(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017321
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/68 20060101AFI20240201BHJP
G01B 11/00 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
H01L21/68 F
G01B11/00 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022119876
(22)【出願日】2022-07-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北原 和弘
(72)【発明者】
【氏名】兒玉 奈緒子
【テーマコード(参考)】
2F065
5F131
【Fターム(参考)】
2F065AA02
2F065AA03
2F065BB27
2F065CC19
2F065FF04
2F065GG21
2F065JJ09
2F065JJ19
2F065JJ26
5F131AA02
5F131BA11
5F131BA19
5F131DD42
5F131FA17
5F131FA33
5F131KA14
5F131KA43
5F131KA51
5F131KA63
5F131KB07
5F131KB55
(57)【要約】
【課題】位置検出用マークは、精度よく観察できることが好ましい。
【解決手段】半導体基板の上面の上方から上面マークを観察した上面画像、および、半導体基板の上面の上方から半導体基板を透過して下面マークを観察した下面画像を取得することで、上面マークおよび下面マークの位置ずれを検出する位置検出段階と、半導体基板に半導体素子を形成する素子形成段階とを備え、上面マークおよび下面マークを上面と平行な面に投影した上面視において、上面マークおよび下面マークの一方が他方よりも大きく、且つ、一方が他方の全体を覆っている、半導体装置の製造方法を提供する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体装置の製造方法であって、
半導体基板の上面に上面マーク、前記半導体基板の下面に下面マークを形成するマーク形成段階と、
前記半導体基板の前記上面の上方から前記上面マークを観察した上面画像、および、前記半導体基板の前記上面の上方から前記半導体基板を透過して前記下面マークを観察した下面画像を取得することで、前記上面マークおよび前記下面マークの位置ずれを検出する位置検出段階と、
前記半導体基板に半導体素子を形成する素子形成段階と
を備え、
前記上面マークおよび前記下面マークを前記上面と平行な面に投影した上面視において、前記上面マークおよび前記下面マークの一方が他方よりも大きく、且つ、前記一方が前記他方の全体を覆っている、半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記マーク形成段階において、前記下面マークよりも反射率の高い材料で、前記下面マークを覆うカバー部を形成する
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記上面視において、前記上面マークが前記下面マークよりも大きい
請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記上面視において、前記カバー部は前記下面マークより大きく前記上面マークよりも小さい
請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記上面視において、前記カバー部の端部と前記下面マークの端部との距離は、前記カバー部の端部と前記上面マークの端部との距離よりも小さい
請求項4に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記上面視において、前記下面マークが前記上面マークよりも大きい
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
前記上面視において、前記下面マークの端部と前記上面マークの端部との距離が、20μm以上である
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項8】
前記位置検出段階において、前記上面画像を取得する場合に前記半導体基板に照射する光の波長と、前記下面画像を取得する場合に前記半導体基板に照射する光の波長とが同一である
請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項9】
前記上面マークは、前記半導体基板の前記上面に配置された凹部である
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項10】
前記上面マークは、前記半導体基板の前記上面に配置された凸部である
請求項1から8のいずれか一項に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項11】
前記上面視において、前記上面マークの端部から外側に向かって、少なくとも20μmの範囲に渡って、凹凸が設けられていない領域が配置されている
請求項10に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項12】
前記下面マークは、前記上面視において、それぞれの長手方向が交差する2つ以上の直線部分を有する
請求項9に記載の半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程において、半導体基板に位置検出用のマークを形成する技術が知られている(例えば特許文献1および2参照)。
特許文献1 特開2012-253145号公報
特許文献2 特開2019-120769号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
位置検出用マークは、精度よく観察できることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の一つの態様においては、半導体装置の製造方法を提供する。製造方法は、半導体基板の上面に上面マーク、前記半導体基板の下面に下面マークを形成するマーク形成段階を備えてよい。製造方法は、前記半導体基板の前記上面の上方から前記上面マークを観察した上面画像、および、前記半導体基板の前記上面の上方から前記半導体基板を透過して前記下面マークを観察した下面画像を取得することで、前記上面マークおよび前記下面マークの位置ずれを検出する位置検出段階を備えてよい。製造方法は、前記半導体基板に半導体素子を形成する素子形成段階を備えてよい。上記何れかの製造方法において、前記上面マークおよび前記下面マークを前記上面と平行な面に投影した上面視において、前記上面マークおよび前記下面マークの一方が他方よりも大きく、且つ、前記一方が前記他方の全体を覆っていてよい。
【0005】
上記何れかの製造方法は、前記マーク形成段階において、前記下面マークよりも反射率の高い材料で、前記下面マークを覆うカバー部を形成してよい。
【0006】
上記何れかの製造方法は、前記上面視において、前記上面マークが前記下面マークよりも大きくてよい。
【0007】
上記何れかの製造方法は、前記上面視において、前記カバー部は前記下面マークより大きく前記上面マークよりも小さくてよい。
【0008】
上記何れかの製造方法は、前記上面視において、前記カバー部の端部と前記下面マークの端部との距離は、前記カバー部の端部と前記上面マークの端部との距離よりも小さくてよい。
【0009】
上記何れかの製造方法は、前記上面視において、前記下面マークが前記上面マークよりも大きくてよい。
【0010】
上記何れかの製造方法は、前記上面視において、前記下面マークの端部と前記上面マークの端部との距離が、20μm以上であってよい。
【0011】
上記何れかの製造方法は、前記位置検出段階において、前記上面画像を取得する場合に前記半導体基板に照射する光の波長と、前記下面画像を取得する場合に前記半導体基板に照射する光の波長とが同一であってよい。
【0012】
上記何れかの製造方法において、前記上面マークは、前記半導体基板の前記上面に配置された凹部であってよい。
【0013】
上記何れかの製造方法において、前記上面マークは、前記半導体基板の前記上面に配置された凸部であってよい。
【0014】
上記何れかの製造方法は、前記上面視において、前記上面マークの端部から外側に向かって、少なくとも20μmの範囲に渡って、凹凸が設けられていない領域が配置されていてよい。
【0015】
上記何れかの製造方法において、前記下面マークは、前記上面視において、それぞれの長手方向が交差する2つ以上の直線部分を有してよい。
【0016】
上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一つの実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する図である。
【
図4】位置検出段階S102の一例を説明する図である。
【
図5】参考例に係る上面画像202および下面画像204の一例を示す図である。
【
図6】参考例に係る上面画像206-1および下面画像208-1の一例を示す図である。
【
図7】参考例に係る上面画像206-2および下面画像208-2の一例を示す図である。
【
図8】参考例に係る上面画像206-3および下面画像208-3の一例を示す図である。
【
図9】実施例に係る半導体基板10の構成例を示す断面図である。
【
図10】上面画像212および下面画像214の一例を示す図である。
【
図11】実施例に係る上面画像216-1および下面画像218-1の一例を示す図である。
【
図12】上面画像216-2および下面画像218-2の一例を示す図である。
【
図13】上面視における上面マーク30および下面マーク50の形状例を説明する図である。
【
図14】上面マークおよび下面マークの形状およびサイズを変更した複数のサンプルについての、マーク位置の測定結果を示す表である。
【
図16】下面マーク50の他の構造例を示す図である。
【
図17】下面マーク50の他の構造例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。本明細書及び図面において、実質的に同一の機能、構成を有する要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略し、又、本発明に直接関係のない要素は図示を省略する。また、1つの図面において、同一の機能、構成を有する要素については、代表して符合を付し、その他については符合を省略する場合がある。
【0019】
本明細書においては半導体基板の深さ方向と平行な方向における一方の側を「上」、他方の側を「下」と称する。基板、層またはその他の部材の2つの主面のうち、一方の面を上面、他方の面を下面と称する。「上」、「下」の方向は、重力方向または半導体モジュールの実装時における方向に限定されない。
【0020】
本明細書では、X軸、Y軸およびZ軸の直交座標軸を用いて技術的事項を説明する場合がある。直交座標軸は、構成要素の相対位置を特定するに過ぎず、特定の方向を限定するものではない。例えば、Z軸は地面に対する高さ方向を限定して示すものではない。+Z軸方向と-Z軸方向とは互いに逆向きの方向である。正負を記載せず、Z軸方向と記載した場合、+Z軸および-Z軸に平行な方向を意味する。本明細書では、半導体基板の上面および下面に平行な直交軸をX軸およびY軸とする。また、半導体基板の上面および下面と垂直な軸をZ軸とする。本明細書では、Z軸の方向を深さ方向と称する場合がある。また、本明細書では、X軸およびY軸を含めて、半導体基板の上面および下面に平行な方向を、水平方向と称する場合がある。
【0021】
本明細書において「同一」または「等しい」のように称した場合、製造ばらつき等に起因する誤差を有する場合も含んでよい。当該誤差は、例えば10%以内である。
【0022】
図1は、本発明の一つの実施形態に係る半導体装置の製造方法の一例を説明する図である。
図1では、製造方法における一部の製造工程を示している。半導体装置は、シリコン基板等の半導体基板に形成された半導体素子を含む。半導体素子は、例えばIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)等のパワー半導体素子であるが、これに限定されない。
【0023】
半導体素子は、半導体基板の上面側の構造と、下面側の構造とを有してよい。例えば半導体基板の下面側には、IGBT等のトランジスタ素子のエミッタ領域と、還流ダイオード等のダイオード素子のアノード領域とが形成され、上面側にはトランジスタ素子のコレクタ領域と、ダイオード素子のカソード領域とが形成される。一例として半導体素子は半導体基板の上面および下面の間で電流が流れる縦型デバイスである。半導体素子は逆導通IGBT(RC-IGBT)であってよい。
【0024】
本例の製造方法は、マーク形成段階S101、位置検出段階S102、および、素子形成段階S103を備える。マーク形成段階S101では、半導体基板の上面に上面マークを形成し、且つ、半導体基板の下面に下面マークを形成する。本例の半導体基板は、円盤状の半導体ウエハである。半導体基板の上面および下面は、半導体基板において向かい合って配置された2つの主面である。
【0025】
上面マークおよび下面マークは、半導体基板の上面または下面に設けられたレジスト、酸化膜、窒化膜、その他の膜に形成された凹部または凸部であってよい。凹部は、これらの膜を貫通していてよく、貫通していなくてもよい。上面マークまたは下面マークは、半導体基板の上面または下面の一部を除去することで形成された、半導体基板自体の凹部または凸部であってもよい。
【0026】
位置検出段階S102では、上面マークおよび下面マークを観察した画像を取得し、上面視における上面マークおよび下面マークの位置ずれを検出する。上面視とは、半導体基板の上面と垂直な方向から各部材を観察することを指す。上面視では、各部材を半導体基板の上面と平行な面に投影した場合の、各部材の位置を観察してよい。
【0027】
素子形成段階S103では、半導体基板に半導体素子の少なくとも一部の構造を形成する。素子形成段階S103では、形成すべき構造のパターンに応じてパターニングされたレジストを用いて、半導体素子の少なくとも一部の構造を形成してよい。素子形成段階S103では、レジストパターンに基づいて、半導体基板の内部に不純物を注入し、半導体基板をエッチングし、半導体基板に絶縁膜を形成し、または、他の処理を行ってよい。
【0028】
マーク形成段階S101では、半導体基板の上面または下面に形成したレジストに、上面マークまたは下面マークを形成してよい。マーク形成段階S101では、形成すべき半導体素子の構造に応じた素子パターンを形成するレジストに、上面マークまたは下面マークを形成してよい。同一のレジストに形成されるマークと素子パターンとの相対位置は予め定められている。このため、上面マークおよび下面マークの位置ずれを検出することで、上面の素子パターンと下面の素子パターンとの位置ずれを検出できる。位置ずれ量が許容範囲を超えた場合、当該レジストを除去し、新たなレジストを塗布してよい。マーク間の位置ずれ量が小さくなるように、新たなレジストにマークおよび素子パターンを形成してよい。
【0029】
一例として、半導体基板の下面には、トランジスタ素子のゲート構造およびn型のエミッタ領域と、ダイオード素子のp型のアノード領域が形成される。半導体基板の上面には、トランジスタ素子のp型のコレクタ領域と、ダイオード素子のn型のカソード領域が形成される。本例では半導体基板の下面の各構造を形成した後に、上面のコレクタ領域およびカソード領域を形成する。
図1に示した各工程は、一例としてコレクタ領域およびカソード領域を形成する工程である。マーク形成段階S101において、半導体基板の上面に形成したレジストに、上面マークの構造と、コレクタ領域およびカソード領域の一方の構造をパターニングする。素子形成段階S103では、当該レジストをマスクとして不純物を注入することで、コレクタ領域およびカソード領域の一方を形成する。ここで、位置検出段階S102において上面マークおよび下面マークの間の位置ずれを検出することで、当該レジストを用いて形成されるコレクタ領域およびカソード領域と、基板の下面側の構造との位置ずれを検出できる。
【0030】
半導体装置の製造工程は、上述した内容に限定されない。例えば素子形成段階S103では、上面マークの位置を基準位置として、半導体基板の上面に不純物を注入する位置を制御してよく、下面マークの位置を基準位置として、半導体基板の下面に不純物を注入する位置を制御してもよい。この場合、素子形成段階S103では、位置検出段階S102において検出した上面マークおよび下面マークの位置ずれに基づいて、上面マークを基準として形成される構造の位置と、下面マークを基準として形成される構造の位置とを調整してよい。いずれの製造工程においても、上面マークおよび下面マークの位置ずれの検出精度が、半導体素子の上面の構造と下面の構造との位置ずれに影響を与えるので、位置検出段階S102において精度よく位置ずれを検出できることが好ましい。
【0031】
製造方法では、半導体素子の構造毎に、マーク形成段階S101、位置検出段階S102および素子形成段階S103を繰り返してもよい。例えば位置または形状が異なる第1の構造および第2の構造を形成する場合に、第1の構造を形成する場合と、第2の構造を形成する場合のそれぞれで、マーク形成段階S101、位置検出段階S102および素子形成段階S103を行ってよい。
【0032】
図2は、半導体基板10の一例を示す上面図である。半導体基板10には、複数の半導体チップ22が形成されてよい。半導体チップ22は、半導体装置の一例である。半導体基板10の上面12におけるスクライブライン20に沿って半導体基板10を切断することで、それぞれの半導体チップ22を切り出すことができる。本明細書では、半導体基板10の上面12と平行な2つの直交軸をX軸およびY軸とし、上面12と直交する軸をZ軸とする。スクライブライン20は、X軸と平行な部分と、Y軸と平行な部分とを有してよい。
【0033】
図3は、
図2の領域Aの拡大図である。領域Aは、スクライブライン20と、スクライブライン20で分離される2つの半導体チップ22とを含む。マーク形成段階S101では、半導体基板10の上面12におけるスクライブライン20に、上面マーク30を形成してよい。また、半導体基板10の下面において上面マーク30と重なる位置に、下面マーク50を形成してよい。
図3においては下面マーク50を破線で示している。
【0034】
図4は、位置検出段階S102の一例を説明する図である。本例では、
図3において説明した上面マーク30に代えて、上面マーク130を形成している。本例の上面マーク130は、レジスト32に形成されている。レジスト32は、半導体基板10の上面12の上に塗布されている。本例の上面マーク130は、レジスト32に形成された溝部132である。上述したように、レジスト32には、上面マーク130のパターンの他に、半導体素子を形成するためのパターンが設けられてよい。レジスト32は、スクライブライン20と、半導体チップ22の両方に形成されてよい。
【0035】
本例の下面マーク50は、膜54に形成されている。膜54は、半導体基板10の下面14に形成されている。膜54は、酸化膜、窒化膜、レジスト等の絶縁性の膜であってよい。本例の下面マーク50は、膜54に形成された溝部52を有する。膜54は、半導体素子の構造の一部として、半導体チップ22にも形成されてよい。例えば膜54は、半導体素子の絶縁膜として、半導体チップ22にも形成されてよい。溝部52は、半導体基板10自体に設けられていてもよい。
【0036】
マーク形成段階S101では、下面マーク50を覆うカバー部56を形成してもよい。カバー部56は、下面マーク50(本例では膜54)よりも反射率の高い材料で形成される。例えばカバー部56は、アルミニウム等の金属材料で形成される。カバー部56を設けることで、下面マーク50の溝部52における照射光の反射率と、溝部52以外における照射光の反射率との差を大きくできる。このため、下面マーク50を撮像した画像における、溝部52とそれ以外の部分とのコントラストを大きくできる。
【0037】
位置検出段階S102では、半導体基板10の上面12の上方から上面マーク130を観察した上面画像と、半導体基板10の上面12の上方から半導体基板10を透過して下面マーク50を観察した下面画像とを取得する。
図4の例では、上面12の上方に配置された撮像部200により、上面画像および下面画像を取得する。
【0038】
撮像部200は、撮像素子と、半導体基板10に照射する照射光を生成する光源と、照射光を半導体基板10に向けて通過させ、且つ、半導体基板10からの反射光を撮像素子に向けて通過させる光学系とを有する。光学系は、撮像素子の焦点位置を調整する調整部を含んでよい。
【0039】
撮像部200は、上面画像を取得する場合と、下面画像を取得する場合とで、同一波長の照射光を照射してよい。照射光は、半導体基板10を透過できる波長成分を含む。照射光は一例として赤外光の波長成分を含む。
【0040】
上面画像を取得する場合、撮像部200は、半導体基板10の上面12の位置に焦点を合わせてよい。上面画像を取得する場合、撮像部200は、上面マーク130からの反射光を受光する。しかし、撮像部200は、半導体基板10を透過して下面マーク50において反射した光も受光するので、上面画像には、上面マーク130に加えて、下面マーク50が映り込む場合がある。
【0041】
下面画像を取得する場合、撮像部200は、半導体基板10の下面14の位置に焦点を合わせてよい。下面画像を取得する場合、撮像部200は、半導体基板10を透過して、下面マーク50で反射した反射光を受光する。しかし、撮像部200は、上面マーク130で反射した光も受光するので、下面画像には、下面マーク50に加えて、上面マーク130が映り込む場合がある。
【0042】
図5は、参考例に係る上面画像202および下面画像204の一例を示す図である。
図5に示す上面画像202および下面画像204は、上面視における同一の領域の画像である。上面画像202には上面マーク130が含まれており、下面画像204には下面マーク50が含まれている。上述したように、上面画像202には下面マーク50が含まれる場合があるが、
図5の上面画像202では省略している。また下面画像204には上面マーク130が含まれる場合があるが、
図5の下面画像204では省略している。
【0043】
本例の上面マーク130は、上面視において下面マーク50の周囲に配置された溝部132を有する。本例の溝部132は、上面視において下面マーク50を囲んでいる。上面視における溝部132の最小幅をWtとする。幅Wtは、20μmより小さくてよい。
【0044】
本例の下面マーク50は、溝部52を有する。上面視における溝部52の幅は10μm以下であってよく、5μm以下であってもよい。溝部52は、上面視において交差する2つ以上の直線部分51を有してよい。
図5の例では、溝部52は、Y軸方向に延伸する1つ以上の直線部分51-1と、X軸方向に延伸する1つ以上の直線部分51-2とを有する。本例の直線部分51-1と直線部分51-2とは、互いの中央部分で交差している。直線部分51-1は、X軸方向に並んで複数配置されてよい。直線部分51-1の間には、膜54が残存している。直線部分51-2は、Y軸方向に並んで複数配置されてよい。直線部分51-2の間には、膜54が残存している。
【0045】
下面画像204には、カバー部56も含まれてよい。カバー部56は、上面視において下面マーク50よりも大きい。カバー部56は、下面マーク50の全体を覆っている。
【0046】
図6は、参考例に係る上面画像206-1および下面画像208-1の一例を示す図である。上述したように、上面画像206-1には上面マーク130の画像が含まれ、下面画像208-1には下面マーク50の画像が含まれる。
【0047】
本例の上面画像206-1には、下面マーク50およびカバー部56の画像が更に含まれている。
図6では、上面画像206-1に映り込んだ下面マーク50およびカバー部56を破線で示している。下面マーク50およびカバー部56は、上面画像206-1を撮像するときの焦点位置から離れて配置されているので、上面画像206-1における下面マーク50およびカバー部56の画像は、実際の構造物のサイズよりも拡がり、ぼやけて観察される。下面マーク50およびカバー部56の画像の拡がり方は、半導体基板10の厚みT1(
図4参照)に応じて変化する。また、下面マーク50およびカバー部56からの反射光は、半導体基板10を通過するので、減衰する。このため、下面マーク50およびカバー部56の画像の強度は、半導体基板10の厚みT1に応じて変化する。本例の半導体基板10の厚みT1は60μmである。
【0048】
本例の下面画像208-1には、上面マーク130の画像が更に含まれている。
図6では、下面画像208-1に映り込んだ上面マーク130を破線で示している。上面マーク130は、下面画像208-1を撮像するときの焦点位置から離れて配置されているので、下面画像208-1における上面マーク130の画像は、実際の構造物のサイズよりも拡がり、ぼやけて観察される。上面マーク130の画像の拡がり方は、半導体基板10の厚みT1に応じて変化する。上面マーク130からの反射光は、半導体基板10を通過しないので、下面画像208-1における上面マーク130の画像は、上面画像206-1における下面マーク50等の画像に比べて、明瞭に観察される場合がある。
【0049】
図7は、参考例に係る上面画像206-2および下面画像208-2の一例を示す図である。本例では、半導体基板10の厚みT1が120μmであること以外は、
図6と同一の条件で上面画像206および下面画像208を撮像している。上述したように、半導体基板10の厚みT1が増大すると、上面画像206-2における下面マーク50等の画像は更に拡がり、下面画像208-2における上面マーク130の画像は更に拡がる。
【0050】
それぞれの画像(例えば下面画像208-2)において、観察対象のマーク(例えば下面マーク50)の画像と、映り込んだマーク(例えば上面マーク130)の画像とが重なると、観察対象のマークの位置を精度よく観察できなくなる。特に、互いのマークの画像のエッジ位置が近くなると、観察対象のマークのエッジを精度よく観察できなくなり、観察対象のマークの位置検出精度が劣化してしまう。本例のように、上面マーク130が溝部132で形成されている場合、溝部132は2つのエッジ(レジスト32において溝部132を構成する2つの側壁)を近接して有する。このため、上面マーク130の画像がぼやけて溝部132が下面マーク50と重なると、溝部132の2つのエッジの画像が下面マーク50の画像に強く干渉して、下面マーク50の画像を精度よく検出できなくなる。これは、上面画像206-2においても同様である。ただし、上述したように、上面画像206-2においては、観察対象でない下面マーク50等の画像の強度は、半導体基板10の厚みT1に応じて減衰する。一方で、下面画像208-2においては、観察対象の下面マーク50等の画像の強度が、半導体基板10の厚みT1に応じて減衰する。このため上述したマーク画像間の干渉は、下面画像208-2で発生する場合が多い。
【0051】
図8は、参考例に係る上面画像206-3および下面画像208-3の一例を示す図である。本例では、半導体基板10の厚みT1が180μmであること以外は、
図6と同一の条件で上面画像206および下面画像208を撮像している。上述したように、半導体基板10の厚みT1が増大すると、上面画像206-2における下面マーク50等の画像は更に拡がり、下面画像208-2における上面マーク130の画像は更に拡がる。また、下面画像208-2においては、観察対象の下面マーク50等の画像の強度が、半導体基板10の厚みT1に応じて減衰するので、更に下面マーク50が観察しにくくなる。本例では、
図6に示したように半導体基板10の厚みT1が60μmの場合は各マークの位置を精度よく検出できたが、厚みT1が120μmおよび180μmの例では、下面画像208に対するコンピュータによる画像処理によっては、下面マーク50を検出できなかった。
【0052】
図9は、実施例に係る半導体基板10の構成例を示す断面図である。本例の半導体基板10には、
図4から
図8に示した上面マーク130に代えて、上面マーク30が設けられている。他の構造は、
図4から
図8において説明した例と同様である。本例の上面マーク30は、レジスト32に設けられた凹部である。
【0053】
図10は、上面画像212および下面画像214の一例を示す図である。
図10に示す上面画像212および下面画像214は、上面視における同一の領域の画像である。上面画像212には上面マーク30が含まれており、下面画像214には下面マーク50が含まれている。上述したように、上面画像212には下面マーク50が含まれる場合があるが、
図10の上面画像212では省略している。また下面画像214には上面マーク30が含まれる場合があるが、
図10の下面画像214では省略している。
【0054】
上面視において、上面マーク30および下面マーク50の一方が他方よりも大きく、且つ、当該一方のマークが、当該他方のマークの全体を覆っている。
図9および
図10の例では、上面マーク30が下面マーク50よりも大きく、上面マーク30が下面マーク50の全体を覆っている。他の例では、上面マーク30および下面マーク50の構造は、逆になっていてもよい。つまり、下面マーク50が上面マーク30よりも大きく、下面マーク50が上面マーク30の全体を覆っていてもよい。
【0055】
本例の上面マーク30は、半導体基板10の上面12に配置された凹部である。例えば凹部は、レジスト32を部分的に除去することで形成した空間である。上面マーク30の凹部は、上面視において下面マーク50の全体を覆っている。上面マーク30は、半導体基板10の上面12に配置された凸部であってもよい。例えば凸部は、上面マーク30以外のレジスト32を除去することで残存したレジスト32である。この場合も、上面マーク30の凸部は、上面視において下面マーク50の全体を覆っている。このように、上面マーク30の全体を凹部または凸部として、下面マーク50を覆うように形成することで、上面画像212および下面画像214における、互いのマーク画像間の干渉を低減できる。つまり、上面マーク30は一様な凹部または凸部なので、
図5等に示した溝部132を有する上面マーク130に比べてエッジが少ない。このため、マーク画像間の干渉を低減できる。
【0056】
上面視において、下面マーク50を覆う上面マーク30の凹部または凸部の端部から上面マーク30の外側に向かって、所定の距離Dtに渡って、半導体基板10の上面12には凹凸が設けられていないことが好ましい。当該距離Dtは、20μm以上であってよく、30μm以上であってよく、40μm以上であってよく、50μm以上であってもよい。
【0057】
図10に示すように、上面マーク30がレジスト32に設けられた凹部の場合、上面マーク30の端部から距離Dt以上の範囲に渡って、レジスト32が設けられている。レジスト32は、上面マーク30の端部から、スクライブライン20の端部まで、凹凸を有さずに連続して設けられてもよい。上面マーク30が凹部の場合、下面画像214を撮像する場合における照射光の減衰を抑制できる。このため、マーク画像どうしが干渉しやすい下面画像214において、下面マーク50をより精度よく観察できる。
【0058】
上面マーク30が残存したレジスト32である場合、上面マーク30の端部から距離Dt以上の範囲に渡って、レジスト32が設けられていない。上面マーク30の端部から、スクライブライン20の端部まで、レジスト32が配置されていなくてよい。
【0059】
図11は、実施例に係る上面画像216-1および下面画像218-1の一例を示す図である。本例の半導体基板10の厚みT1は60μmである。上述したように、上面画像216-1には上面マーク30の画像が含まれ、下面画像218-1には下面マーク50の画像が含まれる。
【0060】
本例の上面画像216-1には、下面マーク50およびカバー部56の画像が更に含まれている。本例の下面画像208-1には、上面マーク130の画像が更に含まれている。下面画像208-1では、下面マーク50の画像と、映り込んだ上面マーク30の画像とが重なっているが、上面マーク30の画像は、下面マーク50の全体を覆うほぼ一様な画像なので、下面マーク50の画像のエッジへの影響は少ない。このため、下面マーク50の位置を精度よく検出できる。
【0061】
図12は、上面画像216-2および下面画像218-2の一例を示す図である。本例では、半導体基板10の厚みT1が380μmであること以外は、
図11と同一の条件で上面画像216および下面画像218を撮像している。上述したように、半導体基板10の厚みT1が増大すると、上面画像216-2における下面マーク50等の画像の強度が減衰する。本例では、上面画像216-2に対する下面マーク50の映り込みはほとんど観察されなかった。
【0062】
半導体基板10の厚みT1が増大すると、下面画像208-2における上面マーク30の画像は更に拡がる。しかし、上面マーク30の画像は、下面マーク50の全体を覆うほぼ一様な画像なので、下面マーク50の画像のエッジへの影響は少ない。本例では、半導体基板10の厚みT1を380μmにしても、コンピュータによる画像処理で下面マーク50を精度よく検出できた。半導体基板10の厚みT1が120μmまたは180μmの場合についても、同様に下面マーク50を精度よく検出できた。本例によれば、半導体基板10の厚みT1を大きくしても、下面マーク50の位置を精度よく検出できるので、半導体装置を精度よく製造できる。
【0063】
図13は、上面視における上面マーク30および下面マーク50の形状例を説明する図である。
図13では、上面画像212の上面マーク30および下面画像214の下面マーク50を示している。それぞれのマークは焦点位置に設けられているので、それぞれの画像におけるマークの大きさは、実際のマークの大きさを示している。
【0064】
本例の上面マーク30は、下面マーク50よりも大きい。下面マーク50を小さくすることで、カバー部56を小さくできる。上面マーク30のX軸方向における幅をW1、下面マーク50のX軸方向における幅をW2とする。一例としてX軸方向は、これらのマークが設けられたスクライブライン20の延伸方向と垂直な方向である。本例の幅W1は幅W2よりも大きい。幅W1は、幅W2よりも40μm以上大きくてよく、50μm以上大きくてよく、60μm以上大きくてもよい。幅W1は、スクライブライン20のX軸方向の幅よりも小さい。幅W1を大きくすることで、上面視における上面マーク30の端部と、下面マーク50の端部との距離D1を大きくでき、画像におけるマークのエッジどうしの干渉を抑制できる。距離D1は、20μm以上であってよく、25μm以上であってよく、30μm以上であってもよい。半導体基板10の厚みT1が大きいほど、各画像において観察対象でないマークが拡がるので、距離D1を厚みT1に応じて決定してもよい。例えば距離D1は、厚みT1の30%以上であってよく、40%以上であってよく、50%以上であってもよい。距離D1は、厚みT1以下であってよい。他の例では、上面視において下面マーク50が、上面マーク30より大きくてもよい。
図13において説明した下面マーク50を上面マークとして用い、上面マーク30を下面マークとして用いてよい。
【0065】
上面視において、カバー部56は下面マーク50より大きく上面マーク30よりも小さい。カバー部56は、下面マーク50を覆っていればよいので、下面マーク50よりもわずかに大きければよい。上面視においてカバー部56の端部と下面マーク50の端部との距離D2は、カバー部56の端部と上面マーク30の端部との距離D3よりも小さくてよい。距離D2は、距離D3の半分以下であってよく、1/4以下であってよく、1/10以下であってもよい。距離D2は、5μm以下であってもよい。ただし、カバー部56と下面マーク50との端部間の距離が小さすぎると、下面マーク50の端部位置が観察しにくくなる場合がある。距離D2は、1μm以上であってよく、3μm以上であってもよい。距離D3は、20μm以上であってよく、30μm以上であってよく、40μm以上であってもよい。
【0066】
上面視においてカバー部56の形状は、下面マーク50の形状と同一でなく、相似でもないことが好ましい。これにより、カバー部56と、下面マーク50とを区別しやすくなる。本例のカバー部56は、上面視において矩形である。
【0067】
一例として、上面マーク30の幅W1は、80μm以上である。幅W1は、スクライブライン20の幅よりも小さい。幅W1は、100μm以下であってよい。下面マーク50の幅W2は、20μm以上、40μm以下である。カバー部56の幅W3は、40μm以上、60μm以下である。
【0068】
上面マーク30および下面マーク50は、上面視において同一または相似の形状でないことが好ましい。これにより、マーク画像のエッジどうしの干渉を抑制できる。本例の上面マーク30は、4つの辺を有する矩形である。本例の下面マーク50は、2つの長方形が交差した形状を有する。下面マーク50は、交差した2つの長方形を有するので、上面マーク30よりも辺の数が多い。上述したように、下面画像214等における上面マーク30の画像の強度は比較的に強くなり、下面マーク50の画像と干渉しやすい。このため、上面マーク30を、矩形等の辺(エッジ)の数が少ないシンプルな形状とすることで、下面画像214等における上面マーク30の画像の干渉を抑制できる。
【0069】
図14は、上面マークおよび下面マークの形状およびサイズを変更した複数のサンプルについての、マーク位置の測定結果を示す表である。
図14に示す表における数値の単位はμmである。
図14では、上面画像において上面マークの位置を検出でき、且つ、下面画像において下面マークの位置を検出できた測定結果を、丸印で示している。
【0070】
サンプルAは、
図5に示した上面マーク130を有する。上面マーク130の幅W1は160μmであり、溝部132の幅Wtは5μmである。上面マーク130の幅W1は、上面マーク130の溝部132で囲まれた領域の幅である。またサンプルAでは、カバー部56を設け、下面マーク50を設けていない。サンプルAについては、カバー部56を下面マークとして用いている。サンプルAについては、下面画像においてカバー部56が検出でき、且つ、上面画像において上面マーク130が検出できた場合の測定結果を、丸印で示している。
【0071】
サンプルAでは、上面マーク130が細い溝部132を有しているので、下面画像における干渉が比較的に大きい。更に、下面マークとして、上面マーク130と相似形のカバー部56を用いている。このため、下面画像におけるカバー部56の画像と、上面マーク130の映り込み画像とが干渉しやすい。サンプルAでは、上面マーク130の幅W1を160μmまで大きくし、上面マーク130とカバー部56との距離D3を55μmまで大きくすると、半導体基板10の厚みT1が60μm~380μmの範囲で、各マークを検出できた。しかし、幅W1を160μmより小さくし、距離D3を55μmより小さくすると、各マークを検出することが困難になる。
【0072】
サンプルBは、
図10に示した上面マーク30を有する。上面マーク30の幅W1は80μm、下面マーク50の幅W2は36μm、上面マーク30と下面マーク50との距離D1は22μmである。本例では、上面マーク30が一様な凹部なので、下面画像に対する干渉は比較的に小さい。このため、サンプルAよりも各マークを容易に検出できる。距離D1が概ね20μm以上になると、半導体基板10の厚みT1を180μmまで大きくしても、各マークを検出できた。しかし、半導体基板10の厚みT1が380μmより大きくなると、各マークを検出することが困難な場合がある。
【0073】
サンプルEは、
図10に示した上面マーク30を有する。上面マーク30の幅W1は90μm、下面マーク50の幅W2は30μm、上面マーク30と下面マーク50との距離D1は30μmである。本例では、サンプルBに比べて、上面マーク30を大きくし、下面マーク50を小さくすることで、距離D1を大きくしている。本例では、半導体基板10の厚みT1を380μmまで大きくしても、各マークを検出できた。距離D1は、30μm以上であってよい。または、距離D1は、半導体基板10の厚みT1の7%以上であってよく、8%以上であってよく、10%以上であってもよい。
【0074】
サンプルC、Dは、いずれも
図5に示した上面マーク130を有する。ただし、サンプルCの溝部132の幅Wtは10μmであり、サンプルDの溝部132の幅Wtは5μmである。サンプルCの距離D1は22μmであり、サンプルDの距離D1は30μmである。サンプルCの距離D1は、サンプルDの距離D1より小さいので、サンプルCのほうが、マーク間の画像は干渉しやすいとも考えられる。しかし基板厚T1が60μmの場合に、サンプルCでは下面マークを検出できているが、サンプルDでは下面マークを検出できなかった。これは、サンプルCの溝部132の幅Wtが大きく、干渉が抑制されたためと考えられる。
図10に示した距離Dtは、20μm以上であってよい。
【0075】
サンプルD、Eは、距離D1が同一である。しかし、サンプルDでは、いずれの基板厚T1でも各マークを検出できなかったのに対し、サンプルEでは、いずれの基板厚T1においても各マークを検出できている。従って、
図4から
図8において説明した上面マーク130よりも、
図9から
図13において説明した上面マーク30を用いたほうが、各マークを検出しやすいことがわかる。また、サンプルAと比べて、サンプルB、Eは、上面マーク30を小さくできる。例えばサンプルB,Eでは、スクライブライン20よりも各マークを容易に小さくできる。このため、半導体基板10の多様な位置に、各マークを配置することができる。上面マーク30および下面マーク50は、半導体基板10に複数組配置されてよい。
【0076】
また本例では、半導体基板10の上面から、上面マーク30および下面マーク50の両方を観察する。半導体基板10の上面から上面マーク30を観察し、下面から下面マーク50を観察する場合、半導体基板10を載置するステージに、下面マーク50を観察するための観察孔を設けなければならない。製造工程により半導体基板10に反りが生じている場合、ステージに観察孔を設けると、観察孔を設けた部分では、半導体基板10をステージに吸着できないため、半導体基板10がステージ上で反った状態となり測定精度が悪化してしまう虞がある。また、マークを配置する位置も、当該観察孔の位置に限定されてしまう。本例では、ステージに観察孔を設けずともよいため、半導体基板10をステージにしっかり吸着して平坦にすることで、測定精度の悪化を減らすことができる。また、上面マーク30および下面マーク50を多様な位置に配置できる。このため、半導体基板10が反っている場合でも、マーク間の位置ずれを検出できる。また、半導体基板10の任意の箇所でマーク間の位置ずれを検出できる。
【0077】
図15は、各部材の膜厚を示す図である。
図15では、半導体基板10の厚みT1、レジスト32の膜厚T2、膜54の膜厚T3、および、カバー部56の膜厚T4を示している。一例として半導体基板10の厚みT1は、60μm以上、380μm以下である。厚みT1は、半導体装置が有するべき耐圧に応じて定めてよい。
【0078】
一例としてレジスト32の膜厚T2は、1μm以上、6μm以下である。つまり上面マーク30の高さは、1μm以上、6μm以下である。一例として膜54の膜厚T3は、0.3μm以上、1.2μm以下である。つまり下面マーク50の高さは、0.3μm以上、1.2μm以下である。一例としてカバー部56の膜厚T4は、0.5μm以上、6μm以下である。膜厚T4は、膜54よりも下側に形成された部分の厚みであってよい。また、半導体基板10自体に溝を形成して、いずれかのマークを形成する場合、当該溝の深さは5μm以上、6μm以下であってよい。
【0079】
図16は、下面マーク50の他の構造例を示す図である。本例の下面マーク50は、溝部52の構造が、
図1から
図15における下面マーク50と相違する。他の構造は、
図1から
図15において説明したいずれかの例の下面マーク50と同様である。
【0080】
本例の下面マーク50は、溝部52-1、溝部52-2および溝部52-3を有する。溝部52-1は、2つの直線部分51の外形に沿って配置されている。本例の溝部52-1は、X軸方向に長手を有する長方形と、Y軸方向に長手を有する長方形とが交差した形状の外形に沿って配置されている。
【0081】
溝部52-2および溝部52-3は、溝部52-1が囲む領域に配置されている。本例の溝部52-2はY軸方向に延伸しており、溝部52-3はX軸方向に延伸している。溝部52-2および溝部52-3は、互いの中央部分において交差している。
【0082】
図1から
図15の例では、溝部52-2のY軸方向の両端と、溝部52-3のX軸方向の両端は、溝部52-1と接続している。本例の溝部52-2のY軸方向の両端と、溝部52-3のX軸方向の両端は、溝部52-1と分離している。溝部52-2および溝部52-3と、溝部52-1との間には膜54が残存している。本例によれば、溝部52どうしの交差部分を少なくできる。
【0083】
レジストを用いたエッチング等により溝部52を形成する場合、形成すべき溝部52のパターンに応じてレジストを成形する。溝部52どうしの交差部分が存在すると、レジストが小さい領域に分割されてしまい、レジストが剥離しやすくなる。本例では、溝部52の交差部分を少なくできるので、レジストの剥離を抑制して、溝部52を精度よく形成できる。
【0084】
エッチング等により溝部52を形成する場合、溝部52どうしの交差部分は、他の部分に比べて溝部52の幅が大きくなる場合がある。溝部52にポリシリコン等の材料を埋め込むような場合、溝部52の幅の広い部分には、当該材料が十分に埋め込めない場合がある。溝部52に対する当該材料の埋込が十分でない部分が存在すると、当該部分にレジスト等が入り込んでしまい、レジスト等が残存する場合がある。また、当該部分が、異物の発生源となる可能性もある。本例によれば、溝部52の交差部分を少なくできるので、溝部52の埋込を精度よく行える。
【0085】
図17は、下面マーク50の他の構造例を示す図である。本例の下面マーク50は、溝部52-2および溝部52-3の構造が、
図16の例と相違する。他の構造は、
図16の例と同様である。
【0086】
本例の溝部52-2は、Y軸方向の中央部分に配置された膜54により2つに分離している。溝部52-3は、X軸方向の中央部分に配置された膜54により2つに分離している。溝部52-2および溝部52-3も、交差部分に配置された膜54により、互いに分離している。本例によれば、溝部52の交差部分を更に少なくできる。
【0087】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0088】
10・・・半導体基板、12・・・上面、14・・・下面、20・・・スクライブライン、22・・・半導体チップ、30・・・上面マーク、32・・・レジスト、50・・・下面マーク、51・・・直線部分、52・・・溝部、54・・・膜、56・・・カバー部、130・・・上面マーク、132・・・溝部、200・・・撮像部、202、206、212、216・・・上面画像、204、208、214、218・・・下面画像
【手続補正書】
【提出日】2023-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0060
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0060】
本例の上面画像216-1には、下面マーク50およびカバー部56の画像が更に含まれている。本例の下面画像218-1には、上面マーク130の画像が更に含まれている。下面画像218-1では、下面マーク50の画像と、映り込んだ上面マーク30の画像とが重なっているが、上面マーク30の画像は、下面マーク50の全体を覆うほぼ一様な画像なので、下面マーク50の画像のエッジへの影響は少ない。このため、下面マーク50の位置を精度よく検出できる。