(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173102
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】非対称形部材の製造方法および治具
(51)【国際特許分類】
B23K 37/04 20060101AFI20241205BHJP
B23K 37/047 20060101ALI20241205BHJP
B23K 37/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B23K37/04 F
B23K37/047 501C
B23K37/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091252
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】000172868
【氏名又は名称】佐藤鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100190702
【弁理士】
【氏名又は名称】筧田 博章
(72)【発明者】
【氏名】金山 昌輝
(57)【要約】
【課題】
非対称形部材を効率的に製造できるとともに、非対称形部材の運搬における安全性と効率性を高めることができる非対称形部材の製造方法およびこれに用いる治具を提供することを目的とする。
【解決手段】
非対称形部材の製造方法は、2つのベース部材の一方に対して他方を所定の水平な方向において反転させてまたは反転させないで、所定の水平な方向に対して水平に直交する方向において2つのベース部材を並べた状態で、2つのベース部材を一体化するように固定し、完成させる2つの非対称形部材の一方に対して他方が所定の水平な方向において反転した状態となるように、接合部材を各ベース部材に接合して非対称形部材を製造する。
【選択図】
図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのベース部材の一方に対して他方を所定の水平な方向において反転させてまたは反転させないで、前記所定の水平な方向に対して水平に直交する方向において2つの前記ベース部材を並べた状態で、2つの前記ベース部材を一体化するように固定し、
完成させる2つの非対称形部材の一方に対して他方が前記所定の水平な方向において反転した状態となるように、接合部材を各前記ベース部材に接合して前記非対称形部材を製造する非対称形部材の製造方法。
【請求項2】
2つの前記ベース部材の一方に対し他方が前記所定の水平な方向においてずれて固定されており、
2つの前記ベース部材それぞれのずれた区間内において前記接合部材を接合する請求項1に記載の非対称形部材の製造方法。
【請求項3】
固定された2つの前記ベース部材を、回転装置に取り付け、
前記回転装置は、前記所定の水平な方向回りに2つの前記ベース部材を回転させるものであり、
前記接合部材は、溶接により各前記ベース部材に接合され、
溶接個所に応じて2つの前記ベース部材を前記回転装置により回転させる請求項1または2に記載の非対称形部材の製造方法。
【請求項4】
並べた2つのベース部材を固定するための治具であって、
2つの前記ベース部材に対向してあてがわれる一対の固定部と、一対の前記固定部を挟み込ませる挟み込み具と、を備え、
前記固定部から突出し、並べた2つの前記ベース部材の間に介在する突出部を備える治具。
【請求項5】
前記固定部または前記挟み込み具に、玉掛具を取り付け可能な玉掛部が設けられる請求項4に記載の治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非対称形部材の製造方法およびこれに用いられる治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属製の直線状部材の長手方向の端部に、角度をつけて別の金属製の直線状の部材を接合したL型(L字状)等の非対称な形状の部材(以下、非対称形部材とする)が、土木構造物の桁等に用いられる。
【0003】
比較的に大型で重い非対称形部材を別の場所に移動させる場合には、クレーン等の運搬装置が用いられる。このような非対称形部材100を一台のクレーンで吊り上げようとすると、形状が非対称であることにより、
図15に示すように、非対称形部材100が吊り上げ前の姿勢に対して傾いてしまうので、非対称形部材を安全に運搬(移動)することができない。そのため、従来は、複数のクレーンを用いて非対称形部材を傾けないように吊り上げて運搬していた。
【0004】
また、非対称形部材を構成する各部材を溶接で接合する場合には、安全で良質な溶接を行うため、トーチを下向きにして溶接する下向き溶接により行われる。下向き溶接を行うために非対称形部材を回転させてその姿勢を変える場合にも、上記と同様に複数のクレーンにより非対称形部材を吊り上げて回転させていた。なお、特許文献1には、柱材を回転させる回転装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のように非対称形部材の姿勢を傾けないようにして運搬しようとすると、複数の運搬装置と運搬装置の台数に応じた設置スペースが必要となる。また、土木構造物以外に用いられる非対称形部材についても、1台の運搬装置で吊り上げて運搬する場合には、運搬出力の大きい運搬装置や特殊な機構を備える運搬装置を用いる必要ある。これらのように、非対称形部材の運搬にはコストがかかる。
【0007】
本発明は、非対称形部材を効率的に製造できるとともに、非対称形部材の運搬における安全性と効率性を高めることができる非対称形部材の製造方法およびこれに用いる治具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
非対称形部材の製造方法は、2つのベース部材の一方に対して他方を所定の水平な方向において反転させてまたは反転させないで、所定の水平な方向に対して水平に直交する方向において2つのベース部材を並べた状態で、2つのベース部材を一体化するように固定し、完成させる2つの非対称形部材の一方に対して他方が所定の水平な方向において反転した状態となるように、接合部材を各ベース部材に接合して非対称形部材を製造する。
【0009】
また、非対称形部材の製造方法は、2つのベース部材の一方に対し他方が所定の水平な方向においてずれて固定されており、2つのベース部材それぞれのずれた区間内において接合部材を接合するものであってもよい。
【0010】
また、非対称形部材の製造方法は、固定された2つのベース部材を、回転装置に取り付け、回転装置が、所定の水平な方向回りに2つの前記ベース部材を回転させるものであり、接合部材が、溶接により各前記ベース部材に接合され、溶接個所に応じて2つのベース部材を回転装置により回転させるものであってもよい。
【0011】
治具は、並べた2つのベース部材を固定するためのものであって、2つのベース部材に対向してあてがわれる一対の固定部と、一対の固定部を挟み込ませる挟み込み具と、を備え、固定部から突出し、並べた2つの前記ベース部材の間に介在する突出部を備えている。
【0012】
また、治具は、固定部または挟み込み具に、玉掛具を取り付け可能な玉掛部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0013】
非対称形部材の製造方法によると、非対称形部材を効率的に製造できるとともに、非対称形部材の運搬における安全性と効率性を高めることができる。
治具によると、突出部を備えることにより、2つのベース部材を干渉させないで一体的に固定することができるので、品質の良い非対称形部材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】非対称形部材を示す図であって、(A)は平面図、(B)は背面図、(C)は側面図である。
【
図2】2つのベース部材を治具で固定した状態を示す側面図である。
【
図3】2つのベース部材を治具で固定した状態を示す平面図である。
【
図4】
図4のIV-IV線における拡大部分端面図である。
【
図6】
図4のVI-VI線における拡大部分端面図である。
【
図8】2つのベース部材を回転装置に取り付けた状態を示す側面図である。
【
図9】2つのベース部材を回転装置に取り付けた状態を示す平面図である。
【
図10】
図8のX-X線における拡大断面図である。
【
図12】2つの非対称形部材を回転装置により回転した状態を示す治具を省略した背面図である。
【
図13】2つの非対称形部材が完成した状態を示す側面図である。
【
図14】完成した2つの非対称形部材を吊り上げる様子を示す側面図である。
【
図15】非対称形部材を吊り上げる様子を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の非対称形部材の製造方法およびこれに用いられる治具の実施形態について図面を用いて説明する。ここで、非対称形部材1(2)とは、L型の部材やF型の部材等の対称形ではない部材のことをいう。
【0016】
非対称形部材の製造方法は、まず、2つのベース部材10,20の一方に対して他方を所定の水平な方向において反転させてまたは反転させないで、所定の水平な方向に対して水平に直交する方向において2つのベース部材10,20を並べた状態で、2つのベース部材10,20を一体化するように固定する。ベース部材20(10)の反転の有無については、ベース部材10,20が非対称形である場合には、他方のベース部材20(10)を反転し、ベース部材10,20が対称形である場合には、他方のベース部材20(10)を反転しない。
【0017】
次いで、完成させる2つの非対称形部材1,2の一方に対して他方が所定の水平な方向において反転した状態となるように、接合部材30,40を各ベース部材10,20に接合して非対称形部材1,2を製造する。
【0018】
本実施形態において、非対称形部材1(2)は、
図1に示すような、土木構造物の桁等に用いられる鋼製のL型(L字状)の部材である。非対称形部材1(2)は、ベース部材10(20)と接合部材30(40)とを接合することにより製造される。
【0019】
図2~
図4に示すように、各ベース部材10(20)は、ウェブ11(21)と、ウェブ11(21)の長手方向の両端それぞれに接続する2つのフランジ13,13(23,23)を備えた直線的に延びるH形鋼である。各ベース部材10,20の長手方向の一端は、長手方向の外側に向かって下端から上方に傾斜している。そのため、各ベース部材10,20は、前後非対称形となっている。各ベース部材10,20の傾斜している端部側が後述する接合部材30,40が接合される接合部分となる。
【0020】
なお、本実施形態において、ベース部材10(20)の基本姿勢は、フランジ13,13(23,23)の面が水平となる姿勢であるものとする。また、ベース部材10(20)の長手方向を前後方向とし、これに直交する水平な方向を左右方向とし、これらの方向に直交する方向を上下方向とする。ベース部材10(20)の長手方向(前後方向)が、所定の水平な方向に対応する。また、左右方向が、所定の水平な方向に対して水平に直交する方向に対応する。
【0021】
各ベース部材10,20が非対称形であるため、2つのベース部材10,20は、
図2および
図3に示すように、一方に対して他方をベース部材10(20)の長手方向(前後方向)において反転させ、ベース部材10(20)の長手方向に対して水平に直交する方向(左右方向)に並べた状態で一体化するように治具50で固定する。2つのベース部材10,20は、一方に対し他方をベース部材10(20)の長手方向においてずらして固定してもよい。
【0022】
治具50は、並べられた2つのベース部材10,20を一体的に固定するためのものである。本実施形態において、治具50は、
図2および
図3に示すように、第1治具60と、第2治具70とを備えている。
【0023】
図4~
図7に示すように、第1治具60および第2治具70は、それぞれ、一対の固定部61,61,71,71と、一対の固定部61,61,71,71を挟み込ませる挟み込み具63,73とを備えている。
【0024】
各固定部61,71は、直線的に延びている当接部61a,71aと、当接部61a,71aの幅方向における両端から略直角に立ち上がる立ち上がり部61b,61b,71b,71bとを備えており、横断面が略コの字状となっている。当接部61a,71aの底面は、ベース部材10,20のフランジ13,23に面的に接するように、平らになっている。
【0025】
挟み込み具63,73は、両端側に雌ねじが設けられたボルト63a,73aと、ボルト63a,73aの雌ねじに締結可能な2つのナット63b,63b,73b,73bとを備えている。このような、ボルト63a,73aと2つのナット63b,63b,73b,73bの組からなる挟み込み具63,73が、第1治具60および第2治具70のそれぞれに2つ備えられている。第2治具70のナット73bの全部または一部には、ワイヤ等の玉掛具Sを取り付け可能な玉掛部75がナット73bに設けられている。玉掛部75は、玉掛具Sを取り付けられるものであればどのようなものであっても構わないが、本実施形態では、環状の部分を有している。治具50で固定された2つのベース部材10,20および2つの非対称形部材1,2をクレーン等の運搬装置により運搬する場合には、玉掛部75に玉掛具Sを取り付けて運搬する。なお、玉掛部75は、第1治具60の挟み込み具63のナット63bに設けられていてもよい。
【0026】
各固定部61,71の当接部61a,71aには、ボルト63a,73aを通すことが可能な孔であるボルト孔67,77が、当接部61a,71aの長手方向において間隔をあけて2つ設けられている。
【0027】
第1治具60または第2治具70の一対の固定部61,61,71,71は、各固定部61,61,71,71から突出し、並べた2つのベース部材10,20の間に介在する突出部69を備えている。本実施形態では、突出部69は、第1治具60の一対の固定部61,61のそれぞれに設けられている。突出部69は、直方体状のものであって、当接部61aの底面からその底面に直交する方向に突出している。なお、当接部61aの長手方向における突出部69の長さを突出部69の幅というものとする。
【0028】
治具50による2つのベース部材10,20の固定について説明する。まず、クレーン等の運搬装置を用いて2つのベース部材10,20の一方に対して他方をベース部材10(20)の前後方向において反転させ、かつ、左右方向において第1治具60の突出部69の幅と同じ程度の隙間を開けて並べる(治具を無視した
図2および
図3参照)。また、各ベース部材10,20のうち接合部材30,40が接合される部分において2つのベース部材10,20が並ばないように、2つのベース部材10,20の一方に対し他方をベース部材10(20)の長手方向においてずらしておく。各ベース部材10,20のずれた区間内、言い換えれば左右方向から見て2つのベース部材10,20が重複しない区間において、後述する接合部材30,40の接合が行われる。
【0029】
次いで、
図2~
図4に示すように、並べられた2つのベース部材10,20の長手方向(前後方向)の一方側において、第1治具60の一対の固定部61,61それぞれの長手方向を左右方向に平行した状態で、一方の固定部61は2つのベース部の上側のフランジ13,23間の隙間に突出部69を入れ、当接部61aの底面を2つのベース部の上側のフランジ13,23にあてがう。他方の固定部61は2つのベース部の下側のフランジ13,23間の隙間に突出部69を入れ、一方の固定部61に対向するように当接部61aの底面を2つのベース部の下側のフランジ13,23にあてがう。次いで、第1治具60の一対の固定部61,61に設けられている2つのボルト孔67,67それぞれにボルト63aを通し、ボルト63aの両端側それぞれにナット63b,63bを締め込むことにより2つのベース部が、第1治具60の一対の固定部61,61に上下から挟み込まれて固定される。
【0030】
また、
図2、
図3および
図6に示すように、2つのベース部材10,20を固定した第1治具60のそばにおいて、第2治具70の一対の固定部71,71それぞれの長手方向を上下方向に平行にした状態で、一方の固定部71の当接部71aの底面を、一方のベース部材10の上下のフランジ13,23の外側の側端にあてがう。他方の固定部71は、一方の固定部71に対向するように当接部71aの底面を他方のベース部材20の上下のフランジ13,23の外側の側端にあてがう。次いで、第2治具70の一対の固定部71,71に設けられている2つのボルト孔77,77にボルト73aを通し、ボルト73aの両端側それぞれにナット73b,73bを締め込む。これにより、2つのベース部は、第2治具70の一対の固定部71,71に左右から挟み込まれて固定される。並べられた2つのベース部材10,20の長手方向(ベース部材10,20の前後方向)の他方側においても、一方側と同様に第1治具60と第2治具70とにより2つのベース部材10,20を固定する。
【0031】
治具50により固定された2つのベース部材10,20は、第1治具60が突出部69を備えることにより、突出部69の幅分間隔を空けた状態で互いに干渉することなく一体的に固定される。また、突出部69を備えることにより、ベース部材10,20が、
図4の点線で示すような、2つのベース部材10,20が並ぶ方向においてベース部材10,20よりさらに外側に突出するスタッドジベルD等を備える場合であっても、治具50により2つのベース部材10,20を干渉させることなく一体的に固定することができる。突出部69の幅は、ベース部材の形状に応じて適宜設定される。
【0032】
治具50で固定された2つのベース部材10,20は、溶接により接合部材30,40を接合する場合には、回転装置80に取り付ける。回転装置80は、下向きで溶接が行えるように、治具50で固定された2つのベース部材10,20を回転させて2つのベース部材10,20の姿勢を変えるためのものである。接合部材30,40の接合は、ボルト等接合できるものであればどのようなものであっても構わないが、本実施形態では、溶接により行われるものとする。
【0033】
図8および
図9に示すように、本実施形態において、回転装置80は2つ備えられている。各回転装置80は、
図10に示すように、架台81と、回転部83と、駆動部(図示略)と、を備えている。
【0034】
架台81は、回転装置80の各構成が備えられるものである。架台81には、回転部83が所定の水平な方向を軸として、ここでは前後方向を軸として回転可能に設けられている。回転部83は、回転部本体83aと、開閉部83bとにより略環状に構成されている。開閉部83bは、環周方向の一端が、上下方向を軸として回転可能に回転部本体83aの環周方向の一端に取り付けられており、環周方向の他端が回転部本体83aの環周方向の他端に着脱できるようになっている。
図10に示すように、開閉部83bが略真上に位置する状態を回転部83の基本姿勢とする。回転部83の内部は、回転部83を前後方向に貫通し、2つのベース部材10,20が固定される空間である固定空間83cとなっている。固定空間83cの底は平になっている。回転部83が基本姿勢にある状態で、回転部本体83aに対し開閉部83bを回転させることにより、固定空間83cの上方が開口し、回転部83の上方から被回転体(治具50に固定された2つのベース部材10,20)を固定空間83cに搬入することが可能となる。
【0035】
図10に示すように、回転部83が基本姿勢にある状態から見て、回転部83は、上下方向において被回転体を回転部83に固定する上下固定部85と、左右方向において被回転体を回転部83に固定する左右固定部87とを備えている。上下固定部85は、第1操作部85bを工具で回転すると、その回転方向に応じて押さえ部85aが昇降する。この押さえ部85aの昇降により回転部83への被回転体の固定とその解除が行われる。被回転体は、押さえ部85aと固定空間83cの底とにより上下方向から挟み込まれて回転部83に固定される。左右固定部87は、第2操作部87bを工具で回転すると、その回転方向に応じて2つの爪87a,87aが近づいたり離れたりする。このような2つの爪87a,87aの移動により、左右方向における被回転体の回転部83への固定とその解除が行われる。被回転体は、2つの爪87a,87aにより左右方向から挟み込まれて回転部83に固定される。
【0036】
治具50で固定された2つのベース部材10,20の回転装置80への取り付けは、2つの回転装置80,80を前後方向に間隔をあけて設置する。次いで、2つの回転装置80,80の回転部83が基本姿勢にある状態で、各回転部83の開閉部83bを回転して、固定空間83cの上方を開ける。次いで、玉掛部75に玉掛具Sを取り付け、治具50で一体的に固定された2つのベース部材10,20をクレーン等の運搬装置により吊り上げ、ベース部材10(20)の長手方向が回転装置80の前後方向に略平行となるようにして2つのベース部材10,20を各回転装置80の回転部83の上方から固定空間83cに搬入して回転部83に設置する。次いで、各回転装置80の上下固定部85および左右固定部87により2つのベース部材10,20を各回転装置80の回転部83に固定する。最後に各回転装置80の開閉部83bを閉じることにより、2つのベース部材10,20の回転装置80への取り付けが完了する。
【0037】
なお、治具50で固定された2つのベース部材10,20に対し接合部材30,40を溶接ではなくボルト等の溶接以外の手法により接合する場合、回転装置80は不要である。
【0038】
次に、2つのベース部材10,20のそれぞれに、接合部材30,40を接合する。本実施形態において、各接合部材30,40は、
図11に示すように、主接合部材31,41と、リブ33,43と、接合フランジ35,45とにより構成されている。主接合部材31,41は、ベース部材10,20と同様のH鋼である。主接合部材31,41は、その長手方向の一端のうち一方の角側において、ウェブとフランジが斜めに切り欠かれて傾斜している。この傾斜の角度は、ベース部材10,20の一端の傾斜の角度と略同一となっている。リブ33,43は、ベース部材10,20と主接合部材31,41の接合を補強するためのものである。リブ33,43は、鋼製であって、側方から見て略直角三角形の部材と、この部材の斜面に接合されるフランジとにより構成されている。接合フランジ35,45は、鋼製の板状の部材であって、後述する接合されたベース部材10,20と主接合部材31,41の傾斜部分に接合するためのものである。各接合部材30,40は、2つのベース部材10,20それぞれのずれた区間内において接合される。
【0039】
接合部材30,40の各ベース部材10,20への接合については、各主接合部材31,41を、切り欠かれて傾斜している部分がある側の端部を下側にするとともに、その長手方向を上下方向に平行にし、切り欠かれて傾斜している部分とベース部材10,20の一端の傾斜とが略一直線となるように、各ベース部材10,20の上側のフランジ13,23上に載せる。各主接合部材31,41は、溶接により各ベース部材10,20に接合する。次いで、各ベース部材10,20に対して主接合部材31,41が直角となる角にリブ33,43を溶接により接合する。また、各ベース部材10,20と各主接合部材31,41の傾斜している部分に接合フランジ35,45を溶接により接合する。上記各接合部材30,40の接合において、各接合部材30,40は、クレーン等の運搬装置により運搬される。溶接個所に応じて、ベース部材10,20およびこれに接合された接合部材30,40を回転装置80,80により回転して溶接する。ここでは、溶接トーチ等を下向きにして溶接できない接合フランジ35,45とベース部材10,20との溶接部分については、
図12に示すように、溶接部分が下向きに溶接できる位置となるように、ベース部材10,20およびこれに接合された接合部材30,40を回転装置80,80により回転して溶接する。
【0040】
以上により、
図13に示すように、2つの非対称形部材1,2が完成する。完成した2つの非対称形部材1,2は、一方に対して他方が水平な所定の方向(前後方向)において反転した状態となっている。完成した2つの非対称形部材1,2は、回転装置80,80の上下固定部85および左右固定部87による固定を解除し、開閉部83bを回転して固定空間83cの上方を開口させた状態で、玉掛部75にワイヤ等の玉掛具Sを取り付けてクレーン等の一台の運搬装置により吊り上げて運搬(搬出)される。治具50で固定された2つの非対称形部材1,2は、重心がこれらの前後方向の中央に位置するので、
図14に示すように、一台の運搬装置によりほぼ傾くことなく吊り上げ前の姿勢のまま吊り上げることができる。
【0041】
なお、非対称形部材の製造方法は、非対称形部材1(2)の形状がL型に限定されるものではない。また、非対称形部材の製造方法は、2以上の非対称形部材1,2を製造するものであっても構わない。また、非対称形部材の製造方法は、非対称形部材1(2)およびこれを構成する部材が、クレーン等の運搬装置で吊り上げたり、回転させたりする必要がある比較的に大型で重い部材の製造に適しているが、特にこのような部材に限定されるものではない。また、運搬装置はクレーン以外のものであってもよい。
【0042】
非対称形部材の製造方法は、一度に2つの非対称形部材1,2を製造するので、効率よく非対称形部材1,2を製造することができる。また、非対称形部材の製造方法は、完成した2つの非対称形部材1,2の一方に対して他方が所定の水平な方向において反転した状態で2つの非対称形部材1,2が一体的に固定されていることにより、一台の運搬装置によりほぼ傾くことなく吊り上げ前の姿勢のまま吊り上げることができるので、非対称形部材1,2を効率よく安全に運搬することができる。
【0043】
また、非対称形部材の製造方法は、2つのベース部材10,20の一方に対し他方が所定の水平な方向においてずれて固定されており、2つのベース部材10,20それぞれのずれた区間内において接合部材30,40を接合することにより、一方のベース部材10(20)に接合部材30(40)を接合する際、他方のベース部材20(10)が邪魔にならないので、接合作業が行いやすくなるとともに接合作業の時間を短縮することができる。
【0044】
非対称形部材の製造方法は、固定された2つのベース部材10,20を回転装置80に取り付けることにより、接合部材30,40をベース部材10,20に溶接で接合する場合、2つの非対称形部材1,2を回転させて姿勢を変えることにより、常に下向きで溶接を行うことができる。また、2つの非対称形部材1,2を、クレーンで回転させる場合に比べ効率よく回転させることができる。
【0045】
非対称形部材の製造方法に用いる治具50は、固定部61(71)から突出し、並べた2つのベース部材10,20の間に介在する突出部69を備えることにより、並べた2つのベース部材10,20を干渉させることなく一体的に固定することができる。その結果、非対称形部材1,2の品質が良好になる。
【0046】
また、治具50は、玉掛部75を備えることにより、容易に短時間で玉掛部75に玉掛具Sを取り付けることができる。
【0047】
本発明は、上記実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0048】
1,2,100 非対称形部材
10,20 ベース部材
11,21 ウェブ
13,23 フランジ
30,40 接合部材
31,41 主接合部材
33,43 リブ
35,45 接合フランジ
50 治具
60 第1治具
61 固定部
61a 当接部
61b 立ち上がり部
63 挟み込み具
63a ボルト
63b ナット
67 ボルト孔
69 突出部
70 第2治具
71 固定部
71a 当接部
71b 立ち上がり部
73 挟み込み具
73a ボルト
73b ナット
75 玉掛部
77 ボルト孔
80 回転装置
81 架台
83 回転部
83a 回転部本体
83b 開閉部
83c 固定空間
85 上下固定部
85a 押さえ部
85b 第1操作部
87 左右固定部
87a 爪
87b 第2操作部
D スタッドジベル
S 玉掛具S