(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173101
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シートロールの検査装置及びシートロールの製造方法
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N21/892 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091251
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】日比野 翔
【テーマコード(参考)】
2G051
【Fターム(参考)】
2G051AA01
2G051AB02
2G051AC12
2G051CA03
2G051CA04
2G051DA06
(57)【要約】
【課題】シートロールの外周面に接着したままのテール端部に発生した欠陥を検出する
【解決手段】巻回されたシートのテール端部Tの根本が外周面に接着されたシートロールRの検査装置であって、テール端部Tの延伸方向逆側からシートロールRに対して気体を吹き付ける送風部20と、気体が吹き付けられたことにより根本が外周面に接着されたままテール端部Tが外周面から離れて立ち上がったことを検知するための検知部30を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回されたシートのテール端部の根本が外周面に接着されたシートロールの検査装置であって、
前記テール端部の延伸方向逆側から前記シートロールに対して気体を吹き付ける送風部と、
前記気体が吹き付けられたことにより前記根本が前記外周面に接着されたまま前記テール端部が前記外周面から離れて立ち上がったことを検知するための検知部を備える
検査装置。
【請求項2】
前記テール端部は、前記送風部によって気体を吹き付けられることにより、前記外周面から離れて立ち上がった後、前記外周面に再度接するように倒れた状態となり、
前記検知部は、立ち上がった状態の前記テール端部を検知する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項3】
前記シートロールを搬送する搬送部をさらに備え、
前記送風部は、前記シートロールが立った状態で前記搬送部によって搬送されているときに、前記気体を前記シートロールに対して吹き付ける
請求項1に記載の検査装置。
【請求項4】
前記検知部は、検査光を出射する光センサを含み、
前記光センサは、前記外周面から剥離した前記テール端部が前記検査光に接触したことを検知する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項5】
前記検知部は、イメージセンサを含み、
前記イメージセンサは、前記送風部によって気体が吹き付けられている間に前記シートロールを撮像する
請求項1に記載の検査装置。
【請求項6】
前記イメージセンサは、前記シートロールの端面を撮像する
請求項5に記載の検査装置。
【請求項7】
前記イメージセンサは、前記シートロールの周面を撮像する
請求項5に記載の検査装置。
【請求項8】
前記送風部は、複数の送風機を備える
請求項1に記載の検査装置。
【請求項9】
前記送風部は、
一又は複数の送風機と、
前記シートロールが前記送風機による送風区域に進入したことと、前記シートロールが前記送風区域から離脱したことを検知するためのセンサと、
前記センサによって前記送風区域への前記シートロールの進入が検知されたときに前記送風機を駆動し、前記センサによって前記送風区域からの前記シートロールの離脱が検知されたときに前記送風機を停止する送風制御装置を含む
請求項1に記載の検査装置。
【請求項10】
前記送風部は、
一又は複数の送風機と、
前記送風機から送り出された気体を前記シートロールへと導く導風板を含む
請求項1に記載の検査装置。
【請求項11】
シートロールの製造方法であって、
巻回されたシートのテール端部の根本が外周面に接着されたシートロールを得る工程と、
前記テール端部の延伸方向逆側から前記シートロールに対して気体を吹き付ける工程と、
前記気体が吹き付けられたことにより前記根本が前記外周面に接着されたまま前記テール端部が前記外周面から離れて立ち上がったことを検知する工程を含む
製造方法。
【請求項12】
巻回されたシートのテール端部の根本が外周面に接着されたシートロールの検査装置であって、
前記シートロールに対して気体を吹き付ける送風部と、
前記気体が吹き付けられたことにより前記根本が前記外周面に接着されたまま前記テール端部が前記外周面から離れて立ち上がったことを検知するための検知部を備える
検査装置。
【請求項13】
シートロールの製造方法であって、
巻回されたシートのテール端部の根本が外周面に接着されたシートロールを得る工程と、
前記シートロールに対して気体を吹き付ける工程と、
前記気体が吹き付けられたことにより前記根本が前記外周面に接着されたまま前記テール端部が前記外周面から離れて立ち上がったことを検知する工程を含む
製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレットロールなどのシートロールの検査装置やその製造方法に関する。より具体的に説明すると、本発明は、シートロールのテール端部が正常に外周面に接着されているか否かを検査する技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えばトイレットロールの製造装置に、テール端部の接着不良を検出して搬送経路外に自動的に排出する検査装置を導入することが知られている(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の装置は、シートロールをその端面を進行方向に向けて搬送する過程で、テール端部が剥離した不良品を検出することができるとされている。具体的に説明すると、特許文献1の記載の装置では、シートロールをコンベアの搬送面に寝かせた状態で周方向に転回させながら装置下流側に向かって搬送する。また、搬送面上には所定の隙間を空けて一対のガイド板が立設されており、シートロールはこの一対のガイド板によってガイドされながら搬送される。このとき、もしシートロールのテール端部が剥離している場合には、このテール端部が搬送面とガイド板の間の隙間からガイド板の外側に露出する。特許文献1では、このようにしてガイド板の外側に露出したテール端部を光電管等のセンサによって検出することにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載の装置は、基本的にテール端部がシートロールの外周面から完全に剥離している場合に、そのテール端部を欠陥として検出することとしている。しかし、テール端部がシートロールの外周面に接着されたままであっても、そのテール端部に欠陥が発生している場合がある。
【0006】
すなわち、テール端部は、その根本部分のみがシートロールの外周面に接着され、その他の部分は外周面に接着されずにテール端部を剥離する際の摘み代として機能することが適切である。しかしながら、例えばシートロールの製造過程においてテール端部に接着剤が規定量よりも多く塗布された場合、テール端部が全体的にシートロールの外周面に接着されることになり、このような摘み代が十分な面積で形成されないことがある。また、接着剤を塗布する位置がテール端部の先端側に寄り過ぎた場合も、摘み代が十分な面積で形成されなくなる。また、テール端部が適切にシートロールの外周面に接着され適切な面積の摘み代が形成されている場合であっても、例えばテール端部が製造ラインの何処かに引っ掛かったり他のシートロールと接触したことにより、そのテール端部の一部が裂けたり、欠けたり、折れ曲がったりすることがある。特許文献1の装置は、テール端部がシートロールの外周面から完全に剥離された状態を検出することを想定しているため、このようなテール端部がシートロールの外周面に接着したままの状態で発生している欠陥を検出できないという課題がある。
【0007】
そこで、本発明は、シートロールの外周面に接着したままのテール端部に発生した欠陥を検出することを主たる目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の発明者は、上記の目的を達成する手段について鋭意検討した結果、シートロールに対して気体を吹き付けてその外周面からテール端部が適切に立ち上がったことを検知することで、外周面に接着しているテール端部について欠陥の有無を検出できるという知見を得た。そして、本発明者は、上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。以下、本発明の構成又は工程について具体的に説明する。
【0009】
本発明の第1の側面は、シートロールRの検査装置100に関する。シートロールRは、連続したシートが多重に巻回されたものである。シートロールRは、そのシートの最外層にテール端部Tを有しており、正常な状態ではそのテール端部Tの根本がシートロールRの外周面に接着されている。このようなシートロールRの例は、トイレットペーパを巻回してなるトイレットロールであるが、これに限定されるものではない。本発明に係る検査装置100は、送風部20と検知部30を備える。送風部20は、テール端部Tの延伸方向逆側からシートロールRに対して気体を吹き付けるように構成されている。すなわち、送風部20は、シートロールRの巻回方向(例えば時計回り)とは逆方向(例えば反時計回り)に向かって気体を吹き付ければよい。検知部30は、気体が吹き付けられたことにより、根本が外周面に接着されたままテール端部Tが外周面から離れて立ち上がったことを検知するように構成されている。なお、シートロールRへの気体の吹付けとテール端部Tの立ち上がりの検査は、シートロールRの端面が搬送面等の平面に接している状態(つまりシートロールRが立っている状態)で行うこととしてもよいし、シートロールRの周面が搬送面等の平面に接している状態(つまりシートロールRが寝ている状態)でおこなうこととしてもよい。
【0010】
上記構成のように、シートロールRに気体を吹き付けてテール端部Tの立ち上がりを検査することにより、テール端部Tに発生した多様な欠陥を検出できる。具体的には、シートロールRに対する気体の吹付けによってテール端部Tが適切に立ち上がれば、そのテール端部Tは正常であると判断できる。一方で、気体の吹付けによってもテール端部Tが立ち上がらない場合は、例えば接着剤の塗布時に不具合があり、テール端部Tに摘み代が形成されていないか、摘み代の幅が極端に狭くなっているといった欠陥があると判断できる。また、気体の吹付けによってテール端部Tの根本(接着部G)がシートロールRの外周面から剥離してしまった場合は、そのテール端部Tに適切に接着剤が塗布されていないといった不具合があると判断できる。
【0011】
本発明に係る検査装置100において、テール端部Tは、送風部20によって気体を吹き付けられることにより、シートロールRの外周面から離れて立ち上がった後、外周面に再度接するように倒れた状態となることが好ましい。特に、テール端部Tは、気体の吹付け後は、接着部Gを挟んで反対側に折れ曲がって、シートロールRの外周面に接する状態となることが好ましい。この場合に、検知部30は、少なくとも立ち上がった状態のテール端部Tを検知すると良い。テール端部TがシートロールRの外周面から離れて立ち上がっている状態は、テール端部Tが外周面から大きく離れている状態であり、その存在を顕著に確認できることから、既存のセンサによって検出しやすい。
【0012】
本発明に係る検査装置100は、シートロールRを搬送する搬送部10をさらに備えることが好ましい。この場合に、送風部20は、シートロールRが立った状態で搬送部10によって搬送されているときに、気体をシートロールRに対して吹き付けるように構成されていることが好ましい。シートロールRを搬送部10によって搬送しながら気体を吹き付けるようにすることで、複数のシートロールRを連続的に検査することができる。また、シートロールRが立った状態で気体を吹き付けることで、テール端部Tが自由になりやすいため、このテール端部Tが立ち上がった状態を検知しやすくなる。
【0013】
本発明に係る検査装置100において、検知部30は、検査光を出射する光センサ33を含むこととしてもよい。この場合、光センサ33は、外周面から剥離したテール端部Tが検査光に接触したことを検知するものを採用するとよい。これにより、比較的簡易な構成でテール端部Tの立ち上がりを検知できる。
【0014】
本発明に係る検査装置100において、検知部30は、イメージセンサを含むこととしてもよい。イメージセンサとしては、例えばシートロールRの端面側を撮影する平面カメラ31や、シートロールRの周面側を撮影する側面カメラ32に組み込まれているものを利用することができる。その他、イメージセンサは、シートロールRを斜め方向から撮像するものであってもよい。このイメージセンサは、送風部20によって気体が吹き付けられている間にシートロールRを撮像する。イメージセンサで取得された画像を解析することにより、気体の吹付けによるシートロールRのテール端部Tの動きを明らかにすることができる。これにより、テール端部Tの欠陥の有無をより詳細に検査することができる。
【0015】
本発明に係る検査装置100において、検知部30に含まれるイメージセンサは、シートロールRの端面を撮像するように配置されていることが好ましい。シートロールRの端面を撮像することで、気体の吹付けによってテール端部Tが適切に立ち上がるかどうかをより正確に判断することができる。
【0016】
本発明に係る検査装置100において、検知部30に含まれるイメージセンサは、シートロールRの周面を撮像するように配置されていることが好ましい。シートロールRの周面を撮像することで、テール端部Tの面に生じた裂損や欠損、折損などの欠陥を特定できる。これらの欠陥の有無はシートロールRの端面側の撮像画像からでは判断が困難であるが、シートロールRの周面側の撮像画像からであれば特定することができる。
【0017】
本発明に係る検査装置100において、送風部20は、複数の送風機21を備えることが好ましい。特に、複数の送風機21によって、シートロールRに対して複数の異なる方向から気体を吹き付けることが好ましい。例えば複数のシートロールRを連続的に搬送する過程において、各シートロールRのテール端部Tの向きが揃わない場合がある。この場合に、各シートロールRに対して複数の異なる方向から気体を吹き付けることで、テール端部Tがどの方向を向いていても気体の吹付けによってテール端部Tを立ち上がらせることができる。
【0018】
本発明に係る検査装置100において、送風部20は、一又は複数の送風機21と導風板22を含むこととしてもよい。導風板22は、送風機21から送り出された気体をシートロールRへと導くように配置されている。このように導風板22を設けることで、送風機21から排出された気体をシートロールRに対して直接当てるだけでなく、この導風板22によって導かれた気体をシートロールRに対して当てることができる。このため、例えば送風機21の数が1台であっても、複数の方向からシートロールRに対して気体を当てることができる。
【0019】
本発明に係る検査装置100において、送風部20は、一又は複数の送風機21と、センサ22,23と、送風制御装置25を含むこととしてもよい。センサは、シートロールRが送風機21による送風区域に進入したことを検知する進入センサ23と、シートロールRが送風区域から離脱したことを検知する離脱センサ24を含む。そして、送風制御装置25は、進入センサ23によって送風区域へのシートロールRの進入を検知されたときに送風機21を駆動し、離脱センサ24によって送風区域からのシートロールRの離脱が検知されたときに送風機21を停止するように、送風機21を制御する。例えばシートロールRがトイレットロールである場合、トイレットロールが送風区域を通過するときにだけ送風機21を駆動するようにすることで、トイレットロールから発生した紙粉が舞い散ることを抑制できる。また、シートロールRに対する送風区域を複数箇所に設ける場合、すべての送風区域で送風機21を常時駆動していると、各送風区域で発生した気流が干渉し合うことが懸念される。この点、上記構成のように各送風区域で必要に応じて送風機21をオン/オフとすることでこのような気流の干渉を抑制できる。
【0020】
本発明の第2の側面は、シートロールRの製造方法に関する。第2の側面に係る製造方法は、前述した第1の側面に係る検査装置100を利用してシートロールRの検査を行う工程を含む。具体的に説明すると、シートロールRの製造方法では、まず、巻回されたシートのテール端部Tの根本が外周面に接着されたシートロールRを得る(取得工程)。次に、テール端部Tの延伸方向逆側からシートロールRに対して気体を吹き付ける(送風工程)。次に、気体が吹き付けられたことにより根本が外周面に接着されたままテール端部Tが外周面から離れて立ち上がったことを検知する(検知工程)。
【0021】
本発明の第1の側面に係る検査装置100は、次のように特定することもできる。すなわち、巻回されたシートのテール端部Tの根本が外周面に接着されたシートロールRの検査装置100は、シートロールRに対して気体を吹き付ける送風部20と、気体が吹き付けられたことにより根本が外周面に接着されたままテール端部Tが外周面から離れて立ち上がったことを検知するための検知部30を備える。送風部20がシートロールRに対して気体を吹き付ける方向は、必ずしもテール端部Tの延伸方向逆側からでなくてもよい。例えば、テール端部Tの延伸方向に沿って(延伸方向と順方向に)気体を吹き付ける場合でも、気流によってテール端部Tを立ち上がらせることができる。
【0022】
同様に、本発明の第2の側面に係るシートロールRの製造方法は、次のように特定することもできる。すなわち、シートロールRの製造方法は、巻回されたシートのテール端部Tの根本が外周面に接着されたシートロールRを得る工程と、シートロールRに対して気体を吹き付ける工程と、気体が吹き付けられたことにより根本が外周面に接着されたままテール端部Tが外周面から離れて立ち上がったことを検知する工程を含む。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、シートロールの外周面に接着したままのテール端部に発生した欠陥を検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、検査装置の構成例を模式的に表した斜視図である。
【
図2】
図2は、シートロールに気体を吹き付ける工程を示した平面図である。
【
図3】
図3は、シートロールのテール端部に生じた欠陥の一例を示している。
【
図4】
図4は、検知部に含まれるカメラの例を示している。
【
図5】
図5(a)は、平面カメラによって撮像された連続画像を示し、
図5(b)は、側面カメラによって撮像された連続画像を示している。また、
図5(c)は、側面カメラによって撮像されたテール端部の欠陥の一例を示している。
【
図6】
図6は、検知部に含まれる光センサの例を示している。
【
図7】
図7は、光センサを用いた検査において正常であると判断されるテール端部の状態を示している。
【
図8】
図8は、複数の送風機によってシートロールに気体を吹き付ける工程を示した平面図である。
【
図9】
図9は、導風板を用いてシートロールに気体を吹き付ける工程を示した平面図である。
【
図10】
図10は、進入センサと離脱センサを用いて送風区域への送風を制御する場合の例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0026】
図1は、本発明の一実施形態に係る検査装置100を模式的に表したものである。
図1に示されるように、本発明に係る検査装置100は、長尺のシートが多重に巻回された円筒状のシートロールRを検査する目的で利用される。本実施形態では、シートロールRとして、トイレットロールを検査対象とすることを想定している。シートロールRは、その最外層の先端付近に接着剤が塗布されており、この接着剤が塗布された部位をシートロールRの外周面に貼り付けることにより、テール端部Tが形成されている。テール端部Tは、根本付近の接着部GにおいてシートロールRの外周面に固定されており、この接着部Gよりも先端寄りの部位が摘み代となる。例えば消費者はシートロールRを使用し始めるときに、このテール端部Tの摘み代を指で摘んで接着部Gを剥離することにより、このシートロールRからシートを繰り出すことができる。テール端部Tの摘み代の幅は、10~50mm程度が適切であり、その範囲で個体ごとに差があっても問題はない。このような、シートロールR、具体的にはトイレットロールは公知の方法によって製造すればよい。
【0027】
図1に示されるように、検査装置100は、シートロールRを搬送するための搬送部10を備える。シートロールRは、搬送部10によって装置下流側に向かって一定方向に搬送される。このとき、搬送部10は、複数のシートロールRを所定間隔で連続的に搬送することができる。搬送部10としては、公知の搬送装置を利用することができる。本実施形態では、搬送部10は、ベルトコンベア11と左右の側壁12を有している。ベルトコンベア11は、駆動プーリ(図示省略)と従動プーリ(図示省略)に架け渡された無端ベルトを備え、この無端ベルトによってシートロールRの搬送面が形成されている。なお、搬送部10としてはベルトコンベアに限らず、ローラコンベアやチェーンコンベア等を用いることもでき、またこれらを併用することも可能である。側壁12は、ベルトコンベア11に幅方向左右両側にその搬送方向に沿って形成されており、ベルトコンベア11の搬送面からシートロールRが脱落することを防止する。後述するとおり、本実施形態では、ベルトコンベア11によって搬送されているシートロールRに対して気体を吹き付ける必要がある。このため、側壁12は、この気流を阻害しない程度の高さに留めておくことが好ましい。具体的には、側壁12の高さはシートロールRの軸方向の長さに対して5~15%とすると良い。例えば一般的なトイレットロールは軸方向の長さ(すなわちシート幅)が100~115mm程度であるから、側壁12の高さは5~17mmとすることが適切である。
【0028】
また、本実施形態では、シートロールRはその端面がベルトコンベア11の搬送面に触れた状態で搬送される。このようにシートロールRを立たせた状態とすることで、ベルトコンベア11によってシートロールRを安定的に搬送することができる。
【0029】
図1に示されるように、検査装置100は、搬送中のシートロールRに対して気体を吹き付けるための送風部20を備える。この送風部20は、少なくとも1つの送風機21を有する。送風機21は、公知のものを用いることができる。例えば、送風機21としては、ファンを回転させることにより気流を生み出すサーキュレータを用いることとしてもよいし、ファンの回転により生み出した気流をノズルを通じて圧縮して排出するブロワーや、空気を圧縮するコンプレッサーとこの圧縮空気を排出するノズルを備えたエアブローガンを用いることとしてもよい。
【0030】
また、
図2(a)では、送風部20によって気体が吹き付けられているシートロールRを平面方向から示している。これらの
図1及び
図2(a)に示されるように、シートロールRに対して送風機21から気体を吹き付けることで、シートロールRのテール端部Tが気体によって煽られて揺れ動くこととなる。すなわち、
図2(a)に示した例では、シートロールRは平面視において時計回りにシートが巻回されたものであり、そのテール端部Tの根本に接着部Gが形成されている。このようなシートロールRに対して、送風機21は、テール端部Tの延伸方向逆側からシートロールRに対して気体を吹き付けるように配置されている。より具体的に説明すると、
図2に示した例では、搬送方向を前方とした場合に、シートロールRは、そのテール端部Tの延伸方向が右斜め後方を向くようにベルトコンベア11の搬送面上に載置されている。このため、送風機21は、シートロールRの右斜め後方に配置され、シートロールRに対して左斜め前方に向かって気体を吹き付けるように構成されている。これにより、シートロールRには、テール端部Tの内面側、すなわちテール端部Tと外周面との間に気体を吹き込まれる。これにより、シートロールRのテール端部Tは外周面から捲り上がるようにして揺動する。
【0031】
また、
図2(b)では、気体が当てられたテール端部Tの状態の変化を連続写真的に示している。特に
図2(b)は、正常な状態のテール端部Tの動きを示している。
図2(b)に示されるように、テール端部Tが正常である場合、このテール端部Tの延伸方向逆側から気体を吹き付けられると、まずテール端部TがシートロールRの外周面から離れて、次第にテール端部Tと外周面との間隔が大きくなる。このとき、テール端部Tは接着部Gにおいて外周面に接着されたままとなっているため、この接着部Gを支点として、接着部Gとは反対側のテール端部Tの先端が立ち上がっていく。その後、テール端部Tは、接着部Gを支点としながら、シートロールRの外周面に対してほぼ直立するように立ち上がる。このときが、テール端部Tの先端がシートロールRの外周面から最も離れた状態となる。そして、テール端部Tは、その後、接着部Gを支点として、初期状態とは反対の向きに倒れる。このときのテール端部Tの向きは、シートロールRの巻回方向とは逆方向となる。すなわち、時計回りにシートが巻回されたシートロールRの場合、テール端部Tは最終的に反時計回りの方向に倒れた状態となる。このような状態になるとテール端部Tは安定するため、例えば別の送風機等による風に当たったりしない限り、テール端部Tの向きはこのまま維持される。
【0032】
なお、ベルトコンベア11によって搬送されている状態において、シートロールRのテール端部Tの向きはある程度揃えることができる。具体的には、シートロールRは、個別に切り分けられた状態となる前は、ログと呼ばれる多数のシートロールRがその軸方向に連なった状態となっている。特にログの状態では、各シートロールRのテール端部Tとなる部位の向きはすべて揃っていることとなる。そして、このログを所定幅で切断することで個別のシートロールRが得られる。このようにログを切断した後、個別のシートロールRを直立に立たせてから本実施形態に係る検査装置100に導入することになるが、その際に一本のログから形成された複数のシートロールRは基本的に同じ搬送経路を辿ることになる。このため、ログ切断後から検査装置100への導入までの間に、各シートロールRのテール端部Tの向きは大きくずれることなく、テール端部Tの向きが概ね揃った状態で検査装置100に導入される。このように、一つのログから生まれた複数のシートロールRは、テール端部Tの向きが概ね揃った状態でベルトコンベア11によって搬送されることになる。このため、ログの状態でテール端部Tとなる部位の向きを調整することで、搬送過程に送風機21を少なくとも一つ設けておけば、ほぼすべてのシートロールRについて検査を行うことも可能である。
【0033】
図2に示した例では、前述した通り、ベルトコンベア11上においてシートロールRのテール端部Tが右斜め後方を向いているため、送風機21はシートロールRの右斜め後方に配置して、その左斜め前方に向かって送風させればよい。また、例えば、図示は省略するが、ベルトコンベア11上においてシートロールRのテール端部Tが左斜め前方を向く場合には、送風機21はシートロールRの左斜め前方に配置して、その右斜め後方に向かって送風させればよい。ただし、ベルトコンベア11に載置される時点で、送風機21の送風方向に対してテール端部Tの向きが適切ではないシートロールRが発見された場合には、手作業でシートロールRの向きを整えることとしてもよいし、シートロールRの向きを適切に揃えるための機械を導入して自動的にシートロールRの向きを整えることとしてもよい。
【0034】
図3は、欠陥のあるテール端部Tに風を当てたときの動きの例を示している。なお、
図3に示した欠陥は一例である。例えば
図3(a)に示した例では、シートロールRの先端近くに接着部Gが形成されており、テール端部Tが形成されていないか、又はテール端部Tの摘み代が極端に狭くなってしまっている。このようなシートロールRは、消費者が接着部Gを剥離することが難しくなることから、テール端部Tに欠陥を持つ不良品として扱われる。この場合、シートロールRのテール端部Tに対してその延伸方向逆側から気体を当てても、テール端部Tは立ち上がらない。また、
図3(b)に示した例では、シートロールRの外周面に接着部Gが形成されておらず、その結果、テール端部Tに相当する部位も存在しないこととなる。このようなシートロールRも不良品として扱われる。この場合、シートロールRのテール端部Tに対してその延伸方向逆側から気体を当てると、支点となる接着部Gが存在しないことから、シートの先端はうまく立ち上がらずに、シートの先端側がシートロールRの外周面から解離して間延びした状態となる。
【0035】
本実施形態に係る検査装置100は、前述した正常なテール端部Tに風を当てたときの挙動と欠陥のあるテール端部Tに風を当てたときの挙動の違いを利用して、正常なテール端部Tと欠陥のあるテール端部Tを判別する。具体的には、検査装置100は、気体が吹き付けられたことにより接着部Gが外周面に接着されたままテール端部Tが立ち上がったことを検知するための検知部30を備えている。
【0036】
まず、
図4及び
図5を参照して、検知部30として、イメージセンサを備えるデジタルカメラを採用する場合の実施形態について説明する。
図4に示した実施形態において、検知部30は、平面カメラ31、側面カメラ32、及び制御装置33を含む。なお、これらの平面カメラ31及び側面カメラ32の配置は、
図1にも模式的に示している。
【0037】
平面カメラ31は、搬送中に気体が吹き付けられたシートロールRを平面方向から撮像するためのものであり、シートロールRの搬送経路の直上に設置される。また、側面カメラ32は、搬送中に気体が吹き付けられたシートロールRを側面方向から撮像するためのものであり、シートロールRの搬送経路の側方に設置される。これらのデジタルカメラは、例えば、レンズ、メカシャッター、シャッタードライバ、CCDイメージセンサユニットやCMOSイメージセンサユニットといった光電変換素子、光電変換素子から電荷量を読み出し画像データを生成するデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、ICメモリなどで構成されている。また、各カメラ31,32で取得された画像(静止画及び動画を含む)は、有線又は無線で制御装置33へと送信される。
【0038】
制御装置33は、各カメラ31,32で取得された画像を解析して、その画像に写っているシートロールRの欠陥、特にテール端部Tの欠陥の有無を判断する。このような制御装置33は、所定の制御プログラムがインストールされたコンピュータにより実現できる。制御装置33を構成するコンピュータは、制御演算部、記憶部、入力部、及び出力部を含む。制御演算部は、例えばプロセッサとメモリから構成される。プロセッサの例は公知のCPUやGPUである。プロセッサは、メモリに記憶されているプログラムやデータに従って所定の演算処理や画像処理を行い、その処理の結果をメモリの作業空間に書き出しながら各種の制御処理を実行する。メモリは、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリから構成され、上記したプロセッサによる演算処理に利用される。記憶部は、主に制御演算部での処理に利用されるデータを記憶するための要素である。また、記憶部には、プロセッサでの処理に用いられるプログラムが記憶されていてもよい。また、記憶部には、各カメラ31,32で取得された画像データが記憶されていてもよい。記憶部は、ROM(Read Only Memory)やフラッシュメモリ等の不揮発性メモリや、HDD(ハードディスクドライブ)から構成される。入力部は、各カメラ31,32から画像データを受信するための入力インターフェースを含む。その他、入力部には、キーボードや、マウス、タッチパネルといった公知の入力装置が含まれていてもよい。出力部は、制御演算部による演算処理の結果や、制御演算部で生成された制御命令を外部に出力するための出力インターフェースを含む。その他、出力部には、液晶ディスプレイ又は有機ELディスプレイといった公知のディスプレイ装置や、音を出力するためのスピーカ装置が含まれていてもよい。
【0039】
図5(a)は、平面カメラ31で撮像された連続画像の例を示している。前述した通り、シートロールRのテール端部Tが正常である場合、送風機21によって気体が吹き付けられると、テール端部Tは接着部Gを支点として立ち上がり、その後反対側に倒れるように動く。従って、平面カメラ31が取得した連続画像には、このような一連の動作を行うテール端部Tが写り込むことになる。そして、制御装置33は、平面カメラ31が取得した連続画像を解析して、このようにテール端部Tの適切な立ち上がり動作を特定できたシートロールRについては正常なものであると判断する。特に、気体を吹き付ける前の状態では、テール端部TはシートロールRの外周面に付着しているか又は両者の間の隙間がほとんど生じていない場合が多いことから、気体を吹付ける前のシートロールRの平面画像を画像解析してもテール端部Tが適切に形成されているかどうかを正確に判断することが難しい。一方で、
図5(a)に示すように、シートロールRに気体を吹き付けてテール端部Tを立ち上がらせることで、撮像画像内においてテール端部Tの存在が顕著に現れることから、画像解析によりテール端部Tが適切に形成されているかどうかをより正確に判断することができる。
【0040】
なお、画像解析の手法は特に限定されず、画像内から特定の物体(ここではテール端部T)を検出するのに用いられている公知のアルゴリズムを採用すればよい。物体検出のアルゴリズムの例としては、Haar-like特徴分類やHOG(Histogram of Oriented Gradients)が挙げられる。また、機械学習技術を利用して物体検出を行うこともできる。機械学習による物体検出のアルゴリズムの例は、R-CNN(Regions with Convolutional Neural Network)やYOLO(You Only Look Once)である。
【0041】
図5(b)は、側面カメラ32で撮像された連続画像の例を示している。
図5(a)と同様に、シートロールRのテール端部Tが正常である場合、送風機21によって気体が吹き付けられると、テール端部Tは接着部Gを支点として立ち上がってその後反対側に倒れるように動くが、このようなテール端部Tの動きは側面カメラ32によって撮像された連続画像からでも確認できる。このため、制御装置33は、側面カメラ32が取得した連続画像を解析して、このようにテール端部Tの適切な立ち上がり動作を特定できたシートロールRについては正常なものであると判断する。なお、側面カメラ32の位置によっては、テール端部Tが撮像画像に写り込まずに、テール端部Tの動きを確認できない場合がある。このような場合には、前述した平面カメラ31による撮像画像によってテール端部Tの正常な動きを確認できれば、そのシートロールRは正常なものであると判断すればよい。つまり、複数台のカメラのうち、一つでも正常なテール端部Tの動きを確認できれば、シートロールRは正常なものと判断することができる。
【0042】
また、側面カメラ32からの画像によれば、テール端部Tを面として捉えることができる。例えば
図3(c)に示したように、気体の吹付けによってテール端部Tが一応正常な動きを行う場合であっても、そのテール端部Tの面に欠損や裂損、折損などの欠陥が発生している場合がある。側面カメラ32によって撮像された画像を解析すれば、このようなテール端部Tの面に生じた欠陥を検出することができる。特に、シートロールRに対して気体を吹き付ける前の状態では、テール端部TはシートロールRの外周面と重なっていることから、テール端部Tの面に上記のような欠陥が生じていても、撮像画像におけるテール端部Tの色や形状の解析によっては欠陥部位を正確に検出できないことがある。一方で、シートロールRに対して気体を吹き付けた後の状態では、テール端部Tが捲り上がるため、撮像画像内において欠陥部位の形状を特定しやすくなる。このため、テール端部Tの面に生じた欠陥を検出するためには、側面カメラ32の撮像画像を解析することが有効である。
【0043】
また、
図5に示したように、画像解析によってテール端部Tの動きを特定するためには、テール端部Tの動作速度を平面カメラ31や側面カメラ32で捉えることができる程度に抑制する必要がある。このテール端部Tの動作速度は、シートロールRに当てる風の強さによって制御できる。例えば、各カメラ31,32としてフレームレートが30fpsのデジタルカメラを用いることを想定した場合、シートロールRに当てる風の強さは、トイレットロールの直径(0.114m)を代表長さとしたレイノルズ数が3500~55000であることが好ましく、7500~40000であることがより好ましく、20000~40000であることが更に好ましい。これよりも風が弱いと、シートロールRの外周面からテール端部Tを立ち上がらせることができず、またこれよりも風が強いと、風を受けたテール端部Tの動きが早すぎて各カメラ31,32によってテール端部Tが立ち上がった瞬間を常に捉えることが難しくなる。また、風が強すぎると軽量のシートロールRが吹き飛ばされて搬送経路から逸脱するおそれや、無駄な電力を消費することになる。
なお、レイノルズ数とは、流体力学のパラメータの一つであり、慣性力と粘性力との比で定義される無次元量である。流れの中でのこれら慣性力と粘性力の相対的な重要性を定量している。レイノルズ数が一定の値を超えると流れは乱流となり、レイノルズ数が一定の値以下であれば流れは層流となる。レイノルズ数は、以下の式で表される。
[式]Re=(ρ×v×L)/μ
ここで、Reはレイノルズ数、ρは流体の密度、vは流体の速度、Lは流れの特性を表す代表長さ、μは流体の粘度である。例えばトイレットロールに空気を吹き付けることを考えると、ρは空気密度1.206kg/m
3、vは風速(例えば3m/s)、Lはシートロールの直径(例えば0.114m)、μは空気の粘性係数1.83×10
-5Pa・sで計算すればよい。
【0044】
また、平面カメラ31と側面カメラ32は、それぞれ一箇所ずつに限らず、ベルトコンベア11の搬送経路に沿ってそれぞれ複数箇所に設けることもできる。また、デジタルカメラは、前述した平面カメラ31と側面カメラ32に限らず、これらのカメラ31,32に代えて又はこれらに加えて、斜め上方や斜め下方から気体が吹き付けられているシートロールRを撮影するためのカメラ(斜視カメラ)を設けることもできる。平面カメラ31、側面カメラ32、斜視カメラ(図示省略)のいずれかによって、テール端部Tが適切に立ち上がった状態を撮影できれば、そのシートロールRは正常なものであると判断することができる。
【0045】
次に、
図6及び
図7を参照して、検知部30として、光センサ33を採用する場合の実施形態について説明する。
図6に示した実施形態において、検知部30は、光センサ33と制御装置33を含む。また、光センサ33は、投光器33aと受光器33bから構成されている。投光器33aと受光器33bはそれぞれ制御装置33に接続されており、制御装置33の制御に従って動作する。投光器33aは、受光器33bに向かって検査光33cを照射する。受光器33bは、検査光33cを受光し、受光した検査光33cの光エネルギー光電効果によって電気信号に変換して制御装置33に出力する。なお、
図6に示した例では、受光器33bは投光器33aと対向する位置に設けられているが、投光器33aと対向する位置に反射板を設け、受光器33bを投光器33aに隣接した位置に設けて、反射板で反射した検査光33cを受光器33bで受光することとしてもよい。
【0046】
図6に示されるように、投光器33aと受光器33bは、検査光33cがベルトコンベアによって搬送されているシートロールRの周面近傍をその周面に沿って進むように配置されている。具体的に説明すると、
図7の平面図に示されるように、検査光33cは、気体を吹き付ける前の状態では、シートロールRのテール端部Tが触れない位置に照射されている。一方で、気体の吹付けによってシートロールRのテール端部Tが接着部Gを支点として適切に立ち上がると、この立ち上がった状態のテール端部Tが検査光33cに接触するように、検査光33cの照射位置が調整されている。テール端部Tが検査光33cに触れると、検査光33cがテール端部Tによって遮られることになるため、受光器33bに検査光33cが到達しなくなるか、受光器33bに到達する検査光33cの光量(光エネルギー)が弱くなる。これにより、受光器33bから制御装置33に出力される電気信号が変化するため、制御装置33は、テール端部Tが検査光33cに触れたことを検出できる。このように気体の吹付けによってテール端部Tが検査光33cに触れた場合、制御装置33は、そのテール端部Tは正常であると判断できる。一方で、気体の吹付けによってもテール端部Tが検査光33cに触れない場合、制御装置33は、そのテール端部Tには異常があると判断できる。具体的には、テール端部Tが検査光33cに触れない場合には、
図3に示したように、接着部Gの位置が適切でなくテール端部Tの摘み代が十分に形成されていなかったり、シートロールRに接着部Gが形成されておらずテール端部Tが適切に立ち上がらなかったといった欠陥があると疑われる。
【0047】
上記の通り、検知部30によって主にテール端部Tに欠陥があると判断されたシートロールRは不良品である可能性が高いことから、搬送部10による搬送経路から排出することが好ましい。例えば、検知部30に含まれる制御装置33は、ディスプレイ等に警告メッセージを表示して、搬送中のシートロールRを監視している作業者に対して、不良品と判断されたシートロールRがあることを通知してもよい。この場合、作業者は不良品を搬送経路から取り除くことができる。また、シートロールRの不良品を個別に機械的に搬送経路から排出することもできる。不良品を機械的に排出する手段は、特に限定されず、公知の手段を採用すればよい。例えば、搬送経路の近傍に、圧縮空気や押出棒、空気の吸引などによって不良品を機械的に排出する機構を設けておく。そして、制御装置33は、シートロールRの不良品を検出した場合に、この排出機構を駆動させて不良品を個別に搬送経路外へと排出すればよい。
【0048】
続いて、
図8を参照して、シートロールRの搬送経路に複数の送風機21を配置する場合について説明する。
図8に示されるように、ベルトコンベア11の搬送経路に沿って複数の送風機21(a)~(d)を配置することとしてもよい。特に、複数の送風機21(a)~(d)は、それぞれ気体の排出方向を異ならせるとよい。図示した例では、排出方向の異なる4台の送風機21(a)~(d)を配置して、ベルトコンベア11上のシートロールRに対して気体を吹き付けることとしている。なお、送風機21の数は、2台であってもよいし、3台であってもよいし、5台以上とすることもできる。ただし、送風機21の数が多いと導入にコストがかかり、また電力も大きくなることから、検査に用いる送風機21の数は2~5台程度が適当である。
【0049】
具体的には、
図8に示した例では、シートロールRが平面視において時計回りにシートを巻回したものであることを想定している。このとき、搬送方向を前方とした場合に、第1の送風機21(a)と第2の送風機21(b)はベルトコンベア11の右側に配置され、第3の送風機21(c)と第4の送風機21(d)はベルトコンベア11の左側に配置されている。また、ベルトコンベア11に対して、第1の送風機21(a)は左斜め前方(約45度)に向かって気体を排出し、第2の送風機21(b)は左真横(約90度)に向かって気体を排出する。また、第3の送風機21(c)は右真横(約90度)に向かって気体を排出し、第4の送風機21(d)は右斜め後方に向かって気体を排出する。さらに、ベルトコンベア11の上流側から下流側に向かって、第1の送風機21(a)、第2の送風機21(b)、第3の送風機21(c)、第4の送風機21(d)の順に配置されている。このように、気体の排出方向の異なる複数の送風機21(a)~(d)をベルトコンベア11の搬送経路に沿って順に配置することで、ベルトコンベア11上においてシートロールRのテール端部Tの向きが揃っていなくても、いずれかの送風機21によって、テール端部Tを立ち上げるための気流をシートロールRに対して供給することができる。前述した通り、ベルトコンベア11上のシートロールRの向きをある程度揃えることは可能であるものの、その調整に手間がかかる場合には、この
図8に示したような構成を採用すればよい。これにより、シートロールRの向きを調整してベルトコンベア11に載せる手間を省くことができる。
【0050】
また、複数の送風機21を配置する場合、各送風機21につき一つずつ平面カメラ31(
図4参照)を設けることが好ましい。ベルトコンベア11上においてシートロールRの向きが揃っていない場合、正常なシートロールRはいずれかの送風機21からの気体によってテール端部Tが立ち上がることになるが、送風機21ごとに平面カメラ31を設けることで、テール端部Tが立ち上がる瞬間をいずれかの平面カメラ31で撮像することができる。いずれの平面カメラ31によってもテール端部Tの立ち上がりを検出できない場合には、そのシートロールRのテール端部Tには欠陥があると判断できる。なお、各カメラからの画像データは制御装置に送られて画像解析される。
【0051】
続いて、
図9を参照して、シートロールRの搬送経路に導風板22を設置する場合について説明する。
図9に示した例において、送風部20は、送風機21と導風板22を含む。送風機21はベルトコンベア11の左右側方のうちの片側に設けられ、導風板22はその反対側に設けられている。送風機21は、例えばベルトコンベア11の左側に設置されており、ベルトコンベア11に対して右真横(約90度)に向かって気体を排出する。一方で、導風板22は、例えばベルトコンベア11の右側に設置されている。導風板22は、送風機21から排出されベルトコンベア11を超えて右側まで到達した気体を反射して、再びベルトコンベア11に向かう気流を形成するように構成されている。また、導風板22の全部又は一部を平面視においてベルトコンベア11の搬送方向に対して斜めに傾けて、導風板22によって反射される気体の向きを調整することとしてもよい。
【0052】
これにより、送風機21から直接排出された気体か又は導風板22によって反射された気体のいずれかによって、ベルトコンベア11上のシートロールRのテール端部Tを立ち上がらせることが可能になる。このため、ベルトコンベア11によって搬送するシートロールRの向きが揃っていない場合でも、気体によってテール端部Tを立ち上がらせて欠陥の有無を検査することができる。また、
図8に示した実施形態のように複数の送風機21を設けた場合と比較し、導風板22の導入コストや維持コストは安価であることから、安価かつ簡易的な構成で向きの揃っていないシートロールRの検査を行うことが可能となる。
【0053】
また、
図9に示した実施形態においては、送風機21から気体が直接吹き付けられる区域と導風板22によって気体が反射される区域のそれぞれに、一つずつ平面カメラ31(
図4参照)を設けることが好ましい。このように、各区域に平面カメラ31をそれぞれ設けることで、テール端部Tが立ち上がる瞬間をいずれかの平面カメラ31で撮像することができる。いずれの平面カメラ31によってもテール端部Tの立ち上がりを検出できない場合には、そのシートロールRのテール端部Tには欠陥があると判断すればよい。
【0054】
続いて、
図10を参照して、送風機21のオン/オフを制御する場合について説明する。
図10に示した例において、送風部20は、送風機21に加えて、進入センサ23と、離脱センサ24と、これらのセンサ23,24の検知信号に基づいて送風機21を制御する送風制御装置25を含む。進入センサ23は、送風機21による送風区域内へのシートロールRの進入を検知し、離脱センサ24は、この送風区域外へのシートロールRの離脱を検知する。送風制御装置25は、前述した制御装置33と同様にコンピュータにより実現できる。なお、送風制御装置25と制御装置33は同じコンピュータで構成されていてもよいし、別のコンピュータで構成されていてもよい。
【0055】
具体的には、進入センサ23と離脱センサ24としては、前述した光センサ33と同様に、それぞれ投光器23a,24aと受光器23b,24bを備えるセンサを利用することができる。進入センサ23の投光器23aからはベルトコンベア11の搬送面に沿って検査光23c,24cが照射されている。ベルトコンベア11によって搬送されてきたシートロールRがこの検査光23cに触れると、進入センサ23の受光器23bに到達する検査光23cの光量が弱くなるため、その光量の変化を電気信号として送風制御装置25に伝達する。これにより、送風制御装置25は、送風区域内にシートロールRが侵入したと判断し、送風機21を駆動させて、ベルトコンベア11の搬送面上のシートロールRに対して送風を開始する。他方、離脱センサ24の投光器24aからはベルトコンベア11の搬送面に沿って検査光24cが照射されている。ベルトコンベア11によって搬送されてきたシートロールRがこの検査光24cに触れると、離脱センサ24の受光器24bに到達する検査光24cの光量が弱くなるため、その光量の変化を電気信号として送風制御装置25に伝達する。これにより、送風制御装置25は、送風区域外にシートロールRが離脱したと判断して、送風機21を停止させる。このようにシートロールRが送風区域内にあるときにだけ送風機21を駆動させることができるため、消費電力の削減につながる。
【0056】
また、ベルトコンベア11の搬送経路に複数の送風機21を間隔をおいて設け、各送風機21によって順番にシートロールRに対して送風することもできる。この場合、ベルトコンベア11の搬送経路には複数の送風区域が形成されることになる。このような場合、送風区域毎に進入センサ23と離脱センサ24のセットを設置し、各送風区域における送風機21のオン/オフを制御することが好ましい。つまり、例えば搬送経路の上流側から順に第1の送風区域、第2の送風区域、第3の送風区域が形成されている場合、ベルトコンベア11によって搬送されるシートロールRは、この第1から第3の順で送風区域を通過することになる。このとき、シートロールRが第1の送風区域にあるときには、第1の送風区域に設けられた送風機21のみを駆動させて、他の送風区域の送風機21は停止させ、同様に、シートロールRが第2の送風区域にあるときには、第2の送風区域に設けられた送風機21のみを駆動させ、他の送風区域の送風機21は停止させるとよい。このように各送風区域の送風機21を順番に駆動させることで、各送風機21によって形成された気流が互いに干渉し合うことを防止できる。
【0057】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【産業上の利用可能性】
【0058】
本発明は、トイレットロールなどのシートロールの検査装置やその製造方法に関する。従って、本発明はトイレットロール等の製造業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0059】
10…搬送部 11…ベルトコンベア
12…側壁 20…送風部
21…送風機 22…導風板
23…進入センサ 24…離脱センサ
25…送風制御装置 30…検知部
31…平面カメラ 32…側面カメラ
33…制御装置 33…光センサ
33a…投光器 33b…受光器
33c…検査光 100…検査装置
R…シートロール T…テール端部
G…接着部