(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173164
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】焼結原料の製造方法
(51)【国際特許分類】
C22B 1/16 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
C22B1/16 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091395
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001542
【氏名又は名称】弁理士法人銀座マロニエ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 智瑛
(72)【発明者】
【氏名】衣笠 友規
(72)【発明者】
【氏名】瀧川 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大屋 憲司
【テーマコード(参考)】
4K001
【Fターム(参考)】
4K001AA10
4K001BA02
4K001BA14
4K001CA33
4K001CA38
4K001GA10
(57)【要約】
【課題】湿・乾高炉ダストを用いて篩い能率が良く発塵しない方法での焼結原料の製造方法を提案すること。
【解決手段】高炉で発生する湿ダスト、乾ダストを用いて焼結原料を製造する際に、細粒の高炉湿ダストに対し粗粒の高炉乾ダストを体積比で0.15~0.50の割合で、ミキシングバケットを備えるバックホウショベルを用いてよく混合し、ハンドリング性を向上させると共に発塵を抑えて環境汚染を招くことのない方法で焼結原料の製造を行う。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉で発生するダストから焼結原料を製造するに当たり、細粒の高炉湿ダストに対し粗粒の高炉乾ダストを混合してハンドリング性を向上させたものを用いることを特徴とする焼結原料の製造方法。
【請求項2】
前記高炉湿ダストに対する高炉乾ダストの混合は、体積比で0.15~0.50の割合で混合し、混合ダストの水分量を14.5~20.5質量%に調整することを特徴とする請求項1に記載の焼結原料の製造方法。
【請求項3】
それぞれ別個に積み付けた高炉湿ダストと高炉乾ダストとの混合に当たり、ミキシングバケットを備えるバックホウショベルを用いると共に、そのミキシングバケットによるかき混ぜ後、バックホウショベルによる押し込みと作業を採用して混合した後、篩分けして用いることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結原料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製鉄ダストとくに高炉ダストを用いる焼結原料の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、製鉄所においては、高炉や転炉、焼結機や圧延工場等において、鉄等の金属の酸化物を含む製鉄ダストが多量に発生することが知られている。こうした製鉄ダストは、その多くが製鉄工程とくに焼結工場等においてリサイクル使用されるのが普通である。
こうした製鉄ダストのうち高炉ダストなどについては、乾ダストもしくは湿ダストとして回収されるのが普通である。一般に、高炉の炉頂から回収されるガスは、製鉄所内循環エネルギーとしてリサイクルするため、ガス清浄化ラインで除塵している。そうしたガス清浄化ラインでは、まず乾式サイクロンにて粗粒の乾ダストが回収され、その後、湿式回収装置で細粒の湿ダストを回収することとしている。そして、これらはそれぞれ個別にトラックやベルトコンベヤにて貯鉱ヤードに運ばれ、混合されることなく、別々に置かれた後、それぞれの利用先に搬出される。
【0003】
ただし、湿式回収装置で回収された前記湿ダストについては、フィルタープレス方式の脱水機にて脱水した場合、これを焼結原料としてリサイクル使用することができるが、水分が20~30質量%と高く、取扱いが難しい上、焼結操業での生産性を阻害するという問題点がある。
【0004】
その他、代表的な製鉄ダストの処理方法としては、特許文献1に開示されているような方法がある。この方法は、電気炉ダストに炭材とバインダーとを添加することによってブリケットとし、そのブリケットを回転炉床炉内で加熱還元する技術である。しかしながら、この方法は、製鉄ダストの処理方法としては、設備化に多額の資金が必要になるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述したように、高炉発生ダスト等の製鉄ダストの処理方法としては、とくに湿ダストについては、前述したブリケット化する方法などがよく知られている。しかしながら、この方法の場合、次のような問題点があった。それは、フィルタープレス方式の脱水機などで脱水したダストというのは、上述したように、微粒であることと含水率が比較的高いという特徴がある。そのため、前処理設備やベルト、ホッパーなどへの付着に伴うハンドリング性の悪さが問題となる。そして、この問題は前処理設備(篩)の能率、焼結機でのダスト使用量およびそれにともなう溶銑コストにも悪影響を及ぼすという課題があった。
【0007】
本発明の目的は、従来技術が抱えている上述した問題点を克服できる高炉湿・乾ダストを用いた焼結原料の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、従来技術が抱えている上述した問題点を克服するための方法として開発した方法であって、その要旨とするところは、高炉で発生するダストから焼結原料を製造するに当たり、細粒の高炉湿ダストに対し粗粒の高炉乾ダストを混合してハンドリング性を向上させたものを用いることを特徴とする焼結原料の製造方法である。
【0009】
なお、本発明についてはさらに、次のような方法を採用することがより好ましい実施形態になると考えられる。
(1)前記高炉湿ダストに対する高炉乾ダストの混合は、体積比で0.15~0.50の割合で混合し、混合ダストの水分量を14.5~20.5質量%に調整することを特徴とする請求項1に記載の焼結原料の製造方法。
(2)それぞれ別個に積み付けた高炉湿ダストと高炉乾ダストとの混合に当たり、ミキシングバケットを備えるバックホウショベルを用いると共に、そのミキシングバケットによるかき混ぜ後、バックホウショベルによる押し込み作業を採用して混合した後、篩分けして用いることを特徴とする請求項1または2に記載の焼結原料の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
前記要旨構成に係る本発明方法の採用により、高炉ダストの効率的なリサイクルが実現できる。しかも、本発明によれば高炉湿・乾ダスト混合のための特別の設備建設が不要となりコスト低減に有効である。さらに、本発明方法の採用により、高炉ダスト等の製鉄ダストを大量に有効活用できることから、粉鉄鉱石の購入等を抑えることができ製鉄コスト低減に寄与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に係る焼結原料の製造方法を説明する略線図である。
【
図2】乾ダストの混合割合と篩い能率との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明は、高炉や転炉等で発生する製鉄ダストとくに高炉ダストを焼結原料として使用するための望ましいその処理方法を提案するものである。例えば、下記表1に示すような製鉄ダストとしての高炉湿ダストに対して、所定量の高炉乾ダストを以下に説明するバックホウショベルを用いる方法により予め混合しその性状(ハンドリング性等)を改善した上で用いるのである。このような方法の採用により、その後に行う篩分け効率の向上やリサイクル率の向上を果すのである。
【0013】
【0014】
一般に、前記高炉ダストは、高炉ガス清浄時に乾式除塵器、湿式集塵器による処理時に発生する粉塵である。とくに、湿ダストは、微粉の含有量が多く、脱水処理をしたとしても水分が15~30質量%もあり、焼結原料として再利用することは少なく、廃棄されたりペレット原料として利用されるに止まる材料である。一方で、乾ダストは、M.Feを5質量%以上含有するため、ホッパー等に貯留すると、漏風によるくすぶりが想定されることから、鉱石ヤードにて外気に触れさせることが望ましいと考えられる。
【0015】
本発明は、正にその高炉湿ダスト、乾ダストの双方を有効に再利用すること、とくに焼結原料として有効に用いるための方法を提案するものである。
【0016】
そこで、発明者らはまず、貯鉱ヤード上に、湿ダストおよび乾ダストについてそれぞれ3tの山を交互に形成すると共に、合計で16セット、湿乾合わせて約100tの焼結原料の山を形成することとした。その後、
図1に示すように、まず当該ミキシングバケット(200×300mm)にて80~100回よく混合(a)して均質化させる。その後、バックホウショベルを使って押し込み処理(b)した後、積み付けおよび山を成形(c)することにより、焼結原料を得た。
【0017】
なお、乾ダストはM.Feを5質量%以上含有するため、ホッパー等の設備に貯蓄すると、漏風によるくすぶりが想定される。ヤードにて外気に触れさせて混合、篩い分けすることにより酸化させることが、防災の観点でも望ましい。この点、かつて乾ダストを混ぜていない時期は、能率は上がらないものの重機を多く導入し、その発生量とバランスさせるように運用していた(実際はそれでも少しずつ在庫は積みあがっていた)が、乾ダストを混ぜることにより、能率が向上し、重機を多く導入しなくて良い作業になった。
【0018】
なお、このようにして得られた焼結原料粉は、焼結工場への搬出に先立ち篩分け処理が施される。篩い機の大きさは全長1100mm、篩い目20mm×20mmのものを使用する。
【0019】
前記湿ダストに対する乾ダストの混合は、体積比で0.15~0.50の割合とすることが好ましい。その理由は、
図2に示すように、この割合とすることが、高い篩い能率(t/h)を示す一方、発塵領域が環境異常を示す割合を超えないからである。
【0020】
また、湿・乾ダストの混合の水分量は、14.5~20.5質量%となるように混合することが好ましい。その理由は、混合後ダストの水分量が14.5質量未満では、表面遊離水の割合が低いことから発塵し、発塵領域が環境異常を示す割合を超え、作業環境悪化および作業の稼働率低下を引き起こすためであり、一方で20.5質量%を超えると表面遊離水の割合が高いことから篩分け処理の能率が下がるためである。
【実施例0021】
この実施例は、前記表1に示す成分を有する高炉発生の乾ダスト、湿ダスト100tを、
図1に示す手順で、バックホウショベルに取付けた容量2tのミキシングバケットを用いて100回かき混ぜ、押し込んで焼結原料ベットを形成し、その後、篩分け作業を行った比較例1、2、7、8と、本発明適合例(実施例3-6)である。
【0022】
【0023】
表2に示す結果から、乾ダストの割合が少ない(No.1、2)場合は篩分け作業時に篩い目に多くの湿ダストが付着して作業能率が著しく低下すると共に、その付着清掃のために多くの時間を費やした。
【0024】
また、逆に比較7、8として示すように、乾ダストの量が0.50(-)を超えると
図2に示すように篩い能率は向上するものの発塵量が増えて環境上望ましくない結果となることが分かった。
【0025】
一方、本発明条件の範囲内で処理した実施例3~6は篩い能率もよく環境上も望ましい結果となることが分かった。