得たパワースペクトルを取得しても良い。また、取得部101は、フーリエ変換処理して得たパワースペクトルからなる時系列データを、時系列データとして取得しても良い。なお、後述する学習モデルの更新処理では、取得部101は、後述する閾値超えデータを取得したり、学習モデル作成部102が作成した学習モデルを取得したり、取得した学習モデルの作成後の所定期間における時系列データ又は当該所定期間における時系列データの一部を取得したりしても良い。
【0028】
学習モデル作成部102は、例えばメモリ及びプロセッサ(マイクロプロセッサ)を含むコンピュータを備え、メモリに格納された所定のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種機能を実現する。学習モデル作成部102は、空調機200の異常を検知するための学習モデルを作成又は更新する。例えば、学習モデル作成部102は、所定期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量から学習モデルを作成することができる。また、例えば、学習モデル作成部102は、学習モデルの作成後の所定期間における時系列データのうち、当該学習モデルによる予測結果が閾値を超えたデータである閾値超えデータを用いて、当該学習モデルを更新したり、当該学習モデルと異なる学習モデルを作成したりすることができる。
【0029】
また、学習モデル作成部102は、空調機200の環境変化に基づく所定期間ごとに、学習モデルを作成する。この所定期間は、例えば、外気温の推移を要素とする夏季の期間、及び、冬季の期間を含む。つまり、学習モデル作成部102は、例えば、外気温の変化に基づいて、夏季用の学習モデル、及び、冬季用の学習モデルを作成する。なお、学習モデル作成部102は、夏季及び冬季以外の季節の学習モデルを作成しても良いし、外気温の変化に基づいて、夏季などの一つの季節において複数の学習モデルを作成しても良い。
【0030】
なお、学習モデル作成部102は、作成又は更新した学習モデルを、不図示のメモリに保存しても良いし、記憶装置13に保存しても良い。また、後述する学習モデルの更新処理では、学習モデル作成部102は、作成又は更新した学習モデルに予測させたり、予測させることにより得た予測結果が閾値を超えたか否かを判定したり、判定結果を生成したりしても良い。後述する学習モデルの更新処理の詳細は、後述するためここでの説明は省略する。
【0031】
表示部103は、例えばディスプレイ又はタッチパネルであり、取得した時系列データや作成した学習モデルについての情報を表示する。
【0032】
[学習モデル]
図3は、実施形態に係る入力データの一例を示すデータ図である。この入力データは、初期学習モデルを教師なし学習させる際に用いる初期学習データ、空調機200の運転状態監視時に入力する新規評価データ、学習モデルの更新又は追加時に教師なし学習させる際に用いる閾値超えデータ、及び、更新又は追加された学習モデルの評価のための過去分評価データのいずれかのデータとして使用することができる。
【0033】
学習モデルは、例えば畳み込みオートエンコーダ(Convolutional Autoencoder:CAE)で構成することができる。畳み込みオートエンコーダは、入力層及び出力層の間に畳み込み層と、プーリング層とを加えたニューラルネットワークモデルである。畳み込みオートエンコーダでは、入力データをエンコードした後にデコートして得た出力データを入力データに一致させるように学習させることで学習データとして入力データのみを用いた教師なし学習を行うことができる。本実施形態では、この学習モデルは、7層の畳み込み層と、7層の逆畳み込み層とを有するとして説明するが、これに限らない。畳み込み層及び逆畳み込み層の層数、フィルタ数等を含め適宜決定されれば良い。
【0034】
実施形態に係る初期学習モデルは、空調機200が正常な運転状態時に取得された第1の期間の時系列データ(正常な運転状態の時系列データ)を用いて作成される。第1の期間は、予め取得された第1の期間を超える期間の時系列データから正常であると観測された所定長さの期間に設定されるようにしても良い。教師なし学習に用いる正常な運転状態の時系列データは、例えば、
図3に示すように、振動センサのセンサ値から得た加速度(物理量)の時系列データをフーリエ変換処理して得たパワースペクトル(スペクトル強度)である。このような正常な運転状態の時系列データにより学習された学習モデルでは、空調機200が異常な運転状態時に取得された異常な運転状態の時系列データに対しては、入出力の差(異常度と呼ぶこともある。)が大きくなる。異常度に対して適切な閾値を設けることで、入力データとしての時系列データに異常があるかどうかすなわち空調機200の異常を検知できる。なお、入出力の差に対して移動平均の処理を行い、入出力の差の値のブレを吸収させても良い。また、これらのような入出力の差だけでなく、入出力の差の二乗平均誤差を求めて得たものを異常度と呼んで良いし、その値をスコア(異常度スコア)と呼んでも良い。これにより閾値との比較による異常検知の精度を向上させることができる。また、適切な閾値は、所定期間における正常な運転状態の時系列データから適宜決定することができる。異常度に対して移動平均の処理を行うことで、時系列データとなる異常度の値のブレを吸収することができるので、閾値を決定しやすくなる。また、閾値は、空調機200の正常運転中に取得された時系列データに対する異常度スコアのベースラインと、過去に空調機200の異常が検知された時の異常度スコアとを考慮して、異常度スコアから空調機200の異常を判定可能な値かつ可能な限り低い値を閾値に決定しても良い。
【0035】
なお、教師なし学習に用いる正常な運転状態の時系列データは、振動センサのセンサ値から得た加速度(物理量)の時系列データである場合に限らない。振動センサのセンサ値から得た加速度(物理量)の時系列データと、温度センサのセンサ値から得た温度(物理量)の時系列データとを用いても良い。また、加速度(物理量)の時系列データと、温度センサのセンサ値から得た冷媒の温度を圧力に変換した変換値(物理量)の時系列データとを用いても良い。これらの時系列データを用いることで、学習モデルを用いて空調機200の異常を検知する精度を向上させることができる。
【0036】
加速度(物理量)の時系列データとしては、次のようなデータを生成して使用しても良い。取得部101において、振動センサのセンサ値を、例えば50Hz等の所定の周波数でサンプリングし、例えば324サンプルを1つのデータ周期として、X,Y,Z軸の各軸の加速度データを生成する。そして、この各軸の加速度データに、高速フーリエ変換処理(FFT処理)を行うことで、この各軸の加速度データをパワースペクトルからなるFFTデータに変換し、パワースペクトルからなるFFTデータを加速度の時系列データとしても良い。温度センサのセンサ値については、加速度センサよりは長い周期でサンプリングを行い、同様の手法にて時系列データを生成しても良い。
【0037】
また、実施形態に係る学習モデルは、新規評価データのうち異常度スコア(以下、「予測結果」と呼ぶこともある。)が閾値を超えた範囲の閾値超えデータを学習データに追加することで、環境変化に応じて適宜更新、又は追加される。閾値超えデータの選択には、外気温変化の状況等の環境変化等、裏付けとなる複数の要因を加味するようにしても良い。外気温変化は、運転状況に変化をもたらすので、学習モデルは、外気温の温度変化に応じて期間ごとに作成される。例えば、学習モデルは、学習モデルを作成するために用いた時系列データが含まれる期間以降において観測されていない外気温度が観測された場合、これを裏付けとして新たに作成されるようにしても良い。さらに、例えば空調機200が空気の温度調節を行うエアコン機能を有する場合、夏季と冬季ではエアコン機能の動きは反対であり異なる。このため、夏季に作成した学習モデルを用いて冬季に異常検知を行っても、異常検知の精度が向上しない。そこで、本実施形態では、少なくとも夏季の期間と冬季の期間とにおいて学習モデルを作成する。
【0038】
図4は、冬季に作成された学習モデルを用いて冬季に異常検知試験を行った場合における異常度及び時間の関係の一例を示す図である。
図5は、冬季に作成された学習モデルを用いて夏季に異常検知試験を行った場合における異常度及び時間の関係の一例を示す図である。
図4及び
図5において縦軸は異常度であり、横軸は時間である。この異常度は、入力データと、学習モデルによる入力データに対する予測値(出力データ)との差すなわち入出力の差を二乗平均して得たものとしている。この異常度の値(異常度スコア)は、大きいほど、入出力の差が大きいことを示し、入力データを取得した時の空調機200の運転状態が定常でなく異常であることを表す指標となる。また、エアコンにおける異常の大半が、フィルタの目詰まりによる風量低下が原因であることから、
図4及び
図5では、空調機200の吸入口を塞いで目詰まりを起こした状態で異常検知試験を行った。なお、閾値を400(異常度スコア)とすることで、入力データを取得した時の空調機200の運転状態が定常であるか異常であるかを区別できるようにしている。そして、
図4に示す領域a及び
図5に示す領域b(それぞれ疑似的に風量低下の異常を発生させた領域)において、空調機200の異常が検知されている。なお、異常検知試験で用いた物理量は、室外機21のファンモータ213に設置された振動センサ116のセンサ値(振動データ)である。
【0039】
夏季と冬季とで外気温の平均(温点パターン)が異なる。
図4及び
図5を比較すると、例えば
図4に示すように、冬季では、空調機200の運転状態が定常であるときには、異常度の推移が閾値以下となっていることがわかる。一方で、例えば
図5に示すように、夏季では、空調機200の運転状態が定常であるときでも、異常度の推移が閾値を大きく超えていることがわかる。つまり、冬季の学習モデルを夏季の異常検知には使えないことがわかる。同様に、夏季の学習モデルを冬季の異常検知に使えないことがわかる。
【0040】
[監視装置14]
監視装置14は、複数のセンサ11から出力されたセンサ値から得た物理量と、閾値と、作成された学習モデルとから空調機200の異常を検知し、異常に関する情報を出力する。
【0041】
本実施形態では、監視装置14は、
図1に示すように、受信部141と、監視部142と、表示部143とを備える。
【0042】
受信部141は、例えば通信インターフェースであり、ネットワークに接続可能である。受信部141は、ネットワークを介して、記憶装置13から、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量(「観測データ」と呼ぶ)を取得する。なお、受信部141は、この物理量(観測データ)を、IoTゲートウェイ12から直接取得しても良い。
【0043】
監視部142は、例えばメモリ及びプロセッサ(マイクロプロセッサ)を含むコンピュータを備え、メモリに格納された所定のプログラムをプロセッサが実行することにより、各種機能を実現する。監視部142は、受信部141により取得した物理量(観測データ)と、予め設定された閾値と、学習モデル作成支援装置10により作成された複数の学習モデルとから空調機200の異常を検知する。
【0044】
図6は、実施形態に係る第1の学習モデル1を用いた検知処理を説明するための模式図である。
【0045】
例えば、監視部142は、例えば
図6に示すように、第1の学習モデル1に、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量(観測データ)から予測値を予測させ、予測値と入力データとの差から予測結果(異常度スコア)を算出している。そして、監視部142は、算出した予測結果(異常度スコア)が閾値を超えたか否かを判定し、判定した判定結果を生成するとともに、空調機200の異常を検知している。なお、監視部142は、算出した予測結果(異常度スコア)や生成した判定結果を、不図示のメモリに保存しても良いし、記憶装置13に保存しても良い。
【0046】
また、監視部142は、空調機200の異常を検知した場合、検知した異常に関する情報を出力する。検知した異常に関する情報は、例えば、異常を検知した時刻と異常を検知したセンサ11を特定する情報であっても良いし、異常を検知した時刻と異常を検知した物理量(観測データ)を特定する情報であっても良い。なお、監視部142は、受信部141により取得した物理量(観測データ)をフーリエ変換処理して得たパワースペクトルを、受信部141により取得した物理量(観測データ)として用いても良い。
【0047】
表示部143は、例えばディスプレイ又はタッチパネルであり、取得した物理量(観測データ)を時系列に表示したり、予め設定された閾値を表示したり、異常が検知された時刻及び物理量を報知するための情報を表示する。
【0048】
[動作]
次に、このように構成された学習モデル作成支援装置10の動作について説明する。
【0049】
図7は、実施形態に係る学習モデル作成支援装置10が第1の学習モデル1を作成する場合の動作例を示すフローチャートである。
【0050】
図7に示すように、学習モデル作成支援装置10は、第1の期間の時系列データを初期学習データとして取得する(S11)。第1の期間は、空調機200が正常運転中である期間に含まれる。より具体的には、取得部101は、記憶装置13から、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量の第1の期間の時系列データを取得する。例えば、取得部101は、記憶装置13から、空調機200の設備に設置された振動センサのX,Y,Z軸のセンサ値から得た加速度の第1の期間の時系列データを取得する。また、取得部101は、取得した第1の期間の時系列データをフーリエ変換処理し、フーリエ変換処理して得たパワースペクトルからなる時系列データを生成する。
【0051】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS11で取得した第1の期間の時系列データである初期学習データを用いて教師なし学習を行うことにより、第1の学習モデル1を作成する(S12)。本実施形態では、学習モデル作成部102は、パワースペクトルからなる第1の期間の時系列データのみを初期学習データとして用いて教師なし学習を行うことで、第1の学習モデル1を作成する。この第1の学習モデル1は、例えば、チャネル数が3の入力層と、フィルタサイズが3である7層の畳み込み層と、フィルタサイズが3である7層の逆畳み込み層と、チャネル数が3である出力層からなり、7層の畳み込み層及び7層の逆畳み込み層の各層のフィルタ数が64,64,128,128,256,256,256である畳み込みオートエンコーダで構成される。また、第1の期間とは、初期学習データの収集期間であり、例えば3か月程度であるが、それに限らず、空調機200が正常な運転状態を維持している期間であれば、数日~数か月程度であっても良い。
【0052】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS12で作成した第1の学習モデル1に対する閾値を決定する(S13)。なお、取得部101で取得した所定期間の時系列データを入力データ(観測データ)として第1の学習モデルから予測値を予測させ、予測値と入力データの差(例えば、平均二乗誤差)から得られる異常度スコアに対して移動平均の処理を行った時系列データに基づき、閾値を決定しても良い。例えば、異常度スコアに対して移動平均処理を行った時系列データは、空調機200が正常な運転状態を維持している期間のデータとしての定常データであり、この定常データの数倍を閾値として決定できる。また、実際に発生した異常データがある場合は、正常・異常判定ができるように決定することもできる。このような手順で閾値を決定するルールを定めることで、学習モデル作成部102に閾値を決定させることもできる。
【0053】
図8は、実施形態に係る学習モデル作成支援装置10が第1の学習モデル1を更新する場合の動作例を示すフローチャートである。
図9は、実施形態に係る第1の学習モデル1の更新を説明するための模式図である。
【0054】
図8に示すように、学習モデル作成支援装置10は、まず、学習モデル作成部102が作成した例えば第1の学習モデル1を取得する(S21)。なお、監視装置14は、ステップS21を行う前において、例えば
図6を用いて説明したように、第1の学習モデル1に、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量(観測データ)から予測値を予測させ、予測値と入力データとの差から得られる予測結果(異常度スコア)が閾値を超えたか否かを判定している。そして、監視装置14は、判定した結果を示す判定結果を生成している。
【0055】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS21で取得した第1の学習モデル1の学習後の第2の期間における時系列データである新規評価データのうち、閾値超えデータを取得する(S22)。第2の期間は、新規評価データの収集期間である。閾値超えデータは、新規評価データのうち、第1の学習モデル1による予測結果が閾値を超えた時系列データである。本実施形態では、取得部101は、例えば判定結果を参照し、記憶装置13から、当該新規評価データのうちの閾値超えデータを取得する。また、取得部101は、例えば、取得した閾値超えデータをフーリエ変換処理し、フーリエ変換処理して得たパワースペクトルからなる閾値超えデータを生成する。
【0056】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS22で取得した閾値超えデータを用いて、ステップS21で取得した第1の学習モデル1を更新する(S23)。例えば
図9に示すように、第1の学習モデル1は、第1の学習モデル1の学習後の新規評価データの収集期間における時系列データである新規評価データのうち、閾値超えデータを用いて、第1の学習モデル1を更新する。より具体的には、第1の学習モデル1の作成に用いた初期学習データと閾値超えデータとを、学習データとして用いて、第1の学習モデル1に教師なし学習を行うことで、第1の学習モデル1を更新すれば良い。また、直前に評価した新規評価データと閾値超えデータとを、学習データとして用いて、第1の学習モデル1を更新しても良い。なお、外気温等の情報や操作者による判断に基づいて、閾値超えデータが、空調機200の正常運転状態時に取得できるデータであり、第1の学習モデル1の更新に用いることができることを決定した上で、第1の閾値超えデータを第1の学習モデル1の更新に用いても良い。
【0057】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS23で更新した第1の学習モデルに対する閾値を決定する(S23A)。ここで、学習モデル作成支援装置10は、ステップS23で更新した第1の学習モデル(
図9の学習モデル1(更新))に対する閾値を、例えば、ステップS13において説明した閾値決定方法、すなわち予測値と入力データの差から得られる異常度スコアに対して移動平均の処理を行って得た時系列データに基づき閾値を決定する方法により決定しても良い。
【0058】
図10は、実施形態に係る学習モデル作成支援装置10が第1の学習モデル1を更新又は新たに第2の学習モデル2を生成する場合の動作例を示すフローチャートである。
図10において、
図8と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
図11Aは、実施形態に係る第1の学習モデル1と異なる第2の学習モデル2の作成を説明するための模式図である。
図11Bは、実施形態に係る第1の学習モデル1の更新を完了するか第2の学習モデル2の作成を行うかを説明するための模式図である。
図12は、実施形態に係る第2の学習モデル2の作成後の検知処理を説明するための模式図である。
【0059】
図10に示すように、ステップS24では、学習モデル作成支援装置10は、第3の期間における時系列データである過去分評価データを取得する。ここで、取得部101は、例えば
図11Aに示すように、第1の学習モデル1の学習後の過去分評価データの収集期間における時系列データである過去分評価データを取得する。なお、第3の期間は、過去分評価データの収集期間であり、
図9に示す新規評価データの収集期間(第2の期間)より長いが、これに限らない。第3の期間は、第2の期間と同じであっても良い。
【0060】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS23で更新した第1の学習モデル1に、ステップS24で取得した過去分評価データに対する予測値を予測させる(S25)。より具体的には、例えば
図11Bに示すように、学習モデル作成部102は、更新した第1の学習モデル1に、過去分評価データに対する予測値を予測させるとともに、予測値と入力データとの差から予測結果(異常度スコア)を算出する。
【0061】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS25で取得した予測結果(異常度スコア)のすべてが閾値以下か否かを判定する(S26)。より具体的には、学習モデル作成部102は、例えば、更新した第1の学習モデル1による過去分評価データに対する予測結果(異常度スコア)のすべてが、閾値以下か否かを判定する。
【0062】
ステップS26において、予測結果(異常度スコア)のすべてが閾値以下の場合(S26でYes)、学習モデル作成支援装置10は、ステップS23で更新した第1の学習モデル1を保存する(S27)。
【0063】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS27で保存した第1の学習モデルに対する閾値を決定する(S27A)。なお、この閾値は、ステップS23Aで説明したように、ステップS13において説明した閾値決定方法により決定しても良い。
【0064】
一方、ステップS26において、閾値を超える予測結果(異常度スコア)がある場合(S26でNo)、学習モデル作成支援装置10は、ステップS22で取得した閾値超えデータを用いて教師なし学習を行うことにより、新たな第2の学習モデル2を作成し、保存する(S28)。より具体的には、学習モデル作成部102は、例えば、更新した第1の学習モデル1により予測された過去分評価データに対する予測結果のうちで、閾値を超える予測結果があるとする。この場合、学習モデル作成部102は、例えば
図11Aに示すように、少なくとも閾値超えデータを用いて、第1の学習モデル1とは異なる第2の学習モデル2を作成して、保存する。
【0065】
次に、学習モデル作成支援装置10は、ステップS21で取得した第1の学習モデル1と、ステップS28で作成して保存した第2の学習モデル2とに共通な閾値を新たに決定する(S29)。この場合、学習モデル作成部102は、操作者又は予め設定したルールにより、例えば
図11Aに示すように、第1の学習モデル1と第2の学習モデル2とで共通に用いる閾値を決定して、保存する。なお、第1の学習モデル1と第2の学習モデル2とで共通に用いる閾値を決定する場合に限らず、第1の学習モデル1と第2の学習モデル2のそれぞれで閾値を決定しても良い。この場合、学習モデル作成部102は、操作者又は予め設定したルールにより、ステップS28で作成して保存した第2の学習モデル2に対する閾値を決定すれば良い。
【0066】
このように第2の学習モデル2を作成し、第1の学習モデル1と第2の学習モデル2から新たな共通の閾値を決定した後、監視装置14は、例えば
図12に示すように、第1の学習モデル1及び第2の学習モデル2に、複数のセンサ11のセンサ値から得た物理量(観測データ)から予測値を予測させる。そして、監視装置14は、予測値から得た予測結果(異常度スコア)が、新たに決定した閾値を超えたか否かを判定し、判定した結果を示す判定結果を生成するとともに、空調機200の異常を検知する。第1の学習モデル1と第2の学習モデル2から予測値を予測させる方法として、観測データからそれぞれの学習モデルに対する予測値(異常度スコア)を出力させ、小さいほうの値を最終的な予測値(異常度スコア)として採用する方法がある。3つ以上の学習モデルがある場合は最も小さい予測値(異常度スコア)を採用すれば良い。
【0067】
なお、第1の学習モデル1と第2の学習モデル2のそれぞれに閾値が決定される場合、すなわち学習モデルごとに閾値が決定される場合には、監視装置14は、学習モデルごとに観測データから予測値(異常度スコア)を予測させ、閾値を超えたか否かを判定すれば良い。そして、監視装置14は、判定した結果を示す判定結果に基づき、空調機200の異常を検知すれば良い。
【0068】
なお、本実施の形態では、初期学習モデルである第1の学習モデル1が作成されることを例に挙げて、その後において第1の学習モデル1が更新される場合や第1の学習モデル1と異なる第2の学習モデル2が作成される場合について説明したが、これに限らない。第2の学習モデル2が作成されることを例に挙げて、その後において第2の学習モデル2が更新される場合や第2の学習モデル2と異なる第3の学習モデル3が作成される場合も同様であるため、説明を省略する。
【0069】
[効果]
このように、本実施形態によれば、空調機200の正常運転中において複数のセンサ11により取得した時系列データを用いて教師なし学習方式で、空調機200の異常検知可能な学習モデルを作成し、観測データに応じて作成した学習モデルを更新したり、新たに学習モデルを作成したりする。
このように複数のセンサ11により取得した時系列データのみを用いて教師なし学習により学習モデルを作成できるので、学習モデルを作成する工数を低減させることができる。また、複数のセンサ11により取得した時系列データのみを用いて学習モデルを更新したり新たに作成したりすることで、複数の学習モデルのうち、外気温の推移を要素とする期間ごとに応じて異常検知に好適な学習モデルを用いることができる。換言すると、最初に作成した初期学習モデルに順次観測データから予測値を予測させ、空調機200が正常運転しているが異常と検知される閾値超えデータを学習データに追加しながら更新したり新たに学習モデルを作成したりする。これにより、外気温の推移を要素とする期間ごとに応じて異常検知に好適な学習モデルに更新又は好適な学習モデルを作成することができる。1つの学習モデルで外気温の推移を要素とするすべての期間において、精度よく異常検知することは難しい。しかし、本実施形態のように、複数の学習モデルを用いて異常検知を行うことで、すべての期間において精度よく異常検知できるようになる。以上のようして、本実施形態に係る学習モデル作成支援装置10は、空調機200の異常を好適に検知可能な学習モデルを作成することができる。
【0070】
なお、上記実施形態では、学習モデルを畳み込みオートエンコーダで構成する例を示した。しかし、例えば、学習モデルを、入力データのみで教師なし学習を行えるIsolation Forestなど他の方法で構成しても良い。
【0071】
また、上記実施形態では、少なくとも夏季及び冬季等の所定期間ごとに学習モデルを作成する例について説明したが、これに限らない。外気温の変化の推移に応じて、3以上の学習モデルを作成しても良い。
【0072】
また、上記実施形態では、監視装置14を利用して、空調機200の異常検知を行う例について説明したが、これに限らない。監視装置14が有する受信部141及び監視部142の機能が、IoTゲートウェイ12に搭載されても良い。この場合、IoTゲートウェイ12が、空調機200の異常検知を行うことができる。
【0073】
また、上記実施形態では、学習モデルの更新処理について説明したが、外気温の変化や環境変化等による情報に基づいて、学習モデルの更新処理が行われることを決定しても良い。外気温の変化は、空調機200の運転状態に変化をもたらすため、学習モデルを更新するタイミングの裏付けとなるからである。
【0074】
以上、本発明の実施形態を説明したが、本実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0075】
例えば、上記実施形態に係る各構成要素は、専用のハードウェアで構成されても良いし、各構成要素に適したソフトウェアプログラムを実行することによって実現されても良い。各構成要素は、CPU又はプロセッサ等のプログラム実行部が、ハードディスク又は半導体メモリ等の記録媒体に記録されたソフトウェアプログラムを読み出して実行することによって実現されても良い。ここで、上記実施形態に係る学習モデル作成支援装置等を実現するソフトウェアは、次のようなプログラムであっても良い。
【0076】
すなわち、コンピュータに、空調機の設備に設置された、振動センサを含む複数のセンサのセンサ値から得た物理量の時系列データを記憶する記憶部から、第1の期間の時系列データを取得する取得ステップと、前記第1の期間の時系列データを用いて教師なし学習を行うことにより、前記複数のセンサのセンサ値から得た物理量と閾値とから前記空調機の異常を検知するための第1の学習モデルを作成するモデル作成ステップとを実行させるプログラムであり、前記モデル作成ステップでは、前記空調機の環境変化に基づいて前記第1の学習モデルとは異なる第2の学習モデルを作成させても良い。
【符号の説明】
【0077】
10…学習モデル作成支援装置、11…センサ、12…IoTゲートウェイ、13…記憶装置、14…監視装置、21…室外機、22…室内機、100…学習モデル作成支援システム、101…取得部、102…学習モデル作成部、103,143…表示部、112,114,116,118,120…振動センサ、111,113,115,117,119,121…温度センサ、141…受信部、142…監視部、200…空調機、211…インバータ、212…コンプレッサ、213,223…ファンモータ、214,222…熱交換器、215,221…膨張弁