(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173210
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水素カートリッジ、及び、ガス供給システム
(51)【国際特許分類】
F17C 13/12 20060101AFI20241205BHJP
F17C 13/04 20060101ALI20241205BHJP
F17C 13/08 20060101ALI20241205BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/0432 20160101ALI20241205BHJP
H01M 8/04746 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
F17C13/12 301Z
F17C13/04 301D
F17C13/08 301A
H01M8/04 H
H01M8/0432
H01M8/04746
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091465
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100129838
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 典輝
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】片岡 千明
【テーマコード(参考)】
3E172
5H127
【Fターム(参考)】
3E172AA02
3E172AA03
3E172AA05
3E172AA06
3E172AB01
3E172BA01
3E172BB13
3E172BB17
3E172BC01
3E172BC04
3E172BC05
3E172BC07
3E172BC08
3E172BD03
3E172DA01
3E172DA75
3E172EA12
3E172EA22
3E172JA02
3E172JA05
3E172KA03
3E172KA12
3E172KA22
5H127AB04
5H127AC17
5H127BA24
5H127BA59
5H127DB82
5H127DC81
5H127EE13
5H127EE30
(57)【要約】
【課題】水素タンクが火炎等による熱影響を受けた際に、より確実に安全弁の機能を発揮することができるようにする。
【解決手段】タンクは、水素ガスを貯蔵する容器本体と、容器本体に設けられ、開閉によって水素ガスの排出の開始及び停止を切り替える自己閉鎖式弁と、容器本体に設けられ所定の温度に達した時に開栓してタンク内のガスを逃がす溶栓と、水素カートリッジが加熱された際に、容器本体よりも、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、及び/又は、溶栓への熱移動を促進する部材を具備する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を貯蔵するタンクを具備する水素カートリッジであって、
前記タンクは、
水素ガスを貯蔵する容器本体と、
前記容器本体に設けられ、開閉によって前記水素ガスの排出の開始及び停止を切り替える自己閉鎖式弁と、
前記容器本体に設けられ所定の温度に達した時に開栓して前記タンク内のガスを逃がす溶栓と、
前記水素カートリッジが加熱された際に、前記容器本体よりも、前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、及び/又は、前記溶栓への熱移動を促進する部材を具備する、
水素カートリッジ。
【請求項2】
前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、前記自己閉鎖式弁の周囲に設けられた断熱材であり、前記溶栓の周囲には前記断熱材が配置されない、請求項1に記載の水素カートリッジ。
【請求項3】
前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、前記自己閉鎖式弁に対して間隙を有して配置された遮熱材であり、前記溶栓の周囲に前記遮熱材が配置されない、請求項1に記載の水素カートリッジ。
【請求項4】
前記溶栓への熱移動を促進する部材は、前記タンクの外周側に一部が配置され、前記溶栓に接触するように延びる前記容器本体よりも熱伝導率の高い部材である、請求項1に記載の水素カートリッジ。
【請求項5】
前記溶栓への熱移動を促進する部材は、前記タンクの外周側に一部が配置され、前記溶栓に接触するように延びる可燃性の樹脂部材である、請求項1に記載の水素カートリッジ。
【請求項6】
水素カートリッジは、前記タンクを内包するケースを有し、
前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、前記溶栓への熱移動を促進する部材はその少なくとも一部が前記ケースに配置されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の水素カートリッジ。
【請求項7】
水素タンクを収納する収納部を有するガス供給システムであって、
前記水素タンクには、
水素を貯蔵する容器本体と、
前記容器本体に設けられ、開閉によって前記水素ガスの排出の開始及び停止を切り替える自己閉鎖式弁と、
前記容器本体に設けられ所定の温度に達した時に開栓して前記水素タンク内のガスを逃がす溶栓と、を備え、
前記収納部には、前記水素カートリッジが加熱された際に、前記容器本体よりも、前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、及び/又は、前記溶栓への熱移動を促進する部材を具備する、
ガス供給システム。
【請求項8】
前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、前記収納部のうち、前記自己閉鎖式弁の周囲となる位置に設けられた断熱材であり、前記溶栓の周囲となる位置には前記断熱材が配置されない、請求項7に記載のガス供給システム。
【請求項9】
前記自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、前記収納部のうち、前記自己閉鎖式弁の周囲となる位置に設けられた遮熱材であり、前記溶栓の周囲となる位置には前記遮熱材が配置されない、請求項7に記載のガス供給システム。
【請求項10】
前記溶栓への熱移動を促進する部材は、前記収納部に一部が配置され、前記溶栓に接触するように延びる前記容器本体よりも熱伝導率の高い部材である、請求項7に記載のガス供給システム。
【請求項11】
前記溶栓への熱移動を促進する部材は、前記収納部に一部が配置され、前記溶栓に接触するように延びる可燃性の樹脂部材である、請求項7に記載のガス供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は水素カートリッジ、及び、当該水素カートリッジが装着されて水素の提供を受けるガス供給システムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料電池システムを搭載した自動二輪車において、交換可能な水素ボンベを搭載し、水素ボンベが空になった際に、水素ボンベを取り外して交換することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術では、例えば事故や不具合等で水素ボンベが火炎に包まれた際に溶栓(安全弁)によって水素を逃がす構造が採用されていることが多いが、溶栓が解放されて水素が逃がされる前に、水素供給のためのバルブが火炎の熱負荷によって解放されることで水素が予期せぬ方向に放出される可能性がある。
【0005】
本開示では上記問題を鑑み、水素タンクが火炎等による熱影響を受けた際に、より確実に安全弁の機能を発揮することができる水素カートリッジを提供することを目的とする。また、水素カートリッジを備えるガス供給システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願は、水素を貯蔵するタンクを具備する水素カートリッジであって、タンクは、水素ガスを貯蔵する容器本体と、容器本体に設けられ、開閉によって水素ガスの排出の開始及び停止を切り替える自己閉鎖式弁と、容器本体に設けられ所定の温度に達した時に開栓してタンク内のガスを逃がす溶栓と、水素カートリッジが加熱された際に、容器本体よりも、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、及び/又は、溶栓への熱移動を促進する部材を具備する、水素カートリッジを開示する。
【0007】
上記水素カートリッジにおいて、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、自己閉鎖式弁の周囲に設けられた断熱材であり、溶栓の周囲には断熱材が配置されないように構成できる。
【0008】
上記水素カートリッジにおいて、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、自己閉鎖式弁に対して間隙を有して配置された遮熱材であり、溶栓の周囲に遮熱材が配置されないように構成できる。
【0009】
上記水素カートリッジにおいて、溶栓への熱移動を促進する部材は、タンクの外周側に一部が配置され、溶栓に接触するように延びる容器本体よりも熱伝導率の高い部材であるように構成できる。
【0010】
上記水素カートリッジにおいて、溶栓への熱移動を促進する部材は、タンクの外周側に一部が配置され、溶栓に接触するように延びる可燃性の樹脂部材であるように構成できる。
【0011】
上記水素カートリッジにおいて、水素カートリッジは、タンクを内包するケースを有し、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、溶栓への熱移動を促進する部材はその少なくとも一部がケースに配置されているように構成できる。
【0012】
本願は、水素タンクを収納する収納部を有するガス供給システムであって、水素タンクには、水素を貯蔵する容器本体と、容器本体に設けられ、開閉によって水素ガスの排出の開始及び停止を切り替える自己閉鎖式弁と、容器本体に設けられ所定の温度に達した時に開栓して水素タンク内のガスを逃がす溶栓と、を備え、収納部には、水素カートリッジが加熱された際に、容器本体よりも、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材、及び/又は、溶栓への熱移動を促進する部材を具備する、ガス供給システムを開示する。
【0013】
上記ガス供給システムにおいて、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、収納部のうち、自己閉鎖式弁の周囲となる位置に設けられた断熱材であり、溶栓の周囲となる位置には断熱材が配置されないように構成できる。
【0014】
上記ガス供給システムにおいて、自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材は、収納部のうち、自己閉鎖式弁の周囲となる位置に設けられた遮熱材であり、溶栓の周囲となる位置には遮熱材が配置されないように構成できる。
【0015】
上記ガス供給システムにおいて、溶栓への熱移動を促進する部材は、収納部に一部が配置され、溶栓に接触するように延びる容器本体よりも熱伝導率の高い部材で構成できる。
【0016】
上記ガス供給システムにおいて、溶栓への熱移動を促進する部材は、収納部に一部が配置され、溶栓に接触するように延びる可燃性の樹脂部材で構成できる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、水素タンクが火炎等による熱影響を受けた際に、開閉弁(自己閉鎖式弁)が熱による不具合を生じる前に、より確実に安全弁(溶栓)の機能を発揮させて、意図した部位からのガスの排出をさせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1はガス供給システム10の構成を表す図である。
【
図2】
図2は水素カートリッジ50の構成を表す図である。
【
図3】
図3は水素カートリッジ50が収納部23に収納された場面を説明する図である。
【
図4】
図4(a)は形態1A、
図4(b)は形態1Bを説明する図である。
【
図5】
図5(a)は形態1C、
図5(b)は形態1Dを説明する図である。
【
図6】
図6(a)は形態2A、
図6(b)は形態2Bを説明する図である。
【
図8】
図8(a)は形態3A、
図8(b)は形態3Bを説明する図である。
【
図9】
図9(a)は形態4A、
図9(b)は形態4Bを説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
1.ガス供給システムの基本構造
初めに、水素カートリッジ、及び、該水素カートリッジが装着されるガス供給システムについてその基本的な構造を説明する。
図1に1つの形態にかかるガス供給システム10の構成を概念的に示した。このようなガス供給システム10はガスの供給源である水素カートリッジ50、このガスの供給先であるガス消費装置20、及び、制御装置30を有している。このガス供給システム10は、水素カートリッジ50に貯留された水素をガス消費装置20に含まれる燃料電池21に供給して発電するシステムである。さらに、本形態では水素カートリッジ50はガス消費装置20に対して着脱することができるように構成されている。
以下に詳しく説明する。
【0020】
1.1.水素カートリッジ
水素カートリッジ50は供給するガス(本形態では水素)を液体状態や気体状態で貯蔵しておく容器である。
図2に説明のための図を示した。
図2(a)は水素カートリッジ50の外観図(内包されるタンク51を点線で表している。)、
図2(b)は水素カートリッジ50の軸線方向Oに沿った断面図である。これらの図からわかるように、本形態で水素カートリッジ50は、タンク51、ケース58を有している。
また、タンク51は、容器本体を構成するライナ52、補強層53、及び、保護層54を備え、さらに口金55、自己閉鎖式弁56、溶栓57を有している。
【0021】
1.1.1.ライナ
ライナ52は、タンク51の容器本体の内部空間を区画する中空の部材であり本形態では円筒状である。ライナ52は、径が概ね一定である胴体部52aの両端の開口がドーム状の側端部52bにより狭められ、狭められた開口52cに口金55が配置されている。
ライナ52はその内部空間に収容されたもの(例えば水素)を漏らすことなく保持することができる材料で構成されていればよく、材料は公知のものを用いることができる。具体的には例えばナイロン樹脂、ポリエチレン系の合成樹脂や、ステンレス鋼、アルミニウム等の金属等からなるものである。その中でも、タンクの軽量化の観点からライナを構成する材料は合成樹脂であることが好ましい。
ライナ52の厚さは特に限定されることはないが、0.5mm~3.0mmであることが好ましい。
【0022】
1.1.2.補強層
補強層53は、容器本体を構成する部材の1つであり、繊維が複数層に亘って積層されるとともに、その繊維には硬化した樹脂が含浸されている。繊維による層は、ライナ52の外周に繊維束が所定の厚さにまで複数層に亘って巻き付けられてなる。補強層53の厚さや繊維束の巻き数は必要な強度により決められるため特に限定されることはないが、10mm~30mm程度である。
【0023】
<繊維束>
補強層53の繊維束には例えば炭素繊維が用いられており、繊維束は炭素繊維が束となって所定の断面形状(例えば長方形断面)を有する帯状である。具体的には特に限定されることはないが、断面形状が、幅が6mm~20mm、厚さが0.1mm~0.3mm程度の長方形であることが挙げられる。繊維束に含まれる炭素繊維の量も特に限定されることはないが、例えば36000本程度の炭素繊維からなることが挙げられる。
【0024】
<含浸樹脂>
補強層53において繊維(繊維束)に含浸及び硬化された樹脂は、これにより繊維の強度を高めることができるものであれば特に限定されることはない。これには例えば熱により硬化する熱硬化樹脂を挙げることができ、具体的にはアミン系又は無水物系の硬化促進剤、及び、ゴム系の強化剤を含むエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等がある。その他、エポキシ樹脂を主剤とし、これに硬化剤を混ぜることにより硬化する樹脂組成物も挙げることができる。これによれば、主剤と硬化剤とを混ぜてから硬化するまでの間にこの混合物である樹脂組成物を繊維層に到達及び浸透させることで、自動的に硬化する。
【0025】
1.1.3.保護層
必要に応じて容器本体を構成する部材の1つとして補強層53の外周に保護層54が配置されてもよい。設けられた際には例えばガラス繊維が巻かれ、ここに樹脂が含浸されてなる。含浸される樹脂は補強層52と同様に考えることができる。これによりタンク51に対して耐衝撃性を付与することができる。
保護層54の厚さは特に限定されることはないが、1.0mm~1.5mm程度とすることができる。
【0026】
1.1.4.口金、自己閉鎖式弁、溶栓
口金55は、ライナ52の2つの開口52cのそれぞれに取り付けられている部材であり、ライナ52の軸線Oの方向両端のそれぞれに配置され、容器本体の内外を連通する開口として機能するとともに弁が配置されている。一方の口金55には自己閉鎖式弁56、他方の口金55には溶栓57が配置されている。
口金55を構成する材料は必要な強度を有していれば特に限定されることはないが、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、及び鉄等を挙げることができる。
【0027】
自己閉鎖式弁56はいわゆる逆止弁、開閉弁であり、水素カートリッジ50がガス供給システム10に装着されていないときには閉鎖され、後述するようにガス供給システム10のガス消費装置20に装着する際にプッシュロッド24aで押圧されることで開放される。
自己閉鎖式弁56としては公知のものを用いることができるが、シール材として例えば全芳香族ポリイミド樹脂(例えばべスペル(登録商標)、デュポン社)が用いられている。
【0028】
溶栓57は、可溶合金安全弁ともいわれ所定の温度に達した時に開栓してタンク内のガス(水素)を逃がす安全弁である。溶栓57の具体的態様は特に限定されることはなく公知のものを用いることができる。
【0029】
1.1.5.ケース
ケース58は、タンク51を内包して水素カートリッジ50の外郭を形成する部材であり、筐体58a、取っ手58dを有している。
筐体58aは筒状の部材であり、その内側にタンク51を収納することができるように構成されている。また筐体58aでは収納されたタンク51の自己閉鎖式弁56、溶栓57が対向する位置にはそれぞれ穴58b、孔58cが設けられており、外部から自己閉鎖式弁56にアクセスし、溶栓57から射出した水素を外部に排出することができるように構成されている。
取っ手58dは筐体58aのうち溶栓57側となる端部に配置されるアーチ状の部材であり、使用者はこの取っ手58dを持って水素カートリッジ50の持ち運びや、ガス供給システム10に水素カートリッジ50の着脱の操作をすることができる。
【0030】
1.1.6.その他
タンク51の許容圧力は特に限定されることはないが、より多くの水素を供給できる観点から20MPaを超えて70MPa以下の許容圧力で水素を貯蔵できるタンクを挙げることができる。
【0031】
本形態では上記のように、自己閉鎖式弁56と溶栓57とがそれぞれ異なる口金55に配置され、タンク51の一端側と他端側とで反対側となるように設けられている。本開示では必ずしもこのよう形態に限定されることはなく、同じ口金に両弁が配置される形態であってもよいが、後述するように本形態のように自己閉鎖式弁56と溶栓57とがそれぞれ異なる口金55に配置され、タンク51の一端側と他端側とで反対側となるように設けられている形態においてより顕著な効果を奏するものとなる。
【0032】
本形態のガス供給システム10では水素カートリッジ50が複数設けられており(例えば3つ)、それぞれのタンク51に水素が充填される。ここでは3つの水素カートリッジ50が配置される例を挙げ、これらを区別するために符号を50a、50b、50cで表した。これらの水素カートリッジ50のタンク51は全て同じ容量であってもよいし、異なる容量のタンクが含まれていてもよい。
【0033】
1.2.ガス消費装置
ガス消費装置20は、水素カートリッジ50のガス供給先であり、ガスを受け取るとともにこれを消費する装置である。本形態でガス消費装置20は
図1に表れているように、燃料電池21、供給流路22、収納部23、接続装置24、インジェクション25、圧力計26を備えている。
ガス消費装置としては、水素を燃料の1つとして発電することにより目的を達する装置を挙げることができる。特に限定されることはないが、例えば燃料電池による発電及び/又は蓄電装置、燃料電池により動力を得る自動車等を挙げることができる。
【0034】
1.2.1.燃料電池
燃料電池21は供給されたガスを消費する機器であり、水素カートリッジ50から水素の供給を受けるとともに不図示の空気孔から空気の供給を受けて発電する。燃料電池21の具体的構成は特に限定されることはなく公知のものを用いることができる。
【0035】
1.2.2.供給流路
供給流路22は、水素カートリッジ50から燃料電池21にガスを導く経路であり配管により構成されている。本形態では水素カートリッジ50a、50b、50cのそれぞれと燃料電池21とが接続されている。ここでは水素カートリッジ50a、50b、50cのそれぞれから延びる配管22a、22b、22cが合流して1つの配管22dとなり燃料電池21に接続されている。
【0036】
1.2.3.収納部
収納部23は、水素カートリッジ50をガス消費装置20に接続する際に水素カートリッジ50が収納される部位である。
図3には
図2(b)と同じ視点で、水素カートリッジ50がガス消費装置20に接続された場面を表した。
図3からわかるように、収納部23は水素カートリッジ50が配置される空間であり、水素カートリッジ50を出し入れできる開口23bを有した内壁23aにより囲まれる空間である。収納部23のうち当該開口とは反対側となる壁部には接続装置24が配置されている。
【0037】
1.2.4.接続装置
接続装置24は供給流路22のうち水素カートリッジ50のタンク51との接続部分に配置され、上記したタンク51の自己閉鎖式弁56に接続するとともに、タンク51の自己閉鎖式弁56の開閉を操作する。
図3からわかるように接続装置24は収納部23に配置された棒状のプッシュロッド24aを有しており、水素カートリッジ50が収納部23に収納された際にプッシュロッド24aが自己閉鎖式弁56の弁体を押圧するこで自己閉鎖式弁56を開放させつつ供給流路22に接続させる。
【0038】
1.2.5.インジェクション
インジェクション25は接続装置24と燃料電池21との間の供給流路22(本形態では供給流路22d)に配置され、燃料電池21への水素の供給を制御する。インジェクションの具体的形態は特に限定されることはないが、流量調整弁を挙げることができる。
【0039】
1.2.6.圧力計
圧力計26は、接続装置24とインジェクション25との間における供給流路22の流路内圧力(配管内の圧力)を測定する圧力計である。圧力計26の具体的形態は特に限定されることはないが、得られた圧力値データを制御装置30に送信できるように構成されている。
【0040】
1.3.制御装置
制御装置30は、ガス供給システム10の各機器を制御し、適切な運転を維持する装置であり、接続装置24のプッシュロッド24a、インジェクション25、圧力計26等と通信できるように構成されている。
制御装置30は、プロセッサーであり演算を行うCPU(Central Processing Unit、中央演算ユニット)、作業領域として機能するRAM(Random Access Memory)、記録媒体として機能するROM(Read-Only Memory)、有線、無線を問わず情報を制御装置30に受け入れるインターフェイスである受信部、及び、有線、無線を問わず情報を制御装置30から外部に送るインターフェイスである送信部を備えている。そして制御装置30は、各機器からの情報を得てガス供給システム10を運転するために必要な演算をして必要な機器へ制御信号を送信する。
このような制御装置30は典型的にはコンピュータにより構成できる。
【0041】
2.本開示にかかる水素カートリッジの態様
水素カートリッジは、水素供給システムに装着されている状態、及び、装着されていない状態のいずれの場面でも何らかの理由により火炎に晒されることを想定する必要がある。そのため、溶栓を配置して所定の温度に達したときにタンクからガスを排出する安全策が取られている。このとき、タンクに対する火炎等の熱源の位置や姿勢によっては溶栓より先に開閉弁が加熱されてしまい開閉弁側で不具合が生じて予期せぬ方向にガスが排出されてしまう虞がある。特に、上記した水素カートリッジ50のように、自己閉鎖式弁56(開閉弁)と溶栓57とが互いにタンク51の反対側となるような離隔した位置に配置された場合にはその傾向が強い。開閉弁と溶栓とをタンクの同じ側に配置すると当該弁を配置した側で弁が重なるため大きくなる傾向にあり、本形態のように弁をタンクの一方と他方とに分けることで、水素カートリッジの小型化を図ることができる利点がある。
そのため、上記した水素カートリッジ50では以下のような形態を具備している。
【0042】
2.1.自己閉鎖式弁側態様
第1の態様では、自己閉鎖式弁56側に容器本体よりも熱が伝わり難く(熱移動を遅らせる)、及び/又は、自己閉鎖式弁56に直接熱が伝わり難くする(熱移動を遅らせる)ように構成する。これにより自己閉鎖式弁56に不具合が生じる前に溶栓57に熱を伝えて溶栓57が作動し意図したガス排出を得る。以下に具体的な形態例について説明する。
【0043】
2.1.1.形態1A
図4(a)に形態1Aにかかる水素カートリッジ50を示した。
図4(a)は
図2(b)と同じ視点による図である。形態1Aではタンク51のうち保護層54の外周、自己閉鎖式弁56の外周及び端面部を断熱材61、62により覆い、溶栓57の外周は覆わない構成である。本形態では保護層54の外周、自己閉鎖式弁56の外周を断熱材61で覆い、自己閉鎖式弁56の端面はキャップ状の断熱材62により覆っている。
このような容器本体よりも自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材である断熱材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、自己閉鎖式弁56への熱影響を抑えつつ、先に溶栓57が機能して意図したガスの排出をすることができる。
断熱材の種類は特に限定されることはなく公知のものを用いることができ、典型的には熱伝導率が0.2W/(m・K)以下、好ましくは0.1W/(m・K)以下の材料を適用することができる。具体例としては独立気泡構造のニトリルゴム等が挙げられる。
【0044】
2.1.2.形態1B
図4(b)に形態1Bにかかる水素カートリッジ50を示した。
図4(b)は
図2(b)と同じ視点による図である。形態1Bではケース58の筐体58aの内面、及び、自己閉鎖式弁56の端面部を断熱材63、62により覆い、溶栓57の外周は覆わない構成である。本形態ではケース58の筐体58aの内面を断熱材63で覆い、自己閉鎖式弁56の端面はキャップ状の断熱材62により覆っている。
このような容器本体よりも自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材である断熱材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、断熱材63、62により自己閉鎖式弁56への熱影響を抑えつつ、先に溶栓57が機能して意図したガスの排出をすることができる。
断熱材の種類は形態1Aと同様に考えることができる。
【0045】
2.1.3.形態1C
図5(a)に形態1Cにかかる水素カートリッジ50を示した。
図5(a)は
図2(b)と同じ視点による図である。形態1Cではケース58の筐体58aの内面、及び、自己閉鎖式弁56の端面部を容器本体より熱伝導率が高い材料からなる遮熱材64、65により覆い、溶栓57の外周は覆わない構成である。本形態ではケース58の筐体58aの内面を遮熱材64で覆い、自己閉鎖式弁56の端面はキャップ状の遮熱材65により覆っている。また、遮熱材64とタンク51の保護層54、及び遮熱材65と自己閉鎖式弁56とは接触することなく間隙Aを有しており、ここに空気層を形成するように構成されている。
このような容器本体よりも自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材である遮熱材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、遮熱材64、65が熱を拡散しつつ外部に逃がし、自己閉鎖式弁56への熱影響を抑えつつ、先に溶栓57が機能して意図したガスの排出をすることができる。
遮熱材の種類は特に限定されることはなく公知のものを用いることができ、典型的には熱伝導率が50W/(m・K)以上、好ましくは200W/(m・K)以上の材料を適用することができる。具体例としては金属を挙げることができ、例えば鉄やアルミニウムを適用できる。
【0046】
2.1.4.形態1D
図5(b)に形態1Dにかかる水素カートリッジ50を示した。
図5(b)は
図2(b)と同じ視点による図である。形態1Dではタンク51の保護層54の外周を断熱材66、自己閉鎖式弁56の外周及び端面部を遮熱材67、68により覆い、溶栓57の外周は覆わない構成である。遮熱材67、68と自己閉鎖式弁56とは接触することなく間隙を有しており、ここに空気層を形成するように構成されている。
このような容器本体よりも自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材である断熱材、遮熱材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱影響を受けたとき、断熱材66が容器本体へ熱の伝達を抑制し、遮熱材67、68が熱を拡散しつつ外部に逃がすことで、自己閉鎖式弁56への熱影響を抑えつつ、先に溶栓57が機能して意図したガスの排出をすることができる。
断熱材の種類は形態1A、遮熱材の種類は形態1Cと同様に考えることができる。
【0047】
2.2.溶栓側態様
第2の態様では、溶栓57側に容器本体よりも熱が伝わり易くなるように構成する。これにより自己閉鎖式弁56に不具合が生じる前に溶栓57に熱が伝わり溶栓57が作動して意図したガス排出を得る。以下に具体的な形態について説明する。
【0048】
2.2.1.形態2A
図6(a)に形態2Aにかかる水素カートリッジ50を示した。
図6(a)は
図2(b)と同じ視点による図である。形態2Aでは熱伝導材71が配置されている。熱伝導材71は容器本体よりも熱伝導率が高い材料であり、本形態で熱伝導材71は、ケース58の筐体58aの外周を覆うとともに、これに連続して溶栓57に接触するように延在している。本形態では自己閉鎖式弁56は断熱材や遮熱材に覆われておらず、熱伝導材に接触していない。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である熱伝導材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、熱伝導材71を介して溶栓57に熱が速く伝わり、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されることで機能し、意図したガスの排出をすることができる。
熱伝導材の種類は特に限定されることはなく公知のものを用いることができ、典型的には熱伝導率が50W/(m・K)以上、好ましくは200W/(m・K)以上の材料を適用することができる。具体例としては金属を挙げることができ、例えば鉄やアルミニウムを適用できる。
【0049】
2.2.2.形態2B
図6(b)に形態2Bにかかる水素カートリッジ50を示した。
図6(b)は
図2(b)と同じ視点による図である。形態2Bでは熱伝導材72が配置されている。熱伝導材72は容器本体より熱伝導率が高い材料であり、本形態で熱伝導材72は、ケース58の筐体58aの内面を覆うとともに、これに連続して溶栓57に接触するように延在している。本形態では自己閉鎖式弁56は断熱材や遮熱材に覆われておらず、熱伝導材に接触していない。このとき、熱伝導材72とタンク51の保護層54との間に間隙を有し、ここに空気層が形成されていることが好ましい。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である熱伝導材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、熱伝導材72を介して溶栓57に熱が速く伝わり、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されることで機能し、意図したガスの排出をすることができる。
熱伝導材の種類は形態2Aと同様に考えることができる。
【0050】
2.2.3.形態2C
形態2Cはケース58の筐体58aのうち筒状の側面を形成する部位、及び、溶栓57側となる端部を形成する部位を可燃性の樹脂により形成する(不図示)。筐体58aのうち自己閉鎖式弁56側となる端部を形成する部位は、可燃性でない材料により形成する。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である可燃性の樹脂を配置することで、水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、可燃性の樹脂により形成された筐体58aの部位が燃焼して導火の役割をすることで溶栓57に熱が速く伝わり、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されることで機能し、意図したガスの排出をすることができる。
このような可燃性の樹脂の種類は特に限定されることはないが、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)を挙げることができる。
【0051】
2.2.4.形態2D
図7に形態2Dにかかる水素カートリッジ50を示した。
図7は
図2(b)と同じ視点による図である。形態2Dでは、ケース58の筐体58aのうち筒状の側面を形成する部位を可燃性の樹脂により形成し、これに連続して溶栓57に接触するように熱伝導材73が延在している。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である熱伝導材、可燃性の樹脂を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、可燃性の樹脂により形成された筐体58aの部位が燃焼して導火の役割をし、熱伝導材73に熱が伝わり、さらにこの熱が熱伝導材73を伝わって溶栓57に達することで、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されて機能し、意図したガスの排出をすることができる。
可燃性の樹脂は形態2C、熱伝導材の種類は形態2Aと同様に考えることができる。
【0052】
2.3.その他
上記形態1A~1Dと形態2A~2Dとは、併用してもよい。すなわち、自己閉鎖式弁56に容器本体よりも熱を伝え難くする構成と、溶栓57に容器本体よりも熱を伝え易くする構成とを合わせて適用してもよい。より具体的には形態1Aと形態2A~2Dとのいずれか、形態1Bと形態2A~2Dとのいずれか、形態1Cと形態2A~2Dとのいずれか、及び、形態1Dと形態2A~2Dとのいずれかを組み合わせることができる。
【0053】
3.本開示にかかるガス消費装置の収納部の態様
上記では水素カートリッジ50において溶栓57で意図するガス排出を行う態様を説明したが、これに代えて、又は、これに合わせてガス消費装置20の収納部23に溶栓57で意図するガス排出を行う態様を適用することができる。
【0054】
3.1.自己閉鎖式弁側態様
第3の態様では、自己閉鎖式弁56側に容器本体よりも熱が伝わり難くく(熱移動を遅らせる)、及び/又は、自己閉鎖式弁56に直接熱が伝わり難くする(熱移動を遅らせる)ように構成する。これにより自己閉鎖式弁56に不具合が生じる前に溶栓57が作動して意図したガス排出を得る。以下に具体的な形態について説明する。
【0055】
3.1.1.形態3A
図8(a)に形態3Aにかかる態様を説明する図を示した。
図8(a)は水素カートリッジ50が収納部23に装着された場面で、
図3と同じ視点による図である。
形態3Aでは収納部23の内面23aのうち、水素カートリッジ50の筐体58aの側面に対向する部位、及び、自己閉鎖式弁56側の筐体58aの端面に対向する部位を断熱材81により覆い、溶栓57が配置された側の筐体58aの端面は覆わない構成である。
このような容器本体よりも自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材である断熱材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、自己閉鎖式弁56への熱影響を抑えつつ、先に溶栓57が機能して意図したガスの排出をすることができる。
断熱材の種類は形態1Aと同様に考えることができる。
【0056】
3.1.2.形態3B
図8(b)に形態3Bにかかる態様を説明する図を示した。
図8(b)は水素カートリッジ50が収納部23に装着された場面で、
図3と同じ視点による図である。
形態3Bでは収納部23の内面23aのうち、水素カートリッジ50の筐体58aの側面に対向する部位、及び、自己閉鎖式弁56側の筐体58aの端面に対向する部位を遮熱材82により覆い、溶栓57が配置された側の筐体58aの端面は覆わない構成である。遮熱材82と筐体28aとは接触することなく間隙を有しており、ここに空気層を形成するように構成されている。
このような容器本体よりも自己閉鎖式弁への熱移動を遅らせる部材である遮熱材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、遮熱材82が熱を拡散しつつ外部に熱を逃がし、自己閉鎖式弁56への熱影響を抑えつつ、先に溶栓57が機能して意図したガスの排出をすることができる。
遮熱材の種類は形態1Cと同様に考えることができる。
【0057】
3.2.溶栓側態様
第4の態様では、溶栓57側に容器本体より熱が伝わり易くなるように構成する。これにより自己閉鎖式弁56に不具合が生じる前に溶栓57が作動して意図したガス排出を得る。以下に具体的な形態について説明する。
【0058】
3.2.1.形態4A
図9(a)に形態4Aにかかる態様を説明する図を示した。
図9(a)は水素カートリッジ50が収納部23に装着された場面で、
図3と同じ視点による図である。
形態4Aでは熱伝導材83が配置されている。熱伝導材83は容器本体より熱伝導率が高い材料であり、本形態で熱伝導材83は、収納部23の内面23aのうち、水素カートリッジ50の筐体58aの側面に対向する部位、及び、自己閉鎖式弁56側の筐体58aの端面に対向する部位を覆うとともに、これに連続して溶栓57に接触するように延在している。このとき、熱伝導材83と筐体58aとの間に間隙を有して空気層が形成されていることが好ましい。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である熱伝導材を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱を受けたとき、熱伝導材83を介して溶栓57に熱が伝わり、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されることで機能し、意図したガスの排出をすることができる。
熱伝導材の種類は形態2Aと同様に考えることができる。
【0059】
3.2.2.形態4B
図9(b)に形態4Bにかかる態様を説明する図を示した。
図9(b)は水素カートリッジ50が収納部23に装着された場面で、
図3と同じ視点による図である。
形態4Bでは可燃性の樹脂84が配置されている。本形態で可燃性の樹脂84は、収納部23の内面23aのうち、水素カートリッジ50の筐体58aの側面に対抗する部位を覆うとともに、これに連続して溶栓57に接触するように延在している。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である可燃性の樹脂を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、可燃性の樹脂84が燃焼し導火して溶栓57に熱が伝わり、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されることで機能し、意図したガスの排出をすることができる。
可燃性の樹脂の種類は形態2Cと同様に考えることができる。
【0060】
3.2.3.形態4C
図10に形態4Cにかかる態様を説明する図を示した。
図10は水素カートリッジ50が収納部23に装着された場面で、
図3と同じ視点による図である。
形態4Cでは可燃性の樹脂85及び熱伝導材86が配置されている。本形態で可燃性の樹脂85は、収納部23の内面23aのうち、水素カートリッジ50の筐体58aの側面に対向する部位を覆い、これに連続して熱伝導材86が溶栓57に接触するように延在している。
このような容器本体よりも溶栓への熱移動を促進する部材である熱伝導材及び可燃性の樹脂を配置することで水素カートリッジ50が火炎等により熱の影響を受けたとき、可燃性の樹脂84が燃焼し導火して熱伝導材86を介して溶栓57に熱が速く伝わり、自己閉鎖式弁56に先立って溶栓57が加熱されて機能し、意図したガスの排出をすることができる。
熱伝導材の種類は形態2A、可燃性の樹脂の種類は形態2Cと同様に考えることができる。
【0061】
4.その他
上記では水素カートリッジ50における態様(形態1A~1D、形態2A~2D)及び収納部23における態様(形態3A、3B、形態4A~4C)のそれぞれについて説明したが、水素カートリッジ50における態様と収納部23における態様とは、矛盾の生じない限りにおいて併用することができる。これによりさらに本開示の効果を顕著なものとすることが可能である。
【符号の説明】
【0062】
10…ガス供給システム、20…ガス消費装置、21…燃料電池、22…供給流路、23…収納部、24…接続装置、30…制御装置、50…水素カートリッジ、51…タンク、52…ライナ、53…補強層、54…保護層、55…口金、56…自己閉鎖式弁(逆止弁、開閉弁)、57…溶栓