(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173200
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】アルコール・インターロック装置
(51)【国際特許分類】
B60K 28/06 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B60K28/06 B
【審査請求】有
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091444
(22)【出願日】2023-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】592239486
【氏名又は名称】ダイサン企画株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100073287
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 聞一
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直堂
【テーマコード(参考)】
3D037
【Fターム(参考)】
3D037FA03
3D037FB12
3D037FB14
(57)【要約】
【課題】運転者以外の未飲酒者の呼気が代用可能となる。
【解決手段】ハンドユニット1には、アルコールセンサ4、呼気音を検出するための音センサ5及び原動機の始動可否表示手段6が内蔵され、車両側の常時電源で稼働可能なメインユニット2は、アルコールセンサ4及び音センサ5から入力される電気信号により原動機の始動可否を判定するマイコン7と、「始動可」の判定でエンジンスイッチESの操作を有効な状態とする第1リレー8が内蔵され、「始動可」の判定でエンジンスイッチESの操作の所定時間内での不実行で第1リレー8を「OFF」とするタイマー機能が備わっていることで、座席に座った被検者が運転者とならなければ原動機を始動できない条件下で、人間特有の呼気音を判定条件とすることによって、被検者以外の呼気を利用出来ないため、運転者の呼気中のアルコール濃度を確実に検査することが出来る。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼気を吹き込むハンドユニットと、該ハンドユニットから入力された電気信号に基づき原動機の始動可否を判定し表示すると共に始動可の判定で前記原動機のエンジンスイッチの操作を有効にするメインユニットと、該メインユニットを車両側の常時電源で稼働可能とするスタートスイッチとを有し、前記ハンドユニットには、呼気に含まれるアルコール量を検出するためのアルコールセンサ、ハンドユニット内に吹き込まれた呼気の音を検出するための音センサ及び前記原動機の始動可否表示手段が内蔵され、前記メインユニットは、前記アルコールセンサ及び前記音センサから入力される電気信号により前記原動機の始動可否を判定するマイコンと、「始動可」の判定で前記エンジンスイッチの操作を有効な状態とする第1リレーとが内蔵され、該第1リレーは前記マイコン及び前記エンジンスイッチに接続され、「始動可」の判定で前記エンジンスイッチの操作の所定時間内での不実行で第1リレーを「OFF」とするタイマー機能が備わっていることを特徴とするアルコール・インターロック装置。
【請求項2】
前記メインユニットは、前記エンジンスイッチの操作により「ON」となる第2リレーが内蔵され、該第2リレーは車両側のACC電源及び前記エンジンスイッチに接続されていることを特徴とするアルコール・インターロック装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が飲酒状態である判定すると車両の原動機を始動出来ない様にしたアルコール・インターロック装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、かかるアルコール・インターロック装置にあっては、車両の運転者が飲酒状態であるか否かを判定する飲酒判定手段と、前記車両の原動機の始動を許可または禁止する始動制御手段とを備えており、前記始動制御手段は、前記運転者が飲酒状態ではないと前記飲酒判定手段によって判定されたときに前記始動を許可し、前記運転者が飲酒状態であると前記飲酒判定手段によって判定されたときに前記始動を禁止し、前記始動を許可してから所定の時間以内に前記原動機が始動されないときに前記始動を禁止するアルコールインターロックシステムであって、前記始動制御手段の状態を表示する表示部と、前記表示部における表示を制御する表示制御手段とを備えており、前記表示制御手段は、前記始動制御手段が前記始動を許可している状態であるときと、前記始動制御手段が前記始動を禁止している状態であるときとで、前記表示部に異なる表示を行わせるものが見受けられる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このアルコール・インターロック装置によれば、始動制御手段が原動機の始動を許可している状態である時と、始動制御手段が原動機の始動を禁止している状態である時とで、表示部に異なる表示を行わせことで、始動制御手段が原動機の始動を許可した後、原動機の始動が許可されている状態であるか否かを表示部の表示によって運転者に認識させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記従来技術にあっては、呼気センサとして、吹込まれる気体の圧力を測定する圧力センサ、吹込まれる気体の温度が人間の呼気の温度であるか否かを確認するための温度センサ、吹込まれる気体中の炭酸ガスの濃度が人間の呼気中の炭酸ガスの濃度であるか否かを確認するための呼気CO2 センサなどが採用され得るとされているが、これらのものでは、例えば運転者以外の未飲酒者が袋などに吹き込んだ呼気で代用することも可能であるなど、解決せねばならない課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記従来技術に基づく、運転者以外の未飲酒者の呼気が代用可能な課題に鑑み、呼気を吹き込むハンドユニットと、該ハンドユニットから入力された電気信号に基づき原動機の始動可否を判定し表示すると共に始動可の判定で前記原動機のエンジンスイッチの操作を有効にするメインユニットと、該メインユニットを車両側の常時電源で稼働可能とするスタートスイッチとを有し、前記ハンドユニットには、呼気に含まれるアルコール量を検出するためのアルコールセンサ、ハンドユニット内に吹き込まれた呼気の音を検出するための音センサ及び前記原動機の始動可否表示手段が内蔵され、前記メインユニットは、前記アルコールセンサ及び前記音センサから入力される電気信号により前記原動機の始動可否を判定するマイコンと、「始動可」の判定で前記エンジンスイッチの操作を有効な状態とする第1リレーとが内蔵され、該第1リレーは前記マイコン及び前記エンジンスイッチに接続され、「始動可」の判定で前記エンジンスイッチの操作の所定時間内での不実行で第1リレーを「OFF」とするタイマー機能が備わっていることで、座席に座った被検者が運転者にならなければ原動機を始動できない条件下で、人間特有の呼気音を判定条件とすることによって、被検者以外の呼気を利用出来ないため、運転者の呼気中のアルコール濃度を確実に検査することが出来る様にして、上記課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
要するに本発明は、呼気を吹き込むハンドユニットと、該ハンドユニットから入力された電気信号に基づき原動機の始動可否を判定し表示すると共に始動可の判定で前記原動機のエンジンスイッチの操作を有効にするメインユニットと、該メインユニットを車両側の常時電源で稼働可能とするスタートスイッチとを有し、前記ハンドユニットには、呼気に含まれるアルコール量を検出するためのアルコールセンサ、ハンドユニット内に吹き込まれた呼気の音を検出するための音センサ及び前記原動機の始動可否表示手段が内蔵され、該第1リレーは前記マイコン及び前記エンジンスイッチに接続されているので、人間特有の呼気音を判定条件とすることにより、代用品での不正を完全に防止することが出来ると共に、被検者が原動機の始動可否を確実に確認することが出来、而も前記メインユニットは、前記アルコールセンサ及び前記音センサから入力される電気信号により前記原動機の始動可否を判定するマイコンと、「始動可」の判定で前記エンジンスイッチの操作を有効な状態とする第1リレーとが内蔵され、「始動可」の判定で前記エンジンスイッチの操作の所定時間内での不実行で第1リレーを「OFF」とするタイマー機能が備わっているので、座席に座った被検者が運転者にならなければ原動機を始動操作することができない状況を確保することが出来る。
従って、本発明に係るアルコール・インターロック装置によれば、運転者の呼気中のアルコール濃度を確実に検査することが出来る。
【0008】
前記メインユニットは、前記エンジンスイッチの操作により「ON」となる第2リレーが内蔵され、該第2リレーは車両側のACC電源及び前記エンジンスイッチに接続されているので、エンジンスイッチの操作後にスタートスイッチを「OFF」としても、ACC電源によりエンジンスイッチを操作可能な状態に維持することが出来る等その実用的効果甚だ大である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に係るアルコール・インターロック装置のハンドユニットの要部拡大斜視図である。
【
図2(a)】本発明に係るアルコール・インターロック装置の実施例1のハンドユニットの断面図である。
【
図2(b)】本発明に係るアルコール・インターロック装置の実施例2のハンドユニットの断面図である。
【
図3(a)】スタートスイッチが配されたハンドユニットホルダーのハンドユニットが収容状態でスタートスイッチが「OFF」状態の断面図である。
【
図3(b)】スタートスイッチが配されたハンドユニットホルダーのハンドユニットが取出し状態でスタートスイッチが「ON」状態の断面図である。
【
図4】本発明に係るアルコール・インターロック装置のブロック図である。
【
図5】本発明に係るアルコール・インターロック装置による原動機始動処理工程を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係るアルコール・インターロック装置にあっては、基本的に、呼気を吹き込むハンドユニット1と、該ハンドユニット1から入力された電気信号に基づき原動機(図示しないが、内燃機関の場合はエンジン、電気機関の場合は駆動モーター)の始動可否を判定し被検者に通知すると共に始動可能と判定された場合に、車両側のエンジンスイッチESの入力により原動機を始動可能な状態、即ちエンジンスイッチESの操作を有効な状態にするメインユニット2と、該メインユニット2を車両側の常時電源PS1で稼働可能とするスタートスイッチ3とを有している。
【0011】
ハンドユニット1には、基本的に、検査対象、即ち呼気に含まれるアルコール量を検出するためのアルコールセンサ4、ハンドユニット1内に吹き込まれた検査対象、即ち呼気音を検出するための音センサ5、原動機の始動可否表示手段6が内蔵されている。
【0012】
メインユニット2には、基本的に、ハンドユニット1のアルコールセンサ4及び音センサ5から入力される電気信号により原動機の始動の可否を判定するマイコン7と、「始動可」と判定された場合に「ON」となって、エンジンスイッチESの操作を有効化して原動機を始動可能な状態とするための第1リレー8とが内蔵され、「始動可」と判定された後所定時間内にエンジンスイッチESの操作が行われなかった場合に第1リレー8を「OFF」とするタイマー機能がマイコン7に備わっている。
つまり、第1リレー8が「ON」とならない限り、エンジンスイッチESの操作無効状態が維持される。
【0013】
尚、メインユニット2は、エンジンスイッチESの操作後にスタートスイッチ4を入力解除しても、エンジンスイッチESの操作により「ON」となって、ACC電源PS2でエンジンスイッチESの操作有効状態を維持可能とする第2リレー9を内蔵するのが好ましい。
【実施例0014】
図2(a)は、本発明に係るアルコール・インターロック装置の実施例1のハンドユニットの断面図であり、
図3は、アルコール・インターロック装置の実施例1のブロック図であり、かかるアルコール・インターロック装置の実施例1は、アルコールセンサ4、ハンドユニット1内に吹き込まれた検査対象の音を検出するための音センサ5及び始動可否表示手段6を有するハンドユニット1と、マイコン7及び第1、2リレー8、9を有し、且つ前記タイマー機能が備わったメインユニット2を有している。
【0015】
ハンドユニット1は、LAN(ローカルエリアネットワーク)ケーブルでメインユニット2に接続し、先端に吹込口10及び始動可否表示手段6による表示を確認可能とする確認窓11を形成し、アルコールセンサ4は、吹き掛けられた呼気中のアルコール量を電気信号に変換してマイコン7に出力する様になっており、音センサ5は、吹き掛けられた音を電気信号に変換してマイコン7に出力する様になっている。
【0016】
始動可否表示手段6は、少なくとも2色で発光可能なLED(発光ダイオード))が備わっており、確認窓11からの光の色で原動機の始動の可否を確認可能とし、ハンドユニット1の側面にLEDの冷却孔12、12a …を形成している。
【0017】
メインユニット2は、スタートスイッチ3を介して常時電源PS1に接続し且つボディーアースして、原動機が始動していなくともスタートスイッチ3を「ON」とすれば稼働可能としている。
【0018】
第1リレー8の接点側の端子は、エンジンスイッチESに接続し、コイル側の端子はマイコン7に接続している。
【0019】
第2リレー9の接点側の端子は、エンジンスイッチESに接続し、コイル側の端子の一方は車両側のACC電源PS2に接続し、他方はボディーアースしている。
【0020】
スタートスイッチ3と常時電源PS1の間及びACC電源PS2と第2リレー8の間にヒューズ13、14を設けることで、過電流によるメインユニット2の損傷を防止可能とするのが好ましい。
【0021】
マイコン7は、音センサ5から入力された電気信号に基づき、呼気の条件に合致しているか否かを判定し、同時にアルコールセンサ4から入力された電気信号に基づきアルコール量が条件に合致したか否かを判定し、呼気音と判定し且つアルコール非検知と判定した時点で第1リレー8に通電し「ON」にならなければエンジンスイッチESの操作を有効化出来ない、即ち原動機を始動させることが出来ない構造となっている。
マイコン7は、音センサ5及び呼気成分検知センサ15から入力された電気信号に基づき、呼気の条件に合致しているか否かを判定し、同時にアルコールセンサ4から入力された電気信号に基づきアルコール量が条件に合致したか否かを判定し、呼気音と判定し且つアルコール非検知と判定した時点で第1リレー8に通電し「ON」にならなければエンジンスイッチESの操作を有効化出来ない、即ち原動機を始動させることが出来ない構造となっている。
尚、エンジンスイッチESの操作とは、ブレーキペダル(図示せず)を踏みエンジンスイッチESを押して原動機を始動させること、又はブレーキペダル(図示せず)を踏まずにエンジンスイッチESを押してACC電源PS2やIG電源(図示せず)を「ON」とすることとし、エンジンスイッチESの操作の有効化とは、常時電源PS1又は及びACC電源PS2からエンジンスイッチESへの電力供給により成される。
つまり、エンジンスイッチESを「OFF」とした後は、そのままではエンジンスイッチESを「ON」にすることは出来ず、全てがリセットされて、再度上記〔ステップ1〕から実行することとなる。
又、上記3.において、ブレーキペダル(図示せず)を踏まずにエンジンスイッチESを押すことも可能で、エンジンスイッチESを1回押すとACC電源PS2を、2回押すとIG電源(図示せず)を「ON」とすることが可能となり、その際に第2リレー9が「ON」となり、例えスタートスイッチ3を「OFF」としても、ACC電源PS2によりエンジンスイッチESの操作の有効化、即ち原動機を始動可能な状態が維持され、エンジンスイッチESを1回押すと「OFF」となり全てがリセットされて、再度上記〔ステップ1〕から実行することとなる。
上記2.で、検出した音が呼気の条件を満たさなかったり、アルコールを検知した場合、或いは上記3.で、原動機の始動操作を所定時間内に実行しなかった場合、始動可否表示手段6のLEDが「赤」点灯し、第1リレー8が「OFF」となって、原動機が始動不可の状態となる。
始動可否表示手段6は、色が異なる2個の単色LED又は1個の2色LEDが好ましいが、点滅・点灯による識別や、音による識別など、要するに対象者が確認可能な構成のものであれば良い。