(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173145
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】味覚向上装置
(51)【国際特許分類】
A61N 1/36 20060101AFI20241205BHJP
A61N 1/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A61N1/36
A61N1/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091366
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】593006630
【氏名又は名称】学校法人立命館
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100135703
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 英隆
(74)【代理人】
【識別番号】100189544
【弁理士】
【氏名又は名称】柏原 啓伸
(72)【発明者】
【氏名】岡田 志麻
(72)【発明者】
【氏名】塩澤 成弘
(72)【発明者】
【氏名】坂上 友介
【テーマコード(参考)】
4C053
【Fターム(参考)】
4C053BB04
4C053BB31
4C053JJ01
4C053JJ21
(57)【要約】
【課題】食事者の食事の妨げとならない味覚向上装置を提供する。
【解決手段】味覚向上装置は、顔面における、下顎縁枝の近傍である第1の部位に装着される第1の電極と、第1の部位の近傍であり、且つ、顔面における、下顎縁枝の近傍である、第2の部位に装着される第2の電極と、ノイズ生成器と、前記ノイズ生成器が生成するノイズを、第1の電極と第2の電極との間に所定のノイズ刺激として印加する電流刺激回路とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔面における、下顎縁枝の近傍である第1の部位に装着される第1の電極と、
前記第1の部位の近傍であり、且つ、前記顔面における、前記下顎縁枝の近傍である、第2の部位に装着される第2の電極と、
ノイズ生成器と、
前記ノイズ生成器が生成するノイズを、前記第1の電極と前記第2の電極との間に所定のノイズ刺激として印加する電流刺激回路と、
を備える、
味覚向上装置。
【請求項2】
前記電流刺激回路は、前記下顎縁枝にノイズ刺激を与えるものであり、前記下顎縁枝にて味覚により生じる入力刺激に前記ノイズ刺激を重畳させるよう作用する、
請求項1に記載の味覚向上装置。
【請求項3】
前記所定のノイズ刺激は、
前記下顎縁枝にて味覚により生じる所定の閾値以下の入力刺激に重畳されると、重畳された刺激である入力信号が、味覚により生じる前記入力刺激の変動に対応して、前記所定の閾値を超えるようになる、ものである、
請求項1に記載の味覚向上装置。
【請求項4】
前記所定の閾値の電位は、味覚に関する知覚神経細胞の受容器固有の閾値の電位である、
請求項3に記載の味覚向上装置。
【請求項5】
前記第1の電極及び前記第2の電極が、ゲル電極、又は、ディスポーザブル電極である、
請求項2又は4に記載の味覚向上装置。
【請求項6】
前記ノイズ生成器が生成するノイズが、ホワイトノイズである、
請求項2又は4に記載の味覚向上装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、味覚向上装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塩分は、人体の生命維持に必要不可欠な栄養素である。しかし、過剰に摂取すると健康リスクを高めることがよく知られている。
【0003】
ところで、日本人の多くは、塩分濃度が高い所謂「濃い」味に慣れており、塩分濃度が低い「薄い」味では、心理的な満足感を得ることが難しくなっている。更に、実際に減塩食を摂取すると、摂取者が味そのものに不満を抱える傾向にある、ということも多数報告されている。
【0004】
減塩食の習慣化や普及化には、このような味に関する不満を抱かせない、若しくは解消する、という課題を解決することが必要である。
【0005】
甘味についても一般的に同様の課題が指摘されている。
【0006】
摂取者に味に関する不満を抱かせないための技術として、味提示物質の摂取量を変化させることなく味の変化を与えられる技術が開示されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
【0007】
特許文献1及び特許文献2に開示の発明は、何れも電気味覚を利用する。電気味覚は、味を検知する、舌における細胞である味蕾に、電気刺激を与えることで擬似的な味覚を生じさせるものである。
【0008】
電気味覚を利用する技術では、舌の近くに配置された2つの電極間に、若しくは舌の近くに配置された電極と人体や食器に配置された電極間に、微弱電流を流すことで、味蕾を刺激して薄い味を摂取者(食事者)に濃く感じさせることを可能にする。
【0009】
但し、塩味や甘味を含む味の感度が向上するのは、電極間に電流が流れるときのみである。そのため、摂取者(食事者)は、電極そのものや電極が配置された食器を口に含んでいる状態で咀嚼及び嚥下をすることが必要となる。このことは、摂取者(食事者)にとって食事の妨げになることである。更には、流される電流によっては摂取者(食事者)に不快感が生じることもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2018-42991号公報
【特許文献2】特開2021-45399号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本開示は、食事者の食事の妨げとならない、且つ食事者に不快感を与えない味覚向上装置を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の味覚向上装置は、顔面における、下顎縁枝の近傍である第1の部位に装着される第1の電極と、第1の部位の近傍であり、且つ、顔面における、下顎縁枝の近傍である、第2の部位に装着される第2の電極と、ノイズ生成器と、前記ノイズ生成器が生成するノイズを、第1の電極と第2の電極との間に所定のノイズ刺激として印加する電流刺激回路とを備える。
【発明の効果】
【0013】
本開示の味覚向上装置は、食事者の食事行為の、特に、食事者の咀嚼や嚥下の、妨げとなることがなく、且つ、食事者に電流による不快感を与えることはなく、食事者に味覚の明確化や強調化のみを与えるものである。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施の形態に係る味覚向上装置の概略のブロック図である。
【
図2】
図2は、入力信号、ノイズ、電気信号(刺激)、及び、出力信号(知覚)についての、(A)列、(B)列、(C)列の、三つの代表的な例である。
【
図3】
図3は、実施の形態に係る味覚向上装置を用いた甘味評価実験の内容及び手順を示す図である。
【
図4】
図4は、
図3に示す甘味評価実験の全体的な結果を示す図である。
【
図5】
図5は、
図3に示す甘味評価実験における濃度別の結果を示す図である。
【
図6】
図6は、顔面における左顔面下の、味覚に関する知覚神経である下顎縁枝と、耳の傍の膝神経節とを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0016】
なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面および以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0017】
1.[実施の形態]
以下、添付の図面を参照して、本開示の好ましい実施の形態を説明する。
【0018】
1.1.[味覚向上装置の構成]
図1は、実施の形態に係る味覚向上装置2のブロック図である。
図1に示すように、味覚向上装置2は、動力源であるバッテリ6と、昇圧回路4と、マイクロコンピュータ10と、電流刺激回路8と、第1の電極12aと、第2の電極12bとを備える。
【0019】
実施の形態に係る味覚向上装置2は、以下にて説明する確率共振電気刺激を行う装置である。
【0020】
味覚に関する知覚神経細胞は、受容器電位の総和が知覚神経細胞固有の閾値を超えた場合にのみ細胞内に活動電位が発生する非線形システムである。このような非線形システムは、ノイズの存在により、微弱な入力信号に対する感度が高まることが知られている。
【0021】
このノイズの存在という現象は、周知のように確率共振(SR:stochastic resonance)と称される。
【0022】
確率共振の原理には、非線形システムの、即ち、味覚に関する知覚神経細胞固有の、閾値と、閾値以下の入力信号と、至適強度のノイズとが要因として挙げられる。非線形システムへの閾値以下の入力信号は、閾値以下であることから知覚神経に感知されることはないため、出力信号(即ち、知覚)が発生しない。しかし、ある一定強度の、即ち、至適強度の、ノイズが入力信号に重畳されると、合成された入力信号は元の入力信号の変動に対応して知覚神経細胞固有の閾値を超えるようになる。このとき、元の入力信号の変動に対応した出力信号(知覚)が発生する(
図2(B)列を参照されたい。)。
【0023】
一方、ノイズの強度が弱過ぎると上述の閾値を超えることが少なくなり、元の入力信号に応じた出力信号(知覚)が得られなくなる(
図2(A)列を参照されたい。)。ノイズの強度が強過ぎると元の入力信号の変動に関係なく知覚神経細胞固有の閾値を超えるようになってしまい、よって、元の入力信号に応じた出力信号(知覚)が得られなくなる(
図2(C)列を参照されたい。)。
【0024】
図1に示す味覚向上装置2において、マイクロコンピュータ10は、至適強度のノイズを生成する。すなわち、マイクロコンピュータ10は本開示においてノイズ生成器に相当する。昇圧回路4は、高インピーダンスの人体の皮膚に対し電流刺激が与えられるようバッテリ6からのベースの電圧を昇圧させる。電流刺激回路8は、昇圧回路4から供給される電圧にマイクロコンピュータ10で生成する至適強度のノイズを重畳した所定強度のノイズ刺激を、第1の電極12aと第2の電極12bとの間に印加する。
なお、本実施の形態に係る味覚向上装置2におけるバッテリ6は、乾電池などの小型電池を利用することを想定している。そのため、本実施の形態に係る味覚向上装置2では、上述の電圧を得るのに、昇圧回路4を設定することを採用している。一方、味覚向上装置2は、外部の電源から適切な電圧が供給されるように構成することも可能である。この場合、昇圧回路4は味覚向上装置2から除かれ、バッテリ6はマイクロコンピュータ10、即ち、ノイズ生成器のみの動力源となる。
【0025】
第1の電極12aは、顔面20における、味覚に関する知覚神経である下顎縁枝14の近傍の第1の部位に装着される。第2の電極12bは、第1の部位の近傍であり、且つ、顔面における、下顎縁枝14の近傍である、第2の部位に装着される。
【0026】
下顎縁枝は、耳の下から下顎に沿う、皮膚表面から刺激され得る顔面神経であり、舌で感じた味覚を脳に伝達する主たる知覚神経である。
【0027】
なお、
図6は、顔面20における左顔面下の、味覚に関する知覚神経である下顎縁枝14と、耳18の傍の膝神経節16とを模式的に示す図である。
図1に示すように、第1の電極12aと第2の電極12bは、顔面の同じ側にて、即ち、左顔面にて、若しくは、右顔面にて、近い部位に配置される。
【0028】
第1の電極12a及び第2の電極12bは、顔面に容易に着脱し得る電極であり、例えば、ゲル電極、又は、ディスポーザブル電極などにより構成される。
【0029】
第1の電極12aと第2の電極12bとを介して印加される所定強度のノイズ刺激は、当該所定強度のノイズ刺激と、下顎縁枝14にて味覚により生じる所定の閾値以下の入力刺激とが重畳されると、重畳(合成)された刺激である入力信号が、味覚により生じる入力刺激の変動に対応して、所定の閾値、即ち、味覚に関する知覚神経細胞固有の閾値を超えるようになる、というものである。
【0030】
1.2.[味覚向上装置の動作]
図2は、入力刺激、ノイズ刺激、出力信号(知覚)、及び、入力信号(刺激)についての、(A)列、(B)列、(C)列の、三つの代表的な例である。
【0031】
先ず、
図2の(B)列の信号(群)を参照する。昇圧回路4は、バッテリ6からのベースの電圧を昇圧させて電流刺激回路8に送る。マイクロコンピュータ10で生成されるノイズも電流刺激回路8に送られる。電流刺激回路8は昇圧回路4からの昇圧された電圧にマイクロコンピュータ10(即ち、ノイズ生成器)で生成されるノイズを重畳して、(B)列に示すような所定の強度のノイズ刺激とする。
【0032】
電流刺激回路8は、(B)列に示すような所定の強度のノイズ刺激を、第1の電極12aと第2の電極12bとの間に印加する。よって、電流刺激回路8は、下顎縁枝にノイズ刺激を与える。
【0033】
(B)列の最上部には、下顎縁枝14にて味覚により生じる所定の閾値以下の入力刺激が示されている。電流刺激回路8は、下顎縁枝にて味覚により生じる入力刺激にノイズ刺激を重畳させるように作用する。つまり、第1の電極12aと第2の電極12bとを介して上述の所定の強度のノイズ刺激が印加されると、当該所定の強度のノイズ刺激が、下顎縁枝14にて味覚により生じる所定の閾値以下の入力刺激に重畳され、(B)列の最下部に示すような重畳(合成)された入力信号(刺激)となる。重畳された入力信号(刺激)は、(B)列の最上部に示す元の入力刺激の変動に対応して、味覚に関する知覚神経細胞固有の閾値を超えるようになるため、元の入力刺激の変動に対応した、(B)列の中央部に示すような、出力信号、即ち、知覚が発生する。
【0034】
一方、
図2の(A)列の「ノイズ刺激」の行に示すように、ノイズの強度が弱過ぎると、(A)列の最下部に示すように、重畳された入力信号(刺激)が、味覚に関する知覚神経細胞固有の閾値を超えることが少なくなる。そうすると、
図2の(A)列の中央部に示すように、元の入力刺激に応じた出力信号(知覚)が得られなくなる。
【0035】
また、
図2の(C)列の「ノイズ刺激」の行に示すように、ノイズの強度が強過ぎると、(C)列の最下部に示すように、重畳された入力信号(刺激)が、元の入力刺激の変動に関係なく、味覚に関する知覚神経細胞固有の閾値を常に超えるようになってしまう。そうすると、この場合も、
図2の(C)列の中央部に示すように、元の入力刺激に応じた出力信号(知覚)が得られなくなる。
【0036】
従って、味覚向上装置2のマイクロコンピュータ10は、
図2の(B)列の「ノイズ刺激」に繋がるような、至適強度のノイズを生成することが要求される。
【0037】
2.[味覚向上装置を用いた実験]
実施の形態に係る味覚向上装置を用いて甘味評価実験を行った。
【0038】
2.1.[実験方法]
濃度0.40%~0.90%の、0.05%刻みの11段階の砂糖水を使用した。砂糖水の温度は常温であり、室温は23.0±2.0℃であった。
【0039】
電気刺激としては、
(1)刺激なし、
(2)ノイズが重畳されていない、閾値電位以下となるような直流電流・・・「直流電流」、
(3)(2)に対してホワイトノイズが重畳された刺激信号・・・「ノイズ刺激あり」
の三つを用意した。なお、(2)「直流電流」の電流値は、閾値電位となる閾値電流の0.6倍である。(3)「ノイズ刺激あり」のノイズはホワイトノイズである。
【0040】
図3は、一人の被験者に対する甘味評価実験の手順を示すフロー図である。開始(手順T00)後、被験者に対して第1の電極12aと第2の電極12bが添付されて、刺激の設定が行われる(手順T02)。刺激の設定では、上述の、(1)「刺激なし」、(2)「直流電流」、及び、(3)「ノイズ刺激あり」のうちから一つが、ランダムに抽出される。
【0041】
被験者はうがいをして(手順T04)、試飲をする(手順T06)。試飲では、低い濃度(即ち、0.40%)の砂糖水から開始して、順に高いものが試飲される(上昇法)。被験者は試飲後、甘味評価アンケートを行う。アンケートでは、被験者は、以下の表1「甘味評価アンケート表」における、0~8の何れかを回答する。
【表1】
【0042】
11段階の全ての濃度について、一人の被験者は、「うがい」(手順T04)、「試飲」(手順T06)、「アンケート」(手順T08)を行う(手順T10)。全ての濃度の試飲が終了すれば(手順T10・はい)、被験者に対する刺激が終了され(手順T12)、一人の被験者に対する実験が終了する(手順T14)。
【0043】
2.2.[実験結果]
図4は、甘味評価実験の全体的な結果を示す図である。被験者は18人である。具体的には、
図4は(1)「刺激なし」、(2)「直流電流」、及び、(3)「ノイズ刺激あり」の区分にて、アンケートにて「3:甘い」と回答された時の、濃度の平均値、及び、標準偏差を示すグラフである。
【0044】
図4にて、
・「ノイズ刺激あり」では「0.67±0.15%」であり、
・「刺激なし」では「0.71±0.13%」であった。
なお、p値=0.015であった。つまり、有意差ありと考えられる。
【0045】
従って、「刺激なし」と「ノイズ刺激あり」とを比較して、甘味が感じられる濃度が低かったことになる。つまり、ノイズ刺激がある場合、味覚閾値が変化した(濃度が下がった)と考えられる。
【0046】
図5は、ある被験者について、濃度毎に、更に、『「刺激なし」、「直流電流」、「ノイズ刺激あり」』の条件別にて、アンケートの回答を示したものである。「刺激なし」と「ノイズ刺激あり」とを比較すると、認識閾値(「強度2:かすかに甘みを感じる」)を感じる濃度は、0.60%から0.40%に下がっている。強度3(:「甘い」)を感じる濃度は、0.65%から0.45%に下がっている。
【0047】
3.[まとめ]
実施の形態に係る味覚向上装置2は、顔面20における、下顎縁枝14の近傍である第1の部位に装着される第1の電極12aと、第1の部位の近傍であり、且つ、顔面20における、下顎縁枝14の近傍である、第2の部位に装着される第2の電極12bと、ノイズ生成器10と、ノイズ生成器10が生成するノイズを、第1の電極12aと第2の電極12bとの間に所定のノイズ刺激として印加する電流刺激回路8とを備える。
【0048】
実施の形態に係る味覚向上装置2は、食事者の食事行為の、特に、食事者の咀嚼や嚥下の、妨げとなることがなく、且つ、食事者に電流による不快感を与えることはなく、食事者に味覚の明確化や強調化のみを与える。
【0049】
実施の形態に係る味覚向上装置2は、確率共振電気刺激によって塩味だけでなく、甘味や苦味といった他の味覚の感度も向上させることができる。実施の形態に係る味覚向上装置2では、特に食事者の塩味感度が向上することで、食品の味に関して「塩分が多い濃い味やしょっぱい味」を好む食事者の嗜好性を変化させ得、「塩分が少ない薄い味」を好むように嗜好性を変化させ得る。
【0050】
更には、糖尿病や高血圧症等の生活習慣病を患う人や、生活習慣病を罹患するおそれのある人に使用を促すことで、塩分量や糖分量の摂取の適切なコントロールを可能にし得る。更に、味覚の低下に関わる疾病に罹患した患者に使用することで、該患者の味覚の回復のトレーニングを行うことができる。
【0051】
4.[他の実施の形態]
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
【0052】
また、実施の形態を説明するために、添付図面および詳細な説明を提供した。したがって、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0053】
また、上述の実施の形態は、本開示における技術を例示するためのものであるから、特許請求の範囲またはその均等の範囲において種々の変更、置き換え、付加、省略などを行うことができる。
【符号の説明】
【0054】
2・・・味覚向上装置、4・・・昇圧回路、6・・・バッテリ、8・・・電流刺激回路、10・・・マイクロコンピュータ(ノイズ生成器)、12a・・・第1の電極、12b・・・第2の電極、14・・・下顎縁枝、16・・・膝神経節、18・・・耳、20・・・顔面。