(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173193
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】繊維機械
(51)【国際特許分類】
B65H 63/00 20060101AFI20241205BHJP
B65H 54/70 20060101ALI20241205BHJP
B65H 67/08 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B65H63/00 Z
B65H54/70 A
B65H67/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091433
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000202
【氏名又は名称】弁理士法人新樹グローバル・アイピー
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 拓之
(72)【発明者】
【氏名】鳥居 隆太
【テーマコード(参考)】
3F112
3F115
【Fターム(参考)】
3F112AA06
3F112EC06
3F112EE02
3F115CA39
(57)【要約】
【課題】一方の開口に生じる空気の吸引力が他方の開口に及ぶことを抑制する。
【解決手段】繊維機械100は、上糸吸引捕捉案内機構20と、クリーニングパイプ25と、吸引源61と、シャッタ装置29と、を備える。シャッタ装置29は、第1開口291と第2開口292とを有するベース部材29aと、第1開口291又は第2開口292を閉じるシャッタ部材29cと、吸引源61に第1開口291を経由して接続される第1空間S1を形成し第3開口303を有する第1空間形成部301と、吸引源61に第2開口292を経由して接続される第2空間S2を形成し第4開口304を有する第2空間形成部302とを有するカバー部材29bと、を有する。第1空間S1と第2空間S2とは分離して配置される。第1空間S1と外部空間との境界で第1境界部分及び第2空間S2と外部空間との境界である第2境界部分に形成される隙間にはシール部材29dが設けられる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸を巻き取ってパッケージを形成する装置を有する繊維機械であって、
空気を吸引することにより、切れた前記糸を捕捉する第1吸引機構と、
空気を吸引することにより、前記糸の清掃を行う第2吸引機構と、
前記第1吸引機構と前記第2吸引機構に対し空気の吸引力を発生させる吸引源と、
前記第1吸引機構及び前記第2吸引機構と前記吸引源との間に設けられ、前記第1吸引機構と前記吸引源とを接続するか、前記第2吸引機構と前記吸引源とを接続するかを切り替えるシャッタ装置と、を備え、
前記シャッタ装置は、
第1開口と第2開口とを有するベース部材と、
前記吸引源に前記第1開口を経由して接続されている第1空間を、前記ベース部材とともに形成する第1空間形成部と、前記吸引源に前記第2開口を経由して接続されている第2空間を、前記ベース部材とともに形成する第2空間形成部を有する、カバー部材と、
前記ベース部材と前記カバー部材との間に配置され、前記第1開口と前記第2開口との間を移動することで、前記第1開口を閉じるか、又は、前記第2開口を閉じるシャッタ部材と、を有し、
前記第1空間形成部は、前記第1空間を前記第1吸引機構に接続する第3開口を有し、
前記第2空間形成部は、前記第2空間を前記第2吸引機構に接続する第4開口を有し、
前記第1空間と前記第2空間は分離して配置され、
前記第1空間形成部と前記ベース部材との間、かつ、前記第1空間と外部空間との境界である第1境界部分、及び、前記第2空間形成部と前記ベース部材との間、かつ、前記第2空間と外部空間との境界である第2境界部分に、前記シャッタ部材が移動するための隙間が形成され、
前記隙間に、シール部材が配置されている、
繊維機械。
【請求項2】
前記第1空間は、前記第1空間形成部の外周部分により形成され、前記シャッタ部材の外周部分が移動する隙間を有する外周空間を有し、
前記外周空間の隙間は、前記シャッタ部材の厚みに相当する大きさを有する、請求項1に記載の繊維機械。
【請求項3】
前記第1空間は、前記外周空間よりも大きな隙間を有する拡大空間を有する、請求項2に記載の繊維機械。
【請求項4】
前記第1境界部分の隙間は、前記シャッタ部材の厚みに相当する大きさを有する、請求項1~3のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項5】
前記カバー部材は、樹脂により形成されている、請求項1~4のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項6】
前記ベース部材には、電気的に接地された除電部材が設けられる、請求項1~5のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項7】
前記ベース部材は、前記カバー部材の前記第1境界部分に近い部分を前記ベース部材に押しつけて固定する第1固定部材と、前記カバー部材の前記第2境界部分に近い部分を前記ベース部材に押しつけて固定する第2固定部材と、を有する、請求項1~6のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項8】
前記シール部材は、フェルト材により構成される、請求項1~7のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項9】
前記第2空間には、前記ベース部材から突出し、前記シャッタ部材の原点を決定するための突出部が設けられる、請求項1~8のいずれかに記載の繊維機械。
【請求項10】
前記突出部は、先端ほど細くなる円錐台形状を有する、請求項9に記載の繊維機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、糸を巻き取ってパッケージを形成する装置を有する繊維機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、糸を巻き取ってパッケージを形成する装置を有する繊維機械が知られている。この繊維機械には、パッケージの形成中に糸が途中で切れた場合に、切れた糸を空気の吸引により捕捉する糸捕捉機構が設けられている。また、繊維機械には、糸に付着した異物を空気の吸引により取り除いて糸のクリーニングを行うクリーニングパイプが設けられている。さらに、繊維機械には、糸捕捉機構とクリーニングパイプに空気の吸引力を発生させる吸引源が設けられる。
【0003】
また、繊維機械には、クリーニングパイプと吸引源との間を遮断して糸捕捉機構と吸引源とを接続することと、糸捕捉機構と吸引源との間を遮断してクリーニングパイプと吸引源とを接続することと、を切り替えるシャッタ装置が設けられている(例えば、特許文献1を参照)。
【0004】
このシャッタ装置は、吸引源と接続される開口を有するベース部材と、糸捕捉機構に接続される開口とクリーニングパイプに接続される開口とを有するカバー部材と、糸捕捉機構に接続される開口を閉じるか、又は、クリーニングパイプに接続される開口を閉じるシャッタ部材と、を有する。また、ベース部材とカバー部材との間には、シャッタ部材が移動可能となるために隙間が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の繊維機械に備わるシャッタ装置では、ベース部材とカバー部材との間の隙間が1つの空間を形成し、糸捕捉機構に接続される開口とクリーニングパイプに接続される開口とが近い位置に設けられていた。このため、一方の開口をシャッタ部材により閉じても、他方の開口を一方の開口と完全に分離できなかった。その結果、例えば、クリーニングパイプに接続される開口を閉じ、糸捕捉機構に接続される開口を開けた場合であっても、吸引源による空気の吸引力が糸捕捉機構だけでなくクリーニングパイプにも及び、クリーニングパイプにより吸引された異物(例えば、風綿)が、ベース部材とカバー部材との間の隙間に流れ込むことがあった。この異物がシャッタ部材の移動を妨げて、上記2つの開口をシャッタ部材により適切に閉じることができなくなることがあった。
【0007】
本発明の目的は、糸捕捉機構に接続される開口とクリーニングパイプに接続される開口とを有するシャッタ装置において、一方の開口に生じる空気の吸引力が、他方の開口に及ぶことを抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
本発明の繊維機械は、糸を巻き取ってパッケージを形成する装置を有する。繊維機械は、第1吸引機構と、第2吸引機構と、吸引源と、シャッタ装置と、を備える。第1吸引機構は、空気を吸引することにより、切れた糸を捕捉する。第2吸引機構は、空気を吸引することにより、糸の清掃を行う。吸引源は、第1吸引機構と第2吸引機構に対し空気の吸引力を発生させる。シャッタ装置は、第1吸引機構及び第2吸引機構と吸引源との間に設けられ、第1吸引機構と吸引源とを接続するか、第2吸引機構と吸引源とを接続するかを切り替える。
【0009】
シャッタ装置は、ベース部材と、カバー部材と、シャッタ部材と、を有する。ベース部材は、第1開口と第2開口とを有する。カバー部材は、第1空間形成部と、第2空間形成部と、を有する。第1空間形成部は、吸引源に第1開口を経由して接続されている第1空間を、ベース部材とともに形成する。第2空間形成部は、吸引源に第2開口を経由して接続されている第2空間を、ベース部材とともに形成する。シャッタ部材は、ベース部材とカバー部材との間に配置され、第1開口と第2開口との間を移動することで、第1開口を閉じるか、又は、第2開口を閉じる。第1空間形成部は、第1空間を第1吸引機構に接続する第3開口を有する。第2空間形成部は、第2空間を第2吸引機構に接続する第4開口を有する。
【0010】
上記の繊維機械において、第1空間と第2空間は分離して配置されている。また、第1空間形成部とベース部材との間、かつ、第1空間と外部空間との境界である第1境界部分、及び、第2空間形成部とベース部材との間、かつ、第2空間と外部空間との境界である第2境界部分には、シャッタ部材が移動するための隙間が形成される。また、この隙間には、シール部材が配置される。
【0011】
上記の繊維機械においては、ベース部材が、第1開口と第2開口を有する。また、カバー部材が、吸引源に第1開口を経由して接続されている第1空間を、ベース部材とともに形成する第1空間形成部と、吸引源に第2開口を経由して接続されている第2空間を、ベース部材とともに形成する第2空間形成部と、を有する。さらに、第1空間形成部が、第1空間を第1吸引機構に接続する第3開口を有し、第2空間形成部が、第2空間を第2吸引機構に接続する第4開口を有している。また、第1空間と第2空間とが分離して配置されている。
【0012】
上記の繊維機械では、第1空間と第2空間とが分離して配置されることにより、第3開口が接続される第1空間と、第4開口が接続される第2空間と、を空間的に分離できる。この結果、第3開口及び第4開口のうち一方に生じる空気の吸引力が、他方に及ぶことを抑制できる。
【0013】
また、上記の繊維機械では、第1空間形成部とベース部材との間であり、かつ、第1空間と外部空間との境界である第1境界部分、及び、第2空間形成部とベース部材との間であり、かつ、第2空間と外部空間との境界である第2境界部分に、シャッタ部材が移動するための隙間が形成されている。さらに、この隙間には、シール部材が配置されている。これにより、第1空間と第2空間とをより確実に分離できるとともに、第1空間及び第2空間に外部から空気が流入することを抑制できる。この結果、繊維機械の省エネルギーを実現できる。
【0014】
上記の繊維機械において、第1空間は、外周空間を有してもよい。外周空間は、第1空間形成部の外周部分により形成され、シャッタ部材の外周部分が移動する隙間を有する空間である。外周空間の隙間は、シャッタ部材の厚みに相当する大きさを有してもよい。これにより、外部空間の隙間をシャッタ部材の外周部分が移動可能とするとともに、第1空間内に流入した異物がシャッタ部材の外周部分に巻き付きにくくなる。この結果、第1空間内に流入した異物によってシャッタ部材の移動が妨げられることを抑制できる。
【0015】
上記の繊維機械において、第1空間は、拡大空間を有してもよい。拡大空間は、外周空間よりも大きな隙間を有する。これにより、第1空間に異物が流入しても、拡大空間が十分な量の異物を保持できるので、異物の堆積によってシャッタ部材が移動しなくなることを抑制できる。
【0016】
上記の繊維機械において、第1境界部分の隙間は、シャッタ部材の厚みに相当する大きさを有してもよい。これにより、シャッタ部材が第1境界部分を移動可能としつつ、外部から第1空間へ異物が流入することを抑制できる。
【0017】
上記の繊維機械において、カバー部材は、樹脂により形成されていてもよい。これにより、カバー部材の設計自由度を向上できる。
【0018】
上記の繊維機械において、ベース部材には、電気的に接地された除電部材が設けられてもよい。これにより、シャッタ装置の帯電を防止できる。
【0019】
上記の繊維機械において、ベース部材は、第1固定部材と、第2固定部材と、を有してもよい。第1固定部材は、カバー部材の第1境界部分に近い部分をベース部材に押しつけて固定する。第2固定部材は、カバー部材の第2境界部分に近い部分をベース部材に押しつけて固定する。これにより、カバー部材をベース部材に確実に固定しつつ、第1境界部分及び第2境界部分の隙間を最小限とできる。この結果、第1境界部分及び第2境界部分の隙間から、第1空間及び第2空間への空気等の流入を抑制できる。
【0020】
上記の繊維機械において、シール部材は、フォルト材により構成されてもよい。フェルト材は、摺動性が高いので、第1空間と第2空間とをより確実に分離できるとともに、シャッタ部材の移動をスムーズに行うことができる。
【0021】
上記の繊維機械において、第2空間には、ベース部材から突出し、シャッタ部材の原点を決定するための突出部が設けられてもよい。これにより、シャッタ部材の原点を確実に決定できる。
【0022】
上記の繊維機械において、突出部は、先端ほど細くなる円錐台形状を有してもよい。これにより、第2空間に流入した異物が巻き付くことを防止できる。
【発明の効果】
【0023】
第1吸引機構が接続される第3開口、及び、第2吸引機構が接続される第4開口のうち一方の開口に生じる空気の吸引力が、他方の開口に及ぶことを抑制できる。また、第1空間及び第2空間に外部から空気が流入することを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図5】
図2に示すシャッタ装置のVI-VI断面図。
【
図6】ベース部材に配置されたシャッタ部材を示す図
【
図7】シャッタ部材が第1開口を全閉とし第2開口を全開とした状態を示す図。
【
図8】シャッタ部材が第1開口と第2開口の両方を全閉とした状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0025】
1.第1実施形態
(1)繊維機械の構成
図1を用いて、繊維機械100を説明する。
図1は、繊維機械100の構成を示す図である。繊維機械100は、巻取装置1を有している。巻取装置1は、給糸ボビン3から解舒された糸4を綾振ドラム5で綾振りながら巻取管6に巻き取ってパッケージ7を形成する装置である。
図1では巻取装置1を1台しか図示していないが、このような巻取装置1が機台上に多数列設されることで、繊維機械100が構成されている。
【0026】
巻取装置1は、巻取管6を着脱可能に支持するクレードル8と、巻取管6の周面に又はパッケージ7の周面に接触しながら所定の回転数で回転する綾振ドラム5と、を有している。
【0027】
クレードル8は、巻取管6の両端を挟持して回転自在に支持する。また、クレードル8は、回動軸10を中心に回動自在に構成されており、巻取管6又はパッケージ7への糸4の巻き取りに伴うパッケージ7の径の増大を、クレードル8が回動することによって吸収できる。綾振ドラム5の周面には、巻取管6又はパッケージ7に対して糸4の綾振りを行うための綾振溝9が形成されている。巻取管6又はパッケージ7は、綾振ドラム5の回転に従って従動回転する。
【0028】
巻取装置1は、給糸ボビン3と綾振ドラム5との間の糸4の走行経路中に、給糸ボビン3側から順に、糸継装置14と、ヤーンクリアラ15と、ワキシング装置24、クリーニングパイプ25を、を備えている。
【0029】
糸継装置14は、ヤーンクリアラ15が糸欠陥を検出して行う糸切断時、又は給糸ボビン3からの糸4の糸切れ時に、給糸ボビン3側の糸4としての下糸4Lと、パッケージ7側の糸4としての上糸4Uとを糸継ぎするように構成されている。
【0030】
ヤーンクリアラ15は、糸4の欠陥を検出するためのものであって、ヤーンクリアラ15の検出部の部分を通過する糸4の太さを適宜のセンサで検出し、このセンサからの信号を分析することで、糸欠陥を検出する。ヤーンクリアラ15には、糸欠陥を検出したときに直ちに糸4を切断するためのカッター16が設けられている。
【0031】
糸継装置14の糸4の下流側と上流側には、給糸ボビン3側の下糸4Lを吸引捕捉して糸継装置14へ案内する下糸吸引捕捉案内機構17と、パッケージ7側の上糸4Uを吸引捕捉して糸継装置14へ案内する上糸吸引捕捉案内機構20(第1吸引機構の一例)が設けられている。
【0032】
上糸吸引捕捉案内機構20は、パイプ状に構成されており、先端にサクションマウス22を備える。上糸吸引捕捉案内機構20は、サクションマウス22から延びるパイプ20aと、パイプ20aを回動自在に支持する軸21と、パイプ20aとシャッタ装置29とを連結する連結パイプ20bとから構成されている。
【0033】
下糸吸引捕捉案内機構17もパイプ状に構成されており、先端に空気取り入れ口19を備える。下糸吸引捕捉案内機構17は、軸18を中心に上下回動可能に設けられる中継パイプ17aと、この中継パイプ17aとダクト60とを連結する連結パイプとから構成されている。
【0034】
ワキシング装置24は、走行する糸4に対して適宜のワックスを塗布する装置である。クリーニングパイプ25は、走行する糸4に付着している異物を吸引して除去する装置である。クリーニングパイプ25の基端25bはシャッタ装置29に接続され、クリーニングパイプ25の先端には、吸引口25aが形成されている。クリーニングパイプ25の吸引口25aは、ワキシング装置24と綾振ドラム5との間で走行する糸4に近接する。
【0035】
以上に説明したように、巻取装置1は、上糸4Uを吸引捕捉して糸継装置14に案内する上糸吸引捕捉案内機構20(つまり、サクションマウス22)を第1吸引機構として備え、走行する糸4に付着している異物を吸引するヤーントラップとしてのクリーニングパイプ25を第2吸引機構として備えている。
【0036】
図1に示すように、繊維機械100は、ダクト60と、吸引源61と、を備えている。ダクト60は、列設される複数の巻取装置1の列設方向に沿って延びている。吸引源61は、ダクト60に連結され、ダクト60に負圧を発生させる。
【0037】
繊維機械100の各巻取装置1は、シャッタ装置29を備える。シャッタ装置29は、クリーニングパイプ25及び上糸吸引捕捉案内機構20と、吸引源61との間に設けられている。シャッタ装置29は、ダクト60に接続され、ダクト60を介して吸引源61に接続されている。シャッタ装置29は、連結パイプ20bにより上糸吸引捕捉案内機構20に接続されている。シャッタ装置29は、基端25bにおいてクリーニングパイプ25と接続されている。
【0038】
シャッタ装置29は、上糸吸引捕捉案内機構20とダクト60とを接続するか、クリーニングパイプ25とダクト60とを接続するかを切り替える。上糸吸引捕捉案内機構20とダクト60とが接続されているときには、吸引源61が、ダクト60を介して、上糸吸引捕捉案内機構20のサクションマウス22に空気の吸引力を発生させる。サクションマウス22に発生した吸引力により、上糸4Uをサクションマウス22に吸引して捕捉できる。
【0039】
一方、クリーニングパイプ25とダクト60とが接続されているときには、吸引源61が、ダクト60を介して、クリーニングパイプ25の吸引口25aに空気の吸引力を発生させる。吸引口25aに発生した吸引力により、糸4から異物を吸引除去できる。また、吸引口25aは、綾振ドラム5とヤーンクリアラ15の間で発生した糸屑を吸引除去することができる。
【0040】
(2)シャッタ装置の構成
次に、
図2を用いて、シャッタ装置29の構成を説明する。
図2は、シャッタ装置29の平面図である。シャッタ装置29は、ベース部材29aと、カバー部材29bと、シャッタ部材29cと、を有する。
【0041】
(2-1)ベース部材
ベース部材29aは、シャッタ部材29cを配置するための部材である。ベース部材29aは、樹脂材料で形成されている。以下、
図2及び
図3を用いて、ベース部材29aを説明する。
図3は、ベース部材29aの平面図である。ベース部材29aは、第1開口291と、第2開口292と、複数の固定部293a~293eと、突出部294と、除電部材295と、を有する。
【0042】
第1開口291と第2開口292は、ベース部材29aを貫通する開口である。ベース部材29aの背面側(ベース部材29aのカバー部材29bが配置される側とは反対側)には接続部296が設けられ、第1開口291と第2開口292は、接続部296の一端部と接続されている。接続部296の他端部には、例えば、ゴムなどの弾性部材が設けられている。この弾性部材がダクト60に接続されることで、接続部296の他端部は、ダクト60に接続される。すなわち、第1開口291と第2開口292は、接続部296、ダクト60を介して、吸引源61に接続されている。
【0043】
第1開口291と第2開口292は、ベース部材29aにおいて互いに離れた位置に形成されている。例えば、第1開口291をベース部材29aの上部に設けることができ、第2開口292をベース部材29aの下部に設けることができる。このように、第1開口291と第2開口292とを互いに離して配置することで、一方の開口による吸引力が、他の開口に及ぶことを抑制できる。
【0044】
複数の固定部293a~293eは、ベース部材29aにカバー部材29bを固定する。複数の固定部293a~293eのうち、固定部293c~293eは、カバー部材29bの縁部305をベース部材29aとの間に挟み込むことで、カバー部材29bを固定する。固定部293c~293eは、カバー部材29bを境界部分から離れた位置で固定する。
【0045】
一方、
図2に示すように、固定部293a(第1固定部材の一例)は、ベース部材29aに配置されたカバー部材29bの第1端部301c(第1境界部分)に近い箇所に配置されており、カバー部材29bの縁部305の第1端部301cに近い部分(爪部305a)をベース部材29aに押しつけて固定する。固定部293aの爪部305aに対向する面には凸部が設けられており、爪部305aに設けられた凸部とともに、カバー部材29bがベース部材29aに対して移動することを防止している。固定部293aは、ベース部材29aの背面側からベース部材29aにネジで固定されており、ネジの締め付け力を調整することで、固定部293aがカバー部材29bの縁部305を押しつける力を調整可能となっている。固定部293aは、例えば、スナップ形式の固定部材ある。
【0046】
また、固定部293b(第2固定部材の一例)は、ベース部材29aに配置されたカバー部材29bの第2境界部分に近い箇所に配置されており、カバー部材29bの縁部305の第2境界部分に近い部分(爪部305b)をベース部材29aに押しつけて固定する。固定部293bの爪部305bに対向する面には凸部が設けられており、爪部305bに設けられた凸部とともに、カバー部材29bがベース部材29aに対して移動することを防止している。固定部293aは、ベース部材29aの背面側からベース部材29aにネジで固定されており、ネジの締め付け力を調整することで、固定部293bがカバー部材29bの縁部305を押しつける力を調整可能となっている。固定部293bは、例えば、スナップ形式の固定部材である。
【0047】
後述するように、カバー部材29bの第1端部301cと第2端部302bは、それぞれ、第1境界部分と第2境界部分を形成する。第1境界部分と第2境界部分には、シャッタ部材29cが移動可能となるよう、シャッタ部材29cの厚みに相当する大きさの隙間が形成される。また、第1境界部分と第2境界部分は、第1空間S1及び第2空間S2と外部空間との境界であるので、これら境界部分の隙間は、この隙間からの空気等の流入を抑制するために、最小限とすることが好ましい。
【0048】
従って、カバー部材29bの第1境界部分に近い縁部305(爪部305a)を固定部293aによりベース部材29aに固定し、カバー部材29bの第2境界部分に近い縁部305(爪部305b)を固定部293bによりベース部材29aに固定することで、カバー部材29bをベース部材29aに確実に固定しつつ、第1境界部分及び第2境界部分の隙間を最小限とできる。この結果、第1境界部分及び第2境界部分の隙間から、第1空間S1及び第2空間S2への空気等の流入を抑制できる。
【0049】
突出部294は、ベース部材29aから突出した凸部である。シャッタ部材29cが第2開口292の方向に移動(回転)したときに、シャッタ部材29cが突出部294に当接する。シャッタ装置29では、シャッタ部材29cが突出部294に当接した状態から、シャッタ部材29cを逆方向に所定量回転させた位置を原点としている。すなわち、突出部294は、シャッタ部材29cの原点位置を決定するためのものである。
【0050】
なお、シャッタ部材29cが原点にあるときに、第1開口291は全開となっており、第2開口292はシャッタ部材29cにより全閉となっている。
【0051】
突出部294は、基部から先端に行くほど細くなる略円錐台形状を有している。これにより、突出部294に風綿などの異物が巻き付きにくくなっている。
【0052】
除電部材295は、ベース部材29aの背面側に固定された導電性を有する部材である。除電部材295は、例えば、金属材料(例えば、銅)で形成されている。除電部材295は、接地されている。これにより、一部部材が樹脂材料で形成されたシャッタ装置29への帯電を防止できる。
【0053】
(2-2)カバー部材
カバー部材29bは、ベース部材29aに配置され、第1空間S1と第2空間S2とを形成する部材である。カバー部材29bは、樹脂材料で形成されている。カバー部材29bを樹脂材料で形成することで、カバー部材29bの設計自由度を向上できる。すなわち、複雑な形状のカバー部材29bを製造できる。
【0054】
以下、
図2及び
図4を用いて、カバー部材29bを説明する。
図4は、カバー部材29bの平面図である。カバー部材29bは、第1空間形成部301と、第2空間形成部302と、縁部305と、を有する。
【0055】
第1空間形成部301は、ベース部材29aと接触する縁部305から突出して形成され、カバー部材29bがベース部材29aに配置されたときに、ベース部材29aの第1開口291を覆い、吸引源61に第1開口291を経由して接続される第1空間S1を形成する。第1空間形成部301は、扇形を有している。第1空間形成部301は、扇形の外周に相当する外周部分301aと、扇形の内周に相当する内周部分301bと、扇形の半径部分に相当する第1端部301cと、を有する。外周部分301aは、縁部305から僅かに突出している。一方、内周部分301bは、縁部305から大きく突出しており、外周部分301aよりも上にある。
【0056】
カバー部材29bがベース部材29aに配置されたとき、外周部分301aは、
図5に示すように、ベース部材29aとの間で空間(外周空間S11と呼ぶ)を形成する。外周空間S11は、シャッタ部材29cの外周部分が移動するための空間である。外周空間S11の隙間は小さく、シャッタ部材29cの厚みに相当する大きさを有している。
図5は、
図2に示すシャッタ装置29のVI-VI断面図である。
【0057】
このように、外周空間S11の隙間をシャッタ部材29cの厚みに相当する大きさとすることにより、外周空間S11をシャッタ部材29cの外周部分が移動可能となるとともに、第1空間S1(後述する拡大空間S12)に流入した異物が外周空間S11に流入しにくくなる。この結果、シャッタ部材29cの外周部分に異物(例えば、風綿)が巻き付くことを防止できる。
【0058】
一方、
図5に示すように、カバー部材29bがベース部材29aに配置されたとき、内周部分301bは、ベース部材29aとの間で大きな空間(拡大空間S12と呼ぶ)を形成する。拡大空間S12により形成される隙間は、上記の外周空間S11により形成される隙間よりも大きくなっている。
【0059】
このように、第1空間S1に外周空間S11よりも大きい拡大空間S12を設けることにより、第1空間S1に異物が流入しても、拡大空間S12の容積が大きく十分な量の異物を保持できるので、異物の堆積によってシャッタ部材29cが移動しなくなることを抑制できる。また、拡大空間S12に存在する異物を、第1開口291にて吸引除去することもできる。
【0060】
第1端部301cは、扇形の第1空間形成部301の半径部分に相当する端部である。カバー部材29bがベース部材29aに配置されるとき、第1端部301cは、ベース部材29aとの間に、第1空間S1と外部空間との境界部分である第1境界部分を形成する。第1境界部分は、シャッタ部材29cの厚さに相当する隙間を有する。シャッタ部材29cは、第1境界部分を移動して、第1空間S1に侵入する。第1境界部分の隙間を、シャッタ部材の厚みに相当する大きさとすることにより、シャッタ部材29cが第1境界部分を移動可能としつつ、外部から第1境界部分を介して第1空間S1へ異物が流入することを抑制できる。
【0061】
第1空間形成部301には、第3開口303が形成される。第3開口303は、第1空間S1と接続されるとともに、連結パイプ20bに接続される。すなわち、第3開口303は、第1空間S1を上糸吸引捕捉案内機構20に接続する。この構成により、上糸吸引捕捉案内機構20は、第1空間S1を介して、第1開口291に接続される。すなわち、上糸吸引捕捉案内機構20は、第1開口291により吸引される。
【0062】
第2空間形成部302は、ベース部材29aと接触する縁部305から突出して形成される。第2空間形成部302は、第1空間形成部301とは分離して配置される。具体的には、第2空間形成部302は、カバー部材29bの中心を基準とした場合に、第1空間形成部301とは反対側に配置されている。第2空間形成部302は、空間形成部302aと、第2端部302bと、を有する。
【0063】
空間形成部302aは、カバー部材29bがベース部材29aに配置されたときに、ベース部材29aの第2開口292を覆い、吸引源61に第2開口292を経由して接続される第2空間S2を形成する。
図2に示すように、ベース部材29aに形成された突出部294は、第2空間S2に収容される。空間形成部302aは、第1空間形成部301よりも小さい扇形を有している。
【0064】
第2端部302bは、扇形の第2空間形成部302の半径部分に相当する端部である。カバー部材29bがベース部材29aに配置されるとき、第2端部302bは、ベース部材29aとの間に、第2空間S2と外部空間との境界部分である第2境界部分を形成する。第2境界部分は、シャッタ部材29cの厚みに相当する隙間を有する。シャッタ部材29cは、第2境界部分を移動して、第2空間S2に侵入する。第2境界部分の隙間を、シャッタ部材の厚みに相当する大きさとすることにより、シャッタ部材29cが第2境界部分を移動可能としつつ、外部から第1空間S1へ異物が流入することを抑制できる。
【0065】
空間形成部302aには、第4開口304が形成される。第4開口304は、第2空間S2と接続されるとともに、クリーニングパイプ25の基部に接続される。すなわち、第4開口304は、第2空間S2をクリーニングパイプ25に接続する。この構成により、クリーニングパイプ25は、第2空間S2を介して、第2開口292に接続される。すなわち、クリーニングパイプ25は、第2開口292により吸引される。
【0066】
上記のように、カバー部材29bでは、第1空間形成部301と第2空間形成部302とが分離して配置されている。これにより、第3開口303が接続される第1空間S1と、第4開口304が接続される第2空間S2と、を空間的に分離できる。第1空間S1と第2空間S2とが分離されることで、第3開口303及び第4開口304のうち一方に生じる空気の吸引力が、他方に及ぶことを抑制できる。すなわち、上糸吸引捕捉案内機構20の空気の吸引力が、クリーニングパイプ25に及ぶこと、クリーニングパイプ25の空気の吸引力が、上糸吸引捕捉案内機構20に及ぶことを抑制できる。
【0067】
縁部305は、カバー部材29bの外縁部分に相当する。カバー部材29bがベース部材29aに配置されたとき、縁部305は、ベース部材29aと当接する。縁部305は、複数の爪部305a~305dを有する。
【0068】
爪部305aは、カバー部材29bをベース部材29aに配置したときに、ベース部材29aと固定部293aとの間に配置される。固定部293aが、爪部305aをベース部材29aに押しつける。これにより、第1境界部分の近傍においてカバー部材29bがベース部材29aに固定される。爪部305bは、カバー部材29bをベース部材29aに配置したときに、ベース部材29aと固定部293bとの間に配置される。固定部293bが、爪部305bをベース部材29aに押しつける。これにより、第2境界部分の近傍においてカバー部材29bがベース部材29aに固定される。
【0069】
爪部305cは、カバー部材29bをベース部材29aに配置したときに、ベース部材29aと固定部293cとの間に挿入される。爪部305cがベース部材29aと固定部293cとの間に挿入されることで、第1空間形成部301の第1境界部分から離れた位置において、カバー部材29bがベース部材29aに固定される。
【0070】
爪部305dは、カバー部材29bをベース部材29aに配置したときに、ベース部材29aと固定部293eとの間に挿入される。爪部305dがベース部材29aと固定部293cとの間に挿入されることで、第2空間形成部302の第2境界部分(第2端部302b)から離れた位置において、カバー部材29bがベース部材29aに固定される。
【0071】
図2及び
図4に示すように、第1境界部分に形成される隙間、及び、第2境界部分に形成される隙間、シール部材29dが配置されている。
【0072】
具体的には、シール部材29dは、第1境界部分を形成する第1空間形成部301の第1端部301c、及び、第2境界部分を形成する第2空間形成部302の第2端部302bのベース部材29aと対向する面に固定される。シール部材29dとしては、例えば、摺動性の高いフェルト材を用いることができる。この場合、シール部材29dは、フェルト材を切断等することで、第1端部301c及び第2端部302bの形状にすることで形成できる。フェルト材は、摺動性が高いので、シール部材29dとしてフェルト材を用いることで、第1空間と第2空間とをより確実に分離できるとともに、シャッタ部材29cの移動をスムーズに行うことができる。
【0073】
その他、シール部材29dとしては、例えば、密封性に優れたゴム材を用いることができる。シール部材29dにゴム材を用いることで、第1空間S1及び第2空間S2をより確実に外部から分離できる。
【0074】
第1境界部分及び第2境界部分の隙間にシール部材29dを配置することにより、第1境界部分の隙間、及び、第2境界部分の隙間を、シール部材29dで塞ぐことができる。この結果、第1空間形成部301により形成される第1空間S1と、第2空間形成部302により形成される第2空間S2と、をより確実に分離できる。それとともに、第1空間S1及び第2空間S2に外部から空気及び異物が流入することを抑制できる。
【0075】
第1空間S1及び第2空間S2に外部から空気が流入することを抑制できれば、第1空間S1及び第2空間S2を吸引する際の吸引源61の電力を少なくできるので、繊維機械100の省エネルギーを実現できる。
【0076】
(2-3)シャッタ部材
シャッタ部材29cは、ベース部材29aとカバー部材29bとの間に配置され、第1開口291と第2開口292との間を移動して、第1開口291を閉じるか、又は、第2開口292を閉じる。シャッタ部材29cが第1開口291を閉じるときに、第2開口292は開いており、吸引源61がクリーニングパイプ25に空気の吸引力を発生させる。シャッタ部材29cが第2開口292を閉じるときに、第1開口291は開いており、吸引源61が上糸吸引捕捉案内機構20に空気の吸引力を発生させる。
【0077】
以下、
図2及び
図6を用いて、シャッタ部材29cの構成を説明する。
図6は、ベース部材29aに配置されたシャッタ部材29cを示す図である。シャッタ部材29cは、大きな半円形の部分と、小さな扇形の部分と、が合体した板状部材である。シャッタ部材29cは、回転軸A1周りに回動可能なように、ベース部材29aに取り付けられる。シャッタ部材29cは、ベース部材29aに取り付けられたモータ29eによって、回転軸A1周りに回転する。モータ29eは、例えば、ステッピングモータである。
【0078】
シャッタ部材29cが第1方向D1(
図6では時計回り)に回転してシャッタ部材29cが原点位置に到達すると、第1開口291が全開となる一方、第2開口292が全閉となる。
【0079】
一方、
図7に示すように、シャッタ部材29cが原点位置にある状態から、第2方向D2(
図7では反時計回り)に所定量回転すると、第1開口291が全閉となる一方、第2開口292が全開となる。
図7は、シャッタ部材29cが第1開口291を全閉とし第2開口292を全開とした状態を示す図である。
【0080】
図8に示すように、シャッタ部材29cが原点位置にある状態から、第2方向D2にさらに所定量回転すると、第1開口291と第2開口292とを両方全閉とできる。巻取装置1の停止時には、シャッタ部材29cは、この位置(第1開口291と第2開口292とを両方全閉とする位置)で停止する。これにより、不要な吸引を第1開口291及び第2開口292に発生させることを防止して、吸引源61において電力が無駄に消費されることを防止できる。この結果、繊維機械100の省エネを実現できる。
図8は、シャッタ部材29cが第1開口291と第2開口292の両方を全閉とした状態を示す図である。
【0081】
このように、シャッタ部材29cの原点位置からの回転量を調整することで、第1開口291及び第2開口292の開度を任意に調整できる。
【0082】
シャッタ部材29cの原点は、例えば、以下のようにして決定できる。まず、モータ29eにより、シャッタ部材29cを第1方向D1に回転させてシャッタ部材29cを突出部294に当接させる。シャッタ部材29cを突出部294に当接後、モータ29eをさらに第1方向D1に回転させるような制御(脱調)を行う。その後、モータ29eを逆方向に回転させてシャッタ部材29cを第2方向D2に回転させて、第1開口291が全開となり第2開口292が全閉となっている位置を、シャッタ部材29cの原点として決定する。
【0083】
2.他の実施形態
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。特に、本明細書に書かれた複数の実施形態及び変形例は必要に応じて任意に組み合せ可能である。
上記のシャッタ装置29は、巻取装置1を有する繊維機械100以外の繊維機械対しても適用できる。例えば、紡績装置を有する繊維機械に対しても適用できる。
【0084】
3.実施形態の特徴
上記実施形態は、下記のようにも説明できる。
(1)繊維機械(例えば、繊維機械100)は、糸(例えば、糸4)を巻き取ってパッケージ(例えば、パッケージ7)を形成する装置(例えば、巻取装置1)を有する。繊維機械は、第1吸引機構(例えば、上糸吸引捕捉案内機構20)と、第2吸引機構(例えば、クリーニングパイプ25)と、吸引源(例えば、吸引源61)と、シャッタ装置(例えば、シャッタ装置29)と、を備える。第1吸引機構は、空気を吸引することにより、切れた糸を捕捉する。第2吸引機構は、空気を吸引することにより、糸の清掃を行う。吸引源は、第1吸引機構と第2吸引機構に対し空気の吸引力を発生させる。シャッタ装置は、第1吸引機構及び第2吸引機構と吸引源との間に設けられ、第1吸引機構と吸引源とを接続するか、第2吸引機構と吸引源とを接続するかを切り替える。
【0085】
シャッタ装置は、ベース部材(例えば、ベース部材29a)と、カバー部材(例えば、カバー部材29b)と、シャッタ部材(例えば、シャッタ部材29c)と、を有する。ベース部材は、第1開口(例えば、第1開口291)と第2開口(例えば、第2開口292)とを有する。カバー部材は、第1空間形成部(例えば、第1空間形成部301)と、第2空間形成部(例えば、第2空間形成部302)と、を有する。第1空間形成部は、吸引源に第1開口を経由して接続されている第1空間(例えば、第1空間S1)を、ベース部材とともに形成する。第2空間形成部は、吸引源に第2開口を経由して接続されている第2空間(例えば、第2空間S2)を、ベース部材とともに形成する。シャッタ部材は、ベース部材とカバー部材との間に配置され、第1開口と第2開口との間を移動することで、第1開口を閉じるか、又は、第2開口を閉じる。第1空間形成部は、第1空間を第1吸引機構に接続する第3開口(例えば、第3開口303)を有する。第2空間形成部は、第2空間を第2吸引機構に接続する第4開口(例えば、第4開口304)を有する。
【0086】
上記の繊維機械において、第1空間と第2空間は分離して配置されている。また、第1空間形成部とベース部材との間、かつ、第1空間と外部空間との境界である第1境界部分、及び、第2空間形成部とベース部材との間、かつ、第2空間と外部空間との境界である第2境界部分には、シャッタ部材が移動するための隙間が形成される。また、この隙間には、シール部材(例えば、シール部材29d)が配置される。
【0087】
上記の繊維機械においては、ベース部材が第1開口と第2開口を有する。また、カバー部材が、吸引源に第1開口を経由して接続される第1空間を、ベース部材とともに形成する第1空間形成部と、吸引源に第2開口を経由して接続される第2空間を、ベース部材とともに形成する第2空間形成部と、を有する。さらに、第1空間形成部が、第1空間を第1吸引機構に接続する第3開口を有し、第2空間形成部が、第2空間を第2吸引機構に接続する第4開口を有している。また、第1空間と第2空間とが分離して配置されている。
【0088】
上記の繊維機械では、第1空間と第2空間とが分離して配置されることにより、第3開口が接続される第1空間と、第4開口が接続される第2空間と、を空間的に分離できる。この結果、第3開口及び第4開口のうち一方に生じる空気の吸引力が、他方に及ぶことを抑制できる。
【0089】
また、上記の繊維機械では、第1空間形成部とベース部材との間であり、かつ、第1空間と外部空間との境界である第1境界部分、及び、第2空間形成部とベース部材との間であり、かつ、第2空間と外部空間との境界である第2境界部分に、シャッタ部材が移動するための隙間が形成されている。さらに、この隙間には、シール部材が配置されている。これにより、第1空間と第2空間とをより確実に分離できるとともに、第1空間及び第2空間に外部から空気が流入することを抑制できる。この結果、繊維機械の省エネルギーを実現できる。
【0090】
(2)上記(1)の繊維機械において、第1空間は、外周空間(例えば、外周空間S11)を有してもよい。外周空間は、第1空間形成部の外周部分(例えば、外周部分301a)により形成され、シャッタ部材の外周部分が移動する隙間を有する空間である。この場合、外周空間の隙間は、シャッタ部材の厚みに相当する大きさを有してもよい。これにより、外部空間の隙間をシャッタ部材の外周部分が移動可能とするとともに、第1空間内に流入した異物がシャッタ部材の外周部分に巻き付きにくくなる。この結果、第1空間内に流入した異物によってシャッタ部材の移動が妨げられることを抑制できる。
【0091】
(3)上記(2)の繊維機械において、第1空間は、拡大空間(例えば、拡大空間S12)を有してもよい。拡大空間は、外周空間よりも大きな隙間を有する。これにより、第1空間に異物が流入しても、拡大空間が十分な量の異物を保持できるので、異物の堆積によってシャッタ部材が移動しなくなることを抑制できる。
【0092】
(4)上記(1)~(3)のいずれかの繊維機械において、第1境界部分の隙間は、シャッタ部材の厚みに相当する大きさを有してもよい。これにより、シャッタ部材が第1境界部分を移動可能としつつ、外部から第1空間へ異物が流入することを抑制できる。
【0093】
(5)上記(1)~(4)のいずれかの繊維機械において、カバー部材は、樹脂により形成されていてもよい。これにより、カバー部材の設計自由度を向上できる。
【0094】
(6)上記(1)~(5)のいずれかの繊維機械において、ベース部材には、電気的に接地された除電部材(例えば、除電部材295)が設けられてもよい。これにより、シャッタ装置の帯電を防止できる。
【0095】
(7)上記(1)~(6)のいずれかの繊維機械において、ベース部材は、第1固定部材(例えば、固定部293a)と、第2固定部材(例えば、固定部293b)と、を有してもよい。第1固定部材は、カバー部材の第1境界部分に近い部分をベース部材に押しつけて固定する。第2固定部材は、カバー部材の第2境界部分に近い部分をベース部材に押しつけて固定する。これにより、カバー部材をベース部材に確実に固定しつつ、第1境界部分及び第2境界部分の隙間を最小限とできる。この結果、第1境界部分及び第2境界部分の隙間から、第1空間及び第2空間への空気等の流入を抑制できる。
【0096】
(8)上記(1)~(7)のいずれかの繊維機械において、シール部材は、フォルト材により構成されてもよい。フェルト材は、摺動性が高いので、第1空間と第2空間とをより確実に分離できるとともに、シャッタ部材の移動をスムーズに行うことができる。
【0097】
(9)上記(1)~(8)のいずれかの繊維機械において、第2空間には、ベース部材から突出し、シャッタ部材の原点を決定するための突出部(例えば、突出部294)が設けられてもよい。これにより、シャッタ部材の原点を確実に決定できる。
【0098】
(10)上記(9)の繊維機械において、突出部は、先端ほど細くなる円錐台形状を有してもよい。これにより、第2空間に流入した異物が巻き付くことを防止できる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、繊維機械に広く適用できる。
【符号の説明】
【0100】
100 :繊維機械
1 :巻取装置
3 :給糸ボビン
4 :糸
4L :下糸
4U :上糸
5 :綾振ドラム
6 :巻取管
7 :パッケージ
8 :クレードル
9 :綾振溝
10 :回動軸
14 :糸継装置
15 :ヤーンクリアラ
16 :カッター
17 :下糸吸引捕捉案内機構
17a :中継パイプ
18 :軸
19 :空気取り入れ口
20 :上糸吸引捕捉案内機構
20a :パイプ
20b :連結パイプ
21 :軸
22 :サクションマウス
24 :ワキシング装置
25 :クリーニングパイプ
25a :吸引口
25b :基端
29 :シャッタ装置
29a :ベース部材
291 :第1開口
292 :第2開口
293a~293e :固定部
294 :突出部
295 :除電部材
296 :接続部
29b :カバー部材
301 :第1空間形成部
301a :外周部分
301b :内周部分
301c :第1端部
S1 :第1空間
S11 :外周空間
S12 :拡大空間
302 :第2空間形成部
302a :空間形成部
302b :第2端部
S2 :第2空間
303 :第3開口
304 :第4開口
305 :縁部
305a~305d :爪部
29c :シャッタ部材
29d :シール部材
29e :モータ
A1 :回転軸
60 :ダクト
61 :吸引源