(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173195
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】可動盤の支持機構とこれを備えた射出成形機
(51)【国際特許分類】
B29C 45/64 20060101AFI20241205BHJP
B29C 45/03 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B29C45/64
B29C45/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091436
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004215
【氏名又は名称】株式会社日本製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100123788
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 昭夫
(74)【代理人】
【識別番号】100127454
【弁理士】
【氏名又は名称】緒方 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】堀本 優也
【テーマコード(参考)】
4F202
4F206
【Fターム(参考)】
4F202AM24
4F202AP06
4F202CA11
4F202CB01
4F202CL01
4F202CL22
4F202CL32
4F202CL41
4F202CL50
4F206AM24
4F206AP06
4F206JA07
4F206JL03
4F206JP30
4F206JQ02
4F206JQ06
4F206JQ82
4F206JQ90
(57)【要約】
【課題】単純な構造で可動盤の高さを連続的に調整する。
【解決手段】可動盤24の支持機構4は、貫通孔24Aを有し、可動盤24を支持する受台41と、中心軸C1と、中心軸C1と同軸の同軸部と、中心軸C1に対して偏心した偏心部42Bとを有し、同軸部が受台41の貫通孔24Aに挿入されたシャフト42と、シャフト42の偏心部42Bに回転可能に支持されたローラ43と、シャフト42の受台41に対する回転を防止する少なくとも一つのボルト45と、を有している。受台41とシャフト42は、受台41とシャフト42との間に少なくとも一つのボルト45の軸径より幅広で少なくとも一つのボルト45の頭部45Bより幅狭の環状溝58を形成し、受台41は、環状溝58の底部59に位置し少なくとも一つのボルト45と噛み合う少なくとも一つのネジ穴60を有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
貫通孔を有し、可動盤を支持する受台と、
中心軸と、前記中心軸と同軸の同軸部と、前記中心軸に対して偏心した偏心部とを有し、前記同軸部が前記受台の前記貫通孔に挿入されたシャフトと、
前記シャフトの前記偏心部に回転可能に支持されたローラと、
前記シャフトの前記受台に対する回転を防止する少なくとも一つのボルトと、を有し、
前記受台と前記シャフトは、前記受台と前記シャフトとの間に前記少なくとも一つのボルトの軸径より幅広で前記少なくとも一つのボルトの頭部より幅狭の環状溝を形成し、
前記受台は、前記環状溝の底部に位置し前記少なくとも一つのボルトと噛み合う少なくとも一つのネジ穴を有する、可動盤の支持機構。
【請求項2】
前記少なくとも一つのボルトは前記少なくとも一つのネジ穴のみと噛み合う、請求項1に記載の可動盤の支持機構。
【請求項3】
前記環状溝は、前記少なくとも一つのボルトの側面と対向する前記受台の一部と、前記少なくとも一つのボルトの前記側面と対向する前記シャフトの一部と、によって形成される、請求項1に記載の可動盤の支持機構。
【請求項4】
前記シャフトは、前記少なくとも一つのボルトの取付面から前記シャフトの軸方向に延び前記シャフトの径方向外側に張り出す環状凸部を有し、
前記受台は前記シャフトの径方向内側に張り出す環状凸部を有し、
前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトの前記環状凸部は前記受台の前記環状凸部と隣接している、請求項1に記載の可動盤の支持機構。
【請求項5】
前記偏心部と前記ローラとの間に位置する軸受を有する、請求項1に記載の可動盤の支持機構。
【請求項6】
前記少なくとも一つのボルトと前記少なくとも一つのネジ穴はそれぞれ複数設けられている、請求項1に記載の可動盤の支持機構。
【請求項7】
複数の前記ネジ穴は等間隔で配置されている、請求項6に記載の可動盤の支持機構。
【請求項8】
前記少なくとも一つのボルトの頭部と前記少なくとも一つのボルトの取付面との間に位置する座金を有する、請求項1に記載の可動盤の支持機構。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の可動盤の支持機構を備えた射出成形機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可動盤の支持機構とこれを備えた射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、可動型を支持する可動盤と固定型を支持する固定盤とを有している。可動盤は移動可能な支持機構に支持されている。通常は、複数の支持機構が可動盤の移動方向に設けられており、また、可動盤は固定盤に対して平行な位置関係を維持する必要がある。従って、支持機構は可動盤の高さを調整する機構を備えていることが多い。
【0003】
特許文献1には、ローラを支持する偏心ローラ軸と、偏心ローラ軸を支持する取付台と、を有する可動盤の支持機構が記載されている。取付台は偏心ローラ軸を支持する軸受部を備えている。ローラは偏心ローラ軸の偏心部で偏心ローラ軸に支持されている。偏心ローラ軸の先端に角軸が設けられ、円形のプレートが角軸に嵌められている。プレートは偏心ローラ軸と同心の6個の長孔を備えている。偏心ローラ軸をプレートとともに軸受部に対して回転させることで、取付台の高さ、すなわち可動盤の高さを調整することができる。取付台の高さの調整後、プレートの長孔を通して軸受部にボルトをねじ込み、プレートで偏心ローラ軸と取付台を押しつけることで、偏心ローラ軸を取付台に固定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された可動盤の支持機構は、偏心ローラ軸の回転角度を調整し偏心ローラ軸を取付台に固定するためにプレートや角軸が必要であり、構造が複雑である。また、偏心ローラ軸の回転角度範囲が長孔間の接続部で分断されるため、可動盤の高さを連続的に調整することができない。本開示は、単純な構造で可動盤の高さを連続的に調整することができる可動盤の支持機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の可動盤の支持機構は、貫通孔を有し可動盤を支持する受台と、同軸部が受台の貫通孔に挿入され偏心部でローラを回転可能に支持するシャフトと、シャフトの受台に対する回転を防止するボルトと、を有している。受台とシャフトとの間にボルトの軸径より幅広でボルトの頭部より幅狭の環状溝が形成され、受台は、環状溝の底部にボルトと噛み合う少なくとも一つのネジ穴を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、単純な構造で可動盤の高さを連続的に調整することができる可動盤の支持機構を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る射出成形機の概略正面図である。
【
図6A】
図3の6A方向からみた可動盤の支持機構の側面図である。
【
図6B】
図3の6B-6B線に沿った断面図である。
【
図6C】
図3の6C-6C線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<全体構成>
図面を参照して、本発明の可動盤の支持機構とこれを備えた射出成形機の実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係る射出成形機1の概略正面図を示している。射出成形機1は、金型を型締めする型締装置2と、射出される材料を加熱溶融して射出する射出装置3と、から概略構成されている。以下の説明で、スクリュ33の移動方向、材料の射出方向あるいは可動盤24の移動方向をX方向という。X方向は水平方向と平行である。X方向と直交する水平方向をY方向、鉛直方向をZ方向という。X方向とY方向とZ方向は互いに直交している。
【0010】
<型締装置2>
型締装置2は、ベッド21上に固定された固定盤22と、ベッド21上をスライド可能な型締ハウジング23と、ベッド21上(より正確には後述するプレート29上)をスライド可能な可動盤24と、を備えている。固定盤22には固定金型M1が搭載され、可動盤24には可動金型M2が搭載される。固定盤22と型締ハウジング23は複数本のタイバー25によって連結されており、タイバー25は可動盤24に設けられた貫通孔24A(
図2参照)を貫通している。可動盤24と型締ハウジング23の間には、金型M1,M2を開閉するための型締機構26が設けられている。型締機構26は、トグル機構27と、トグル機構27を駆動する型締モータ28と、を有している。図示は省略するが、型締機構26は直圧式の型締機構、つまり油圧式の型締シリンダから構成してもよい。
【0011】
<射出装置3>
射出装置3は基台31上に設けられている 。射出装置3は、シリンダ32と、シリンダ32に収容されたスクリュ33と、スクリュ33を駆動する駆動機構34と、を備えている。スクリュ33は駆動機構34によって回転駆動されるとともにX方向に駆動される。駆動機構34はカバー35で覆われている。シリンダ32の材料の射出方向に関する後端部近傍に、射出される材料を供給するホッパ36が設けられている。
【0012】
シリンダ32の材料の射出方向に関する先端には、固定金型M1に突き当たって、固定金型M1と可動金型M2とで形成されるキャビティ(図示せず)に射出材料を供給する射出ノズル37が設けられている。射出装置3はノズルタッチ装置38を備えている。ノズルタッチ装置38は射出装置3を前進させ、それによって射出ノズル37が固定金型M1のスプルーブッシュM3にタッチする。ノズルタッチ装置38は駆動機構34と固定盤22とを連結している。
【0013】
<可動盤24の支持機構の構成>
図2は
図1のA部の拡大図であり、可動盤24の一部と可動盤24の支持機構(以下、支持機構4という場合がある)の概略正面図を示している。
図3は
図2の3-3線に沿った支持機構4の側方断面図である。
図4は、支持機構4の受台41の部分斜視図である。
図3,4では射出成形機1のY方向内側からY方向外側を向く方向を+Y、射出成形機1のY方向外側からY方向内側を向く方向を-Yで示している。
【0014】
射出成形機1は可動盤24の支持機構4を備えている。支持機構4は可動盤24のY方向両側にそれぞれ設けられている(
図1,2では片方のみ図示)が、同じ構成であるので一方の支持機構4について説明する。各支持機構4は、X方向に配列した2つの金属製のローラ43を有している。ローラ43が走行するための走行面を備えた金属製のプレート29がベッド21の上に設けられている。走行面は平坦な水平面である。
【0015】
可動盤24の支持機構4は、可動盤24を支持する受台41を有している。
図3,4に示すように、受台41は本体部47と、Y方向外側の外側支持プレート48と、Y方向内側の内側支持プレート49と、を有している。
図2に示すように、受台41のZ方向上面は可動盤24の支持面50となっており、支持面50に可動盤24が支持されている。可動盤24は受台41の中央部の貫通孔に挿入された複数のボルト51によって受台41に固定されている。
【0016】
図4に示すように、外側支持プレート48と内側支持プレート49は本体部47からX方向に突き出し、Y方向に並列している。外側支持プレート48と内側支持プレート49は同じ形状と寸法を有している。
図4は受台41の一部を示しており、
図2から分かるように受台41のX方向反対側にも同様に構成された外側支持プレート48と内側支持プレート49が設けられている。外側支持プレート48はシャフト42を受ける外側貫通孔52を有し、内側支持プレート49はシャフト42を受ける内側貫通孔53を有している。後述するようにシャフト42は受台41に対する回転をボルト45で拘束されているが、ボルト45が取り付けられていない状態では受台41に対して回転することができる。
【0017】
シャフト42はローラ43を支持するために設けられている。シャフト42は中心軸C1を有する棒状の金属部材である。ローラ43は中心軸C1と同軸の外側同軸部42A及び内側同軸部42Cと、外側同軸部42Aと内側同軸部42Cとの間に位置し、中心軸C1に対して偏心した偏心軸C2を中心とする偏心部42Bと、を有している。中心軸C1と偏心軸C2は平行である。外側同軸部42Aと内側同軸部42Cと偏心部42Bの中心軸C1と直交する断面は全て円形である。外側同軸部42Aは外側支持プレート48の外側貫通孔52に挿入され、内側同軸部42Cは内側支持プレート49の内側貫通孔53に挿入されている。外側同軸部42Aの直径D1は偏心部42Bの直径D2より大きく、偏心部42Bの直径D2は内側同軸部42Cの直径D3より大きい。
【0018】
図3に示すように、内側支持プレート49の内側貫通孔53のY方向外側(+Y方向側)に切欠き54が設けられ、切欠き54に位置決めリング55が嵌められている。偏心部42Bには軸受44が支持され、位置決めリング55は軸受44のY方向内側(-Y方向側)の側面44Aに押し当てられている。軸受44のY方向外側(+Y方向側)の側面44Bはシャフト42の外側同軸部42Aと偏心部42Bとの間の段差に押し当てられている。以上の構成によって軸受44及びローラ43がシャフト42に対してX方向に位置決めされる。
【0019】
軸受44は偏心部42Bとローラ43との間に位置し、ローラ43は軸受44を介してシャフト42の偏心部42Bに回転可能に支持されている。本実施形態では4つのボールベアリングが設けられ、4つのボールベアリングがローラ43の内側面に設けられた環状突起43Aによって2つの組に分けられているが、軸受44の構成は何ら限定されない。ボールベアリングを省略して、シャフト42とローラ43との間の滑りによって軸受44を構成してもよい。
【0020】
<可動盤24の高さ調整方法>
射出成形機1の組立後に、可動盤24と固定盤22の平行度、及びタイバー25の水平度(平行度)を調整することが一般的である。可動盤24の高さ調整は、主に可動盤24と固定盤22の平行度を調整するために行う。タイバー25の水平度(平行度)調整は型締ハウジング23の高さを調整することによって行う。但し、タイバー25の水平度を調整する際、タイバー25が可動盤24の貫通孔24Aと干渉しないよう、可動盤24の高さを調整する必要がある。型締ハウジング23の高さ調整はくさび(図示せず)によって行うため、可動盤24とは高さの調整方法が異なる。
【0021】
図5を参照して可動盤24の高さの調整方法を説明する。
図5は
図3の5-5線に沿った断面図であり、左図と右図ではシャフト42の回転角度位置が異なっている。説明の便宜上、
図5では
図3と比べて偏心部42Bの偏心軸C2とシャフト42の中心軸C1とのずれ量を誇張して示している。ボルト45が受台41に取り付けられていない状態でシャフト42を受台41に対して回転させる。
図3の下側にはボルト45を外した状態を示している。
図2及び
図6A~6Cに示すように、シャフト42の+Y方向の端面56には2つの穴57が形成されており、これらの穴57に治具を挿入し治具を回すことで、シャフト42を容易に回転させることができる。
【0022】
図5に示すように、ローラ43はプレート29に着座しているため、偏心部42Bの偏心軸C2とプレート29とのZ方向距離H1は一定である。偏心部42Bの偏心軸C2はシャフト42の中心軸C1からずれているため、シャフト42の回転に伴い、シャフト42の中心軸C1は偏心部42Bの偏心軸C2の周りを回転する。
【0023】
図5の左図では、シャフト42の中心軸C1が偏心部42Bの偏心軸C2に対して最も低い位置にあり、
図5の右図では、シャフト42の中心軸C1が偏心部42Bの偏心軸C2に対して最も高い位置にある。シャフト42の中心軸C1と可動盤24の支持面50とのZ方向距離H2は一定であるため、
図5の左図では可動盤24は最も低い位置に調整され、
図5の右図では可動盤24は最も高い位置に調整される。可動盤24の高さの調整幅S2はシャフト42の中心軸C1と偏心部42Bの偏心軸C2とのずれ量S1の2倍に等しい。
【0024】
<シャフト42の受台41に対する回転の防止機構>
可動盤24の高さを調整した後にシャフト42が受台41に対して回転すると可動盤24の高さが変化するため、可動盤24の高さを調整した後にシャフト42の受台41に対する回転を防止することが望ましい。シャフト42の受台41に対する回転を防止するために、少なくとも一つの(本実施形態では複数の)ボルト45が設けられている。複数のボルト45の軸径(ボルト45のネジが切られた部分の直径)や長さ、ボルト45の頭部45Bの最大径D1(
図6A参照)は全て同じである。
【0025】
図6Aは
図3の6A方向からみた可動盤24の支持機構4の側面図、
図6Bは
図3の6B-6B線に沿った断面図、
図6Cは
図3の6C-6C線に沿った断面図である。以下、
図3,4,
図6A~6Cを参照して、シャフト42の回転防止機構について説明する。
図3,
図6A,6Bに示すように、受台41とシャフト42は、受台41とシャフト42との間に環状溝58を形成している。
図3の下側には環状溝58の断面を示すため、ボルト45を外した状態を示している。環状溝58はシャフト42の中心軸C1と同軸であり、内周壁58Bと外周壁58Cは共に円形であり、周方向に同一の幅Wを有している。環状溝58の幅Wは環状溝58の深さ方向(Y方向)に一定であるが、異なっていてもよい。環状溝58は、ボルト45の側面45A(
図3参照)と対向する受台41の一部と、ボルト45の側面45Aと対向するシャフト42の一部と、によって形成されている。
【0026】
図3,4、
図6Cを参照すると、受台41は、環状溝58の底部59に位置し少なくとも一つの(本実施形態では複数の)ボルト45と噛み合う少なくとも一つの(本実施形態では複数の)ネジ穴60を有している。ボルト45の数とネジ穴60の数は同じである。
図6Bに示すように、環状溝58の幅Wは少なくとも一つのボルト45の(本実施形態では複数の)軸径dより広く(W>d)、ネジ穴60は環状溝58の中心線58A(
図6B参照)に沿って配列されている。従って、各ボルト45は対応する一つのネジ穴60のみと噛み合い、ボルト45が環状溝58の内周壁58B及び外周壁58Cと干渉することが防止される。ボルト45が環状溝58の内周壁58B及び外周壁58Cと接しない限り、ネジ穴60は環状溝58の中心線58Aからずれていてもよい。
【0027】
可動盤24の高さを調整した後、ボルト45を環状溝58に挿入しネジ穴60にねじ込む。
図3に示すように、シャフト42の端面56と受台41の側面61がボルト45の取付面62となっている。環状溝58の幅Wはボルト45の頭部45Bの最大径D1より幅狭で(W<D1)、ボルト45の軸方向からみてボルト45の頭部45Bはシャフト42の端面56と受台41の側面61の両者と接する大きさを有している。
【0028】
ボルト45の頭部45Bと取付面62との間に座金46が設けられており、座金46の最大径D2はボルト45の頭部45Bの最大径D1より大きい(D2>D1)。従って、座金46はシャフト42の端面56と受台41の側面61の両者と接する大きさを有している。すなわち、ボルト45をねじ込むことによって座金46とシャフト42の端面56及び受台41の側面61との間に静摩擦力が発生し、この静摩擦力によって、シャフト42の受台41に対する回転が防止される。なお、座金46は、押し付け力を均等に掛けるために設けることが好ましいが、必須ではない。座金46を設けない場合も、ボルト45の頭部45Bがシャフト42の端面56及び受台41の側面61と接するため、シャフト42の受台41に対する回転が防止される。
【0029】
ボルト45とネジ穴60はそれぞれ複数設けられている。本実施形態では6つのボルト45と6つのネジ穴60が設けられている。6つのネジ穴60は等間隔(60°間隔)で配置されている。これによって、シャフト42の端面56と受台41の側面61に均等に摩擦力を及ぼすことができる。ボルト45とネジ穴60の数はシャフト42の受台41に対する回転を防止するために必要な静摩擦力から決定することができる。
【0030】
ボルト45とネジ穴60の数を決定する際に、軸受44が固着したときにシャフト42が受台41に対して回転しないという条件を考慮することもできる。軸受44が固着するとローラ43は軸受44を介してシャフト42に回転トルクを与えるため、シャフト42が受台41に対して回転する可能性がある。射出成形機1の運転中にシャフト42が受台41に対して回転すると、可動盤24と固定盤22の平行度が悪化し成形品の品質に影響を与える可能性がある。
【0031】
ボルト45の静摩擦力によるシャフト42の抵抗モーメントを軸受44の固着によって生じるシャフト42の回転トルクより大きくすることができる。これによって、軸受44の固着時にも軸受44がシャフト42の周りを回転し(滑る)、または、ローラ43が軸受44に対して回転する。従って、シャフト42の受台41に対する回転を防止することができる。
【0032】
図3を参照すると、シャフト42は、シャフト42の径方向外側に張り出す環状凸部63を有している。シャフト42の環状凸部63は、少なくとも一つの(本実施形態では複数の)ボルト45の取付面62からシャフト42の軸方向(Y方向)に延びている。受台41はシャフト42の径方向内側に張り出す環状凸部64を有している。シャフト42の軸方向(Y方向)において、シャフト42の環状凸部64は受台41の環状凸部63と隣接している。シャフト42の環状凸部64と受台41の環状凸部63は接していてもよいし離れていてもよい。
【0033】
シャフト42が環状凸部63を備えない場合、ボルト45の頭部45Bと座金46がシャフト42を押し付けられるようにボルト45の軸径dを大きくする必要がある。受台41が環状凸部64を備えない場合、ボルト45の軸径dを増やすとネジ穴60と受台41の側面との距離Fが短くなりネジ穴60の付近の受台41の強度が不足する可能性がある。シャフト42と受台41にそれぞれ環状凸部63,64を設けることで、ボルト45の軸径dを抑えるとともにネジ穴60の付近の受台41の強度を確保することが容易となる。
【0034】
<本実施形態の効果>
第1の効果は、可動盤24の高さを連続的に調整できる点である。特許文献1に記載された調整機構は角度調整範囲が長孔間の接続部で分断されるため、360°連続して可動盤24の高さを調整することができない。本実施形態ではシャフト42を受台41に対して360°連続して回転できるため、高さの調整範囲が広く、調整精度を高めることも容易である。
【0035】
第2の効果は、可動盤24の支持機構4の構成が単純である点である。特許文献1に記載された支持機構は長孔が形成された円形プレートが必要であり、シャフトの先端には円形プレートを嵌めるための角軸が必要である。本実施形態はシャフト42と受台41の加工のみでボルト45が挿入される環状溝58を形成することができるため、構成が単純である。
【0036】
第3の効果は、可動盤24の高さの調整作業が容易である点である。一般に、調整作業は射出成形機1の組立工程の終了後に行う。
図7は比較例の支持機構104を示す
図3と同様の図である。ネジ穴60をシャフト42と受台41に跨るように形成し、このようにして形成したネジ穴60にボルト45をねじ込んである。この方法によっても、シャフト42の受台41に対する回転を防止することはできる。しかし、ネジ穴60の加工は手間がかかるだけでなく、ほぼ完成状態にある射出成形機1を切削屑で汚染する可能性がある。また、据付後の射出成形機1で可動盤24の高さを再調整する場合、現場で改めてネジ穴60の形成が必要となる。この様な作業は手間がかかるだけでなくシャフト42の外観を損なう可能性がある。本実施形態ではボルト45を外し治具でシャフト42を回して角度を再調整し、その後ボルト45を締め直すだけなので現場の作業も軽減される。
【0037】
(付記)本明細書は以下の開示を含む。
[構成1]
貫通孔を有し、可動盤を支持する受台と、
中心軸と、前記中心軸と同軸の同軸部と、前記中心軸に対して偏心した偏心部とを有し、前記同軸部が前記受台の前記貫通孔に挿入されたシャフトと、
前記シャフトの前記偏心部に回転可能に支持されたローラと、
前記シャフトの前記受台に対する回転を防止する少なくとも一つのボルトと、を有し、
前記受台と前記シャフトは、前記受台と前記シャフトとの間に前記少なくとも一つのボルトの軸径より幅広で前記少なくとも一つのボルトの頭部より幅狭の環状溝を形成し、
前記受台は、前記環状溝の底部に位置し前記少なくとも一つのボルトと噛み合う少なくとも一つのネジ穴を有する、可動盤の支持機構。
[構成2]
前記少なくとも一つのボルトは前記少なくとも一つのネジ穴のみと噛み合う、構成1に記載の可動盤の支持機構。
[構成3]
前記環状溝は、前記少なくとも一つのボルトの側面と対向する前記受台の一部と、前記少なくとも一つのボルトの前記側面と対向する前記シャフトの一部と、によって形成される、構成1または2に記載の可動盤の支持機構。
[構成4]
前記シャフトは、前記少なくとも一つのボルトの取付面から前記シャフトの軸方向に延び前記シャフトの径方向外側に張り出す環状凸部を有し、
前記受台は前記シャフトの径方向内側に張り出す環状凸部を有し、
前記シャフトの前記軸方向において、前記シャフトの前記環状凸部は前記受台の前記環状凸部と隣接している、構成1から3のいずれか1項に記載の可動盤の支持機構。
[構成5]
前記偏心部と前記ローラとの間に位置する軸受を有する、構成1から4のいずれか1項に記載の可動盤の支持機構。
[構成6]
前記少なくとも一つのボルトと前記少なくとも一つのネジ穴はそれぞれ複数設けられている、構成1から5のいずれか1項に記載の可動盤の支持機構。
[構成7]
複数の前記ネジ穴は等間隔で配置されている、構成6に記載の可動盤の支持機構。
[構成8]
前記少なくとも一つのボルトの頭部と前記少なくとも一つのボルトの取付面との間に位置する座金を有する、構成1から7のいずれか1項に記載の可動盤の支持機構。
[構成9]
構成1から8のいずれか1項に記載の可動盤の支持機構を備えた射出成形機。
【符号の説明】
【0038】
1 射出成形機
4 可動盤の支持機構
24 可動盤
41 受台
42 シャフト
42A 外側同軸部
42B 偏心部
42C 内側同軸部
43 ローラ
44 軸受
45 ボルト
45B ボルトの頭部
46 座金
52 外側貫通孔
53 内側貫通孔
58 環状溝
59 環状溝の底部
60 ネジ穴
63 シャフトの環状凸部
64 受台の環状凸部
C1 中心軸
C2 偏心軸