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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173171
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】スポーツ用シャツ
(51)【国際特許分類】
   A41D 27/10 20060101AFI20241205BHJP
   A41D 13/00 20060101ALI20241205BHJP
   A41D 1/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
A41D27/10 D
A41D13/00 115
A41D1/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091406
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】517170052
【氏名又は名称】デサントジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】秋田 祐作
(72)【発明者】
【氏名】永松 裕平
(72)【発明者】
【氏名】田中 悌二
(72)【発明者】
【氏名】藤谷 拓実
【テーマコード(参考)】
3B031
3B035
3B211
【Fターム(参考)】
3B031AA02
3B031AB08
3B031AC03
3B031AC04
3B031AC05
3B031AC11
3B035AA03
3B035AA04
3B035AA08
3B035AA09
3B035AA10
3B035AB05
3B035AC07
3B035AC15
3B211AA01
3B211AB11
3B211AC17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】腕上げ動作時により適したパターンを有すると共に、腕下げ動作ないし腕を前から振り下ろす動作においても動きを阻害しないスポーツ用シャツを提供する。
【解決手段】胴部1aと袖部1bとを備えるスポーツ用シャツ1は、袖部の少なくとも背面側の部分を構成する袖部分と、胴部のうち着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃部分とを有する後ろ身頃パターンを備え、裾から袖口14に向かって袖下線15および脇線16をたるませることなく延びるように平置きした第1平置き状態で、袖部は、袖上線13および/または肩線12がたるむと共に、袖下線が幅方向外側に向かって上方に傾斜する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴部と袖部とを備えるスポーツ用シャツであって、
前記袖部の少なくとも背面側の部分を構成する袖部分と、前記胴部のうち着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃部分とを有する後ろ身頃パターンを備え、
裾から袖口に向かって袖下線および脇線をたるませることなく延びるように平置きした第1平置き状態で、
前記袖部は、袖上線および/または肩線がたるむと共に、袖下線が幅方向外側に向かって上方に傾斜するスポーツ用シャツ。
【請求項2】
前記第1平置き状態で、袖口の縁部は、上方に向かって幅方向内側に傾斜する
請求項1に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項3】
幅方向に延びる身幅線と、前記第1平置き状態において前記袖下線との成す袖下線角が39度以上58度以下である請求項1に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項4】
前記袖口の縁部と幅方向に延びる身幅線と、前記第1平置き状態においての成す袖口角が、40度以上57度以下である
請求項2に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項5】
前記胴部のうち着用者の少なくとも正面を覆う前身頃パターンを構成する前身頃パターンと、
少なくとも着用者の脇下に対応して設けられて、前記前身頃パターンと前記後ろ身頃部分と前記袖部分と縫い合わされる脇マチパターンと、を有し、
前記袖下線および前記脇線の少なくとも一部は、前記脇マチパターンで構成される脇マチ部であって、
前記袖上線および前記肩線をたるませることなく平置きした基準平置き状態では、前記脇マチ部がたるみ、
前記第1平置き状態では、前記脇マチ部が延ばされる
請求項1または請求項2に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項6】
前記袖上線と前記袖口の縁部との成す袖上角は、鈍角である請求項1または請求項2に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項7】
前記袖上角は、95度以下に設定されている請求項6に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項8】
展開状態において、前記袖口は、前記袖口と一対の袖下線とがそれぞれ交差する袖下点よりも、前記袖口と前記袖上線とが交差する袖上点が、幅方向内側に位置している請求項1または請求項2に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項9】
前記展開状態で、
前記袖上点と、一対の前記袖下点を結ぶ袖口仮想線との離間距離は、前記袖口の縁部の周長の0.8%以上1.4%以下の長さに設定されている請求項8に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項10】
前記後ろ身頃部分は、
着用者の肩甲骨に対応する位置に第1頂点を有すると共に、前記第1頂点から幅方向外側に向かって延びて、前記肩甲骨に対応する部分の生地を膨出させる第1ダーツ部と、
着用者の肋骨の下方近傍に対応する位置に第2頂点を有すると共に、前記第2頂点から幅方向外側に向かって延びて、前記肋骨の下方近傍に対応する部分の生地を膨出させる第2ダーツ部と、を有する請求項1または請求項2に記載のスポーツ用シャツ。
【請求項11】
前記第2ダーツ部は、幅方向外側に向かって下方に傾斜する請求項10に記載のスポーツ用シャツ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スポーツ用シャツに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、前身頃と、後ろ身頃と、袖部とを備え、前身頃に縫着された袖部の一部が前身頃の肩線を延長した線よりも上側に位置し、平置き状態で袖部がバンザイするスポーツ用シャツが開示されている。一般的なスポーツ用シャツは、平置き状態で、袖部の袖上線が、肩線を延長した線よりも下側に位置するように傾斜するため、アームホールの上端から袖口の上端までに形成される袖上線の長さよりもアームホールの下端から袖口の下端までに形成される袖下線の長さが短くなっている。これに対して、特許文献1に開示されている上衣は、袖部の袖上線よりも袖下線が長く形成されているので、腕上げに伴って身頃の脇線が上方に引き連れられて持ち上がることが抑制されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5066254号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されているスポーツ用シャツは、腕下げに伴って身頃の肩線が下方に引き連れられて伸ばされるので、着用者の肩部にツッパリ感が生じ、腕下げ動作を阻害する場合がある。また、特許文献1のスポーツ用シャツは、袖部が、前身頃および後ろ身頃に縫着されているため、後ろ身頃と袖との縫い目によって、腕を前から振り下ろす動作において動きが阻害される場合がある。
【0005】
本発明は、腕上げ動作時により適したパターンを有すると共に、腕下げ動作ないし腕を前から振り下ろす動作においても動きを阻害しないスポーツ用シャツを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
胴部と袖部とを備えるスポーツ用シャツであって、
前記袖部の少なくとも背面側の部分を構成する袖部分と、前記胴部のうち着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃部分とを有する後ろ身頃パターンを備え、
裾から袖口に向かって袖下線および脇線をたるませることなく延びるように平置きした第1平置き状態で、
前記袖部は、袖上線および/または肩線がたるむと共に、前記袖下線が幅方向外側に向かって上方に傾斜する
スポーツ用シャツ。
【0007】
本発明によれば、第1平置き状態で、袖下線が幅方向外側に向かって上方に傾斜するため、袖部が幅方向外側に向かって上方に傾斜される。これにより、腕上げに伴って身頃の脇線が上方に引き連れられて持ち上がることが抑制されやすい。
【0008】
一方、袖上線が、第1平置き状態でたるんでいるので、腕下げ動作時には、延ばされてたるみのない状態となる。これにより、腕下げに伴って肩線が下方に引き連れられて伸ばされることが抑制され、着用者の肩部に対するツッパリ感によって腕下げ動作が阻害されにくい。さらに、後ろ身頃部分と袖部分との縫い目がないため、腕を前から振り下ろす動作においても動きが縫い目によって阻害されない。例えば、縫い目を設けた場合、縫い目が着用者に触れて、腕を前から振り下ろす動作が阻害されやすい。また、縫い目を設けた部分における生地が伸張しにくく、腕を前から振り下ろす動作が阻害されやすい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、腕上げ時に適したパターンを有すると共に、腕下げ動作ないし腕を前から振り下ろす動作においても動きを阻害しないスポーツ用シャツを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明に係るスポーツ用シャツを基準状態で平置きした正面図。
図2】スポーツ用シャツを基準状態で平置きした背面図。
図3】第1平置き状態のスポーツ用シャツの正面図。
図4】第1平置き状態スポーツ用シャツの背面図。
図5】第2平置き状態のスポーツ用シャツの正面図。
図6】着用者の上半身を示す正面図。
図7】着用者の上半身を示す背面図。
図8】後ろ身頃パターンの展開図。
図9】脇マチパターンの展開図。
図10】第1変形例に係るスポーツ用シャツを基準状態で平置きした正面図。
図11】第2変形例に係るスポーツ用シャツの後ろ身頃パターンおよび袖パターンの展開図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を図面に従って説明する。
【0012】
図1には、本発明の一実施形態に係るスポーツ用シャツとしてのテニスウェア(以下、「シャツ」ともいう)1を平置きした状態の正面図が示され、図2には同背面図が示されている。以下、シャツ1についてシャツ1を着用した着用者が直立した状態を基準にシャツ1の上下、左右、及び前後を定める。また、生地の厚み方向の外表面から内部に向かう方向を内側、その逆を外側とし、身幅方向の外側に向かう方向を外側、身幅方向の中央側に向かう方向を内側する。
【0013】
図1および図2に示すように、シャツ1は、着用者の胴体を覆う胴部1aと、左右一対の袖部1bとを有する。胴部1aは、着用者の少なくとも正面の一部を覆う前身頃パターン2と、着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃パターン3と、前身頃パターン2と後ろ身頃パターン3との間で少なくとも着用者の脇の一部を覆う脇マチパターン5とを有する。後ろ身頃パターン3は、着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃部分30と、袖部1bを構成する袖部分40とを有する。言い換えると、シャツ1は、前身頃パターン2と、後ろ身頃パターン3と、脇マチパターン5とを有する複数のパターンから構成されており、複数のパターンを縫合または接着することで、胴部1aおよび袖部1bが形成される。本実施形態において、袖部分40は、後ろ身頃部分30を延設することで後ろ身頃部分30と一体的に構成されている。
【0014】
図1および図2に示すように、肩線12および袖上線13をたるませることなく延びるように平置きした基準平置き状態では、シャツ1の袖下線15および/または脇線16はたるんだ状態となっている。シャツ1は、図3及び図4に示される、着用者が腕を上げた状態に相当する第1平置き状態と、図5に示される、着用者が腕を下げた状態に相当する第2平置き状態とを取り得る。
【0015】
図3及び図4に示すように、第1平置き状態で、シャツ1は、裾17から袖口14に向かって袖下線15および脇線16をたるませることなく延びるように平置きされている。第1平置き状態で、袖下線15は幅方向外側に向かって上方に傾斜し、袖口14の縁部(以下、「袖口縁部」ともいう)14aは上方に向かって幅方向内側に傾斜する。
【0016】
図5に示すように、第2平置き状態で、シャツ1は、袖下線15および脇線16をたるませて、袖口14が下方に向かうように平置きされている。第2平置き状態で、袖下線15は幅方向外側に向かって下方に傾斜し、袖口縁部14aは上方に向かって幅方向外側に傾斜する。
【0017】
図1および図2を参照すると、シャツ1は、例えば布帛ないしニット生地等の伸縮性を有するスポーツ用シャツ用の生地で構成されている。
【0018】
図1および図2に示すように、シャツ1は、襟ぐり11と、肩線12と、袖上線13と、袖口14と、袖下線15と、脇線16と、裾17とで外形が形成されている。肩線12は、襟ぐり11から幅方向外側に延びて、袖上線13に連続している。袖上線13は、肩線12の外端のショルダーポイント12aから袖口14の上端の袖上点13aまで延びている。袖下線15は、袖口14の下端の袖下点15cから脇線16の上端の脇下点16aまで延びている。脇線16は、脇下点16aから裾17まで下方に向かって延びている。
【0019】
本明細書では、図5に示すように、着用者がシャツ1を着用した際に、その肩先(肩峰骨)に対応する位置をショルダーポイント12aと称すると共に、襟ぐり11の外端11aから幅方向外側に延びる線を肩線12と称する。ショルダーポイント12aは、身幅方向に対して所定の肩傾斜角度α1、例えば、20度で肩線12を下方に傾斜させたときの、胸幅線18との交点とする。肩線12は、外端11aからショルダーポイント12aまで延びる線とする。胸幅線18は、シャツ1の幅方向における中心線(以下、「中心線」ともいう)Cから所定寸法、例えば、中心線Cから身幅W1に対して概ね85%の距離だけ外側に位置して、上下方向に延びる直線とする。身幅仮想線19は、脇線16と裾17との交点を通って上下方向に延びる直線であって、身幅W1は、身幅仮想線19間の距離とする。本明細書では、図3に示すように、後述のアームホール22の傾斜に沿って延びる仮想延長線22aと脇線16との交点を脇下点16aとする。
【0020】
本明細書では、図3に示すように、袖下線15は、袖部分40と脇マチパターン5とによって形成され、脇線16は、脇マチパターン5と後ろ身頃部分30とによって形成されている。より詳しくは、袖下線15は、袖部分40で構成される第1袖下線15aと、第1袖下線15aの内端部に縫着される脇マチパターン5で構成される第2袖下線15bとを有する。脇線16は、後ろ身頃部分30で形成される第1脇線16bと、第1脇線16bの上端に縫着される脇マチパターン5で形成される第2脇線16cとを有する。第2袖下線15bは脇下点16aから幅方向外側に延び、第2脇線16cは脇下点16aから下方側に延びる。
【0021】
図1に示すように、前身頃パターン2は、襟ぐり11を形成する前襟ぐり21と、袖部分40が縫い付けられるアームホール22と、アームホール22の下方で脇マチパターン5が縫合される第1被前脇マチ縫合部23と、第1被前脇マチ縫合部23の下端から下方に延びて後ろ身頃部分30と縫合される前身頃縫合部24と、前身頃縫合部24の下端で略水平方向に延びる前裾線25とで区画されている。
【0022】
アームホール22は、前襟ぐり21の幅方向外側の端部から脇下点16aに向かって延びている。アームホール22は、前襟ぐり21から脇下点16a側に向かって幅方向外側に傾斜している。
【0023】
第1被前脇マチ縫合部23は、脇線16を幅方向内側に凹ませる前凹部で構成されている。第1被前脇マチ縫合部23は、アームホール22の下端部22bから幅方向内側に向かって下方に湾曲すると共に前凹部の前最深部23aまで延びる第1湾曲部23bと、前最深部23aから幅方向外側に向かって下方に湾曲すると共に脇線16まで延びる第2湾曲部23cとを有する。
【0024】
図1および図6に示すように、アームホール22の下端部22bは、着用者Bの脇下B1近傍に配置されてもよい。下端部22bは、シャツ1の後襟ぐり31の上端から着丈L1の概ね27%の距離だけ下方に配置されている。シャツ1の着丈L1は、後ろ襟ぐり31の上端から裾17までの上下方向寸法とする。下端部22bの幅方向位置は、身幅W1に対して身幅仮想線19から概ね38%の距離だけ内側に配置されている。
【0025】
図1および図6に示すように、第1被前脇マチ縫合部23は、着用者Bの前鋸筋B3に対応する位置に配置されてもよい。より詳しくは、前最深部23aは、着用者Bの大胸筋B2の下部と前鋸筋B3の上部との上下方向位置が重複する領域に配置されていてもよい。前最深部23aは、前鋸筋B3の幅方向内端部の近傍に対応する位置に配置されていてもよい。前最深部23aは、シャツ1の後襟ぐり31の上端から着丈L1の概ね40%の距離だけ下方に配置されている。前最深部23aは、身幅W1に対して概ね60%の距離だけ内側に配置されている。
【0026】
図1および図6に示すように、第1湾曲部23bは、前鋸筋B3の上側の部分に対応して配置され、第2湾曲部23cは、前鋸筋B3の下側の部分に対応して配置されていてもよい。第1被前脇マチ縫合部23の下端部23dは、着用者の腹部B4に位置し、より詳しくは、へそ部B5の高さ方向位置に対応して配置されていてもよい。第1被前脇マチ縫合部23は、後ろ襟ぐり31の上端から着丈L1の概ね27%の距離だけ下方の位置から概ね71%の距離だけ下方の位置の間に設けられている。
【0027】
図1に示すように、前身頃縫合部24は、第1被前脇マチ縫合部23の下端部23dから下方に向かうに連れて幅方向内側に傾斜する。言い換えると、前身頃縫合部24は、前脇マチ縫合部の下端部23dから前裾線25に向かって脇線16に対する離間距離が広がっている。
【0028】
図2に示すように、後ろ身頃部分3は、後襟ぐり31と、アームホール仮想線32と、アームホール仮想線32の下方で脇マチパターン5が縫合される第1被後脇マチ縫合部33と、第1被後脇マチ縫合部33の下端から下方に延びて前身頃パターン2と縫合される後身頃縫合部34(図1も併せて参照)と、後身頃縫合部34の下端で略水平方向に延びる後裾線35とで区画されている。
【0029】
後襟ぐり31は、背面側の襟ぐり11を形成する第1後襟ぐり31aと前面側に折り返されて前面側の襟ぐり11の一部を構成する第2後襟ぐり31bとを備える。第2後襟ぐり31bは、前襟ぐり21に連続している。
【0030】
図2に示すように、後ろ身頃部分3は、袖部分40と一体的に形成されているので、アームホールが設けられていない。アームホール仮想線32は、前身頃パターン2のアームホール22に対応する位置に仮想的に設けられた線である。アームホール仮想線32の下端部32aの上下方向位置は、アームホール22の下端部22bと概ね一致する。
【0031】
第1被後脇マチ縫合部33は、脇線16を幅方向内側に凹ませる後凹部で構成されている。第1被後脇マチ縫合部33は、アームホール仮想線32の下端部32aから下方に延びる直線部33aと、直線部33aの下端33bからさらに下方に向かうに連れて外側に傾斜して脇線16まで延びる傾斜部33cとを有する。
【0032】
直線部33aは、身幅W1に対して概ね22%の距離だけ内側に配置されている。第1被後脇マチ縫合部33は、第1被前脇マチ縫合部23の前最深部23aよりも幅方向外側に位置する。直線部33aの上端は、アームホール仮想線32の下端部32aに一致し、直線部33aの下端33bは着用者Bの肋骨B8とへそ部B5(図7参照)の間で、肋骨B8側に位置する。傾斜部33cの上端は、直線部33aの下端33bに一致し、傾斜部33cの下端部33dは着用者Bの肋骨B8とへそ部B5(図7参照)の間で、へそ部B5側に位置する。傾斜部33cの身幅方向に対する傾斜角α2は、例えば、45.4度に設定されている。
【0033】
図2および図7に示すように、第1被後脇マチ縫合部33は、着用者Bの広背筋B6の上下方向位置に対応する位置に配置されてもよい。第1被後脇マチ縫合部33が配置される上下方向領域は、第1被前脇マチ縫合部23と概ね一致し、後襟ぐり31の上端から着丈L1の27%の距離だけ下方の位置から71%の距離だけ下方の位置の間に設けられている。
【0034】
図1に示すように、後身頃縫合部34は、着用者の背面側から前面に回り込んで前身頃縫合部24と縫合されている。後身頃縫合部34は、前身頃縫合部24と相補的な形状を有する。後身頃縫合部34は、第1被後脇マチ縫合部33の下端部33dから下方に向かうに連れて内側に傾斜する。
【0035】
図2に示すように、後ろ身頃部分30は、着用者Bの肩甲骨B7に対応する部分の生地を膨出させる第1ダーツ部37と、着用者Bの肋骨B8の下方近傍に対応する部分の生地を膨出させる第2ダーツ部38とを有する。
【0036】
図2および図7に示すように、第1ダーツ部37は、着用者の肩甲骨B7に対応する部分に位置する起端(第1頂点)37aと、第1被後脇マチ縫合部33上に位置する終端37bと、を備え、これらの間を直線状に延びている。第1ダーツ部37は、起端37aから幅方向外側に向かって下方に傾斜する。起端37aは、肩甲骨B7の中心部に対応し、終端37bはアームホール仮想線32の下端部32aおよび脇下B1に対応する。第1ダーツ部37の身幅方向に対する傾斜角α3は、例えば、46度に設定されている。
【0037】
図8は、シャツ1の後ろ身頃パターン3の展開図である。図2および図8を参照すると、第1ダーツ部37は、脇下点16a近傍の生地を内側かつ上方に向かってV字状に切欠いた第1切欠部37cを内向きに織り込んで縫合して形成されている。第1ダーツ部37による生地の切欠量は、起端37aから離れるに従って大きくなり、終端37bで最も大きくなっている。この構成によって、後ろ身頃部分30のうち起端37aが位置する部分では、ゆとりを有するように後ろ身頃部分30を膨出させることができる。言い換えると、肩甲骨B7に対応する部分にゆとりを設けることができる。第1切欠部37cの起端37aを中心とした第1切欠角度α4は、13.5度に設定されている。第1ダーツ部37は、第1切欠部37cに対応する部分の生地を折込むことで形成されてもよい。
【0038】
図2および図7に示すように、第2ダーツ部38は、着用者の肋骨B8の下方近傍に対応する部分に位置する起端(第2頂点)38aと、第1被後脇マチ縫合部33上に位置する終端38bと、を備え、これらの間を直線状に延びている。第2ダーツ部38は、起端38aから幅方向外側に向かって下方に傾斜する。第2ダーツ部38の身幅方向に対する傾斜角α5は、例えば、38度に設定されている。傾斜角α5は、傾斜部33cの傾斜角α2と概ね一致し、傾斜部33cと第2ダーツ部38は連続している。図7に示すように、起端38aおよび終端38bはいずれも着用者Bの肋骨B8とへそ部B5との間に位置している。
【0039】
図2および図8を参照すると、第2ダーツ部38は、肋骨B8の下方近傍に位置する生地を内側かつ上方に向かってV字状に切欠いた第2切欠部38cを内向きに織り込んで縫合して形成されている。第2ダーツ部38による生地の切欠量は、起端38aから離れるに従って大きくなり、終端38bで最も大きくなっている。この構成によって、後ろ身頃部分30のうち起端38aが位置する部分では、ゆとりを有するように後ろ身頃部分30を膨出させることができる。言い換えると、肋骨B8の下方近傍に対応する部分にゆとりを設けることができる。第2切欠部38cの起端38aを中心とした第2切欠角度α6は、10.5度に設定されている。第2ダーツ部38は、生地を折込むことで形成されてもよい。
【0040】
第1ダーツ部37および第2ダーツ部38を設けることで、これらのダーツ部37,38を設けない場合に比べて、展開状態よりも縫製状態において、肩線12および袖上線13が、幅方向外側に向かって下方に位置しやすくなる。これに対して、図8に示すように、展開状態において、シャツ1の肩線12および袖上線13は、幅方向外側に向かって上方に傾斜している。より詳しくは、展開状態で、襟ぐり11の外端11aを通って身幅方向に延びる直線に対する肩線12および袖上線13の傾斜角度α7は、90度以上に設定されていればよく、例えば94度に設定されている。これにより、第1ダーツ部37および第2ダーツ部38を設けた場合でも、腕上げ動作に適したパターンを有することができる。具体的には、基準状態で、肩線12および袖上線13を、幅方向外側に向かって上方に傾斜させやすい。
【0041】
図1および図2に示すように、袖部分40は、前身頃パターン2に縫合される前袖部41と、後ろ身頃部分30に連続する後袖部42とを有する。前袖部41と後袖部42とは一体的に構成されており、前袖部41と後袖部42とが互いに縫合されることで、筒状の袖部1bが形成されている。袖部1bの一端部に袖口14とされ、他端部の前袖部41が前身頃パターン2に縫着され、後袖部42が後ろ身頃部分30に連続している。
【0042】
袖部分40は、袖部1bの上縁を構成する袖上線13と、袖部1bの下縁を構成する袖下線15の一部を構成する第1袖下線15aと、袖上線13と袖下線15とを接続する袖口14と、アームホール22に縫合される前身頃縫合部24と、アームホール仮想線32に連続する後ろ身頃連続部44と、第1袖下線15aよりも幅方向内側に配置されて脇マチパターン5に縫合される第2被前脇マチ縫合部45および第2被後脇マチ縫合部46とを有する。
【0043】
図1に示すように、袖上線13は、前袖部41と後袖部42とが折り重ねられた時に形成される稜線によって構成されている。稜線は、袖上線13の幅方向内側から襟ぐり11まで延びる、肩線12も構成している。基準状態で、肩線12および袖上線13は、たるむことなく身幅方向に略平行に延びている。第1袖下線15aは、前袖部41と後袖部42とが縫合される部分によって構成されている。第1袖下線15aは、基準状態で、幅方向外側に向かって上方に傾斜し、例えば、身幅方向に対する第1袖下線15aの角度α8は9度に設定されている。
【0044】
袖口縁部14aは、袖上線13の外端部である袖上点13aと、袖下線15の外端部である袖下点15cとを接続している。袖口縁部14aは、基準状態で、上方に向かって幅方向内側に傾斜している。袖上点13aを通って上下方向に延びる直線に対する袖口縁部14aの傾斜角度α9は、例えば、4.6度に設定されている。袖上線13と袖口縁部14aとの成す角である袖上角α10は、鈍角に設定されており、例えば、92度に設定されている。
【0045】
図1および図2に示すように、基準状態では、第2被前および後脇マチ縫合部45,46は、第1袖下線15aの内端部15dから中心線C側に向かって身幅方向に略平行に延びている。第2被前および後脇マチ縫合部45,46は、袖上線13と略平行に延びている。
【0046】
図4およびLに示すように、第2被前および後脇マチ縫合部45,46の内端部45a,46aは、それぞれアームホール22の下端部22bおよびアームホール仮想線32の下端部32aと一致している。第2被前および後脇マチ縫合部45,46は、第1袖下線15aの内端部15dから下端部22bまで延びている。第2被後脇マチ縫合部46は、第2被前脇マチ縫合部45と概ね同様の構成を有しているため、説明を割愛する。
【0047】
図8に示すように、展開状態において、袖口縁部14aは、袖口縁部14aと一対の袖下線15,15とがそれぞれ交差する袖下点15c,15cよりも、袖上点13aが、幅方向内側に位置するように湾曲する。袖上点13aと、一対の袖下点15c,15cを結ぶ袖口仮想線20との離間距離D1は、3mm以上5mm以下に設定されている。これにより、袖上線13が袖下線15よりも短くなるので、図1に示すように、基準状態では、袖口縁部14aが上方に向かって幅方向内側に位置するように傾斜する。また、離間距離D1は、袖口縁部14aの周長に対して、0.8%以上1.4%以下に設定されていればよく、例えば、1.1%の長さに設定されている。袖口縁部14aの周長は、展開状態において、袖下点15c,15c間の長さである。
【0048】
図3に示すように、第1平置き状態で、袖部1bは、袖上線13および/または肩線12がたるむと共に、袖下線15が幅方向内側に向かって上方に傾斜する。より詳しくは、身幅方向に延びる身幅線Lと、袖下線15との成す袖下線角α11が39度以上58度以下に設定されている。第2被前脇マチ縫合部45は、袖口14に向かって上方に傾斜し、例えば、身幅方向に対する第2被前脇マチ縫合部45の角度α12は30度に設定されている。
【0049】
袖口縁部14aは、第1平置き状態で、上方に向かって身頃側に傾斜する。より詳しくは、袖口14と身幅線Lとの成す袖口角α13は、40度以上57度以下に設定されている。袖下線15と袖口14との成す角である袖下角α14は、袖下線角α11と、袖口角α13の和であって、例えば、97度に設定されている。袖下角α14は、袖上角α10よりも大きく、95度以上100度以下に設定されている。
【0050】
図3および図4に示すように、脇マチパターン5は、着用者Bの脇下B1に対応して設けられて、前身頃パターン2と前袖部41に縫合される前脇マチ部51と、後ろ身頃部分30と後袖部42に縫合される後脇マチ部52とを有する。前脇マチ部51と後脇マチ部52とは、一体的に構成されている。
【0051】
脇マチパターン5は、袖部1bに縫合される前脇マチ袖縫合部51aと、前身頃パターン2に縫合される前脇マチ身頃縫合部51bと、第1被後脇マチ縫合部33に縫合される後脇マチ袖縫合部52aと、第2被後脇マチ縫合部46に縫合される後脇マチ袖縫合部52aと、第2袖下線15bと、第2脇線16cとを有する。第2袖下線15bおよび第2脇線16cは、前脇マチ部51と後脇マチ部52とが折り重ねられた時に形成される稜線である。
【0052】
図3および図9に示すように、前脇マチ袖縫合部51aおよび前脇マチ身頃縫合部51bは、それぞれ、第1被前脇マチ縫合部23および第2被前脇マチ縫合部45と相補的な形状を有する。より詳しくは、前脇マチ袖縫合部51aは、第1平置き状態で、袖口14に向かって上方に傾斜している。前脇マチ身頃縫合部51bは、第1湾曲部23bに縫合される第1縫合部51cと、第2湾曲部23cに縫合される第2縫合部51dとを有する。
【0053】
図4および図9に示すように、後脇マチ袖縫合部52aおよび後脇マチ身頃縫合部52bは、それぞれ、第1被前脇マチ縫合部23および第2被前脇マチ縫合部45と相補的な形状を有する。より詳しくは、後脇マチ袖縫合部52aは、第1平置き状態で、袖口14に向かって上方に傾斜している。後脇マチ身頃縫合部52bは、直線部33aに縫合される第1縫合部52cと、傾斜部33cに縫合される第2縫合部52dとを有する。
【0054】
図3および図4に示すように、第1平置き状態で、第2袖下線15bは、身幅仮想線19よりも幅方向外側に位置し、袖口14に向かって上方に傾斜している。第2袖下線15bの身幅方向に対する傾斜角である第2袖下線角α15は、例えば、64度に設定されている。第2袖下線角α15袖下線角α11よりも大きく設定されている。第2脇線16cは、身幅仮想線19よりも幅方向内側に位置し、脇下点16aから下方に向かって身幅仮想線19から離間するようになっている。
【0055】
図3、4、および9に示すように、前脇マチ部51は、第2脇線16cに対する離間距離が上下方向の中央部で最も大きくなるように、中心線C側に膨出している。前脇マチ部51の前最膨出点51eは、前最深部23aに対応する位置に設けられている。後脇マチ部52は、第2脇線16cに対する離間距離が上部(脇下点16a近傍)で最も大きくなるように、中心線C側に膨出している。後脇マチ部52の後最膨出点52eは、第1ダーツ部37の終端37bに対応する位置に設けられている。第2脇線16cから前最膨出点51eまでの離間距離D2は、第2脇線16cから後最膨出点52eまでの離間距離D3よりも大きく設定されている。前脇マチ袖縫合部51aおよび前脇マチ身頃縫合部51bの周長は、後脇マチ袖縫合部52aおよび後脇マチ身頃縫合部52bの周長よりも長く設定されている。
【0056】
本実施形態に係るスポーツ用シャツ1は、次の効果を奏する。
【0057】
(1)胴部1aと袖部1bとを有するスポーツ用シャツ1は、前記袖部1bの少なくとも背面側の部分を構成する袖部分4と、前記胴部1aのうち着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃部分30とを有する後ろ身頃パターン3を備え、裾17から袖口14に向かって袖下線15および脇線16をたるませることなく延びるように平置きした第1平置き状態で、袖部1bは、袖上線13および/または肩線12がたるむと共に、袖下線15が幅方向外側に向かって上方に傾斜するため、袖部1bが幅方向外側に上方に向かって配置される。これにより、腕上げに伴って身頃の脇線16が上方に引き連れられて持ち上がることが抑制されやすい。
【0058】
一方、袖上線13が、第1平置き状態でたるんでいるので、腕下げ動作時には、延ばされてたるみのない状態となる。これにより、腕下げに伴って肩線が下方に引き連れられて伸ばされることが抑制され、着用者の肩部に対するツッパリ感によって腕下げ動作が阻害されにくい。さらに、後ろ身頃パターン3と袖部分40との縫い目がないため、腕を前から振り下ろす動作においても動きが縫い目によって阻害されない。例えば、縫い目を設けた場合、縫い目が着用者に触れて、腕を前から振り下ろす動作が阻害されやすい。また、縫い目を設けた部分における生地が伸張しにくく、腕を前から振り下ろす動作が阻害されやすい。
【0059】
(2)第1平置き状態で、袖口14の縁部である袖口縁部14aは、上方に向かって幅方向内側に傾斜するので、袖口14によって、腕上げ動作が阻害されにくい。例えば、袖口縁部14aが上方に向かって幅方向外側に傾斜する場合に比べて、腕上げ動作時に袖上点が幅方向内側にずれやすくなる。言い換えると、袖上点13aが、腕下げ時に位置する上腕の部分で留まることによる腕上げ動作の阻害を抑制しやすい。
【0060】
(3)幅方向に延びる身幅線Lと、第1平置き状態において袖下線15との成す袖下線角α11が39度以上58度以下に設定されているので、腕上げ動作時により適したパターンを有すると共に、腕下げ動作ないし腕を前から振り下ろす動作においても動きが阻害されにくい。具体的には、袖下線角α11が39度未満の場合、袖下線角以上の腕上げに伴って身頃の脇線16が上方に引き連れられて持ち上がることが抑制されにくい。袖下線角α11が58度を超過すると、腕下げ時の袖下線15ないし脇線16のたるみが増大するため、美観を損ないやすい。
【0061】
(4)袖口縁部14aと身幅線Lとの成す袖口角α13が、40度以上57度以下に設定されているので、袖口縁部14aが上方に向かって幅方向内側に傾斜し、袖口14によって腕上げ動作が阻害されにくい。袖口角α13が40度未満の場合、腕下げ動作を阻害しないように肩線12および/または袖上線13のたるみ量が過度となって、美観を損ないやすい。袖口角α13が57度を超過すると、袖上点13aが、腕上げ動作時に幅方向内側にずれにくくなり、腕上げ動作が阻害されない効果が得られにくい。また、袖上点13aが袖下点15cよりも幅方向外側に位置するため、袖上点13aが身頃側にずれにくく、腕上げ動作が阻害されやすい。
【0062】
(5)胴部1aのうち着用者の少なくとも正面を覆う前身頃パターン2と、少なくとも着用者の脇下B1に対応して設けられて、前身頃パターン2と後ろ身頃部分30と袖部分40と縫い合わされる脇マチパターン5と、を有し、前記袖下線15および前記脇線16の少なくとも一部は、前記脇マチパターンで構成される脇マチ部1eであって、前記袖上線13および前記肩線12をたるませることなく平置きした基準平置き状態では、前記脇マチ部1eがたるみ、前記第1平置き状態では、前記脇マチ部1eが延ばされる。本構成によれば、基準平置き状態で、脇マチ部1eは、たるみ(余裕代)を有するので、腕上げ動作時に延ばされて、腕上げ動作が阻害されにくい。
【0063】
(6)袖上線13と袖口縁部14aとの成す袖上角α10は、鈍角であるので、袖上角α10が鈍角でない場合に比べて、袖口縁部14aを上方に向かって身頃側に傾斜させやすく、袖口14によって、腕上げ動作が阻害されにくい。例えば、袖上角α10が鋭角である場合に比べて、腕上げ動作時に袖上点13aが身頃側にずれやすくなる。言い換えると、袖上点13aが、腕下げ時に位置する上腕の部分で留まることによる腕上げ動作の阻害を抑制しやすい。
【0064】
(7)袖上角α10は、95度以下に設定されているので、腕上げ動作が阻害されることを抑制しつつ、所望の袖丈の長さが得られやすい。袖上角α10が90度以下の場合、腕上げ動作時に袖上点13aが身頃側にずれにくくなり、腕上げ動作が阻害されない効果が得られにくい。袖上角α10が95度を超過すると、袖上線13の長さが短くなるため、腕下げ時に所望の袖丈の長さが得られにくい。
【0065】
(8)展開状態において、袖口14は、袖口14と一対の袖下線15とがそれぞれ交差する袖下点15cよりも、袖口14と袖上線13とが交差する袖上点13aが、幅方向内側に位置している。本構成によれば、袖上線13が袖下線15よりも短くなるので、袖口14が上方に向かって幅方向内側に位置するように傾斜するので、袖口14によって、腕上げ動作が阻害されにくい。
【0066】
(9)展開状態で、袖上点13aと、一対の袖下点15cを結ぶ袖口仮想線20との離間距離D1は、袖口縁部14aの周長の0.8%以上1.4%以下の長さに設定されているので、腕上げ動作が阻害されることを抑制しつつ、所望の袖丈の長さが得られやすい。袖口縁部14aの周長に対する離間距離D1が0.8%未満の場合、腕上げ動作時に袖上点13aが身頃側にずれにくくなり、腕上げ動作が阻害されない効果が得られにくい。袖口縁部14aの周長に対する離間距離D1が1.4%を超過すると、袖上線13の長さが短くなるため、腕下げ時に所望の袖丈の長さが得られにくい。
【0067】
(10)後ろ身頃部分30は、着用者の肩甲骨B7に対応する位置に第1頂点37aを有すると共に、第1頂点37aから幅方向外側に向かって延びて、肩甲骨B7に対応する部分の生地を膨出させる第1ダーツ部37と、着用者の肋骨B8の下方近傍に対応する位置に第2頂点38aを有すると共に、第2頂点38aから幅方向外側に向かって延びて、肋骨B8の下方近傍に対応する部分の生地を膨出させる第2ダーツ部38と、を有するので、肩甲骨B7の可動域を阻害することなく、前屈時に延ばされる肋骨B8の下方近傍の部分の生地の突っ張りを抑制することができる。第2頂点38aを肋骨B8よりも下方に設けることで、前屈時に屈曲して背中に接触しやすい肋骨B8を避けることができるので、第2頂点38aを設けることによる違和感を抑制しやすい。
【0068】
(11)第2ダーツ部38は、幅方向外側に向かって下方に傾斜するので、第2ダーツ部38を、肋骨B8を避けて設けやすく、第2ダーツ部38を設けることによる違和感を抑制しやすい。
【0069】
本実施形態では、脇マチパターン5が袖下線15の一部のみを構成する例について説明したが、図10に示すように、スポーツ用シャツ201は、脇マチパターン205が袖口214まで延びていてもよい。言い換えると、袖下線215が脇マチパターン205で構成されていてもよい。
【0070】
本実施形態では、袖部分40と後ろ身頃部分30が、後ろ身頃パターン3で一体的に構成されている例について説明したが、これに限られるものではない。例えば、図11に示すように、スポーツ用シャツ301は、袖部分340のうち、肩線312よりも背面側に位置する背面側袖部分340aと後ろ身頃部分330とが、一体的に後ろ身頃パターン303で構成されていてもよい。言い換えると、袖部分340のうち、肩線312よりも前面側の部分340bが、後ろ身頃パターン303とは異なる前袖パターン304で構成されていてもよい。
【0071】
なお、本発明のスポーツ用シャツ1は、上述の実施形態の構成に限定されず、種々の変更が可能である。
【0072】
[付記]本開示は以下の態様を包含する。
【0073】
[態様1]
胴部と袖部とを備えるスポーツ用シャツであって、
前記袖部の少なくとも背面側の部分を構成する袖部分と、前記胴部のうち着用者の少なくとも背面の一部を覆う後ろ身頃部分とを有する後ろ身頃パターンを備え、
裾から袖口に向かって袖下線および脇線をたるませることなく延びるように平置きした第1平置き状態で、
前記袖部は、袖上線および/または肩線がたるむと共に、袖下線が幅方向外側に向かって上方に傾斜する
スポーツ用シャツ。
【0074】
[態様2]
前記第1平置き状態で、袖口の縁部である袖口縁部は、上方に向かって幅方向内側に傾斜する
態様1に記載のスポーツ用シャツ。
【0075】
[態様3]
幅方向に延びる身幅線と、前記第1平置き状態において前記袖下線との成す袖下線角が39度以上58度以下である
態様1又は2に記載のスポーツ用シャツ。
【0076】
[態様4]
前記袖口と前記身幅線との成す袖口角が、40度以上57度以下である
態様2に記載のスポーツ用シャツ。
【0077】
[態様5]
前記胴部のうち着用者の少なくとも正面を覆う前身頃パターンと、
少なくとも着用者の脇下に対応して設けられて、前記前身頃パターンと前記後ろ身頃部分と前記袖部分と縫い合わされる脇マチパターンと、を有し、
前記袖下線および前記脇線の少なくとも一部は、前記脇マチパターンで構成される脇マチ部であって、
前記袖上線および前記肩線をたるませることなく平置きした基準平置き状態では、前記脇マチ部がたるみ、
前記第1平置き状態では、前記脇マチ部が延ばされる
態様1~4のいずれか1つに記載のスポーツ用シャツ。
【0078】
[態様6]
前記袖上線と前記袖口の縁部との成す袖上角は、鈍角である態様1~5のいずれか1つに記載のスポーツ用シャツ。
【0079】
[態様7]
前記袖上角は、95度以下に設定されている態様6に記載のスポーツ用シャツ。
【0080】
[態様8]
展開状態において、前記袖口は、前記袖口と一対の袖下線とがそれぞれ交差する袖下点よりも、前記袖口と前記袖上線とが交差する袖上点が、幅方向内側に位置するように湾曲する態様1~6のいずれか1つに記載のスポーツ用シャツ。
[態様9]
前記展開状態で、
前記袖上点と、一対の前記袖下点を結ぶ袖口仮想線との離間距離は、前記袖口の縁部の周長の0.8%以上1.4%以下の長さに設定されている態様8に記載のスポーツ用シャツ。
【0081】
[態様10]
前記後ろ身頃部分は、
着用者の肩甲骨に対応する位置に第1頂点を有すると共に、前記第1頂点から幅方向外側に向かって延びて、前記肩甲骨に対応する部分の生地を膨出させる第1ダーツ部と、
着用者の肋骨の下方近傍に対応する位置に第2頂点を有すると共に、前記第2頂点から幅方向外側に向かって延びて、前記肋骨の下方近傍に対応する部分の生地を膨出させる第2ダーツ部と、を有する態様1~9のいずれか1つに記載のスポーツ用シャツ。
【0082】
[態様11]
前記第2ダーツ部は、幅方向外側に向かって下方に傾斜する態様10に記載のスポーツ用シャツ。
【符号の説明】
【0083】
1 スポーツ用シャツ
1a 胴部
1b 袖部
2 前身頃パターン
3 後ろ身頃パターン
5 脇マチパターン
12 肩線
13 袖上線
13a 袖上点
14 袖口
15 袖下線
15c 袖下点
16 脇線
17 裾
20 袖口仮想線
30 後ろ身頃部分
37 第1ダーツ部
37a 第1頂点
38 第2ダーツ部
38a 第2頂点
40 袖部分
B7 肩甲骨
B8 肋骨
D1 離間距離
L 身幅線
α10 袖上角
α11 袖下線角
α13袖口角
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11