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  • 特開-回路遮断器の可動接触装置 図1
  • 特開-回路遮断器の可動接触装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173169
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】回路遮断器の可動接触装置
(51)【国際特許分類】
   H01H 73/06 20060101AFI20241205BHJP
   H01H 73/02 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01H73/06
H01H73/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091401
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109612
【弁理士】
【氏名又は名称】倉谷 泰孝
(74)【代理人】
【識別番号】100116643
【弁理士】
【氏名又は名称】伊達 研郎
(74)【代理人】
【識別番号】100184022
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 美保
(72)【発明者】
【氏名】柿原 寛
(57)【要約】
【課題】高価なモールド体等の部品追加は行わず既存部品の形状を見直すだけで、安定した短絡遮断を行うことができる回路遮断器を得る。
【解決手段】可動接触子及びアーク可動子の底部と接し、その間隔を一定に保つ隔壁を備えた基部、及び第一の連結ピンが貫通する貫通孔を備えた一対の側部を絶縁材料にて一体成形した振れ抑止部材が、可動接触子及びアーク可動子と一緒にコンタクトアームに支承されるようにした。これにより、可動接触子の左右方向への振れが抑制できるので、動作が安定することはもとより、この振れ抑止部材を可動接点の近傍に配置したので、特に外側の可動接触子が消弧装置に触れて、この接触点におけるアーク滞留を未然に防ぐことができる。また、振れ抑止部材を第一の連結ピンで一緒に支承するだけなので、部品点数も極力抑えることができる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開閉機構部と連動して回動するように支承されたクロスバーと、
本体部と、この本体部の両端から各々屈曲して延伸し互いに対向する第一側部及び第二側部と、から成り、上記本体部が上記クロスバーに固着されたコンタクトアームと、
上記第一側部及び第二側部に設けた孔に嵌通された軸により、上記コンタクトアームに回動自由に保持された複数の可動接触子と、を備え、
上記複数の可動接触子のうち、上記第一側部及び第二側部に隣接する可動接触子と、この第一側部及び第二側部との間に振れ抑止部材を介在させたことを特徴とする回路遮断器の可動接触装置。
【請求項2】
上記振れ抑止部材は、上記軸が嵌通する貫通孔を設けた側部と上記複数の可動接触子の間隔を一定に保つ隔壁を設けた基部とで構成されていることを特徴とする請求項1に記載の回路遮断器の可動接触装置。
【請求項3】
上記振れ抑止部材は、上記可動接点と接離を繰り返す固定接点との間で発生するアークに触れることで消弧性のガスが発生する材料で成形されていることを特徴とする請求項2に記載の回路遮断器の可動接触装置。
【請求項4】
上記複数の可動接触子の少なくとも1つは、上記アークによる通電がなされるアーク可動子であり、このアーク可動子に接する上記隔壁は上記軸と直交する方向に延設されていることを特徴とする請求項3に記載の回路遮断器の可動接触装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この開示は、配線用遮断器や漏電遮断器などの回路遮断器の可動接触装置に関し、詳しくは、短絡遮断に伴って発生する金属溶融物の開閉機構部への付着抑制に関するものである。
【背景技術】
【0002】
回路遮断器には、この回路遮断器に具備された操作ハンドルを操作することにより電路を開閉する機能、すなわちスイッチ機能だけではなく、過電流が流れることによる電線や負荷機器の焼損を未然に防止するために電路を遮断するという大きな役目を担っている。この過電流の検出にあたっては、大別すると、熱動式、電磁式、電子式といった各方式によって行われることは周知の通りであるが、より大きな過電流、すなわち短絡電流に対しては、これら各方式による作動を待たずに、接点間にて発生する電磁反発力により、素早く可動接触子を回動せしめることも、やはり周知の通りである。
【0003】
この可動接触子の回動により接点間にアークが発生するが、このアークは、磁気作用によって消弧室に誘引され、伸長および冷却によるアーク抵抗の増大がもたらされることで消滅し、上述した「電路の遮断」、すなわち短絡遮断が達成される。なお、誘引にあたっては、可動接触子の近傍に設けたアーク絶縁部材にアークが触れることで発生する消弧性のガスによって、より強力に行われることも知られている(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
一方で、この消弧性のガスは、その一部が、開閉機構部や過電流検出装置に流れ込み、特に相間の絶縁劣化を招く恐れがあった。加えて、アークの熱を受けて蒸発した接点材料等の溶融物が、このガスの流れ込みに伴って周辺に飛散し、開閉機構部や過電流検出装置(特に熱動式や電磁式)の作動・応動に悪影響を及ぼすことも考えられる。そこで、可動接触装置を他の部位と隔離するようにした回路遮断器が知られている(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭62-71140号公報
【特許文献2】特開2008-41250号公報
【特許文献3】特開2006-236798号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
その電路の短絡遮断における電流値、すなわち短絡電流は、例えば、JIS(日本産業規格)C8201-2-1では「定格短絡遮断容量」として定義されており、その電路の状況、つまり、トランスからの距離や、電線の太さなどに応じて、適宜、適切な値を有する回路遮断器が選定できるよう、各メーカーとも製品バリエーションの充実を図っていることも周知の通りである。一方、この充実化を図る上で、その製品の標準化あるいはプラットフォーム開発は、特にコストとの両立を進めていくためにも必要不可欠であり、然るに、それほどの定格短絡遮断容量が求められない製品に対し、可動接触装置を隔離するためだけに、高価なモールド体(特許文献3におけるミドルカバー3)を付加することは得策とは言い難い。
【0007】
この点、特許文献1及び2では、ミドルカバー相当品の無い、いわゆる汎用品として教示されているが、それ故に、特に特許文献2においては、コンタクトアーム(特許文献1における接点部支持部材24)も有しないことから、仮に何らかの手段でアーク抵抗の増大が図られたとしても、定格短絡遮断容量の格上げは消弧性のガスの流量アップに繋がることから相当な困難が予想される。また、特許文献1においては、可動接触子(接点部アーム76)の接点接合面にはアーク絶縁部材(遮へい部材94)が回り込んでおらず、所望される消弧性のガス量不足、更には、隣接する可動接触子間の隙間(凹部)への溶融物の介在が、それぞれ考えられることから、定格短絡遮断容量そのものの格上げは難しいと言わざるを得ない。
【0008】
この開示は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、部品追加は行わず既存部品の形状を見直すだけで、安定した短絡遮断を行うことができる回路遮断器を得ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この開示に係る回路遮断器の可動接触装置は、開閉機構部と連動して回動するように支承されたクロスバーと、本体部とこの本体部の両端から各々屈曲して延伸し互いに対向する第一側部及び第二側部と、から成り、上記本体部が上記クロスバーに固着されたコンタクトアームと、上記第一側部及び第二側部に設けた孔に嵌通された軸により、上記コンタクトアームに回動自由に保持された複数の可動接触子と、を備え、上記複数の可動接触子のうち、上記第一側部及び第二側部に隣接する可動接触子と、この第一側部及び第二側部との間に振れ抑止部材を介在させたものである。
【発明の効果】
【0010】
この開示は以上説明したように、安定した短絡遮断を行う信頼性の高い回路遮断器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この開示の実施の形態1を示す回路遮断器の開状態を示す正面図である。
図2図1における側面断面図である。
図3図2において開閉機構部を中心としたトリップ状態での拡大図である。
図4図2または図3における可動接触装置の断面図である。
図5図2または図3における振れ抑止部材の外観斜視図である。
図6】この開示の実施の形態3を示す図5相当図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1はこの開示の実施の形態1における回路遮断器の開状態を示す正面図であり、紙面上、右半分は当該回路遮断器の筐体を構成する一部品であるカバー並びに操作ハンドルの図示を省略している。また、図2及び図3は、開閉機構部を中心とした側面図であり、図2は同様に当該回路遮断器の開状態、図3はそのトリップ状態をそれぞれ示すとともに、特に図2については、一部の部品・装置は概ね図1における線A-Aに沿う断面を表した側面全体を示している。なお、図4及び図5は、この開示のポイントとなる振れ抑止部材の断面及び外観斜視図であり、図4では図3における線B-Bに沿ってコンタクトアーム及び可動接触子を含めて示している。
【0013】
この開示における回路遮断器の構成及び動作については、振れ抑止部材を除けば例えば特開2019-212389でも示されているように周知である。すなわち、図1及び図2において、3極用の回路遮断器101の絶縁筐体は、カバー1及びベース2より構成され、このうちベース2に、操作ハンドル3を備えた開閉機構部51と、極数分(この開示では3個)の消弧装置52及び変流器4が配設されている。なお、操作ハンドル3はカバー1のハンドル用窓孔1aから突出しており、ONあるいはOFF方向への操作が可能である。また、消弧装置52と変流器4の位置関係、あるいは開状態にある回路遮断器101の操作ハンドル3の位置より、紙面上、上側(図2においては左側)が例えば電源側電線を接続する電源側端子5、下側(図2においては右側)が例えば負荷側電線を接続する負荷側端子12である。
【0014】
この電源側端子5と一体に形成された固定接触子6の一端に固着された固定接点7が、可動接触子9の一端に固着された可動接点8と接離することで、回路遮断器101の開閉、すなわち電源側電線と負荷側電線を介した電路の入り切りがなされる。この開閉は、可動接触子9を第一の連結ピン13によって支承するコンタクトアーム14が開閉機構部51と連結されていることで、この開閉機構部51の作動に応じて行われる。なお、この開示における回路遮断器101は、例えば、ビル・工場などの主幹用遮断器として使用されることを想定しており、それ故に、電路の通電電流は千アンペア前後に達する。そのため、特に可動接触子9には、通電に伴う発熱に見合った導体サイズ、あるいは適切な接触圧力機能や開閉耐久機能が求められることから、複数枚、具体的には、図4に示すように、後述するアーク可動子33を中心に両サイドに2枚ずつ配設されている。従って、この開示におけるコンタクトアーム14による前述した支承は1極あたり計5枚、より詳しくは、コンタクトアーム14の本体部14aの両端から各々屈曲して延伸し互いに対向する第一側部14b1・第二側部14b2、及び可動接触子9・アーク可動子33に設けたそれぞれの孔に第一の連結ピン13が嵌通することで行われている。
【0015】
図2に戻り、これら可動接触子9及びアーク可動子33はそれぞれ他端にシャント10が接合されており、このシャント10は中継導体11を介して変流器4を貫通する負荷側端子12に接続されている。したがって、ON操作、すなわち図示しない閉状態における電流経路は、電源側端子5-固定接触子6-固定接点7-可動接点8-可動接触子9-シャント10-中継導体11-負荷側端子12となり、この電流が変流器4によって検出される。なお、この閉状態における前述した接触圧力は、可動接触子9とコンタクトアーム14の間に配設された第一の接圧ばね15によって得られている。
【0016】
変流器4による検出の結果、過電流状態にあると引き外しリレー16が判断すると、開閉機構部51が応動し、電路の遮断が行われる。故にこの遮断に至る検出方式は0002項で述べた「電子式」に相当するが、いずれの方式であっても、遮断の際に発生するアークは、固定接触子6に固着されたアークランナー17によって消弧装置52に導かれ、この消弧装置52で裁断されることで、いわゆる電気的な接続も含めた遮断が完了する。
【0017】
続いて開閉機構部51の構成を説明する。開閉機構部51は、相対向する一対のフレーム18に、回動自由にその回動軸19aによって軸支された略U字型のハンドルアーム19、このハンドルアーム19に装着される操作ハンドル3によって、いわゆるユニット化されており、その内部、すなわち一対のフレーム18が相対向することで生じる空間には、このフレーム18に軸架された第二の連結ピン20に支承される受け金21、その回動軸22aによって同様にフレーム18に軸架され開及び閉状態において受け金21と係合されるクレドル22、このクレドル22に軸支されている上部リンク23、この上部リンク23とスプリングピン24を介して結合されることでトグルリンクを構成する下部リンク25、従動側26aがスプリングピン24に駆動側26bがハンドルアーム19にそれぞれ張架されたメインばね26、といった部材が備わっている。
【0018】
コンタクトアーム14が第三の連結ピン27によってフレーム18に軸支されるとともに、第四の連結ピン28によって下部リンク25と連結されることで、第三の連結ピン27を回動中心として、トグルリンクの動きに応じて回動、すなわち、前述した開閉動作が行われることになる。なお、開閉機構部51は図1からも明らかなように3極のうち中極のみに設置されることから、右極及び左極のコンタクトアーム14は、このコンタクトアーム14に固着された固定部材29に取り付けた絶縁体であるクロスバー30が紙面上、左右方向に延伸、すなわち3極を横断していることで、3つのコンタクトアーム14が同時に動作することは言うまでもない。
【0019】
次に回路遮断器101の一連の動作を説明する。なお、ここまでの説明で明らかなように、受け金21とクレドル22が係合している状態が開もしくは閉状態であり、逆に図3のようにこの係合が解除された状態は、遮断が行われたことを示しており、以下、ここでは「トリップ状態」と称する。なお、これも言うまでもないが、固定接点7と可動接点8が接触しているのが閉状態、開離しているのが開もしくはトリップ状態である。
【0020】
図2の開状態において、操作ハンドル3を紙面上、反時計方向に回動させると、スプリングピン24がハンドルアーム19の回動軸19aを中心に紙面上、上側に、具体的には略くの字状態にあるトグルリンクを伸張させる方向に移動することで、メインばね26の荷重方向が変化する。この変化により、コンタクトアーム14が第三の連結ピン27を回動中心として同様に反時計方向、すなわち、可動接点8が固定接点7と接触する方向に回動し、前述したように第一の接圧ばね15の付勢力により閉状態に移行する。なお、この接触にあたっては、可動接触子9とアーク可動子33の位置関係及び第一の接圧ばね15と第二の接圧ばね34の荷重の違いにより、最初にアーク固定接点31とアーク可動接点32が接触し電路の通電が開始される。その後、トグルリンクの伸張、すなわち、コンタクトアーム14のさらなる回動によって、このアーク固定接点31とアーク可動接点32の接触面が支点となり、前述した固定接点7と可動接点8の接触が行われる。これにより支点が移動、すなわち、今度は固定接点7と可動接点8の接触面が第一の接圧ばね15による接触圧力と相俟って支点となり、アーク可動接点32はアーク固定接点31より開離する。こうして0015項で述べた「固定接触子6-固定接点7-可動接点8-可動接触子9」の電流経路が得られることになる。
【0021】
この閉状態から図2に示す開状態への移行は、この逆、すなわち、操作ハンドル3を時計方向にメインばね26の荷重方向が変化するまで回動すれば、トグルリンクが略くの字状態に戻り、コンタクトアーム14が直ちに時計方向に回動することで、可動接点8が固定接点7より開離し、電源側電線と負荷側電線を介した電路は切断される。なお、このときの可動接触子9とアーク可動子33の関係は次の「閉→トリップ」で説明する。
【0022】
再び0020項で述べた閉状態に戻り、これも前述した通り変流器4による検出の結果、過電流状態にあると引き外しリレー16が判断すると、リセット機構部53に設けられた連結板35が第五の連結ピン36によってフレーム18に軸支されたトリップバー37を押し込む。この押し込みによりトリップバー37が回動すると受け金21も回動するため、この受け金21と反時計方向に付勢されているクレドル22との係合が解除される。これによりクレドル22が反時計方向に回動すると駆動側26bがスプリングピン24に対し相対的に動き、最終的にこのスプリングピン24に上方向の力が働き始め下部リンク25がコンタクトアーム14を時計方向に回動、すなわち図3に示すように、固定接点7と可動接点8が開離したトリップ状態となる。
【0023】
固定接点7と可動接点8が開離した瞬間は、この両接点7、8間で発生したアークによる通電がなされるとともに、前述した通り、閉状態においては開離しているアーク固定接点31とアーク可動接点32は、第二の接圧ばね34の押圧力により第一の連結ピン13を中心にアーク可動子33が反時計方向に回動されることで接触する。この接触により、両接点31、32間でも通電がなされるが、前述したコンタクトアーム14の時計方向への回動に伴い、アーク固定接点31とアーク可動接点32の接触は維持されたまま、この接触点を支点として可動接点8は固定接点7からアークを引き延ばしながら開離していく。この引き延ばしによりアーク抵抗が増大し、遮断完了直前の電流はアーク固定接点31とアーク可動接点32の接触点へ移行するが、さらなるコンタクトアーム14の回動により、アーク可動接点32もアーク固定接点31から開離し、このとき発生しているアークはアークランナー17によって消弧装置52に誘引され、裁断・消弧される。なお、アーク固定接点31とアーク可動接点32は、より多くアークに晒される、すなわち、アーク火花による耐消耗性向上、あるいは溶着防止のため、例えば、固定接点7と可動接点8が銀合金接点であることに対し、タングステン-銀合金接点や酸化亜鉛-銀合金接点であることが好ましい。
【0024】
この図3のトリップ状態から、操作ハンドル3を時計方向に回動させると、今度は、スプリングピン24に下方向の力が働き、略くの字状態にあるトグルリンクを第四の連結ピン28は不動のまま若干屈曲させる。この屈曲により、第六の連結ピン38を介して常に上部リンク23と係合状態にあるクレドル22が回動軸22aを中心に時計方向に回動を始める。この回動の途中で反時計方向に付勢されている受け金21を一旦時計方向に回動させ、この受け金21と係合、すなわち、図2に示す開状態に戻るが、このトリップ状態から開状態への移行は一般に「リセット操作」と呼ばれているのは周知の通りである。
【0025】
最後に、この開示のポイントとなる振れ抑止部材39について説明する。0014項で述べたように、可動接触子9はアーク可動子33を含め複数枚で構成されていることから、あるいは特許文献2でも示唆されている通り、千アンペア前後の電流が流れ続けることで発生する電磁力による吸引を防止する必要がある。そこで、この開示では、図5に示すように、可動接触子9及びアーク可動子33の底部と接し、その間隔を一定に保つ隔壁39a1を備えた基部39a、及び第一の連結ピン13が貫通する貫通孔39b1を備えた一対の側部39bを絶縁材料にて一体成形した振れ抑止部材39が、図4に示す通り、可動接触子9及びアーク可動子33と一緒にコンタクトアーム14に支承されるようにした。
【0026】
これにより、特許文献2と同様、開閉時あるいはトリップ状態に至る過程において、可動接触子9の図1紙面上、左右方向への振れが抑制できるので、動作が安定することはもとより、この振れ抑止部材39を可動接点8の近傍に配置したので、特に外側の可動接触子9が消弧装置に触れて、この接触点におけるアーク滞留を未然に防ぐことができる。このため、絶縁筐体、すなわちカバー1やベース2の形状見直し、あるいは内部に別のモールド体を追加することなく、短絡遮断に伴って発生する金属溶融物の開閉機構部への付着が抑制されるので、定格短絡遮断容量の格上げが期待できる。また、振れ抑止部材39を第一の連結ピン13で一緒に支承するだけなので、部品点数も極力抑えることができ、組立性も向上する。
【0027】
実施の形態2.
実施の形態1では、振れ抑止部材39は絶縁材料で一体成形と述べたが、この絶縁材料にアーク絶縁機能を持たせた材料、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ナイロン66、ナイロン46などで成形すれば、両接点7、8間で発生したアークが振れ抑止部材39に触れることで発生する消弧性のガスによりさらに遮断性能が向上することはもとより、導電性飛散物の可動接触子9間、あるいは可動接触子9とアーク可動子33の間への付着抑制や高熱による両接圧ばね15、34の変形防止が期待できる。
【0028】
実施の形態3.
図6はこの開示の実施の形態3における振れ抑止部材の外観斜視図である。振れ抑止部材40は実施の形態2と同様、アーク絶縁機能を持たせた材料で成形するとともに、基部40aには第一の隔壁40a1及び第二の隔壁40a2を設けた。アーク可動子33は0023項でも述べたように、最終的にアークの裁断・消弧を担うため、図1からも明らかなように、より消弧装置52に近接させる必要がある。そこで、第二の隔壁40a2により、アーク可動子33の側面を覆うようにした。これにより、アーク可動子33と消弧装置52が接触することによるアーク滞留が無いので、遮断性能の向上が期待できる。
【符号の説明】
【0029】
7 固定接点、8 可動接点、9 可動接触子、13 第一の連結ピン、
14 コンタクトアーム、14a 本体部、
14b1 第一側部、14b2 第二側部、30 クロスバー、33 アーク可動子、
39 振れ抑止部材、39a 基部、39a1 隔壁、
39b 側部、39b1 貫通孔、51 開閉機構部、101 回路遮断器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6