IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱電機株式会社の特許一覧 ▶ 三菱電機照明株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-疑似窓照明 図1
  • 特開-疑似窓照明 図2
  • 特開-疑似窓照明 図3
  • 特開-疑似窓照明 図4
  • 特開-疑似窓照明 図5
  • 特開-疑似窓照明 図6
  • 特開-疑似窓照明 図7
  • 特開-疑似窓照明 図8
  • 特開-疑似窓照明 図9
  • 特開-疑似窓照明 図10
  • 特開-疑似窓照明 図11
  • 特開-疑似窓照明 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173125
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】疑似窓照明
(51)【国際特許分類】
   F21S 2/00 20160101AFI20241205BHJP
   F21S 10/02 20060101ALI20241205BHJP
   F21V 33/00 20060101ALI20241205BHJP
   E06B 7/28 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F21S2/00 490
F21S10/02 100
F21V33/00 200
E06B7/28 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091301
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390014546
【氏名又は名称】三菱電機照明株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001461
【氏名又は名称】弁理士法人きさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】西川 弘明
(72)【発明者】
【氏名】大澤 隆司
(72)【発明者】
【氏名】末留 克徳
(72)【発明者】
【氏名】小松 ▲琢▼充
【テーマコード(参考)】
3K014
3K244
【Fターム(参考)】
3K014AA01
3K244AA04
3K244CA03
3K244DA01
3K244GA02
(57)【要約】
【課題】壁に設置した際の違和感を無くした疑似窓照明を提供することを目的とする。
【解決手段】疑似窓照明は、中央に開口部を有する枠状の板部が取り付けられた照明器具の本体と、板部の開口部よりも本体側に取り付けられた拡散パネルと、を備え、拡散パネルの中央部には、一様なカラー光に染まることで空が模擬される空模擬部が設けられており、空模擬部の下端の壁面における床面からの高さ位置が、男性の平均身長と標準偏差2σとを加えた値から100mmを減じた高さ以上になるように設置されるものである。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
中央に開口部を有する枠状の板部が取り付けられた照明器具の本体と、
前記板部の前記開口部よりも前記本体側に取り付けられた拡散パネルと、
を備え、
前記拡散パネルの中央部には、一様なカラー光に染まることで空が模擬される空模擬部が設けられており、
前記空模擬部の下端の壁面における床面からの高さ位置が、男性の平均身長と標準偏差2σとを加えた値から100mmを減じた高さ以上になるように設置される
疑似窓照明。
【請求項2】
前記本体は、液晶、或いは、有機ELの画像表示手段を持たない
請求項1に記載の疑似窓照明。
【請求項3】
前記男性の前記平均身長は、20歳~29歳男性の平均身長である
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【請求項4】
前記空模擬部の下端は、
前記平均身長の前記男性の目の高さである
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【請求項5】
前記本体の前記板部の内側に配置され、前記拡散パネルの端面に向けて光を照射する光源と、
前記拡散パネルの周縁に配置され、背面に前記光源が配置されている透光性拡散板と、
を更に備え、
前記透光性拡散板から白色光が照射される
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【請求項6】
前記カラー光は、
可視域全体の一部に分光分布を持つ光である
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【請求項7】
前記カラー光は、
可視域全体にわたって分光分布を持つ白色光である
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【請求項8】
前記空模擬部の下端が、
前記床面から1,734mm以上の高さに設置されている
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【請求項9】
前記空模擬部の下端が、
前記床面から1,793mm以上の高さに設置されている
請求項1又は2に記載の疑似窓照明。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窓を模擬した疑似窓照明に関するものである。
【背景技術】
【0002】
窓の無い空間に開放感を与え、コミュニケーションの活性化、リラックスできる雰囲気づくり、又は、自然な外とのつながりなど、さまざまな空間又はシーンに窓を模擬した疑似窓照明が活用されている。部屋に解放感を与える手法として、疑似窓を設置することが提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、拡散板背面よりカラー光が照射され、青空又は夕焼けの様な色に光る面を有し、窓枠にあたかも太陽光が照射しているかの様な白色光が照射される窓の様な照明器具が提案されている。
【0004】
特許文献2には、中央部がカラー光に染まるとともに、開口部周辺から主として白色光が照射され、奥行き感又は光演出効果が向上された照明器具が提案されている。
【0005】
特許文献3には、実際の青空が太陽光のレイリー散乱により青く見える原理を再現した疑似窓照明が提案されている。
【0006】
特許文献4には、液晶又は有機ELディスプレイを用い、屋外の様子を静止画又は動画により再生し、更に窓の外の雰囲気を醸し出す表示システムが提案されている。
【0007】
窓を模擬した照明器具又はディスプレイ機器は、室内の天井に天窓として、或いは壁面に窓として、更には、床に下の景色が覗ける様な窓として設置されている。その手法は異なるが、これらはいずれも窓の無い、或いは窓の少ない閉鎖的な空間に開放的な雰囲気を与えてくれるものである。実際の屋外の映像を映し出す事も出来るディスプレイは、臨場感があり、静止画だけではなく、動画を映し出す事もできる。
【0008】
特許文献4は、例えば「青空」を映し出したとすると、ディスプレイからは青色の単色光が照射されるため、室内が白色ではない青色光に染まり、照明としては適さない。一方で、特許文献1~3は、照明としても活用できる手法を目指したものであり、特許文献1~3が天井に設置された際は、違和感なく天窓から青空が見える様に感じられる。特に、特許文献3は、実際の青空が太陽光のレイリー散乱により青く見える原理が利用され、樹脂等に分散させたナノ粒子により白色光をレイリー散乱させ、空模擬部がまるで青空を見る様な、目の焦点が合わない遠近感のある青空を再現している。また、空模擬部は青く見えるが、照射される光は白色光であるという照明に適した疑似窓照明である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2008-545905号公報
【特許文献2】特開2021-089902号公報
【特許文献3】特開2015-207554号公報
【特許文献4】特開2021-076720号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1~3の疑似窓照明は、天井に設置された際には、違和感なく天窓から青空が見える様に感じられる一方で、壁に設置された際には、全ての場合に発生するものではないものの、一部違和感があるといった不具合が発生した。
【0011】
本開示は、壁に設置した際の違和感を無くした疑似窓照明を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示に係る疑似窓照明は、中央に開口部を有する枠状の板部が取り付けられた照明器具の本体と、前記板部の前記開口部よりも前記本体側に取り付けられた拡散パネルと、を備え、前記拡散パネルの中央部には、一様なカラー光に染まることで空が模擬される空模擬部が設けられており、前記空模擬部の下端の壁面における床面からの高さ位置が、男性の平均身長と標準偏差2σとを加えた値から100mmを減じた高さ以上になるように設置されるものである。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る疑似窓照明によれば、空模擬部の下端の床面からの高さ位置が、空模擬部を見上げる位置になるように配置されるため、壁に設置された際にも、空模擬部に空だけが見えることによる違和感が生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本実施の形態に係る照明器具の外観を示す斜視図である。
図2】本実施の形態に係る照明器具の構成を示す分解斜視図である。
図3】本実施の形態に係る照明器具の光源ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図4】本実施の形態に係る照明器具の光源ユニットの構成を示す分解斜視図である。
図5】本実施の形態に係る照明器具の構成を示す断面模式図である。
図6】本実施の形態に係る青色用LEDモジュールの概略構成を示す図である。
図7】本実施の形態に係る照明器具の制御ブロック図である。
図8】本実施の形態に係る照明器具の位置を説明する模式図である。
図9】比較例1に係る照明器具の位置を説明する模式図である。
図10】比較例2に係る照明器具の模式図である。
図11】比較例3に係る照明器具の模式図である。
図12】比較例4に係る照明器具の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、照明器具の実施の形態について図面を参照して説明する。各図において、同一の符号を付したものは、同一のまたはこれに相当するものであり、これは明細書の全文において共通している。また、明細書の全文において、床面から天井に向かう垂直な方向を「上方向」と呼び、天井側を「上側」と呼ぶこととする。また、同様に、天井から床面に向かう垂直な方向を「下方向」と呼び、床面側を「下側」と呼ぶこととする。なお、各図面では、各構成部材の相対的な寸法関係または形状等が実際のものとは異なる場合がある。
【0016】
[照明器具1の基本構成]
照明器具1は、例えば、室内の天井に天窓として、或いは壁面に窓として、更には床に下の景色が覗ける様な窓として設置される疑似窓照明である。
【0017】
図1は、本実施の形態に係る照明器具1の外観を示す斜視図である。照明器具1は、例えば、天井C(図2参照)又は壁面100(図8参照)に埋め込まれる埋め込み型の照明器具である。以下では、照明器具1が天井埋め込み型の照明器具である場合を説明する。照明器具1は、天井Cに埋め込まれる器具本体50と、器具本体50に取り付けられる光源ユニット10とを備える。光源ユニット10は、白色光を発する拡散カバー13と、青色光を発する拡散パネル17とを備える。拡散パネル17は、導光板とも称される。照明器具1は、拡散パネル17からの青色光と、拡散カバー13からの白色光とにより、窓枠越しに空を見るような奥行き感のある視覚効果を有する照明を提供することができる。拡散カバー13は、透光性拡散板の一例である。
【0018】
図2は、本実施の形態に係る照明器具1の構成を示す分解斜視図である。照明器具1は、天井Cに設けられた埋め込み穴Hに埋め込まれて設置される。図2に示すように、照明器具1の器具本体50は、枠状の板部により長方形の箱形に形成され、下側が開口部になっている。器具本体50は、主面51と、4つの側面52とを有している。側面52のそれぞれは、主面51の4辺のそれぞれから下方向に向かって垂直に延びるように設けられている。
【0019】
器具本体50の4つの側面52のうち、対向する2つの側面52の内側の面には、Vばね取り付け金具53が取り付けられている。Vばね取り付け金具53は、光源ユニット10に設けられた後述するVばね12を引掛けて保持する。また、主面51の四隅には、ボルト孔51-1が設けられている。また、天井Cの埋め込み穴Hからは、吊り下げボルトBが吊り下げられている。器具本体50は、ボルト孔51-1に吊り下げボルトBを挿入した後、吊り下げボルトBをナット61で締めることで、天井Cに固定される。
【0020】
また、主面51には、電線孔51-2が形成されるとともに、端子台54が設けられている。端子台54は、電源端子台と信号線端子台とを有する。図2において、電源端子台および信号線端子台は図示を省略している。電線孔51-2からは、電線および信号線が引き出される。電線孔51-2から引き出された電線は、端子台54の電源端子台に電気的に接続される。また、電線孔51-2から引き出された信号線は、端子台54の信号線端子台に電気的に接続される。
【0021】
光源ユニット10は、器具本体50の開口内部に配置される。光源ユニット10は、上カバー27と、フランジ部11と、Vばね12と、拡散カバー13と、拡散パネル17と、を備える。拡散パネル17は、器具本体50の開口部よりも器具本体50の主面51側に取り付けられている。上カバー27は、下端が開口した四角錐台に形成される。上カバー27の4つの側面のそれぞれは、台形形状に形成され、上辺の長さが下辺の長さよりも短くなっている。フランジ部11は、平面視で、長方形の枠形に形成されている。フランジ部11は、図2に示すように、上カバー27の下端から水平方向の外側に向かって突出するように配置されている。
【0022】
Vばね12は、金属製の線材をV字状に曲げて形成された線ばねであり、フランジ部11の上面に取り付けられている。Vばね12は、器具本体50のVばね取り付け金具53の位置に合わせて、合計4個設けられている。Vばね12がVばね取り付け金具53に係合することで、光源ユニット10が器具本体50に吊り下げられて保持される。なお、照明器具1が天井Cの埋め込み穴Hに取り付けられた状態のとき、フランジ部11は埋め込み穴Hの縁を覆う。従って、照明器具1が天井Cの埋め込み穴Hに取り付けられた状態のとき、ユーザからは埋め込み穴Hは見えなくなる。
【0023】
図3および図4は、本実施の形態に係る照明器具1の光源ユニット10の構成を示す分解斜視図である。光源ユニット10は、図3に示す構成要素と図4に示す構成要素とからなる。図3は、光源ユニット10の下側部分に設けられた構成要素を示し、図4は、光源ユニット10の上側部分に設けられた構成要素を示している。
【0024】
光源ユニット10の構成要素のうち、まず、図3に示す構成要素について説明する。図3に示すように、光源ユニット10は、フランジ部11と、Vばね12と、パッキン21と、拡散カバー13と、パッキン22と、白色用LEDモジュール14と、モジュール保持部15とを備える。
【0025】
フランジ部11は、上述したように、長方形の枠形に形成されている。フランジ部11は、例えば金属から構成されている。Vばね12は、フランジ部11の上面に、合計4個設けられている。
【0026】
モジュール保持部15は、平面視で長方形の枠形に形成されている。モジュール保持部15は、4つの部材を組み合わせて構成されている。4つの部材のそれぞれは、後述する図5に示されるように、L字断面を有している。また、図3に示すように、モジュール保持部15の4つの部材のそれぞれの下端には、取付フランジ15-1が設けられている。取付フランジ15-1は、ねじによってフランジ部11に取り付けられる。
【0027】
白色用LEDモジュール14は、3つの基板140と、3つの基板140それぞれの内側に設けられた色温度の異なる2種類の白色LED141および142とを有している。白色用LEDモジュール14の3つの基板140は、長方形の3辺を形成するように、平面視でコの字形に配置される。隣接する基板140同士のなす角度は90°である。白色用LEDモジュール14は、コの字を構成する3方向から白色光を出射する。
【0028】
白色LED141は、例えば色温度が4000~5000Kの昼色のLEDであり、白色LED142は例えば色温度が2600~3000Kの電球色のLEDである。白色用LEDモジュール14は、白色LED141および142の調光率を変化させることにより、様々な色温度および様々な光量の白色光を出射することができる。また、白色LED141と白色LED142は、時刻に応じて調光されてもよい。例えば、白色LED141と白色LED142は、昼間に光量が100%、明け方および夕方に光量が50%、夜に光量が20%となるよう調光される。さらに、白色LED141と白色LED142は、例えば、昼間に色温度が4500Kの昼白色となり、夕方に色温度が3000~3500Kの電球色となり、夜に色温度が4000~3800Kとなるよう調光される。
【0029】
なお、白色用LEDモジュール14の光源として、LED以外の発光素子または発光装置を用いてもよい。また、白色用LEDモジュール14は、1種類のみの白色LEDを備えてもよいし、3種類以上の白色LEDを備えてもよい。白色用LEDモジュール14は、モジュール保持部15の内側に配置され、モジュール保持部15によって保持される。
【0030】
パッキン22は、平面視で、長方形の細枠形に形成されている。パッキン22は、拡散カバー13の上側の端面と、図4に示す拡散パネル17の出射面である下面との間に配置される。パッキン22は、後述する青色用LEDモジュール18から出射された光が拡散パネル17の出射面から拡散カバー13の上側の端面に入り込まないよう遮光する。また、パッキン22は、白色用LEDモジュール14から出射された白色光が拡散カバー13の上側の端面から拡散パネル17の出射面に入り込まないよう遮光する。さらに、パッキン22は、照明器具1が地震等により揺れた場合の緩衝材としても機能する。
【0031】
拡散カバー13は、例えば白色の樹脂から構成され、平面視で長方形の枠形に形成されている。拡散カバー13は、上側と下側が開口した四角錐台形状を有する。すなわち、拡散カバー13の4つの側面のそれぞれは、垂直方向に対して予め設定された角度で傾斜している。拡散カバー13の4つの側面のそれぞれは、台形形状の拡散板から構成され、上辺の長さが下辺の長さよりも短くなっている。また、拡散カバー13の4つの側面のそれぞれが傾斜しているため、平面視で、上辺の位置が下辺の位置よりも内側になるように配置されている。それにより、拡散カバー13の内部空間は、下方向に向かってテーパ状に大きくなっている。拡散カバー13は、4枚の台形形状の拡散板を組み合わせて形成されてもよいし、一体成型で形成されてもよい。
【0032】
拡散カバー13の4つの側面のうち、3つの面は発光面13-1であり、他の1つの面は非発光面13-2である。3つの発光面13-1は、コの字形状に配置されている。ここで、拡散カバー13の4つの側面のそれぞれにおいて、拡散カバー13の内部空間に面している内側の面を前面と呼び、外側の面を背面と称する。
【0033】
拡散カバー13は、白色用LEDモジュール14の内側に配置される。すなわち、拡散カバー13の発光面13-1のそれぞれの背面側に、白色用LEDモジュール14が配置される。白色用LEDモジュール14から出射された白色光は、拡散カバー13の発光面13-1の背面から入射し、発光面13-1を透過して、発光面13-1の前面から出射される。発光面13-1のそれぞれが傾斜しているため、3つの発光面13-1の前面から出射される白色光は、斜め下方向を照射する。
【0034】
拡散カバー13の非発光面13-2の背面には、遮光シート(不図示)が貼付され、非発光面13-2から光が漏れないように構成されている。
【0035】
このように、拡散カバー13は、白色光を発する3つの発光面13-1と、光を発しない1つの非発光面13-2とを組み合わせた構成を有している。これにより、拡散カバー13から発せられる光は、3方向からの光となり、太陽光に照らされたひなたの窓枠、または日陰の窓枠越しに、外からの光が差し込んでいるような奥行き感のある視覚効果を演出することができる。
【0036】
拡散カバー13はパッキン21を介して、フランジ部11上に載置される。パッキン21は、平面視で、長方形の細枠形に形成されている。パッキン21は、フランジ部11または拡散カバー13が振動した際に、互いが直接的にぶつかり合うことを防止する。また、パッキン21の弾力性により、フランジ部11から拡散カバー13に与える力が緩和され、拡散カバー13の破損を抑制することができる。さらに、フランジ部11と拡散カバー13との間にパッキン21を設けることで、窓枠としての印象を持たせることができる。特に、パッキン21が白色系の色調の場合に、窓枠としての印象を強めることができる。また、パッキン21は、拡散カバー13とフランジ部11との隙間から白色光が漏れることを防ぐ遮光部としても機能する。
【0037】
次に、光源ユニット10の構成要素のうち、図4に示す構成要素について説明する。図4に示すように、光源ユニット10は、さらに、下ガイドプレート16と、拡散パネル17と、青色用LEDモジュール18と、上ガイドプレート19と、絶縁部23と、モジュール保持部24と、固定部材25と、導光板カバー26と、上カバー27とを備える。また、光源ユニット10は、上カバー27の上面に配置される電源装置31と、調光ユニット32とをさらに備える。
【0038】
下ガイドプレート16は、図3に示したモジュール保持部15上に載置される。下ガイドプレート16は、2本の棒状の部材から構成され、拡散パネル17の下方において、拡散パネル17の長手方向に延びる端部に沿って配置される。下ガイドプレート16を構成する2本の棒状の部材の両端には、突起部16-3が設けられている。突起部16-3は、上側に向かって垂直に延びている。突起部16-3は、拡散パネル17の短手方向に延びる端面17-2と接触し、拡散パネル17の長手方向への移動を規制する。
【0039】
上ガイドプレート19は、拡散パネル17上に載置される。上ガイドプレート19は、2本の棒状の部材から構成され、拡散パネル17の長手方向に延びる端部に沿って配置される。
【0040】
拡散パネル17は、平面視で長方形の板状に形成される。拡散パネル17は、青色用LEDモジュール18から出射された光を拡散させ、出射面である下面から青色光を面発光する。拡散パネル17は、アクリル樹脂で形成され、光を散乱させる粒子である散乱体として、例えばシリカを含む。拡散パネル17の長手方向の端部は、下ガイドプレート16と上ガイドプレート19とで上下方向から挟持される。
【0041】
拡散パネル17の上面は、全反射するために平滑となっている。拡散パネル17の上面は、鏡面仕上げであることが望ましい。照明器具1の組立て作業中に、拡散パネル17の上面に傷がつくと、傷がついた箇所で全反射が起こりにくくなる。そのため、上面の傷がついた箇所に対応する下面の一部分が白っぽく光って見えてしまう。そのため、拡散パネル17の上面の傷つきを防止するために、拡散パネル17の上面を反射シート(不図示)で覆うようにしてもよい。
【0042】
青色用LEDモジュール18は、拡散パネル17の長手方向に延びる端面17-1に平行になるように配置される。青色用LEDモジュール18は、2つの基板180と、基板180にそれぞれ配置された複数のLEDとを備える。基板180の上部には、複数の貫通穴18-1が設けられている。青色用LEDモジュール18の構成および調光制御については、後ほど詳述する。
【0043】
青色用LEDモジュール18は、固定部材25によりモジュール保持部24に取り付けられる。固定部材25の青色用LEDモジュール18側の面には、円柱型の突起部25-1が設けられている。突起部25-1は、青色用LEDモジュール18の基板180の貫通穴18-1にそれぞれ挿入される。突起部25-1が貫通穴18-1に挿入された状態で、固定部材25がモジュール保持部24にねじ止めされる。
【0044】
モジュール保持部24は、断面がL字状の板金で形成されている。モジュール保持部24は、青色用LEDモジュール18の基板180を保持するだけでなく、青色用LEDモジュール18からの熱を外部に放出する放熱板としても機能する。モジュール保持部24は、図3に示したモジュール保持部15の上面に取り付けられる。また、青色用LEDモジュール18は、絶縁部23を介して、モジュール保持部24に取り付けられる。なお、青色用LEDモジュール18の基板180が両面基板でない場合には、絶縁部23は省略してもよい。
【0045】
導光板カバー26は、上ガイドプレート19上に載置される。導光板カバー26は、拡散パネル17を上から覆い、拡散パネル17を保護する。上カバー27は、図3および図4に示す光源ユニット10の構成要素を覆い、当該構成要素を保護する。上カバー27の上面には、電源装置31および調光ユニット32が載置される。
【0046】
電源装置31は、青色用LEDモジュール18および白色用LEDモジュール14に電力を供給する。調光ユニット32は、青色用LEDモジュール18および白色用LEDモジュール14が備える各LEDを調光する。電源装置31と調光ユニット32とは、例えば渡り配線などの配線で、電気的に接続される。また、電源装置31および調光ユニット32は、光源ユニット10が器具本体50に取り付けられた状態において、器具本体50の端子台54の電源端子台および信号線端子台と電気的に接続される。
【0047】
図5は、本実施の形態に係る照明器具1の構成を示す断面模式図である。図5は、照明器具1を、長手方向の中央部分において、短手方向の1つの側面に平行な平面で切断した断面を模式的に示している。
【0048】
図5に示すように、器具本体50の下端の開口内に光源ユニット10が配置される。光源ユニット10のフランジ部11の上面には、Vばね12が設けられている。Vばね12は、器具本体50に設けられたVばね取り付け金具53に引き掛けられた状態で保持されている。これにより、光源ユニット10と器具本体50とが係合され、光源ユニット10が器具本体50に保持される。
【0049】
白色用LEDモジュール14は、モジュール保持部15に保持され、拡散カバー13の背面に配置される。また、青色用LEDモジュール18は、モジュール保持部15の上面に固定されたモジュール保持部24に保持され、空隙を介して拡散パネル17の端面17-1に対向するように配置される。拡散カバー13と拡散パネル17とは互いに交差する向きに配置されている。具体的には、拡散パネル17は天井Cと平行に配置され、拡散カバー13は拡散パネル17から斜め下方向に延びるよう配置される。
【0050】
白色用LEDモジュール14から出射された白色光は、拡散カバー13の背面から入射され、拡散カバー13の発光面13-1の前面から出射される。発光面13-1は傾斜しているため、発光面13-1の前面から出射される白色光は、斜め下方向を照らす。また、青色用LEDモジュール18から出射した光は、拡散パネル17の端面17-1に入射され、拡散パネル17の上面と下面とで全反射しながら拡散パネル17内を進む。拡散パネル17内を進む光の一部は、拡散パネル17内の散乱体に当たって拡散され、拡散パネル17の下面から面発光される。
【0051】
次に、本実施の形態における青色用LEDモジュール18の構成および調光制御について説明する。図6は、本実施の形態に係る青色用LEDモジュール18の概略構成を示す図である。図6では、青色用LEDモジュール18における1つの基板180の概略構成を示しているが、もう1つの基板180の構成も図6と同様である。図6に示すように、青色用LEDモジュール18の基板180には、複数の白色LED181と、青色LED182と、緑色LED183とが配置される。詳しくは、基板180には、2個の白色LED181と、2個の青色LED182と、1個の緑色LED183とを一組として、複数の組が一列に配置される。
【0052】
なお、青色用LEDモジュール18の基板180に配置される白色LED181、青色LED182、および緑色LED183の数および配置は、図6の例に限定されるものではない。例えば、白色LED181と、青色LED182と、緑色LED183とを、基板180の下側の領域に配置してもよい。この場合、拡散パネル17と拡散カバー13とを近づけて配置することができ、拡散パネル17からの青色光と拡散カバー13からの白色光とを近接させて出射することができる。また、白色LED181と、青色LED182と、緑色LED183との上下方向の位置をずらして配置するなどしてもよい。また、白色LED181、青色LED182、および緑色LED183の並びは、色のばらつきおよび基板の設計を考慮し、適宜決定すればよい。ただし、空の色を再現するためには、青色用LEDモジュール18におけるLEDの総数に対する白色LED181、青色LED182、および緑色LED183の数の比は、2:2:1とすることが望ましい。
【0053】
青色用LEDモジュール18の基板180の上部には、複数の貫通穴18-1が設けられている。基板180の中央部分に設けられた貫通穴18-1(不図示)は円形であり、それ以外の貫通穴18-1は長手方向に延びた楕円形である。青色用LEDモジュール18の基板180は、白色LED181、青色LED182、および緑色LED183から発せられる熱によって熱膨張および熱収縮する。そのため、青色用LEDモジュール18をモジュール保持部24に固定させると、青色用LEDモジュール18の基板180に熱膨張および熱収縮による反りまたはゆがみが生じるおそれがある。
【0054】
そこで、本実施の形態では、基板180に楕円形の貫通穴18-1を設け、固定部材25の突起部25-1を貫通穴18-1に遊びを持って挿入できる構成となっている。これにより、青色用LEDモジュール18の基板180が熱膨張および熱収縮した場合にも、突起部25-1が楕円形の貫通穴18-1内を長手方向に移動することができ、基板180の反りまたはゆがみを抑制することができる。
【0055】
白色LED181は、例えば色温度が5000Kであり、順電圧が6VのLEDである。青色LED182は、例えばドミナント波長が440~480nmであり、順電圧が3VのLEDである。緑色LED183は、例えばドミナント波長が510~570nmであり、順電圧が3VのLEDである。白色LED181は、青色LED182および緑色LED183よりも順電圧が高く、同じ電流が流れた場合に、青色LED182および緑色LED183よりも明るく発光する。すなわち、青色用LEDモジュール18における、各LEDの出力バランスは、白色LED181>青色LED182>緑色LED183となる。
【0056】
本実施の形態の青色用LEDモジュール18は、白色LED181、青色LED182、および緑色LED183の発光を制御して、空の色、特に青空の色を再現する。このように、白、青、緑の3色を用いることで、赤、青、緑の3色を用いる場合に比べて、演色性を向上させることができる。
【0057】
図7は、本実施の形態に係る照明器具1の制御ブロック図である。図7に示すように、電源装置31は、青色用LEDモジュール18の白色LED181と、青色LED182と、緑色LED183とに、それぞれ電流を流す第1電源装置31aと、第2電源装置31bと、第3電源装置31cと、を備える。LED毎に個別に電源装置を備えることで、青色用LEDモジュール18の発光色に対して二次元の制御ができるため、様々な青空を再現することができる。電源装置31は、さらに、白色用LEDモジュール14の白色LED141と、白色LED142と、にそれぞれ電流を流す第4電源装置31dと、第5電源装置31eと、を備える。
【0058】
また、調光ユニット32は、第1電源装置31aおよび第2電源装置31bに第1調光信号を送信する第1制御回路32aと、第3電源装置31cに第2調光信号を送信する第2制御回路32bと、を備える。すなわち、第1制御回路32aは、青色用LEDモジュール18の白色LED181および青色LED182の発光を制御し、第2制御回路32bは、青色用LEDモジュール18の緑色LED183の発光を制御するものである。
【0059】
また、調光ユニット32は、さらに、第4電源装置31dに第3調光信号を送信する第3制御回路32cと、第5電源装置31eに第4調光信号を送信する第4制御回路32dと、を備える。すなわち、第3制御回路32cは、白色用LEDモジュール14の白色LED141の発光を制御するものであり、第4制御回路32dは、白色用LEDモジュール14の白色LED142の発光を制御するものである。第1制御回路32a~第4制御回路32dは、例えばタイマー(不図示)を有するマイクロコンピュータであり、時刻に応じて第1電源装置31a~第5電源装置32eを制御する。
【0060】
上述のように、本実施の形態では、第1制御回路32aによって、青色用LEDモジュール18の白色LED181と青色LED182との両方に対し、同じ制御を行う。これにより、LED毎に制御回路を設ける場合に比べて、照明制御を簡易化できるとともに、制御回路の数を削減させることができる。本実施の形態の場合は、制御回路の数を4つとすることができ、照明器具1の開発が容易になる。
【0061】
第1~第5調光信号は、例えばPWM(Pulse Width Modulation)信号であり、PWM信号のデューティ比に応じて光量が変更される。電源装置31は、PWM信号に基づいて、各LEDに流れる電流を変えることで青色用LEDモジュール18と白色用LEDモジュール14との調光制御を行う。
【0062】
[照明器具1の設置高さの検討]
次に、疑似窓照明である照明器具1が、天井C(図2参照)ではなく壁面100(図8参照)に配置される際に、違和感が発生するメカニズムと、違和感がなくなる最適な高さについて説明する。発明者らは、違和感が発生するメカニズムを解明し、その違和感を無くす手段を検討した。
【0063】
検討のための実験で用いられた照明器具1は、寸法が縦横640mmの四角形であり、高さが120mmであり、部屋に形成された寸法が縦横640mmの四角形の埋込穴に取り付けられる埋込型であった。照明器具1が取り付けられた部屋は、窓がなく、一辺が概ね5mの四角い形状であり、天井の高さは、2700mmであった。
【0064】
照明器具1は、中央に寸法が縦横434mmの四角形の拡散パネル17としてレイリー散乱板が配置されていた。レイリー散乱板は、レイリー散乱により青空を模したナノ粒子を分散させたアクリル板であり、外から見た場合の空を模したものである。拡散パネル17には、青色光、緑色光、白色光を含むLED素子が配置されたモジュールが設けられていた。
【0065】
照明器具1は、中央部分に空を模した空模擬部17a(図8参照)になっており、空模擬部17aの周囲が、背面に光源が配置された日向部13b(図8参照)になっていた。空模擬部17aは、空を模した部分であり、一様なカラー光に染まることで空が模擬される。日向部13bは、窓から差し込んだ光が窓枠を照らしている事を模した部分であり、独立して発光色、又は、調光を制御することが可能である。日向部13bは、透光性拡散板の一部であり、背面に光源を備え、透光性拡散板を介して白色光を照射する。空模擬部17aは、全光束が1,050lmであり、日向部13bは、光束が2,850lmであった。空模擬部17a及び日向部13b双方の全光束の混合値は、3,900lmであった。部屋には、色温度が9,000K~6,000Kの照明器具1が一台設置され、その他に照明器具は一切配置されていなかった。
【0066】
実験では、まず、照明器具1が部屋の天井に配置され、照明器具1の設置位置が変化されて、20歳代から60歳代の男女15人を被験者として感想を聞いた。その結果、被験者は、一様に、空を模擬した照明器具1が持つ開放感等の効果が発揮されていると回答した。また、違和感を訴える被検者はいなかった。
【0067】
次に、照明器具1が壁面100(図8参照)に配置された。壁面100は、一辺が概ね5mの四角い形状で天井の高さが2,700mmの窓のない部屋の壁面である。照明器具1は、壁面100に形成された寸法が縦横640mmの四角形の埋込穴に取り付けられ、同じ照明器具1が壁面100の異なる場所に配置されて、天井の場合と同様、被験者に感想を聞いた。
【0068】
照明器具1が壁面100に配置された場合には、被験者の幾人かが、様々な取付け場所で違和感があると回答した。被検者、又は、照明器具1が配置される場所によって、違和感がある場合と、ない場合とがあることが判明した。
【0069】
更に、空を模擬した部分を有する照明器具1の壁面100への設置高さを徐々に変化させ、何が違和感の原因かを調査した。その結果、照明器具1が概ね壁の高い位置に設置されていると、違和感を与えず、比較的低い位置に設置されていると、多くの違和感を与えることがわかった。
【0070】
次に、この違和感に関して、複数の被検者への聞き取り調査が行われた。その結果、「本来空が見えるはずのない位置に空がある」ということに違和感があるといった意見が上がった。更には、「本来風景が見える所に空があることに違和感があった。」といった意見が聞かれた。
【0071】
つまり、「見えるべき景色が見えず、代わりに有るはずの無い空が見える」ことが、違和感の原因と判明した。更に、その原因の確からしさを確認するために、それら機器を床に設置したところ、被験者一様に「地面が見えるはずの床下に青空がある」ことに、違和感があると意見の一致をみた。これにより違和感は、ありえない景色が模擬された結果と判断した。
【0072】
次に、何故同じ壁に設置した空を模擬した照明器具1であっても、違和感がない場合があるかを調査した。その結果、概ね目線の位置より高い位置が空に模擬されていても、特に違和感がない事が実験結果より明確となった。また、被験者の目線の位置が、身長により変わるため、被験者毎に違和感がない設置高さが変わるという事実も明確になった。
【0073】
発明者らの一連の被験者を用いた実験により、照明器具1において、空を模擬した拡散パネル17の最下端が、被験者の目線より高くなれば良いことが発見できた。
【0074】
ここで、疑似窓照明である照明器具1が壁に設置される際は、比較的高い位置に設置された方が開放感を得られることが知られている。例えば、三菱電機照明株式会社2022年カタログのM18ページには「設置高さは天井高さ等で変わりますが、器具中心部の高さを1700mm以上にし、見上げるイメージにするのがおすすめです」と記載されていた。この場合、照明器具1の空を模擬した部分が縦横434mmの四角形であるので、拡散パネル17の下端の高さは以下の式で表すことができる。
【0075】
[数1]
1700-(434/2)=1483(mm)
【0076】
拡散パネル17の下端の高さが1,483mmである場合、空を模擬した照明器具1の近くに立ち、疑似窓照明である照明器具1を眺め、拡散パネル17の空模擬部17aの下端を見た際には、見下ろしているにも拘らず、風景が見えない。このため、違和感を避けることができない。
【0077】
これを解消するために、発明者らは、壁面100への最適な設置位置を検討した。検討では、照明器具1が、特に日本国内の施設に設置されることを想定し、またその利用者が、概ね日本人であると想定した。
【0078】
平成24年総務省統計局のデータによると、20歳以上の日本人男性の平均身長1,673mmは、20歳以上の日本人女性の平均身長1,542mmよりも高い。更に、20歳以上の日本人男性の平均身長1,673mmよりも、20歳~29歳の日本人男性の平均身長1,716mmの方が高い。従って、1,716mmの平均身長の方々の目線の高さを基準とすれば、30歳以上の日本人男性、又は、日本人女性の目線より高くなるため、多くの日本人における違和感の課題が解消される。
【0079】
次に20歳~29歳の男性の平均身長1,716mmを基準とした場合、平均より背が高い人は、依然違和感がある。1,716mmの人の目線高さは、身長から概ね100mmを減じた値であるため1,616mmとなる。
【0080】
次に、20歳~29歳の男性の身長の標準偏差は、59mm程度である。ばらつきが正規分布に従うとして、20歳~29歳の男性の95%に違和感のない高さは、平均身長+(2σn-1)-目の高さであるので、これを求めると、以下である。
【0081】
[数2]
1716+(59×2)-100=1734(mm)
【0082】
更に、20歳~29歳の男性の99%の方に違和感がない高さは、平均身長+(3σn-1)-目の高さであるので、これを求めると、以下である。
【0083】
[数3]
1716+(59×3)-100=1793(mm)
【0084】
図8は、本実施の形態に係る照明器具1の位置を説明する模式図である。図8において、A及びBは、照明器具1を見る人が立つ位置を示している。図8に示すように、照明器具1は、空模擬部17aの下端が、床面から1,734mm以上の高さになるように設置されている。
【0085】
上述のように、平均身長の高い20歳~29歳の男性のグループであっても、95%の方の目線は、床面から1,734mm以下になる。このため、人がAの位置に立っても、Bの位置に立っても、少なくとも目線よりも高い位置に空模擬部17aが配置される。空模擬部17aが見上げる位置に配置され、見下ろしている位置に配置されていないため、見えるはずの景色が見えないという違和感が発生しない。
【0086】
図9は、比較例1に係る照明器具1の位置を説明する模式図である。図9において、P1及びP2は、照明器具1の具体例を示し、A及びBは、照明器具1を見る人が立つ位置を示している。図9に示すように、照明器具1は、空模擬部17aの中央が、床面から1,734mmの高さになるように設置されている。空模擬部17aの下端は、床面から1,483mmの高さに設置されている。この高さは、通常の窓のように外の景色が見える様な目線の高さである。この場合、P1のように、なにがしかの景色が見えるはずであるところ、景色は一切見えず、P2の様な空を模擬した部分を見下ろすことになる。つまり、人がBの位置に立っていても、空模擬部17aが若干見下ろす位置に掛かってしまい、Aの位置に立っていると、更に見下ろす位置に空模擬部17aが広がってしまうため、不自然にも空を見下ろしている違和感を与えてしまう。
【0087】
以上説明した通り、20歳~29歳の男性という比較的平均身長が高い集団であっても、その95%の人に違和感がない壁面100への設置高さは、空模擬部17aである拡散パネル17の下端位置が1,734mm以上に設置されていればよい。同様に、99%の方に違和感がないように設置するには、1,793mm以上の設置高さにすればよい。
【0088】
なお、日本人で最も背の高い方でも違和感がなくなるように、照明器具1を更に高い位置へ設置すればよい。ただし、天井との間隔が狭くなると、バランスを欠いてしまうため、適当な位置でとどめる方が好ましい。
【0089】
本開示では、疑似窓照明である照明器具1の、空を模擬した部分である空模擬部17aの最下端が、多くの日本人の目線の高さより高い位置に設置される。このため、空模擬部17aが見上げる位置にあり、空だけが見え風景が見えなくとも違和感を与えることが無い。つまり、逆に見下げるような目線をとった際に、本来見えるべき窓の外の景色が見えず、そこに有るはずの無い青空が見えるという違和感を発生させないという効果が有る。
【0090】
図10は、比較例2に係る照明器具1の模式図である。図10に示すように、比較例2に係る照明器具1は、平面状の拡散器214と、拡散器214の前に設けられた窓枠220とを有する。拡散器214の背面よりカラー光が照射され、青空又は夕焼けの様な色に光る面と、窓枠にあたかも太陽光が照射しているかの様な白色光が照射される面とにより、窓が模擬されている。
【0091】
図11は、比較例3に係る照明器具1の模式図である。図11に示すように、比較例3に係る照明器具1は、中央領域313aと、端部領域313bとを有する。中央領域313aがカラー光に染まるとともに、端部領域313b周辺から主として白色光が照射されることで、奥行き感や光演出効果を向上させている。
【0092】
図12は、比較例4に係る照明器具1の模式図である。図12に示すように、照明器具1は、レイリー拡散体として働く拡散光発生体420を有し、実際の青空が太陽光のレイリー散乱により青く見える原理が再現されている。
【0093】
比較例2~比較例4に係る照明器具1においても、本実施の形態に係る照明器具1と同様の効果が得られる。つまり、比較例2~比較例4に係る照明器具1が壁面100に配置された場合、空模擬部17aに対応する部分の下端位置が1,734mm以上に設置されることで、空模擬部17aが見上げる位置に配置され、見下げるような目線にならない。このため、本来見えるべき窓の外の景色が見えず、そこに有るはずの無い青空が見えるという違和感が発生することが抑制できる。
【0094】
なお、比較例3のように、中央部と両端部との発光色が異なっている場合、壁面に設置すると上下に夕焼けの赤色が分離してしまうので、水平かつ上方の端部を消灯するか、又は、当該端部を中央部と同様な発光色にすると良い。
【0095】
また、画像又は映像が自由に再現できる液晶又は有機ELディスプレイが、目線の位置に設置された場合に、ディスプレイに窓の外の風景が生成されていれば違和感が生じないが、空が映し出された場合には違和感が発生する。この場合にも、ディスプレイが本実施の形態のように配置されることで違和感がなくなり、同様の効果が得られる。
【0096】
以上説明した、本実施の形態に係る照明器具1は、空が模擬される空模擬部17aの下端の床面からの高さ位置が、男性の平均身長と標準偏差2σとを加えた値から100mmを減じた高さ以上になるように設置される。そのため、空を模擬した部分の最下端が、空模擬部17aを見上げる位置に配置される。これにより、空模擬部17aに空だけが見えていても、見下げるような目線をとった際に本来見えるべき窓の外の景色が見えず、そこに有るはずの無い青空が見えるという違和感が生じない。
【0097】
また、照明器具1は、液晶、或いは、有機ELの画像表示手段を持たないため、空模擬部17aが風景を有しないが、風景のないことに対する違和感が解消される。
【0098】
また、男性の平均身長を、20歳~29歳男性の平均身長とした。20歳~29歳男性の平均身長は、30歳以上の日本人男性の平均身長および日本人女性の平均身長よりも高い。そのため、空模擬部17aが20歳~29歳男性の平均身長を基準にした位置に配置されることで、その他の身長の人でも風景のないことに対する違和感を解消することができる。
【0099】
また、空模擬部17aの下端は、平均身長の男性の目の高さに配置されており、目の高さを基準とすることで、空模擬部17aを見上げる位置に配置されなくなるため、風景のないことに対する違和感が解消できる。
【0100】
また、拡散パネル17の周縁に配置されている透光性拡散板から白色光が照射されることで、照明に適した光が照射され、窓から差し込んだ光が窓枠を照らしている事を模擬することができる。
【0101】
また、拡散パネル17によるレイリー散乱を用いて空模擬部17aにおいて青空を再現し、空模擬部17aの周囲に配置された透光性拡散板により窓から差し込み、窓枠を照らす光を再現することができる。
【0102】
また、カラー光は、可視域全体の一部に分光分布を持つ光であるため、分布を持つ領域の波長成分のうち、短~中波長光がレイリー散乱により散乱されることで空模擬部17aを発光させることができる。
【0103】
また、カラー光は、可視域全体にわたって分光分布を持つ白色光であるため、長波長光は散乱されず、短~中波長光が散乱されて、空模擬部17aを青空が模擬された色に発光させることができる。
【0104】
また、空模擬部17aの下端が、床面から1,734mm以上の高さに設置されることで、20歳~29歳の男性という比較的平均身長が高い集団であっても、その95%の人に違和感が生じないように設置することができる。
【0105】
また、空模擬部17aの下端が、床面から1,793mm以上の高さに設置されることで、99%の人に違和感が生じないように設置することができる。
【0106】
以下、本開示の諸態様を付記としてまとめて記載する。
【0107】
(付記1)
中央に開口部を有する枠状の板部が取り付けられた照明器具の本体と、
前記板部の前記開口部よりも前記本体側に取り付けられた拡散パネルと、
を備え、
前記拡散パネルの中央部には、一様なカラー光に染まることで空が模擬される空模擬部が設けられており、
前記空模擬部の下端の壁面における床面からの高さ位置が、男性の平均身長と標準偏差2σとを加えた値から100mmを減じた高さ以上になるように設置される
疑似窓照明。
(付記2)
前記本体は、液晶、或いは、有機ELの画像表示手段を持たない
付記1に記載の疑似窓照明。
(付記3)
前記男性の前記平均身長は、20歳~29歳男性の平均身長である
付記1又は2に記載の疑似窓照明。
(付記4)
前記空模擬部の下端は、
前記平均身長の前記男性の目の高さである
付記1~3のいずれか1つに記載の疑似窓照明。
(付記5)
前記本体の前記板部の内側に配置され、前記拡散パネルの端面に向けて光を照射する光源と、
前記拡散パネルの周縁に配置され、背面に前記光源が配置されている透光性拡散板と、
を更に備え、
前記透光性拡散板から白色光が照射される
付記1~4のいずれか1つに記載の疑似窓照明。
(付記6)
前記カラー光は、
可視域全体の一部に分光分布を持つ光である
付記1~5のいずれか1つに記載の疑似窓照明。
(付記7)
前記カラー光は、
可視域全体にわたって分光分布を持つ白色光である
付記1~6のいずれか1つに記載の疑似窓照明。
(付記8)
前記空模擬部の下端が、
前記床面から1,734mm以上の高さに設置されている
付記1~7のいずれか1つに記載の疑似窓照明。
(付記9)
前記空模擬部の下端が、
前記床面から1,793mm以上の高さに設置されている
付記1~7のいずれか1つに記載の疑似窓照明。
【符号の説明】
【0108】
1 照明器具、2σ 標準偏差、10 光源ユニット、11 フランジ部、12 Vばね、13 拡散カバー、13-1 発光面、13-2 非発光面、13b 日向部、14 白色用LEDモジュール、15 モジュール保持部、15-1 取付フランジ、16 下ガイドプレート、16-3 突起部、17 拡散パネル、17-1 端面、17-2 端面、17a 空模擬部、18 青色用LEDモジュール、18-1 貫通穴、19 上ガイドプレート、21 パッキン、22 パッキン、23 絶縁部、24 モジュール保持部、25 固定部材、25-1 突起部、26 導光板カバー、27 上カバー、31 電源装置、31a 第1電源装置、31b 第2電源装置、31c 第3電源装置、31d 第4電源装置、31e 第5電源装置、32 調光ユニット、32a 第1制御回路、32b 第2制御回路、32c 第3制御回路、32d 第4制御回路、50 器具本体、51 主面、51-1 ボルト孔、51-2 電線孔、52 側面、53 Vばね取り付け金具、54 端子台、61 ナット、100 壁面、140 基板、141 白色LED、142 白色LED、180 基板、181 白色LED、182 青色LED、183 緑色LED、214 拡散器、220 窓枠、313a 中央領域、313b 端部領域、420 拡散光発生体。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12