(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173104
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】一方向回転機構および往復回数依存型開閉機構
(51)【国際特許分類】
B66C 1/34 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B66C1/34 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091256
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390000804
【氏名又は名称】白山工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100138519
【弁理士】
【氏名又は名称】奥谷 雅子
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 茂男
(72)【発明者】
【氏名】木村 直人
【テーマコード(参考)】
3F004
【Fターム(参考)】
3F004AA07
3F004AB14
3F004AF02
(57)【要約】 (修正有)
【課題】半導体部品を用いず、高放射線環境などの極限環境下でも確実に動作し、遠隔操作での玉掛け・玉外し作業が容易な自動着脱フックを提供する。
【解決手段】ワイヤ1と、吊り具2と、周期突起体5と、周期突起体5と同軸に固定されたカム6と、弾性要素7でカム6に圧接される加圧体8と、周期突起体5の運動を運動規制カム9に伝達する回転伝達機構10と、弾性要素11で周期突起体5に圧接される運動規制部材12と、ストッパ13と、往復運動体14と、往復運動体14に固定された爪部材15を備え、往復運動体14が行う往復運動のうち爪部材15が片方向から周期突起体5に接触する場合には、加圧体8がカム6の凸部を通過して隣の凹部に嵌るまでカム6を回転させ、逆方向から爪部材15が周期突起体5に接触する場合には、加圧体8がカムの凸部を通過しないで元の凹部に嵌る姿勢に戻るように構成する往復回数依存型開閉機構。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台に回転自由に軸支され、放射状に突する周期突起体と;
爪部材を有し、直線往復運動をするように配置された、往復運動体と;
弾性力により前記周期突起体を直接または間接的に加圧し,周期突起体の回転を弾性エネルギーの安定平衡点でとどめる加圧体と;
を備え、
前記往復運動体が行う往復運動のうち前記爪部材が片方向から前記周期突起体に接触する場合は、前記周期突起体を隣接する安定平衡点まで回転させ、前記爪部材が逆方向から前記周期突起体に接触する場合は、前記周期突起体を反対方向に一定角度回転させるが、その後周期突起体がもとの安定平衡点に戻るように構成される、一方向回転機構。
【請求項2】
請求項1に記載の前記一方向回転機構において、
前記周期突起体と共に回転し、周囲が周期的な凹凸形状をなすカムと;
を更に備え、
前記往復運動体が行う往復運動体のうち、前記爪部材が片方向から前記周期突起体に接触する場合には、前記加圧体が前記カムの凸部を通過して隣の凹部に嵌るまで前記カムを回転させるが、前記往復運動体の往復運動のうち逆方向から前記爪部材が前記周期突起体に接触する場合には、前記加圧体が前記カムを通過しないで元の凹部に嵌る姿勢に戻るように構成される一方向回転機構。
【請求項3】
請求項1または2に記載の一方向回転機構と;
前記往復運動体の往復運動の最大振幅を越える動きを抑制または非抑制する運動規制機構と;
前記一方向回転機構の運動を前記運動規制機構に伝達する伝達機構と;を備え、
前記一方向回転機構が生成する一方向回転運動を、前記伝達機構を介して運動規制機構に伝達することで、前記往復運動体が往復運動の最大振幅地点を通過するか否かを切り替えるよう構成される往復回数依存型開閉機構。
【請求項4】
前記伝達機構が、前記運動規制機構を兼ねる、請求項3に記載の往復回数異存開閉機構。
【請求項5】
前記伝達機構が2軸間に回転を伝達する回転伝達機構であって;
前記運動規制機構が、
基台と回転自由に軸支される運動規制部材と;
前記運動規制部材に圧接される運動規制カムと;
を備える揺動型カム機構であって;
前記一方向回転機構の回転運動を前記回転伝達機構で前記運動規制カムを回転させ、前記運動規制カムに圧接される前記運動規制部材を揺動させることで、前記往復運動体が往復運動の最大振幅地点を通過するか否かを切り替えるよう構成される請求項3に記載の往復回数依存型開閉機構。
【請求項6】
請求項3の伝達機構が、一方向回転機構と運動規制機構それぞれと回転自在に連結される連結リンクであることを特徴とする請求項2に記載の往復回数依存型開閉機構。
【請求項7】
前記運動規制部材が、基台に回転自由に軸支され、前記ピンを摺動可能に軸支し、前記運動規制加圧体の圧接部に凹凸を有する部材であって;
前記周期突起体と;
前記往復運動体と;
前記爪部材と;
前記運動規制部材と;
弾性力により前記運動規制部材に圧接される運動規制加圧体と;
前記周期突起体の回転軸と平行に前記周期突起体に固定されたピンと;
を備え、
前記往復運動体が行う往復運動のうち前記爪部材が片方向から前記周期突起体に接触する場合には、前記運動抑制加圧体が前記運動規制部材の凸部を通過して前記運動規制部材を揺動させるが、前記往復運動体の往復運動のうち逆方向から前記爪部材が前記周期突起体に接触する場合には、前記運動規制加圧体が前記運動規制部材の凸部を通過しないで元の凹部に嵌る姿勢に戻るように構成される往復回数依存型開閉機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は往復運動体の往復運動を回転部品の一方向の間欠回転運動に変換する一方向回転機構と、該一方向回転機構を備え吊り具との着脱状態を吊り具の往復運動回数に応じて切り替えられる往復回数依存型開閉機構に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力発電所の廃炉作業では、人が立ち入ることができない高放射線環境下でロボット等の作業機械を搬入・搬出する必要がある。原子力発電所内のクレーンを用いた機器の搬入・搬出作業では、クレーンへの玉掛け・玉外し作業を遠隔操作で行う必要がある。遠隔操作で玉掛を行える装置として、吊り具との着脱状態を遠隔操作で切り替えられる自動開閉フックが提案されている。
【0003】
例えば非特許文献1に開示された装置は、フックの開閉をサーボモータで制御し、吊り具との着脱状態を切り替えられる構成としている。特許文献1に開示された発明は、フックに引っかけた荷を吊り上げたときに生じる引張力をラックアンドピニオンで伝達し、フックを閉じる動作を受動的に行える構成としている。特許文献2および3に開示された発明は同引張力を4節リンク機構で伝達しフックを閉じる動作を受動的に行える構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】WO2014/206859
【特許文献2】特開2005-187148
【特許文献3】特開2005-187149
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】“Lifting Hooks For Cranes”、 [online]、 Elebia Autohooks、 SLU、 [令和4年11月30日検索]、インターネット<URL:https://elebia.com/lifting-hooks-for-cranes/>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、非特許文献1に開示された装置の場合、高放射線環境下においてサーボ系を制御するための半導体部品が誤動作または破損する恐れがある。一方、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示された発明の場合、半導体部品を用いないため高放射線下でも確実に動作することが期待される。しかし、遠隔操作でフックに荷を引っかける操作が難しい。
【0007】
そこで、本発明は、荷に取り付けた吊り具との往復運動回数に応じて半導体部品を用いずに機構の状態を切り替えられる一方向回転機構と、前記一方向回転機構によって吊り具との拘束・非拘束状態を切り替えられ、遠隔での玉掛および玉外作業が容易な自動開閉フックの実現を可能とする往復回数依存型開閉機構を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明の第1の様態に係る一方向回転機構は、
基台に回転自在に軸支され、放射状に突する周期突起体と、;
爪部材を有し、直線往復運動をするように配置された、往復運動体と、;
弾性力により周期突起体を直接または間接的に加圧し、周期突起体の回転を弾性エネルギーの安定平衡点でとどめる加圧体と、;を備え、
往復運動体が行う往復運動のうち、爪部材が片方向から周期突起体に接触する場合は、周期突起体を別の安定平衡点まで回転させ、爪部材が逆方向から周期突起体に接触する場合は、周期突起体を反対方向に一定角度回転させるが、その後周期突起体がもとの安定平衡点に戻るように構成される、一方向回転機構である。
【0009】
また、本発明の第1の態様において、一方向回転機構は、
周期突起体と共に回転し、周囲が周期的な凹凸形状をなすカムと、を更にそなえ、
往復運動体が行う往復運動のうち爪部材が片方向から周期突起体に接触する場合には、加圧体がカムの凸部を通過して隣の凹部に嵌るまでカムを回転させるが、往復運動体の往復運動のうち逆方向から爪部材が周期突起体に接触する場合には、加圧体がカムの凸部を通過しないで元の凹部に嵌る姿勢に戻るように構成される一方向回転機構である。
【0010】
また,本発明の第2の様態は、本発明に係る一方向回転機構を備える往復回数依存型開閉機構であって、
上記の一方向回転機構と;
往復運動体の往復運動の最大振幅を越える動きを抑制または非抑制する運動規制機構と;
一方向回転機構の運動を前記運動規制機構に伝達する伝達機構と;を備え、
一方向回転機構が生成する一方向回転運動を、伝達機構を介して運動規制機構に伝達することで、往復運動体が往復運動の最大振幅地点を通過するか否かを切り替えるよう構成される往復回数依存型開閉機構である。
【0011】
本発明の第2の態様の往復回数依存型開閉機構において、伝達機構は前記運動体規制機構を兼ねていてもよい。
【0012】
また、本発明の他の実施様態は,伝達機構が2軸間に回転を伝達する回転伝達機構であって;
運動規制機構が、
基台と回転自由に軸支される運動規制部材と;
前記運動規制部材に圧接される運動規制カムと;
を備える揺動型カム機構であって;
一方向回転機構の回転運動を前記回転伝達機構で前記運動規制カムを回転させ、前記運動規制カムに圧接される前記運動規制部材を揺動させることで、往復運動体が往復運動の最大振幅地点を通過するか否かを切り替えるよう構成される上記記載の往復回数依存型開閉機構である。
【0013】
また、本発明の他の実施様態は、伝達機構が、一方向回転機構と運動規制機構それぞれと回転自在に連結される連結リンクであることを特徴とする上記記載の往復回数依存型開閉機構である。
【0014】
また,本発明の他の実施様態は,前記運動規制部材が、基台に回転自由に軸支され、前記ピンを摺動可能に軸支し、前記運動規制加圧体の圧接部に凹凸を有する部材であって;
前記周期突起体と;
前記往復運動体と;
前記爪部材と;
前記運動規制部材と;
弾性要素により運動規制部材に圧接される運動規制加圧体と;
周期突起体の回転軸と平行に周期突起体に固定されたピンと;を備え、
往復運動体が行う往復運動のうち爪部材が片方向から前記周期突起体に接触する場合には、運動抑制加圧体が運動規制部材の凸部を通過して運動規制部材を揺動させるが、往復運動体の往復運動のうち逆方向から爪部材が周期突起体に接触する場合には、運動規制加圧体が運動規制部材の凸部を通過しないで元の凹部に嵌る姿勢に戻るように構成される往復回数依存型開閉機構である。
【0015】
本発明の一方向回転機構は、周囲に放射状の突起を備え回転するように基台に軸支された周期突起体と、弾性力により直接または間接的に周期突起体の外周に圧接される加圧体と、往復運動体と、往復運動体に固定された爪部材で構成される。本開示において、放射状の突起とは、四方に突起を有する部材のほか、略長方形上の部材であって、往復運動体が接触したときにこれを揺動できるような形状の部材も含む。加圧体は、板ばねやコイルばね、またはそれら弾性体に押された運動部材でもよい。このように構成すると、往復運動体の一方向の移動により、加圧体に直接または間接的に接しており弾性エネルギーの安定平衡点で留められている周期突起体を、爪部材が押し上げて通過する。このときに周期突起体が回転し、加圧体の弾性力によりもとの平衡点、すなわちもとの姿勢に復帰する。その後、往復運動体を逆方向に移動することで、爪部材が周期突起体を逆に押し下げる。このときに周期突起体が前記と逆向きに回転し、加圧体の弾性力により隣接する安定平衡点まで変位してとどまる。この動作を繰り返すと、周期突起体が1方向に間欠回転運動する。
【0016】
本発明の一方向回転機構は、周囲に周期的な凸部をもつカムと、周囲に放射状の突起を備えカムとともに回転する周期突起体と、弾性力によりカムの外周に圧接される加圧体と、往復運動体と、往復運動体に固定された爪部材で構成される。加圧体は、板ばねやコイルばね、またはそれら弾性体に押された運動部材でもよい。このように構成すると、爪部材が周期突起体を押し上げて通過すると、加圧体がカムの凸部を超えないために周期突起体は弾性力でもとの姿勢に復帰するが、その後爪部材で周期突起体を逆に押し下げると、加圧体がカムの凸部を超えて周期突起体がカムの隣の凹部に嵌るように間欠回転運動する。この動作を繰り返すと、周期突起体が1方向に間欠回転運動する。
【0017】
また、本発明の往復回数依存型開閉機構は、ワイヤと吊り具によって吊り下げられ、往復運動体を通る案内ケーブルに沿って移動する往復回数依存型開閉機構であって、前記一方向回転機構と、周期突起体の回転運動を運動規制カムに伝達する回転伝達機構と、弾性要素で運動規制カムに押し付けられ、基台に回転自由で軸支される運動規制部材と運動規制部材の可動域を制限するストッパを備える。このように構成すると、前記一方向回転機構の間欠回転運動が回転伝達機構を介して運動規制カムに伝達され、運動規制カムに押し付けられた運動規制部材が弾性要素の復元力によりストッパに押し付けられ、爪部材が運動規制部材に接触し、往復運動体の片方向の運動が規制される。また、同様の操作を再度行うと、開閉部材が周期カム部材に押されて爪部材と運動規制部材が接触しなくなり、往復運動体の運動規制が解除される。
【0018】
本発明の往復回数依存型開閉機構の他の実施様態は、ワイヤと吊り具によって吊り下げられ、往復運動体を通る案内ケーブルに沿って移動する往復回数依存型開閉機構であって、前記一方向回転機構と、周期突起体の回転軸からオフセットした位置に回転支持される連結リンクと、連結リンクおよび基台にそれぞれ回転自由で軸支される運動規制部材とを備える。また、周期突起体、連結リンク、運動規制部材は、周期突起体を原動節とし、開閉部材を出力節とするてこクランク機構を構成する。このように構成すると、爪部材が周期突起体を押し上げて通過すると、板ばねが周期突起体の凸部を超えられないために周期突起体は板ばねの弾性力でもとの姿勢に復帰するが、その後爪部材で周期突起体を逆に押し下げると、板ばねが周期突起体の凸部を超え、周期突起体が半周だけ回転し、該てこクランク機構により運動規制部材が固定軸に対して反時計回りに回転し、爪部材が運動規制部材に接触し、往復運動体の片方向の運動が規制される。また、同様の操作を再度行うと、運動規制部材が逆向きに回転して爪部材と接触しなくなり、往復運動体の運動規制が解除される。
【0019】
本発明の往復回数依存型開閉機構の他の実施様態は、ワイヤと吊り具によって吊り下げられ、案内ケーブルに沿って移動する往復回数依存型開閉機構であって、周期突起体とカムからなる回転体と、周期突起体に固定されたピンと、基台に回転自由で軸支され、ピンが摺動する長溝を有する運動規制部材と、運動規制部材に弾性力で押し付けられる加圧体と、往復運動体と、往復運動体に固定された爪部材とを備える。このように構成すると、爪部材が周期突起体の突起を押し上げて通過すると、周期突起体は弾性力でもとの姿勢に復帰するが、その後逆向きに周期突起体の突起を押し下げると、周期突起体が半周だけ回転し、運動規制部材がピンに押され、加圧体を押し下げながら固定軸に対して時計まわりに回転し、爪部材が運動規制部材に接触し、往復運動体の片方向の運動が規制される。また、同様の操作を再度行うと、運動規制部材が逆向きに回転して爪部材と接触しなくなり、往復運動体の運動規制が解除される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一方向回転機構によれば、往復運動体との相対的な往復運動を周期突起体の一方向の間欠回転運動に変換することで、電子回路を用いることなく機構の状態を遷移させることができるため、高放射線環境等の極限環境下でも確実に状態の切り替えが可能な機器を提供できる。
本発明の往復回数依存型開閉機構によれば、荷に固定された吊り具との相対的な往復運動により生成される該一方向回転機構の間欠回転運動を適宜変換して運動規制部材に伝達することで、吊り具との着脱状態を往復運動回数に応じて切り替えられるため、高放射線環境下でも確実に動作し、遠隔操作での玉掛け・玉外し作業が容易な自動着脱フックを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態としての一方向回転機構を備える往復回転依存型開閉機構に吊り具(往復運動体)が拘束されていない状態を示す概念図である。
【
図2】
図1の往復回転依存型開閉機構に吊り具(往復運動体)が拘束されるまでの動作遷移図である。
【
図3】板ばねを用いた一方向回転機構とてこクランク機構により、
図1の構成よりも少ない部品数で構成される往復回転依存型開閉機構に吊り具(往復運動体)が拘束されていない状態を示す概念図である。
【
図4】
図3の往復回転依存型開閉機構に吊り具(往復運動体)が拘束されるまでの動作状態遷移図である。
【
図5】板ばねを用いずに、
図1の構成よりも少ない部品数で構成される自動開閉フックに吊り具が拘束された状態を示す概念図である。
【
図6】
図5の往復回転依存型開閉機構に吊り具(往復運動体)が拘束されるまでの動作状態遷移図である。
【
図7】
図1に記載の往復回転依存型開閉機構の一実施態様を示す図である。
【
図8】
図7に記載の往復回転依存型開閉機構を一側面からみた図である。
【
図9】
図7に記載の往復回転依存型開閉機構を他の側面からみた図である。
【
図10】
図3に記載の往復回転依存型開閉機構の一実施態様を示す図である。
【
図11】
図10に記載の往復回転依存型開閉機構を一側面からみた図である。
【
図12】
図10に記載の往復回転依存型開閉機構を他の側面からみた図である。
【
図13】
図5に記載の往復回転依存型開閉機構の一実施態様を示す図である。
【
図14】
図13に記載の往復回転依存型開閉機構を一側面からみた図である。
【
図15】
図13に記載の往復回転依存型開閉機構を他の側面からみた図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、互いに同一または相当する装置には同一符号を付し、重複した説明は省略する。先ず、
図1、
図2を参照して、本発明の一実施の形態としての一方向回転機構および往復回転依存型開閉機構について説明する。
図1は、往復回転依存型開閉機構4に吊り具が拘束されていない状態を示す概念図である。
図2は、往復回転依存型開閉機構4の動作状態遷移図である。
【0023】
往復回転依存型開閉機構4において、吊り具(往復運動体14)の着脱状態を切り替える一方向回転機構は、周期的な凹凸を有するカム6と、放射状に4等配された突起を備えカム6と一緒に回転する周期突起体5と、弾性要素7により周期突起体5に圧接される加圧体8と、円錐状の爪部材15を持つ往復運動体14からなる。カム6の外形は、弾性要素7の復元力により、カム6の回転軸まわりに正弦波特性などの周期的なトルク特性を持つように定められる。
図1に示すカム6の形状は4周期のトルク特性を持つものを表しており、トルク特性の周期の数は周期突起体5の突起の数と一致するように定められる。また、周期突起体5は、
図1の往復運動体14が周期突起体5の突起を上向きに押す際に周期突起体5を45°以下、下向きに押す際に45°以上の角度で回転させるよう配置される。このように構成すると、往復運動体14の爪部材15が周期突起体5の突起を上向きに押して通過すると、周期突起体5は復元力で元の角度に戻るが、逆に下向きに押して通過すると、周期突起体5は90°だけ回転する。この動作を繰り返すと、周期突起体5は一定の方向に間欠回転運動する。
【0024】
往復回転依存型開閉機構4は、前記一方向回転機構と、回転伝達機構10と、運動規制カム9と、運動規制部材12からなる。周期突起体5の間欠回転運動は、回転伝達機構10を介して、運動規制カム9に伝達される。
図1の回転伝達機構10はベルト伝達機構を表しているが、ワイヤ伝達機構、チェーン伝達機構、歯車伝達機構でもよい。
図1に示す状態では、運動規制部材12が運動規制カム9に押されて、爪部材15と干渉しない状態となっているが、周期突起体5の間欠回転動作により運動規制カム9が90°回転すると、運動規制部材12は弾性要素11の復元力によりストッパ13と干渉するまで回転し、運動規制部材12の先端が爪部材15に干渉するようになる。このようにすると、往復運動体14は往復回転依存型開閉機構4から引き抜けなくなり、
図2のD図に示す拘束状態となる。この状態から往復運動体を1往復だけ長手方向に並進させ、該一方向回転機構を動作させると、往復回転依存型開閉機構4は
図1に示す非拘束状態となり、往復運動体14を往復回転依存型開閉機構4から引き抜くことができる。
【0025】
図1~6に示す往復運動体14の下端は、吊り上げ対象物に固定される。往復運動体14は中空構造になっており、内部に案内ケーブル3が通る。また、案内ケーブルは往復回転依存型開閉機構の内部を通る。例えば、吊り上げ対象物が有線機器の場合、電源・信号線を案内ケーブルとして用いることもできる。往復回転依存型開閉機構は吊り具2およびワイヤ1を介してクレーンに取り付けられており、クレーンで往復回転依存型開閉機構を吊り上げ対象物まで降ろしていくと、往復回転依存型開閉機構は案内ケーブル3に沿って吊り上げ対象物まで下りていき、往復運動体14が往復回転依存型開閉機構に挿入される。すなわち、クレーンと吊り上げ対象物の位置決め精度が悪くとも、吊り上げ対象物の把持が容易となる。往復回転依存型開閉機構を降ろしたあと、クレーンを引き上げると、該一方向回転機構が作動して、往復運動体14が拘束される。クレーンで吊り上げた吊り上げ対象物を再び地面に下ろした後、往復回転依存型開閉機構をクレーンで引き上げると、再び一方向回転機構が作動し、往復運動体14の拘束状態が解除され、往復運動体14 が往復回転依存型開閉機構から外れる。このようにして、遠隔での玉掛作業を容易に行うことができる。
【0026】
図3には板ばねを用いた一方向回転機構とてこクランク機構で構成される往復回転依存型開閉機構30を示す。往復回転依存型開閉機構30は、周期突起体31およびカム36からなる回転体と、周期突起体31に圧接された板ばね32と円錐状の爪部材15を持つ往復運動体14からなる一方向回転機構を備える。周期突起体31は、
図3の往復運動体14が周期突起体31の突起を上向きに押す際に周期突起体31を90°以下、下向きに押す際に90°以上の角度回転させるよう配置される。このように構成すると、往復運動体14の爪部材15が周期突起体31の突起を上向きに押して通過すると、周期突起体31は復元力で元の角度に戻るが、逆向きに押して通過すると、周期突起体31は180°だけ回転する。この動作を繰り返すと、周期突起体5は一定の方向に間欠回転運動する。このように、板ばねを直接周期突起体に押し付ける構成にすることで、
図1に示す一方向回転機構よりも部品数を減らすことができる。
【0027】
自動開閉フック30において、周期突起体31の間欠回転運動は、周期突起体31と、連結リンク33と、運動規制部材34からなるてこクランク機構により、運動規制部材34の揺動運動に変換される。
図3に示す状態では、運動規制部材34が爪部材15と干渉しない状態となっているが、周期突起体31が180°回転すると、運動規制部材34は爪部材15の方向に運動し、爪部材15と干渉するようになる。このようにすると、往復運動体14は往復回転依存型開閉機構30から引き抜けなくなり、
図4のD図に示す拘束状態となる。この状態から往復運動体を1往復だけ動かし、該一方向回転機構を動作させると、往復回転依存型開閉機構30は
図3の非拘束状態となり、往復運動体14を自動開閉フック30から引き抜くことができる。往復回転依存型開閉機構30は、往復回転依存型開閉機構4と異なり、往復運動体14および爪部材15に下向きに生じる荷重をてこクランク機構のヒンジで受ける構造であるため、ペイロードが小さくなると考えられるが、
図3に示すように、拘束状態時に開閉部材35と接する支持部材35を設ければ、てこクランク機構に生じる負荷荷重を軽減でき、ペイロードを向上させることができる。
【0028】
図5には板ばねを用いずに、
図1の構成よりも少ない部品数で構成される往復回転依存型開閉機構50を示す。往復回転依存型開閉機構50は、周期突起体51と、周期突起体51の回転軸からオフセットした位置にピン52と、往復回転依存型開閉機構50の土台に回転支持され、ピン52が摺動する長溝を有する運動規制部材53と、運動規制部材53に弾性要素55で圧接される加圧体54とを備える。
図5に示す弾性要素55は圧縮コイルばねを用いる場合を示しているが、加圧体54の固定軸まわりの復元力を生成するのに引張コイルばねやねじりコイルばねを用いても良い。周期突起体51は、
図5の往復運動体14が周期突起体51の突起を上向きに押す際に周期突起体51を90°以下、下向きに押す際に90°以上の角度回転させるよう配置される。また、加圧体54の凸部形状および配置は、運動規制部材53の可動域の中点付近において弾性要素55に蓄えられるポテンシャルエネルギーが最大になるように定められる。このように構成すると、往復運動体14の爪部材15が周期突起体51の突起を上向きに押して通過すると、周期突起体51は弾性要素55の復元力で元の角度に戻るが、逆向きに押して通過すると、周期突起体51は180°だけ回転する。
図5に示す状態から周期突起体51が180°回転すると、運動規制部材53はピン52に押されて固定軸に対して反時計まわりに回転し、運動規制部材53と爪部材15が干渉するようになる。このようにすると、往復運動体14は自動開閉フック50から引き抜けなくなり、
図6のD図に示す拘束状態となる。この状態から往復運動体14を長手方向に1往復だけ並進運動させ、周期突起体51がさらに180°回転すると、
図5の非拘束状態となり、往復運動体14を自動開閉フック50から引き抜くことができる。
図3に示す構成では、周期突起体の復元力を生成するのに板ばねを用いていたため、復元力特性の調整が難しいが、
図5の構成では線形ばねを用いるため、周期突起体の復元力特性の調整が比較的容易である。
【符号の説明】
【0029】
1 ワイヤ
2 吊り具
3 案内ケーブル
4、30、50 往復回数依存型開閉機構
5、31、51 周期突起体
6 カム
7、11、55 弾性要素
8、54 加圧体
9 運動規制カム
10 回転伝達機構
12、34、53 運動規制部材
13 ストッパ
14 往復運動体
15 爪部材
32 板ばね
33 連結リンク
35 支持部材
52 ピン