IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ニチユ三菱フォークリフト株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-フォークリフト 図1
  • 特開-フォークリフト 図2
  • 特開-フォークリフト 図3
  • 特開-フォークリフト 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173168
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】フォークリフト
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20241205BHJP
   B66F 9/24 20060101ALI20241205BHJP
   B60L 50/60 20190101ALI20241205BHJP
【FI】
B60L15/20 J
B66F9/24 W
B60L50/60
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091400
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000232807
【氏名又は名称】三菱ロジスネクスト株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000475
【氏名又は名称】弁理士法人みのり特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 真基
【テーマコード(参考)】
3F333
5H125
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AB13
3F333FA20
3F333FA27
5H125AA13
5H125AC12
5H125BA00
5H125CA04
5H125CA08
5H125CD02
5H125EE42
5H125EE44
5H125EE52
(57)【要約】
【課題】追加の専用スイッチを必要とせず、オペレータが意図した時に微速走行させることが可能なフォークリフトを提供する。
【解決手段】荷役装置20が設けられた車両本体10と、オペレータにより操作可能に構成されたアクセル15Aおよびブレーキ15Bと、走行速度を所定の目標速度に近づけるように制御を行う走行制御部と、を備えるフォークリフト1であって、走行制御部は、目標速度を所定の設定速度とアクセル15Aのアクセル開度との積により算出し、アクセル15Aのオン操作とブレーキ15Bのオン操作とが同時に行われた場合に、設定速度を制限して目標速度を低下させることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役装置が設けられた車両本体と、
前記車両本体を走行させる走行装置と、
オペレータにより操作可能に構成されたアクセルおよびブレーキと、
前記車両本体の走行速度を所定の目標速度に近づけるように前記走行装置の制御を行う走行制御部と、
を備えるフォークリフトであって、
前記走行制御部は、
前記目標速度を所定の設定速度と前記アクセルのアクセル開度との積により算出し、前記アクセルのオン操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に、前記設定速度を制限して前記目標速度を低下させる
ことを特徴とするフォークリフト。
【請求項2】
前記走行制御部は、
前記車両本体の走行モードを第1モード、第2モードまたは第3モードに設定し、
前記第1モードでは、前記目標速度を所定の第1設定速度と前記アクセル開度との積により算出し、
前記第2モードでは、前記目標速度を前記第1設定速度よりも小さい第2設定速度と前記アクセル開度との積により算出し、
前記第3モードでは、前記目標速度を前記第1設定速度よりも小さい第3設定速度と前記アクセル開度との積により算出し、
前記第1モードにおいて、前記アクセルのオン操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第2モードに切り替え、
前記第2モードにおいて、前記アクセルのオフ操作と前記ブレーキのオフ操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第3モードに切り替える
ことを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【請求項3】
前記走行制御部は、
前記第2設定速度と前記第3設定速度とを同じ値に設定する
ことを特徴とする請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項4】
前記走行制御部は、
前記第3モードにおいて、前記アクセルのオン操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第2モードに切り替え、
前記第3モードにおいて、前記アクセルのオフ操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第1モードに切り替える
ことを特徴とする請求項2に記載のフォークリフト。
【請求項5】
前記設定速度が制限されていることを、前記オペレータに視覚的および/または聴覚的に通知する通知部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載のフォークリフト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フォークリフトに関する。
【背景技術】
【0002】
フォークリフトにてパレット等の荷役作業を行う場合、フォークリフトのオペレータは、パレットの穴の中心にフォーク先端の位置を合わせ、アクセルを操作してフォークリフトを前進させ、パレットの穴の奥までフォークを挿入させる必要がある。
【0003】
パレットの穴の奥までフォークを挿入させる際、フォークリフトの走行速度が大きいと、勢い余ってフォークがパレットに衝突し、パレットが荷崩れしてしまうおそれがある。このため、オペレータは、細やかなアクセル操作でフォークリフトを微速走行させる必要がある。しかしながら、フォークリフト初心者やフォークリフトに乗り慣れていないオペレータの場合、細やかなアクセル操作を行うことは難しい。
【0004】
例えば、特許文献1には、アクセルとブレーキとを組み合わせた同時操作によりフォークリフトの走行速度を調節できるフォークリフトが記載されている。特許文献1に記載のフォークリフトでは、同じアクセル操作量であっても、ブレーキ操作が大きい時には走行速度は小さくなり、ブレーキ操作量が小さい時には走行速度は大きくなる。逆に同じブレーキ操作量であっても、アクセル操作量が大きい時には走行速度は大きくなり、アクセル操作量が小さい時には走行速度は小さくなる。しかしながら、上記のとおり、細やかなアクセル操作やブレーキ操作を行うことは、フォークリフト初心者やフォークリフトに乗り慣れていないオペレータにとっては難しい。
【0005】
また、走行モードを微速走行モードに切り替える専用スイッチを備えるフォークリフトも存在し、当該フォークリフトでは、オペレータは専用スイッチを手動で押下することでフォークリフトを微速走行させることが可能となる。しかしながら、当該フォークリフトでは、専用スイッチを増設しているためコストアップの問題が生じる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004-161471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであって、その課題とするところは、追加の専用スイッチを必要とせず、オペレータが意図した時に微速走行させることが可能なフォークリフトを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係るフォークリフトは、
荷役装置が設けられた車両本体と、
前記車両本体を走行させる走行装置と、
オペレータにより操作可能に構成されたアクセルおよびブレーキと、
前記車両本体の走行速度を所定の目標速度に近づけるように前記走行装置の制御を行う走行制御部と、
を備えるフォークリフトであって、
前記走行制御部は、
前記目標速度を所定の設定速度と前記アクセルのアクセル開度との積により算出し、前記アクセルのオン操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に、前記設定速度を制限して前記目標速度を低下させることを特徴とする。
【0009】
この構成では、アクセルのオン操作とブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に、設定速度を制限して目標速度を低下させるので、追加の専用スイッチを必要とせず、オペレータが意図した時に微速走行させることが可能となる。
【0010】
前記フォークリフトにおいて、
前記走行制御部は、
前記車両本体の走行モードを第1モード、第2モードまたは第3モードに設定し、
前記第1モードでは、前記目標速度を所定の第1設定速度と前記アクセル開度との積により算出し、
前記第2モードでは、前記目標速度を前記第1設定速度よりも小さい第2設定速度と前記アクセル開度との積により算出し、
前記第3モードでは、前記目標速度を前記第1設定速度よりも小さい第3設定速度と前記アクセル開度との積により算出し、
前記第1モードにおいて、前記アクセルのオン操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第2モードに切り替え、
前記第2モードにおいて、前記アクセルのオフ操作と前記ブレーキのオフ操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第3モードに切り替えるよう構成できる。
【0011】
前記フォークリフトにおいて、
前記走行制御部は、
前記第2設定速度と前記第3設定速度とを同じ値に設定するよう構成できる。
【0012】
前記フォークリフトにおいて、
前記走行制御部は、
前記第3モードにおいて、前記アクセルのオン操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第2モードに切り替え、
前記第3モードにおいて、前記アクセルのオフ操作と前記ブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に前記走行モードを前記第1モードに切り替えるよう構成できる。
【0013】
前記フォークリフトは、
前記設定速度が制限されていることを、前記オペレータに視覚的および/または聴覚的に通知する通知部をさらに備えるよう構成できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、追加の専用スイッチを必要とせず、オペレータが意図した時に微速走行させることが可能なフォークリフトを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る走行制御機構のブロック図である。
図3】本発明の一実施形態に係る走行用コントローラの走行モード切り替え処理のフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態に係るフォークリフトの目標速度と走行速度との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照して、本発明に係るフォークリフトの実施形態について説明する。
【0017】
図1に、本発明の一実施形態に係るフォークリフト1の側面図を示す。フォークリフト1は、カウンターバランスタイプのバッテリフォークリフトであり、車両本体10と、荷役装置20とを備える。
【0018】
車両本体10は、車体フレーム11と、左右一対の前輪12Aおよび後輪12Bと、運転席13と、ヘッドガード14と、アクセル15Aおよびブレーキ15Bと、ハンドル16と、荷役レバー(ティルトレバー17Aおよびリフトレバー17B)と、通知部18とを備える。
【0019】
車体フレーム11は、車両本体10の骨格を構成し、下部に前輪12Aおよび後輪12Bが設けられている。車体フレーム11の内部には、フォークリフト1の動力源であるバッテリBTおよび当該バッテリBTの電力で駆動する電動モータ(本実施形態では、走行用モータM1、操舵用モータM2、荷役用モータM3)が収容されている。フォークリフト1においては、前輪12Aは、走行用モータM1によって駆動される駆動輪であり、後輪12Bは、操舵用モータM2によって操向される操舵輪である。
【0020】
運転席13およびヘッドガード14は、車体フレーム11の上部に設けられている。運転席13は、オペレータの座席であり、ヘッドガード14は、運転席13のオペレータを落下した荷物等から保護するための防護枠である。
【0021】
アクセル15Aは、運転席13の前方下部に設けられている。アクセル15Aは、運転席13のオペレータが足で踏むことにより操作可能に構成されたアクセルペダルである。アクセル15Aは、オン状態(ペダルが踏まれた状態)の時に、ペダルの踏み込み量(アクセル開度)に応じて車両本体10の走行を加速させる一方、オン状態からオフ状態(ペダルが踏まれていない状態)に切り替わると、弱い回生ブレーキを生じさせて車両本体10を減速させる。なお、弱い回生ブレーキとは、後述するブレーキ15Bの回生ブレーキと比べて弱い回生ブレーキである。
【0022】
ブレーキ15Bは、運転席13の前方下部に設けられている。ブレーキ15Bは、運転席13のオペレータが足で踏むことにより操作可能に構成されたブレーキペダルである。ブレーキ15Bは、オン状態(ペダルが踏まれた状態)の時に、アクセル15Aの回生ブレーキよりも強い回生ブレーキを生じさせて車両本体10を減速させる一方、オフ状態(ペダルが踏まれていない状態、またはペダルの踏み込み量が所定値以下の状態であってペダルが踏まれていないに等しい状態)の時には、回生ブレーキを生じさせない。
【0023】
ハンドル16は、運転席13の前方に設けられている。ハンドル16は、操舵用モータM2を含む操舵制御機構を介して後輪12Bに接続される。オペレータは、ハンドル16を回転させることで、その回転方向に応じて後輪12Bの向きを変えることができる。ハンドル16の下部には、車両本体10の走行を前進と後進とに切り替えるための前後進レバーが設けられている。前後進レバーを前方向に傾けた状態でアクセル15Aをオン状態にすると、車両本体10は前進し、前後進レバーを後方向に傾けた状態でアクセル15Aをオン状態にすると、車両本体10は後進する。
【0024】
荷役レバー(ティルトレバー17Aおよびリフトレバー17B)は、運転席13の前方に設けられている。荷役レバーは、荷役用モータM3および図示しない油圧装置を含む荷役制御機構を介して荷役装置20に接続される。オペレータは、荷役レバーを操作することで、荷役装置20を動作させることができる。
【0025】
通知部18は、後述する設定速度が制限されていることを運転席13のオペレータに視覚的および/または聴覚的に通知するよう構成されたものである。本実施形態の通知部18は、表示手段(例えば、ディスプレイ)および音声手段(例えば、スピーカーまたはブザー)を備える。音声手段は、表示手段に内蔵されていてもよいし、表示手段に外付けされていてもよい。
【0026】
荷役装置20は、マスト21と、リフトブラケット22と、フォーク23と、バックレスト24と、ティルトシリンダ25と、リフトシリンダ26とを備える。
【0027】
マスト21は、車両本体10の前側に設けられ、フォーク23を昇降させるよう構成されたものである。本実施形態のマスト21は、アウターマストおよびインナーマストを備える。アウターマストは、上下方向に延びる左右一対のガイドレールと、ガイドレールの上端部同士を連結するクロスビームとを備える。インナーマストは、アウターマストのガイドレールの内側に設けられ、アウターマストのガイドレールに沿って昇降する。
【0028】
リフトブラケット22は、フォーク23を支持するとともに、マスト21に沿って昇降するよう構成されたものである。本実施形態のリフトブラケット22は、リフトチェーンの一端に取り付けられ、リフトチェーンに吊り下げられた状態でインナーマストに沿って昇降する。リフトチェーンの他端は、リフトシリンダ26の上部に設けられたチェーンホイールを介して、アウターマストの下部に取り付けられている。フォーク23は、左右一対のL字型のアームであり、リフトブラケット22の前面に設けられている。バックレスト24は、フォーク23に積載された荷物が後方に荷崩れするのを防ぐための枠体であり、リフトブラケット22の上部に設けられている。マスト21(インナーマスト)が昇降すると、リフトブラケット22、フォーク23およびバックレスト24も昇降する。
【0029】
ティルトシリンダ25は、マスト21を前後方向に傾動させるための油圧シリンダである。本実施形態では、ティルトレバー17Aを前方向に傾けるとティルトシリンダ25が伸長してマスト21が前傾し、ティルトレバー17Aを後方向に傾けるとティルトシリンダ25が収縮してマスト21が後傾する。ティルトレバー17Aを中立位置(前傾も後傾もさせない位置)に戻すと、マスト21の傾動は停止する。
【0030】
リフトシリンダ26は、マスト21を昇降させるための油圧シリンダである。本実施形態では、リフトレバー17Bを前方向に傾けるとリフトシリンダ26が収縮してインナーマストが下降し、リフトレバー17Bを後方向に傾けるとリフトシリンダ26が伸長してインナーマストが上昇する。リフトレバー17Bを中立位置(前傾も後傾もさせない位置)に戻すと、インナーマストの昇降は停止する。
【0031】
フォークリフト1は、図2に示すように、走行用モータM1を含む走行制御機構30を備える。走行制御機構30は、走行制御部(アクセルセンサ31、ブレーキセンサ32、車速センサ33、走行用コントローラ34)と、走行装置(走行用電力変換部35、走行用モータM1)とを備える。走行用電力変換部35および走行用モータM1は、左の前輪12A用と右の前輪12A用とで各2つ存在するが、同じ構成であるため図では各1つのみ示す。なお、フォークリフト1の機種によっては、走行用電力変換部35および走行用モータM1は各1つだけの場合もある。
【0032】
アクセルセンサ31は、アクセル15Aの操作量(アクセル開度)を検出し、当該操作量(アクセル開度)に関するアクセル操作信号を走行用コントローラ34に出力する。アクセル開度は、アクセル15Aがオフ状態の場合に0[%]となり、アクセル15Aがオン状態になると、アクセル15Aの踏み込み量に比例して増加し、踏み込み量が所定のしきい値を超えると100[%]となる。
【0033】
ブレーキセンサ32は、ブレーキ15Bの状態(オン状態/オフ状態)を検出し、当該状態に関するブレーキ操作信号を走行用コントローラ34に出力する。ブレーキセンサ32は、車両本体10に設けられたブレーキランプを点灯(ブレーキオフ時は消灯)させるために、元々備えられているものである。
【0034】
車速センサ33は、車両本体10の走行速度を検出し、当該走行速度に関する速度信号を走行用コントローラ34に出力する。車速センサ33は、速度信号として走行用モータM1の回転速度(または回転数)を出力し、走行用コントローラ34は、当該速度信号に基づいて車両本体10の走行速度を算出してもよい。
【0035】
走行用コントローラ34は、例えば、マイコンで構成される。走行用コントローラ34には、アクセル操作信号、ブレーキ操作信号および速度信号が所定の周期で入力され、さらに前後進レバーの状態に関する信号も所定の周期で入力される。走行用コントローラ34は、アクセル操作信号からアクセル開度を取得(または算出)し、ブレーキ操作信号からブレーキ15Bの状態(オン状態/オフ状態)を取得するとともに、アクセル開度およびブレーキ15Bの状態に基づいて車両本体10の走行モードを切り替える処理(走行モード切り替え処理)を実行する。これについては後述する。
【0036】
また、走行用コントローラ34は、走行用電力変換部35の制御として、車両本体10の走行速度を所定の目標速度に近づける速度制御を実行する。具体的には、走行用コントローラ34は、速度信号に基づいて車両本体10の走行速度を取得(または算出)するとともに、アクセル操作信号および/またはブレーキ操作信号に基づいて目標速度を算出する。目標速度は、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により算出される。設定速度は、後述する走行モード毎に走行用コントローラ34で設定される。走行用コントローラ34は、走行速度を所定の目標速度に近づける速度制御として、例えば、PI制御またはPID制御を行い、走行用電力変換部35に対する制御信号(例えば、走行用電力変換部35のスイッチング素子の駆動信号)を出力する。
【0037】
走行用電力変換部35は、一方側に走行用モータM1が接続され、他方側にバッテリBTが接続される。走行用電力変換部35は、例えば、走行用コントローラ34の制御下でオンオフする複数のスイッチング素子(例えば、トランジスタ)を備えるインバータで構成され、走行用コントローラ34の制御下で走行用モータM1を駆動(力行運転または回生運転)させる。
【0038】
走行用モータM1は、DCモータまたはACモータで構成され、前輪12Aに接続される。本実施形態では、走行用モータM1としてACモータを用いる。例えば、走行用モータM1として3相誘導モータを用いた場合、走行用電力変換部35として3相ブリッジインバータを用いることができる。
【0039】
走行用モータM1を力行運転させる場合、走行用電力変換部35は、バッテリBTの直流電力を交流電力に変換して走行用モータM1に供給する。これにより、走行用モータM1が駆動して前輪12Aが回転する。一方、走行用モータM1を回生運転させる場合、前輪12Aから走行用モータM1に回転トルクが伝達され、走行用モータM1で交流の回生電力が発生するので、走行用電力変換部35は、当該回生電力を直流電力に変換してバッテリBTに供給する。
【0040】
図3に、走行用コントローラ34が行う走行モード切り替え処理のフローチャートを示す。
【0041】
走行用コントローラ34に電源が投入される(バッテリBTから電源電圧が供給される)と、走行用コントローラ34は、走行モード切り替え処理を開始させる。走行モード切り替え処理を開始した走行用コントローラ34は、走行モードの判定を行う(S1)。走行モードには、本発明の「第1モード」に相当する「通常モード」と、本発明の「第2モード」に相当する「セットモード」と、本発明の「第3モード」に相当する「微速モード」とが含まれる。処理開始時の走行モードは「通常モード」に設定されているので、走行用コントローラ34は、「通常モード」と判定する。
【0042】
「通常モード」と判定した走行用コントローラ34は、設定速度を第1設定速度(本実施形態では、第1設定速度=16[km/h])に設定する(S2)。「通常モード」では、設定速度は制限されていないので、走行用コントローラ34は、通知部18による通知をオフにする。
【0043】
次いで、走行用コントローラ34は、アクセル15Aがオン状態で、かつブレーキ15Bがオン状態であるか否かの判定の判定を行う(S3)。走行用コントローラ34は、アクセル15Aおよびブレーキ15Bの双方がオン状態の場合(S3でYes)、走行モードを「セットモード」に設定して(S4)、ステップS5の処理に移行する。アクセル15Aおよびブレーキ15Bの少なくとも一方がオフ状態の場合(S3でNo)、走行用コントローラ34は、走行モードを変更することなくステップS5の処理に移行する。
【0044】
ステップS5において、走行用コントローラ34は目標速度の算出を行う。目標速度は、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により算出される。ステップS4では設定速度の変更を行っていないため、設定速度は第1設定速度(=16[km/h])である。ステップS5において目標速度の算出を行った走行用コントローラ34は、再びステップS1の処理に移行する。なお、走行モード切り替え処理の制御周期は、例えば、2[ms]である。
【0045】
走行用コントローラ34は、ステップS1の処理において走行モードを「セットモード」と判定した場合、設定速度を第2設定速度(本実施形態では、第2設定速度=1[km/h])に設定する(S6)。「セットモード」では設定速度が制限されているので、走行用コントローラ34は、通知部18による通知をオンにして、オペレータに設定速度が制限されていることを通知する。
【0046】
次いで、走行用コントローラ34は、アクセル15Aがオフ状態で、かつブレーキ15Bがオフ状態であるか否かの判定の判定を行う(S7)。走行用コントローラ34は、アクセル15Aおよびブレーキ15Bの双方がオフ状態の場合(S7でYes)、走行モードを「微速モード」に設定して(S8)、ステップS5の処理に移行する。アクセル15Aおよびブレーキ15Bの少なくとも一方がオン状態の場合(S7でNo)、走行用コントローラ34は、走行モードを変更することなくステップS5の処理に移行する。
【0047】
ステップS5において、走行用コントローラ34は目標速度の算出を行う。目標速度は、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により算出される。ステップS8では設定速度の変更を行っていないため、設定速度は第2設定速度(=1[km/h])である。目標速度の算出を行った走行用コントローラ34は、再びステップS1の処理に移行する。
【0048】
走行用コントローラ34は、ステップS1の処理において走行モードを「微速モード」と判定した場合、設定速度を第3設定速度(本実施形態では、第3設定速度=1[km/h])に設定する(S9)。「微速モード」では設定速度が制限されているので、走行用コントローラ34は、通知部18による通知をオンにして、オペレータに設定速度が制限されていることを通知する。
【0049】
次いで、走行用コントローラ34は、アクセル15Aがオフ状態で、かつブレーキ15Bがオン状態であるか否かの判定の判定を行う(S10)。走行用コントローラ34は、アクセル15Aがオフ状態で、かつブレーキ15Bがオン状態である場合(S10でYes)、走行モードを「通常モード」に設定して(S11)、ステップS5の処理に移行する。
【0050】
アクセル15Aがオン状態またはブレーキ15Bがオフ状態である場合(S10でNo)、走行用コントローラ34は、アクセル15Aがオン状態で、かつブレーキ15Bがオン状態であるか否かの判定の判定を行う(S12)。走行用コントローラ34は、アクセル15Aおよびブレーキ15Bの双方がオン状態の場合(S12でYes)、走行モードを「セットモード」に設定して(S13)、ステップS5の処理に移行する。アクセル15Aおよびブレーキ15Bの少なくとも一方がオフ状態の場合(S12でNo)、走行用コントローラ34は、走行モードを変更することなくステップS5の処理に移行する。
【0051】
ステップS5において、走行用コントローラ34は目標速度の算出を行う。目標速度は、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により算出される。ステップS11、S13では設定速度の変更を行っていないため、設定速度は第3設定速度(=1[km/h])である。目標速度の算出を行った走行用コントローラ34は、再びステップS1の処理に移行する。
【0052】
図4に、走行モード切り替え時における目標速度と走行速度の時間変化を示す。なお、図4では、前後進レバーは前方向に傾けられた状態である(すなわち、フォークリフト1は前進している)ものとする。
【0053】
t1よりも前の期間では、走行モードは「通常モード」、アクセル開度は100[%]、ブレーキはオフ状態である。走行用コントローラ34が算出した目標速度は、16[km/h](=16[km/h]×100[%])であり、実際の走行速度(速度信号に基づいて車両本体10が算出した走行速度)も16[km/h]である。
【0054】
t1において、オペレータによりブレーキ15Bが踏まれると、アクセル15Aおよびブレーキ15Bの双方がオン状態となるので、走行用コントローラ34は、走行モードを「通常モード」から「セットモード」に切り替える。また、走行用コントローラ34は、設定速度を第1設定速度である16[km/h]から第2設定速度である1[km/h]に切り替えて、目標速度を16[km/h]から1[km/h](=1[km/h]×100[%])に変更する。
【0055】
t1よりも後でt2よりも前の期間では、ブレーキ15Bがオン状態であるため、走行用コントローラ34は、強い回生ブレーキを生じさせて車両本体10を減速させる。すなわち、走行用コントローラ34は、車両本体10の走行速度を目標速度(1[km/h])に近づける速度制御において、走行速度の変化量(減速量)をブレーキ15Bがオフ状態の時の値よりも大きくする。なお、走行速度の変化量(減速量)の調整は、例えば、PI制御またはPID制御の制御ゲインを調整することにより実現できる。
【0056】
t2において、ブレーキ15Bがオフ状態になると、走行用コントローラ34は、弱い回生ブレーキを生じさせて車両本体10を減速させる。すなわち、走行用コントローラ34は、速度制御において、走行速度の変化量(減速量)をブレーキ15Bがオン状態の時の値よりも小さくする。
【0057】
t3において、車両本体10の走行速度が目標速度に達すると、走行用コントローラ34は、車両本体10の走行速度を目標速度(1[km/h])に維持させるように速度制御を行う。t4において、アクセル開度が100[%]が50[%]に変化すると、走行用コントローラ34は、目標速度を1[km/h]から0.5[km/h](=1[km/h]×50[%])に変更するとともに、速度制御を行って車両本体10の走行速度を目標速度である0.5[km/h]に近づける。
【0058】
t5において、アクセル開度が50[%]が0[%]に変化すると、アクセル15Aおよびブレーキ15Bの双方がオフ状態となるので、走行用コントローラ34は、走行モードを「セットモード」から「微速モード」に切り替える。また、走行用コントローラ34は、設定速度を第2設定速度から第3設定速度に切り替えるが、本実施形態ではどちらも1[km/h]であるため、設定速度を変更することなく目標速度を1[km/h]から0(=1[km/h]×0[%])に変更する。
【0059】
t6において、アクセル開度が0[%]が50[%]に変化すると、走行用コントローラ34は、目標速度を0から0.5[km/h](=1[km/h]×50[%])に変更するとともに、速度制御を行って車両本体10の走行速度を目標速度である0.5[km/h]に近づける。t7において、アクセル開度が50[%]が0[%]に変化すると、走行用コントローラ34は、目標速度を0.5[km/h]から0(=1[km/h]×0[%])に変更するとともに、速度制御を行って車両本体10の走行速度を目標速度である0に近づける。
【0060】
t8において、オペレータによりブレーキ15Bが踏まれると、アクセル15Aがオフ状態でブレーキ15Bがオン状態となるので、走行用コントローラ34は、走行モードを「微速モード」から「通常モード」に切り替える。また、走行用コントローラ34は、設定速度を第3設定速度である1[km/h]から第1設定速度である16[km/h]に切り替えるが、アクセル開度が0[%]であるため、目標速度は0(=16[km/h]×0[%])のままである。
【0061】
結局、本実施形態に係るフォークリフト1では、アクセル15Aのオン操作とブレーキ15Bのオン操作とが同時に行われた場合に、設定速度を1[km/h]に制限して目標速度を低下させるので、追加の専用スイッチを必要とせず、オペレータが意図した時に微速走行させることが可能となる。
【0062】
本実施形態に係るフォークリフト1では、細やかなアクセル操作は不要となる。例えば、設定速度が16[km/h]に固定された従来のフォークリフトの場合、1[km/h]で微速走行するためには、目標速度=設定速度×アクセル開度[%]の計算式により、アクセル開度を6.25[%]にする必要がある。これに対して、本実施形態に係るフォークリフト1では、上記のとおり、設定速度を1[km/h]に制限して目標速度を低下させるので、アクセル開度が100[%]であっても1[km/h]の微速走行が可能となる(例えば、図4のt3~t4参照)。すなわち、本実施形態に係るフォークリフト1では、フォークリフト初心者やフォークリフトに乗り慣れていないオペレータであっても、簡単に微速走行を行うことができる。
【0063】
本実施形態に係るフォークリフト1では、「微速モード」においてアクセル15Aがオフ状態でブレーキ15Bがオン状態であることを条件として、走行モードを「通常モード」に切り替えるので、「通常モード」に切り替わった瞬間にフォークリフト1が加速するのを回避することができ、安全性を向上させることができる。
【0064】
また、本実施形態に係るフォークリフト1では、「通常モード」から「セットモード」を挟んで「微速モード」に切り替えるため、設定速度および目標速度が短時間に頻繁に切り替わることを回避できる。なお、設定速度および目標速度が短時間に頻繁に切り替わることを許容できるのであれば、「セットモード」をなくして「通常モード」と「微速モード」との間で切り替えを行ってもよい。その場合、例えば、アクセル15Aのオン操作とブレーキ15Bのオン操作とが同時に行われると「通常モード」から「微速モード」に切り替わり、アクセル15Aがオフ状態でブレーキ15Bがオン状態となると、「微速モード」から「通常モード」に切り替わるよう構成できる。
【0065】
以上、本発明に係るフォークリフトの実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0066】
本発明に係るフォークリフトは、荷役装置が設けられた車両本体と、車両本体を走行させる走行装置と、オペレータにより操作可能に構成されたアクセルおよびブレーキと、車両本体の走行速度を所定の目標速度に近づけるように走行装置の制御を行う走行制御部と、を備えるフォークリフトであって、走行制御部は、目標速度を所定の設定速度とアクセルのアクセル開度との積により算出し、アクセルのオン操作とブレーキのオン操作とが同時に行われた場合に、設定速度を制限して目標速度を低下させるのであれば、適宜構成を変更することができる。
【0067】
上記実施形態では、「セットモード」における第2設定速度を1[km/h]に設定しているが、第2設定速度の値は、0よりも大きく「通常モード」における第1設定速度よりも小さいのであれば、適宜変更することができる。ただし、細やかなアクセル操作を不要とするためには、第2設定速度は、第1設定速度の1/10以下の値であることが好ましい。同様に、「微速モード」における第3設定速度の値は、0よりも大きく「通常モード」における第1設定速度よりも小さいのであれば、適宜変更することができる。ただし、細やかなアクセル操作を不要とするためには、第3設定速度は、第1設定速度の1/10以下の値であることが好ましい。
【0068】
第2設定速度と第3設定速度は、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。安全面の観点からは、オペレータが「セットモード」時と「微速モード」時とで同じ操作フィーリングを感じることができるように、第2設定速度と第3設定速度とを同じ値とすることが好ましい。
【0069】
上記実施形態では、アクセル15Aをオペレータが足で踏むことにより操作可能に構成されたアクセルペダルとし、ブレーキ15Bをオペレータが足で踏むことにより操作可能に構成されたブレーキペダルとしているが、少なくとも一方を手で操作するレバーとしてもよい。アクセル15Aをアクセルレバーとした場合、アクセルレバーの操作量が本発明の「アクセル開度」に相当する。ただし、上記実施形態のようにアクセル15Aおよびブレーキ15Bの双方を足で操作する構成(ペダルの構成)とすることで、オペレータは、アクセル15Aおよびブレーキ15Bを目視で確認することなく、簡単に操作することができる。
【0070】
上記実施形態では、通知部18を表示手段(例えば、ディスプレイ)および音声手段(例えば、スピーカーまたはブザー)を備える構成としているが、いずれか一方のみ備える構成でもよい。
【0071】
上記実施形態では、カウンターバランスタイプのバッテリフォークリフトを例に挙げて説明しているが、本発明に係るフォークリフトは、別のタイプ(例えばリーチタイプ)のバッテリフォークリフトでもよいし、バッテリフォークリフト以外のエンジンフォークリフトでもよいし、バッテリとエンジンとを備えるハイブリッドフォークリフトでもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 フォークリフト
10 車両本体
11 車体フレーム
12A 前輪
12B 後輪
13 運転席
14 ヘッドガード
15A アクセル
15B ブレーキ
16 ハンドル
17A ティルトレバー
17B リフトレバー
18 通知部
20 荷役装置
21 マスト
22 リフトブラケット
23 フォーク
24 バックレスト
25 ティルトシリンダ
26 リフトシリンダ
30 走行制御機構
31 アクセルセンサ
32 ブレーキセンサ
33 車速センサ
34 走行用コントローラ
35 走行用電力変換部
図1
図2
図3
図4