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特開2024-173214MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173214
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01P 15/08 20060101AFI20241205BHJP
   G01P 15/125 20060101ALI20241205BHJP
   H01L 29/84 20060101ALI20241205BHJP
   B81B 3/00 20060101ALI20241205BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01P15/08 102D
G01P15/125 Z
H01L29/84 B
B81B3/00
B81C1/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091473
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100184343
【弁理士】
【氏名又は名称】川崎 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】藤田 有真
(72)【発明者】
【氏名】ヘラー,マーティン ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】泉 直希
【テーマコード(参考)】
3C081
4M112
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA18
3C081BA21
3C081BA22
3C081BA32
3C081BA44
3C081BA48
3C081BA53
3C081BA75
3C081CA02
3C081CA13
3C081CA29
3C081CA32
3C081CA40
3C081DA03
3C081DA26
3C081DA30
3C081DA43
3C081EA02
4M112AA02
4M112BA07
4M112CA11
4M112DA02
4M112DA06
4M112EA04
4M112EA06
4M112FA20
(57)【要約】
【課題】バンプストッパを有するMEMSデバイスを、プロセスコストを抑制しながら精度よく形成する。
【解決手段】
MEMSデバイス1は、第1主面11と第1主面11とは反対側の第2主面12とを有するデバイスウエハ2と、デバイスウエハ2に対して第1主面11側から対向するキャップウエハ3と、デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを接合する接合層4とを備えている。デバイスウエハ2は、第1主面11から第2主面12に向かうZ方向に窪んだキャビティ13を有するデバイス基板10と、キャビティ13内に位置しており固定電極23と固定電極23に対向する可動電極27とを含むセンサ部20と、可動電極27の第1主面11側の表面上に配置されておりZ方向における可動電極27のキャップウエハ3に近接する側への変位を規制するバンプストッパ100とを有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1主面と前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する、デバイスウエハと、
前記デバイスウエハに対して前記第1主面側から対向する、キャップウエハと、
前記デバイスウエハと前記キャップウエハとを接合する接合層と
を備え、
前記デバイスウエハは、
前記第1主面から第2主面に向かう第1方向に窪んだキャビティを有するデバイス基板と、
前記キャビティ内に位置しており、固定電極と前記固定電極に対向する可動電極とを含む、センサ部と、
前記可動電極の前記第1主面側の表面上に配置されており、前記第1方向における前記可動電極の前記キャップウエハに近接する側への変位を規制する、バンプストッパと
を有する、MEMSデバイス。
【請求項2】
前記第1方向から見たときの前記可動電極の短手方向において、前記バンプストッパの両縁部は前記可動電極の両縁部に一致している、
請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項3】
前記第1方向から見たときの前記可動電極の短手方向において、前記バンプストッパは、前記可動電極よりも幅が狭い、
請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項4】
前記バンプストッパは、表面粗さが前記デバイス基板の第1主面よりも粗い、
請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項5】
前記バンプストッパは、導電性を有する無機材料製である、
請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項6】
前記キャップウエハは、前記第1方向において前記可動電極が前記キャップウエハに近接する側に変位した際に前記バンプストッパが接触する部分に、パッシベーション層を有する、
請求項5に記載のMEMSデバイス。
【請求項7】
前記デバイスウエハは、前記センサ部に電気的に接続されており、前記センサ部の前記第1主面側に配置されたデバイス配線をさらに有しており、
前記バンプストッパは、前記デバイス配線と同一レイヤに位置しており同一材料である、
請求項1に記載のMEMSデバイス。
【請求項8】
前記キャップウエハは、キャップ配線を有し、
前記デバイス配線は、前記接合層に直接に接合されており、前記接合層を介して前記キャップ配線に電気的に導通している、
請求項7に記載のMEMSデバイス。
【請求項9】
前記キャップウエハは、前記キャップ配線に電気的に導通しており、外部配線が接続される、電極パッドを有している、
請求項8に記載のMEMSデバイス。
【請求項10】
前記接合層は、アルミニウムゲルマニウム合金製である、
請求項9に記載のMEMSデバイス。
【請求項11】
前記デバイス配線は、前記接合層に対して、濡れ性を有すると共に共晶の拡散が生じない、材料製である、
請求項10に記載のMEMSデバイス。
【請求項12】
前記バンプストッパは、ポリシリコン、ポリサイド合金、窒化チタン合金、チタンタングステン合金からなる群から選択される、導電性を有する材料製である、
請求項5又は11に記載のMEMSデバイス。
【請求項13】
デバイス基板の表面に酸化膜を形成し、
前記酸化膜を部分的に除去して前記デバイス基板の表面が露出する貫通孔部を形成し、
前記貫通孔部とこの周囲の前記酸化膜とに導電性を有する無機材料を積層して、平面視で前記貫通孔部よりも大きなバンプストッパを形成し、
前記デバイス基板の表面をパッシベーション層でさらに覆い、
前記パッシベーション層及び前記酸化膜を部分的に除去してマスクを形成し、ここで前記マスクは前記バンプストッパを少なくとも覆うように該バンプストッパよりも大きく、センサ部に対応する形状を有しており、
前記マスクを利用して前記デバイス基板をエッチングにより除去することによってセンサ部の輪郭を形成するストラクチャエッチングを実施し、
前記マスクを除去することによって、表面に幅狭のバンプストッパを有するセンサ部を形成する、MEMSデバイスの製造方法。
【請求項14】
デバイス基板の表面に酸化膜を形成し、
前記酸化膜を部分的に除去して前記デバイス基板の表面が露出する開口部を形成し、
前記開口部内に、前記開口部よりも小さな無機材料を積層し、
前記デバイス基板の表面をパッシベーション層でさらに覆い、
前記パッシベーション層及び前記酸化膜を部分的に除去してマスクを形成し、ここで前記マスクはセンサ部に対応する形状を有しており、
前記マスクを利用して前記デバイス基板をエッチングにより除去することによってセンサ部及びバンプストッパの輪郭を同時に形成するストラクチャエッチングを実施し、
前記マスクを除去することによって、表面に同じ幅のバンプストッパを有するセンサ部を形成する、MEMSデバイスの製造方法。
【請求項15】
前記バンプストッパと同一レイヤに、前記センサ部に電気的に接続されたデバイス配線を形成する、
請求項13又は14に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【請求項16】
前記デバイス基板及び前記センサ部を有するデバイスウエハを、接合層を介してキャップウエハに接合し、
前記デバイス配線を前記接合層に直接に接合する、
請求項15に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体微細加工技術を用いて製造されるMEMS(Micro Electro Mechanical System)センサが知られている。MEMSセンサとして、特許文献1には加速度センサが開示されている。特許文献1の加速度センサは、固定電極と可動電極とを有するセンサ部を備え、作用する加速度に応じた可動電極の変位に応じたセンサ部における静電容量の変化を検出することによって加速度を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-217473号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
加速度センサは、可動電極の過度の変位を規制するためのバンプストッパを有することがある。例えば、バンプストッパは接触を考慮した硬い無機質の材料製であることが好ましく、配線層は導電性金属製であることが好ましい。デバイスウエハに両者を形成しようとすれば、配線層とバンプストッパ層とを異なる材料及びレイヤで形成することになるので、デバイスウエハの形成プロセスが複雑化してしまい、センサ部を高精度に形成することが難しくなる。このため、加速度センサでは、バンプストッパは、デバイスウエハでなくキャップウエハ側に形成されていた。
【0005】
また、バンプストッパをキャップウエハに形成する場合、デバイスウエハとキャップウエハとの接合のズレに起因して、可動電極に対するバンプストッパの位置ズレも問題となりやすい。さらに、キャップウエハにASIC(Application Specific Integrated Circuit)等を構成する多層配線を形成する場合、キャップウエハのうち固定電極が接触し得る部分において、帯電を抑制するべく多層配線及びこれに付随するパッシベーション層を除去してシリコン基板を表出させることを要し、キャップウエハの形成プロセスが複雑化する。
【0006】
本発明は、バンプストッパを有するMEMSデバイスを、プロセスコストを抑制しながら精度よく形成できる、MEMSデバイス及びMEMSデバイスの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様は、
第1主面と前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する、デバイスウエハと、
前記デバイスウエハに対して前記第1主面側から対向する、キャップウエハと、
前記デバイスウエハと前記キャップウエハとを接合する接合層と
を備え、
前記デバイスウエハは、
前記第1主面から第2主面に向かう第1方向に窪んだキャビティを有するデバイス基板と、
前記キャビティ内に位置しており、固定電極と前記固定電極に対向する可動電極とを含む、センサ部と、
前記可動電極の前記第1主面側の表面上に配置されており、前記第1方向における前記可動電極の前記キャップウエハに近接する側への変位を規制する、バンプストッパと
を有する、MEMSデバイスを提供する。
【0008】
本開示の他の態様は、
デバイス基板の表面に酸化膜を形成し、
前記酸化膜を部分的に除去して前記デバイス基板の表面が露出する貫通孔部を形成し、
前記貫通孔部とこの周囲の前記酸化膜とに導電性を有する無機材料を積層して、平面視で前記貫通孔部よりも大きなバンプストッパを形成し、
前記デバイス基板の表面をパッシベーション層でさらに覆い、
前記パッシベーション層及び前記酸化膜を部分的に除去してマスクを形成し、ここで前記マスクは前記バンプストッパを少なくとも覆うように該バンプストッパよりも大きく、センサ部に対応する形状を有しており、
前記マスクを利用して前記デバイス基板をエッチングにより除去することによってセンサ部の輪郭を形成するストラクチャエッチングを実施し、
前記マスクを除去することによって、表面に幅狭のバンプストッパを有するセンサ部を形成する、MEMSデバイスの製造方法を提供する。
【0009】
本開示の更なる他の態様は、
デバイス基板の表面に酸化膜を形成し、
前記酸化膜を部分的に除去して前記デバイス基板の表面が露出する開口部を形成し、
前記開口部内に、前記開口部よりも小さな無機材料を積層し、
前記デバイス基板の表面をパッシベーション層でさらに覆い、
前記パッシベーション層及び前記酸化膜を部分的に除去してマスクを形成し、ここで前記マスクはセンサ部に対応する形状を有しており、
前記マスクを利用して前記デバイス基板をエッチングにより除去することによってセンサ部及びバンプストッパの輪郭を同時に形成するストラクチャエッチングを実施し、
前記マスクを除去することによって、表面に同じ幅のバンプストッパを有するセンサ部を形成する、MEMSデバイスの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、バンプストッパは可動電極の表面に直接に設けられているので、バンプストッパをキャップウエハ側に設ける場合のようにデバイスウエハとキャップウエハとの位置ズレがなく、バンプストッパの可動電極に対する位置ズレが防止される。
さらに、キャップウエハにバンプストッパを設ける必要がないので、キャップウエハが単純化される。例えば、キャップウエハ側にASIC等を構成する多層配線を形成するときに、バンプストッパを形成するべく多層配線層及びこれに付随して存在し得るパッシベーション層を除去して、シリコン基板を表出させる必要がなく、キャップウエハの形成プロセスが単純化されると共にプロセスコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は本開示の一実施形態に係るMEMSデバイスの平面図である。
図2図2図1のII-II線に沿ったMEMSデバイスの可動電極における断面図である。
図3図3図1のIII-III線に沿ったMEMSデバイスの固定電極における断面図である。
図4図4はデバイスウエハをZ2側から見た底面図である。
図5図5はキャップウエハをZ1側から見た平面図である。
図6図6図1のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図7はキャップウエハの形成工程の1つを示す図である。
図8図8図7の次の工程を示す図である。
図9図9図8の次の工程を示す図である。
図10図10図9の次の工程を示す図である。
図11図11図10の次の工程を示す図である。
図12図12図11の次の行程を示す図である。
図13図13はデバイスウエハの形成工程の1つを示す図である。
図14図14図13の次の工程を示す図である。
図15A図15A図14の次の工程を示す図である。
図15B図15B図15Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図15C図15C図15BのXVC-XVC線に沿った断面図である。
図16A図16A図15Aの次の工程を示す図である。
図16B図16B図16Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図16C図16C図16BのXVIC-XVIC線に沿った断面図である。
図17A図17A図16Aの次の工程を示す図である。
図17B図17B図17Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図17C図17C図17BのXVIIC-XVIIC線に沿った断面図である。
図18A図18A図17Aの次の工程を示す図である。
図18B図18B図18Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図18C図18C図18BのXVIIIC-XVIIIC線に沿った断面図である。
図19A図19A図18Aの次の工程を示す図である。
図19B図19B図19Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図19C図19C図19BのXIXC-XIXC線に沿った断面図である。
図20A図20A図19Aの次の工程を示す図である。
図20B図20B図20Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図20C図20C図20BのXXC-XXC線に沿った断面図である。
図21図21はキャップウエハとデバイスウエハとの接合工程の1つを示す図である。
図22図22図21の次の工程を示す図である。
図23図23図22の次の工程を示す図である。
図24図24図23の次の工程を示す図である。
図25A図25A図14の変形例に係る次の工程を示す図である。
図25B図25B図25Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図25C図25C図25BのXXVC-XXVC線に沿った断面図である。
図26A図26A図25Aの次の工程を示す図である。
図26B図26B図26Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図26C図26C図26BのXXVIC-XXVIC線に沿った断面図である。
図27A図27A図26Aの次の工程を示す図である。
図27B図27B図27Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図27C図27C図27BのXXVIIC-XXVIIC線に沿った断面図である。
図28A図28A図27Aの次の工程を示す図である。
図28B図28B図28Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図28C図28C図28BのXXVIIIC-XXVIIIC線に沿った断面図である。
図29A図29A図28Aの次の工程を示す図である。
図29B図29B図29Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図29C図29C図29BのXXIXC-XXIXC線に沿った断面図である。
図30A図30A図29Aの次の工程を示す図である。
図30B図30B図30Aのセンサ部をZ2側から見た平面図である。
図30C図30C図30BのXXXC-XXXC線に沿った断面図である。
図31図31は変形例に係るMEMSデバイスを示す図2と同様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の一実施形態に係るMEMSデバイスを添付図面に従って説明する。なお、以下の説明は、本質的に例示に過ぎず、本開示、その適用物、あるいは、その用途を制限することを意図するものではない。また、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは相違している。
【0013】
図1は本開示の一実施形態に係るMEMSデバイス1を示す平面図である。MEMSデバイス1は半導体微細加工技術を用いて製造されるMEMSセンサである。図2は、図1のII-II線に沿ったMEMSデバイス1の可動電極27における断面図である。図3は、図1のIII-III線に沿ったMEMSデバイス1の固定電極23における断面図である。
【0014】
以下の説明では、便宜上、図1に示す平面視においてMEMSデバイス1の各辺に沿った方向のうち左右方向をX方向、上下方向をY方向と称し、図2及び図3に示す断面視においてMEMSデバイス1の厚み方向(上下方向)をZ方向とそれぞれ称する。特に、図1における、右側をX1側、左側をX2側、上側をY1側、下型をY2側とそれぞれ称する。図2及び図3における、上側をZ1側、下側をZ2側と称する。
【0015】
[MEMSデバイスの全体構成]
図1図3に示されるように、MEMSデバイス1は、Z1側に位置しておりセンサ部20を有するデバイスウエハ2と、デバイスウエハ2に対してZ2側に位置するキャップウエハ3と、デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを接合する接合層4とを有している。
【0016】
[デバイスウエハ]
図4はデバイスウエハ2をZ2側から見た底面図である。図2図4に示されるように、デバイスウエハ2は、Z2側に位置しておりX方向及びY方向に平行に延びる第1主面11と、第1主面11とは反対側すなわちZ1側に位置しておりX方向及びY方向に平行に延びる第2主面12とを有しており、第1主面11からZ1側に窪んだキャビティ13を有するデバイス基板10と、キャビティ13に位置するセンサ部20と、センサ部20に電気的に接続されるデバイス配線30と、を有している。
【0017】
デバイス基板10は、p型不純物又はn型不純物が高濃度にドーピングされたシリコン製であり、導電性を有する。
【0018】
キャビティ13を画定する周壁部には、矩形状の底壁14と、底壁14のX1側縁からZ2側に延びる第1縦壁15と、底壁14のY2側縁からZ2側に延びる第2縦壁16と、底壁14のX2側縁からZ2側に延びる第3縦壁17と、底壁14のY1側縁からZ2側に延びる第4縦壁18とが含まれている。
【0019】
センサ部20は、底壁14に固定されたアンカー21と、アンカー21に接続された固定電極23と、アンカー21に接続されたスプリング25と、スプリング25に支持されたマス26と、マス26に接続された可動電極27とを有している。
【0020】
図6図1のVI-VI線に沿ったアンカー21のY-Z平面に沿った断面図である。図6を合わせて参照して、アンカー21は、底壁14からZ2側に延びており、各縦壁15~18のいずれとも離間している。アンカー21は、Z1側に位置しており底壁14に固定される基端部21aと、基端部21aのZ2側に位置する本体部21bとを含んでいる。本実施形態では基端部21aは本体部21bよりもY方向に小さい。すなわち、アンカー21はより本体部21bに比して小さい基端部21aにおいて底壁14に固定されているので、アンカー21へのパッケージ応力の伝達が抑制されている。
【0021】
固定電極23は、本実施形態ではアンカー21のX2側においてY方向に並ぶように一対に設けられており、それぞれX方向に延びる第1固定電極23aと第2固定電極23bとを含んでいる。一対の固定電極23はそれぞれ、アンカー21に対して、第1アイソレーションジョイント(以下IJと称する)22を介して機械的に接続されると共に電気的に絶縁されている。
【0022】
スプリング25は、本実施形態では基端部25aがアンカー21のY1側及びY2側の両側に接続されるように一対に設けられており、それぞれY方向に伸縮自在となるように、例えばX方向に複数回屈曲しつつY方向に延びている。一対のスプリング25はそれぞれ、アンカー21に対して、第2IJ24を介して機械的に接続されると共に電気的に絶縁されている。
【0023】
マス26は、一対のスプリング25の先端部25bの間に支持されており、慣性力が生じた際にスプリング25による弾性力に抗してY方向に移動可能である。
【0024】
可動電極27は、マス26に接続されており、一対の固定電極23のY方向における中間且つZ方向における同じ高さ位置において、X方向に延びている。以下の説明では、アンカー21に対して第2IJ24を介して機械的に接続されつつ電気的に絶縁された、スプリング25、マス26及び可動電極27を纏めて可動電極27と称することがある。
【0025】
アンカー21、第1IJ22、固定電極23、スプリング25、マス26及び可動電極27はいずれも、デバイス基板10から形成されており導電性を有している。また、第1IJ22、固定電極23、スプリング25、マス26及び可動電極27はいずれも、底壁14からリリースされてZ2側に離間している。
【0026】
センサ部20は、一対の固定電極23と可動電極27とによってコンデンサCが構成されている。具体的には、第1固定電極23aと可動電極27とによって第1コンデンサC1が構成されており、第2固定電極23bと可動電極27とによって第2コンデンサC2が構成されている。
【0027】
本開示に係るセンサ部20は、Y方向に加速度が生じた場合に可動電極27がY方向に変位することによって、第1コンデンサC1及び第2コンデンサC2の一方の静電容量が増大し他方の静電容量が減少し、この静電容量の変化を後述する電極パッド57を介して検出することによって、Y方向の加速度を検出する加速度センサとして構成されている。このほか、センサ部20を、X方向の加速度又はZ方向の加速度等、慣性力に依存した電気信号を検出するように構成してもよい。すなわち、本開示に係るセンサ部20は、複数の電極が、互いに電気的に絶縁されつつ、単一のアンカーに機械的に支持されるものであればよい。
【0028】
デバイス基板10の第1主面11には、Z2側からデバイス絶縁層28が積層されている。デバイス絶縁層28は酸化シリコン製である。デバイス絶縁層28は、センサ部20のうち、アンカー21と、固定電極23のうち少なくとも第1IJ22の近位側に位置する領域と、スプリング25、マス26および可動電極27にわたる領域のうち少なくとも第2IJ24の近位側に位置する領域とにも積層されている。
【0029】
本実施形態では、固定電極23上においては、デバイス絶縁層28は、アンカー21から第1IJ22をX2側に超えた位置で後述する固定電極コンタクト32が配置される領域を有しつつ即終端している。同様に、可動電極27上、本実施形態では一対のスプリング25上において、デバイス絶縁層28は、アンカー21から第2IJ24をY方向に超えた位置で後述する可動電極コンタクト35が配置される領域を残しつつ即終端している。
【0030】
デバイス配線30は、固定電極23に接続される固定電極配線31と、可動電極27に接続される可動電極配線34とを有しており、それぞれデバイス絶縁層28のZ2側に積層されている。
【0031】
デバイス配線30は、接合層4に対して、濡れ性を有すると共に接合層4における共晶の拡散が生じない材料製である。本実施形態では、接合層4は、後述するようにアルミニウムゲルマニウム共晶材(以下AlGe共晶材と称する)90により構成されるので、デバイス配線30はAlGe共晶材90に対して濡れ性を有すると共にAlGe共晶材90の共晶反応の拡散が生じない材料として、導電性を有するポリシリコンが採用されている。
【0032】
デバイス配線30を、導電性を有するポリシリコンで構成する他、ポリサイド合金、窒化チタン合金、チタンタングステン合金からなる群から選択される、導電性を有する材料で構成してもよい。これらの材料も、AlGe共晶材90に対して濡れ性を有すると共にAlGe共晶材の拡散が生じない。
【0033】
固定電極配線31は、Z2側から見て、デバイス絶縁層28をZ方向に貫通して固定電極23に電気的に導通する固定電極コンタクト32と、アンカー21上に位置する固定電極接合部33と、固定電極コンタクト32から第1IJ22をX1側に横断して固定電極接合部33まで延びる配線部31aとを有している。固定電極接合部33は、固定電極配線31の一部を構成しつつキャップウエハ3に対する接合部も兼ねている。
【0034】
可動電極配線34は、Z2側から見て、デバイス絶縁層28をZ方向に貫通して可動電極27(本実施形態ではY2側に位置するスプリング25の基端部25a)に電気的に導通する可動電極コンタクト35と、アンカー21上に位置する可動電極接合部36と、可動電極コンタクト35から第2IJ24をY1側に横断して可動電極接合部36まで延びる配線部34aとを有している。可動電極接合部36は、可動電極配線34の一部を構成しつつキャップウエハ3に対する接合部も兼ねている。
【0035】
本実施形態では、一対の固定電極23と1つの可動電極27とを有しているので、2つの固定電極配線31と1つの可動電極配線34とを有しており、したがって、アンカー21のZ2側には、2つの固定電極接合部33と1つの可動電極接合部36とが対応位置している。
【0036】
また、デバイス絶縁層28のZ2側には、Z2側から見てキャビティ13の外周に沿って延びるデバイス外周接合層40がさらに積層されている。デバイス外周接合層40は、デバイス絶縁層28上に積層されており、つまりデバイス配線30と同一レイヤに積層されており、デバイス配線30と同一材料であり導電性を有する。デバイス外周接合層40は、デバイス絶縁層28をZ方向に貫通してデバイス外周接合層40とデバイス基板10とを電気的に導通させるデバイス外周層コンタクト41をさらに有している。
【0037】
図4に示されるように、デバイスウエハ2は、可動電極27のZ2側への過度の変位を規制するバンプストッパ100をさらに有している。バンプストッパ100は、可動電極27のZ2側の表面に形成されている。本実施形態では、バンプストッパ100は、可動電極27のZ2側の表面のうち、マス26に対して片持ちで支持されたX1側先端部側に位置している。
【0038】
本実施形態では、バンプストッパ100は、Z2側から見て矩形状である。可動電極27をZ2側から見たときの可動電極27の短手方向であるY方向において、バンプストッパ100は可動電極よりも幅が狭い。換言すれば、バンプストッパ100は、Y方向両縁部100aが可動電極27のY方向両縁部27aに対して可動電極27のY方向中央側に位置している。
【0039】
図3に示されるように、バンプストッパ100は、Z1側に位置するストッパ絶縁層101と、Z2側に位置するストッパ本体102と、ストッパ絶縁層101をZ方向に貫通してストッパ本体102と可動電極27とを接続するストッパコンタクト103とを有している。
【0040】
ストッパ絶縁層101は、デバイス絶縁層28に対して、同一レイヤに位置すると共に同一材料製(すなわち本実施形態では酸化シリコン製)であって、後述するように同一の積層プロセスによりデバイス絶縁層28と同時に形成される。
【0041】
ストッパ本体102及びストッパコンタクト103は、導電性を有する無機材料製である。本実施形態では、ストッパ本体102及びストッパコンタクト103は、デバイス配線30に対して、同一レイヤに位置すると共に同一材料製(すなわち本実施形態ではポリシリコン製)であって、後述するように同一の積層プロセスによりデバイス配線30と同時に形成される。
【0042】
ストッパ本体102は、Z2側に位置する表面102aの表面粗さがデバイス基板10の第1主面11の表面粗さよりも粗い。ストッパ本体102の表面102aの表面粗さは、本実施形態では例えばRa(算術平均粗さ)で10~20nmである。ストッパ本体102の表面を粗くするには、例えば、ストッパ絶縁層101上にポリシリコンをCVD(Chemical Vapor Deposition)により積層した後、その表面を研磨しないことによって実現できる。
【0043】
バンプストッパ100の作用を説明すると、可動電極27がZ2側すなわちキャップウエハ3側に過度に変位したとき、バンプストッパ100がキャップウエハ3と接触し、可動電極27がキャップウエハ3に直接に接触することが防止される。しかも、バンプストッパ100は、導電性を有するため、キャップウエハ3が帯電していたとしても、キャップウエハ3に帯電する電荷がストッパコンタクト103を介して可動電極27側に逃がすことができるので、バンプストッパ100に電荷が溜まることが防止される。この結果、バンプストッパ100とキャップウエハ3側との間で静電引力が生じない。
【0044】
さらに、バンプストッパ100は、Z2側の表面粗さがデバイス基板10よりも粗いので、キャップウエハ3との接触面積が低減される。すなわち、バンプストッパ100によれば、キャップウエハ3との間で静電引力が生じず且つ密着が防止されるので、バンプストッパ100のキャップウエハ3に対する固着を抑制しやすい。
【0045】
[キャップウエハ]
次に、図2及び図5を主に参照しながらキャップウエハ3について説明する。図5はキャップウエハ3をZ1側から見た平面図である。まず、図2を参照して、キャップウエハ3は、キャップ基板50と、キャップ基板50のZ1側に積層された第1キャップ絶縁層53と、第1キャップ絶縁層53のZ1側に積層されたキャップ配線60と、第1キャップ絶縁層53に対して間にキャップ配線60をZ方向に介在させつつZ1側に積層された第2キャップ絶縁層54と、第2キャップ絶縁層54のZ1側に積層された接合電極55とを有している。
【0046】
キャップ基板50は、Z1側に位置しておりX方向及びY方向に平行に延びる第1主面51と、第1主面51とは反対側すなわちZ2側に位置しておりX方向及びY方向に平行に延びる第2主面52とを有している。キャップ基板50は、p型不純又はn型不純物が高濃度にドーピングされたシリコン製であり、導電性を有する。
【0047】
図1に示される平面視において、キャップ基板50は、デバイス基板10よりも大きい。本実施形態では、キャップ基板50はデバイス基板10よりもX1側に大きい。キャップウエハ3は、デバイス基板10に覆われていない部分に、MEMSデバイス1の外部のデバイス(例えばASIC)との間で電気信号が入出力される複数の電極パッド57が設けられている。
【0048】
第1キャップ絶縁層53は、キャップ基板50のZ1側の全面に積層されている。第1キャップ絶縁層53は、酸化シリコン製であり絶縁体である。
【0049】
図5に示されるように、キャップ配線60は、デバイスウエハ2の2つの固定電極接合部33及び1つの可動電極接合部36それぞれに対してZ方向に対応位置する一端部からキャビティ13の外側に延びて第1~第3電極パッド57A~57Cに接続される、第1~第3キャップ配線61~63を有する。さらに、キャップ配線60は、後述するキャップ外周接合層70に対してZ方向に対応位置する一端部から対応する第4電極パッド57Dに接続される第4キャップ配線64を有する。さらにまた、第3電極パッド57Cと第4電極パッド57Dとを接続する第5キャップ配線65を有する。
【0050】
第1~第3キャップ配線61~63は、第2キャップ絶縁層54をZ方向に貫通する接合電極コンタクト56を介して対応する接合電極55に電気的に導通している。第4キャップ配線64は、第1キャップ絶縁層53をZ方向に貫通するキャップ配線コンタクト58を介してキャップ基板50に電気的に導通しており、第2キャップ絶縁層54をZ方向に貫通するキャップ外周層コンタクト71を介してキャップ外周接合層70に電気的に導通している。
【0051】
各キャップ配線60及び各電極パッド57は、第1キャップ絶縁層53上に積層されており、つまり同一レイヤに積層されており同一材料である。本実施形態では、キャップ配線60及び電極パッド57は、第1キャップ絶縁層53上に積層されたTiN(窒化チタン)層と、このZ1側に積層されたAlCu(アルミニウム銅合金)層と、このZ1側にさらに積層されたTiN層とを有する3層構造であり、導電性を有する。接合電極コンタクト56及びキャップ配線コンタクト58は、タングステンがTiNで囲まれて構成されており導電性を有する。
【0052】
第2キャップ絶縁層54は、第1キャップ絶縁層53のZ1側に積層されており、第1キャップ絶縁層53との間にキャップ配線60が介在している。第2キャップ絶縁層54は、酸化シリコン製であり絶縁体である。第2キャップ絶縁層54は、複数の電極パッド57に対応位置する部分には積層されていない。これによって、複数の電極パッド57がキャップウエハ3においてZ1側から表出している。本実施形態では、第2キャップ絶縁層54は、センサ部20に対してZ2側から対向する領域においても除去されておらず、可動電極27がZ2側に過度に変位したときにバンプストッパ100によって接触され得る。
【0053】
接合電極55は、第2キャップ絶縁層54のZ1側において、デバイスウエハ2の固定電極接合部33及び可動電極接合部36に対してZ2側から対向する位置に設けられている。すなわち、本実施形態では、接合電極55は、2つの固定電極接合部33に対向する位置と、1つの可動電極接合部36とに対向する位置とに、合計3つ設けられている。各接合電極55は、第2キャップ絶縁層54をZ方向に貫通する接合電極コンタクト56を介してそれぞれ対応するキャップ配線60に電気的に導通している。
【0054】
接合電極55は、TiN製であり導電性を有する。接合電極55は、後述する接合層4におけるアルミニウムとゲルマニウムの共晶反応におけるZ2側への共晶反応の拡散を防止するバリア層として作用する。
【0055】
また、第2キャップ絶縁層54のZ1側には、デバイス外周接合層40に対してZ方向に対応位置する場所に、キャップ外周接合層70がさらに積層されている。キャップ外周接合層70は、第2キャップ絶縁層54上に積層されており、つまり接合電極55と同一レイヤに積層されており、接合電極55と同一材料であり導電性を有する。
【0056】
[接合層]
次に、図1及び図2を主に参照しながら接合層4について説明する。図1及び図2に示されるように、接合層4は、デバイス外周接合層40及びキャップ外周接合層70に沿って延びており両者をZ方向に接合する外周接合層5と、2つの固定電極接合部33及び1つの可動電極接合部36と3つの接合電極55との間に位置しており両者をそれぞれZ方向に接合する内周接合層6とを有している。
【0057】
接合層4は、アルミニウムとゲルマニウムとを共晶反応させることによって生じる、アルミニウムゲルマニウム共晶材である。外周接合層5によって、センサ部20がデバイスウエハ2とキャップウエハ3との間に外部から遮断された空間に密閉される。内周接合層6によって、デバイスウエハ2のデバイス配線30を、キャップウエハ3のキャップ配線60に電気的に導通させることができる。すなわち、接合層4によって、デバイスウエハ2とキャップウエハ3とをZ方向に接合しつつ、各デバイス配線30とキャップ配線60とを電気的に導通させることができる。
【0058】
[MEMSデバイスの製造方法]
以下、図7図24を参照ながらMEMSデバイス1の製造方法を説明する。
【0059】
(キャップウエハの形成工程)
まず、図7図12を参照して、キャップウエハ3の形成工程を説明する。図7に示されるように、p型不純物又はn型不純物が高濃度にドーピングされた導電性シリコン基板であるキャップ基板50を用意する。キャップ基板50の第1主面51を熱酸化することによって、第1主面51上に酸化シリコンである第1キャップ絶縁層53が形成される。
【0060】
次いで、図8に示されるように、周知のパターニング技術を利用して、第1キャップ絶縁層53がエッチングにより部分的に除去されてキャップ配線コンタクト58に対応する部分が開口したビア81が形成される。
【0061】
次に、図9に示されるように、ビア81にキャップ配線コンタクト58が形成される。具体的には、図9の左側の拡大図を参照して、まずビア81における内壁面及び底壁面に沿ってTiN層58pが凹状に積層され、TiN層58pの凹みにタングステン58qが積層され、その後例えばCMPによって表面が平坦化されることによってビア81にキャップ配線コンタクト58が形成される。
【0062】
次に、周知のパターニング技術を利用して、第1キャップ絶縁層53上に、キャップ配線60と電極パッド57とが積層される。具体的には、まず、TiN層60p,57pが積層され、次いでAlCu層60q,57qが積層され、さらにTiN層60r,57rが積層される。すなわち、キャップ配線60及び電極パッド57は、TiN/AlCu/TiNから構成される三層の積層構造を有する。
【0063】
次に、図10に示されるように、第1キャップ絶縁層53、キャップ配線60及び電極パッド57のZ1側に第2キャップ絶縁層54が積層される。第2キャップ絶縁層54は例えばTEOS(Tetra Ethoxy Silane)を原料に用いたCVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。第2キャップ絶縁層54は、キャップ配線60のパッシベーション層を構成する。第2キャップ絶縁層54は、積層された後、例えばCMPによって平坦化される。
【0064】
次に、図11に示されるように、周知のパターニング技術を利用して、第2キャップ絶縁層54がエッチングされてキャップ外周層コンタクト71及び接合電極コンタクト56に対応する部分が開口したビア82,83が形成される。
【0065】
次に、ビア82,83にキャップ外周層コンタクト71及び接合電極コンタクト56が形成される。具体的には、キャップ外周層コンタクト71及び接合電極コンタクト56は、上述したキャップ配線コンタクト58と同様に形成されて、ビア82,83の内壁面に沿った凹状のTiN層71p,56pと、TiN層71p,56pの凹みに形成されたタングステン71q,56qとを有する。
【0066】
次に、周知のパターニング技術を利用して、第2キャップ絶縁層54上に、接合電極55及びキャップ外周接合層70が積層される。具体的には、まず、TiN層55p,70pが積層され、次いでAlCu層55q,70qが積層される。さらに、AlCu層55q、70qのZ1側にゲルマニウム層55r,70rが積層される。ゲルマニウム層55r,70rは、AlCu層55q,70qと共晶反応することによってアルミニウムゲルマニウム共晶材となって接合層4を構成する。
【0067】
次に、図12に示されるように、第2キャップ絶縁層54のうち、電極パッド57を覆う領域がエッチングにより除去されて電極パッド57が表出する。このとき、第1キャップ絶縁層53及び第2キャップ絶縁層54は、センサ部20がZ方向に対向する領域は除去されず残っている。これによって、キャップウエハ3が完成する。
【0068】
(デバイスウエハの形成工程)
次に、図13図20を参照して、デバイスウエハ2の形成工程を説明する。図13に示されるように、p型不純物又はn型不純物が高濃度にドーピングされた導電性シリコン基板であるデバイス基板10を用意する。
【0069】
次いで、図示は省略するが、デバイス基板10の第1主面11を熱酸化すると共に該熱酸化して得られる熱酸化膜をパターニングすることによって第1IJ22及び第2IJ24に対応する位置が開口したマスクを形成し、該マスクを利用して、デバイス基板10を異方性エッチングによりZ1側に深堀りして、トレンチ84を形成する。トレンチ84の形成後、マスクは除去される。
【0070】
次に、図14に示されるように、デバイス基板10をZ2側から熱酸化することによって、トレンチ84の内壁面が熱酸化してなる酸化シリコンから構成される第1IJ22及び第2IJ24が形成されると共に、デバイス基板10の第1主面11が熱酸化してなる酸化シリコンから構成されるデバイス絶縁層28が形成される。
【0071】
次に、図15A図15Cに示されるように、周知のパターニング技術を利用して、デバイス絶縁層28がエッチングにより部分的に除去されて固定電極コンタクト32、デバイス外周層コンタクト41及びストッパコンタクト103に対応する部分が開口したビア85,86,104が形成される。図示は省略するが、デバイス絶縁層28のうち可動電極コンタクト35に対応した部分にもビアが形成される。
【0072】
次に、図16A図16Cに示されるように、周知のパターニング技術を利用して、デバイス絶縁層28のZ2側にデバイス配線30、デバイス外周接合層40及びストッパ本体102が積層される。このとき、固定電極コンタクト32、可動電極コンタクト35、デバイス外周層コンタクト41及びストッパコンタクト103も形成される。デバイス配線30、デバイス外周接合層40、ストッパ本体102及び各コンタクト32,35,41,103は、p型不純物又はn型不純物が高濃度にドーピングされたポリシリコンであって、例えば低圧CVDによって同時にすなわち同一レイヤに積層される。
【0073】
次に、図17A図17Cに示されるように、デバイス基板10に対してZ2側からパッシベーション層105を全面的に積層する。パッシベーション層105は酸化シリコンからなる酸化膜である。
【0074】
次に、図18A図18Cに示されるように、パッシベーション層105及びデバイス絶縁層28をエッチングにより部分的に除去して、デバイス基板10のうちセンサ部20となる部分及びデバイス外周接合層40に対応する部分を覆う一方で、キャビティ13となる部分が開口するハードマスク106を形成する。すなわち、デバイス基板10は、ハードマスク106によって覆われていない領域において表出している。
【0075】
次に、図19A図19Cに示されるように、ハードマスク106を使用して異方性エッチングによってデバイス基板10をZ1側に掘り込むことによって、センサ部20及びキャビティ13の形状に沿ったトレンチが形成される。
【0076】
次に、該トレンチの内壁面に酸化膜を堆積する。次に、トレンチの底壁面の酸化膜をエッチングにより除去する。次に、トレンチの底部を等方性エッチングによって除去することによって、キャビティ13を形成しつつ、キャビティ13の内側にアンカー21によって支持されてアンカー21を除く部分がキャビティ13の底壁14からZ2側にリリースされて離間されたセンサ部20が形成される。
【0077】
最後に、図20A図20Cに示されるように、HFベイパーエッチングによってトレンチの側壁における酸化シリコンが除去されると共に、ハードマスク106も除去される。これによって、デバイスウエハ2が完成する。なお、熱酸化により形成されたデバイス絶縁膜28は、CVDにより形成されたハードマスク106に比してエッチングレートが遅いため(例えば約3倍遅い)、HFベイパーエッチング後も全て除去されずに残っている。
【0078】
なお、デバイスウエハ2は、センサ部20よりもX1側であって、キャップウエハ3に形成される電極パッド57よりもX2側において、Y方向に延びておりZ1側に窪んだトレンチ87が形成されている。トレンチ87は、センサ部20の形成と同時に形成される。
【0079】
(デバイスウエハとキャップウエハとの接合工程)
次に、図21図24を参照して、デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを接合してMEMSデバイス1を製造する工程を説明する。図21に示されるように、デバイスウエハ2を、180°反転させてキャップウエハ3に対してZ方向に対向させる。このとき、デバイスウエハ2のをX方向及びY方向における位置を調整して、2つの固定電極接合部33、1つの可動電極接合部36及びデバイス外周接合層40がキャップウエハ3の3つの接合電極55及びキャップ外周接合層70にそれぞれZ方向に対向するように位置合わせする。
【0080】
次に、図22に示されるように、デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを、2つの固定電極接合部33、1つの可動電極接合部36及びデバイス外周接合層40がキャップウエハ3の3つの接合電極55及びキャップ外周接合層70とにおいて互いに当接させつつ高温加圧する。
【0081】
本実施形態では、接合層4をAlCu層55q,70qとゲルマニウム層55r,70rとを共晶反応させてなるアルミニウムゲルマニウム共晶材90(以下AlGe共晶材)によって構成するので、アルミニウムとゲルマニウムとの共晶点である423℃以上の温度(例えば430℃以上500℃以下)の下、1ウエハあたり数kN(例えば1kN以上100kN以下)の力で両ウエハを当接させた状態を維持する。
【0082】
このとき、共晶反応により生じたAlGe共晶材90は、デバイスウエハ2におけるポリシリコン製であるデバイス配線30及びデバイス外周接合層40に対して、3相共晶反応して接合されるが、該3相共晶反応によって共焦点が上昇する(例えば500℃以上まで)のでAlGe共晶材90の共晶反応が止まりデバイス配線30及びデバイス外周接合層40側への拡散が防止される。
【0083】
一方、AlGe共晶材90は、キャップウエハ3側においては、バリア層として作用するTiN層55p,70pによって下層側への拡散が止まる。その後、温度を下降させて共晶反応を止めて、AlGe共晶材90を硬化させることによってデバイスウエハ2とキャップウエハ3との接合が完成する。
【0084】
次に、図23に示されるように、ダイシングブレード91を、トレンチ87に対応する位置に合わせた状態で、Z2側へ下降させる。この結果、図24に示されるように、デバイスウエハ2のうち、トレンチ87よりX1側に位置する部分が切断により分離されて、キャップウエハ3の電極パッド57がZ1側に表出する。これによって、MEMSデバイス1が完成する。
【0085】
次に、図25図30を参照して、第1変形例に係るデバイスウエハ110及びデバイスウエハ110の製造方法を説明する。上記実施形態と共通する部分については、同じ参照符号を使用しその説明を省略する。
【0086】
図30A~30Cは、完成状態のデバイスウエハ110を示している。可動電極27の周辺を示す図30Bを参照して、デバイスウエハ110は、上記実施形態に係るデバイスウエハ2に対して、Z2側から見たときの可動電極27の短手方向であるY方向においてバンプストッパ111のY方向両縁部111aが可動電極27のY方向両縁部27aと一致している点と、バンプストッパ111のX1側先端部111bが可動電極27のX1側先端部27bに一致している点とにおいて、異なっている。
【0087】
以下、デバイスウエハ110の形成工程を説明する。デバイスウエハ2と同様に(図13及び図14を参照)、デバイス基板10に第1IJ22及び第2IJ24を形成すると共に、第1主面11上にデバイス絶縁層28を形成する。
【0088】
次に、図25A図25Cに示されるように、周知のパターニング技術を利用して、デバイス絶縁層28がエッチングにより部分的に除去されて、デバイス外周層コンタクト41に対応するビア86と、少なくとも可動電極27(図25Bに二点鎖線で示す)に対応する部分よりも大きな領域が開口した開口部112とが形成される。本実施形態では、開口部112は、可動電極27に加えて、一対の固定電極23(図25Bに二点鎖線で示す)のうち固定電極コンタクト32よりもX2側に位置する部分をも含む領域が開口するように形成されている。
【0089】
次に、図26A図26Cに示されるように、周知のパターニング技術を利用して、デバイス絶縁層28のZ2側にデバイス配線30及びデバイス外周接合層40が積層される。このとき、固定電極コンタクト32、可動電極コンタクト35、デバイス外周層コンタクト41も形成される。固定電極コンタクト32は開口部112の内側に位置する。さらに、開口部112内のデバイス基板10のZ2側表面にバンプストッパベース113が形成される。
【0090】
バンプストッパベース113は、Y方向において内側に可動電極27(図26Bにおいて二点鎖線で示す)を含むようにY方向両縁部113aがそれぞれ可動電極27のY方向両縁部27aよりも外側に位置すると共に、X方向においてX1側先端部113bが可動電極27のX1側先端部27bよりもX1側に位置している。換言すれば、バンプストッパベース113は、Z2側から見て、可動電極27のX1側端部に対して一回り大きい。
【0091】
デバイス配線30、デバイス外周接合層40、バンプストッパベース113、及び各コンタクト32,35,41は、p型不純物又はn型不純物が高濃度にドーピングされたポリシリコンであって、例えば低圧CVDによって同時にすなわち同一レイヤに積層される。
【0092】
次に、図27A図27Cに示されるように、デバイス基板10に対してZ2側からパッシベーション層114を全面的に積層する。パッシベーション層114は酸化シリコンからなる酸化膜である。
【0093】
次に、図28A図28Cに示されるように、パッシベーション層114及びデバイス絶縁層28をエッチングにより部分的に除去して、デバイス基板10のうちセンサ部20となる部分及びデバイス外周接合層40に対応する部分を覆う一方で、キャビティ13となる部分が開口するハードマスク115を形成する。すなわち、デバイス基板10は、ハードマスク115によって覆われていない領域において表出している。
【0094】
ここで、バンプストッパベース113は、可動電極27のX1側端部よりも一回り大きいので、Y方向両縁部113a及びX1側先端部113bがハードマスク115によって覆われておらず表出している。
【0095】
次に、図29A図29Cに示されるように、ハードマスク115を使用して異方性エッチングによってデバイス基板10をZ1側に掘り込むことによって、センサ部20及びキャビティ13の形状に沿ったトレンチが形成される。
【0096】
ここで、バンプストッパベース113とデバイス基板10とが共通のハードマスク115を介してエッチングされるので、バンプストッパベース113がエッチチングされてなるバンプストッパ111は、Z2側から見て、Y方向両縁部111a及びX1側先端部111bが可動電極27のY方向両縁部27a及びX1側先端部27bにそれぞれ一致する。
【0097】
次に、概トレンチの内壁面に酸化膜を堆積する。次に、トレンチの底壁面の酸化膜をエッチングにより除去する。次に、トレンチの底部を等方性エッチングによって除去することによって、キャビティ13を形成しつつ、キャビティ13の内側にアンカー21によって支持されてアンカー21を除く部分がキャビティ13の底壁14からZ2側にリリースされて離間されたセンサ部20が形成される。
【0098】
次に、図30A図30Cに示されるように、HFベイパーエッチングによってトレンチの側壁における酸化シリコンが除去されると共に、ハードマスク115も除去される。これによって、デバイスウエハ110が完成する。なお、熱酸化により形成されたデバイス絶縁膜28は、CVDにより形成されたハードマスク115に比してエッチングレートが遅いため(例えば約3倍遅い)、HFベイパーエッチング後も全て除去されずに残っている。
【0099】
図30Cに示されるように、デバイスウエハ110によれば、バンプストッパ111は間にデバイス絶縁層28を介在させることなく、可動電極27のZ2側の表面に直接に積層されている。共通のハードマスク115を使用してエッチングすることによって、バンプストッパ111は、Z2側から見て、Y方向両縁部111a及びX1側先端部111bが可動電極27のY方向両縁部27a及びX1側先端部27bに一致するように形成される。
【0100】
すなわち、バンプストッパ111と可動電極27とを個別のハードマスクを用いてそれぞれエッチングすることがないので、可動電極27に対するバンプストッパ111の位置ズレが生じ得ない。Z方向から見たときの可動電極27の短手方向の幅が狭い場合であっても、可動電極27の上に位置ズレなくバンプストッパ111を形成できる。デバイスウエハ2に換えてデバイスウエハ110を使用して、接合層4を介してキャップウエハ3に、接合することによってMEMSデバイス1を構成できる。
【0101】
上記説明したMEMSデバイス1によれば、以下の効果が発揮される。
【0102】
(1)本開示の一態様に係るMEMSデバイス1は、
第1主面11と第1主面11とは反対側の第2主面12とを有する、デバイスウエハ2と、
デバイスウエハ2に対して第1主面11側から対向する、キャップウエハ3と、
デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを接合する接合層4と
を備え、
デバイスウエハ2は、
第1主面11から第2主面12に向かうZ1側に窪んだキャビティ13を有するデバイス基板10と、
キャビティ13内に位置しており、固定電極23と固定電極23に対向する可動電極27とを含む、センサ部20と、
可動電極27の第1主面11側の表面上に配置されており、Z方向における可動電極27のキャップウエハ3に近接する側への変位を規制する、バンプストッパ100と
を有する。
【0103】
その結果、バンプストッパ100は可動電極27のZ2側表面に直接に設けられているので、バンプストッパ100をキャップウエハ3側に設ける場合のようにデバイスウエハ2とキャップウエハ3との位置ズレを考慮する必要がなく、バンプストッパ100の可動電極27に対する位置ズレが防止される。
さらに、キャップウエハ3にバンプストッパ100を設ける必要がないので、キャップウエハ3が単純化される。例えば、キャップウエハ3側にASIC等を構成する多層配線を形成するときに、バンプストッパ100を形成するべく多層配線層及びこれに付随して存在し得るパッシベーション層を除去して、シリコン基板を表出させる必要がなく、キャップウエハ3の形成プロセスが単純化されると共にプロセスコストを低減できる。
【0104】
(2)Z2側から見たときの可動電極27の短手方向(Y方向)において、バンプストッパ111のY方向両縁部111aは可動電極27のY方向両縁部27aに一致していてもよい。
その結果、デバイス基板10をストラクチャエッチングすることによって、可動電極27の輪郭と共にバンプストッパ111の輪郭を同時に形成できる。
【0105】
(3)Z2側から見たときの可動電極27の短手方向(Y方向)において、バンプストッパ100は、可動電極27よりも幅が狭くてもよい。
その結果、バンプストッパ100をコンパクトに構成しつつ、可動電極27のZ2側への過度の変位を抑制できる。
【0106】
(4)バンプストッパ100は、キャップウエハ3に対向する表面の表面粗さがデバイス基板10の第1主面11よりも粗くてもよい。
その結果、バンプストッパ100は表面粗さが粗いので、キャップウエハ3に接触したときのキャップウエハ3との接触領域が低減されるので、バンプストッパ100がキャップウエハ3に密着することがなく、キャップウエハ3への付着が抑制される。
【0107】
(5)バンプストッパ100は、導電性を有する無機材料製であってもよい。
その結果、バンプストッパ100は帯電しないので、バンプストッパ100とキャップウエハ3との間で静電引力が生じることが防止されて、バンプストッパ100のキャップウエハ3への付着が抑制される。
【0108】
(6)キャップウエハ3は、Z方向において可動電極27がキャップウエハ3に近接する側に変位した際にバンプストッパ100が接触する部分に、第1キャップ絶縁層53及び/又は第2キャップ絶縁層54を有してもよい。
その結果、バンプストッパ100は帯電しないので、キャップウエハ3側の表面に第1キャップ絶縁層53及び/又は第2キャップ絶縁層54が残った状態でも、バンプストッパ100とキャップウエハ3との間に静電引力が生じることがない。よって、キャップウエハ3の表面から第1キャップ絶縁層53及び/又は第2キャップ絶縁層54を除去する必要がなく、キャップウエハ3の形成プロセスが単純化されると共にプロセスコストを低減できる。
【0109】
(7)デバイスウエハ2は、センサ部20に電気的に接続されており、センサ部20の第1主面11側に配置されたデバイス配線30をさらに有しており、
バンプストッパ100は、デバイス配線30と同一レイヤに位置しており同一材料であってもよい。
その結果、バンプストッパ100とデバイス配線30とを、異なるレイヤで形成することを要せずに同一プロセスで形成できる。
【0110】
(8)キャップウエハ3は、キャップ配線60を有し、
デバイス配線30は、接合層4に直接に接合されており、接合層4を介してキャップ配線60に電気的に導通していてもよい。
その結果、接合層4に接合するための固定電極接合部33及び可動電極接合部36をデバイス配線30と異なるレイヤで形成することを要せずに同一プロセスで形成できる。デバイス配線30を直接に接合層4に接合して、接合層4を介してキャップ配線60に電気的に導通させることができる。
【0111】
(9)キャップウエハ3は、キャップ配線60に電気的に導通しており、外部配線が接続される、電極パッド57を有していてもよい。
その結果、電極パッド57がキャップウエハ3に位置しているので、デバイスウエハ2を単純化でき、センサ部20の形成精度を高めやすい。
【0112】
(10)接合層4は、アルミニウムゲルマニウム合金製であってもよい。
その結果、接合層4によって、デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを接合しつつ、デバイス配線30とキャップ配線60とを電気的に導通させることができる。
【0113】
(11)デバイス配線30(すなわち固定電極接合部33及び可動電極接合部36)は、接合層4に対して、濡れ性を有すると共に共晶の拡散が生じない、材料製であってもよい。
その結果、デバイス配線30を接合層4に接合しつつも、デバイス配線30が共晶化によって接合層4に取り込まれることが抑制されるので、デバイス配線30の消失が抑制される。
【0114】
(12)バンプストッパ100は、ポリシリコン、ポリサイド合金、窒化チタン合金、チタンタングステン合金からなる群から選択される、導電性を有する材料製であってもよい。
その結果、バンプストッパ100を、キャップウエハ3に接触した際の損耗を防止するのいに十分硬く、導電性を有するように構成できる。
【0115】
(13)本開示の他の態様に係るMEMSデバイス1の製造方法は、
デバイス基板10のZ2側の表面にデバイス絶縁層28を形成し、
デバイス絶縁層28を部分的に除去してデバイス基板10の表面が露出するビア104を形成し、
ビア104とこの周囲のデバイス絶縁層28とに導電性を有するポリシリコンを積層して、平面視でビア104よりも大きなバンプストッパ100を形成し、
デバイス基板10のZ2側の表面をパッシベーション層105でさらに覆い、
パッシベーション層105及びデバイス絶縁層28を部分的に除去してハードマスク106を形成し、ここでハードマスク106はバンプストッパ100を少なくとも覆うように該バンプストッパ100よりも大きく、センサ部20に対応する形状を有しており、
ハードマスク106を利用してデバイス基板10をエッチングにより除去することによってセンサ部20の輪郭を形成するストラクチャエッチングを実施し、
ハードマスク106を除去することによって、表面に幅狭のバンプストッパ100を有するセンサ部20を形成する。
その結果、幅狭のバンプストッパ100を可動電極27のZ2側の表面上に精度よく形成できる。
【0116】
(14)本開示の更なる他の態様に係るMEMSデバイス1の製造方法は、
デバイス基板10のZ2側の表面にデバイス絶縁層28を形成し、
デバイス絶縁層28を部分的に除去してデバイス基板10の表面が露出する開口部112を形成し、
開口部112内に、開口部112よりも小さなポリシリコンを積層し、
デバイス基板10のZ2側の表面をパッシベーション層114でさらに覆い、
パッシベーション層114及びデバイス絶縁層28を部分的に除去してハードマスク115を形成し、ここでハードマスク115はセンサ部20に対応する形状を有しており、
ハードマスク115を利用してデバイス基板10をエッチングにより除去することによってセンサ部20及びバンプストッパ111の輪郭を同時に形成するストラクチャエッチングを実施し、
ハードマスク115を除去することによって、表面に同じ幅のバンプストッパ111を有するセンサ部20を形成する。
その結果、バンプストッパ111を可動電極27と同時に、ストラクチャエッチングにより輪郭を形成できる。可動電極27の幅が狭い場合であっても、バンプストッパ111を可動電極27に対して位置ズレなく積層できる。
【0117】
(15)バンプストッパ100と同一レイヤに、センサ部20に電気的に接続されたデバイス配線30を形成してもよい。
その結果、バンプストッパ100とデバイス配線30とを同一プロセスで形成できる。
【0118】
(16)デバイス基板10及びセンサ部20を有するデバイスウエハ2を、接合層4を介してキャップウエハ3に接合し、
デバイス配線30を接合層4に直接に接合してもよい。
その結果、デバイスウエハ2に接合層4に接合するための被接合部を異なるレイヤに別途形成することを要しないので、デバイスウエハ2の形成プロセスが単純化されると共にプロセスコストを低減できる。
【0119】
(17)MEMSデバイス1は、第1主面11と第1主面11とは反対側の第2主面12とを有しており第1主面11から第2主面12に向かうZ1側に窪んだキャビティ13を有するデバイス基板10と、キャビティ13内に位置しており単一のアンカー21によってデバイス基板10に対して機械的に接続されると共に電気的に絶縁されたセンサ部20と、センサ部20に電気的に接続されるデバイス配線30と、を有するデバイスウエハ2と、
デバイスウエハ2に対して第1主面11側から対向するキャップ基板50と、デバイス配線30に電気的に導通するキャップ配線60とを有するキャップウエハ3と、
デバイスウエハ2とキャップウエハ3とを接合する、接合層4と
を備え、
デバイス配線30は、接合層4に直接に接合されており、接合層4を介してキャップ配線60に電気的に導通している。
【0120】
その結果、センサ部20が単一のアンカー21に機械的に接続されているので、外部から伝達される歪のセンサ部20への入力経路が単一となる。この結果、外部から伝達される歪の影響がセンサ部20に均一に及ぶので、センサ部20の検出特性を安定化させやすくゼロ点オフセットが抑制される。
【0121】
さらに、デバイス配線30が接合層4に直接に接合されるので、デバイスウエハ2にデバイス配線30とは別に接合部を設けることを要しないので、デバイスウエハ2の構造を単純化しやすい。この結果、デバイスウエハ2の積層数が減少するので、デバイスウエハ2の形成プロセスを単純化しやすく、デバイス基板10に形成されるセンサ部20を精度よく形成しやすい。これにより、センサ部20の形状のバラつきが抑制されるので、該バラつきに起因したゼロ点オフセットが抑制される。
【0122】
これに対して、センサ部が複数のアンカーに接続される場合、外部から複数の入力経路を介してセンサ部に歪が入力され、センサ部に歪の影響が不均一に及ぶので、センサ部が不均一に歪やすく、センサ部の検出特性にバラツキが生じやすい。また、デバイスウエハにデバイス配線とは別に接合部を設ける場合、デバイスウエハの積層数が増大するので、デバイスウエハの形成プロセスが複雑化しやすく、センサ部の形状にバラつきが生じやすい。したがって、従来構造に係るセンサ部のように、センサ部が複数のアンカーを有し及び/又はデバイスウエハにデバイス配線とは異なるレイヤにおける接合部を有する場合、ゼロ点オフセットを抑制しにくい。
【0123】
(18)センサ部20は、
キャビティ13を画定する壁面に固定された、アンカー21と、
アンカー21に対して第1IJ22を介して機械的に接続されると共に電気的に絶縁されており、X方向に延びる、固定電極23と、
アンカー21に対して第2IJ24を介して機械的に接続されると共に電気的に絶縁された、スプリング25と、
スプリング25に対して機械的に連結されると共に電気的に導通する、マス26と、
マス26に対して機械的に連結されると共に電気的に導通しており、X方向に延びており、固定電極23に対してY方向に対向する、可動電極27と、
アンカー21と、固定電極23のうち少なくとも第1IJ22の近位側に位置する領域と、スプリング25、マス26及び可動電極27にわたる領域のうち少なくとも第2IJ24の近位側に位置する領域とにおいて、第1主面11側に積層されたデバイス絶縁層28と、
を有しており、
センサ部20のうちアンカー21を除く部分が、キャビティ13の底壁14に対してZ2側に離間しており、
デバイス配線30は、
デバイス絶縁層28に積層されており、第1主面11側から見て固定電極23に対応位置しておりデバイス絶縁層28を貫通して固定電極23に電気的に導通する、固定電極コンタクト32から、第1IJ22を横断して固定電極接合部33まで延びる、固定電極配線31と、
デバイス絶縁層28に積層されており、第1主面11側から見てスプリング25、マス26又は可動電極27に対応位置しておりデバイス絶縁層28を貫通してスプリング25、マス26又は可動電極27に電気的に導通する、可動電極コンタクト35から、第2IJ24を横断して可動電極接合部36まで延びる、可動電極配線34と
を有しており、
デバイス配線30は、固定電極接合部33及び可動電極接合部36において接合層4を介してキャップ配線60に接合されており、
デバイス配線30及びキャップ配線60は電気的に導通している。
【0124】
その結果、アイソレーションジョイントを利用したZ方向に延びる縦型分離によって、単一のアンカー21に対して固定電極23及び可動電極27を機械的に接続しながら電気的に絶縁する構造を可能とする。これによって、固定電極23及び可動電極27に対する外部から伝達される歪による影響を均一化しやすく、換言すれば固定電極23と可動電極27とが両者の相対的な位置関係を保持したまま同様に歪の影響が及ぶのでこれらから構成されるセンサ部20の特性を安定化させやすい。
【0125】
さらに、デバイスウエハ2はデバイス配線30が接合層4への接合部も兼ねるので、デバイスウエハ2が配線層と接合部とを別々に備えることを要しない。この結果、デバイスウエハ2がより多くの層を有する場合に比して積層工程の数が減少するので、固定電極23及び可動電極27をより精度よく形成しやすい。この場合、例えば固定電極23と可動電極間27の距離の製造バラつきが抑制されるので、外力が生じていないゼロ点におけるオフセットをより減少させやすい。
【0126】
したがって、センサ部20の、外部から伝達される歪によらず出力特性を安定化させることができると共に、検出精度が向上する。
【0127】
なお、本開示は、前記実施形態に記載された構成に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。
【0128】
上記実施形態では、デバイス基板10からセンサ部20をエッチングにより形成したが、これに限らない。例えば、図31には、変形例に係るデバイスウエハ205のX-Z平面に沿った断面図が示されており、デバイスウエハ205は、デバイス基板10に換えてSOI基板200により構成されている。
【0129】
例えば、SOI基板200を、Z2側に位置する第1層201とこのZ1側に積層された第2層202と、このさらにZ1側に積層された第3層203とで構成すると共に、第1層201及び第3層203を導電性シリコンで構成し、第2層202を酸化シリコンである絶縁層として構成する。第1層201にZ1側に延びて第2層202に至るトレンチを掘り込むと共に第2層202を部分的にHFベーパーによって部分的に除去することによって、第2層202に支持されたアンカー221と、アンカー221から水平方向に延びてキャビティ213の底壁214からZ2側に離間した固定電極223及び可動電極227を有する、センサ部220を形成できる。
【0130】
また、固定電極223及び可動電極227において、アンカー221との機械的接続及び電気的絶縁を構成するため、第1層201をZ1側に掘り込んで第2層202に至るトレンチを深堀し該トレンチに絶縁体としてのポリシリコンを埋め込んでDTI(Deep Trench Isolation)222を形成して、DTI222によってアンカー221と固定電極223及び可動電極227と間のZ方向に延びる縦型分離構造を実現できる。したがって、SOI基板200から、単一のアンカー221によって支持されたセンサ部220を有するデバイスウエハ205を形成できる。
【0131】
この場合でも、上述したデバイスウエハ2及びデバイスウエハ110と同様に、可動電極227のZ2側表面にバンプストッパ230を形成できる。
【0132】
また、上記実施形態では、バンプストッパ100,111を、可動電極27のうち、X1側先端部に形成したがこれに限らない。可動電極27のうち、長手方向の任意の場所に形成してもよい。また、バンプストッパを、可動電極27上で、複数個形成してもよい。
【0133】
[付記]
本開示に係るMEMSデバイス及びその製造方法は以下の態様を提供する。
【0134】
[態様1]
第1主面と前記第1主面とは反対側の第2主面とを有する、デバイスウエハと、
前記デバイスウエハに対して前記第1主面側から対向する、キャップウエハと、
前記デバイスウエハと前記キャップウエハとを接合する接合層と
を備え、
前記デバイスウエハは、
前記第1主面から第2主面に向かう第1方向に窪んだキャビティを有するデバイス基板と、
前記キャビティ内に位置しており、固定電極と前記固定電極に対向する可動電極とを含む、センサ部と、
前記可動電極の前記第1主面側の表面上に配置されており、前記第1方向における前記可動電極の前記キャップウエハに近接する側への変位を規制する、バンプストッパと
を有する、MEMSデバイス。
【0135】
[態様2]
前記第1方向から見たときの前記可動電極の短手方向において、前記バンプストッパの両縁部は前記可動電極の両縁部に一致している、
態様1に記載のMEMSデバイス。
【0136】
[態様3]
前記第1方向から見たときの前記可動電極の短手方向において、前記バンプストッパは、前記可動電極よりも幅が狭い、
態様1に記載のMEMSデバイス。
【0137】
[態様4]
前記バンプストッパは、表面粗さが前記デバイス基板の第1主面よりも粗い、
態様1~3のいずれか1つに記載のMEMSデバイス。
【0138】
[態様5]
前記バンプストッパは、導電性を有する無機材料製である、
態様1~4のいずれか1つに記載のMEMSデバイス。
【0139】
[態様6]
前記キャップウエハは、前記第1方向において前記可動電極が前記キャップウエハに近接する側に変位した際に前記バンプストッパが接触する部分に、パッシベーション層を有する、
態様5に記載のMEMSデバイス。
【0140】
[態様7]
前記デバイスウエハは、前記センサ部に電気的に接続されており、前記センサ部の前記第1主面側に配置されたデバイス配線をさらに有しており、
前記バンプストッパは、前記デバイス配線と同一レイヤに位置しており同一材料である、
態様1~6のいずれか1つに記載のMEMSデバイス。
【0141】
[態様8]
前記キャップウエハは、キャップ配線を有し、
前記デバイス配線は、前記接合層に直接に接合されており、前記接合層を介して前記キャップ配線に電気的に導通している、
態様7に記載のMEMSデバイス。
【0142】
[態様9]
前記キャップウエハは、前記キャップ配線に電気的に導通しており、外部配線が接続される、電極パッドを有している、
態様8に記載のMEMSデバイス。
【0143】
[態様10]
前記接合層は、アルミニウムゲルマニウム合金製である、
態様9に記載のMEMSデバイス。
【0144】
[態様11]
前記デバイス配線は、前記接合層に対して、濡れ性を有すると共に共晶の拡散が生じない、材料製である、
態様10に記載のMEMSデバイス。
【0145】
[態様12]
前記バンプストッパは、ポリシリコン、ポリサイド合金、窒化チタン合金、チタンタングステン合金からなる群から選択される、導電性を有する材料製である、
態様5又は11に記載のMEMSデバイス。
【0146】
[態様13]
デバイス基板の表面に酸化膜を形成し、
前記酸化膜を部分的に除去して前記デバイス基板の表面が露出する貫通孔部を形成し、
前記貫通孔部とこの周囲の前記酸化膜とに導電性を有する無機材料を積層して、平面視で前記貫通孔部よりも大きなバンプストッパを形成し、
前記デバイス基板の表面をパッシベーション層でさらに覆い、
前記パッシベーション層及び前記酸化膜を部分的に除去してマスクを形成し、ここで前記マスクは前記バンプストッパを少なくとも覆うように該バンプストッパよりも大きく、センサ部に対応する形状を有しており、
前記マスクを利用して前記デバイス基板をエッチングにより除去することによってセンサ部の輪郭を形成するストラクチャエッチングを実施し、
前記マスクを除去することによって、表面に幅狭のバンプストッパを有するセンサ部を形成する、MEMSデバイスの製造方法。
【0147】
[態様14]
デバイス基板の表面に酸化膜を形成し、
前記酸化膜を部分的に除去して前記デバイス基板の表面が露出する開口部を形成し、
前記開口部内に、前記開口部よりも小さな無機材料を積層し、
前記デバイス基板の表面をパッシベーション層でさらに覆い、
前記パッシベーション層及び前記酸化膜を部分的に除去してマスクを形成し、ここで前記マスクはセンサ部に対応する形状を有しており、
前記マスクを利用して前記デバイス基板をエッチングにより除去することによってセンサ部及びバンプストッパの輪郭を同時に形成するストラクチャエッチングを実施し、
前記マスクを除去することによって、表面に同じ幅のバンプストッパを有するセンサ部を形成する、MEMSデバイスの製造方法。
【0148】
[態様15]
前記バンプストッパと同一レイヤに、前記センサ部に電気的に接続されたデバイス配線を形成する、
態様13又は14に記載のMEMSデバイスの製造方法。
【0149】
[態様16]
前記デバイス基板及び前記センサ部を有するデバイスウエハを、接合層を介してキャップウエハに接合し、
前記デバイス配線を前記接合層に直接に接合する、
態様13~15のいずれか1つに記載のMEMSデバイスの製造方法。
【符号の説明】
【0150】
1 MEMSデバイス
2 デバイスウエハ
3 キャップウエハ
4 接合層
10 デバイス基板
13 キャビティ
14 底壁
20 センサ部
21 アンカー
22 第1IJ
23 固定電極
24 第2IJ
25 スプリング
26 マス
27 可動電極
27a Y方向両縁部
27b X1側先端部
28 デバイス絶縁層
30 デバイス配線
31 固定電極配線
32 固定電極コンタクト
33 固定電極接合部
34 可動電極配線
35 可動電極コンタクト
36 可動電極接合部
40 デバイス外周接合層
41 デバイス外周層コンタクト
50 キャップ基板
53 第1キャップ絶縁層
54 第2キャップ絶縁層
55 接合電極
56 接合電極コンタクト
57 電極パッド
58 キャップ配線コンタクト
60 キャップ配線
70 キャップ外周接合層
71 キャップ外周層コンタクト
90 AlGe共晶材
100 バンプストッパ
100a Y方向両縁部
105 パッシベーション層
106 ハードマスク
111 バンプストッパ
111a Y方向両縁部
111b X1側先端部
114 パッシベーション層
115 ハードマスク
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15A
図15B
図15C
図16A
図16B
図16C
図17A
図17B
図17C
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21
図22
図23
図24
図25A
図25B
図25C
図26A
図26B
図26C
図27A
図27B
図27C
図28A
図28B
図28C
図29A
図29B
図29C
図30A
図30B
図30C
図31