(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173136
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】立軸ポンプ
(51)【国際特許分類】
F04D 13/00 20060101AFI20241205BHJP
F04D 29/046 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F04D13/00 D
F04D29/046 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091351
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】319007240
【氏名又は名称】株式会社日立インダストリアルプロダクツ
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山口 和幸
(72)【発明者】
【氏名】辺見 真
(72)【発明者】
【氏名】篠原 久文
(72)【発明者】
【氏名】井上 康弘
(72)【発明者】
【氏名】志手 和弘
(72)【発明者】
【氏名】三橋 佑規
【テーマコード(参考)】
3H130
【Fターム(参考)】
3H130AA03
3H130AB13
3H130AB22
3H130AB50
3H130AC30
3H130BA13E
3H130BA73D
3H130BA73E
3H130BA77E
3H130BA95D
3H130BA95E
3H130CA21
3H130CB01
3H130DA02X
3H130DB11X
3H130DB15X
3H130DH03Z
3H130DJ06X
3H130EA06D
3H130EA06E
3H130EA07D
3H130EA07E
3H130EB05D
3H130EB05E
3H130EC17E
3H130EC17Z
3H130ED04D
3H130ED04E
(57)【要約】
【課題】
本発明の目的は、シャフトの芯ずれおよび傾きを容易に抑制し、回転体の振動を低減する立軸ポンプを提供することにある。
【解決手段】
本発明の立軸ポンプは、スラスト自動調心ころ軸受103で支持されるカラー102と、軸方向位置が調整可能となるように半径方向間隙112を介してカラー102の内周部に配置されるシャフト2と、を有し、カラー102の内周部に、シャフト2とカラー102との間の芯ずれを抑制する芯ずれ抑制部105Aを有する。芯ずれ抑制部105Aは、シャフト2との間に、シャフト2とカラー102との間に形成される半径方向間隙112(δ)よりも小さい半径方向間隙(g2)を形成する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スラスト自動調心ころ軸受で支持されるカラーと、軸方向位置が調整可能となるように半径方向間隙を介して前記カラーの内周部に配置されるシャフトと、を有する立軸ポンプにおいて、
前記カラーの内周部に、前記シャフトと前記カラーとの間の芯ずれを抑制する芯ずれ抑制部を有し、
前記芯ずれ抑制部は、前記シャフトとの間に、前記シャフトと前記カラーとの間に形成される半径方向間隙よりも小さい半径方向間隙を形成することを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項2】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部は、前記カラーの軸方向中央部に配置されることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項3】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部は、前記カラーの軸方向の中心に配置されることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部は、前記カラーを構成する部材とは別部材で構成されることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項5】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部から前記シャフトと前記カラーとの間の当接部の遠い方の端部までの軸方向距離に対する、前記芯ずれ抑制部から前記スラスト自動調心ころ軸受の傾き中心位置までの軸方向距離の比は、0.5以下であることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項6】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部は、リング部材であり、前記リング部材と前記カラーとの間および前記リング部材と前記シャフトとの間のそれぞれの半径方向間隙の和が、前記カラーと前記シャフトとの間の半径方向間隙の大きさより小さいことを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項7】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記カラーは、内径部に溝部を有し、
前記芯ずれ抑制部は、前記溝部に設けられた弾性リング部材であり、
前記弾性リング部材は、軸方向寸法が前記溝部の軸方向寸法より大きいことを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項8】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部は、前記カラーの円周方向に分布して3本以上配置された芯ずれ調整ボルトであることを特徴とする立軸ポンプ。
【請求項9】
請求項1に記載の立軸ポンプにおいて、
前記芯ずれ抑制部は、弾性リングと、前記弾性リングの内周側に固定され円周方向に複数に分割された分割リングと、前記分割リングを円周方向に移動可能に連結し半径方向に拘束するワイヤと、前記ワイヤを引っ張り前記分割リングの円周方向間隙を縮小するテンションボルトとで構成されることを特徴とする立軸ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は立軸ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
立軸ポンプは主に、液体を内包するケーシングと、ケーシング内部で液体を圧送するインペラと、インペラに動力を伝達するシャフトとで構成され、インペラとシャフトとで回転体を構成する。回転体の自重はシャフト上部に設けられたスラスト軸受で支持される。特開平11-107989号公報(特許文献1)の段落0017-0019及び
図2には、スラスト軸受部の構造例が開示されている。スラスト軸受部はシャフト(主軸)と、シャフトに取り付けられシャフトの軸方向位置を調整する位置決め部材(位置決めリング)と、シャフトの外周部に取り付けられ回転体の自重をスラスト軸受に伝達するカラー(スプリットリング)と、回転体の自重を支持する自動調心スラスト軸受とで構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のスラスト軸受部の構造例では、シャフトの軸方向位置調整と組立性確保のために、シャフトとカラーとの間には半径方向間隙が設けられる。スラスト軸受にはスラスト自動調心ころ軸受が用いられる。スラスト自動調心ころ軸受の軌道面は軸受中心軸上に中心を持つ球面で構成されるため、球面の中心を傾き中心として自由に傾く自動調心作用を有するとともに、スラスト荷重のみならずラジアル荷重も支持する。
【0005】
シャフトとカラーとの間には半径方向間隙が設けられるため、シャフトに芯ずれや傾きが発生する可能性がある。シャフトの芯ずれや傾きが発生すると不釣合い要因となるため、回転体の振動が増加する可能性がある。
【0006】
本発明の目的は、シャフトの芯ずれ及び傾きを容易に抑制し、回転体の振動を低減することができる立軸ポンプを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の立軸ポンプは、
スラスト自動調心ころ軸受で支持されるカラーと、軸方向位置が調整可能となるように半径方向間隙を介して前記カラーの内周部に配置されるシャフトと、を有する立軸ポンプにおいて、
前記カラーの内周部に、前記シャフトと前記カラーとの間の芯ずれを抑制する芯ずれ抑制部を有し、
前記芯ずれ抑制部は、前記シャフトとの間に、前記シャフトと前記カラーとの間に形成される半径方向間隙よりも小さい半径方向間隙を形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、スラスト自動調心ころ軸受の傾き中心におけるシャフトの芯ずれを抑制するとともに、スラスト自動調心ころ軸受の傾き中心におけるシャフトの傾きはスラスト自動調心ころ軸受により自動調心されるので、シャフトの芯ずれおよび傾きを容易に抑制でき、回転体の振動を低減できる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施例に係る立軸ポンプの構造を示す軸方向断面図。
【
図2】本発明の第1実施例(実施例1)に係る芯ずれ抑制装置の軸方向断面図。
【
図3】
図2の芯ずれ抑制装置においてシャフトとカラーとの間に相対的な傾きが生じた場合の軸方向断面図。
【
図4】本発明の第2実施例(実施例2)に係る芯ずれ抑制装置の軸方向断面図。
【
図5】本発明の第3実施例(実施例3)に係る芯ずれ抑制装置の軸方向断面図。
【
図6】本発明の第4実施例(実施例4)に係る芯ずれ抑制装置の軸方向断面図。
【
図7】本発明の第5実施例(実施例5)に係る芯ずれ抑制装置の軸方向断面図。
【
図8】
図7のVIII-VIII断面図であり、本発明の第5実施例(実施例5)に係る芯ずれ抑制部を示す軸直角断面図。
【
図9】本発明の第6実施例(実施例6)に係る芯ずれ抑制部を示す軸直角断面図。
【
図10】本発明の第7実施例(実施例7)に係る芯ずれ抑制部を示す軸直角断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の立軸ポンプの具体的実施例を図面に基づいて説明する。各図において、同一符号を付した部分は同一あるいは相当する部分を示す。
【0011】
図1は、本発明の一実施例に係る立軸斜流ポンプ1の構造を示す図である。
本実施例では、オープン形の羽根車を有する立軸斜流ポンプについて説明する。本発明は、斜流ポンプのほか軸流ポンプ等、他の立軸ポンプにも適用可能である。以下、立軸斜流ポンプを「立軸ポンプ」と呼んで説明する。
【0012】
立軸ポンプ1は、鉛直方向に延びて回転可能に軸支されたシャフト2と、シャフト2の下端部に固定されたインペラ3と、インペラ3の下方からインペラ3の外径部(外周部)を覆い、さらにインペラ3の上方にまで延設されたケーシング4と、インペラ3を回転駆動する駆動モータ6と、を備えている。ケーシング4は、インペラ3の外周部分を除いてほぼ円筒形に形成されており、中心部にシャフト2が配置されている。ケーシング4の内部は、揚水の流路を形成する。
【0013】
ケーシング4に挿設されたシャフト2は、上下方向の複数箇所で、軸受によって回転可能に支持されている。本実施例では、上下方向の2箇所においてラジアル軸受となる水中軸受5a,5bにより支持され、シャフト2の上端部においてスラスト軸受103(
図2参照)によって支持されている。スラスト軸受103は、シャフト2の上端部に配置された軸受箱100に収納されている。なお、シャフト2の最上端部には軸継手7が設けられており、軸受箱100は軸継手7の下方に配置されている。
【0014】
駆動モータ6は床面Fよりも上方に配置され、床面Fよりも上方で軸継手7を介してシャフト2の上端部に接続されている。軸継手7は、シャフト2と駆動モータ6とを接続し、駆動モータ6の回転駆動力をシャフト2に伝達する。
【0015】
本実施例の立軸ポンプ1は、シャフト2の芯ずれを抑制する芯ずれ抑制装置101を備える。以下、芯ずれ抑制装置101の実施例について説明する。
[実施例1]
芯ずれ抑制装置101の第1実施例について、
図2及び
図3を用いて説明する。
図2は、本発明の第1実施例(実施例1)に係る芯ずれ抑制装置101の軸方向断面図である。
【0016】
本実施例の芯ずれ抑制装置101は、シャフト2と、カラー102と、スラスト軸受103と、調整ナット104と、リング部材105Aと、回転・落下防止部材106と、を備える。スラスト軸受103はスラスト自動調心ころ軸受によって構成され、以下、スラスト軸受103を「スラスト自動調心ころ軸受」と呼んで説明する。
【0017】
上下方向(鉛直方向)に伸びるシャフト2の外周部に半径方向間隙112を介してカラー102が設置される。カラー102はスラスト自動調心ころ軸受で支持される。カラー102の上部にはシャフト2の軸方向位置を調整する位置決め部材である調整ナット104が設置される。これにより、シャフト2は軸方向位置が調整可能となるように半径方向間隙を介してカラー102の内周部に配置される。
【0018】
シャフト2、カラー102、調整ナット104が主な回転部材であり、これらの回転部材と図示しないインペラ3とを含む回転体の自重はシャフト2から調整ナット104、カラー102を経由してスラスト自動調心ころ軸受103に伝達される。スラスト自動調心ころ軸受103はスラスト軸受固定部117とカラー102との間に設けられる。スラスト自動調心ころ軸受103の軌道面は傾き中心113である点Oを中心とする球面で構成されるため、回転体は点Oを中心に自由に傾くことができる。
【0019】
シャフト2の軸方向位置調整を可能とするためにシャフト2とカラー102との間には半径方向間隙112が設けられるため、シャフト2に芯ずれや傾きが発生する可能性がある。本実施例では、スラスト自動調心ころ軸受103の傾き中心113の位置に、芯ずれ抑制部105Aとしてリング部材が設けられる。
【0020】
すなわち本実施例の立軸ポンプ1は、スラスト自動調心ころ軸受103で支持されるカラー102と、軸方向位置が調整可能となるように半径方向間隙112を介してカラー102の内周部に配置されるシャフト2と、を有し、カラー102の内周部に、シャフト2とカラー102との間の芯ずれを抑制する芯ずれ抑制部105Aを有する。芯ずれ抑制部105Aは、シャフト2との間に、シャフト2とカラー102との間に形成される半径方向間隙112(δ)よりも小さい半径方向間隙(g2)を形成する。
【0021】
この場合、芯ずれ抑制部105Aはカラー102の軸方向中央部に配置されることが好ましい。より好ましくは、芯ずれ抑制部105Aはカラー102の軸方向の中心に配置される。本実施例では、芯ずれ抑制部105Aはカラー102を構成する部材とは別部材で構成される。ここで、カラー102の軸方向中央部は、カラー102の軸方向の中心の近傍を意味する。
【0022】
本実施例においてリング部材105Aは、芯ずれ抑制部を構成し、芯ずれ抑制装置101の主要部を構成する。リング部材105Aは、回転・落下防止部材106により、カラー102に対して静止した状態で保持され、カラー102からの脱落が防止される。
【0023】
リング部材105Aとカラー102との間およびリング部材105Aとシャフト2との間のそれぞれの半径方向間隙の和(g1+g2)は、カラー102とシャフト2との間の半径方向間隙112の大きさδより小さくなるように設定される。リング部材105Aは軽量な部品であるので、周囲の部品との間隙が小さくても容易に組立てられる。リング部材105Aを設置することにより部品間の半径方向間隙が小さくなるため、スラスト自動調心ころ軸受103の傾き中心113においてシャフト2の芯ずれが抑制される。
【0024】
図3は、
図2の芯ずれ抑制装置101においてシャフト2とカラー102との間に相対的な傾きが生じた場合の軸方向断面図である。
点Oの位置ではリング部材105Aによりシャフト2の芯ずれが抑制されるが、シャフト2とカラー102との間に半径方向間隙112があるため、図に示すように点Oまわりに相対的な傾きが発生する可能性がある。シャフト2は回転体の自重により鉛直下向きに引っ張られるので、カラー102およびスラスト自動調心ころ軸受103の内輪が点Oを中心に傾き、シャフト2には傾きが発生しない。従って、シャフト2の芯ずれおよび傾きを容易に抑制でき、回転体の振動を低減できる。
【0025】
なお、リング部材105Aと点Oとの軸方向距離e(
図2参照)は小さいほど芯ずれ抑制効果が大きくなる。リング部材105Aの位置におけるシャフト2とカラー102との芯ずれ量を0とすると、リング部材105Aからシャフト2とカラー102との当接部の遠い方の端部までの距離をL、シャフト2とカラー102間の半径方向隙間112の大きさをδとすると、点Oにおける最大芯ずれ量Δは次式(1)で表される。
【0026】
Δ=δ・e/L …(1)
リング部材105Aが無いときの最大芯ずれ量はδであり、十分な芯ずれ抑制効果を得るためには最大芯ずれ量を50%程度以下に低減することが望まれる。このため、リング部材105Aからシャフト2とカラー102との間の当接部の遠い方の端部までの軸方向距離Lに対する、芯ずれ抑制部(リング部材)105Aからスラスト自動調心ころ軸受103の傾き中心位置(点O)までの軸方向距離eの比は0.5以下とする必要がある。
【0027】
上述したδ、g1、g2及びeの関係は、以下の実施例にも適用されることが好ましい。
【0028】
[実施例2]
芯ずれ抑制装置101の第2実施例について、
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の第2実施例(実施例2)に係る芯ずれ抑制装置101の軸方向断面図である。
実施例1との最大の違いは、スラスト自動調心ころ軸受103の傾き中心113の位置においてカラー102を上部カラー102aと下部カラー102bとに分割するとともに、内部に溝102cを設け、この溝102c内に芯ずれ抑制部105Bとして弾性リング部材を設置した点である。弾性リング部材105Bとしては例えばOリングを用いることができる。なお本実施例では、実施例1の回転・落下防止部材106は設けられていない。
【0029】
本実施例において弾性リング部材105Bは、芯ずれ抑制部を構成し、芯ずれ抑制装置101の主要部を構成する。
【0030】
なお本実施例では、溝102cは上部カラー102aと下部カラー102bとに分割される形で設けられている。溝102cの上半分は上部カラー102aの下端面に形成され、溝102cの下半分は下部カラー102bの上端面に形成されている。これにより、カラー102に対する溝102cの形成が容易になる。
【0031】
弾性リング部材105Bを容易に設置するために、弾性リング部材105Bの内径はシャフト2の外径より大きく、弾性リング部材105Bの外径はカラー102内部の溝102cの内径(溝底部の径)より小さい。
【0032】
一方、弾性リング部材105Bの軸方向長さは、カラー102内部の溝102cの軸方向長さL102cより長い。すなわち本実施例の立軸ポンプ1では、カラー102は内径部に溝部102cを有し、芯ずれ抑制部105Bは溝部102cに設けられた弾性リング部材である。弾性リング部材105Bは、軸方向寸法(単体での軸方向寸法)が溝部102cの軸方向寸法L102cより大きい。
【0033】
弾性リング部材105Bは、シャフト2及びインペラ3の自重を受けて上部カラー2aと下部カラー2bとの間で軸方向に圧縮される。これにより、弾性リング部材105Bは内周側および外周側に膨らむ。その結果、弾性リング部材105Bとシャフト2との間および弾性リング部材105Bとカラー102との間の間隙が弾性リング部材105B設置時より縮小されるため、シャフト2の芯ずれが効果的に抑制される。
【0034】
[実施例3]
芯ずれ抑制装置101の第3実施例について、
図5を用いて説明する。
図5は、本発明の第3実施例(実施例3)に係る芯ずれ抑制装置101の軸方向断面図である。
実施例1との最大の違いは、スラスト自動調心ころ軸受103の傾き中心113の位置とカラー102の上端とを一致させるとともにカラー102上端部の内部に溝102cを設け、この溝102c内に芯ずれ抑制部105Bとして弾性リング部材を設置した点である。
【0035】
なお本実施例の溝102cは、カラー102の上端面から軸方向に窪んだ凹部として設けられている。言い換えると、溝102cは、カラー102の上端面において、内周側から外周側に窪んだ凹部として設けられている。
【0036】
本実施例において弾性リング部材105Bは、芯ずれ抑制部を構成し、芯ずれ抑制装置101の主要部を構成する。
【0037】
カラー102と調整ナット104との間には調整ナット104の回転による弾性リング部材105Bの摩耗を防ぐための座金119が設置されている。実施例2と同様に、弾性リング部材105Bを容易に設置するために、弾性リング部材105Bの内径はシャフト2の外径より大きく、弾性リング部材105Bの外径はカラー102内部の溝102cの内径(溝底部の径)より小さい。
【0038】
一方、弾性リング部材105Bの軸方向長さはカラー102内部の溝102cの軸方向長さより長くなっており、シャフト2の自重を受けて弾性リング部材105Bが座金119とカラー102との間で軸方向に圧縮されることにより、弾性リング部材105Bは内周側および外周側に膨らむ。このため、弾性リング部材105Bとシャフト2との間および弾性リング部材105Bとカラー102との間の間隙が縮小され、シャフト2の芯ずれが効果的に抑制される。また、カラー102を分割しないため、実施例2より少ない部品で容易に組立可能である。
【0039】
[実施例4]
芯ずれ抑制装置101の第4実施例について、
図6を用いて説明する。
図6は、本発明の第4実施例(実施例4)に係る芯ずれ抑制装置101の軸方向断面図である。
実施例1との最大の違いは、カラー102のスラスト自動調心ころ軸受103の傾き中心113の位置に芯ずれ抑制部105Cとして芯ずれ調整ボルトを配置した点である。すなわち芯ずれ抑制部105Cは、カラー102の円周方向に分布して3本以上配置された芯ずれ調整ボルトである。本実施例において芯ずれ調整ボルト105Cは、芯ずれ抑制部を構成し、芯ずれ抑制装置101の主要部を構成する。
【0040】
本実施例では円周方向90°おきに4本の芯ずれ調整ボルト105Cを配置する。ダイヤルゲージを用いてシャフト2の芯ずれを計測し、芯ずれが小さくなるように芯ずれ調整ボルト105Cの締め込み量を調整する。
【0041】
本実施例では、芯ずれの計測と調整が必要であるが、シャフト2の芯ずれをより確実に抑制できる。なお芯ずれ調整ボルト105Cの本数は3本以上であれば良い。
【0042】
[実施例5]
芯ずれ抑制装置101の第5実施例について、
図7及び
図8を用いて説明する。
図7は、本発明の第5実施例(実施例5)に係る芯ずれ抑制装置101の軸方向断面図である。
実施例1との最大の違いは、芯ずれ抑制部105Dは、弾性リング105D-1と、弾性リング105D-1の内周側に固定され円周方向に複数に分割された分割リング105D-2と、分割リング105D-2を円周方向に移動可能に連結し半径方向に拘束するワイヤ105D-3と、ワイヤ105D-3を引っ張り分割リング105D-2の円周方向間隙を縮小するテンションボルト105D-4とで構成される点である。なお、本実施例の芯ずれ抑制部105Dは、回転・落下防止部材106により、カラー102に対して静止した状態で保持され、カラー102からの脱落が防止される。
【0043】
本実施例において、弾性リング105D-1、分割リング105D-2、ワイヤ105D-3、およびテンションボルト105D-4は、芯ずれ抑制部を構成し、芯ずれ抑制装置101の主要部を構成する。
【0044】
図8は、
図7のVIII-VIII断面図であり、本発明の第5実施例(実施例5)に係る芯ずれ抑制部105Dを示す軸直角断面図である。
弾性リング105D-1の内周側には4分割された分割リング105D-2が固定される。分割リング105D-2には円周方向に貫通穴105D-2aが設けられており、貫通穴105D-2aの内部には分割リング105D-2を円周方向に移動可能に連結し半径方向に拘束するワイヤ105D-3が設けられる。ワイヤ105D-3の一端は一つの分割リング105D-2に固定されており、他端は同一の分割リング105D-2にテンションボルト105D-4を介して固定される。
【0045】
テンションボルト105D-4を回転させワイヤ105D-3を引っ張ると、分割リング105D-2の円周方向間隙が縮小され、分割リング105D-2が内径側に移動する。同時に弾性リング105D-1の分割リング105D-2との固定部間では円周方向距離L1が縮小されるため、弾性リング105D-1が外径側に変形する。この結果、分割リング105D-2はシャフト2に当接し、弾性リング105D-1はカラー102と当接する。これにより本実施例では、テンションボルト105D-4を回転させるだけでシャフト2とカラー102との間の芯ずれを容易に抑制できる。
【0046】
なお、ワイヤ105D-3を用いて分割リング105D-2を円周方向に移動可能に連結し半径方向に拘束する構造としては、円周方向の貫通穴でなく分割リング105D-2の外周部に設けた溝であってもよい。また、分割リング105D-2は3つ以上に分割されていれば良い。
【0047】
[実施例6]
芯ずれ抑制装置101の第6実施例について、
図9を用いて説明する。
図9は、本発明の第6実施例(実施例6)に係る芯ずれ抑制部101を示す軸直角断面図である。
【0048】
実施例5との最大の違いは、分割リング105D-2の円周方向中央部に、軸方向溝105D-2bを設けた点である。分割リング105D-2とシャフト2とは分割リング105D-2の両端で安定して当接するため、シャフト2の芯ずれを確実に抑制できる。
【0049】
[実施例7]
芯ずれ抑制装置101の第7実施例について、
図10を用いて説明する。
図10は、本発明の第7実施例(実施例7)に係る芯ずれ抑制部101を示す軸直角断面図である。
【0050】
実施例6との最大の違いは、分割リング105D-2の内径側の曲率半径R1をシャフト2の外周面の半径R2より小さくした点である。実施例6と同様に、分割リング105D-2とシャフト2は分割リング105D-2の両端で安定して当接するため、シャフト2の芯ずれを確実に抑制できる。また、本実施例の分割リング105D-2は、軸方向溝105D-2bを加工することなく、1個のリングを分割するだけで容易に製作できる。
【0051】
なお、本発明は上記した各実施例に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【符号の説明】
【0052】
1…立軸ポンプ、2…シャフト、102…カラー、103…スラスト自動調心ころ軸受、105A…芯ずれ抑制部(リング部材)、102c…溝部、105B…芯ずれ抑制部(弾性リング部材)、105C…芯ずれ抑制部(芯ずれ調整ボルト)、105D…芯ずれ抑制部(弾性リング105D-1、分割リング105D-2、ワイヤ105D-3、テンションボルト105D-4)、112…シャフト2とカラー102との間に形成される半径方向間隙。