(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173151
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】制御装置、制御システム及び制御方法
(51)【国際特許分類】
B60J 3/04 20060101AFI20241205BHJP
B60R 11/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60J3/04
B60R11/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091377
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】橋本 治彦
(72)【発明者】
【氏名】舟橋 正根
(72)【発明者】
【氏名】江川 哲也
【テーマコード(参考)】
3D020
【Fターム(参考)】
3D020BA20
3D020BC10
3D020BE03
(57)【要約】
【課題】対象者の感覚に合うように眩しさを緩和することができる制御装置、制御システム及び制御方法を提供する。
【解決手段】制御装置1は、取得した対象者9の目に関する対象者情報S
1に基づいて対象者9が眩しさを感じているか推定する推定部10と、対象者9が眩しさを感じていると推定される場合、対象者9に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御部12と、を備えて概略構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
取得した対象者の目に関する対象者情報に基づいて前記対象者が眩しさを感じているか推定する推定部と、
前記対象者が眩しさを感じていると推定される場合、前記対象者に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも前記透過率を低くすることで前記対象者の眩しさを緩和する制御部と、
を備えた制御装置。
【請求項2】
前記対象者情報は、前記対象者の目の周辺の明るさを示す値に関する情報を有し、
前記推定部は、積算しきい値を有し、前記対象者情報に基づいて前記対象者の両目の周辺に積算領域を設定し、この前記積算領域における前記目の周辺の明るさを示す値の分布において予め定められた境界値から高い方の値までとして予め定められた積算範囲の前記目の周辺の明るさを示す値を積算して積算値を算出し、算出した前記積算値が前記積算しきい値より大きい場合、前記対象者が眩しいと推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記推定部は、複数の前記積算しきい値を有し、複数の前記積算しきい値と前記積算値とを比較し、前記対象者の眩しさを段階的に推定し、
前記制御部は、前記推定部の段階的な推定に基づいて前記電子機器の複数の透過率を切り替える、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記推定部は、さらに前記対象者の周囲の明るさを示す値に関する周囲情報を取得し、前記対象者が眩しいと感じると推定した際の前記周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値を設定し、前記積算値が前記積算しきい値以下であっても前記周囲の明るさを示す値が前記周囲しきい値より大きい場合、前記透過率を制御前に戻すと前記対象者が眩しいと感じると推定し、前記積算値が前記積算しきい値以下であり、前記周囲の明るさを示す値が前記周囲しきい値以下となった場合、前記透過率を制御前に戻しても前記対象者が眩しく感じないと推定し、
前記制御部は、前記透過率を制御前に戻しても前記対象者が眩しく感じないと推定された場合、前記電子機器を制御して前記透過率を制御前に戻す、
請求項2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記推定部は、前記対象者情報に基づいて前記対象者の目の開き度合い、瞳孔径、及び瞬きの回数に関する少なくとも1つの眩しさの兆候を監視し、前記少なくとも1つの前記眩しさの兆候に対して課された予め定められた条件が満たされた場合、前記対象者が眩しいと推定する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記推定部は、前記少なくとも1つの前記眩しさの兆候に基づいて前記対象者の眩しさを段階的に推定し、
前記制御部は、前記推定部の段階的な推定に基づいて前記電子機器の複数の透過率を切り替える、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項7】
前記推定部は、さらに前記対象者の周囲の明るさを示す値に関する周囲情報を取得し、前記周囲情報に基づく前記周囲の明るさを示す値、又は前記周囲の明るさを示す値の時間変化に基づいて前記予め定められた条件に使用するしきい値を変更して前記対象者が眩しさを感じているか推定する、
請求項5に記載の制御装置。
【請求項8】
前記電子機器は、車両に搭載された電子サンバイザである、
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の制御装置。
【請求項9】
光の透過率を切り替えて、対象者に到達する光を抑制する電子機器と、
前記対象者の目に関する対象者情報を取得する取得装置と、
取得した前記対象者情報に基づいて前記対象者が眩しさを感じているか推定する推定部、及び前記対象者が眩しさを感じていると推定される場合、前記電子機器を制御し、制御前よりも前記透過率を低くすることで前記対象者の眩しさを緩和する制御部を有する制御装置と、
を備えた制御システム。
【請求項10】
取得した対象者の目に関する対象者情報に基づいて前記対象者が眩しさを感じているか推定し、
前記対象者が眩しさを感じていると推定される場合、前記対象者に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも前記透過率を低くすることで前記対象者の眩しさを緩和する、
制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、制御システム及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術として、光を遮る遮光部を電気的制御により形成可能な遮光装置と、車外の光源を検出する光源検出手段と、搭乗者の目の位置を検出する位置検出手段と、光源の位置と目の位置とを結ぶ直線が遮光装置を通る位置を演算し、当該位置に遮光部を形成する遮光制御手段と、を備えた車両用防眩装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
この車両用防眩装置は、光源の位置を特定して遮光部を形成するので、光源の光が遮られる位置に遮光部を正確に形成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の車両用防眩装置は、搭乗者がそれほど眩しさを感じていない場合でも光源の位置と目の位置とに基づいて遮光部が移動する場合、搭乗者に煩わしさを感じさせ、感覚に合わない可能性がある。
【0006】
従って本発明の目的は、対象者の感覚に合うように眩しさを緩和することができる制御装置、制御システム及び制御方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、取得した対象者の目に関する対象者情報に基づいて対象者が眩しさを感じているか推定する推定部と、対象者が眩しさを感じていると推定される場合、対象者に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者の眩しさを緩和する制御部と、を備えた制御装置を提供する。
【0008】
本発明の他の態様は、光の透過率を切り替えて、対象者に到達する光を抑制する電子機器と、対象者の目に関する対象者情報を取得する取得装置と、取得した対象者情報に基づいて対象者が眩しさを感じているか推定する推定部、及び対象者が眩しさを感じていると推定される場合、電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者の眩しさを緩和する制御部を有する制御装置と、を備えた制御システムを提供する。
【0009】
本発明の他の態様は、取得した対象者の目に関する対象者情報に基づいて対象者が眩しさを感じているか推定し、対象者が眩しさを感じていると推定される場合、対象者に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者の眩しさを緩和する、制御方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、対象者の感覚に合うように眩しさを緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1(a)は、第1の実施の形態に係る制御装置が配置された車両の一例を示す図であり、
図1(b)は、制御装置に関するブロック図の一例であり、
図1(c)は、積算領域の一例について説明するための図である。
【
図2】
図2(a)は、第1の実施の形態の積算領域の一例を示す図であり、
図2(b)は、対象者の顔が暗い場合に検出される輝度値の一例を示すヒストグラムである。
【
図3】
図3(a)は、第1の実施の形態の積算領域の一例を示す図であり、
図3(b)は、対象者の顔が明るい場合に検出される輝度値の一例を示すヒストグラムである。
【
図4】
図4(a)は、電子サンバイザの透過率が高い場合の一例を示す図であり、
図4(b)は、低い場合の一例を示す図である。
【
図5】
図5は、制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6(a)は、第2の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図6(b)は、積算値と複数の積算しきい値との関係の一例を示す図である。
【
図8】
図8(a)は、第3の実施の形態に係る制御装置が配置された車両の一例を示す図であり、
図8(b)は、制御装置に関するブロック図の一例である。
【
図9】
図9(a)は、積算値の時間変化の一例を示すグラフであり、
図9(b)は、照度値の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図10】
図10は、制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図11】
図11は、変形例に係る制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図12】
図12(a)は、第4の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図12(b)は、開眼度の一例について説明するための図であり、
図12(c)は、瞳孔径の一例について説明するための図である。
【
図13】
図13(a)は、開眼度の時間変化の一例を示すグラフであり、
図13(b)は、瞳孔径の時間変化の一例を示すグラフであり、
図13(c)は、瞬きの回数の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図14】
図14は、制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図15】
図15(a)は、第5の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図15(b)は、開眼度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図16】
図16は、制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図17】
図17(a)は、第6の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図17(b)は、開眼度の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図18】
図18(a)は、第6の実施の形態に係る照度値の時間変化の一例を示すグラフであり、
図18(b)は、短い間隔で照度値が高くなったり低くなったりする場合の照度値の時間変化の一例を示すグラフである。
【
図19】
図19は、制御装置の動作の一例を示すフローチャートである。
【
図20】
図20(a)及び
図20(b)は、第7の実施の形態に係る制御システムのブロック図の一例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(実施の形態の要約)
実施の形態に係る制御装置は、取得した対象者の目に関する対象者情報に基づいて対象者が眩しさを感じているか推定する推定部と、対象者が眩しさを感じていると推定される場合、対象者に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者の眩しさを緩和する制御部と、を備えて概略構成されている。
【0013】
また実施の形態の他の態様に係る制御システムは、光の透過率を切り替えて、対象者に到達する光を抑制する電子機器と、対象者の目に関する対象者情報を取得する取得装置と、取得した対象者情報に基づいて対象者が眩しさを感じているか推定する推定部、及び対象者が眩しさを感じていると推定される場合、電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者の眩しさを緩和する制御部を有する制御装置と、を備えて概略構成されている。
【0014】
さらに実施の形態の他の態様に係る制御方法は、取得した対象者の目に関する対象者情報に基づいて対象者が眩しさを感じているか推定し、対象者が眩しさを感じていると推定される場合、対象者に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者の眩しさを緩和する、ことを含んでいる。
【0015】
この操作装置、制御システム及び制御方法は、対象者の対象者情報に基づいて眩しさを感じているか推定するので、この構成を採用しない場合と比べて、対象者の感覚に合うように眩しさを緩和することができる。
【0016】
[第1の実施の形態]
(制御装置1の概要)
図1(a)は、第1の実施の形態に係る制御装置が配置された車両の一例を示す図であり、
図1(b)は、制御装置に関するブロック図の一例であり、
図1(c)は、対象者の目の周辺に設定される積算領域の一例について説明するための図である。
図2(a)は、第1の実施の形態に係る推定部が設定する積算領域の一例を示す図であり、
図2(b)は、対象者の顔が暗い場合に検出される輝度値の一例を示すヒストグラムである。
図3(a)は、第1の実施の形態に係る推定部が設定する積算領域の一例を示す図であり、
図3(b)は、対象者の顔が明るい場合に検出される輝度値の一例を示すヒストグラムである。
図4(a)は、第1の実施の形態に係る制御装置の制御対象である電子サンバイザの透過率が高い場合の一例を示す図であり、
図4(b)は、電子サンバイザの透過率が低い場合の一例を示す図である。
図2(a)及び
図3(a)は、対象者9の顔90の明るさを斜線の間隔で示し、間隔が狭いほど暗くなる。
図2(b)及び
図3(b)は、横軸が輝度値、縦軸が画素数である。
【0017】
なお以下に記載する実施の形態に係る各図において、図形間の比率や形状は、実際の比率や形状とは異なる場合がある。また
図1(b)、後述する
図6(a)、
図8(b)、
図12(a)、
図15(a)、
図17(a)、
図20(a)及び
図20(b)では、主な信号や情報の流れを矢印で示している。
【0018】
本実施の形態の制御装置1は、
図1(a)及び
図1(b)に示すように、取得した対象者9の目に関する対象者情報S
1に基づいて対象者9が眩しさを感じているか推定する推定部10と、対象者9が眩しさを感じていると推定される場合、対象者9に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御部12と、を備えて概略構成されている。
【0019】
本実施の形態の電子機器は、一例として、
図1(a)に示すように、車両8に搭載された電子サンバイザ2である。なお電子機器は、電子サンバイザ2に限定されず、建物などの窓や車両8のウインドウに配置された電子シェードなどの透過率を切り替えられるものであっても良い。
【0020】
ここで電子サンバイザ2の制御前は、一例として、透明な状態である。この透明な状態とは、一例として、透過率が100%の状態、又は対象者9の視界93を妨げない程度の透過率とされた状態である。制御装置1は、対象者9が眩しいと感じていると推定される場合、透明な状態から、光の一部を遮蔽する状態、つまり制御前よりも透過率を低くして眩しさを緩和するように構成されている。なお制御後の透過率は、光のほとんどを遮蔽するような透過率ではなく、前方の視界93が失われない程度の透過率とされる。
【0021】
なお制御装置1は、電子サンバイザ2が運転席82の前方以外の場所に配置され、運転に支障がない限り、眩しさを緩和するために運転席82側の電子サンバイザ2よりも透過率を低くすることがあっても良い。また制御装置1は、一例として、車両8が自動運転中であり、かつ対象者9が運転する必要がない場合、対象者9が運転する場合よりも運転席82側の電子サンバイザ2の透過率を低くすることがあっても良い。さらに制御装置1は、車両8が停車中であり、ブレーキ装置が動作するなどの走行の可能性が低い場合、運転席82側の電子サンバイザ2の透過率を運転中よりも低くすることがあっても良い。
【0022】
対象者情報S1は、対象者9の目の周辺の明るさを示す値に関する情報を有している。本実施の形態の対象者情報S1は、カメラ装置3によって対象者9の顔90を撮像して得られる画像情報である。そして明るさを示す値とは、一例として、画像情報から得られる輝度値である。なお対象者情報S1は、輝度値を得ることが可能な画像情報に限定されず、光度計などが測定する照度値に関する情報であっても良い。
【0023】
推定部10は、一例として、
図1(b)に示すように、カメラ装置3が撮像した画像情報である対象者情報S
1を、車両LAN(Local area Network)88を介して取得する。
【0024】
推定部10は、積算しきい値Th1を有し、対象者情報S1に基づいて対象者9の両目の周辺に積算領域32を設定し、この積算領域32における目の周辺の明るさを示す値の分布において予め定められた境界値102から高い方の値までとして予め定められた積算範囲103の目の周辺の明るさを示す値を積算して積算値104を算出し、算出した積算値104が積算しきい値Th1より大きい場合、対象者9が眩しいと推定するように構成されている。
【0025】
推定部10は、一例として、
図1(c)に示すように、対象者9の両目、つまり右目91及び左目92を含むような積算領域32を設定する。そして推定部10は、積算領域32に含まれる画像情報の画素320における輝度値を算出する。
【0026】
輝度値の分布の予め定められた範囲とは、一例として、
図2(b)及び
図3(b)に示すように、境界値102から輝度値が明るい方の範囲である積算値104である。積算値104は、一例として、
図2(b)及び
図3(b)において斜線で示すように、積算領域32に含まれる輝度値の画素数を足し合わせた値である。
【0027】
(電子サンバイザ2の構成)
電子サンバイザ2は、一例として、フィルム状であり、電圧の印加によって透過率が高い状態から透過率が低い状態に変化する材料を用いて構成されている。
【0028】
電子サンバイザ2は、一例として、
図1(b)に示すように、車両LAN88を介して制御装置1と電気的に接続されている。この車両LAN88は、例えば、有線及び無線によって相互に信号や情報などの交換を可能とするCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)といった車両用ネットワークである。
【0029】
この車両LAN88には、一例として、
図1(b)に示すように、車両制御装置87及びカメラ装置3が接続されている。車両制御装置87は、例えば、記憶されたプログラムに従って、取得したデータに演算、加工などを行うCPU(Central Processing Unit)、半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)などから構成されるマイクロコンピュータである。なお電子サンバイザ2は、制御装置1に直接接続されても良い。
【0030】
電子サンバイザ2は、スイッチ20と電気的に接続されている。このスイッチ20は、なされた操作に基づいて電子サンバイザ2のオン(透過率が低い状態)、及びオフ(透過率が高い状態)の切り替えを行い、また電子サンバイザ2を天井80から引き出すとオン、収容するとオフに切り替えるように構成されている。スイッチ20は、操作又は収容によってスイッチ信号S4を出力し、電子サンバイザ2のオン及びオフを切り替える。
【0031】
電子サンバイザ2は、
図4(a)及び
図4(b)に示すように、車両8の運転席82及び助手席83の天井80に配置されている。電子サンバイザ2は、天井80と接続部21を介して交差する方向にそれぞれ回転可能とされている。電子サンバイザ2は、天井80に沿うように収容され、使用される際には、対象者9の視界93と交差するように回転させることが可能であり、さらに左右方向に回転させてドアのウインドウを介して差し込む光の一部を遮光することが可能である。
【0032】
電子サンバイザ2は、制御装置1の制御部12から出力される制御信号S3に基づいて光の透過率を切り替えるように構成されている。
【0033】
(推定部10の構成)
本実施の形態の推定部10は、一例として、カメラ装置3から車両LAN88を介して対象者情報S1を取得するように構成されている。なお推定部10は、カメラ装置3を備えて構成されても良い。
【0034】
カメラ装置3は、CCD(Charge Coupled Devices)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)などの撮像素子を備えて構成されている。このカメラ装置3は、対象者9の顔90を撮像して画像情報である対象者情報S1を出力する。この対象者情報S1は、一例として、周期的に推定部10に出力される。なおカメラ装置3は、動画として対象者情報S1を出力するように構成されても良い。
【0035】
カメラ装置3は、
図1(a)に示すように、インストルメントパネル84に配置されているがこれに限定されず、対象者9の顔90が撮像可能な場所であれば、天井80、コラムカバ85及びルームミラ86などに配置されても良い。なおカメラ装置3は、専用に配置されても良いし、車両8に搭載されているものを流用するようにしても良い。
【0036】
推定部10は、
図2(a)及び
図3(a)に示すように、対象者情報S
1に基づく画像30の顔画像31に輝度値を算出するための積算領域32を設定する。推定部10は、例えば、CPU、RAM及びROMなどから構成されるマイクロコンピュータである。なお推定部10は、制御部12が実行するプログラム、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)及びFPGA(Field Programmable Gate Array)などによって実現されても良い。
【0037】
積算領域32は、複数の画素320から構成される。この画素320が多くなると、輝度値などの算出に時間が必要となり、高い処理能力を持ったマイクロコンピュータが必要となる。しかし推定部10は、画像30の全ての画素320の輝度値及び積算値104の算出を行うのではなく、限定した積算領域32のみで輝度値及び積算値104の算出を行うので、算出の時間が短縮され、高い処理能力を必要としない。
【0038】
推定部10は、一例として、画像30から顔画像31を認識し、顔画像31から右目画像310及び左目画像311を認識し、認識した右目画像310及び左目画像311に基づいて積算領域32を設定する。推定部10は、対象者9が目鏡をかけている場合、一例として、目鏡の画像に基づいて右目画像310及び左目画像311を認識して積算領域32を設定するがこれに限定されず、目鏡の画像に基づいて積算領域32を設定しても良い。
【0039】
なお変形例として推定部10は、対象者9が目鏡をかけている場合、積算しきい値Th1及び境界値102の少なくとも一方を変更するように構成されても良い。推定部10は、一例として、対象者9が目鏡をかけている場合、目鏡の反射で輝度値が高い可能性があるので、積算しきい値Th1を高くしたり、境界値102を明るい方に変更したりする。
【0040】
推定部10は、一例として、右目画像310及び左目画像311、右目画像310の下の涙袋画像310a及び目袋画像310b、左目画像311の下の涙袋画像311a及び目袋画像311bを含むように積算領域32を設定するように構成される。本実施の形態の推定部10は、さらに頬の上部である頬画像310c及び頬画像311cを含むように積算領域32を設定するがこれに限定されない。
【0041】
推定部10は、積算領域32に含まれる複数の画素320ごとの輝度値を算出する。そして推定部10は、境界値102を基準とした積算範囲103の輝度値を積算して積算値104を算出する。この積算値104は、一例として、
図2(b)及び
図3(b)において斜線で示した部分である。
【0042】
推定部10は、算出した積算値104と積算しきい値Th1とを比較する。推定部10は、積算値104が積算しきい値Th1より大きい場合、対象者9が眩しいと感じていると推定する。推定部10は、推定結果を推定情報S2として制御部12に出力する。
【0043】
(制御部12の構成)
制御部12は、例えば、CPU、RAM及びROMなどから構成されるマイクロコンピュータである。このROMには、例えば、制御部12が動作するためのプログラムが格納されている。RAMは、例えば、一時的に演算結果などを格納する記憶領域として用いられる。また制御部12は、その内部にクロック信号を生成する手段を有し、このクロック信号に基づいて動作を行う。
【0044】
制御部12は、推定部10から出力される推定情報S2に基づいて対象者9が眩しいと感じていると推定されている場合、制御信号S3を生成して電子サンバイザ2に出力する。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて光の透過率を高い状態から低い状態、つまり透明な状態から一部の光を遮光する状態に切り替え、対象者9の眩しさを緩和する。
【0045】
以下に本実施の形態の制御装置1の動作の一例について
図5のフローチャートに従って説明する。なお電子サンバイザ2は、他の実施の形態のフローチャートと同様に、天井80から引き出され、透過率が高い状態、つまり透明な状態にあるものとする。
【0046】
(動作)
本実施の形態の制御装置1は、取得した対象者9の目に関する対象者情報S1に基づいて対象者9が眩しさを感じているか推定し、対象者9が眩しさを感じていると推定される場合、対象者9に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器としての電子サンバイザ2を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御方法に基づいて制御を行う。
【0047】
具体的には、制御装置1の推定部10は、カメラ装置3から対象者情報S1を取得する(Step1)。そして推定部10は、対象者情報S1に基づいて積算領域32を設定し、積算値104を算出する(Step2)。
【0048】
次に推定部10は、積算値104と積算しきい値Th1とを比較する。推定部10は、積算値104が積算しきい値Th1より大きい場合、対象者9が眩しいと感じていると推定する(Step3:Yes)。推定部10は、制御部12に対象者9が眩しいと感じているとする推定情報S2を出力する。
【0049】
次に制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を高い状態から低い状態とする制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する(Step4)。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を高い状態から低い状態に切り替える。
【0050】
ここでステップ3において推定部10は、積算値104が積算しきい値Th1以下であった場合、対象者9が眩しいと感じていないと推定し(Step3:No)、ステップ1に処理を進める。
【0051】
(第1の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る制御装置1は、対象者9の感覚に合うように眩しさを緩和することができる。具体的には、制御装置1は、対象者9の対象者情報S1に基づいて目の周囲の輝度値を積算して得られた積算値104に基づいて対象者9が眩しいと感じているか否かを推定するので、この構成を採用しない場合と比べて、眩しいと感じているとの推定が対象者9の感覚に合い易い。よって制御装置1は、対象者9の感覚に合うように眩しさを緩和することができる。
【0052】
制御装置1は、対象者9の目の周囲に設定した積算領域32の積算値104に基づいて眩しさを感じているか否かを推定するので、顔の全体の輝度値に基づいて推定する場合と比べて、処理負荷が軽くなり、高速で推定することができる。また制御装置1は、積算領域32の輝度値のうち、境界値102から明るい方の積算範囲103に限定して積算値104を算出するので、得られたすべての輝度値を用いて積算値を算出する場合と比べて、より処理負荷が軽くなる。さらに制御装置1は、処理負荷が軽いことから高度な処理能力を有するマイクロコンピュータを必要としないので、低コストで製造することができる。
【0053】
制御装置1は、眩しいと感じていると推定された場合に電子サンバイザ2の透過率を制御前よりも低くするので、手動で透過率を低くする場合と比べて、操作の手間がなく、利便性が向上する。
【0054】
制御装置1は、車両8に搭載されているドライブレコーダなどのカメラ装置3を流用することで、専用にカメラ装置を配置する場合と比べて、低コストで製造することができる。
【0055】
[第2の実施の形態]
第2の実施の形態は、段階的に透過率を切り替える点で他の実施の形態と異なっている。
【0056】
図6(a)は、第2の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図6(b)は、積算値と複数の積算しきい値との関係の一例を示す図である。なお以下に記載する実施の形態において、第1の実施の形態と同じ機能及び構成を有する部分は、第1の実施の形態と同じ符号を付し、その説明は省略するものとする。
【0057】
推定部10は、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、複数の積算しきい値を有し、複数の積算しきい値と積算値104とを比較し、対象者9の眩しさを段階的に推定する。制御部12は、推定部10の段階的な推定に基づいて電子機器としての電子サンバイザ2の複数の透過率を切り替える。
【0058】
複数の積算しきい値は、一例として、
図6(a)及び
図6(b)に示すように、第1の積算しきい値Th
1a、第2の積算しきい値Th
1b及び第3の積算しきい値Th
1cであるがこれに限定されない。なお推定部10は、例えば、積算しきい値を関数によって定義し、連続的に透過率を切り替えられるように構成されても良く、以下において段階的に透過率を切り替える場合についても同様である。
【0059】
複数の透過率は、一例として、
図6(b)に示すように、透過率A、透過率B、透過率C及び透過率Dである。透過率は、透過率A、透過率B、透過率C及び透過率Dの順で低くなっている。
【0060】
透過率Aは、一例として、100%である。この透過率Aは、対象者9が眩しいと感じていないと推定される際の透過率である。透過率Aは、積算値104が第1の積算しきい値Th1a以下である場合の透過率である。
【0061】
透過率Bは、一例として、80%であるがこれに限定されない。この透過率Bは、一例として、対象者9が少し眩しいと感じていると推定される場合の透過率である。透過率Bは、積算値104が第1の積算しきい値Th1aより大きく、第2の積算しきい値Th1b以下である場合の透過率である。
【0062】
透過率Cは、一例として、50%であるがこれに限定されない。この透過率Cは、一例として、対象者9が眩しいと感じていると推定される場合の透過率である。透過率Cは、積算値104が第2の積算しきい値Th1bより大きく、第3の積算しきい値Th1c以下である場合の透過率である。
【0063】
透過率Dは、一例として、30%であるがこれに限定されない。この透過率Dは、一例として、対象者9がかなり眩しいと感じていると推定される場合の透過率である。透過率Dは、積算値104が第3の積算しきい値Th1cより大きい場合の透過率である。
【0064】
推定部10は、積算値104と第1の積算しきい値Th1a~第3の積算しきい値Th1cとを比較し、眩しさを段階的に推定し、推定した結果を推定情報S2として制御部12に出力する。
【0065】
制御部12は、取得した推定情報S2に基づいて眩しさの段階に応じて電子サンバイザ2を制御する制御信号S3を生成し、電子サンバイザ2に出力する。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率A~透過率Dに透過率を切り替える。
【0066】
以下に本実施の形態に係る制御装置1の動作の一例について
図7のフローチャートに従って説明する。
【0067】
(動作)
本実施の形態の制御装置1は、取得した対象者9の目に関する対象者情報S1に基づいて対象者9が眩しさを感じているかを段階的に推定し、対象者9が眩しさを感じていると推定される場合、対象者9に到達する光の透過率を眩しさの段階に応じて切り替え可能な電子機器としての電子サンバイザ2を制御し、制御前よりも透過率を段階的に低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御方法に基づいて制御を行う。
【0068】
具体的には、制御装置1の推定部10は、カメラ装置3から対象者情報S1を取得する(Step10)。そして推定部10は、対象者情報S1に基づいて積算領域32を設定し、積算値104を算出する(Step11)。
【0069】
次に推定部10は、積算値104と第1の積算しきい値Th1a~第3の積算しきい値Th1cとを比較する。推定部10は、積算値104が第1の積算しきい値Th1aより大きい場合、対象者9が眩しいと感じていると推定し(Step12:Yes)、さらに眩しさの段階を推定する。推定部10は、推定した眩しさの段階に応じた推定情報S2を生成し、制御部12に出力する。
【0070】
次に制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて眩しさの段階に応じて電子サンバイザ2の透過率を、透過率Aから透過率B~透過率Dのいずれかに切り替える制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する(Step13)。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を切り替える。
【0071】
ここでステップ12において推定部10は、積算値104が積算しきい値Th1a以下であった場合、対象者9が眩しいと感じていないと推定し(Step12:No)、ステップ10に処理を進める。
【0072】
(第2の実施の形態の効果)
本実施の形態の制御装置1は、推定した眩しさに応じて段階的に電子サンバイザ2の透過率を制御することができるので、この構成を採用しない場合と比べて、前方の視界93を不必要に遮ることを抑制することができる。
【0073】
[第3の実施の形態]
第3の実施の形態は、周囲の明るさに基づいて透過率を制御前の透過率に戻す点で他の実施の形態と異なっている。
【0074】
図8(a)は、第3の実施の形態に係る制御装置が配置された車両の一例を示す図であり、
図8(b)は、制御装置に関するブロック図の一例である。
図9(a)は、第3の実施の形態に係る制御装置が算出する積算値の時間変化の一例を示すグラフであり、
図9(b)は、光度計が測定した照度値の時間変化の一例を示すグラフである。
図9(a)は、横軸が時間tであり、縦軸が積算値104である。
図9(b)は、横軸が時間tであり、縦軸が照度値である。
図9(a)と
図9(b)は、同じ期間の積算値104と照度値を示している。また
図9(a)は、光の一部を遮光しない場合の輝度値をグラフに続く点線として示している。
【0075】
推定部10は、
図8(a)及び
図8(b)に示すように、さらに対象者9の周囲の明るさを示す値に関する周囲情報S
5を取得し、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th
2を設定し、積算値104が積算しきい値Th
1以下であっても周囲の明るさを示す値が周囲しきい値Th
2より大きい場合、透過率を制御前に戻すと対象者9が眩しいと感じると推定し、積算値104が積算しきい値Th
1以下であり、周囲の明るさを示す値が周囲しきい値Th
2以下となった場合、透過率を制御前に戻しても対象者が眩しく感じないと推定する。
【0076】
制御部12は、透過率を制御前に戻しても対象者9が眩しく感じないと推定された場合、電子機器としての電子サンバイザ2を制御して透過率を制御前に戻す。
【0077】
周囲情報S
5は、対象者9の周囲の輝度値や照度値の情報を含む情報である。この周囲情報S
5は、一例として、光度計4によって測定される照度値の情報を含んで生成される。光度計4は、
図8(a)に示すように、ルームミラ86に配置され、フロントガラス81を介して主に前方の照度値を測定する。なお光度計4は、インストルメントパネル84やコラムカバ85などに配置されても良い。また光度計4は、専用に配置されても良いし、車両8に搭載されているものを流用するようにしても良い。
【0078】
光度計4は、周囲の照度値を測定して周囲情報S5を生成し、車両LAN88を介して制御装置1に出力する。なお光度計4は、制御装置1に直接電気的に接続されても良い。周囲の輝度値とは、例えば、主に車両8の前方の車外801から車内800に入射する光に起因する輝度値である。
【0079】
積算値104は、周囲の明るさに応じて変化する。つまり光度計4の測定した照度値が、例えば、
図9(b)に示すように変化する場合、推定部10が算出する積算値104は、照度値に応じて変化する。
【0080】
推定部10は、周囲の明るさに関する周囲しきい値Th2を初期値として有している。推定部10は、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th2を更新する。
【0081】
なお変形例として推定部10は、周囲しきい値Th2を初期値として有していない場合、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th2を新たに設定する。
【0082】
推定部10は、一例として、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、時間t
1において積算値104が積算しきい値Th
1より大きくなった場合、対象者9が眩しいと感じていると推定する。その結果、電子サンバイザ2は、透過率を低い状態に切り替えるので、積算領域32の輝度値が下がり、積算値104が積算しきい値Th
1より低い状態でほぼ安定する。
【0083】
推定部10は、対象者9が眩しいと感じていると推定される時間t1における周囲の明るさ、つまり照度値を基準にし、この基準となる基準照度値Lよりも照度値が低い場合、電子サンバイザ2の透過率を制御前の透過率に戻すことができると推定するように構成されている。
【0084】
具体的には、推定部10は、時間t
1における基準照度値Lよりも予め定められた値△L低い照度値を周囲しきい値Th
2として更新する。推定部10は、一例として、
図9(a)及び
図9(b)に示すように、時間t
2において測定された照度値が周囲しきい値Th
2以下となった場合、電子サンバイザ2の透過率を高くしても対象者9が眩しく感じないと推定し、推定した結果を示す推定情報S
2を制御部12に出力する。
【0085】
制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を制御前の透過率に戻す制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を制御後の低い状態から制御前の高い状態に切り替える。
【0086】
以下に本実施の形態の制御装置1の動作の一例について
図10のフローチャートに従って説明する。
図10は、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th
2の初期値を更新する場合の動作の一例である。
【0087】
(動作)
本実施の形態の制御装置1は、周囲の明るさを示す値に関する周囲情報S5を取得し、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th2を初期値から更新し、積算値104が積算しきい値Th1以下であっても周囲の明るさを示す値が周囲しきい値Th2より大きい場合、透過率を制御前に戻すと対象者9が眩しいと感じると推定し、積算値104が積算しきい値Th1以下であり、周囲の明るさを示す値が周囲しきい値Th2以下となった場合、透過率を制御前に戻しても対象者が眩しく感じないと推定する、制御方法に基づいて制御を行う。
【0088】
具体的には、制御装置1の推定部10は、カメラ装置3から対象者情報S1を取得する(Step20)。そして推定部10は、対象者情報S1に基づいて積算領域32を設定し、積算値104を算出する(Step21)。
【0089】
次に推定部10は、積算値104と積算しきい値Th1とを比較する。推定部10は、積算値104が積算しきい値Th1より大きい場合、対象者9が眩しいと感じていると推定する(Step22:Yes)。推定部10は、制御部12に対象者9が眩しいと感じているとする推定情報S2を出力する。
【0090】
次に制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を高い状態から低い状態とする制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する(Step23)。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を高い状態から低い状態に切り替える。
【0091】
次に推定部10は、眩しいと推定された際の照度値に基づいて当該照度値よりも低い値となるように周囲しきい値Th2を初期値から更新する(Step24)。推定部10は、周囲しきい値Th2を更新してステップ20に処理を進める。なおステップ23とステップ24は、順序が逆であっても良い。
【0092】
ここでステップ22において推定部10は、積算値104が積算しきい値Th1以下であり、対象者9が眩しいと感じていないと推定した場合(Step22:No)、測定された照度値と周囲しきい値Th2とを比較する。
【0093】
推定部10は、照度値が周囲しきい値Th2以下である場合(Step25:Yes)、透過率が高くても対象者9が眩しく感じないと推定し、推定結果を含む推定情報S2を制御部12に出力する。
【0094】
制御部12は、取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を低くなるように制御している場合、電子サンバイザ2の透過率を制御前に戻すように制御し(Step26)、ステップ20に処理を進める。なお制御部12は、電子サンバイザ2の透過率の制御前である場合、透過率を維持する。
【0095】
またステップ25において推定部10は、照度値が周囲しきい値Th2より大きい場合(Step25:No)、ステップ20に処理を進める。
【0096】
(変形例に関する動作)
続いて変形例に係る制御装置1の動作の一例を
図11のフローチャートに従って説明する。この
図11は、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th
2を設定する場合の動作の一例である。
【0097】
制御装置1は、周囲の明るさを示す値に関する周囲情報S5を取得し、対象者9が眩しいと感じると推定した際の周囲の明るさを示す値よりも低い値となるように周囲しきい値Th2を新たに設定し、積算値104が積算しきい値Th1以下であっても周囲の明るさを示す値が周囲しきい値Th2より大きい場合、透過率を制御前に戻すと対象者9が眩しいと感じると推定し、積算値104が積算しきい値Th1以下であり、周囲の明るさを示す値が周囲しきい値Th2以下となった場合、透過率を制御前に戻しても対象者が眩しく感じないと推定する、制御方法に基づいて制御を行う。
【0098】
ステップ30~ステップ33は、上述のステップ20~ステップ23と同様である。
【0099】
次に推定部10は、眩しいと推定された際の照度値に基づいて当該照度値よりも低い値となるように周囲しきい値Th2を新たに設定する(Step34)。なおステップ33とステップ34は、順序が逆であっても良い。
【0100】
次に推定部10は、取得した照度値と周囲しきい値Th2とを比較する。推定部10は、ステップ35の「Yes」が成立する、つまり照度値が周囲しきい値Th2以下となった場合(Step35:Yes)、透過率を制御前の透過率に戻しても対象者9が眩しく感じないと推定し、推定結果を含む推定情報S2を制御部12に出力する。
【0101】
制御部12は、取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を制御前に戻すように制御し(Step36)、ステップ30に処理を進める。
【0102】
(第3の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る制御装置1は、周囲の照度値に応じて電子サンバイザ2の透過率を制御前の透過率に戻すことができるので、手動で透過率を戻す場合に比べて、操作の手間がなく、利便性が高い。
【0103】
制御装置1は、対象者9が運転中に操作しなくても眩しさに応じて透過率が切り替わるので、手動で透過率を切り替える場合と比べて、眩しさや透過率を切り替える操作による煩わしさが抑制される。
【0104】
[第4の実施の形態]
第4の実施の形態は、目の開き度合い、瞳孔径、及び瞬きの回数の少なくとも1つの眩しさの兆候に応じて透過率を切り替える点で他の実施の形態と異なっている。
【0105】
図12(a)は、第4の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図12(b)は、眩しさの兆候の1つである目の開眼度の一例について説明するための図であり、
図12(c)は、眩しさの兆候の1つである瞳孔径の一例について説明するための図である。
図13(a)は、第4の実施の形態に係る制御装置が監視する目の開眼度の時間変化の一例を示すグラフであり、
図13(b)は、目の瞳孔径の時間変化の一例を示すグラフであり、
図13(c)は、瞬きの回数の時間変化の一例を示すグラフである。
図13(a)は、横軸が時間tであり、縦軸が目の開き具合を示す開眼度である。
図13(b)は、横軸が時間tであり、縦軸が瞳孔径である。
図13(c)は、横軸が時間tであり、縦軸が瞬きの回数である。
図13(a)~
図13(c)の横軸の時間は、同じ時間ではなく異なる時間である。
図13(a)などのグラフに示す黒丸は、測定された時間と値を示している。
【0106】
推定部10は、対象者情報S1に基づいて対象者9の目の開き度合い、瞳孔径、及び瞬きの回数に関する少なくとも1つの眩しさの兆候を監視し、少なくとも1つの眩しさの兆候に対して課された予め定められた条件が満たされた場合、対象者が眩しいと推定する。
【0107】
推定部10は、
図12(a)に示すように、兆候しきい値Th
3を有している。兆候しきい値Th
3は、対象者が眩しいと推定するために開眼度を用いる場合、開眼度に関するしきい値として使用される。また兆候しきい値Th
3は、対象者が眩しいと推定するために瞳孔径を用いる場合、瞳孔径に関するしきい値として使用される。さらに兆候しきい値Th
3は、対象者が眩しいと推定するために瞬きの回数を用いる場合、瞬きの回数に関するしきい値として使用される。またさらに兆候しきい値Th
3は、対象者が眩しいと推定するために複数の兆候を用いる場合、それぞれの兆候に適した複数のしきい値を含んだものとされる。
【0108】
以下では、車両8が右ハンドルである場合に車外801からの光の影響を受けやすい右目91を例にとって開眼度、瞳孔径及び瞬きの回数について説明する。なお推定部10は、右目91及び左目92の一方の兆候に基づいて眩しいと感じているか否かを推定しても良いし、両目の兆候の平均をとって推定しても良いし、両目の兆候の積算量から推定しても良いし、右目91及び左目92のうち大きい兆候が測定された目に基づいて推定しても良い。
【0109】
(開眼度について)
対象者9が眩しくない状態から眩しい状態へと移行する際、
図12(b)に示すように、距離Hが大きい状態から小さい状態に移行する。
【0110】
推定部10は、取得した対象者情報S
1に基づいて距離Hを算出し、開眼度に関して定められた兆候しきい値Th
3と比較する。推定部10は、
図13(a)に示すように、距離Hが兆候しきい値Th
3より小さくなる時間t
3において対象者9が眩しいと感じていると推定する。この距離Hは、
図12(b)に示すように、上目蓋91aから下目蓋91bまでの距離である。予め定められた条件は、距離Hが兆候しきい値Th
3より小さくなることで満たされる。
【0111】
推定部10は、例えば、予め定められた期間の平均の開眼度、又は予め定められた時間継続された開眼度と兆候しきい値Th3と比較する。なお兆候しきい値Th3と比較される開眼度は、他の方法で求められても良い。
【0112】
(瞳孔径について)
対象者9が眩しくない状態から眩しい状態へと移行する場合、
図12(c)に点線及び実線で示すように、瞳孔径Rが大きい状態から小さい状態に移行する。
【0113】
推定部10は、取得した対象者情報S
1に基づいて瞳孔径Rを算出し、瞳孔径Rに関して定められた兆候しきい値Th
3と比較する。推定部10は、
図13(b)に示すように、瞳孔径Rが兆候しきい値Th
3より小さくなる時間t
4において対象者9が眩しいと感じていると推定する。予め定められた条件は、瞳孔径Rが兆候しきい値Th
3より小さくなることで満たされる。
【0114】
(瞬きの回数について)
対象者9が眩しくない状態から眩しい状態へと移行する場合、瞬きの回数が少ない状態から多い状態に移行する。
【0115】
推定部10は、取得した対象者情報S
1に基づいて瞬きの回数を算出し、瞬きの回数に関して定められた兆候しきい値Th
3と比較する。この瞬きの回数は、一例として、予め定められた期間の瞬きの回数である。推定部10は、
図13(c)に示すように、瞬きの回数が兆候しきい値Th
3より大きくなる時間t
5において対象者9が眩しいと感じていると推定する。予め定められた条件は、瞬きの回数が兆候しきい値Th
3より大きくなることで満たされる。
【0116】
以下では、本実施の形態の制御装置1の動作に一例について
図14のフローチャートに従って説明する。ここでは、推定部10は、兆候として開眼度を用いて推定するものとする。
【0117】
(動作)
本実施の形態の制御装置1は、取得した対象者9の目に関する対象者情報S1に基づいて対象者9の目の開き度合い、瞳孔径、及び瞬きの回数に関する少なくとも1つの眩しさの兆候を監視し、少なくとも1つの眩しさの兆候に対して課された予め定められた条件が満たされた場合、対象者9が眩しいと推定し、推定に基づいて対象者9に到達する光の透過率を切り替え可能な電子機器としての電子サンバイザ2を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御方法に基づいて制御を行う。
【0118】
具体的には、制御装置1の推定部10は、カメラ装置3から対象者情報S1を取得する(Step40)。そして推定部10は、対象者情報S1に基づいて開眼度を算出する(Step41)。
【0119】
次に推定部10は、算出した開眼度と兆候しきい値Th3とを比較する。推定部10は、開眼度が兆候しきい値Th3より小さい場合、対象者9が眩しいと感じていると推定する(Step42:Yes)。推定部10は、制御部12に対象者9が眩しいと感じているとする推定情報S2を出力する。
【0120】
次に制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を高い状態から低い状態とする制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する(Step43)。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を高い状態から低い状態に切り替える。
【0121】
ここでステップ42において推定部10は、開眼度が兆候しきい値Th3以上であった場合、対象者9が眩しいと感じていないと推定し(Step42:No)、ステップ40に処理を進める。
【0122】
推定部10は、複数の兆候を監視して対象者9が眩しいと感じていると推定する場合、監視するすべての兆候が条件を満たす、又は複数の兆候の少なくとも1つが条件を満たすことで対象者9が眩しく感じていると推定する。
【0123】
(第4の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る制御装置1は、対象者9の反応を示す、目の開眼度、瞳孔径R、及び瞬きの回数の少なくとも1つの眩しさの兆候を測定するので、この構成を採用しない場合と比べて、より感覚に合う推定を行うことができる。
【0124】
[第5の実施の形態]
第5の実施の形態は、目の開き度合い、瞳孔径、及び瞬きの回数の少なくとも1つの眩しさの兆候に応じて段階的に透過率を切り替える点で他の実施の形態と異なっている。
【0125】
図15(a)は、第5の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図15(b)は、開眼度の時間変化の一例を示すグラフである。
図15(b)は、横軸が時間tであり、縦軸が開眼度である。
【0126】
推定部10は、
図15(a)及び
図15(b)に示すように、少なくとも1つの眩しさの兆候に基づいて対象者9の眩しさを段階的に推定する。制御部12は、推定部10の段階的な推定に基づいて電子機器としての電子サンバイザ2の複数の透過率を切り替える。この少なくとも1つの兆候は、目の開き度合い、瞳孔径、及び瞬きの回数である。
【0127】
本実施の形態では、少なくとも1つの眩しさの兆候が開眼度である場合について説明するが他の兆候についても同様である。
【0128】
推定部10は、
図15(a)に示すように、対象者9の眩しさを段階的に推定するため、複数の兆候しきい値を有している。本実施の形態の兆候しきい値は、一例として、第1の兆候しきい値Th
3a及び第2の兆候しきい値Th
3bであるがこれに限定されない。
【0129】
複数の透過率は、一例として、
図15(b)に示すように、透過率A、透過率B及び透過率Cであるがこれに限定されない。透過率は、透過率A、透過率B及び透過率Cの順で低くなっている。
【0130】
透過率Aは、一例として、100%である。この透過率Aは、対象者9が眩しいと感じていないと推定される場合の透過率である。透過率Cは、開眼度が第1の兆候しきい値Th3a以上である場合の透過率である。
【0131】
透過率Bは、一例として、80%であるがこれに限定されない。この透過率Bは、対象者9が眩しいと感じていると推定される場合の透過率である。透過率Bは、開眼度が第1の兆候しきい値Th3aより小さく、第2の兆候しきい値Th3b以上である場合の透過率である。
【0132】
透過率Cは、一例として、50%であるがこれに限定されない。この透過率Cは、対象者9がより眩しいと感じていると推定される場合の透過率である。透過率Cは、開眼度が第2の兆候しきい値Th3bより小さい場合の透過率である。
【0133】
推定部10は、開眼度と第1の兆候しきい値Th3a及び第2の兆候しきい値Th3bとを比較し、眩しさを段階的に推定し、推定した結果を推定情報S2として制御部12に出力する。
【0134】
制御部12は、取得した推定情報S2に基づいて眩しさの段階に応じて電子サンバイザ2を制御する制御信号S3を生成し、電子サンバイザ2に出力する。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率Aから透過率B及び透過率Cに透過率を切り替える。
【0135】
以下に本実施の形態に係る制御装置1の動作の一例について
図16のフローチャートに従って説明する。ここでは、推定部10は、開眼度に基づいて段階的に対象者9が眩しさを感じているのかを推定するが他の兆候でも同様である。
【0136】
(動作)
本実施の形態の制御装置1は、取得した対象者9の目に関する対象者情報S1に基づく少なくとも1つの兆候に応じて対象者9が眩しさを感じているかを段階的に推定し、対象者9が眩しさを感じていると推定される場合、対象者に到達する光の透過率を眩しさの段階に応じて切り替え可能な電子機器を制御し、制御前よりも透過率を段階的に低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御方法に基づいて制御を行う。
【0137】
具体的には、制御装置1の推定部10は、カメラ装置3から対象者情報S1を取得する(Step50)。そして推定部10は、対象者情報S1に基づいて開眼度を算出する(Step51)。
【0138】
次に推定部10は、開眼度と第1の兆候しきい値Th3a及び第2の兆候しきい値Th3bとを比較する。推定部10は、開眼度が第1の兆候しきい値Th3aより小さい場合、対象者9が眩しいと感じていると推定し(Step52:Yes)、さらに眩しさの段階を推定する。推定部10は、推定した眩しさの段階に応じた推定情報S2を生成し、制御部12に出力する。
【0139】
次に制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて眩しさの段階に応じて電子サンバイザ2の透過率を、透過率Aから透過率B及び透過率Cのいずれかに切り替える制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する(Step53)。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を切り替える。
【0140】
ここでステップ52において推定部10は、開眼度が第1の兆候しきい値Th3a以上であった場合、対象者9が眩しいと感じていないと推定し(Step52:No)、ステップ50に処理を進める。
【0141】
(第5の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る制御装置1は、対象者9の反応を示す、目の開眼度、瞳孔径R、及び瞬きの回数の少なくとも1つの眩しさの兆候に基づいて眩しさを段階的に推定し、電子サンバイザ2の透過率を段階的に切り替えることができるので、この構成を採用しない場合と比べて、より適切に緩和することができる。
【0142】
[第6の実施の形態]
第6の実施の形態は、周囲の明るさに応じて兆候しきい値を変更する点で他の実施の形態と異なっている。
【0143】
図17(a)は、第6の実施の形態に係る制御装置のブロック図の一例であり、
図17(b)は、開眼度の時間変化の一例を示すグラフである。
図18(a)は、第6の実施の形態に係る光度計が測定する周囲の照度値の時間変化の一例を示すグラフであり、
図18(b)は、短い間隔で照度値が高くなったり低くなったりする場合の照度値の時間変化の一例を示すグラフである。
図17(b)は、横軸が時間tであり、縦軸が開眼度である。
図18(a)及び
図18(b)は、横軸が時間tであり、縦軸が照度値である。なお
図17(b)、
図18(a)及び
図18(b)の横軸は、一致していない。
【0144】
推定部10は、さらに対象者9の周囲の明るさを示す値に関する周囲情報S5を取得し、周囲情報S5に基づく周囲の明るさを示す値、又は周囲の明るさを示す値の時間変化に基づいて予め定められた条件に使用するしきい値を変更して対象者9が眩しさを感じているか推定する。
【0145】
本実施の形態の周囲の明るさを示す値は、
図17(a)に示すように、光度計4によって測定される照度値であるがこれに限定されず輝度値であっても良い。
【0146】
予め定められた条件は、開眼度を用いて推定する場合、距離Hが兆候しきい値Th3より小さくなることで満たされる。予め定められた条件は、瞳孔径Rを用いて推定する場合、瞳孔径Rが兆候しきい値Th3より小さくなることで満たされる。予め定められた条件は、瞬きの回数を用いて推定する場合、瞬きの回数が兆候しきい値Th3より大きくなることで満たされる。以下では、一例として、推定部10が開眼度を用いて対象者9が眩しいと感じていると推定する場合について説明する。
【0147】
推定部10は、
図17(a)に示すように、開眼度に関する兆候しきい値Th
3と、照度値に関する照度しきい値Th
4と、後述する時間しきい値Th
5と、を有している。推定部10は、一例として、開眼度が兆候しきい値Th
3より小さくなり、対象者9が眩しいと感じていると推定された場合、光度計4より取得した周囲情報S
5に基づいて照度値を監視する。
【0148】
照度しきい値Th4は、対象者9が眩しいと感じていると推定される際の周囲の照度値を参考にして実験やシミュレーションなどから予め定められても良いし、予め定められた条件が満たされた際の照度値に基づいて設定されても良い。本実施の形態の照度しきい値Th4は、一例として、予め定められているものとする。
【0149】
推定部10は、
図17(b)に示すように、時間t
6において開眼度が兆候しきい値Th
3より小さくなった場合、対象者9が眩しく感じていると推定する。この結果、制御部12は、電子サンバイザ2を制御して透過率を高い状態から低い状態へと切り替える。この透過率の切り替えの後に算出される開眼度は、一例として、
図17(b)に示すように、眩しさが抑制されることにより、小さい状態から大きい状態へと変化する。
【0150】
推定部10は、兆候しきい値Th3が変更されない場合、開眼度が大きい状態になると、周囲の明るさが変わっていないにも関わらず、眩しくない状態になったと誤推定する可能性がある。
【0151】
そこで本実施の形態の推定部10は、
図17(b)及び
図18(a)に示すように、対象者9が眩しいと感じていると推定した後、周囲の照度値が照度しきい値Th
4よりも大きい場合、兆候しきい値Th
3を変更して眩しさを感じていると推定し難くする。そこで推定部10は、一例として、
図17(b)に示すように、時間t
6から兆候しきい値Th
3を予め定められた△X分高くして推定するように構成されている。なお推定部10は、
図18(a)に示すように、周囲の照度値が照度しきい値Th
4以下となった場合、照度しきい値Th
4以下となった時間t
7において兆候しきい値Th
3を元の兆候しきい値Th
3に戻すように構成されている。
【0152】
推定部10は、一例として、
図17(b)に示すように、変更前の兆候しきい値Th
3では、時間t
6以降に開眼度が高くなって眩しくないと推定する可能性があるが、変更後の兆候しきい値Th
3+△Xでは、時間t
6以降に開眼度が高くなっても眩しいと推定することが可能となる。
【0153】
また車両8がトンネル、密集する建物の間、及び森や林の中などの短時間で周囲の明るさが変化する道路を走行する場合、一例として、
図18(b)に示すように、周囲の明るさが一時的に照度しきい値Th
4より小さくなる可能性がある。
【0154】
そこで推定部10は、一例として、
図18(b)に示すように、照度値が照度しきい値Th
4より大きくなった時間t
8以降に照度しきい値Th
4以下となる時間t
9を記憶する。そして推定部10は、時間しきい値Th
5よりも短い時間で再度照度しきい値Th
4以下となる場合、つまり時間t
9から照度しきい値Th
4以下となる時間t
10までの経過時間が時間しきい値T
5よりも短い場合、周囲が明るく、電子サンバイザ2を透明な状態に戻すと対象者9が眩しさを感じると推定するように構成されている。
【0155】
以下では、本実施の形態の制御装置1の動作の一例について
図19のフローチャートに従って説明する。
図19は、推定部10が眩しさを感じると推定した後の動作の一例を示している。また推定部10は、開眼度に基づいて対象者9が眩しさを感じるかを推定し、周囲が明るい際には継続して眩しさを感じると推定するが他の兆候でも同様の方法で推定する。
【0156】
(動作)
本実施の形態の制御装置1は、さらに対象者9の周囲の明るさを示す値に関する周囲情報S5を取得し、周囲情報S5に基づく周囲の明るさを示す値、又は周囲の明るさを示す値の時間変化に基づいて予め定められた条件に使用する兆候しきい値Th3を変更して対象者が眩しさを感じているか推定する、制御方法に基づいて制御を行う。
【0157】
具体的には、制御装置1の推定部10は、開眼度が兆候しきい値Th3より大きくなった後、△X分大きく兆候しきい値Th3を設定する(Step60)。次に推定部10は、カメラ装置3から対象者情報S1を取得する(Step61)。そして推定部10は、対象者情報S1に基づいて開眼度を算出する(Step62)。
【0158】
次に推定部10は、開眼度と新たに設定した兆候しきい値Th3とを比較する。推定部10は、開眼度が兆候しきい値Th3以上である場合(Step63:Yes)、周囲の明るさを確認する。
【0159】
推定部10は、光度計4から取得した周囲情報S5に基づいて周囲の照度値と照度しきい値Th4とを比較する。推定部10は、周囲の照度値が照度しきい値Th4以下である場合、つまり周囲が明るくない場合(Step64:Yes)、眩しいと推定した後、照度値が照度しきい値Th4以下となった時間からの経過時間と時間しきい値Th5とを比較する。なお推定部10は、眩しいと感じると推定してから始めて照度値が照度しきい値Th4以下となった場合、時間を記憶すると共に継続して眩しいと感じると推定する。
【0160】
推定部10は、経過時間が時間しきい値Th5より短い場合(Step65:Yes)、周囲の照度値が高い状態、つまり周囲が明るく、透過率を高くすると対象者9が眩しく感じるとして、継続して眩しく感じると推定し(Step66)、ステップ61に処理を進める。
【0161】
ここでステップ63において推定部10は、開眼度が兆候しきい値Th3より小さい場合(Step63:No)、継続して眩しいと感じると推定し、ステップ61に処理を進める。
【0162】
またステップ64において推定部10は、周囲の照度値が照度しきい値Th4より大きい場合、つまり周囲が明るい場合(Step64:No)、ステップ61に処理を進める。
【0163】
さらにステップ65において推定部10は、経過時間が時間しきい値Th5以上である場合(Step65:No)、電子サンバイザ2の透過率を高くしても対象者9が眩しくないと感じると推定し(Step67)、推定結果を示す推定情報S2を制御部12に出力する。制御部12は、推定部10から取得した推定情報S2に基づいて電子サンバイザ2の透過率を低い状態から高い状態に制御する制御信号S3を電子サンバイザ2に出力する(Step68)。電子サンバイザ2は、制御信号S3に基づいて透過率を低い状態から高い状態に切り替える。
【0164】
(第6の実施の形態の効果)
本実施の形態に係る制御装置1は、周囲の明るさに応じて兆候しきい値Th3を変更するので、この構成を採用しない場合と比べて、周囲が明るいうちに透過率を制御前に戻すことで再度眩しさを感じさせるようなことを抑制することができる。
【0165】
制御装置1は、周囲の明るさの時間変化に基づいて透過率を高い状態に戻すか否かを推定するので、この構成を採用しない場合と比べて、短時間のうちに眩しさを感じている、感じていないが交互に推定されるようなことを抑制し、安定した制御を行うことができる。
【0166】
[第7の実施の形態]
第7の実施の形態は、制御装置を含む制御システムとして構成される点で他の実施の形態と異なっている。
【0167】
図20(a)及び
図20(b)は、第7の実施の形態に係る制御システムのブロック図の一例である。
【0168】
制御システム89は、一例として、
図20(a)に示すように、光の透過率を切り替えて、対象者9に到達する光を抑制する電子機器としての電子サンバイザ2と、対象者9の目に関する対象者情報S
1を取得する取得装置としてのカメラ装置3と、取得した対象者情報S
1に基づいて対象者9が眩しさを感じているか推定する推定部10、及び対象者9が眩しさを感じていると推定される場合、電子サンバイザ2を制御し、制御前よりも透過率を低くすることで対象者9の眩しさを緩和する制御部12を有する制御装置1と、を備えて概略構成されている。
【0169】
また他の実施の形態の制御システム89は、一例として、
図20(b)に示すように、さらに対象者9の周囲の明るさを示す値に関する周囲情報S
5を測定する光度計4を備えて概略構成されている。
【0170】
つまり制御システム89は、上述の実施の形態における制御装置1とカメラ装置3を備えた構成、及び制御装置1と、カメラ装置3と、光度計4と、を備えた構成を備えている。
【0171】
(第7の実施の形態の効果)
制御システム89は、車両8に搭載されているカメラ装置3、光度計4を用いて構成されるので、専用で備える場合と比べて、低コストで製造することができる。
【0172】
なお制御システム89は、電子サンバイザ2、カメラ装置3及び光度計4が制御装置1に直接接続されて構成されても良い。
【0173】
さらに他の実施の形態は、上述した制御方法を実行させるプログラムやこのプログラムを記録したコンピュータで読み取り可能な記録媒体として提供されても良い。
【0174】
以上述べた少なくとも1つの実施の形態の制御装置1、制御システム89及び制御方法によれば、対象者の感覚に合うように眩しさを緩和することが可能となる。
【0175】
以上、本発明のいくつかの実施の形態及び変形例を説明したが、これらの実施の形態及び変形例は、一例に過ぎず、特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。これら新規な実施の形態及び変形例は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更などを行うことができる。また、これら実施の形態及び変形例の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない。さらに、これら実施の形態及び変形例は、発明の範囲及び要旨に含まれると共に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0176】
1…制御装置、2…電子サンバイザ、3…カメラ装置、4…光度計、8…車両、9…対象者、10…推定部、12…制御部、32…積算領域、89…制御システム、102…境界値、103…積算範囲、104…積算値