(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017315
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】樹脂組成物、接着剤、および塗料
(51)【国際特許分類】
C08L 61/14 20060101AFI20240201BHJP
C08G 8/32 20060101ALI20240201BHJP
C08K 5/17 20060101ALI20240201BHJP
C09J 161/14 20060101ALI20240201BHJP
C09D 161/14 20060101ALI20240201BHJP
C09D 5/02 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
C08L61/14
C08G8/32
C08K5/17
C09J161/14
C09D161/14
C09D5/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119864
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000002141
【氏名又は名称】住友ベークライト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕司
(72)【発明者】
【氏名】身深 元
【テーマコード(参考)】
4J002
4J033
4J038
4J040
【Fターム(参考)】
4J002CC081
4J002DE026
4J002EN007
4J002EN107
4J002EU047
4J002EU057
4J002EU077
4J002GH01
4J002GJ01
4J002HA04
4J033CA02
4J033CA12
4J033CA28
4J033CB03
4J033CC09
4J033GA05
4J033HB08
4J033HB09
4J038DA081
4J038GA06
4J038GA09
4J038KA03
4J038MA10
4J038PB05
4J038PB06
4J038PC02
4J038PC06
4J040EB071
4J040GA07
4J040GA15
4J040JA03
4J040KA16
4J040LA01
4J040MA02
4J040MA08
4J040MB02
4J040NA12
(57)【要約】
【課題】優れた水希釈性または水分散性と高い耐熱性を両立して有するフェノール樹脂組成物を提供する。
【解決手段】カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂;アミン;および水、を含む樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂;
アミン;および
水、を含む樹脂組成物。
【請求項2】
前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂のカルボキシ基導入率が、10モル%以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の重量平均分子量は、500以上20,000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の数平均分子量は、300以上10,000以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、カシュー変性フェノール樹脂が有する不飽和結合含有側鎖の不飽和結合部分に、不飽和カルボン酸が付加した構造を有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記不飽和カルボン酸は、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、および(メタ)アクリル酸から選択される少なくとも1つである、請求項5に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
前記アミンは、第三級アミンを含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、水溶液の形態であり、
当該水溶液のヘーズは、5以下である、樹脂組成物。
【請求項10】
水分散体の形態である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項11】
繊維基材に含浸させて用いられる、請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、接着剤。
【請求項13】
請求項1~10のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、塗料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、ならびに当該樹脂組成物からなる接着剤または塗料に関する。より詳細には、フェノール樹脂および水を含む水性フェノール樹脂組成物、およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
フェノール樹脂は、その優れた耐熱性、接着性、機械的特性、電気的特性、価格優位性等を利用し各種基材の成型材料や摩擦材用結合剤、研削材用結合剤、木材用接着剤、積層材用結合剤、鋳型用結合剤、コーティング剤、エポキシ樹脂硬化剤用等として幅広く使用されている。フェノール樹脂は、フェノール類とアルデヒド類とを反応させて得られる樹脂であり、触媒としてアルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物を用いるアルカリ型レゾールフェノール樹脂、触媒としてアンモニアやアミン類を用いるアンモニアレゾール型フェノール樹脂、酸性触媒を用いるノボラック型フェノール樹脂が知られている。
【0003】
近年、環境負荷軽減の観点や労働安全衛生的観点から、有機溶剤使用量を用いないか、または有機溶剤使用量の少ないフェノール樹脂材料が求められており、溶媒として水を用いた水溶性樹脂や水系分散剤を用いた水分散型樹脂として提供可能な水希釈性の高いレゾール樹脂が求められている。
【0004】
レゾール樹脂の水希釈性は、通常、レゾール樹脂の分子量が小さくなるにつれて向上するものの、低分子量化により水希釈性を高めようとする場合、硬化物強度や耐熱性が低下してしまうという問題があった。そこで、機械的特性や耐熱性を解決する手段として、桐油のような植物油で変性したフェノール樹脂を用いることが提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の植物油変性のフェノール樹脂は、機械的特性は改善されるものの、有機溶剤にしか溶解せず、水溶性のフェノール樹脂を得ることができなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は上記課題を鑑みてなされたものであり、水性であり、またその硬化物が高い耐熱性を有するフェノール樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
本発明によれば、以下に示す樹脂組成物が提供される。
[1]カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂;
アミン;および
水、を含む樹脂組成物。
[2]前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂のカルボキシ基導入率が、10モル%以上である、項目[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の重量平均分子量は、500以上20,000以下である、項目[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の数平均分子量は、300以上10,000以下である、項目[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、カシュー変性フェノール樹脂が有する不飽和結合含有側鎖の不飽和結合部分に、不飽和カルボン酸が付加した構造を有する、項目[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記不飽和カルボン酸は、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、および(メタ)アクリル酸から選択される少なくとも1つである、項目[5]に記載の樹脂組成物。
[7]前記アミンは、第三級アミンを含む、項目[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、レゾール型フェノール樹脂である、項目[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]項目[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物であって、
当該樹脂組成物は、水溶液の形態であり、
当該水溶液のヘーズは、5以下である、樹脂組成物。
[10]水分散体の形態である、項目[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[11]繊維基材に含浸させて用いられる、項目[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[12]項目[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、接着剤。
[13]項目[1]~[10]のいずれかに記載の樹脂組成物からなる、塗料。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、優れた水希釈性または水分散性と高い耐熱性を両立して有するフェノール樹脂組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について説明する。なお本明細書中、数値範囲の説明における「a~b」との表記は、特に断らない限り、「a以上b以下」を意味する。例えば、「5~90質量%」とは「5質量%以上90質量%以下」を意味する。
【0011】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂;
アミン;および
水、を含む。
【0012】
本実施形態の樹脂組成物は、カシュー変性フェノール樹脂を含む。カシュー変性フェノール樹脂は、当該フェノール樹脂中に導入されたカシューオイル由来の側鎖を有することにより、その硬化物が優れた耐熱性および高い機械的強度を有する。
【0013】
本実施形態の樹脂組成物において、上記カルボキシ基含有側鎖を有するフェノール樹脂は、当該樹脂組成物に含まれるアミンとの相互作用により、上記フェノール樹脂が有するカルボキシ基が中和されて、水溶性の油として存在する。よって、本実施形態の樹脂組成物は、水を溶媒または分散媒とする水性樹脂組成物であり、有機溶剤を使用しないため、環境負荷が低減される。また本実施形態の樹脂組成物は、金属水酸化物を含まない。そのため、金属水酸化物の存在に起因して生じる、フェノール樹脂硬化物の耐水性の劣化といった問題が生じない。また分散剤を使用する必要がないため、作業性に優れる。
以下、本実施形態の樹脂組成物を構成する各成分について説明する。
【0014】
(カルボキシ基含有カシュー変性フェノール樹脂)
本実施形態の樹脂組成物に用いられるフェノール樹脂は、カルボキシ基含有側鎖を有する、カシュー変性フェノール樹脂であり、フェノール類としてのカルダノールとアルデヒド類との縮合重合反応により得られるカシュー変性フェノール樹脂に、不飽和カルボン酸を作用させて得られる、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂である。本明細書中、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を、「カルボキシ基含有カシュー変性フェノール樹脂」と称する。
【0015】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、代表的には、式(1)で示される構造単位を有する。
【0016】
【0017】
式(1)において、
R1は、カルボキシ基を有する側鎖であり、具体的には、カルボキシ基が導入された直鎖状の炭素数15の炭化水素である。
R2は、水素原子(H)またはメチロール基(-CH2OH)である。
【0018】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂がノボラック型である場合、このようなフェノール樹脂は、カルダノールとアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させて、ノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂を得る工程(工程1a)、および工程1aで得られたノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂と不飽和カルボン酸とを反応させて、ノボラック型のカルボキシ基含有カシュー変性フェノール樹脂を得る工程(工程2a)により、製造することができる。工程1aおよび工程2aを用いて得られるノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂は、R2が水素原子である式(1)の構造単位を有する。
【0019】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂がレゾール型である場合、このようなフェノール樹脂は、カルダノールと不飽和カルボン酸とを反応させて、カルダノールの不飽和結合部分に不飽和カルボン酸が付加したカルボキシ基含有カルダノールを得る工程(工程1b)、および工程1bで得られたカルボキシ基含有カルダノールとアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、レゾール型のカルボキシ含有カシュー変性フェノール樹脂を得る工程(工程2b)により、製造することができる。工程1bおよび工程2bを用いて得られるレゾール型のカシュー変性フェノール樹脂は、R2がメチロール基である式(1)の構造単位を有する。
【0020】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造に用いられるカルダノールは、カシューナッツの殻に含まれる成分であり、フェノール部分と炭素数15の直鎖状炭化水素部分からなる、式(2)で表される構造を有する化合物である。カルダノールには、その直鎖状炭化水素部分Rにおいて不飽和結合数の異なる4種類が存在し、通常、これらの4成分の混合物である。すなわち、下記式(2)に記載した、3-ペンタデシルフェノール、3-ペンタデシルフェノールモノエン、3-ペンタデシルフェノールジエン、および3-ペンタデシルフェノールトリエンの混合物である。カシューナッツ殻液から抽出および精製して得られたカルダノールを用いることができる。
【0021】
【0022】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造に使用できるアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ポリオキシメチレン、クロラール、ヘキサメチレンテトラミン、フルフラール、グリオキザール、n-ブチルアルデヒド、カプロアルデヒド、アリルアルデヒド、ベンズアルデヒド、クロトンアルデヒド、アクロレイン、テトラオキシメチレン、フェニルアセトアルデヒド、o-トルアルデヒド、サリチルアルデヒド等が挙げられる。これらは、単独で使用してもよいし、2種類以上組み合わせて使用してもよい。また、これらのアルデヒド類の前駆体あるいはこれらのアルデヒド類の溶液を使用することもできる。中でも、製造コストの観点から、ホルムアルデヒド水溶液を使用することが好ましい。
【0023】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造に使用できる不飽和カルボン酸は、カルダノールが有する側鎖中の不飽和結合に付加反応し得る不飽和結合を有するカルボン酸であり、好ましくは、α,β-不飽和カルボン酸またはその誘導体である。このような不飽和カルボン酸としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、無水シトラコン酸、メサコン酸、無水イタコン酸、アコニット酸、無水アコニット酸、および(メタ)アクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されない。不飽和カルボン酸は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
なお、不飽和カルボン酸として、アコニット酸、無水アコニット酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸が付加したカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を製造する場合、これらの酸または酸無水物は、クエン酸を熱分解することにより生成させてもよい。以下に示すとおり、クエン酸は、その熱分解によりアコニット酸、無水アコニット酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸となる。
【0025】
【0026】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造に使用できる酸触媒としては、酢酸、ギ酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、スルホン酸、フェノールスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等の有機酸;または塩酸、硫酸、硫酸エステル、リン酸、およびリン酸エステル等の無機酸が挙げられる。
【0027】
カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造に使用できる塩基性触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ金属もしくはアルカリ土類金属の水酸化物;炭酸ナトリウム、炭酸カルシウム等の炭酸塩;石灰等の酸化物;亜硫酸ナトリウム等の亜硫酸塩;リン酸ナトリウム等のリン酸塩;アンモニア、トリメチルアミン、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ヘキサメチレンテトラミン、ピリジン等のアミン類等が挙げられる。
【0028】
ここで塩基性触媒は最終生成物であるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を含む反応生成物中に存在することになる。塩基性触媒として水酸化ナトリウム等の金属水酸化物を用いた場合、フェノール樹脂の硬化物中に金属水酸化物が残留し、これは硬化物の耐水性の低下をもたらす。したがって、塩基性触媒は、非金属触媒であるアミン類であることが好ましい。
【0029】
以下、工程1aおよび工程2aを用いてノボラック型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造方法について、説明する。
工程1aのカルダノールとアルデヒド類とを酸触媒の存在下で反応させてノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂を得る工程において、カルダノールに対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/カルダノール)は、例えば、0.5以上であり、好ましくは,0.55以上であり、より好ましくは、0.6以上である。フェノール類に対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/カルダノール)の上限値は、例えば、1.2以下であり、好ましくは、1.1以下であり、より好ましくは、1.0以下である。カルダノールに対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/カルダノール)が上記範囲である条件下で、反応を行うことにより、所望の重量平均分子量を有するノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂を得ることができる。
【0030】
工程1aにおけるノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂の製造において、カルダノールとアルデヒド類とを、酸触媒の存在下で反応させる工程は、例えば、60℃~120℃の温度下、好ましくは80℃~100℃の温度下で、例えば、10分間~100分間の反応時間で実施されることが好ましい。これにより、効率よく反応を十分に進めることができる。また加熱下で実施することにより、出発物質が均一に混合され、分子間の絡み合いや分子間の作用により、得られるノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂の分子量の均一化を図ることができる。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
【0031】
工程1a得られるノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂は、式(3)で表される構造単位を有するフェノール樹脂である。式(3)において、Rは、上記式(2)で表されるカルダノールにおけるRと同義である。また、式(3)中のR2は水素原子(H)である。
【0032】
【0033】
次いで、工程2aでは、工程1aで得られたノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂と不飽和カルボン酸とを反応させて、式(1)で表される構造単位を有する目的のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を得る。
【0034】
【0035】
式(1)において、
R1は、カルボキシ基を有する側鎖であり、具体的には、カルボキシ基が導入された直鎖状の炭素数15の炭化水素である。
R2は、水素原子(H)である。
【0036】
工程2aにおいて、上記工程1aで得られた式(3)で表される構造単位を有するノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂が有する側鎖(式(3)中のR)に、カルボキシ基含有基を導入する。より詳細には、式(3)中のRが有する不飽和結合と、不飽和カルボン酸の不飽和結合との付加反応により、R中の不飽和結合部分に不飽和カルボン酸を付加させる。
【0037】
工程2aにおけるノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂と不飽和カルボン酸との付加反応は、公知の手法で実施することができ、例えば、ノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂と不飽和カルボン酸とを、混合して加熱する手法が使用される。この付加反応は、120℃~200℃の温度下、10分間~100分間の反応時間で実施されることが好ましい。反応を早めるために、酸触媒を添加してもよい。酸触媒としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、スルホン酸、フェノールスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等の有機酸;または塩酸、硫酸、硫酸エステル、リン酸、およびリン酸エステル、ホウ酸等の無機酸が挙げられる。
【0038】
工程1aにおける不飽和カルボン酸の使用量は、ノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂(重量)に対し、例えば、1~100重量%であり、好ましくは、50~100重量%である。不飽和カルボン酸の使用量は、最終的に得られるノボラック型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の水溶性の程度に異存して変更することができる。なお、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂のカルボキシ基導入率が高いほど、その水溶性は高くなる。
【0039】
工程1aおよび工程2aのノボラック型のカシュー変性フェノール樹脂の製造のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0040】
工程1aおよび工程2aを経て得られるノボラック型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、300~10,000であり、好ましくは、400~19,000であり、より好ましくは、500~8,000である。レゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の数平均分子量は、例えば、300~10,000であり、好ましくは、400~8,000であり、さらにより好ましくは、500~2,500である。上記範囲の分子量を有するノボラック型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、水分散性を有するため好ましい。また、これを硬化して得られる硬化物が高い機械的強度および耐熱性を有するため好ましい。
【0041】
工程1aおよび工程2aを経て得られるノボラック型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂のカルボキシ基導入率は、例えば、5モル%以上であり、好ましくは、10モル%以上であり、より好ましくは、15モル%以上であり、さらにより好ましくは、20モル%以上である。導入率の上限値は特に限定されないが、例えば、250モル%以下であり、好ましくは、200モル%以下である。ここでカルボキシ基導入率は、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂に含まれる不飽和カルボン酸由来のカルボキシ基の存在量を示す指標であり、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂に含まれるカルダノール由来構造単位を100モルとしたとき、これに含まれるカルボキシ基のモル数を百分率で表した値である。
【0042】
カルボキシ基導入率(モル%)は、公知の方法で測定することができる。例えば、フーリエ変換赤外分光法或いは1H-NMR(プロトン核磁気共鳴)分析によって求めることができる。
【0043】
また上記方法により得られたノボラック型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、未反応の遊離アルデヒド類の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下まで低減されている。
【0044】
次いで、工程1bおよび工程2bを用いてレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の製造方法について、説明する。
工程1bにおける、式(2)で表されるカルダノールと不飽和カルボン酸とを反応させて、カルダノールの不飽和結合部分に不飽和カルボン酸が付加した、カルボキシ基含有カルダノールを得る工程は、公知の手法で実施することができ、例えば、カシューオイルと不飽和カルボン酸を、混合して加熱する手法が使用される。この付加反応は、120℃~200℃の温度下、10分間~100分間の反応時間で実施されることが好ましい。反応を早めるために、酸触媒を添加してもよい。酸触媒としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、安息香酸、サリチル酸、スルホン酸、フェノールスルホン酸、およびパラトルエンスルホン酸等の有機酸;または塩酸、硫酸、硫酸エステル、リン酸、およびリン酸エステル、ホウ酸等の無機酸が挙げられる。
【0045】
工程1bにおける不飽和カルボン酸の使用量は、カルダノール(重量)に対し、例えば、1~100重量%であり、好ましくは、50~100重量%である。不飽和カルボン酸の使用量は、最終的に得られるレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の水溶性の程度に異存して変更することができる。
【0046】
工程1bで得られるカルボキシ基含有カルダノールは、式(2')で表される構造を有する。式(2')において、R1は、カルボキシ基を有する側鎖であり、具体的には、式2)で表されるカルダノールが有する直鎖状炭化水素部分Rにカルボキシ基が導入された直鎖状の炭素数15の炭化水素である。
【0047】
【0048】
次いで、工程2bでは、工程1bで得られたカルボキシ基含有カルダノールとアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、式(1)で表される構造単位を有する目的のレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を製造する。
【0049】
【0050】
式(1)において、
R1は、式(2')におけるものと同義であり、すなわち、カルボキシ基が導入された直鎖状の炭素数15の炭化水素であり、
R2は、メチロール基(-CH2OH)である。
【0051】
工程2bにおいて、工程1b得られたカルボキシ基含有カルダノールとアルデヒド類とを、塩基性触媒の存在下で反応させて、レゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を製造する。工程1bは、工程1bで得られたカルボキシ基含有カルダノールを含む反応混合物に、塩基性触媒を投入した後、アルデヒド類を投入し、例えば、60℃~120℃の温度下、好ましくは80℃~100℃の温度下で、例えば、10分間~100分間の反応時間で実施されることが好ましい。アルデヒド類は、カルボキシ基含有カルダノールに対するアルデヒド類のモル比(アルデヒド類/カルダノール)が、例えば、1.1以上であり、好ましくは1.3~3.0、より好ましくは1.5~2.5となるような量で使用される。これにより、効率よく反応を十分に進めることができる。また加熱下で実施することにより、出発物質が均一に混合され、分子間の絡み合いや分子間の作用により、得られるレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の分子量の均一化を図ることができる。なお、反応時間は、特に制限はなく、出発原料の種類、配合モル比、触媒の使用量及び種類、反応条件に応じて適宜決定すればよい。
【0052】
工程1bおよび工程2bにおけるレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の合成のために使用される反応溶媒としては、水が一般的であるが、有機溶媒を使用してもよい。このような有機溶媒の具体例としては、アルコール類、ケトン類、芳香族類等が挙げられる。またアルコール類の具体例としては、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン等が挙げられる。ケトン類の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。芳香族類の具体例としては、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0053】
工程1bおよび工程2bを経て得られるレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の重量平均分子量は、例えば、300~10,000であり、好ましくは、400~19,000であり、より好ましくは、500~8,000である。レゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂の数平均分子量は、例えば、300~10,000であり、好ましくは、400~8,000である。上記範囲の重量平均分子量を有するレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、水分散性を有するため好ましい。また、これを硬化して得られる硬化物が高い機械的強度および耐熱性を有するため好ましい。
【0054】
工程1aおよび工程2aを経て得られるレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂のカルボキシ基導入率は、例えば、10モル%以上であり、好ましくは、15モル%以上であり、より好ましくは、20モル%以上である。導入率の上限値は特に限定されないが、例えば、250モル%以下であり、好ましくは、200モル%以下である。ここでカルボキシ基導入率は、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂に含まれる不飽和カルボン酸由来のカルボキシ基の存在量を示す指標であり、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂に含まれるカルダノール由来構造単位を100モルとしたとき、これに含まれるカルボキシ基のモル数を百分率で表した値である。
【0055】
また上記方法により得られたレゾール型のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、未反応の遊離アルデヒド類の含有量が、1.0質量%以下、好ましくは、0.8質量%以下、より好ましくは、0.6質量%以下まで低減されている。
【0056】
(アミン)
本実施形態の樹脂組成物はアミンを含む。樹脂組成物中で、アミンは、上述のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂のカルボキシ基と相互作用し、これによりカルボキシ基が中和されて、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は水溶性または水分散性の油として存在する。
【0057】
本実施形態の樹脂組成物に用いられるアミンとしては、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を中和するのに適切な塩基性を有するとともに、水溶性である第三級アミンが好ましい。このような第三級アミンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、トリオクチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、キヌクリジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-ジメチルアミノエタノール、N-ジエチルアミノエタノール、ピリジン、2,6-ルチジン、4-ジメチルアミノピリジン、キノリン、イソキノリン等が挙げられる。中でも、適度な塩基性を有し、水溶性であり、さらに入手容易であることから、N-ジメチルアミノエタノールを用いることが好ましい。
【0058】
(樹脂組成物の製造方法)
本実施形態の樹脂組成物は、上述のカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂と上述のアミンとを、水中で混合することにより製造することができる。カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、得られる樹脂組成物の固形分量が10~90質量%となる量で配合することができる。固形分量は、用いる水の量を調整することにより変更することができ、樹脂組成物の用途に応じて所望の範囲に調整することができる。アミンの配合量は、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂に対して、例えば、10~50質量%であり、好ましくは、15~45質量%である。このような配合量でカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂とアミンとを含む樹脂組成物は、取扱い性に優れるとともに、樹脂組成物を硬化して得られる硬化物の機械的強度が優れる。
【0059】
一実施形態において、樹脂組成物は、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂が水に溶解した状態で存在する、水溶液の形態である。樹脂組成物が水溶液である場合、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、好ましくは、レゾール型フェノール樹脂である。別の実施形態において、樹脂組成物は、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂が水中に分散した状態で存在する、水分散体の形態である。樹脂組成物が水分散体である場合、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂は、レゾール型またはノボラック型のいずれであってもよく、好ましくは、ノボラック型フェノール樹脂である。
【0060】
なお本明細書中において、樹脂組成物が水溶液の形態であるとは、樹脂組成物の、JIS K 7136に従いヘーズメーターを用いて測定したヘーズの値が、5以下であることと定義し、樹脂組成物が水分散体の形態であるとは、樹脂組成物のヘーズの値が、5を超えることと定義する。
【0061】
本実施形態の樹脂組成物には、その用途に応じ、さらに添加剤を配合してもよい。用いることができる添加剤としては、チキソ剤、増粘剤、分散剤、硬化促進剤、凍結防止剤等が挙げられる。
【0062】
(用途)
本実施形態の樹脂組成物は、繊維基材に含浸させ、その後、硬化させて所定の物品を製造するために使用することができる。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を、湿式ペーパー摩擦材を製造するために使用する場合、本実施形態の樹脂組成物を、天然繊維、金属繊維、炭素繊維、化学繊維などの繊維基材に含浸し、次いでこれを熱処理して硬化させる。
【0063】
また本実施形態の樹脂組成物は、例えば、摩擦材用接着剤、研削材用接着剤、木材用接着剤、積層材用接着剤、鋳型用接着剤等の接着剤、または塗料として使用することができる。
例えば、本実施形態の樹脂組成物を摩擦材用接着剤として使用する場合、本実施形態の樹脂組成物を、湿式摩擦板用の金属基材に塗布する。塗布方法としては、スプレー塗布法、ロールコータ法等を使用することができる。次いで、塗布した樹脂組成物を、例えば、100℃で20分の条件で加熱して、溶剤/分散媒である水を乾燥除去する。その後、この金属基材上の、乾燥後の樹脂組成物層の側に、湿式摩擦板用の摩擦板を配置し、例えば、150℃の温度で、加熱加圧する。加熱加圧後に、例えば、200℃の温度で焼成し、カルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂を完全硬化させる。これにより、金属基材と摩擦板とが強固に接着された湿式摩擦板を製造することができる。本実施形態の樹脂組成物は、有機溶剤を含まないため、加熱乾燥時に有機溶剤の揮発が生じない。そのため、環境負荷が小さい。
【0064】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0065】
以下、本発明を実施例および比較例により説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0066】
[カルボキシ含有カシュー変性フェノール樹脂の合成、およびこれを含む樹脂組成物の調製]
(実施例1)
(樹脂組成物1の調製)
4つ口フラスコにカシューオイル300重量部、シュウ酸3重量部を加え、撹拌しながら130℃に加熱した。反応系を130℃に保ったまま、系中の揮発分が排出される脱水配管として、37%ホルムアルデヒド水溶液75重量部(ホルマリン/カシューオイルのモル比=0.7)を2時間かけて添加した後、脱水配管のまま60分反応させた。その後68cmHgの真空下で温度が180℃に達するまで脱水した。ここで系内を常圧に戻し、脱水配管のまま、フマル酸24重量部(カシューオイルに対して20モル%)を添加し、180℃で90分付加反応させた。反応後、還流配管に戻し、水15重量部、ブタノール120重量部を添加して冷却した後、ジメチルアミノエタノール51重量部、水300重量部を加えて撹拌することで、フマル酸を導入したカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性ノボラック型フェノール樹脂1(カルボキシ基導入率20%)を含む樹脂組成物1を得た。樹脂組成物1に含まれるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性ノボラック型フェノール樹脂1、ジメチルアミノメタノールおよび水の配合量を表1に示す。
【0067】
(実施例2)
(樹脂組成物2の調製)
フマル酸24部を無水マレイン酸20部に変更した以外は、実施例1と同様に合成し、無水マレイン酸を導入したカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性フェノール樹脂2(カルボキシ基導入率20%)を含む樹脂組成物2を得た。樹脂組成物2に含まれるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性ノボラック型フェノール樹脂2、ジメチルアミノメタノールおよび水の配合量を表1に示す。
【0068】
(実施例3)
(樹脂組成物3の調製)
フマル酸24部をクエン酸38部に変更し、カルボン酸添加後の反応時間90分を150分に変更した以外は、実施例1と同様にして、クエン酸(イタコン酸、シトラコン酸)酸を導入したカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性ノボラック型フェノール樹脂3(カルボキシ基導入率20%)を含む樹脂組成物3を得た。樹脂組成物3に含まれるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性ノボラック型フェノール樹脂3、ジメチルアミノメタノールおよび水の配合量を表1に示す。
【0069】
(実施例4)
(樹脂組成物4の調製)
4つ口フラスコに、カシューオイル200重量部、無水マレイン酸24重量部を加え、系中の揮発分が排出される脱水配管として、撹拌しながら180℃に加熱し、60分付加反応させた。還流配管に変えて系内を冷却し、水100重量部、50%水酸化ナトリウム水溶液70部を添加した後、37%ホルムアルデヒド水溶液37部(ホルマリン/カシューオイルのモル比=0.8)を加え、90℃で60分反応させた。反応後、水120重量部、ジメチルアミノエタノール59重量部を加えて撹拌することで、無水マレイン酸を導入したカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性レゾール型フェノール樹脂組成物4(カルボキシ基導入率20%)を含む樹脂組成物4を得た。樹脂組成物4に含まれるカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性レゾール型フェノール樹脂4、ジメチルアミノメタノールおよび水の配合量を表1に示す。
【0070】
(実施例5)
(樹脂組成物5の調製)
フマル酸24部を、6部に変更した以外は、実施例1と同様にして、フマル酸を導入したカルボキシ基含有側鎖を有するカシュー変性ノボラック型フェノール樹脂6(カルボキシ基導入率5%)を含む樹脂組成物5を得た。
【0071】
(比較例1)
(樹脂組成物6の調製)
住友ベークライト社製の未変性ノボラック型フェノール樹脂(PR-53195)315重量部を150℃に溶融し、ジメチルアミノエタノール51重量部、水315重量部への溶解を試みたが、溶解せず、水分散体や水溶液は得られなかった。
【0072】
[樹脂組成物の物性評価]
上記実施例で得られた樹脂組成物について、以下の物性を測定した。
(ヘイズ)
樹脂組成物のヘイズ(ヘーズ=拡散透過率/全光線透過率)をJIS K 7136に従いヘーズメーターを用いて測定した。測定値を表1に示す。
(外観)
樹脂組成物の外観を観察した。結果を表1に示す。
【0073】
[樹脂組成物の硬化物の物性評価]
上記実施例で得られた樹脂組成物の硬化物について、以下の物性を測定した。
(硬化物の作製)
得られた樹脂組成物を固形分が10%になるように水で希釈し、120mm×10mm×厚さ1mmのろ紙に含浸させてから、200℃のオーブンで30分間乾燥硬化させることで、樹脂含浸紙を試験片として得た。レゾール型のフェノール樹脂(実施例4)はそのまま、ノボラック型のフェノール樹脂(実施例1~3、および5)は硬化剤としてヘキサメチレンテトラミンを5phr添加して使用した。
【0074】
(耐水性評価)
この樹脂含浸紙について、硬化後と、80℃水中に24時間浸漬後で、引張強度を測定し、強度の低下率=水中浸漬後強度/硬化後強度(%)を測定することで耐水性を評価した。強度の低下率(%)の値が大きいほど、耐水性が高いことを意味する。
【0075】
(柔軟性評価)
硬化後の含浸紙の引張破断伸び(%)を測定し、柔軟性を評価した。引張破断伸び(%)の値が大きいほど、柔軟性が高いことを意味する。
【0076】