(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173150
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】魚釣用リール
(51)【国際特許分類】
A01K 89/01 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A01K89/01 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091376
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002495
【氏名又は名称】グローブライド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097559
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 浩司
(74)【代理人】
【識別番号】100196829
【弁理士】
【氏名又は名称】中澤 言一
(72)【発明者】
【氏名】永井 諒
(72)【発明者】
【氏名】木村 真人
(72)【発明者】
【氏名】堤 わたる
(72)【発明者】
【氏名】松橋 学
(72)【発明者】
【氏名】田中 裕典
(72)【発明者】
【氏名】小榑 聡
【テーマコード(参考)】
2B108
【Fターム(参考)】
2B108BA01
2B108BA03
2B108BE04
(57)【要約】
【課題】軸受等の作動部材をガタ付くことなく、安定して固定することが可能な固定構造を備えた魚釣用リールを提供する。
【解決手段】本発明の魚釣用リール1は、リール本体2に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって駆動される軸受20を固定することが可能な固定構造10を有する。固定構造10は、リール本体2に形成された受面と対向して固定され、軸受20をリール本体2に対して位置決め、固定するプレート部材31を備えており、受面2Caは、プレート部材31に対して3箇所以上で接触し、同一高さのボス部40,41を有する。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって駆動される作動部材を固定することが可能な固定構造を有する魚釣用リールにおいて、
前記固定構造は、前記リール本体に形成された受面と対向して固定され、前記作動部材をリール本体に対して位置決め、固定するプレート部材を備えており、
前記受面は、前記プレート部材に対して3箇所以上で接触し、同一高さのボス部を有することを特徴とする魚釣用リール。
【請求項2】
前記リール本体は、前記作動部材を収容し、内部に受面が形成された円筒部を備えており、
前記ボス部は、円周方向で等間隔に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の魚釣用リール。
【請求項3】
前記受面とプレート部材は、互いに対向する輪帯部と、輪帯部の一部に形成され径方向に突出する径方向突部と、を備えており、
前記ボス部は、前記受面の輪帯部に形成され、前記プレート部材は、前記受面に形成された径方向突部にネジ止め固定されることを特徴とする請求項2に記載の魚釣用リール。
【請求項4】
前記ボス部の高さは2mm以下に形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の魚釣用リール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一方向クラッチ、軸受、駆動軸等の作動部材を安定して固定(保持)することが可能な固定構造を備えた魚釣用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
魚釣用リールであるスピニングリールは、ハンドルを回転操作した際、駆動歯車に噛合するピニオンギアを回転駆動するように構成されている。前記ピニオンギアには軸受が装着されており、リール本体に対してピニオンギアを回転可能に支持している。また、ピニオンギアには、一方向クラッチが装着されており、ピニオンギアの逆回転を防止できるように構成されている。
【0003】
前記軸受や一方向クラッチは、リール本体に対して位置決めされて固定(保持)されている。例えば、特許文献1には、リール本体にカップ状に形成された円筒部に軸受を位置決め、固定する固定構造を備えた魚釣用リールが開示されている。前記円筒部の内側の中心には、ピニオンギアが挿通されており、軸受を介して前記ピニオンギアはリール本体に対して回転可能に支持されている。この場合、円筒部の内部に形成された受面にプレート部材(係止部材)を当て付け、これをネジ止めすることで、円筒部の内部に保持される軸受をガタ付かないように固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記リール本体をプラスチック等で型成形した場合、ヒケ(成形品の表面に歪みや凹みが発生する成形不良)の問題が生じる。このヒケが、前記円筒部の内部の受面に生じると、面状態が凹凸状になり、受面に面接するプレート部材の保持状態が安定せず、軸受がガタ付き易いという問題が生じる。また、魚釣用リールは水辺で使用されるため、リール本体が吸水して前記受面が膨張することもある。このように、受面が膨張すると、受面に面接するプレート部材の固定状態が安定せず、軸受部分でガタ付きや圧縮が生じ、回転性能が損なわれてしまう。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、各種の作動部材をガタ付くことなく、安定して固定することが可能な固定構造を備えた魚釣用リールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る魚釣用リールは、リール本体に回転可能に支持されたハンドルの回転操作によって駆動される作動部材を固定することが可能な固定構造を有し、前記固定構造は、前記リール本体に形成された受面と対向して固定され、前記作動部材をリール本体に対して位置決め、固定するプレート部材を備えており、前記受面は、前記プレート部材に対して3箇所以上で接触し、同一高さのボス部を有することを特徴とする。
【0008】
上記した魚釣用リールによれば、各種の作動部材を固定する固定構造の受面にボス部を形成し、このボス部で、作動部材をリール本体に対して位置決め、固定するプレート部材を受けるようにしている。すなわち、受面とプレート部材を面接させないことから、受面にヒケの影響で凹凸、うねり等が生じていても、プレート部材に影響を及ぼすことがなくなり、作動部材をガタ付くことなく、安定して固定することが可能となる。
また、水辺で使用することでリール本体が吸水し受面部分が膨張(部分的な膨張を含む)しても、プレート部材と受面との間に、ボス部による空間があることで、その膨張分をかわすことができ、作動部材を圧縮したりガタ付くことなく、安定して固定することが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、各種の作動部材をガタ付くことなく、安定して固定することが可能な固定構造を備えた魚釣用リールが得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る魚釣用リールの一実施形態であるスピニングリールの主要部の構成を示す分解斜視図。
【
図2】
図1に示したスピニングリールのリール本体の受面にプレート部材を装着する前の状態を示す正面図。
【
図3】
図1に示したスピニングリールのリール本体の受面にプレート部材を固定した状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、
図1から
図4を参照して、本発明に係る魚釣用リールの一実施形態であるスピニングリールについて説明する。最初に、
図1を参照して、本実施形態のスピニングリールの全体構成の概略について説明する。なお、
図1では、スピニングリールとして周知の構成(ロータ、スプール、ハンドル及び駆動力伝達機構等の詳細な構成)は省略して示されており、
図4では、特徴部分の構成要素を示している。
【0012】
スピニングリール(以下、リールと称する)1のリール本体2は、合成樹脂を型成形することで一体形成されている。前記リール本体2には、釣竿に装着されるリール脚2A、及び、円筒部2Bが一体形成されている。このリール本体2の前方には、回転可能に支持されたロータ、及び、ロータの回転運動と同期して前後動可能に支持されたスプールが配設される。
【0013】
前記ロータは、スプールの周囲を回転する一対の腕部を備えており、各腕部の夫々の前端部には、ベールの基端部を取り付けたベール支持部材が釣糸巻き取り位置と釣糸放出位置との間で回動自在に支持されている。前記ベールの一方の基端部は、ベール支持部材に一体的に設けられたラインローラに取り付けられている。
【0014】
前記リール本体2内には、ハンドル軸3が軸受けを介して回転可能に支持されており、その端部には、ハンドルが取り付けられる。前記ハンドル軸3には、ハンドルを回転操作した際、その駆動力を前記ロータに伝達してロータを回転駆動させる駆動力伝達機構10が設けられている。
【0015】
前記駆動力伝達機構10は、前記ハンドル軸3に一体回転可能に装着された駆動ギア(フェースギア)11と、この駆動ギア11に噛合する歯部12aが形成されたピニオン12とを備えている。前記ピニオン12は、前記ハンドル軸3と直交する前後方向に延出し、内部に軸方向に延出する空洞部12bが形成された回転駆動軸(作動部材)としての機能を有する。この場合、空洞部12bには、ハンドルを回転操作した際にスプールを前後動させる公知のオシレート機構と係合するスプール軸が挿通され、その先端に前記スプールが装着される。
【0016】
前記ピニオン12は、リール本体2に対して回転可能に支持されている。また、前記ピニオン12はスプール側に向けて延出しており、その先端部には、前記ロータが一体回転可能に取り付けられる。さらに、前記ピニオン12には、ハンドルの回転操作に伴って駆動される一方向クラッチや軸受等の作動部材が設けられる。
【0017】
上記した構成により、ハンドルを回転操作すると、駆動力伝達機構10を介してロータが回転駆動される共に、オシレート機構及びスプール軸を介してスプールが前後方向に往復動される。したがって、釣糸は、回転駆動されるロータのラインローラを介してスプールに均等に巻回されるようになる。
【0018】
次に、前記ピニオン12に装着される軸受や一方向クラッチ等の作動部材の配設構成、及び、作動部材を一定の位置に固定する固定構造について説明する。
【0019】
前記ピニオン12は、リール本体2の前方に一体形成された円筒部2Bの底部2Cの中央に挿通されている。前記ピニオン12は、前記歯部12aに対して軸方向の前方側に配設される軸受(ボールベアリング)20、及び、前記歯部12aに対して軸方向の後方側に配設される軸受(ボールベアリング)21によって、リール本体2に対して回転可能に支持されている。なお、前記軸受20は、
図4に示すように、前記円筒部2Bの底部2Cの挿通部分に配設されている。
【0020】
前記軸受20と歯部12aとの間にはワッシャ20aが介在されており、前記軸受21と歯部12aとの間にはワッシャ21aが介在されている。また、ピニオン12のリール本体側には、カラー23が配設されており、ロータ側には、ピニオン12の逆回転を防止する一方向クラッチのクラッチリング(内輪)25が配設されている。このクラッチリング25と軸受20との間には、スペーサ26が介在されており、スペーサ26の一端面が軸受20に当接し、スペーサ26の他端面がクラッチリング25に当接している。
【0021】
本実施形態の固定構造30は、前記軸受20がガタ付くことなく、安定して固定するよう構成されている。
前記固定構造30は、前記リール本体2に形成された円筒部2Bの底部2Cを構成する受面2Caと、この受面2Caと対向して固定され、前記軸受20をリール本体2に対して位置決め、固定するプレート部材31とを備えている。このプレート部材31は、アルミやステンレス等によって、略輪帯形状で薄板状に形成されており、中央開口31aの周囲の円周縁部31bが軸受20に当接することで、軸受20の軸方向の移動を規制(抜け止め)している。
【0022】
前記プレート部材31の外周には、略180°間隔で、径方向に突出する一対の径方向突部31cが形成されており、この径方向突部31cには、止めネジ用の貫通孔31dが形成されている。また、リール本体側の前記受面2Caは、プレート部材31の形状と対応するように、輪帯形状の平坦面で構成されると共に、略180°間隔で前記径方向突部31cと対応するように突出面2Cbが形成されている。
【0023】
前記受面2Caの突出面2Cbには、プレート部材31の径方向突部31cに形成された貫通孔31dと一致するように固定穴2Ccが形成されている。
これにより、前記軸受20を所定の位置に配設し、この状態でプレート部材31を軸受20に当接させて、貫通孔31dに止めネジ35を螺入することで、軸受20は、プレート部材31によって所定の位置で固定することが可能となる。
【0024】
この場合、従来では、受面2Caにプレート部材31を面接触させてネジ止めで固定していたが、このような固定方法では、軸受20及びピニオン12を安定して固定できない可能性がある。すなわち、リール本体2を、上記したように、樹脂によって型成形すると、そのヒケ等の影響で、受面2Caが傾いたり、皺やうねり等による凹凸状になることがある。また、リールは、水辺で使用されることから、樹脂が吸水して膨張し、受面2Caが膨らむこともあり得る。
【0025】
このように、受面2Caの表面状態が変化すると、そこに面接するプレート部材31の面接状態が不安定になることがあり、結果として、軸受20及びピニオン12の固定状態が不安定となってしまう。すなわち、受面2Caを規定する面(基準面P1)が平坦な状態に維持されていれば、面接状態が変わることなく、軸受20及びピニオン12の固定状態が安定するが、上記した要因で受面2Caの表面状態が変化してしまうと、取り付けたプレート部材31は基準面P1に対して傾くことから、固定される軸受20やピニオン12にガタ付きが生じてしまう。
【0026】
本実施形態では、前記受面2Caに、プレート部材31に対して接触し、同一高さのボス部(ボス部40,41)を複数形成し、各ボス部の頂部にプレート部材31を接触させて固定するようにしている。この場合、ボス部については、少なくとも3箇所形成しておけば、プレート部材31の安定化を図ることができ、各ボス部の頂部を基準面P2とすることができる。
【0027】
前記ボス部については、必要最小限のエリア内にすることで、リール本体を軽量化することが可能となる。本実施形態では、受面2Caは、輪帯形状に形成されていることから、その輪帯部(輪帯形状の平坦面)が最小限のエリアとなり、この部分に等間隔で3箇所にボス部40を形成することで、小型、軽量化を図ることが可能となる。また、本実施形態では、上記したエリア以外にも、各突出面2Cbの固定穴2Ccの径方向外方に1個所ずつボス部41を形成している。
【0028】
前記ボス部40,41については、型成形時に一体形成することができ、各ボス部同士の間は、前記底部2Cが肉抜きされた状態となる。すなわち、
図4の基準面P2を考慮すると、ボス部が形成されていない部分は肉抜き部分になることから、リール本体の円筒部2Bの底部2Cを薄肉化することが可能となり、リール本体の軽量化を図ることが可能となる。また、肉厚を厚くしなくても済むため、ヒケを効果的に防止することが可能となる。
【0029】
前記ボス部40,41の形成位置や個数については限定されることはないが、本実施形態のように、受面2Caを輪帯部(円形状の部分)にすることで、必要最小限の小さいエリアでプレート部材31を受けるようにしている。したがって、この小さいエリアにボス部40を円周方向に等間隔(120°間隔)で形成したことによって、固定されるプレート部材31の安定化を図りながら、より効果的に小型、軽量化を図ることが可能となる。また、ボス部40の径方向外方にも、等間隔(180°間隔)でボス部41を形成したことで、プレート部材31をより安定して固定することが可能となる。
【0030】
以上、本実施形態の構成では、ボス部40,41を形成したことで、受面2Caとプレート部材31を面接させないようにしている。このため、受面2Caにヒケの影響でうねり、皺等による凹凸が生じていても、ボス部40,41は影響を受けることが低減されるので、プレート部材31に影響を及ぼすことがなくなる。すなわち、プレート部材31の基準面P2が傾くことはなく、安定した状態になるため、軸受20及びピニオン12をガタ付くことなく、安定して固定することが可能となる。
【0031】
また、水辺で使用することでリール本体2が吸水し膨張しても、プレート部材31と受面2Caとの間に、ボス部40,41による空間があるため、その膨張分をかわすことができ、軸受20及びピニオン12をガタ付くことなく、安定して固定することが可能となる。
【0032】
なお、各ボス部40,41の高さHについては、あまり高くすると軸方向のコンパクト化に影響を及ぼすことから、2mm以下に形成しておくことが好ましい。また、前記ボス部40,41は、同一の形状にしても良いし、断面積(太さ)を変えたり、テーパを形成しても良く、その断面形状は限定されることはない。ただし、各ボス部の頂部については、プレート部材31を点接触させるのではなく、面接触するように平坦部を形成しておくことが好ましい。
【0033】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。
本発明は、リール本体側に受面を備え、この受面に対してプレート部材を当接させて各種の作動部材を固定する固定構造を備えた魚釣用リールに適用することが可能である。この場合、受面については、リール本体に形成されたものであれば良く、リール本体と一体形成されていたり、リール本体とは別体に形成されて一体化されたものであっても良い。
【0034】
前記受面やプレート部材の形状については、限定されることはなく、作動部材については、一方向クラッチ等であっても良い。また、本実施形態では、魚釣用リールとしてスピニングリールを例示したが、作動部材が組み込まれる他のリール(両軸受け型リール)等にも適用することが可能である。更に、リール本体や受面は、金属製で構成されていても良い。
【符号の説明】
【0035】
1 スピニングリール(魚釣用リール)
2 リール本体
2B 円筒部
2C 底部
2Ca 受面
10 固定構造
20 軸受(作動部材)
31 プレート部材
40,41 ボス部