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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173105
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】磁心及びコイル装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 30/10 20060101AFI20241205BHJP
   H01F 27/24 20060101ALI20241205BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20241205BHJP
   H01F 27/30 20060101ALI20241205BHJP
   H01F 27/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01F30/10 A
H01F30/10 S
H01F30/10 T
H01F27/24 E
H01F17/04 F
H01F27/30 101A
H01F27/08 101
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091257
(22)【出願日】2023-06-01
(71)【出願人】
【識別番号】390005223
【氏名又は名称】株式会社タムラ製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100078880
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 修平
(72)【発明者】
【氏名】宮下 貴幸
(72)【発明者】
【氏名】石津 光啓
【テーマコード(参考)】
5E070
【Fターム(参考)】
5E070AA11
5E070AB01
5E070BA06
5E070BA08
5E070DA18
5E070DB06
(57)【要約】
【課題】放熱性が良好であり、尚且つ、小型化・軽量化が可能なコイル装置を提供する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係る磁心は、第1のコアを備える。第1のコアは、第1の中脚と、第1の中脚を囲む環状部と、第1の中脚と環状部を一端部において連結する第1のヨークと、を有する。第1の中脚の端面と環状部の端面が同一平面上に形成されている。第1の中脚と環状部との間に、コイルを収容可能な環状の凹部が形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコアを備え、
前記第1のコアが、
第1の中脚と、
前記第1の中脚を囲む環状部と、
前記第1の中脚と前記環状部を一端部において連結する第1のヨークと、を有し、
前記第1の中脚の端面と前記環状部の端面が同一平面上に形成され、
前記第1の中脚と前記環状部との間に、コイルを収容可能な環状の凹部が形成された、
磁心。
【請求項2】
前記凹部が、前記第1の中脚、前記環状部及び前記第1のヨークによって囲まれて、液状の充填材を貯留可能に形成された、
請求項1に記載の磁心。
【請求項3】
前記第1のコアが、
一対の第1の側脚と、
前記一対の第1の側脚と前記第1のヨークとを連結する一対の第3のヨークと、を有し、
前記一対の第1の側脚と前記一対の第3のヨークが連結して前記環状部が形成された、
請求項1に記載の磁心。
【請求項4】
前記第3のヨークに、固定用のボルトが通される、前記第1の中脚と平行に延びた穴又は溝が形成された、
請求項3に記載の磁心。
【請求項5】
前記第1のコアが、主部と一対の副部から組み立てられ、
前記主部が、
前記第1の中脚と、
前記一対の第1の側脚と、
前記第1のヨークと、を有し、
前記副部が、
前記第3のヨークを有する、
請求項3に記載の磁心。
【請求項6】
第2のコアを備え、
前記第2のコアが、
第2の中脚を有し、
前記第2の中脚の周囲の少なくとも一方向において、前記第2のコアの一部によって囲まれていない、該第2の中脚よりも幅の広い領域が形成された、
請求項1に記載の磁心。
【請求項7】
前記第2のコアが、
前記第2の中脚を間に挟んで向かい合う一対の第2の側脚と、
前記第2の中脚と前記一対の第2の側脚とを一端部において連結する第2のヨークと、を有する、
請求項6に記載の磁心。
【請求項8】
コイル装置であって、
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の磁心と、
前記凹部に収容され、前記第1の中脚が通された前記コイルと、
前記第1のコアの前記凹部に充填された充填材と、
前記コイル装置を取付面に取り付ける取付手段と、
を備え、
前記第1のコアの、前記凹部が形成された面を除く一面に、平坦な放熱面が形成され、
前記取付手段が、前記放熱面を前記取付面に向けて押し当てるように前記コイル装置を取り付け可能に構成された、
コイル装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁心及びコイル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
大容量のコイル装置は、使用中の発熱量が比較的に多いため、安定した特性を得るには、熱を効率的に外部に排出する手段が必要になる。特許文献1には、そのような手段を備えたコイル装置の一例が記載されている。
【0003】
特許文献1には、アルミニウム等の熱伝導率が高い材料が使用されたケースに巻線(以下「コイル」という。)及び磁心(以下「コア」という。)を収容し、ケース内をシリコン樹脂等の充填剤で充填したトランスが記載されている。ケースの外部には冷却フィン等の冷却装置が設けられ、トランスの素子部(コイル及びコア)で発生する熱は、充填剤及びケースを介して、効率的に外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-153293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のトランスは、コアを含む素子部全体をケースに収容する構造であるため、小型化・軽量化が難しい。
【0006】
本発明は、上記の事情を鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、放熱性が良好であり、且つ、小型化・軽量化が可能なコイル装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係る磁心は、第1のコアを備え、第1のコアが、第1の中脚と、第1の中脚を囲む環状部と、第1の中脚と環状部を一端部において連結する第1のヨークと、を有し、第1の中脚の端面と環状部の端面が同一平面上に形成され、第1の中脚と環状部との間に、コイルを収容可能な環状の凹部が形成されたものである。
【0008】
上記の磁心において、凹部が、第1の中脚、環状部及び第1のヨークによって囲まれて、液状の充填材を貯留可能に形成された構成としてもよい。
【0009】
このような構成の磁心をコイル装置に使用し、凹部に充填材を充填させることにより、コイルで発生した熱を速やかに第1のコアを介して放出させることが可能になる。そのため、磁心を含めたコイル装置の素子部全体を放熱ケースに収容する必要がなくなり、良好な放熱性を確保しながら、コイル装置を小型化・軽量化することが可能になる。
【0010】
上記の磁心において、第1のコアが、一対の第1の側脚と、一対の第1の側脚と第1のヨークとを連結する一対の第3のヨークと、を有し、一対の第1の側脚と一対の第3のヨークが連結して環状部が形成された構成としてもよい。
【0011】
上記の磁心において、第3のヨークに、固定用のボルトが通される、第1の中脚と平行に延びた穴又は溝が形成された構成としてもよい。
【0012】
この構成によれば、取付金具を使用せずに磁心を取り付けることが可能になり、コイル装置の小型化・軽量化を可能にする。
【0013】
上記の磁心において、第1のコアが、主部と一対の副部から組み立てられ、主部が、 第1の中脚と、一対の第1の側脚と、第1のヨークと、を有し、副部が、第3のヨークを有する構成としてもよい。
【0014】
この構成によれば、磁心の構成部材の大きさを同容量のE形コアと同程度まで小さくすることができるため、E形コアと同じプレス装置を使用して形成することが可能になる。また、磁心の成型に使用する金型を小さくすることが可能になる。
【0015】
上記の磁心において、第2のコアを備え、第2のコアが、第2の中脚を有し、第2の中脚の周囲の少なくとも一方向において、第2のコアの一部によって囲まれていない、該第2の中脚よりも幅の広い領域が形成された構成としてもよい。
【0016】
この構成によれば、切削加工等により第2の中脚の長さを調整することによってインダクタンス値を調整することが可能になる。
【0017】
上記の磁心において、第2のコアが、第2の中脚を間に挟んで向かい合う一対の第2の側脚と、第2の中脚と一対の第2の側脚とを一端部において連結する第2のヨークと、を有する構成としてもよい。
【0018】
また、本発明の一実施形態によれば、上記のいずれかの磁心と、凹部に収容され、第1の中脚が通されたコイルと、第1のコアの凹部に充填された充填材と、コイル装置を取付面に取り付ける取付手段と、を備え、第1のコアの、凹部が形成された面を除く一面に、平坦な放熱面が形成され、取付手段が、放熱面を取付面に向けて押し当てるようにコイル装置を取り付け可能に構成された、コイル装置が提供される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一実施形態によれば、放熱性が良好であり、且つ、小型化・軽量化が可能なコイル装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の第1の実施形態に係るスイッチングトランスの外観図である。
図2】本発明の第1の実施形態に係るスイッチングトランスの分解図である。
図3】コアの平面図である。
図4】第2のコア(蓋形コア)の側面図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係る第1のコア(箱形コア)の斜視図である。
図6】本発明の第3の実施形態に係るコアの分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下の説明において、同一の又は対応する事項には、同一の又は対応する符号を付して、重複する説明を省略する。
【0022】
<第1の実施形態>
図1及び図2は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係るスイッチングトランス1の外観図及び分解図である。スイッチングトランス1は、例えば電気自動車用の急速充電装置等に使用される大容量のコイル装置である。
【0023】
以下の説明において、図1における右下から左上に向かう方向をX方向、右上から左下へ向かう方向をY方向、下から上へ向かう方向をZ方向と定義する。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに直交する方向である。なお、スイッチングトランス1は、X方向、Y方向、Z方向及びそれらの中間の方向のいずれの方向を鉛直に向けた状態で使用してもよい。また、以下の説明において、説明の便宜上、X方向を長さ方向又は前後方向、Y方向を幅方向又は左右方向、Z方向を高さ方向又は上下方向と呼ぶことがある。
【0024】
スイッチングトランス1は、本体1aと、本体1aを例えばヒートシンクや冷却装置の冷却面に取り付けるための取付金具7(取付手段)を備えている。また、本体1aは、コア2及びコイル部4を備える。
【0025】
図2に示されるように、コイル部4は、一次側のコイル40と、二次側のコイル50と、コイル40及び50が巻き付けられるボビン60を備える。コイル40、50は、エナメル等の絶縁被覆が施された導線を螺旋状に巻いたものである。コイル40、50の巻線部41、51の両端からは、それぞれ一対のリード42、52が引き出され、各リード42、52の先端部には圧着端子43、53が取り付けられる。なお、コイル40、50及びリード42、52の許容電流は5A以上である。
【0026】
コイル40及びコイル50は、ボビン60に巻き付けられて、ボビン60と共にコア2の中空部(後述するコア20の収容部20a)に収容される。
【0027】
ボビン60は、コイル40、50とコア2との間及びコイル40、50間の十分な電気絶縁を確保するために、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ウレタン樹脂、BMC(Bulk Molding Compound)、PPS(Polyphenylene Sulfide)、PBT(Polybutylene Terephthalate)等の電気絶縁性を有する材料から形成される。
【0028】
ボビン60は、Z方向に延びる円筒状の胴部61と、胴部61の外周面から垂直に突出した円環板状の3つの鍔部62A、62B、62Cを含む鍔部62と、鍔部62(より具体的には、鍔部62A及び62B)のY方向両端部に設けられた一対のリード引出部63を有している。
【0029】
胴部61のZ方向における一端部(図2における上端部)から鍔部62Aが、中央部から鍔部62Bが、他端部(図2における下端部)から鍔部62Cが、それぞれ突出する。鍔部62Aと鍔部62Bの間にコイル50が収容され、鍔部62Bと鍔部62Cの間にコイル40が収容される。
【0030】
リード引出部63は、鍔部62Aに設けられたリード引出部63Aと、鍔部62Bに設けられたリード引出部63Bを含む。各リード引出部63A、63Bに、Y方向において外側から内側へ延びる一つ以上の溝64が形成されている。各リード42、52は、溝64に通されて、ボビン60の外部へ引き出される。
【0031】
本実施形態のコア2は、フェライト磁心であり、コイル部4が収容される凹部である収容部20aが形成された箱形磁心であるコア20(第1のコア)と、PQ形磁心であるコア30(第2のコア)を含む。
【0032】
コア20は、Z方向に延びる円柱状の中脚21(第1の中脚)と、中脚21を間に挟んでX方向に向かい合う一対の側脚22(第1の側脚)と、中脚21及び一対の側脚22をZ方向の一端部(図2における下端部)において連結する第1のヨーク23と、一対の側脚22と第1のヨーク23をY方向の一端部又は他端部において連結する一対の第3のヨーク24を有する。なお、一対の側脚22と一対の第3のヨーク24により、中脚21を囲む環状部が形成される。また、コア20の中脚21と一対の側脚22と第1のヨーク23からなる略E字形の部分は、PQ形磁心(又は、ETD形磁心)と同じ形状を有している。すなわち、コア20は、PQ形磁心(又は、ETD形磁心)のY方向両端の開口を一対の第3のヨーク24で塞いだ形状となっている。中脚21の周囲には、一対の側脚22と、第1のヨーク23と、一対の第3のヨーク24により3方向が囲まれた環状の中空部(言い換えれば、コア20の上面に形成された環状の凹部)である収容部20aが形成されている。また、第3のヨーク24を設けて、コイル部4を囲む環状部を形成することにより、コイル40、50が発生する電磁ノイズが環状部によって遮蔽され、外部への電磁ノイズの放出が低減される。
【0033】
コア30は、中脚31(第2の中脚)と、中脚31を間に挟んでX方向に向かい合う一対の側脚32と、中脚31及び一対の側脚32をZ方向の一端部(図2における上端部)において連結するヨーク33(第2のヨーク)を有する。中脚31はコア20の中脚21と同じ断面形状を有し、側脚32はコア20の側脚22と同じ断面形状を有している。ヨーク33のY方向両端部には、略V字形の切欠部33aが形成されている。
【0034】
コア20とコア30は、中脚21と中脚31の端面同士及び一対の側脚22と一対の側脚32の端面同士が突き合わされて、コア2を形成する。
【0035】
図3は、コア2の平面図である。本実施形態において、コア30の長さ(X方向の大きさ)は、コア20の長さと同じである。また、コア30の幅(Y方向の大きさ)は、コア20の側脚22の幅と同じである(すなわち、収容部20aの幅よりも狭い)。そのため、コア20とコア30を組み合わせたコア2において、収容部20aはコア30によっては完全に塞がれず、収容部20aの一部(図3に示される露出部20b)が露出する。
【0036】
収容部20aには、コイル部4が収容される。収容部20aにコイル部4が収容された状態でコア2を組み立てると、リード引出部63Aが、露出部20bを塞ぐように、コア30のY方向両側に隣接して配置される。そして、この露出部20b(より具体的には、リード引出部63の溝64)を通って、リード42、52がコア2の外部に引き出される。
【0037】
コア30の収容部20aは、コイル部4が収容された後、熱伝導性を有する充填材で充填される。本実施形態では、例えば1W/m・K以上(より望ましくは2W/m・K以上)の熱伝導率を有するシリコン樹脂が充填材として使用される。これにより、コイル40、50で発生した熱が速やかにコア30に伝達し、取付金具7を介して、ヒートシンクや冷却装置に放出される。
【0038】
本実施形態のコア30は、収容部20aが形成された容器状となっているため、充填材を貯留するケースの機能を兼ね備える。そのため、スイッチングトランス1の本体1a(コア2及びコイル部4)全体を収容する大きなケースを別途設ける必要が無い。従って、部品点数及び組立工数の削減が可能になると共に、小型化・軽量化が可能になる。
【0039】
取付金具7は、例えば銅合金(例えば黄銅)等の熱伝導率の高い金属板からプレス加工等により形成された板金部品であり、本体金具70及び押さえ金具80の2つの部品から構成される。
【0040】
本体金具70は、底板部71と、底板部71のX方向両端部から上方へ垂直に延びる一対の第1の側板部72と、底板部71のY方向両側の縁部から上方へ垂直に延びる一対の第2の側板部74と、第1の側板部72の先端部からX方向内側に突出する二対の爪73を有する。また、底板部71の四隅にはY方向に延びる脚部75が形成され、脚部75には通し穴76が形成されている。
【0041】
一対の第1の側板部72は、コア2の長さ(X方向の大きさ)と略同じ間隔を空けて、互いに平行に形成されている。一対の第2の側板部74は、コア20の幅(Y方向の大きさ)と略同じ間隔を空けて、互いに平行に形成されている。また、第1の側板部72の高さ(すなわち、底板部71と爪73との間隔)は、コア2の高さと略同じ間隔となるように形成されている。
【0042】
押さえ金具80は、天板部81と、天板部81の四隅から下方へ垂直に延びる二対の側板部82を有する。Y軸方向に向かい合う側板部82の各対は、コア30の幅(Y方向の大きさ)と略同じ間隔を空けて形成されている。天板部81は、Y方向両側の中央部に略V字形の切欠部81aが形成されていて、コア30の上面と略同一形状に形成されている。
【0043】
スイッチングトランス1の本体1aを、本体金具70の一対の第1の側板部72及び一対の第2の側板部74の間に差し入れて、底板部71の上に載置し、スイッチングトランス1の本体1aの上に押さえ金具80を載せて(このとき、二対の側板部82の間にコア30が挟持され)、二対の爪73を内側に折り曲げることにより、スイッチングトランス1の本体1aに取付金具7が装着される。
【0044】
スイッチングトランス1は、本体金具70の通し穴76に通されるボルトによってヒートシンクや冷却装置に取り付けられる。このとき、本体金具70の底板部71がヒートシンクや冷却装置の冷却面と接触し、スイッチングトランス1の本体1aで発生した熱は底板部71を介して冷却面に伝わる。
【0045】
次に、スイッチングトランス1を組み立てる手順を説明する。
最初に、コイル部4が組み立てられる。まず、ボビン60にコイル40、50が巻き付けられ、リード42、52がリード引出部63の溝64に通され、上(胴部61と反対側)へ引き出される。なお、リード42、52間の絶縁を確保するために、各溝64に通されるリード42、52の本数は1本のみに限定した方がよい。リード42、52間の絶縁を確保するために、各コイル40、50の一対のリード42、52のうち、一方のリード42、52は一対のリード引出部63の一方の溝64に通し、他方のリード42、52は他方のリード引出部63の溝64に通した方がよい。
【0046】
次に、コア20の収容部20aにコイル部4を収容し、収容部20aの隙間に充填材を流し込み、充填材を硬化(又は非流動化)させる。
【0047】
次に、コア20にコア30を組み合わせて、本体1aが完成する。このとき、コア30の一対の切欠部33aにボビン60の一対のリード引出部63Aが嵌入する。言い換えれば、一対のリード引出部63Aの間にコア30が嵌め込まれる。また、このとき、コア20の一対の側脚22の端面22aとコア30の一対の側脚32の端面32aが付き合わされる。側脚22の端面22aと側脚32の端面32aとを接着してもよい。
【0048】
最後に本体1aに取付金具7が取り付けられる。この工程では、まず、本体金具70の一対の第1の側板部72及び一対の第2の側板部74の間に本体1a(具体的には、コア20)が差し込まれ、本体金具70の底板部71の上に本体1aが載置される。次いで、底板部71にコア20の底面を密着させた状態で爪73が内側に折り曲げられると、底板部71と4つの爪73との間でコア2が締め付けられて、これにより取付金具7が本体1aに固定され、スイッチングトランス1が完成する。
【0049】
コア20の中脚21の端面21aとコア30の中脚31の端面31aと間には磁気ギャップが形成される。コア2に所定のインダクタンス値を与えるために、中脚21の端面21a又は中脚31の端面31aを削る等して、磁気ギャップのギャップ長さを精密に調整する必要がある。
【0050】
上述したように、コア20の収容部20aには充填材が充填される。本体1aの放熱性を高めるたに、収容部20aの上限近くまで充填材で満たして、空気中に露出するコア20の面積をなるべく小さくすることが望ましい。また、コア20の端面(端面21a、22a、第3のヨーク24の端面24a)に充填材が付着すると、磁気ギャップの調整が難しくなり、充填材の熱膨張によって磁気ギャップが変動して、インダクタンス値が不安定になる場合もある。そのため、本実施形態のコア20では、コア20の端面21a、22a、24aが、Z方向と垂直な同一平面上に形成されている。従って、コア20の中脚21の長さを変えることは好ましくない。
【0051】
また、中脚21の周囲は、環状に連結した各一対の側脚22及び第1のヨーク23によって囲まれているため、中脚21の端面21aのみに対して切削加工や研削加工を施すことは難しい。
【0052】
図4は、コア30をY方向から見た側面図である。図4において、一対の側脚32で挟まれた領域Rには、中脚31とヨーク33のみが存在する。領域Rの幅Wは、エンドミル等の端面31aの加工に使用される工具を通すのに十分な大きさである。また、中脚31の先端部はヨーク33から突出しているため、ヨーク33は中脚31の端面31aの加工に干渉することがない。すなわち、領域R内には端面31aの加工の妨げとなる構造が存在しないため、Y方向から領域R内に工具を導入することにより、端面31aに対する切削加工や研削加工を施すことが可能になっている。すなわち、本実施形態のコア2は、コア30にPQ形磁心を使用することにより、コア30の中脚31の端面31aに対して切削加工や研削加工を施してインダクタンス値を調整することができるようになっている。
【0053】
なお、コア30の形状は、PQ形の他、例えばE形、ETD形、ER形、EL形、EFD形、EP形、RM形、ポット形等、側脚の間に工具が通る幅(少なくとも中脚31よりも広い幅)の隙間が少なくとも1箇所形成された形状であることが好ましい。言い換えれば、中脚31の周囲の少なくとも一方向において、コア30の一部によって囲まれていない、中脚31よりも幅の広い領域(すなわち、工具が通る幅の領域)が形成されたものであることが好ましい。このような形状のコア30を使用すると、切削加工や研削加工により中脚31の長さを調整することによる、インダクタンス値の調整が容易になる。なお、コア30は、例えば単なる平板やブロック形状等、中脚31や側脚32を有しない形状であってもよい。
【0054】
<第2の実施形態>
図5は、本発明の第2の実施形態に係るスイッチングトランス1Aのコア20Aの斜視図である。なお、第2の実施形態のスイッチングトランス1Aは、コア20A(コア2A)の形状のみが第1の実施形態のスイッチングトランス1と相違する。
【0055】
コア20Aの四隅には、Z方向に貫通する(すなわち、中脚21と平行に延びる)、断面がU字形の溝25(取付手段)が形成されている。なお、コア20Aは、溝25が形成されている点のみで第1の実施形態のコア20と相違する。溝25にはボルトが通される。このボルトにより、例えばヒートシンクや冷却装置の冷却面にコア20A(スイッチングトランス1A)を取り付けることができる。従って、本実施形態のスイッチングトランス1Aは、第1の実施形態の取付金具7を使用せずにヒートシンク等に取り付けることが可能であり、より小型化・軽量化が可能となっている。なお、溝25が形成された第3のヨーク24の上にはコア30が載置されないため(図3参照)、溝25に通したボルトがコア30と干渉することはない。また、一般的なボルトの頭の高さは、コア30の厚さよりも小さいため、溝25にボルトを通すことによりスイッチングトランス1Aの高さが大きくなることもない。
【0056】
溝25に替えてボルトが通される貫通穴をコア20Aに設けても良い。また、溝25又は貫通穴の内周に補強用のカラー(円筒状の金属部材)を挿入し、カラーの中空部にボルトを通してもよい。なお、コア20Aがフェライト磁心である場合は、圧縮強度が強いため、カラーは不要であるが、圧粉磁心の場合は、カラーによる補強が必要となる。
【0057】
<第3の実施形態>
図6は、本発明の第3の実施形態に係るスイッチングトランス1Bのコア2Bの分解図である。なお、第3の実施形態のスイッチングトランス1Aは、コア2B(より具体的には、コア20B)の形状のみが第1の実施形態のスイッチングトランス1と相違する。
【0058】
本実施形態のコア20Bは、第1の実施形態のコア20をY方向に垂直な平面で切断して3つの部材(主部20B1と一対の副部20B2)に分割したものである。主部20B1は、ETD形磁心であり、中脚21と、中脚21を間に挟んでX方向に向かい合う一対の側脚22と、中脚21及び一対の側脚22を下端部において連結する第1のヨーク23を有する。副部20B2は、第3のヨーク24から構成される。すなわち、本実施形態のコア20Bは、第1の実施形態のコア20から2つの第3のヨーク24を分離したものということもできる。
【0059】
主部20B1及び2つの副部20B2は、組み合わされて、例えばエポキシ系接着剤等により接合され、コア20Bが形成される。主部20B1及び2つの副部20B2の間に形成される接着層により、充填材の熱膨張によりコア20Bに加わる応力が緩和され、コア20Bにクラックが発生しにくくなる。なお、接合には別の種類の接着剤を使用してもよい。また、各種溶接、ろう付け、ボルト接合等の別の方法でコア20Bを構成する各部材を接合してもよい。
【0060】
フェライト磁心は、粉末原料を成型(プレス成形)した後に焼結することによって製造される。第1の実施形態の箱形のコア20は、一般的なE形磁心やETD形磁心よりも断面積が大きいため、成型により大きなプレス荷重を要し、より大型のプレス成形機が必要となる。また、成型に必要な金型のサイズも大きく、高価なものとなる。
【0061】
本実施形態のコア20Bは、一般的なETD形磁心である主部20B1と、それと同程度以下の大きさの2つの副部20B2を組み合わせて形成される。そのため、コア20Bを構成する各部材は、一般的なETD形磁心の成型に使用されるプレス成形機を使用して成型することができる。また、第1の実施形態のコア20よりも小さな金型で成型できるため、金型の製作コストの削減や製作期間の短縮が可能となる。
【0062】
本実施形態の主部20B1と2つの副部20B2は同じ材質であるが、異なる材質としてもよい。また、副部20B2の材質を樹脂等の非磁性材料としてもよい。なお、主部20B1と2つの副部20B2を異なる材質にした場合(特に、副部20B2に非磁性材料を使用した場合)、磁束の漏れが多くなる。主部20B1と2つの副部20B2は、同じ材質にするか、なるべく透磁率が近い材質にすることが望ましい。
【0063】
副部20B2に第2実施形態の溝25を設けても良い。
【0064】
なお、上記のPQ形磁心、E形磁心、ETD形磁心、ER形磁心、EL形磁心、EFD形磁心、EP形磁心、RM形磁心、ポット形磁心は、日本産業規格 JIS C 2560-1:2014に記載の磁心の形状である。
【0065】
以上が本発明の実施形態の説明であるが、本発明は、上記の実施形態の構成に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内において様々な変形が可能である。例えば明細書中に記載された一つ以上の実施形態の技術構成の少なくとも一部と周知の技術構成とを適宜組み合わせたものも本発明の実施形態に含まれる。
【0066】
上記の各実施形態のコア2、2A、2Bはフェライト磁心であるが、別の材質(例えば、積層磁心、圧粉磁心、アモルファス金属磁心、磁性体の粒子を含む樹脂から形成されたメタルコンポジット磁心等)の磁心を使用してもよい。
【0067】
上記の各実施形態においては、凹部(収容部20a)に充填材が充填された第1のコア(コア20、20A、20B)の底面に平坦な放熱面が形成されていて、取付手段によって、放熱面を取付面(例えば、ヒートシンクや冷却装置の冷却面)に直接又は間接に押し当てるように、コイル装置(スイッチングトランス1、1A、1B)が取付面に取り付けられる。これにより、本体1aで発生した熱が効率的に排出される。なお、放熱面は、第1のコアの底面に限らず、第1のコアの他の一面(凹部が形成された面を除く。)に設けても良い。
【0068】
上記の各実施形態においては、充填材にシリコン樹脂が使用されているが、エポキシ樹脂やウレタン樹脂等の別の種類の充填材を使用してもよい。
【0069】
上記の第1実施形態においては、取付金具7の材質は黄銅であるが、別の材質(例えば、銅、アルミニウム、アルミニウム合金、炭素鋼、ステンレス鋼等)にしてもよい。
【0070】
上記の第1実施形態においては、取付金具7は板金部品であるが、鋳造や切削加工等の別の加工方法によって加工されてもよい。
【0071】
上記の各実施形態においては、中脚は円柱状であるが、角柱状、楕円柱状、その他の形状であってもよい。
【0072】
上記の各実施形態においては、コア20の中脚21とコア30の中脚31の間に形成される磁気ギャップはエアギャップであるが、中脚21と中脚31の隙間に非磁性体から形成されたギャップ部材を挿入してもよい。
【0073】
上記の実施形態は本発明をトランスに適用したものであるが、本発明はこの構成に限定されず、例えば、リアクトルやチョークコイル等の各種インダクタに本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1、1A、1B スイッチングトランス
2、2A、2B コア
20 コア
21 中脚
22 側脚
30 コア
31 中脚
32 側脚
4 コイル部
40 コイル
50 コイル
60 ボビン
7 取付金具
70 本体金具
80 押さえ金具
図1
図2
図3
図4
図5
図6