(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173142
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】防災機器
(51)【国際特許分類】
G08B 17/10 20060101AFI20241205BHJP
G08B 17/06 20060101ALI20241205BHJP
H05K 5/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G08B17/10 H
G08B17/06 K
H05K5/02 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091360
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100147566
【弁理士】
【氏名又は名称】上田 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100188514
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 隆裕
(74)【代理人】
【識別番号】100217021
【弁理士】
【氏名又は名称】馬場 進吾
(72)【発明者】
【氏名】松村 進
【テーマコード(参考)】
4E360
5C085
【Fターム(参考)】
4E360AB12
4E360CA01
4E360EA05
4E360EA11
4E360EB03
4E360EC12
4E360ED03
4E360GA26
4E360GB99
4E360GC08
4E360GC16
5C085AA03
5C085AB01
5C085BA31
5C085CA30
5C085FA11
(57)【要約】
【課題】環境問題に配慮するとともに、設置環境を考慮した性能を維持することができる構造を備えた防災機器を得る。
【解決手段】火災監視エリアに設けられる防災機器であって、火災監視エリアにおいて火災の発生を感知した際に火災信号を出力する感知機構部と、感知機構部を覆う筐体とを備え、筐体は、脱プラスティック材料の表面を樹脂でコーティングすることで構成されており、脱プラスティック化を図るとともに、耐熱性、耐久性、防水性を兼ね備えた防災機器を実現している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
火災監視エリアに設けられる防災機器であって、
前記火災監視エリアにおいて火災の発生を感知した際に火災信号を出力する感知機構部と、
前記感知機構部を覆う筐体と
を備え、
前記筐体は、脱プラスティック材料の表面を樹脂でコーティングすることで構成されている
防災機器。
【請求項2】
前記脱プラスティック材料は、セルロースナノファイバまたは強化パルプを主原料とする
請求項1に記載の防災機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、環境問題に配慮した防災機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災を検出し、報知するための防災機器として、種々のタイプの火災感知器、火災警報器等が用いられている。火災感知器の具体的なタイプとしては、例えば、差動式スポット型感知器、定温式スポット型感知器、光電式スポット型感知器などが挙げられる。火災感知器は、周囲温度の上昇、あるいは煙の発生に起因して変化する状態をモニタすることで、火災の発生を感知した際に火災信号を出力する。
【0003】
このような火災感知器を備えた火災報知システムの具体例としては、建物内に、火災感知器とともに、火災受信機、発信機、中継器、音響装置等が適切な位置に配置されて構成され、建物などの内部にいる人々を火災から守る自動火災報知設備が挙げられる(例えば、非特許文献1参照)。
【0004】
自動火災報知設備では、火災感知器が熱、煙、炎を感知することで、火災受信機に対して火災信号を送信する。火災信号を受信した火災受信機は、火災発生場所に応じて、警報を発し、音響装置を鳴動させ、建物内にいる人に火災の発生を知らせている。非特許文献1に開示された自動火災報知設備は、防火対象である建物の用途・規模に応じて、適切なシステムを構築することができる。
【0005】
一方、家庭内などの小規模な領域を火災監視エリアとした場合には、自動火災報知設備のような大掛かりなシステムを用いることは費用、設置などを考慮すると適切ではない。
【0006】
そこで、家庭内などの小規模な領域を火災監視エリアとして火災を検出することに適した防災機器として、住宅用火災警報器が製品化されている(例えば、非特許文献2参照)。住宅用火災警報器は、単独で設置が可能であり、煙や熱による火災を検出した際に、検出結果を音声出力する機能を備えている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】能美防災株式会社 ホームページ、自動火災報知設備(URL:https://www.nohmi.co.jp/product/materiel/fid.html)
【非特許文献2】能美防災株式会社 ホームページ、住宅用火災警報器(URL: https://www.nohmi.co.jp/jukeiki01/products/index.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
火災を検出し、報知するための防災機器は、煙や熱による火災を検出するための構造が、筐体内に収納されている。ここで、本願では、筐体に収納され、煙や熱による火災を検出するための電気的および機械的な構造のことを、「感知機構部」と総称することとする。
【0009】
火災監視エリアの規模あるいは用途にかかわらず、火災を検出し、報知するための防災機器に用いられている筐体は、いずれもプラスティックで形成されていることが一般的である。
【0010】
しかしながら、CO2排出量削減要請が世界規模となり、防災機器の製造メーカにおいては、製造・販売する防災機器に関しても、CO2排出量削減などの環境問題に配慮した取り組みを開示する必要性が、今後見込まれる。
【0011】
また、防災機器は、火災が発生する環境に設置されるため、耐熱性、耐久性、防水性など、設置環境を考慮した性能を維持する構造が必要となる。
【0012】
本開示は、上記の課題を解決するためになされたものであり、環境問題に配慮するとともに、設置環境を考慮した性能を維持することができる構造を備えた防災機器を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示に係る防災機器は、火災監視エリアに設けられる防災機器であって、火災監視エリアにおいて火災の発生を感知した際に火災信号を出力する感知機構部と、感知機構部を覆う筐体とを備え、筐体は、脱プラスティック材料の表面を樹脂でコーティングすることで構成されているものである。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、環境問題に配慮するとともに、設置環境を考慮した性能を維持することができる構造を備えた防災機器を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本開示の実施の形態1に係る防災機器の外観に関する説明図である。
【
図2】本開示の実施の形態1に係る防災機器に用いられる筐体の構造的な特徴を示した説明図である。
【
図3】本開示の実施の形態1における差動式スポット型感知器の内部構造を示す斜視図である。
【
図4】本開示の実施の形態1における光電式スポット型感知器の内部構造を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本開示の防災機器の好適な実施の形態につき、図面を用いて説明する。
本開示に係る防災機器は、筐体を脱プラスティック材料で構成するとともに、表面を樹脂でコーティングすることで、環境問題に配慮するとともに、耐熱性、耐久性、防水性を兼ね備えた構造を実現することを技術的特徴とするものである。
【0017】
実施の形態1.
本開示に係る防災機器は、火災監視および報知設備の一部の機器として火災監視現場において使用されるものであり、火災感知器、住宅用火災警報器などが含まれる。
図1は、本開示の実施の形態1に係る防災機器100の外観に関する説明図である。
図1(A)は、防災機器100を側面から見た平面的な図として表したものであり、
図1(B)は、防災機器100を斜めから見た立体的な図として表したものである。
【0018】
本実施の形態1に係る防災機器100は、筐体10と、感知機構部20とで構成され、火災監視エリアに設置されている。ここで、本実施の形態1において、「火災監視エリア」とは、部屋、住戸、建物などを防火対象として、防災機器によって火災発生の監視が行われるエリアを意味する。
【0019】
また、本実施の形態1において、「感知機構部20」とは、火災監視エリアにおいて火災の発生を感知した際に火災信号を出力するための電気的および機械的な構造の総称である。また、本実施の形態1において、感知機構部20から出力される「火災信号」とは、火災感知器が火災の発生を感知した際に出力する信号(火災信号)、住宅用火災警報器が火災の発生を感知した際に出力する信号(火災警報)、を含むものである。
【0020】
筐体10は、感知機構部20を覆うカバーに相当し、ベース部11と、ベース部11に対して着脱可能な本体部12とに分けられる。ベース部11は、火災監視エリア内の壁などに固定設置される。一方、本体部12は、感知機構部20が収納された状態で、ベース部11に対して着脱可能となっており、保守点検、交換等に対応できる構成となっている。
【0021】
図2は、本開示の実施の形態1に係る防災機器100に用いられる筐体10の構造的な特徴を示した説明図である。
図2(A)に示したように、本実施の形態1に係る防災機器100に用いられる筐体10は、脱プラスティック材料10aで構成されている。脱プラスティック材料10aの具体例としては、セルロースナノファイバまたは強化パルプを主原料とする材料が挙げられる。
【0022】
さらに、
図2(B)に示したように、本実施の形態1に係る防災機器100に用いられる筐体10は、脱プラスティック材料10aの表面が、シリコン、テフロン(登録商標)などの樹脂10bによってコーティングされている。
【0023】
従って、本実施の形態1における筐体10は、環境問題を配慮して脱プラスティック材料10aが採用されているとともに、火災監視エリアに設置される環境条件において耐熱性、耐久性、防水性を持たせるために、樹脂10bによるコーティングが施されている。
【0024】
次に、本実施の形態1に係る筐体10の構造を適用した防災機器100として、差動式スポット型感知器110、および光電式スポット型感知器120を用いる場合を具体例として、詳細に説明する。
【0025】
<1>差動式スポット型感知器110に筐体10の構造を適用する場合
差動式スポット型感知器110は、火災監視エリアにおける周囲の温度の上昇率が一定の率以上になったときに火災信号を発信するものであり、一局所の熱効果により作動するものである。
【0026】
差動式スポット型感知器110は、筐体10内に設けられたダイヤフラムが空気の膨張により押し上げられ、機械的に接点を閉じることで火災信号を発信する構造を有している。さらに、差動式スポット型感知器110は、リーク孔を備えている。ここで、ダイヤフラム、リーク孔、および接点は、感知機構部20に含まれる構成要素に相当する。
【0027】
そして、感知機構部20は、筐体10の一部である本体部12内に収納される。ベース部11および本体部12から構成された筐体10は、先の
図2で説明したように、脱プラスティック材料10aの表面を樹脂10bでコーティングすることで構成されている。
【0028】
図3は、本開示の実施の形態1における差動式スポット型感知器110の内部構造を示す斜視図である。
図3では、本体部12が、第1本体部12aと第2本体部12bで構成され、本体部12内に差動式スポット型感知器110として機能するための感知機構部20が収納されている状態を例示している。
【0029】
第1本体部12aは、ベース部11に対して着脱可能な構成を有するとともに、第2本体部12bと嵌合されることで、内部に感知機構部20を収納可能なスペースを有する本体部12を形成する。
【0030】
図3では、感知機構部20の具体例として、ダイヤフラム21およびリーク孔22が示されている。
【0031】
ここで、
図3に示した差動式スポット型感知器110においても、先の
図2に示したように、脱プラスティック材料10aの表面を樹脂10bでコーティングした筐体10を用いることで、環境問題に配慮することができるとともに、差動式スポット型感知器110の設置環境を考慮して、耐熱性、耐久性、防水性を持たせることができる。
【0032】
<2>光電式スポット型感知器120に筐体10の構造を適用する場合
光電式スポット型感知器120は、火災による煙が入り易い形状の暗箱内に発光部および受光部が設けられ、発光部から照射された光が煙による散乱光として受光部で受光された際の受光量が閾値以上となることで火災信号を発信するものであり、煙に起因して作動するものである。
【0033】
なお、光電式スポット型感知器120には、発光部からの光がダイレクトで受光部によって受光されることを防止するために、遮光板が設けられている。また、光電式スポット型感知器120には、自然光や照明器具による外部光、虫等による非火災報を防止するための措置が講じられている。
【0034】
光電式スポット型感知器120は、受光部による受光量が閾値以上となることで、煙が発生したことによる散乱光が増加したと判断し、火災信号を発信する構造を有している。ここで、発光部、受光部、および遮光板は、感知機構部20に含まれる構成要素に相当する。
【0035】
そして、感知機構部20は、筐体10の一部である本体部12内に収納される。ベース部11および本体部12から構成された筐体10は、先の
図2で説明したように、脱プラスティック材料10aの表面を樹脂10bでコーティングすることで構成されている。
【0036】
図4は、本開示の実施の形態1における光電式スポット型感知器120の内部構造を示す斜視図である。
図4では、本体部12が、第1本体部12aと第2本体部12bで構成され、本体部12内に光電式スポット型感知器120として機能するための感知機構部20が収納されている状態を例示している。
【0037】
第1本体部12aは、ベース部11に対して着脱可能な構成を有するとともに、第2本体部12bと嵌合されることで、内部に感知機構部20を収納可能なスペースを有する本体部12を形成する。
【0038】
図4では、感知機構部20の具体例として、電気部品が実装された基板23、発光部24、および遮光板25が示されている。
【0039】
ここで、
図4に示した光電式スポット型感知器120においても、先の
図2に示したように、脱プラスティック材料10aの表面を樹脂10bでコーティングした筐体10を用いることで、環境問題に配慮することができるとともに、光電式スポット型感知器120の設置環境を考慮して、耐熱性、耐久性、防水性を持たせることができる。
【0040】
以上のように、実施の形態1によれば、脱プラスティック材料の表面を樹脂でコーティングした筐体を採用することで、環境問題および設置環境の両方を考慮した防災機器を実現できる。
【符号の説明】
【0041】
10 筐体、10a 脱プラスティック材料、10b 樹脂、11 ベース部、12 本体部、12a 第1本体部、12b 第2本体部、20 感知機構部、21 ダイヤフラム、22 リーク孔、23 基板、24 発光部、25 遮光板、100 防災機器、110 差動式スポット型感知器(防災機器)、120 光電式スポット型感知器(防災機器)。