(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173133
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】巻取装置
(51)【国際特許分類】
B65H 54/54 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B65H54/54 B
B65H54/54 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091344
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓之
(72)【発明者】
【氏名】高安 孝治
(72)【発明者】
【氏名】市原 一喜
【テーマコード(参考)】
3F056
【Fターム(参考)】
3F056GB01
3F056GC15
3F056GD02
(57)【要約】
【課題】形成するパッケージの形状を変更する際の巻取装置の調整作業量を減らす。
【解決手段】糸巻取装置100は、第1ストッパー55aと、第2ストッパー55bと、第1移動制限部58aと、第2移動制限部58bと、を備える。第1ストッパー55aは、第1アーム51aからローラ54に近接する方向に突出する。第2ストッパー55bは、第2アーム51bからローラ54に近接する方向に突出する。第1移動制限部58aには第1ストッパー55aが接触する。第2移動制限部58bには第2ストッパー55bが接触する。第1ストッパー55aが第1移動制限部58aに接触するときには、第2ストッパー55bは第2移動制限部58bに接触しない。第2ストッパー55bが第2移動制限部58bに接触するときには、第1ストッパー55aは第1移動制限部58aに接触しない。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置であって、
前記巻取ボビンを回転可能に挟持する第1アームと第2アームとを有するクレードルと、
前記パッケージと接触するローラと、
前記巻取ボビンへの前記糸の巻き取りの進行に応じて、前記クレードルを前記ローラに対して離間させるリフト機構と、
前記クレードルと前記リフト機構とを連結する連結部と、
前記第1アームから前記ローラに近接する方向に突出する第1ストッパーと、
前記第2アームから前記ローラに近接する方向に突出する第2ストッパーと、
前記第1ストッパーが接触することで、前記ローラに近接する方向への前記第1アームの移動を制限する第1移動制限部と、
前記第2ストッパーが接触することで、前記ローラに近接する方向への前記第2アームの移動を制限する第2移動制限部と、
を備え、
前記連結部は、前記ローラの回転軸に対する前記巻取ボビンの回転軸の角度を調整する角度調整機構を有し、
前記第1ストッパーが前記第1移動制限部に接触するときには、前記第2ストッパーは前記第2移動制限部に接触せず、
前記第2ストッパーが前記第2移動制限部に接触するときには、前記第1ストッパーは前記第1移動制限部に接触しない、
巻取装置。
【請求項2】
前記第1移動制限部は、前記第1ストッパーと直交する面を有する、請求項1に記載の巻取装置。
【請求項3】
前記第2移動制限部は、前記第2ストッパーと直交する面を有する、請求項1又は2に記載の巻取装置。
【請求項4】
前記第1ストッパーは、前記第1アームの延在方向において、前記巻取ボビンを挟持する部分と異なる位置に設けられる、請求項1~3のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項5】
前記第2ストッパーは、前記第2アームの延在方向において、前記巻取ボビンを挟持する部分と異なる位置に設けられる、請求項1~4のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項6】
前記第1ストッパーは、前記第1アームに螺合する第1ネジ部分を有する第1軸部と、前記第1ネジ部分に螺合する第1ナット部と、を有する、請求項1~5のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項7】
前記第2ストッパーは、前記第2アームに螺合する第2ネジ部分を有する第2軸部と、前記第2ネジ部分に螺合する第2ナット部と、を有する、請求項1~6のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項8】
前記連結部は、前記角度調整機構とは別の機構であり、前記ローラの回転軸の方向に沿って前記クレードルを前記リフト機構に対して移動可能とする移動機構を有する、請求項1~7のいずれかに記載の巻取装置。
【請求項9】
前記パッケージに巻き取られる糸を往復揺動するアームによってトラバースさせるアーム式トラバース機構をさらに備え、
前記クレードルは、前記巻取ボビンを回転軸周りに回転させるモータを有する、請求項1~8のいずれかに記載の巻取装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給糸ボビンなどの糸供給部から供給された糸を巻取ボビンに巻き取って、糸のパッケージを形成する巻取装置が知られている。この巻取装置には、巻取ボビンを所定の回転軸周りに回転可能に挟持する一対のアームを有するクレードルと、巻取ボビンへの糸の巻き取りの進行に応じてクレードルを持ち上げるリフト機構と、が設けられている(例えば、特許文献1を参照)。また、巻取装置には、巻取ボビン又はパッケージの側面が接触するローラが設けられる。
【0003】
上記の巻取装置では、形状の異なる巻取ボビン(例えば、円錐台形状(コーン形状)、円柱形状)を使用可能である。形状の異なる巻取ボビン又はパッケージの側面をローラに接触させるために、クレードルは、クレードルのローラに対する角度を調整可能にリフト機構に連結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
巻取装置では、クレードルのローラに対する角度を変えることで、異なる形状の巻取ボビンの使用に対応している。しかしながら、従来の巻取装置では、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する際にクレードルの調整に時間がかかっていた。
【0006】
本発明の目的は、巻取装置において、異なる形状の巻取ボビンを変更する際の作業者の調整作業量を減らすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の一態様に係る巻取装置は、糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する装置である。巻取装置は、クレードルと、ローラと、リフト機構と、連結部と、第1ストッパーと、第2ストッパーと、第1移動制限部と、第2移動制限部と、を備える。クレードルは、巻取ボビンを回転可能に挟持する第1アームと第2アームとを有する。ローラは、パッケージと接触する。リフト機構は、巻取ボビンへの糸の巻き取りの進行に応じて、クレードルをローラに対して離間させる。連結部は、クレードルとリフト機構とを連結する。
【0008】
第1ストッパーは、第1アームからローラに近接する方向に突出する。第2ストッパーは、第2アームからローラに近接する方向に突出する。第1移動制限部は、第1ストッパーが接触することで、ローラに近接する方向への第1アームの移動を制限する。第2移動制限部は、第2ストッパーが接触することで、ローラに近接する方向への第2アームの移動を制限する。連結部は、角度調整機構を有する。角度調整機構は、ローラの回転軸に対する巻取ボビンの回転軸の角度を調整する。
【0009】
上記の巻取装置において、第1ストッパーが第1移動制限部に接触するときには、第2ストッパーは第2移動制限部に接触しない。一方、第2ストッパーが第2移動制限部に接触するときには、第1ストッパーは第1移動制限部に接触しない。
【0010】
例えば、巻取ボビンの回転軸をローラの接触面に対して傾斜させた状態でクレードルがローラに近接したときに、第1ストッパーが第1移動制限部に接触する。このとき、第2ストッパーは第2移動制限部に接触しない。一方、巻取ボビンの回転軸をローラの接触面と平行にした状態でクレードルがローラに近接したときに、第2ストッパーが第2移動制限部に接触する。このとき、第1ストッパーは第1移動制限部に接触しない。
【0011】
上記の巻取装置では、クレードルに第1ストッパーと第2ストッパーとを設け、第1ストッパーが第1移動制限部に接触するときには第2ストッパーが第2移動制限部に接触しないようにし、第2ストッパーが第2移動制限部に接触するときには第1ストッパーが第1移動制限部に接触しないようにしている。
【0012】
これにより、例えば、円錐台形状の巻取ボビンを使用する際には、クレードルがローラに近接する方向に移動するときに第1ストッパーが第1移動制限部に接触する一方で、第2ストッパーが第2移動制限部に接触しないようにすることで、第1ストッパーと第1移動制限部によりクレードルがローラに過剰に近接することを防止できる。一方、例えば、円柱形状の巻取ボビンを使用する際には、クレードルがローラに近接する方向に移動するときに第2ストッパーが第2移動制限部に接触する一方で、第1ストッパーが第1移動制限部に接触しないようにすることで、第2ストッパーと第2移動制限部によりクレードルがローラに過剰に近接することを防止できる。すなわち、上記の第1ストッパーと第2ストッパーとをクレードルに設けることにより、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する毎に、クレードルからのストッパーの突出量を調整する必要がなくなる。つまり、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する際の巻取装置の調整作業量を減らすことができる。
【0013】
また、上記の巻取装置には、クレードルとリフト機構とを連結する連結部に、ローラの回転軸に対する巻取ボビンの回転軸の角度を調整する角度調整機構が設けられている。これにより、糸のトラバースの中心位置と巻取ボビンの中心とを一致させることが容易となるとともに、クレードルが他の部材に衝突することを防止できる。
【0014】
上記の巻取装置において、第1移動制限部は、第1ストッパーと直交する面を有してもよい。これにより、クレードルの第1アームがローラに過剰に接近することをより確実に防止できる。
【0015】
上記の巻取装置において、第2移動制限部は、第2ストッパーと直交する面を有してもよい。これにより、クレードルの第2アームがローラに過剰に接近することをより確実に防止できる。
【0016】
上記の巻取装置において、第1ストッパーは、第1アームの延在方向において、巻取ボビンを挟持する部分と異なる位置に設けられてもよい。これにより、第1ストッパーの第1アームからの突出量を幅広く調整可能となる。
【0017】
上記の巻取装置において、第2ストッパーは、第2アームの延在方向において、巻取ボビンを挟持する部分と異なる位置に設けられてもよい。これにより、第2ストッパーの第2アームからの突出量を幅広く調整可能となる。
【0018】
上記の巻取装置において、第1ストッパーは、第1軸部と、第1ナット部と、を有してもよい。第1軸部は、第1アームに螺合する第1ネジ部分を有する。第1ナット部は、第1ネジ部分に螺合する。これにより、第1軸部を第1アームに対して回転させるとの簡単な方法により、第1ストッパーの第1アームからの突出量を調整できる。
【0019】
上記の巻取装置において、第2ストッパーは、第2軸部と、第2ナット部と、を有してもよい。第2軸部は、第2アームに螺合する第2ネジ部分を有する。第2ナット部は、第2ネジ部分に螺合する。これにより、第2軸部を第2アームに対して回転させるとの簡単な方法により、第2ストッパーの第2アームからの突出量を調整できる。
【0020】
上記の巻取装置において、連結部は、移動機構を有してもよい。移動機構は、上記の角度調整機構とは別の機構であり、ローラの回転軸の方向に沿ってクレードルをリフト機構に対して移動可能とする。これにより、リフト機構に対するクレードルの位置と、クレードルのローラに対する角度と、を独立して調整可能となる。この結果、糸のトラバースの中心位置と巻取ボビンの中心とを一致させることがさらに容易となるとともに、クレードルが他の部材に衝突することを防止できる。
【0021】
上記の巻取装置は、パッケージに巻き取られる糸を往復揺動するアームによってトラバースさせるアーム式トラバース機構をさらに備えてもよい。また、クレードルは、巻取ボビンを回転軸周りに回転させるモータを有してもよい。これにより、巻取ボビンを回転させ、アーム式トラバース機構により糸をトラバースさせる巻取装置において、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する際の巻取装置の調整作業量を減らすことができる。
【発明の効果】
【0022】
巻取ボビンを形状の異なるものする毎に、クレードルのローラへ近接する方向への移動を制限するストッパーのクレードルから突出量を調整する必要がなくなるので、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する際の巻取装置の調整作業量を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図2】巻取部をクレードルの第2アーム側から見た斜視図。
【
図3】巻取部をクレードルの第1アーム側から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
1.第1実施形態
(1)糸巻取装置全体
図1を用いて、糸巻取装置100を説明する。
図1は、糸巻取装置100の構成を示す図である。糸巻取装置100は、糸供給部1から供給された糸10を巻取ボビン21に巻き取ってパッケージ20を形成する装置である。糸巻取装置100は、糸供給部1と、糸処理実行部3と、巻取部5と、を備える。
【0025】
糸巻取装置100において、糸供給部1、糸処理実行部3、巻取部5は、糸10の走行方向の上流側から下流側へ向かってこの順に配置される。糸供給部1は、パッケージ20を形成するための糸を供給する。糸処理実行部3は、糸供給部1から供給された糸10を走行させて巻取部5に供給する。巻取部5は、糸処理実行部3から供給された糸10を巻取ボビン21に巻き取ってパッケージ20を形成する。
【0026】
(2)糸供給部
以下、糸供給部1、糸処理実行部3、巻取部5の詳細を説明する。糸供給部1は、給糸ボビン11から糸10を解舒し供給する。糸供給部1は、解舒補助装置13を有している。解舒補助装置13は、規制部材15を給糸ボビン11からの糸10の解舒と連動して下降させることにより、給糸ボビン11からの糸10の解舒を補助する。規制部材15は、給糸ボビン11から解舒された糸の回転と遠心力によって給糸ボビン11上部に形成されたバルーンに対して接触し、当該バルーンに適切なテンションを付与することによって糸の解舒を補助する。
【0027】
(3)糸処理実行部
糸処理実行部3は、糸供給部1から供給された糸10を走行させて巻取部5に供給する。糸処理実行部3は、張力付与装置31と、スプライサ33と、ヤーンクリアラ35と、を主に有している。
【0028】
張力付与装置31は、糸10の走行方向において糸供給部1とスプライサ33との間に配置される。すなわち、張力付与装置31は、糸処理実行部3において糸10の走行方向の上流側に配置される。張力付与装置31は、走行する糸10に所定のテンションを付与する。
【0029】
スプライサ33は、糸10の走行方向において張力付与装置31とヤーンクリアラ35との間に配置される。スプライサ33は、走行する糸10が切れたとき(糸切れ時)又は糸10を切断したとき(糸切断時)に、糸供給部1側の糸10と、巻取部5側の糸10と、を糸継ぎする装置である。
【0030】
スプライサ33により糸継ぎをする際、糸供給部1側の糸10と巻取部5側の糸10とがスプライサ33に導入される。この目的のため、糸処理実行部3は、下糸捕捉部37と、上糸捕捉部39と、を有する。
【0031】
下糸捕捉部37は、スプライサ33の下流に設けられる。下糸捕捉部37の先端には、吸引口37aが設けられる。下糸捕捉部37には吸引源が接続されている。下糸捕捉部37は、吸引源により吸引口37aに吸引流を発生させることで、給糸ボビン11側の糸10を吸引捕捉する。
【0032】
上糸捕捉部39は、スプライサ33の下流に設けられる。上糸捕捉部39の先端には、サクションマウス39aが設けられる。上糸捕捉部39には吸引源が接続されている。上糸捕捉部39は、吸引源によりサクションマウス39aに吸引流を発生させることで、パッケージ20側の糸10を吸引捕捉する。
【0033】
この構成で、糸切断時又は糸切れ時においては、上糸捕捉部39の回動により、サクションマウス39aが、
図1に示す待機位置からパッケージ20近傍の捕捉位置へと移動し、パッケージ20を逆回転させることでパッケージ20から出てきた糸10を吸引捕捉する。その後、サクションマウス39aが捕捉位置から待機位置へと移動し、パッケージ20側の糸10をスプライサ33に導入する。また、下糸捕捉部37の吸引口37aが、
図1に示す捕捉位置で給糸ボビン11側の糸10を吸引捕捉し、その後、捕捉位置から導入位置へと移動することで給糸ボビン11側の糸10をスプライサ33に導入する。スプライサ33は、このように導入された2つの糸10の端部を所定の糸継動作によって糸継ぎする。
【0034】
ヤーンクリアラ35は、糸10の走行方向においてスプライサ33と巻取部5との間に配置される。ヤーンクリアラ35は、糸供給部1とパッケージ20との間を走行する糸10の状態を検出する。ヤーンクリアラ35は、走行する糸10の太さや異物を検出し、糸10の太さ及び/又は異物に関する検出結果に基づいて、糸欠陥を検出する。ヤーンクリアラ35には、糸欠陥を検出したときに糸10を切断するカッターが設けられる。また、ヤーンクリアラ35は、糸10の走行を検出し、糸10の走行を検出できないときに、糸10の糸切れが生じたことを検出できる。ヤーンクリアラ35により糸欠陥が検出されて糸10が切断されたとき、又は、ヤーンクリアラ35により糸切れが検出されたときに、上記で説明した糸継ぎが実行される。
【0035】
糸処理実行部3には、その他、糸10の走行速度を測定する走行速度測定装置、糸10にワックスを付与するワキシング装置など、糸10に対して所定の処理を実行する他の装置が設けられていてもよい。
【0036】
(4)巻取部
以下、
図1~
図3を用いて、巻取部5の構成を説明する。
図2は、巻取部5をクレードル51の第2アーム51b側から見た斜視図である。
図3は、巻取部5をクレードルの第1アーム51a側から見た斜視図である。巻取部5は、糸処理実行部3を通過した糸10を巻取ボビン21に巻き取ってパッケージ20を形成する。
【0037】
巻取部5は、形状の異なるパッケージ20を形成可能である。巻取ボビン21は、両端の径が異なる円錐台形状(コーン形状)又は、両端の径が同じである円柱形状を有している。なお、円錐台形状の巻取ボビン21には、傾斜角度が異なる複数種類の巻取ボビンが存在する。巻取部5は、クレードル51と、リフト機構52と、アーム式トラバース機構53と、ローラ54と、を有する。
【0038】
クレードル51は、巻取ボビン21を着脱可能に、かつ、回転軸A1周りに回転可能に支持する。具体的には、クレードル51は、第1アーム51aと、第2アーム51bと、アーム接続部51cと、を有する。巻取ボビン21は、第1アーム51aと第2アーム51bとにより挟持されてクレードル51に支持される。
【0039】
クレードル51の第1アーム51aの先端部には、巻取ボビン21の一方の端部を保持する第1ボビン保持部B1が設けられている。また、第1アーム51aには、第1ストッパー55aが設けられている。第1ストッパー55aは、第1アーム51aの下部からローラ54に近接する方向に突出して設けられている。第1ストッパー55aは、アーム式トラバース機構53に設けられた第1移動制限部58aに接触することで、第1アーム51a(すなわち、クレードル51)がローラ54に近接する方向にさらに移動することを制限する。
【0040】
第1ストッパー55aは、第1アーム51aに螺合する(すなわち、第1アーム51aにネジ留めされる)ことで、第1アーム51aに固定される。そのため、第1ストッパー55aの第1軸部551の基端側には、第1アーム51aに螺合するネジ山が形成された第1ネジ部分が設けられる。また、第1ストッパー55aの第1ネジ部分には、第1ネジ部分に螺合する第1ナット部552が設けられる。さらに、第1軸部551の先端側には、第1移動制限部58aと接触する第1ゴム部材553が設けられる。
【0041】
上記の構成では、第1ストッパー55aの第1アーム51aへのねじ込み量を調整することで、第1ストッパー55aの第1アーム51aからの突出量を容易に調整できる。また、第1ストッパー55aの第1アーム51aからの突出量を調整した状態で、第1ナット部552を第1アーム51aの方向に移動させることで、突出量を調整した第1ストッパー55aを第1アーム51aに固定することができる。
【0042】
また、第1ストッパー55aは、第1アーム51aの延在方向において、第1ボビン保持部B1が設けられた端部とは異なる位置に設けられる。これにより、第1ストッパー55aを第1アーム51aへねじ込みんだときに、第1ストッパー55aと第1ボビン保持部B1とが干渉することを防止できる。すなわち、第1ストッパー55aの第1アーム51aへのねじ込み量が第1ボビン保持部B1の存在により制限されないので、第1ストッパー55aの突出量の調整幅を大きくできる。
【0043】
なお、第1ストッパー55aは、上記の端部付近に設けることが好ましい。クレードル51の回動中心(パッケージ20の巻き太りにより動く中心)から遠いところに第1ストッパー55aを設ける方が、調整作業をしやすくなる。比較例として、クレードル51の回動中心に第1ストッパー55aを設けてネジをまわすと、ネジの長さの変化量に対してクレードル51の傾きの変化量が大きくなり、微調整が難しくなる。
【0044】
第2アーム51bの先端部には、巻取ボビン21の他方の端部を保持する第2ボビン保持部B2が設けられる。第1アーム51aの第1ボビン保持部B1と第2アーム51bの第2ボビン保持部B2の中心とを結ぶ線が、巻取ボビン21の回転軸A1となる。
【0045】
また、第2アーム51bには、第2ストッパー55bが設けられている。第2ストッパー55bは、第2アーム51bの下部からローラ54に近接する方向に突出して設けられている。第2ストッパー55bは、リフト機構52に設けられた第2移動制限部58bに接触することで、第2アーム51b(すなわち、クレードル51)がローラ54に近接する方向にさらに移動することを制限する。
【0046】
第2ストッパー55bは、第2アーム51bに螺合する(すなわち、第2アーム51bにネジ留めされる)ことで、第2アーム51bに固定される。そのため、第2ストッパー55bの第2軸部554の基端側には、第2アーム51bに螺合するネジ山が形成された第2ネジ部分が設けられる。また、第2ストッパー55bの第2ネジ部分には、第2ネジ部分に螺合する第2ナット部555が設けられる。さらに、第2軸部554の先端側には、第2ゴム部材556が設けられる。
【0047】
上記の構成では、第2ストッパー55bの第2アーム51bへのねじ込み量を調整することで、第2ストッパー55bの第2アーム51bからの突出量を容易に調整できる。また、第2ストッパー55bの第2アーム51bからの突出量を調整した状態で、第2ナット部555を第2アーム51bの方向に移動させることで、突出量を調整した第2ストッパー55bを第2アーム51bに固定することができる。
【0048】
また、第2ストッパー55bは、第2アーム51bの延在方向において、第2ボビン保持部B2が設けられた端部とは異なる位置に設けられる。これにより、第2ストッパー55bを第2アーム51bへねじ込みんだときに、第2ストッパー55bと第2ボビン保持部B2とが干渉することを防止できる。すなわち、第2ストッパー55bの第2アーム51bへのねじ込み量が第2ボビン保持部B2の存在により制限されないので、第2ストッパー55bの突出量の調整幅を大きくできる。
【0049】
さらに、第2アーム51bには、パッケージ駆動モータ56が取り付けられる。パッケージ駆動モータ56は、巻取ボビン21に糸10を巻き取るために、第1ボビン保持部B1及び第2ボビン保持部B2によって保持された巻取ボビン21を回転軸A1周りに回転駆動する。パッケージ駆動モータ56は、パッケージ20(巻取ボビン21)を巻取方向に回転させる正転回転、及び、巻取方向とは反対方向の反巻取方向にパッケージ20を回転させる逆転回転でパッケージ20を回転駆動可能である。パッケージ駆動モータ56の出力回転軸は、第2ボビン保持部B2と相対回転不能に連結される。すなわち、パッケージ駆動モータ56は、第2ボビン保持部B2を回転させることによって巻取ボビン21を回転させる。このように、巻取ボビン21は、いわゆるダイレクトドライブ方式によってパッケージ駆動モータ56によって回転させられる。
【0050】
また、第2アーム51bには、支持解除レバー57が設けられる。巻取ボビン21の一端を第1ボビン保持部B1に接触させた状態で、支持解除レバー57により第2ボビン保持部B2を第1ボビン保持部B1側に移動させることで、巻取ボビン21を第1ボビン保持部B1と第2ボビン保持部B2とにより保持できる。
【0051】
その一方、巻取ボビン21を第1ボビン保持部B1と第2ボビン保持部B2とにより保持した状態で、支持解除レバー57により第2ボビン保持部B2を第1ボビン保持部B1から離間する方向に移動させることで、第1ボビン保持部B1と第2ボビン保持部B2とによる巻取ボビン21の保持を解除して、巻取ボビン21(パッケージ20)をクレードル51から取り外すことができる。
【0052】
アーム接続部51cは、第1アーム51aの基端部(第1ボビン保持部B1が設けられた側とは反対側の端部)と、第2アーム51bの基端部(第2ボビン保持部B2が設けられた側とは反対側の端部)と、を連結する。
【0053】
リフト機構52は、巻取ボビン21への糸10の巻き取りの進行に応じて、すなわち、パッケージ20の径に応じて回動する回動軸A2を有する。回動軸A2には、クレードル51が連結されている。回動軸A2に連結されたクレードル51は、パッケージ20の径に応じて、ローラ54に対して離間するか(すなわち、クレードル51を持ち上げる)、又は、ローラ54に近接する。
【0054】
リフト機構52は、巻取ボビン21への糸10の巻き取りの進行に応じて、すなわち、パッケージ20の径に応じて、クレードル51をローラ54に対して離間させる。これにより、巻取ボビン21への糸10の巻き取りに伴うパッケージ20の径の増大を吸収することができる。
【0055】
リフト機構52の上面部には、第2移動制限部58bが設けられる。第2移動制限部58bは、クレードル51がローラ54に近接する方向に移動したときに、第2アーム51bに設けられた第2ストッパー55bが接触することで、ローラ54に近接する方向への第2アーム51b(クレードル51)の移動を制限する。このとき、第1ストッパー55aは第1移動制限部58aに接触していない。従って、この場合のクレードル51のローラ54に対する位置は、第2ストッパー55bにより決定される。
【0056】
図4に示すように、第2移動制限部58bは、第2ストッパー55bの第2ゴム部材556と接触する第2面P2を有する。第2面P2と接触するときに、第2ストッパー55bの第2軸部554は、第2面P2に対して直交する。すなわち、第2ストッパー55bは、第2面P2に対して直交して接触する。
図4は、第2移動制限部58bの拡大図である。なお、第2面P2と接触するときに、第2ストッパー55bの第2軸部554は、第2面P2に対して直交していなくともよい。
【0057】
第2ストッパー55bが第2面P2に対して直交して接触することで、例えば、第2ストッパー55bが第2面P2において滑ることが抑制される。この結果、第2アーム51b(クレードル51)が、第2ストッパー55bが第2面P2に接触したときの位置からさらに移動することを防止できる。
【0058】
リフト機構52の回動軸A2には、連結部59が設けられる。連結部59は、回動軸A2とクレードル51とを連結することで、リフト機構52とクレードル51とを連結する。
図5を用いて、連結部59を詳細に説明する。
図5は、連結部59の拡大図である。連結部59は、移動機構59aと、角度調整機構59bと、を有する。
【0059】
移動機構59aは、リフト機構52の回動軸A2の方向に沿ってクレードル51を移動させて、クレードル51をリフト機構52に対して移動させるための機構である。クレードル51のリフト機構52に対する位置の調整は、例えば、巻取ボビン21の位置合わせが必要であるときに行われる。
【0060】
移動機構59aには、回動軸A2が挿入される穴591が設けられる。これにより、移動機構59aは、回動軸A2に沿って移動して、リフト機構52に対して離間するか又は近接する方向に移動できる。すなわち、移動機構59aのリフト機構52に対する位置を調整可能となる。
【0061】
移動機構59aの穴591が設けられた箇所より上部は、2つの部分に分割されている。移動機構59aの上部には、この2つの部分を貫通する第1ネジ部材592が設けられている。分割された2つの部分を第1ネジ部材592によって締め付けることにより、移動機構59aを回動軸A2に固定して、移動機構59aのリフト機構52に対する位置を固定できる。一方、第1ネジ部材592による2つの部分の締め付けを緩めることにより、移動機構59aを回動軸A2に沿って移動して、移動機構59aのリフト機構52に対する位置を調整できる。
【0062】
移動機構59aは、角度調整機構59bを介してクレードル51と連結されている。従って、移動機構59aがリフト機構52に対して離間するか又は近接する方向に移動するに伴って、クレードル51がリフト機構52に対して離間するか又は近接する方向に移動する。すなわち、クレードル51のリフト機構52に対する位置は、移動機構59aにより調整できる。
【0063】
角度調整機構59bは、ローラ54の回転軸に対する巻取ボビン21の回転軸A1の角度を調整するための機構である。この角度の調整は、例えば、使用する巻取ボビン21の形状を変更する際に行われる。角度調整機構59bは、クレードル51のアーム接続部51cに設けられ、軸部材593と、開口594と、第2ネジ部材595と、を有する。
【0064】
軸部材593は、クレードル51のアーム接続部51cを、移動機構59aに対して軸部材593周りに回動可能とする。開口594は、アーム接続部51cを貫通するよう設けられる。開口594は、軸部材593を中心とした円弧形状を有する。開口594には、第2ネジ部材595が挿入される。第2ネジ部材595は、アーム接続部51cを移動機構59aに固定することで、クレードル51を移動機構59aに連結する。
【0065】
なお、
図5に示す角度調整機構59bには、開口594以外に、一対の他の開口596が形成されている。この一対の開口596は、パッケージ駆動モータ56を設けない比較的軽いクレードル51を移動機構59aに固定する際に用いられる。軽いクレードル51を固定する場合には、一対の開口596のそれぞれに第2ネジ部材595を挿入し、2つの第2ネジ部材595により、クレードル51を移動機構59aに固定する。
【0066】
軽いクレードル51を移動機構59aに固定する場合に2つのネジ部材を用いる理由は、軽いクレードル51は振動が生じやすく、振動を抑制するためにクレードル51を移動機構59aに強固に固定するためである。その一方、パッケージ駆動モータ56を設けた重いクレードル51の場合には振動が生じにくいため、1つの開口594に挿入された1つの第2ネジ部材595でクレードル51を移動機構59aに固定できる。つまり、重いクレードル51を固定する場合には、操作するネジ部材の数を減少できるので、クレードル51の角度の調整作業量を少なくできる。
【0067】
上記の角度調整機構59bでは、第2ネジ部材595によるアーム接続部51cの移動機構59aへの固定を緩めることにより、クレードル51が軸部材593周りに回動可能となり、クレードル51の角度(巻取ボビン21の回転軸A1の角度)を調整可能となる。
【0068】
上記のように、連結部59においては、クレードル51のリフト機構52に対する位置は移動機構59aにより調整され、クレードル51(巻取ボビン21の回転軸A1)のローラ54に対する角度は角度調整機構59bにより調整される。すなわち、連結部59では、クレードル51のリフト機構52に対する位置の調整と、クレードル51のローラ54に対する角度の調整とを独立して実行できる。さらに言い換えると、連結部59においては、位置や角度の調整機構として、移動機構59aと角度調整機構59bとが個別の機構として設けられている。
【0069】
このように、移動機構59aと角度調整機構59bとを個別の機構として設け、クレードル51の位置調整と角度調整とを独立して実行可能とすることで、クレードルの位置調整と角度調整とを1つの機構で行う場合と比較して、クレードル51(巻取ボビン21)の位置調整と角度調整とをより簡単に行うことができる。
【0070】
クレードル51(巻取ボビン21)の位置と角度の調整は、巻取ボビン21を形状の異なるものに交換するときに行われる。この位置と角度の調整では、巻取ボビン21の中心を糸10のトラバースの中心位置に一致させる。巻取ボビン21の中心を糸10のトラバースの中心位置に一致させることで、巻取ボビン21の形状が異なっていても、糸10を巻取ボビン21に適切に巻き取ることができる。また、この位置と角度の調整では、クレードル51の位置と角度も調整されるので、クレードル51が他の部材に衝突することを防止できる。
【0071】
巻取部5の説明に戻る。巻取部5のアーム式トラバース機構53は、巻取ボビン21又はパッケージ20に巻き取られる糸10を往復揺動するトラバースアーム53bによってトラバースさせる。巻取ボビン21又はパッケージ20への糸10の巻き取りは、アーム式トラバース機構53によって糸10をトラバースさせながら行われる。アーム式トラバース機構53は、トラバース駆動モータ53aと、トラバースアーム53bと、ガイドプレート53cと、カバー部材53dと、を有する。
【0072】
トラバース駆動モータ53aは、正逆回転を所定の周期にて繰り返すことで、トラバースアーム53bをパッケージ20の巻幅方向に往復揺動させる。トラバースアーム53bは、先端にフック形状の糸ガイド部を有する。糸ガイド部に糸10を引っ掛けた状態でトラバースアーム53bを往復揺動させることで、糸10をパッケージ20の巻幅方向にトラバースさせることができる。ガイドプレート53cは、糸10をトラバース箇所へと案内するガイドである。なおトラバースアーム53bは、フック形状の糸ガイド部とベルトにより構成されており、トラバース駆動モータ53aによりベルトが往復運動してもよい。
【0073】
上記のトラバースアーム53bを有するアーム式トラバース機構53では、トラバース駆動モータ53aの正転量と逆転量(すなわち、トラバースアーム53bの往路の揺動量と復路の揺動量)とを調整することで、任意の形状のパッケージを形成できる。このため、クレードル51の位置/傾斜角度を変更する機会が多くなる。
【0074】
カバー部材53dは、トラバース駆動モータ53a及びトラバースアーム53bの一部を覆う部材である。カバー部材53dのリフト機構52から離れた側には、第1移動制限部58aが設けられる。第1移動制限部58aは、クレードル51がローラ54に近接する方向に移動したときに、第1アーム51aに設けられた第1ストッパー55aが接触することで、ローラ54に近接する方向への第1アーム51a(クレードル51)の移動を制限する。このとき、第2ストッパー55bは第2移動制限部58bに接触していない。従って、この場合のクレードル51のローラ54に対する位置は、第1ストッパー55aにより決定される。
【0075】
図6に示すように、第1移動制限部58aは、第1ストッパー55aの第1ゴム部材553と接触する第1面P1を有する。第1面P1と接触するときに、第1ストッパー55aの第1軸部551は、第1面P1に対して直交する。すなわち、第1ストッパー55aは、第1面P1に対して直交して接触する。
図6は、第1移動制限部58aの拡大図である。なお、第1面P1と接触するときに、第1ストッパー55aの第1軸部551は、第1面P1に対して直交していなくともよい。
【0076】
第1ストッパー55aが第1面P1に対して直交して接触することで、例えば、第1ストッパー55aが第1面P1において滑ることが抑制される。この結果、第1アーム51a(クレードル51)が、第1ストッパー55aが第1面P1に接触したときの位置からさらに移動することを防止できる。
【0077】
ローラ54は、外周面がパッケージ20の外周面に接触することで、パッケージ20の回転に伴って、ローラ54の長手方向と平行な回転軸周りに従動回転する。パッケージ20の外周面が接触するローラ54の外周面を「接触面」と呼ぶことにする。ローラ54は、円柱形状を有している。ローラ54は、パッケージ20の形状を整える機能を有している。また、ローラ54は、トラバースされた糸10をトラバースされた位置で保持しつつ、パッケージ20に巻き取らせる機能を有している。
【0078】
なお、糸10の巻き取り開始時においては、巻取ボビン21の外周面とローラ54の接触との間には隙間が設けられる。この隙間の大きさは、例えば、糸10の巻き取り開始前に、巻取ボビン21を支持するクレードル51の角度及び/又は位置の調整を行うことによって、巻取ボビン21の外周面とローラ54の接触面とを平行とする際に設定できる。この隙間の大きさは、糸巻取装置100の機種、巻取ボビン21の種類等に応じて適宜設定されるが、例えば、1mm~2mm程度とできる。
【0079】
このように、巻取ボビン21の外周面とローラ54の接触面との間に隙間を設けることにより、例えば、糸10の巻き取り開始時に巻取ボビン21に振動が生じたとしても、巻取ボビン21の振動を隙間によって吸収できる。
【0080】
以上、糸10を巻き取ってパッケージ20を形成する巻取部5を説明した。この巻取部5は、形状の異なる巻取ボビンを使用可能である。例えば、円柱形状のパッケージ20を形成する場合には、
図2示すような円柱形状の巻取ボビン21が用いられる。円柱形状の巻取ボビン21をクレードル51にて支持する場合、巻取ボビン21の回転軸A1がローラ54の回転軸(ローラ54の長手方向)と平行になるようクレードル51の角度が調整される。具体的には、クレードル51の第1アーム51aと第2アーム51bとが同じ高さとなるよう、クレードル51の角度が調整される。
【0081】
図2に示すように、巻取ボビン21の回転軸A1をローラ54の回転軸と平行にした状態でクレードル51がローラ54に近接すると、第2アーム51bに設けられた第2ストッパー55bがリフト機構52に設けられた第2移動制限部58bに接触(当接)する。その一方、第1アーム51aに設けられた第1ストッパー55aは、第1移動制限部58aに接触しない。これにより、第2ストッパー55bと第2移動制限部58bにより、第2アーム51bがローラ54の方向に過剰に接近して、糸巻取装置100の部品に接触することを防止できる。
【0082】
一方、巻取部5において例えば円錐台形状のパッケージ20を形成する場合には、
図3示すような円錐台形状の巻取ボビン21が用いられる。円錐台形状の巻取ボビン21をクレードル51にて支持する場合、
図3に示すように、巻取ボビン21の外周面をローラ54の接触面と平行とするために、巻取ボビン21の回転軸A1がローラ54の回転軸に対して傾斜するようクレードル51の角度が調整される。具体的には、クレードル51の第1アーム51a側が第2アーム51b側よりも下に配置されるよう、クレードル51の角度が調整される。上記のように、円錐台形状の巻取ボビン21には傾斜角度が異なる複数種類の巻取ボビンが存在するが、クレードル51の角度は、円錐台形状の巻取ボビン21の種類に応じて調整する。この場合、必要に応じて、第1ストッパー55a、第2ストッパー55bの突出量を調整してもよい。
【0083】
図3に示すように、巻取ボビン21の回転軸A1をローラ54の回転軸に対して上記のように傾斜した状態でクレードル51がローラ54に近接すると、第1アーム51aに設けられた第1ストッパー55aが、アーム式トラバース機構53のカバー部材53dに設けられた第1移動制限部58aに接触(当接)する。その一方、第2アーム51bに設けられた第2ストッパー55bは、第2移動制限部58bに接触しない。これにより、第1ストッパー55aと第1移動制限部58aにより、第1アーム51aがローラ54の方向に過剰に接近して、糸巻取装置100の部品に接触することを防止できる。
【0084】
このように、本実施形態では、円錐台形状の巻取ボビン21を使用する際にクレードル51の移動を制限する第1ストッパー55aと、円柱形状の巻取ボビン21を使用する際にクレードル51の移動を制限する第2ストッパー55bとが、クレードル51に個別に設けられている。そして、一方のストッパーが対応する移動制限部に接触する場合に、他方のストッパーが対応する移動制限部に接触しない。これにより、巻取ボビン21の形状に応じたストッパーがクレードル51の移動を制限することになるので、巻取ボビン21を形状の異なるものに変更する毎に、クレードル51からのストッパーの突出量を調整する必要がなくなる。この結果、巻取ボビン21を形状の異なるものに変更する際の糸巻取装置100の調整作業量を減らすことができる。
【0085】
巻取ボビン21を形状の異なるものに変更するために、クレードル51の位置及び/又は傾きを変更した場合、クレードル51の高さ方向の位置が変化する。そのため、クレードル51にストッパーが1つしか設けられていない場合には、巻取ボビン21を形状の異なるものに変更する毎に、ストッパーのクレードル51からの突出量を調整する必要がある。
【0086】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
(A)トラバースアーム53bを有するアーム式トラバース機構53の代わりに、ローラ54を、綾振溝を形成した綾振りドラムに変更し、この綾振りドラムを用いて糸10のトラバースを行うようにしてもよい。
【0087】
(B)クレードル51にパッケージ駆動モータ56を設けず、ローラ54をモータにより回転させて、ローラ54の回転に従って巻取ボビン21を従動回転させるようにしてもよい。例えば、綾振りドラムにより糸10をトラバースする場合に、この方式を用いることができる。つまり、ローラ54を綾振りドラムとすることができる。
【0088】
この場合には、クレードル51の重量が軽くなるので、一対の開口596のそれぞれに第2ネジ部材595を挿入し、2つの第2ネジ部材595によりクレードル51を移動機構59aに固定するようにしてもよい。
【0089】
(C)第1ストッパー55aとして、第1アーム51aに螺合する第1ねじ部分の長さが異なるものが複数種類存在してもよい。これにより、例えば、第1アーム51aにおいて第1ねじ部分のねじ込み量が少ししか取れない位置であっても、第1ストッパー55aを配置できる。すなわち、第1アーム51aにおける第1ストッパー55aの取付位置の自由度が高まる。
【0090】
(D)第2ストッパー55bとして、第2アーム51bに螺合する第2ねじ部分の長さが異なるものが複数種類存在してもよい。これにより、例えば、第2アーム51bにおいて第2ねじ部分のねじ込み量が少ししか取れない位置であっても、第2ストッパー55bを配置できる。すなわち、第2アーム51bにおける第2ストッパー55bの取付位置の自由度が高まる。
【0091】
(E)上記の技術は、上記にて説明した糸巻取装置100とは異なる方式でパッケージを形成する装置にも適用できる。例えば、繊維束に旋回空気流を作用させて糸を生成し、生成した糸を巻き取ってパッケージを形成する空気紡績機にも適用できる。
【0092】
3.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
(1)巻取装置(例えば、糸巻取装置100)は、クレードル(例えば、クレードル51)と、ローラ(例えば、ローラ54)と、リフト機構(例えば、リフト機構52)と、連結部(例えば、連結部59)と、第1ストッパー(例えば、第1ストッパー55a)と、第2ストッパー(例えば、第2ストッパー55b)と、第1移動制限部(例えば、第1移動制限部58a)と、第2移動制限部(例えば、第2移動制限部58b)と、を備える。クレードルは、巻取ボビン(例えば、巻取ボビン21)を回転可能に挟持する第1アーム(例えば、第1アーム51a)と第2アーム(例えば、第2アーム51b)とを有する。ローラは、パッケージ(例えば、パッケージ20)と接触する。リフト機構は、巻取ボビンへの糸の巻き取りの進行に応じて、クレードルをローラに対して離間させる。連結部は、クレードルとリフト機構とを連結する。
【0093】
第1ストッパーは、第1アームからローラに近接する方向に突出する。第2ストッパーは、第2アームからローラに近接する方向に突出する。第1移動制限部は、第1ストッパーが接触することで、ローラに近接する方向への第1アームの移動を制限する。第2移動制限部は、第2ストッパーが接触することで、ローラに近接する方向への第2アームの移動を制限する。連結部は、角度調整機構(例えば、角度調整機構59b)を有する。角度調整機構は、ローラの回転軸に対する巻取ボビンの回転軸(例えば、回転軸A1)の角度を調整する。
【0094】
上記の巻取装置において、第1ストッパーが第1移動制限部に接触するときには、第2ストッパーは第2移動制限部に接触しない。一方、第2ストッパーが第2移動制限部に接触するときには、第1ストッパーは第1移動制限部に接触しない。
【0095】
例えば、巻取ボビンの回転軸をローラの接触面に対して傾斜させた状態でクレードルがローラに近接したときに、第1ストッパーが第1移動制限部に接触する。このとき、第2ストッパーは第2移動制限部に接触しない。一方、巻取ボビンの回転軸をローラの接触面と平行にした状態でクレードルがローラに近接したときに、第2ストッパーが第2移動制限部に接触する。このとき、第1ストッパーは第1移動制限部に接触しない。
【0096】
上記の巻取装置では、クレードルに第1ストッパーと第2ストッパーとを設け、第1ストッパーが第1移動制限部に接触するときには第2ストッパーが第2移動制限部に接触しないようにし、第2ストッパーが第2移動制限部に接触するときには第1ストッパーが第1移動制限部に接触しないようにしている。
【0097】
これにより、例えば、円錐台形状の巻取ボビンを使用する際には、クレードルがローラに近接する方向に移動するときに第1ストッパーが第1移動制限部に接触する一方で、第2ストッパーが第2移動制限部に接触しないようにすることで、クレードルがローラに過剰に近接することを防止できる。一方、例えば、円柱形状の巻取ボビンを使用する際には、クレードルがローラに近接する方向に移動するときに第2ストッパーが第2移動制限部に接触する一方で、第1ストッパーが第1移動制限部に接触しないようにすることで、クレードルがローラに過剰に近接することを防止できる。すなわち、上記の第1ストッパーと第2ストッパーとをクレードルに設けることにより、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する毎に、クレードルからのストッパーの突出量を調整する必要がなくなる。つまり、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する際の巻取装置の調整作業量を減らすことができる。
【0098】
また、上記の巻取装置には、クレードルとリフト機構とを連結する連結部に、ローラの回転軸に対する巻取ボビンの回転軸の角度を調整する角度調整機構が設けられている。これにより、糸のトラバースの中心位置と巻取ボビンの中心とを一致させることが容易となるとともに、クレードルが他の部材に衝突することを防止できる。
【0099】
(2)上記(1)の巻取装置において、第1移動制限部は、第1ストッパーと直交する面(例えば、第1面P1)を有してもよい。これにより、クレードルの第1アームがローラに過剰に接近することをより確実に防止できる。
【0100】
(3)上記(1)又は(2)の巻取装置において、第2移動制限部は、第2ストッパーと直交する面(例えば、第2面P2)を有してもよい。これにより、クレードルの第2アームがローラに過剰に接近することをより確実に防止できる。
【0101】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの巻取装置において、第1ストッパーは、第1アームの延在方向において、巻取ボビンを挟持する部分と異なる位置に設けられてもよい。これにより、第1ストッパーの第1アームからの突出量を幅広く調整可能となる。
【0102】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの巻取装置において、第2ストッパーは、第2アームの延在方向において、巻取ボビンを挟持する部分と異なる位置に設けられてもよい。これにより、第2ストッパーの第2アームからの突出量を幅広く調整可能となる。
【0103】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの巻取装置において、第1ストッパーは、第1軸部(例えば、第1軸部551)と、第1ナット部(例えば、第1ナット部552)と、を有してもよい。第1軸部は、第1アームに螺合する第1ネジ部分を有する。第1ナット部は、第1ネジ部分に螺合する。これにより、第1軸部を第1アームに対して回転させるとの簡単な方法により、第1ストッパーの第1アームからの突出量を調整できる。
【0104】
(7)上記(1)~(6)のいずれかの巻取装置において、第2ストッパーは、第2軸部(例えば、第2軸部554)と、第2ナット部(例えば、第2ナット部555)と、を有してもよい。第2軸部は、第2アームに螺合する第2ネジ部分を有する。第2ナット部は、第2ネジ部分に螺合する。これにより、第2軸部を第2アームに対して回転させるとの簡単な方法により、第2ストッパーの第2アームからの突出量を調整できる。
【0105】
(8)上記(1)~(7)のいずれかの巻取装置において、連結部は、移動機構(例えば、移動機構59a)を有してもよい。移動機構は、上記の角度調整機構とは別の機構であり、ローラの回転軸(例えば、回動軸A2)の方向に沿ってクレードルをリフト機構に対して移動可能とする。これにより、リフト機構に対するクレードルの位置と、クレードルのローラに対する角度と、を独立して調整可能となる。この結果、糸のトラバースの中心位置と巻取ボビンの中心とを一致させることがさらに容易となるとともに、クレードルが他の部材に衝突することを防止できる。
【0106】
(9)上記(1)~(8)のいずれかの巻取装置は、パッケージに巻き取られる糸を往復揺動させるアーム(例えば、トラバースアーム53b)によってトラバースさせるアーム式トラバース機構(例えば、アーム式トラバース機構53)をさらに備えてもよい。また、クレードルは、巻取ボビンを回転軸周りに回転させるモータ(例えば、パッケージ駆動モータ56)を有してもよい。これにより、巻取ボビンを回転させ、アーム式トラバース機構により糸をトラバースさせる巻取装置において、巻取ボビンを形状の異なるものに変更する際の巻取装置の調整作業量を減らすことができる。
【産業上の利用可能性】
【0107】
本発明は、糸を巻取ボビンに巻き取ってパッケージを形成する巻取装置に広く適用できる。
【符号の説明】
【0108】
100 :糸巻取装置
1 :糸供給部
10 :糸
11 :給糸ボビン
13 :解舒補助装置
15 :規制部材
3 :糸処理実行部
31 :張力付与装置
33 :スプライサ
35 :ヤーンクリアラ
37 :下糸捕捉部
37a :吸引口
39 :上糸捕捉部
39a :サクションマウス
5 :巻取部
20 :パッケージ
21 :巻取ボビン
A1 :回転軸
51 :クレードル
51a :第1アーム
51b :第2アーム
51c :アーム接続部
B1 :第1ボビン保持部
B2 :第2ボビン保持部
52 :リフト機構
A2 :回動軸
53 :アーム式トラバース機構
53a :トラバース駆動モータ
53b :トラバースアーム
53c :ガイドプレート
53d :カバー部材
54 :ローラ
55a :第1ストッパー
551 :第1軸部
552 :第1ナット部
553 :第1ゴム部材
55b :第2ストッパー
554 :第2軸部
555 :第2ナット部
556 :第2ゴム部材
56 :パッケージ駆動モータ
57 :支持解除レバー
58a :第1移動制限部
P1 :第1面
58b :第2移動制限部
P2 :第2面
59 :連結部
59a :移動機構
591 :穴
592 :第1ネジ部材
59b :角度調整機構
593 :軸部材
594 :開口
595 :第2ネジ部材
596 :開口