(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173207
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】電子部品再利用支援システム及び電子部品再利用支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/30 20230101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q10/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091460
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西元 琢真
(72)【発明者】
【氏名】永島 和治
(72)【発明者】
【氏名】西納 修一
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
(57)【要約】 (修正有)
【課題】電子部品のリサイクル率を向上させる電子部品再利用支援システム及び電子部品再利用支援方法を提供する。
【解決手段】電子部品再利用支援システムを適用する共通化処理は,複数の対象製品に搭載される複数種の機能ブロックのデータを機能/性能毎にブロック分割し,グループ化プログラムを実行することで,分割した機能ブロックを機能/性能毎にグループ化し,共通部品選定プログラムを実行することで,グループ毎に各機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される電子部品を共通電子部品と判定し、提示する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電子部品で構成された複数の機能ブロックが搭載された対象製品について、計算機を用いて電子部品の再利用を支援する電子部品再利用支援システムであって、
前記計算機の記憶部は、
前記対象製品のデータを用いて前記機能ブロックのデータにブロック分割する機能ブロック化プログラムと,同じ機能の前記機能ブロック毎にグループ化するグループ化プログラムと,各グループ内の前記機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い前記機能ブロックで使用される前記電子部品を判定する共通部品選定プログラムと,を格納し,
前記計算機の演算部は、
前記機能ブロック化プログラムを実行することで,複数の前記対象製品に搭載される複数種の前記機能ブロックのデータを機能/性能毎にブロック分割し,
前記グループ化プログラムを実行することで,分割した機能ブロックを機能/性能毎にグループ化し,
前記共通部品選定プログラムを実行することで,グループ毎に各機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される前記電子部品を共通電子部品と判定し、提示することを特徴とする電子部品再利用支援システム。
【請求項2】
請求項1に記載の電子部品再利用支援システムであって、
前記計算機の記憶部は、さらに前記対象製品のデータと、グループ化されたデータと、電子部品のデータを保持することを特徴とする電子部品再利用支援システム。
【請求項3】
請求項1に記載の電子部品再利用支援システムであって、
前記LCAは,低消費電力,低環境負荷材料の使用率,リユース部品のいずれか1つ以上であることを特徴とする電子部品再利用支援システム。
【請求項4】
請求項1に記載の電子部品再利用支援システムであって、
前記対象製品のデータは、回路の結線をテキストで表現したデータであるネットリストと設計データであることを特徴とする電子部品再利用支援システム。
【請求項5】
請求項1に記載の電子部品再利用支援システムであって、
前記共通部品選定プログラムを実行することで,グループ毎に各機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックを共通機能ブロックと判定し、提示することを特徴とする電子部品再利用支援システム。
【請求項6】
請求項1に記載の電子部品再利用支援システムであって、
前記共通電子部品は、オペアンプまたはメモリを代表とする半導体部品であることを特徴とする電子部品再利用支援システム。
【請求項7】
複数の電子部品で構成された複数の機能ブロックが搭載された対象製品について、計算機を用いて電子部品の再利用を支援する電子部品再利用支援方法であって、
前記計算機の記憶部は、
前記対象製品のデータを用いて前記機能ブロックのデータにブロック分割する機能ブロック化プログラムと,同じ機能の前記機能ブロック毎にグループ化するグループ化プログラムと,各グループ内の前記機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い前記機能ブロックで使用される前記電子部品を判定する共通部品選定プログラムと,を格納し,
前記計算機の演算部は、
前記機能ブロック化プログラムを実行することで,複数の前記対象製品に搭載される複数種の前記機能ブロックのデータを機能/性能毎にブロック分割し,
前記グループ化プログラムを実行することで,分割した機能ブロックを機能/性能毎にグループ化し,
前記共通部品選定プログラムを実行することで,グループ毎に各機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される前記電子部品を共通電子部品と判定し、提示することを特徴とする電子部品再利用支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品再利用支援システム及び電子部品再利用支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年,産業システム分野では長期運用と環境負荷低減に向けて,電子システムの高信頼化と環境配慮化の両立を図ることが重要となっている。
【0003】
高信頼化と環境配慮化を両立する製品を実現するには,製品に搭載される部品を長寿命に設計して製品を安定運用し,製品を廃棄する際に残存寿命が十分にある部品をリサイクルして新規製品に使用することで資源を循環させることが必須となる。
【0004】
また産業システム分野では,製品ライフサイクルの各段階(製造/流通/使用/処分)でLCA(Life Cycle Assessment)を用いてGHG/CO2排出量を計算し評価することが求められてきている。
【0005】
LCA向上に向けて電子部品のリサイクルを考えた場合,電子部品は様々な材料から構成されるため材料まで還元する方法では多くの廃棄物が発生する。このため,電子部品は部品レベルでの再利用が最適と考えられている。
【0006】
電子部品の再利用に関して、特許文献1では、多世代製品系列の製品集団から発生する環境影響や発生コストをできる限り正確に予測評価しリユースやリサイクルを実行できるようにすることを目的として、「リユース及びリサイクル対象に関する情報を格納し、この情報を用いて回収製品から新規生産製品に転用できるリユースおよびリサイクル対象を選択し、新規生産製品を組み立てるため選択されたリユースおよびリサイクル対象を組み合わせるライフサイクル・モデリングを行い、ライフサイクルモデルを用いてリユースおよびリサイクル対象の回収量を予測するためリユース対象となる製品の回収分布を、ニつ以上の任意形状の重ね合わせとして近似的に予測し、任意形状の少なくとも一つを製品価値寿命あるいは製品耐用寿命をピークとし、予測結果からリユース、リサイクルした場合に負担する環境影響、コストの評価を行う。」とすることを提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし従来の方法は,製品の使用が終了して電子部品を回収・再利用する際,再利用可能な電子部品の全てを新しく製造する製品に使用できることが前提であるが,新規製造の製品に機能拡張や性能向上による部品変更や,その製品の販売終了などの要因で再利用先の製品が減少,または無くなる可能性がある。
【0009】
つまり,回収した電子部品の利用先が減少することで回収される電子部品の量(供給)と再利用先(需要)のバランスが崩れ,リサイクル率が低下する。このため,再利用を前提とした電子部品を搭載した製品を設計・開発する際は,再利用部品の需要と供給を計画するために,予め別の製品でも再利用可能にしておくことが必須である。
【0010】
以上のことから本発明においては、製品の仕様変更や製品の販売終了により再利用可能な電子部品の利用先が減少する課題に対して,1つの製品に搭載する電子部品種,複数製品で使用する電子部品種を製品仕様とLCAを満足しながら共通化することで,回収した再利用可能部品が利用できる製品とコンポーネントを拡張させ,電子部品のリサイクル率を向上させて環境負荷低減に貢献する電子部品再利用支援システム及び電子部品再利用支援方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
以上のことから本発明においては、「複数の電子部品で構成された複数の機能ブロックが搭載された対象製品について、計算機を用いて電子部品の再利用を支援する電子部品再利用支援システムであって、計算機の記憶部は、対象製品のデータを用いて機能ブロックのデータにブロック分割する機能ブロック化プログラムと,同じ機能の機能ブロック毎にグループ化するグループ化プログラムと,各グループ内の機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される前記電子部品を判定する共通部品選定プログラムと,を格納し,計算機の演算部は、機能ブロック化プログラムを実行することで,複数の対象製品に搭載される複数種の機能ブロックのデータを機能/性能毎にブロック分割し,グループ化プログラムを実行することで,分割した機能ブロックを機能/性能毎にグループ化し,共通部品選定プログラムを実行することで,グループ毎に各機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される電子部品を共通電子部品と判定し、提示することを特徴とする電子部品再利用支援システム。」としたものである。
【0012】
本発明においては、「複数の電子部品で構成された複数の機能ブロックが搭載された対象製品について、計算機を用いて電子部品の再利用を支援する電子部品再利用支援方法であって、計算機の記憶部は、対象製品のデータを用いて機能ブロックのデータにブロック分割する機能ブロック化プログラムと,同じ機能の機能ブロック毎にグループ化するグループ化プログラムと,各グループ内の機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される電子部品を判定する共通部品選定プログラムと,を格納し,計算機の演算部は、機能ブロック化プログラムを実行することで,複数の対象製品に搭載される複数種の機能ブロックのデータを機能/性能毎にブロック分割し,グループ化プログラムを実行することで,分割した機能ブロックを機能/性能毎にグループ化し,共通部品選定プログラムを実行することで,グループ毎に各機能ブロックの性能とLCAを計算して評価値が最も良い機能ブロックで使用される電子部品を共通電子部品と判定し、提示することを特徴とする電子部品再利用支援方法」としたものである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば複数の製品で使用する部品を共通化することで,電子部品の再利用率を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施例に係る電子部品再利用支援システムを適用するに好適なプロセッサシステムの概略構成例を示した図。
【
図2】本発明で取り扱う電子部品の例として回路基板の構成例を示す図。
【
図3】電子部品再利用支援システムの構成例を示す図。
【
図4a】回路基板30データD1としてネットリストの一例を示す図。
【
図4b】回路基板30データD1として設計データの一例を示す図。
【
図5】機能ブロック化プログラムPr1が回路基板データD1を解析して求めた機能ブロック31,32,33のデータの一例を示す図。
【
図6】グループ化プログラム処理の結果得られた内容を示す図。
【
図7】電子部品を共通化する処理の一例を示したフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下,本発明の実施例について、図面を用いて説明する。
【実施例0016】
図1は、本発明の実施例に係る電子部品再利用支援システムを適用するに好適なプロセッサシステムの概略構成例を示した図である。プロセッサシステム10は、記憶部DB,プロセッサ12、ユーザインターフェイス13がバス11により接続されて構成されている。
【0017】
記憶部DBは、プログラム記憶部DB1とデータ記憶部DB2により構成されている。プログラム記憶部DB1には、プロセッサ12に読みだして実行されるプログラムとして機能ブロック化プログラムPr1,グループ化プログラムPr2,共通部品選定プログラムPr3を備えており、データ記憶部DB2は回路基板データD1を記憶する回路基板データベースDB21、部品特性データD2を記憶する部品特性データベースDB22、グループデータD3を記憶するグループデータベースDB23を備えている。
【0018】
プロセッサ12は、ユーザOPがユーザインターフェイス13を介して与える指示に応じてプログラムPr1,Pr2,Pr3と、データベースDB21,DB22,DB23を参照し、得られた結果を適宜データベースDB21,DB22,DB23に格納記憶するとともに、ユーザインターフェイス13を介してユーザに処理結果を可視化して与える。
【0019】
図2は、本発明で取り扱う対象製品電子部品の例として回路基板の構成例を示している。回路基板30は複数の機能ブロックにより構成されており、これらの機能ブロックは例えば電源部31,センサ部32,通信部33といったものである。さらに各機能ブロック31,32,33は、抵抗、インダクタ、コンデンサ、オペアンプ、メモリといった回路部品(31a-31c,32a-32c、33aー33c)を含んで構成されている。
【0020】
本発明では、この回路部品を共通利用化できる電子部品再利用支援システムの体制を整備しようとしている。再利用したい電子部品としては特にオペアンプやメモリがあげられる。例えば共通化例1としてオペアンプの場合、各半導体メーカが近しい性能の半導体を製造販売しており、製造メーカは,製品毎/基板毎に設計者の経験や実績に基づき夫々異なる半導体を採用している。このことからLCAを基に1つの半導体を各製品で共通化できれば、再利用が促進できる。また共通化例2としてメモリの場合、各半導体メーカが性能(容量)毎に半導体を販売しており、製造メーカは,製品毎/基板毎に必要な最小容量のメモリを夫々採用している。このことから性能(容量)とLCAを基に各製品で共通化できれば、再利用が促進できる。
【0021】
図3は、電子部品再利用支援システムの構成例を示す図である。なお回路基板30の回路基板データD1が回路基板データベースDB21に、回路部品(31a-31c,32a-32c、33aー33c)の部品特性データD2が部品特性データベースDB22に、機能ブロック31,32,33のグループデータD3がグループデータベースDB23に予め記憶されており、その後逐次追加記憶される。またこの
図3には、機能ブロック化プログラムPr1,グループ化プログラムPr2,共通部品選定プログラムPr3を含めて表示することにより、各プログラムPrが何を入力として、何を得ているのかが理解できるように表記している。
【0022】
図4a,
図4bは、回路基板データベースDB21に記憶される回路基板30のデータD1(回路基板データ)の一例を示す図である。
図4aのネットリストD1Aは、回路の結線をテキストで表現したデータであり、
図4bは設計データD1Bとして例えば部品リストD1a、設計仕様データD1b,基準部分グラフデータ群D1c、ブロック指定データ/ラベリングデータD1dを含む情報として整理されたものである。これらのデータは、あらかじめ保存され、あるいはユーザが新たに入力して解析を指示するものである。
【0023】
図5は、機能ブロック化プログラムPr1が回路基板30のデータD1(回路基板データ)を解析して求めた機能ブロック31,32,33のデータの一例を示す図である。これにより各基板が有する機能ブロックの構成が判明する。この例では装置Aの中には基板1、基板2、基板3が装着されており、基板1は12v電源部、温度センサの機能を備え、基板2は15v電源部、通信部の機能を備え、基板3は15v電源部、温度センサの機能ブロックを備えることなどが判明する。なお各基板が有する機能ブロックの構成を求めること自体は、次に行われる処理の前段階であり、構成自体は中間生成物としての位置づけであるため、あえてデータベース構成として表記してはいない。
【0024】
このように、回路基板データベースDB1には、複数の装置に搭載されている複数の回路基板の回路データ(ネットリストなど)と設計仕様データが含まれている。機能ブロック化プログラムPr1は、ユーザOPが指定した各装置の各回路基板に係る回路基板データベースDB1のデータを読み取り、
図4aに示すネットリストと
図4bに示す設計仕様データから機能と性能を基に回路をブロック分割し、
図5に示す一例のような構成のデータを出力する。
【0025】
なお機能ブロック化プログラムPr1の処理にはいくつかの手法があり、例えばグラフデータベースマイニング処理により自動で本処理を実行する、あるいは設計者が指定した機能ブロックの範囲が示された設計仕様データを基に回路をブロックに分割することが可能である。
【0026】
図6は、グループ化プログラム処理の結果得られた内容を示す図である。グループデータ構成の一例を示した図である。グループ化プログラムPr2は、
図5の機能ブロック化したデータ(機能ブロックデータ)D1を基に、機能ブロックをその機能と性能毎にグループ化し、本図に示す一例のデータ構成を、機能ブロックデータD3として出力し、グループデータベースDB3に格納する。
【0027】
図6のグループデータD3は、グループD3aとして機能や性能の観点から逆にこの機能や性能を有する装置種類D3bや基板種類D3cをまとめたものであり、例えば機能が温度センサや性能が0-120度である装置種類D3bや基板種類D3cとしては装置Aの基板1,3、装置Bの基板2,4、装置Cの基板1,2が該当するとして整理される。
【0028】
なおグループ化プログラムPr2の処理にはいくつかの手法があり、例えばグラフデータベースマイニング処理により自動で本処理を実行する、あるいは設計者が指定した各機能ブロックの機能と性能のラベリングが示された設計仕様データを基に機能ブロックをグループ化することが可能である。
【0029】
図1、及び
図3の部品特性データベースDB22に保管される部品特性データD2については事例を示していないが、基板で使用される各種部品の使用や特性が記憶されている。
【0030】
図3によれば、各データベースDB1,DB2,DB3のデータ内容と、このデータを得るための機能ブロック化プログラムPr1,グループ化プログラムPr2が示されている。この前提において、
図1のプロセッサシステム10においては
図7の一連の処理プログラムが実行される。
【0031】
図7は、電子部品を共通化する処理の一例を示したフロー図である。この電子部品共通化処理は、最初に処理ステップS41においてユーザOPがユーザインターフェイス13を介して対象の製品と基板を指定することで開始される。
【0032】
処理ステップS41では、機能ブロック化プログラムPr1の実行により、回路基板データベースDB1から対象の基板のネットリストD1Aと設計データD1Bを読み込み,回路ブロック分割することで、
図4の機能ブロック31,32,33のデータを得る。処理ステップS42では、グループ化プログラムPr2の実行により、グループ化した回路ブロックデータD2をグループデータベースDB2に保存する。ここまでの処理は、先に説明したとおりである。この前提において、以降の処理が実施される。
【0033】
次段の処理として、共通部品選定プログラムPr3が実行される。共通部品選定プログラムPr3では、処理ステップS43~46が順次実行される。ここでは、ユーザOPが指定した対象の製品と基板を解析してグループデータベースDB2に保存されたグループデータD2を対象として処理する。
図4の例では機能が温度センサで、性能が0-120度の装置種、基板種のデータが対象とされる。
【0034】
具体的には、まず処理ステップS43においてグループデータベースDB2から1つのグループの機能ブロックデータを読み込み,機能ブロック夫々のLCAを算出する。次に処理ステップS44では機能ブロック夫々の性能を比較し,全ての機能ブロックの性能を包含できるかをチェックする。また処理ステップS44では、算出した各機能ブロックのLCAを比較して最良である電子部品を共通電子部品に選択する。処理ステップS45では、最後に、共通部品に置き換えた基板の回路データを回路基板データベースDB3に置き換え保存する。
【0035】
処理ステップS46では、すべてのグループの処理が完了するまで繰り返し処理し、処理ステップS47では、電子部品を置き換えた基盤を再設計する。なお処理ステップS46、S47の処理は、
図3の部品置き換え変更設計に相当する。
【0036】
図3に戻り、この図は電子部品を共通化するシステムの全体構成の一例を示した図である。本図に示すように、例えば製品Aと製品Bに搭載される各基板の電子部品をプロセッサシステム10に入力すると、共通化できる部品を抽出し、共通化した後の回路データ(ネットリスト/部品リスト)を出力する。
【0037】
図示の例の場合、与えられた製品Aと、製品Bについて、本発明処理後には製品Aの基板1の部品A,B,Cが選択電子部品であり、製品Aの基板2の部品Cと、製品Bの基板1の部品Aと、製品Bの基板2の部品A、Bとが共通化した部品であることを示している。
【0038】
図8は、本発明の利用段階を示す図である。ここでは、構想設計段階から使用策定段階、詳細設計段階、部材調達段階、製造段階、検査段階、出荷段階に至る一連の段階の中で、使用策定段階と詳細設計段階に利用できることを示している。
【0039】
具体的には例えば、エンジニアリングチェーンの中に置いて、回路基板の仕様を策定して詳細設計した後に、詳細設計した回路データと設計仕様データをプロセッサシステム10に入力し、共通化後の回路データ(ネットリスト/部品リスト)を得る。設計者は、共通化後の回路データを検証(シミュレーション解析など)し、装置仕様や装置運用、保守、電子部品の調達性の観点で問題無いかを確認する。これにより、電子部品再利用支援システムが構成され、電子部品の再利用に貢献することができる。
【0040】
以上要するに
図1に示すプロセッサシステム10は、具体的には、複数の製品に搭載される複数種の回路基板の回路データ(ネットリスト/部品リスト)から共通化できる電子部品を選択し,本グループ内の機能ブロックの電子部品をこの選択した共通電子部品に置き換える。また、プロセッサシステム10は、回路データ(ネットリスト/部品リスト)から機能/性能別に機能ブロックを抽出・グループ化し,グループ内の機能ブロックの中で性能を包含しながら最もLCAが良好な電子部品を選択する。また、プロセッサシステム10は、共通電子部品に置き換えた後の回路データ(ネットリスト/部品リスト)を出力する。このようなプロセッサシステム10により、各製品で使用される電子部品を共通化して再利用先を拡大することで、電子部品の再利用率を向上することができることになる。
機能ブロック化処理に関する、そのほかの例は設計者による指定であり、対象の回路基板を設計する際に,予め機能毎に回路範囲を指定しておく。また回路ブロック化の際は,この指定範囲を1つの回路ブロックと判定する。
またグループ化処理に関して、その一例はグラフデータベースマイニングによるものである。この場合には、予め,各回路機能や性能毎に基準となる部分グラフを用意しておく。グラフ同型探索処理を用いて,機能ブロック化処理で得た各部分グラフと基準部分グラフの同型を判定する。グラフ同型探索処理は,例えば,グリーディー探索法などを用いる。
グループ化処理に関する、そのほかの例は設計者によるラベリングによるものである。この場合には、対象の回路基板を設計する際に,回路ブロックを指定するとともに機能と性能をラベリングしておく。
なお、共通部品の選定処理に関して、以下の点を考慮するのがよい。まず寿命に関して、リユースを想定した電子部品の長寿命化のため,最も低消費電力(低発熱)となる電子部品を選定するのがよい。環境に関して、電子部品のLCA(Life Cycle Assessment)を計算し,GHG/CO2排出量が最も良好な部品を選定するのがよい。経済に関して経済性を考慮して,「最も安価な電子部品」や「最も安定調達できる部品」選定するのがよい。また寿命、環境、経済の観点を複合して、に夫々重みを付けて総和し,最もバランスの良い電子部品を選定するのがよい。