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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173120
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】空調制御システム及び空調制御方法
(51)【国際特許分類】
   F24F 11/70 20180101AFI20241205BHJP
   F24F 110/10 20180101ALN20241205BHJP
   F24F 110/20 20180101ALN20241205BHJP
【FI】
F24F11/70
F24F110:10
F24F110:20
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091290
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100162031
【弁理士】
【氏名又は名称】長田 豊彦
(74)【代理人】
【識別番号】100175721
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 秀文
(72)【発明者】
【氏名】下町 浩二
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA08
3L260AB03
3L260BA05
3L260BA16
3L260BA41
3L260CA03
3L260CA12
3L260CA13
3L260CA32
3L260CA33
3L260CA34
3L260FA16
(57)【要約】
【課題】空調機器の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる空調制御システム及び空調制御方法を提供する。
【解決手段】空調制御システム100の空調制御装置140は、室内空間の湿度が所定値(例えば70%)未満である場合(ステップS15でYES)、空調機器110が運転する際の負荷率が最大効率負荷率Pmaxに近づくように空調機器110の運転台数を決定し(ステップS18、S19)、室内空間の湿度が所定値以上である場合(ステップS15でNO)、空調機器110が運転する際の負荷率が最大となるように空調機器110の運転台数を決定する(ステップS16)ものである。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の室内空間の空調を行う複数の空調機器と、
前記室内空間の湿度を取得する室内湿度取得部と、
前記室内空間の空調負荷を算出する空調負荷算出部と、
前記空調負荷に基づいて、前記空調機器を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器の負荷率である全台負荷率を算出する全台負荷率算出部と、
前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器の運転台数を決定する運転台数決定部と、
を具備し、
前記運転台数決定部は、
前記室内空間の湿度が所定値未満である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率に近づくように、前記空調機器の運転台数を決定し、
前記室内空間の湿度が前記所定値以上である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が最大となるように、前記空調機器の運転台数を決定する、
空調制御システム。
【請求項2】
前記運転台数決定部は、
前記室内空間の湿度が前記所定値未満であって、前記全台負荷率が前記最大効率負荷率以下である場合、前記空調機器の運転台数を全台数よりも少ない台数に決定する、
請求項1に記載の空調制御システム。
【請求項3】
前記運転台数決定部は、
前記室内空間の湿度が前記所定値未満であって、前記全台負荷率が前記最大効率負荷率より大きい場合、前記空調機器の運転台数を全台数に決定する、
請求項2に記載の空調制御システム。
【請求項4】
複数の前記空調機器それぞれの近傍の室温を取得する室温取得部と、
前記運転台数決定部によって決定された運転台数だけ前記空調機器を運転させる運転制御部を具備し、
前記運転制御部は、
前記空調機器の冷房運転時において、近傍の室温が高い前記空調機器から優先的に前記空調機器を運転させる、
請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の空調制御システム。
【請求項5】
前記運転制御部は、
前記空調機器の暖房運転時において、近傍の室温が低い前記空調機器から優先的に前記空調機器を運転させる、
請求項4に記載の空調制御システム。
【請求項6】
建物の室内空間の湿度を取得する室内湿度取得ステップと、
前記室内空間の空調負荷を算出する空調負荷算出ステップと、
前記空調負荷に基づいて、空調機器を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器の負荷率である全台負荷率を算出する全台負荷率算出ステップと、
前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器の運転台数を決定する運転台数決定ステップと、
前記運転台数決定ステップにおいて決定された運転台数だけ前記空調機器を運転させる運転制御ステップと、
を具備し、
前記運転台数決定ステップは、
前記室内空間の湿度が所定値未満である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率に近づくように、前記空調機器の運転台数を決定し、
前記室内空間の湿度が前記所定値以上である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が最大となるように、前記空調機器の運転台数を決定する、
空調制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調機器の動作を制御する空調制御システム及び空調制御方法の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、空調機器の動作を制御する空調制御システムの技術が公知となっている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0003】
特許文献1に記載の技術では、空調空間に設けられたセンサにより温度等を検出し、空調空間の温度が所定の管理温度範囲にあるとき、空調機器を周期的に停止させる。またこの空調機器の停止時に、空調空間の温度が所定の管理温度範囲を外れたときには、空調機器を再起動させる。このように、特許文献1に記載の技術では、空調機器の運転時間の短縮を図り、ひいては空調機器の消費エネルギーの削減を図っている。
【0004】
但し、このような空調機器(パッケージエアコン)においては、一般的に、負荷率が低く運転効率の悪い状態での運転時間が長い場合が多く、消費電力の無駄が生じている。
【0005】
同時に、空調機器の負荷率が低い場合、冷媒の蒸発温度の上昇に伴って吹出口の温度が上昇し、このため除湿量が低下する。よって、特に梅雨時期の夜間等で室内の湿度が高まり、結露やカビの発生リスクが高まるという問題がある。このため、空調機器の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することが望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003-307331号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、空調機器の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる空調制御システム及び空調制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0009】
即ち、請求項1においては、建物の室内空間の空調を行う複数の空調機器と、前記室内空間の湿度を取得する室内湿度取得部と、前記室内空間の空調負荷を算出する空調負荷算出部と、前記空調負荷に基づいて、前記空調機器を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器の負荷率である全台負荷率を算出する全台負荷率算出部と、前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器の運転台数を決定する運転台数決定部と、を具備し、前記運転台数決定部は、前記室内空間の湿度が所定値未満である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率に近づくように、前記空調機器の運転台数を決定し、前記室内空間の湿度が前記所定値以上である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が最大となるように、前記空調機器の運転台数を決定するものである。
【0010】
請求項2においては、前記運転台数決定部は、前記室内空間の湿度が前記所定値未満であって、前記全台負荷率が前記最大効率負荷率以下である場合、前記空調機器の運転台数を全台数よりも少ない台数に決定するものである。
【0011】
請求項3においては、前記運転台数決定部は、前記室内空間の湿度が前記所定値未満であって、前記全台負荷率が前記最大効率負荷率より大きい場合、前記空調機器の運転台数を全台数に決定するものである。
【0012】
請求項4においては、複数の前記空調機器それぞれの近傍の室温を取得する室温取得部と、前記運転台数決定部によって決定された運転台数だけ前記空調機器を運転させる運転制御部を具備し、前記運転制御部は、前記空調機器の冷房運転時において、近傍の室温が高い前記空調機器から優先的に前記空調機器を運転させるものである。
【0013】
請求項5においては、建物の室内空間の湿度を取得する室内湿度取得ステップと、前記室内空間の空調負荷を算出する空調負荷算出ステップと、前記空調負荷に基づいて、空調機器を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器の負荷率である全台負荷率を算出する全台負荷率算出ステップと、前記全台負荷率に基づいて、前記空調機器の運転台数を決定する運転台数決定ステップと、前記運転台数決定ステップにおいて決定された運転台数だけ前記空調機器を運転させる運転制御ステップと、を具備し、前記運転台数決定ステップは、前記室内空間の湿度が所定値未満である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が、前記空調機器の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率に近づくように、前記空調機器の運転台数を決定し、前記室内空間の湿度が前記所定値以上である場合、前記空調機器が運転する際の負荷率が最大となるように、前記空調機器の運転台数を決定するものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明の効果として、以下に示すような効果を奏する。
【0015】
請求項1においては、空調機器の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる。
【0016】
請求項2においては、空調機器の運転効率のさらなる向上を図ることができる。
【0017】
請求項3においては、空調機器の運転効率のさらなる向上を図ることができる。
【0018】
請求項4においては、室温の場所によるばらつきを低減することができる。
【0019】
請求項5においては、空調機器の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の一実施形態に係る空調制御システムが設けられた建物の一例を示した模式平面図。
図2】空調制御システムの構成を示すブロック図。
図3】空調制御装置による空調機器の制御を示すフローチャート。
図4】空調機器の負荷率と比COPとの関係の一例を示した図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では、図1及び図2を用いて、本発明の一実施形態に係る空調制御システム100について説明する。
【0022】
空調制御システム100は、室内空間の冷暖房を行う空調機器(後述する空調機器110)の運転を制御するためのものである。本実施形態では、図1に示すような建物1に設けられた空調機器110の運転を制御する場合を想定している。図1に示す建物1としては、例えば空調の系統が複数ある場合の例としてドラッグストア等の店舗を想定している。建物1には、室内の照明を行うための照明器具、冷凍・冷蔵された商品を陳列するための冷凍冷蔵ショーケース、会計を行うために用いられる電子機器であるレジスター等が配置されている。
【0023】
空調制御システム100は、主として空調機器110、室内用温湿度計120、室外用温湿度計130及び空調制御装置140を具備する。
【0024】
空調機器110は、建物1の室内空間の冷暖房を行うものである。なお、空調機器110は室外機と室内機を有しているが、本実施形態では、「室内機」を「空調機器110」と称している。空調機器110は、複数設けられる。図1には一例として、天井に12台の空調機器110が設けられた例を示しているが、空調機器110の台数は特に限定するものではない。空調機器110(室内機)は、室外機(不図示)との間で冷媒を循環させながら、建物1の室内空間の冷房及び暖房を行うことができる。本実施形態では、各空調機器110は同じ製品であり、同じ性能(容量)を有しているものとする。
【0025】
室内用温湿度計120は、建物1の室内空間の温度及び湿度(相対湿度)を検出(計測)するものである。室内用温湿度計120は、空調機器110それぞれの近傍に設けられる。より詳細には、室内用温湿度計120は、空調機器110の吹出口の直下に設けられる。
【0026】
室外用温湿度計130は、建物1の室外の温度及び湿度(相対湿度)を検出(計測)するものである。室外用温湿度計130は、例えば建物1の外壁に百葉箱を設けるなどして設置される。
【0027】
空調制御装置140は、空調機器110の動作(運転)を制御するものである。空調制御装置140は、RAM、ROM、HDD等の記憶部や、CPU等の演算処理部等を具備する。空調制御装置140には、空調機器110の動作を制御するための各種の情報やプログラム等が記憶されている。また、空調制御装置140は、種々の情報を入力するための操作パネルを備えている。
【0028】
空調制御装置140は、室内用温湿度計120及び室外用温湿度計130と電気的に接続され、室内用温湿度計120及び室外用温湿度計130の検出値(温度及び湿度)を受信可能に構成される。空調制御装置140は、空調機器110と電気的に接続され、室内用温湿度計120及び室外用温湿度計130の検出値に基づいて空調機器110の動作を制御する。
【0029】
次に、図3を用いて、空調制御装置140による空調機器110の制御について説明する。なお、当該制御は、空調機器110が冷房運転を行う時期(例えば4月から10月)に実行される。また、当該制御は、所定時間(例えば1時間)毎に実行される。なお、ステップS11の処理(建物仕様、条件の設定)は、既に実行されている場合には省略される。
【0030】
ステップS11において、建物1の仕様及び条件が設定される。建物1の仕様及び条件は、例えば空調制御装置140の操作パネルを介して入力され、空調制御装置140の記憶部に記憶される。建物1の仕様には、建物1の断熱性能、外皮面積及び換気量等が含まれる。建物1の条件には、建物1に設けられる機器に応じた発熱、建物1に設けられた空調機器110の性能等が含まれる。
【0031】
建物1の仕様及び条件として、例えば、建物1の断熱性能(Ua):0.8W/mK、外皮面積:2000m、換気量:6000m/h等が設定される。また建物1における内部発熱として、照明器具を含む種々の照明からの発熱:20W/m、レジスターを含む種々の電子機器(OA機器等)からの発熱:10W/m、冷凍冷蔵ショーケースからの発熱(冷熱):-15W/m等が設定される。また建物1に設けられた空調機器110の容量(全台の合計):120W/m等が設定される。これらの値としては、建物1や各機器の仕様書等から取得される値を使用したり、推定値を使用したりすることができる。
【0032】
なお、ステップS11で設定された建物1の仕様及び条件は、ステップS12以降の計算に用いられるものであり、ステップS12以降の計算方法に応じて必要な条件等が設定される。従って、ステップS12以降の計算方法に応じて、ステップS11で設定される条件等を任意に変更することも可能である。
【0033】
空調制御装置140は、ステップS11の処理を行った後、ステップS12に移行する。
【0034】
ステップS12において、空調制御装置140は、建物1の室内の温度及び湿度(相対湿度)及び室外の温度及び湿度(相対湿度)を取得する。室内の温度及び湿度は、室内用温湿度計120によって検出される。室外の温度及び湿度は、室外用温湿度計130によって検出される。
【0035】
室内外の温度及び湿度として、例えば、室内温度:24℃、室内相対湿度:75%(絶対湿度14.0g/kg)、室外温度:30℃、室外相対湿度:80%(絶対湿度21.6g/kg)等が取得(検出)される。
【0036】
空調制御装置140は、ステップS12の処理を行った後、ステップS13に移行する。
【0037】
ステップS13において、空調制御装置140は、空調負荷(冷暖房負荷)L(t)を算出する。なお、tは時刻を意味している。空調負荷L(t)は、例えば下記の数1で算出することができる。
【0038】
(数1)
L(t)=Q(t)+Q(t)+Q(t)
【0039】
上記数1において、Q(t)は貫流熱負荷、Q(t)は換気熱負荷、Q(t)は内部発熱である。貫流熱負荷Q(t)とは、壁、天井、床等を介して建物1に出入りする熱による負荷を意味している。また換気熱負荷Q(t)とは、換気により建物1に出入りする熱による負荷を意味している。また内部発熱Q(t)とは、建物1の内部で発生する熱による負荷を意味している。貫流熱負荷Q(t)、換気熱負荷Q(t)、及び内部発熱Q(t)は、それぞれ下記の数2~数4で算出することができる。
【0040】
(数2)
(t)=U×A×(T(t)-T
【0041】
(数3)
(t)=ρ×c×V×(T(t)-T(t))×Δt
【0042】
(数4)
(t)=Q(t)+Q(t)+Q(t)+Q(t)
【0043】
上記数2~数4において、Uは外皮平均熱貫流率(W/mK)、Aは外皮面積(m)、T(t)は外気温度(℃)、T(t)は室内温度(℃)、ρは空気密度(kg/m)、cは空気比熱(J/kgK)、Vは換気量(m/h)、Q(t)は照明からの発熱(W/m)、Q(t)は電子機器(OA機器等)からの発熱(W/m)、Q(t)は人体からの発熱(W/m)、Q(t)は冷凍冷蔵ショーケースからの発熱(W/m)である。
【0044】
外皮平均熱貫流率U、外皮面積A、換気量V、照明からの発熱Q(t)、電子機器からの発熱Q(t)、及び、冷凍冷蔵ショーケースからの発熱Q(t)としては、ステップS11で設定された値が用いられる。
【0045】
外気温度T(t)としては、ステップS12で取得された値(室外用温湿度計130によって検出された室外温度)が用いられる。室内温度T(t)としては、ステップS12で取得された値(室内用温湿度計120によって検出された室内温度)が用いられる。人体からの発熱Q(t)としては、想定される建物1の来客数や従業員数等に応じて推定される値(推定値)が適宜用いられる。
【0046】
なお、ステップS13における空調負荷L(t)を算出するための方法(上記数1~数4)は一例であり、空調負荷L(t)を算出するための数式はこれに限るものではなく、上記数1~数4に示した以外の負荷要因を考慮することも可能である。例えば、日射に起因する熱による負荷である日射熱負荷等を考慮することも可能である。
【0047】
空調制御装置140は、ステップS13の処理を行った後、ステップS14に移行する。
【0048】
ステップS14において、空調制御装置140は、空調機器110を全台運転したと仮定した場合の負荷率P(t)(以下「全台負荷率」ともいう)が算出される。全台負荷率P(t)は、例えば下記の数5で算出することができる。
【0049】
(数5)
P(t)=L(t)/A
【0050】
上記数5において、Aは空調機器容量(W)である。空調機器容量Aとしては、ステップS11で設定された値が用いられる。
【0051】
空調制御装置140は、ステップS14の処理を行った後、ステップS15に移行する。
【0052】
ステップS15において、空調制御装置140は、室内の相対湿度(室内相対湿度)が70%未満(室内相対湿度<70%)であるか否かを判定する。室内相対湿度としては、ステップS12において室内用温湿度計120によって検出された相対湿度が用いられる。室内相対湿度は、全ての(又は複数の)室内用温湿度計120によって取得された値の平均値を採用してもよく、或いは指定された1つの室内用温湿度計120によって取得された値を採用してもよい。
【0053】
空調制御装置140は、室内相対湿度<70%であると判定した場合(ステップS15で「YES」)、ステップS17に移行する。
【0054】
ステップS17において、空調制御装置140は、P(t)≦Pmaxであるか否かを判定する。ここで、P(t)は、上述のとおり、ステップS14で算出された全台運転時の負荷率(全台負荷率)である。また、Pmaxは、空調機器110の運転効率を示す比COP(Coefficient Of Performance)が最大となる負荷率(以下「最大効率負荷率」ともいう)である。
【0055】
ここで、空調機器110の負荷率と、空調機器110の比COPと、の間には、図4に示すような相関関係がある。なお、図4に示したものは一例であり、具体的な数値等は限定するものではない。具体的には、空調機器110の負荷率がある値(図4の例では、約40%)の時に、比COPが最大となることが分かっている。すなわち、図4の例では、最大効率負荷率Pmaxは約40%である。
【0056】
空調制御装置140は、P(t)≦Pmaxでないと判定した場合(ステップS17で「NO」)、ステップS18に移行する。一方、空調制御装置140は、P(t)≦Pmaxであると判定した場合(ステップS17で「YES」)、ステップS19に移行する。
【0057】
なお、P(t)≦Pmaxである場合(ステップS17でYES)とは、空調機器110を全台運転させた場合、各空調機器110の負荷率がPmax以下である状態であることを示している。一方、P(t)≦Pmaxでない場合(ステップS17でNO)とは、空調負荷L(t)がかなり大きく、空調機器110を全台運転させても、各空調機器110の負荷率がPmaxよりも大きい状態であることを示している。
【0058】
ステップS18において、空調制御装置140は、運転台数N(t)を室内機設置数とする。すなわち、空調制御装置140は、建物1に設置された空調機器110のうち全台数の空調機器110を運転させる。なお、P(t)≦Pmaxでない場合(ステップS17でNO)に運転台数N(t)を減らすと、各空調機器110が運転する際の負荷率が最大効率負荷率Pmaxからさらに乖離する。例えば、空調機器110の最大効率負荷率Pmaxが40%であって、全台負荷率P(t)が50%である場合、空調機器110の運転台数N(t)を全台数より少ない台数とすると、運転する空調機器110の負荷率は、50%よりも大きい値となり最大効率負荷率Pmax40%から乖離する。このため、運転台数N(t)を全台数とすることで、各空調機器110の運転効率を最大限とすることができる。
【0059】
一方、ステップS19において、空調制御装置140は、運転台数N(t)を「室内機設置数×P(t)÷Pmax(小数点以下切り上げ)」に決定する。例えば、空調機器110の最大効率負荷率Pmaxが40%であって、全台負荷率P(t)が20%である場合、空調機器110の運転台数N(t)を全台数の1/2とすることで、運転する空調機器110の負荷率が40%となり、空調機器110の負荷率がPmaxに近い値となる。これによって、空調機器110の運転効率の向上を図ることができる。
【0060】
このように、室内相対湿度が比較的低い(70%未満)場合には、空調機器110が運転する際の負荷率を最大効率負荷率Pmaxに近い値とすることで、空調機器110の運転効率の向上を図ることができる。
【0061】
一方、ステップS15において、空調制御装置140は、室内相対湿度<70%でない(室内相対湿度が70%以上である)と判定した場合(ステップS15で「NO」)、ステップS16に移行する。
【0062】
ステップS16において、空調制御装置140は、運転台数N(t)を「室内機設置数×P(t)(小数点以下切り上げ)」に決定する。例えば、全台負荷率P(t)が20%である場合、空調機器110の運転台数N(t)を全台数の1/5とすることで、運転する空調機器110の負荷率が最大(100%)となる。こうして、空調制御装置140は、空調機器110が運転する際の負荷率が最大となるように、運転台数N(t)を決定する。
【0063】
このように、空調機器110の運転台数N(t)を空調機器110の負荷率が最も高まる台数とすることにより、冷媒の蒸発温度が低くなり、これにより吹出口の温度が低くなる。したがって、室内空間の除湿量の増加を図ることができる。
【0064】
空調制御装置140は、ステップS16の処理を行った後、ステップS20に移行する。空調制御装置140は、ステップS18又はステップS19の処理を行った後もまた、ステップS20に移行する。
【0065】
ステップS20において、空調制御装置140は、運転する空調機器110を決定する。具体的には、空調制御装置140は、室内用温湿度計120によって検出された室内温度を参照し、近傍の室内温度が高い空調機器110から優先的に運転(冷房運転)させる。例えば、決定した運転台数N(t)が6台の場合、室内温度が高い順に6台の空調機器110を運転させる。これにより、場所による室温のばらつきを低減しつつ、空間全体の除湿量を向上させることができる。
【0066】
空調制御装置140は、ステップS20の処理を行った後、図3に示す制御フローを終了する。
【0067】
以上のように、本実施形態に係る空調制御システム100においては、室内の相対湿度が比較的低い場合(ステップS15でYES)、空調機器110の負荷率が最大効率負荷率Pmaxに近づくように空調機器110の運転台数を決定する(ステップS18、S19)。これにより、空調機器110の運転効率を向上させることができ、ひいては消費エネルギーの低減を図ることができる。こうして消費エネルギーを低減することにより、空調費の低減及びCO排出量の低減を図ることができる。
【0068】
一方、室内の相対湿度が比較的高い場合(ステップS15でNO)、空調機器110の負荷率が最大(100%)となるように、空調機器110の運転台数を決定する(ステップS16)。こうして空調機器110の負荷率が最大(100%)とすることで、冷媒の蒸発温度の低下に伴って吹出口の温度が低くなり、これにより除湿量を増加させることができる。したがって、室内の湿度を低下させることができ、室内の湿度環境を改善することができる。
【0069】
こうして、空調機器の運転台数を調整することにより、空調機器の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる。
【0070】
以上の如く、本実施形態に係る空調制御システム100は、
建物1の室内空間の空調を行う複数の空調機器110と、
前記室内空間の湿度を取得する室内用温湿度計120(室内湿度取得部)と(ステップS12)、
前記室内空間の空調負荷L(t)を算出する空調制御装置140(空調負荷算出部)と(ステップS13)、
前記空調負荷L(t)に基づいて、前記空調機器110を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器110の負荷率である全台負荷率P(t)を算出する空調制御装置140(全台負荷率算出部)と(ステップS14)、
前記全台負荷率P(t)に基づいて、前記空調機器110の運転台数N(t)を決定する空調制御装置140(運転台数決定部)と(ステップS15からS19)、
を具備し、
前記空調制御装置140(運転台数決定部)は、
前記室内空間の湿度が所定値(例えば70%)未満である場合(ステップS15でYES)、前記空調機器110が運転する際の負荷率が、前記空調機器110の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率Pmaxに近づくように、前記空調機器110の運転台数N(t)を決定し(ステップS18、S19)、
前記室内空間の湿度が前記所定値以上である場合(ステップS15でNO)、前記空調機器110が運転する際の負荷率が最大となるように、前記空調機器110の運転台数N(t)を決定する(ステップS16)ものである。
【0071】
このように構成することにより、空調機器110の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる。
【0072】
また、前記空調制御装置140(運転台数決定部)は、
前記室内空間の湿度が前記所定値未満であって、前記全台負荷率P(t)が前記最大効率負荷率Pmax以下である場合(ステップS17でYES)、前記空調機器110の運転台数N(t)を全台数よりも少ない台数に決定する(ステップS19)ものである。
【0073】
このように構成することにより、空調機器110の運転効率のさらなる向上を図ることができる。
【0074】
また、前記空調制御装置140(運転台数決定部)は、
前記室内空間の湿度が前記所定値未満であって、前記全台負荷率P(t)が前記最大効率負荷率Pmaxより大きい場合(ステップS17でNO)、前記空調機器の運転台数N(t)を全台数に決定する(ステップS18)ものである。
【0075】
このように構成することにより、空調機器110の運転効率のさらなる向上を図ることができる。
【0076】
また、複数の前記空調機器110それぞれの近傍の室温を取得する室内用温湿度計120(室温取得部)と、
前記空調制御装置140(運転台数決定部)によって決定された運転台数N(t)だけ前記空調機器110を運転させる空調制御装置140(運転制御部)を具備し、
前記空調制御装置140(運転制御部)は、
前記空調機器110の冷房運転時において、近傍の室温が高い前記空調機器110から優先的に前記空調機器110を運転させる(ステップS20)ものである。
【0077】
このように構成することにより、室温の場所によるばらつきを低減することができる。
【0078】
また、本実施形態に係る空調制御方法は、
建物1の室内空間の湿度を取得する室内湿度取得ステップ(ステップS12)と、
前記室内空間の空調負荷L(t)を算出する空調負荷算出ステップ(ステップS13)と、
前記空調負荷L(t)に基づいて、空調機器110を全台運転させたと仮定した場合における前記空調機器110の負荷率である全台負荷率P(t)を算出する全台負荷率算出ステップ(ステップS14)と、
前記全台負荷率P(t)に基づいて、前記空調機器110の運転台数N(t)を決定する運転台数決定ステップ(ステップS15からS19)と、
前記運転台数決定ステップにおいて決定された運転台数N(t)だけ前記空調機器110を運転させる運転制御ステップ(ステップS20)と、
を具備し、
前記運転台数決定ステップは、
前記室内空間の湿度が所定値(例えば70%)未満である場合(ステップS15でYES)、前記空調機器110が運転する際の負荷率が、前記空調機器110の運転効率が最も高くなる最大効率負荷率Pmaxに近づくように、前記空調機器110の運転台数N(t)を決定し(ステップS18、S19)、
前記室内空間の湿度が前記所定値以上である場合(ステップS15でNO)、前記空調機器110が運転する際の負荷率が最大となるように、前記空調機器110の運転台数N(t)を決定する(ステップS16)ものである。
【0079】
このように構成することにより、空調機器110の運転効率の向上を図りつつ、室内の湿度環境を改善することができる。
【0080】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明は上記構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能である。
【0081】
例えば上記実施形態で例示した建物1はドラッグストア等の店舗を想定したものとしたが、本発明はこれに限るものではなく、その他種々の建物(例えば、オフィス、学校等)に適用することが可能である。
【0082】
また、上記実施形態で示した具体的な処理内容は一例であり、各処理内容は任意に変更することが可能である。例えば、空調機器110の運転台数を決定(変更)する時間間隔は、時刻別(1時間毎)に限るものではなく、任意の時間間隔とすることが可能である。また、具体的に示した各種の数値は一例であり、任意の値に変更することが可能である。また、各処理で用いた数式は一例であり、必要に応じて用いる数式や、その内容を任意に変更することが可能である。
【0083】
また、上記実施形態では空調機器110の運転を自動で制御するものとしたが、使用者(例えば店舗の従業員)が手動で空調機器110のオン/オフを行ってもよい。
【0084】
また、上記実施形態では、リアルタイムで室内外の温度及び湿度を取得し、取得した温度及び湿度等に基づいて空調機器110の運転台数の決定及び運転する空調機器110の決定を行うものとしたが、気象情報等から室内外の温度及び湿度を予測し、温度及び湿度の予測値等に基づいて予め空調機器110の運転スケジュールを作成し、当該運転スケジュールに基づいて空調機器110の運転台数の決定及び運転する空調機器110の決定を行うものとしてもよい。
【0085】
また、上記実施形態では、空調機器110の冷房運転時において、近傍の室温が高い空調機器110から優先的に空調機器110を運転させるものとしたが(ステップS20)、予め設定した優先順に基づいて運転させる空調機器110を決定してもよい。このようにすることで、空調機器110のオン/オフが繰り返されるのを抑制することができ、ひいては空調機器110の立ち上りに要する消費エネルギーの低減を図ることができる。
【0086】
また、上記実施形態では、室内用温湿度計120によって室内の温度及び湿度の両方を検出するものとしたが、室内の温度及び湿度をそれぞれ温度計及び湿度計によって検出するようにしてもよい。この場合、例えば温度計を空調機器110それぞれの近傍(吹出口の直下)に設け、湿度計を室内に1つ設けるようにしてもよい。
【0087】
また、上記実施形態では、図3に示す空調機器110の動作の制御は、空調機器110の冷房運転時に実行されるものとしたが、空調機器110の暖房運転時にも実行してもよい。この場合、ステップS20においては、室内温度が低い箇所付近の空調機器110から優先的に運転させる。
【符号の説明】
【0088】
1 建物
100 空調制御システム
110 空調機器
120 室内用温湿度計
130 室外用温湿度計
140 空調制御装置
図1
図2
図3
図4