(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173218
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】記録方法
(51)【国際特許分類】
B41M 5/00 20060101AFI20241205BHJP
D06P 5/30 20060101ALI20241205BHJP
C09D 11/322 20140101ALI20241205BHJP
C09D 11/54 20140101ALI20241205BHJP
【FI】
B41M5/00 134
D06P5/30
C09D11/322
C09D11/54
B41M5/00 132
B41M5/00 120
B41M5/00 114
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091477
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】宮佐 亮太
【テーマコード(参考)】
2H186
4H157
4J039
【Fターム(参考)】
2H186AB03
2H186AB10
2H186AB27
2H186AB35
2H186AB41
2H186AB47
2H186AB49
2H186AB50
2H186AB54
2H186AB55
2H186AB56
2H186AB57
2H186FA14
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB58
4H157BA15
4H157CB08
4H157CB11
4H157GA06
4J039BE01
4J039CA06
4J039EA19
4J039FA03
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】発色性、摩擦堅牢性が良好で、にじみの少ない画像を形成できる記録方法を提供する。
【解決手段】インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる反応液付着工程と、黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるインク付着工程と、アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるコート液付着工程と、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる処理液付着工程と、を有し、特定物質の含有量が、処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であり、コート液付着工程は、処理液付着工程よりも先に行われ、コート液付着工程によりコート液組成物を付着させてから、コート液組成物が付着した領域上に、処理液付着工程により処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である記録方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる反応液付着工程と、
黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるインク付着工程と、
アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるコート液付着工程と、
強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる処理液付着工程と、を有し、
前記特定物質の含有量が、前記処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であり、
前記コート液付着工程は、前記処理液付着工程よりも先に行われ、
前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である、記録方法。
【請求項2】
請求項1において、
前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、1秒以下である、記録方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記処理液付着工程により前記処理液組成物を付着させてから、前記処理液組成物が付着した領域上に、前記コート液組成物を付着させる、第2コート液付着工程をさらに有し、
前記コート液付着工程と、前記処理液付着工程と、前記第2コート液付着工程とが、同一の走査内で行われる、記録方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2において、
布帛の所定の領域に対し、前記処理液付着工程の開始から終了までの時間が25秒以上である、記録方法。
【請求項5】
請求項1又は請求項2において、
前記処理液組成物は、前記強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子を含有し、
前記オルガノポリシロキサンが、非イオン性シリコーンである、記録方法。
【請求項6】
請求項1又は請求項2において、
前記処理液組成物は、前記強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子を含有し、
前記オルガノポリシロキサンが、アミノ変性シリコーンである、記録方法。
【請求項7】
請求項1又は請求項2において、
前記処理液組成物は、界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤は、いずれもHLB値が8以上である、記録方法。
【請求項8】
請求項1又は請求項2において、
前記インク付着工程は、前記コート液付着工程よりも先に行われる、記録方法。
【請求項9】
請求項1又は請求項2において、
前記コート液組成物中の色材の含有量は、前記コート液組成物の総量に対して、0.1質量%以下である、記録方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェット法は、紙等に対する画像の記録だけでなく、布帛の捺染にも適用が試みられ、各種のインクジェット捺染が検討されている。捺染用のインクジェットインクは、所望の色の画像を得るために色材を含有し、色材として染料や顔料が用いられる。また、インクジェット捺染においても、インクや記録方法において多くの検討が行われている。
【0003】
例えば、特許文献1には、インクジェット捺染において、顔料による画像の堅牢性を高め、記録物の風合いを改善する等の目的で、オルガノポリシロキサンを用いることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
顔料捺染は、染料捺染に比べ、画像の摩擦堅牢性や捺染物の発色性が劣り、これらの改善が求められている。また、捺染物に滲みのないことが求められている。また、インクジェット顔料捺染は、アナログ捺染やインクジェット染料捺染に比べ工程が簡略で、排水などの環境負荷低い点で優れており、簡略な工程を維持することも求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る記録方法の一態様は、
インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる反応液付着工程と、
黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるインク付着工程と、
アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるコート液付着工程と、
強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる処理液付着工程と、
を有し、
前記特定物質の含有量が、前記処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であり、
前記コート液付着工程は、前記処理液付着工程よりも先に行われ、
前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本実施形態に係る記録方法に適用可能な記録装置の概略全体構成を示す模式図。
【
図2】インクジェットヘッドのノズル列の配列の一例を示す模式図。
【
図3】実施例及び比較例におけるヘッド構成、打ち方及び吐出する組成物を示す図。
【
図5】実施例及び比較例に係る反応液組成物の組成を示す表(表1)。
【
図6】実施例及び比較例に係る黒インク組成物の組成を示す表(表2)。
【
図7】実施例及び比較例に係るコート液組成物の組成を示す表(表3)。
【
図8】実施例及び比較例に係る処理液組成物の組成を示す表(表4)。
【
図9】実施例に係る条件及び評価結果を示す表(表5)。
【
図10】実施例に係る条件及び評価結果を示す表(表6)。
【
図11】比較例に係る条件及び評価結果を示す表(表7)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に本発明の実施形態について説明する。以下に説明する実施形態は、本発明の例を説明するものである。本発明は以下の実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において実施される各種の変形形態も含む。なお、以下で説明される構成の全てが本発明の必須の構成であるとは限らない。
【0009】
1.記録方法
本実施形態に係る記録方法は、インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる反応液付着工程と、黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるインク付着工程と、アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるコート液付着工程と、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる処理液付着工程と、を有する。そして、前記特定物質の含有量が、前記処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であり、前記コート液付着工程は、前記処理液付着工程よりも先に行われ、前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である。
【0010】
1.1.布帛
本実施形態の記録方法は、布帛に対して行われる。布帛としては、特に限定されない。布帛を構成する素材としては、特に限定されず、例えば、綿、麻、羊毛、絹等の天然繊維、ポリプロピレン、ポリエステル、アセテート、トリアセテート、ポリアミド、ポリウレタン等の合成繊維、ポリ乳酸等の生分解性繊維などが挙げられ、これらの混紡繊維であってもよい。布帛としては、上記に挙げた繊維を、織物、編物、不織布等いずれの形態にしたものでもよいし、混織等を施したものでもよい。
【0011】
1.2.反応液付着工程
反応液付着工程は、インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる。
【0012】
1.2.1.反応液組成物
反応液組成物は、インク組成物の成分を凝集させる凝集剤を少なくとも含有する。凝集剤は、インク組成物に含まれる顔料、インク組成物やコート液組成物に含まれ得る樹脂粒子などの成分と反応することで、顔料や樹脂粒子を凝集させる作用を有する。このような凝集により、例えば、顔料の発色を高めること、樹脂粒子の定着性を高めること、及び/又は、インクの粘度を高めることができる。
【0013】
1.2.1.(1)凝集剤
凝集剤としては、特に限定されるものではないが、金属塩、無機酸、有機酸、カチオン性化合物等が挙げられ、カチオン性化合物としては、カチオン性樹脂(カチオン性ポリマー)、カチオン性界面活性剤等を用いることができる。これらの中でも、金属塩としては多価金属塩が好ましく、カチオン性化合物としてはカチオン性樹脂が好ましい。そのため、凝集剤としては、カチオン性樹脂、有機酸、及び多価金属塩から選ばれることが、得られる画質、耐擦性、光沢等が特に優れる点で好ましい。
【0014】
金属塩としては好ましくは多価金属塩であるが、多価金属塩以外の金属塩も使用可能である。これらの凝集剤の中でも、インクに含まれる成分との反応性に優れるという点から、金属塩、及び有機酸から選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。また、カチオン性化合物の中でも、処理液に対して溶解しやすいという点から、カチオン性樹脂を用いることが好ましい。また、凝集剤は複数種を併用することも可能である。
【0015】
多価金属塩とは、2価以上の金属イオンとアニオンから構成される化合物である。2価以上の金属イオンとしては、例えば、カルシウム、マグネシウム、銅、ニッケル、亜鉛、バリウム、アルミニウム、チタン、ストロンチウム、クロム、コバルト、鉄等のイオンが挙げられる。これらの多価金属塩を構成する金属イオンの中でも、インクの成分の凝集性に優れているという点から、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンの少なくとも一方であることが好ましい。
【0016】
多価金属塩を構成するアニオンとしては、無機イオン又は有機イオンである。すなわち、本発明における多価金属塩とは、無機イオン又は有機イオンと多価金属とからなるものである。このような無機イオンとしては、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、硝酸イオン、硫酸イオン、水酸化物イオン等が挙げられる。有機イオンとしては有機酸イオンが挙げられ、例えばカルボン酸イオンが挙げられる。
【0017】
なお、多価金属化合物はイオン性の多価金属塩であることが好ましく、特に、上記多価金属塩がマグネシウム塩、カルシウム塩である場合、処理液の安定性がより良好となる。また、多価金属の対イオンとしては、無機酸イオン、有機酸イオンのいずれでもよい。
【0018】
上記の多価金属塩の具体例としては、重質炭酸カルシウム及び軽質炭酸カルシウムといった炭酸カルシウム、硝酸カルシウム、塩化カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、水酸化カルシウム、塩化マグネシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、塩化バリウム、炭酸亜鉛、硫化亜鉛、珪酸アルミニウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硝酸銅、ギ酸カルシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウム、酢酸アルミニウム等が挙げられる。これらの多価金属塩は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。これらの中でも、水への十分な溶解性を確保でき、かつ、処理液による跡残りが低減する(跡が目立たなくなる)ため、ギ酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硝酸カルシウム、及び塩化カルシウムのうち少なくともいずれかが好ましく、ギ酸カルシウム、硝酸カルシウムがより好ましい。なお、これらの金属塩は、原料形態において水和水を有していてもよい。
【0019】
多価金属塩以外の金属塩としてはナトリウム塩、カリウム塩などの一価の金属塩が挙げられ、例えば硫酸ナトリウム、硫酸カリウムなどが挙げられる。
【0020】
有機酸としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸、酢酸、グリコール酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アスコルビン酸、コハク酸、グルタル酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、スルホン酸、オルトリン酸、ピロリドンカルボン酸、ピロンカルボン酸、ピロールカルボン酸、フランカルボン酸、ピリジンカルボン酸、クマリン酸、チオフェンカルボン酸、ニコチン酸、若しくはこれらの化合物の誘導体、又はこれらの塩等が好適に挙げられる。有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。有機酸の塩で金属塩であるものは上記の金属塩に含める。
【0021】
無機酸としては、硫酸、塩酸、硝酸、リン酸等が挙げられる。無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
カチオン性樹脂(カチオンポリマー)としては、例えば、カチオン性のアクリル樹脂、カチオン性のウレタン系樹脂、カチオン性のオレフィン系樹脂、カチオン性のアミン系樹脂、カチオン性界面活性剤等が挙げられる。カチオン性ポリマーは好ましくは水溶性である。
【0023】
カチオン性のアクリル樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、第一工業製薬社のスーパーフレックス(登録商標)620,650、大原パラヂウム化学社のパラサーフUP-22、三洋化成工業社のパーマリン(登録商標)UC-20、ユニチカ社のアローベース(登録商標)CB-1200,CD-1200、日信化学工業社のビニブラン(登録商標)2687、ジャパンコーティングレジン社のMowinyl7820などが挙げられる。
【0024】
カチオン性のウレタン系樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、ハイドラン CP-7010、CP-7020、CP-7030、CP-7040、CP-7050、CP-7060、CP-7610(商品名、大日本インキ化学工業株式会社製)、スーパーフレックス 600、610、620、630、640、650(商品名、第一工業製薬株式会社製)、ウレタンエマルジョン WBR-2120C、WBR-2122C(商品名、大成ファインケミカル株式会社製)等を用いることができる。
【0025】
カチオン性のオレフィン樹脂は、エチレン、プロピレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。また、カチオン性のオレフィン樹脂は、水や有機溶媒等を含む溶媒に分散させたエマルジョン状態であってもよい。カチオン性のオレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えば、アローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等が挙げられる。
【0026】
カチオン性のアミン系樹脂(カチオン性ポリマー)としては、構造中にアミノ基を有するものであればよく、公知のものを適宜選択して用いることができる。例えば、ポリアミン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリルアミン樹脂などが挙げられる。ポリアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアミノ基を有する樹脂である。ポリアミド樹脂は樹脂の主骨格中にアミド基を有する樹脂である。ポリアリルアミン樹脂は樹脂の主骨格中にアリル基に由来する構造を有する樹脂である。
【0027】
また、カチオン性のポリアミン系樹脂としては、センカ株式会社製のユニセンスKHE103L(ヘキサメチレンジアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約5.0、粘度20~50(mPa・s)、固形分濃度50質量%の水溶液)、ユニセンスKHE104L(ジメチルアミン/エピクロルヒドリン樹脂、1%水溶液のpH約7.0、粘度1~10(mPa・s)、固形分濃度20質量%の水溶液)などを挙げることができる。さらにカチオン性のポリアミン系樹脂の市販品の具体例としては、FL-14(SNF社製)、アラフィックス100、251S、255、255LOX(荒川化学社製)、DK-6810、6853、6885;WS-4010、4011、4020、4024、4027、4030(星光PMC社製)、パピオゲンP-105(センカ社製)、スミレーズレジン650(30)、675A、6615、SLX-1(田岡化学工業社製)、カチオマスター(登録商標)PD-1、7、30、A、PDT-2、PE-10、PE-30、DT-EH、EPA-SK01、TMHMDA-E(四日市合成社製)、ジェットフィックス36N、38A、5052(里田化工社製)が挙げられる。
【0028】
ポリアミン系樹脂としては、ポリアリルアミン樹脂も挙げられる。ポリアリルアミン樹脂は、例えば、ポリアリルアミン塩酸塩、ポリアリルアミンアミド硫酸塩、アリルアミン塩酸塩・ジアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン酢酸塩・ジアリルアミン酢酸塩コポリマー、アリルアミン塩酸塩・ジメチルアリルアミン塩酸塩コポリマー、アリルアミン・ジメチルアリルアミンコポリマー、ポリジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミン塩酸塩、ポリメチルジアリルアミンアミド硫酸塩、ポリメチルジアリルアミン酢酸塩、ポリジアリルジメチルアンモニウムクロリド、ジアリルアミン酢酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルメチルエチルアンモニウムエチルサルフェイト・二酸化硫黄コポリマー、メチルジアリルアミン塩酸塩・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・二酸化硫黄コポリマー、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド・アクリルアミドコポリマー等を挙げることができる。
【0029】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、第1級、第2級、及び第3級アミン塩型化合物、アルキルアミン塩、ジアルキルアミン塩、脂肪族アミン塩、ベンザルコニウム塩、第4級アンモニウム塩、第4級アルキルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、オニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0030】
これらの凝集剤は、複数種を使用してもよい。また、これらの凝集剤のうち、多価金属塩、有機酸、カチオン性樹脂の少なくとも一種を選択すれば、凝集作用がより良好であるので、より高画質な(特に発色性の良好な)画像を形成することができる。
【0031】
反応液組成物における、凝集剤の合計の含有量は、限定されないが、例えば、反応液組成物の全質量に対して、0.1質量%以上15質量%以下であり、1質量%以上10質量%以下であることが好ましく、2質量%以上10質量%以下であることがより好ましい。
【0032】
1.2.1.(2)水
反応液組成物は、水を含んでもよい。水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、及び蒸留水等の純水、並びに超純水のような、イオン性不純物を極力除去したものが挙げられる。また、紫外線照射又は過酸化水素の添加等によって滅菌した水を用いると、組成物を長期保存する場合に細菌類や真菌類の発生を低減することができる。
【0033】
水の含有量は、反応液組成物の総量に対して、30質量%以上、好ましくは40質量%以上であり、より好ましくは45質量%以上であり、さらに好ましくは50質量%以上である。なお反応液組成物中の水というときには、例えば、原料として用いる凝集剤に含まれる結晶水や添加する水を含むものとする。水の含有量が30質量%以上であることにより、反応液組成物を比較的低粘度とすることができる。また、水の含有量の上限は、反応液組成物の総量に対して、好ましくは90質量%以下であり、より好ましくは85質量%以下であり、さらに好ましくは80質量%以下である。なお、本明細書において「水系組成物」という場合には、組成物の全質量(100質量%)に対して、水を30質量%以上含有する組成物のことを指す。
【0034】
1.2.1.(3)その他の成分
反応液組成物は、保湿剤、その他の溶剤、界面活性剤、添加剤を含んでもよい。
【0035】
(保湿剤)
処理液組成物は、保湿剤を含有してもよい。保湿剤としては、特に限定されないが、例えば、グリセリン、2-ピロドリン、尿素、トリエタノールアミン、プロピレングリコール、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロドリン、トリメチロールプロパン、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、アミノコート等が挙げられる。これらのうち、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
(その他の溶剤)
処理液組成物は、その他の溶剤を含んでもよい。そのような溶剤としては、水溶性を有する有機溶剤であることが好ましい。有機溶剤の機能の一つは、布帛に対する処理液組成物の濡れ性を向上させることや、処理液組成物の保湿性を高めることが挙げられる。また、有機溶剤は、浸透剤としても機能できる。
【0037】
有機溶剤としては、エステル類、アルキレングリコールエーテル類、環状エステル類、含窒素溶剤、多価アルコール等を挙げることができる。含窒素溶剤としては環状アミド類、非環状アミド類などを挙げることができる。非環状アミド類としてはアルコキシアルキルアミド類などが挙げられる。
【0038】
エステル類としては、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールモノアセテート類、エチレングリコールジアセテート、ジエチレングリコールジアセテート、プロピレングリコールジアセテート等のグリコールジエステル類が挙げられる。
【0039】
アルキレングリコールエーテル類としては、アルキレングリコールのモノエーテル又はジエーテルであればよく、アルキルエーテルが好ましい。具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル類、及び、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、等のアルキレングリコールジアルキルエーテル類が挙げられる。
【0040】
環状エステル類としては、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン、β-ブチロラクトン等の環状エステル類(ラクトン類)、並びに、それらのカルボニル基に隣接するメチレン基の水素が炭素数1~4のアルキル基によって置換された化合物を挙げることができる。
【0041】
アルコキシアルキルアミド類としては、例えば、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-メトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-エトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-ジエチルプロピオンアミド、3-n-ブトキシ-N,N-メチルエチルプロピオンアミド等を例示することができる。
【0042】
環状アミド類としては、ラクタム類が挙げられ、例えば、2-ピロリドン、1-メチル-2-ピロリドン、1-エチル-2-ピロリドン、1-プロピル-2-ピロリドン、1-ブチル-2-ピロリドン、等のピロリドン類などが挙げられる。
【0043】
また、アルコキシアルキルアミド類として、下記一般式(1)で表される化合物を用いることも好ましい。
【0044】
R1-O-CH2CH2-(C=O)-NR2R3 ・・・(1)
【0045】
上記式(1)中、R1は、炭素数1以上4以下のアルキル基を示し、R2及びR3は、それぞれ独立にメチル基又はエチル基を示す。「炭素数1以上4以下のアルキル基」は、直鎖状又は分岐状のアルキル基であることができ、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、iso-プロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、iso-ブチル基、tert-ブチル基であることができる。上記式(1)で表される化合物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上混合して用いてもよい。
【0046】
多価アルコールとしては、1,2-アルカンジオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール(別名:プロパン-1,2-ジオール)、1,2-ブタンジオール、1,2-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,2-ヘプタンジオール、1,2-オクタンジオール等のアルカンジオール類)、1,2-アルカンジオールを除く多価アルコール(ポリオール類)(例えば、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール(別名:1,3-ブチレングリコール)、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2-エチル-2-メチル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-2-プロピル-1,3-プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-メチルペンタン-2,4-ジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン等)等が挙げられる。
【0047】
多価アルコール類は、アルカンジオール類とポリオール類を挙げることができる。アルカンジオール類は、炭素数5以上のアルカンのジオールである。アルカンの炭素数は好ましくは5~15であり、より好ましくは6~10であり、更に好ましくは6~8である。好ましくは1,2-アルカンジオールである。
【0048】
ポリオール類は炭素数4以下のアルカンのポリオールか、炭素数4以下のアルカンのポリオールの水酸基同士の分子間縮合物である。アルカンの炭素数は好ましくは2~3である。ポリオール類の分子中の水酸基数は2以上であり、好ましくは5以下であり、より好ましくは3以下である。ポリオール類が上記の分子間縮合物である場合、分子間縮合数は2以上であり、好ましくは4以下であり、より好ましくは3以下である。多価アルコール類は、1種単独か又は2種以上を混合して使用することができる。
【0049】
アルカンジオール類及びポリオール類は、主に浸透溶剤及び/又は保湿溶剤として機能することができる。しかし、アルカンジオール類は浸透溶剤としての性質が強い傾向があり、ポリオール類は保湿溶剤としての性質が強い傾向がある。
【0050】
(界面活性剤)
反応液組成物は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、組成物の表面張力を調節し、例えば布帛との濡れ性等を調整する機能を備える。界面活性剤の中でも、例えば、アセチレングリコール系界面活性剤、シリコーン系界面活性剤、及びフッ素系界面活性剤を好ましく用いることができる。
【0051】
アセチレングリコール系界面活性剤としては、特に限定されないが、例えば、サーフィノール104、104E、104H、104A、104BC、104DPM、104PA、104PG-50、104S、420、440、465、485、SE、SE-F、504、61、DF37、CT111、CT121、CT131、CT136、TG、GA、DF110D(以上全て商品名、エア・プロダクツ&ケミカルズ社製)、オルフィンB、Y、P、A、STG、SPC、E1004、E1010、PD-001、PD-002W、PD-003、PD-004、EXP.4001、EXP.4036、EXP.4051、AF-103、AF-104、AK-02、SK-14、AE-3(以上全て商品名、日信化学工業社製)、アセチレノールE00、E00P、E40、E100(以上全て商品名、川研ファインケミカル社製)が挙げられる。
【0052】
シリコーン系界面活性剤としては、特に限定されないが、ポリシロキサン系化合物が好ましく挙げられる。当該ポリシロキサン系化合物としては、特に限定されないが、例えばポリエーテル変性オルガノシロキサンが挙げられる。当該ポリエーテル変性オルガノシロキサンの市販品としては、例えば、BYK-306、BYK-307、BYK-333、BYK-341、BYK-345、BYK-346、BYK-348(以上商品名、ビックケミー・ジャパン社製)、KF-351A、KF-352A、KF-353、KF-354L、KF-355A、KF-615A、KF-945、KF-640、KF-642、KF-643、KF-6020、X-22-4515、KF-6011、KF-6012、KF-6015、KF-6017(以上商品名、信越化学工業社製)、シルフェイスSAG002、005、503A、008(以上商品名、日信化学工業株式会社製)等が挙げられる。
【0053】
フッ素系界面活性剤としては、フッ素変性ポリマーを用いることが好ましく、具体例としては、BYK-3440(ビックケミー・ジャパン社製)、サーフロンS-241、S-242、S-243(以上商品名、AGCセイミケミカル社製)、フタージェント215M(ネオス社製)等が挙げられる。
【0054】
反応液組成物に界面活性剤を含有させる場合には、複数種を含有させてもよい。反応液組成物に界面活性剤を含有させる場合の含有量は、反応液組成物の全質量に対して、0.1質量%以上2質量%以下、好ましくは0.3質量%以上1.5質量%以下、より好ましくは、0.4質量%以上1.0質量%以下とすることができる。
【0055】
反応液組成物においては、色材の含有量は、反応液組成物の総量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。すなわち、反応液組成物は、着色を意図して用いられないことが好ましい。
【0056】
(添加剤)
反応液組成物は、添加剤を含んでもよい。添加剤としては、pH調整剤、糖類、キレート化剤、防腐剤・防かび剤、防錆剤、その他が挙げられる。
【0057】
pH調整剤としては、特に限定されないが、酸、塩基、弱酸、弱塩基の適宜の組み合わせが挙げられる。そのような組み合わせに用いる酸、塩基の例としては、無機酸として、硫酸、塩酸、硝酸等、無機塩基として水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、アンモニア等が挙げられ、有機塩基として、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン、トリプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン(THAM)等が挙げられ、有機酸として、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、N,N-ビス(2-ヒドロキシエチル)-2-アミノエタンスルホン酸(BES)、4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、モルホリノエタンスルホン酸(MES)、カルバモイルメチルイミノビス酢酸(ADA)、ピペラジン-1,4-ビス(2-エタンスルホン酸)(PIPES)、N-(2-アセトアミド)-2-アミノエタンスルホン酸(ACES)、コラミン塩酸、N-トリス(ヒドロキシメチル)メチル-2-アミノエタンスルホン酸(TES)、アセトアミドグリシン、トリシン、グリシンアミド、ビシン等のグッドバッファー、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液等を用いてもよい。さらに、これらのうち、pH調整剤の一部又は全部として、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等の第三級アミン、及び、アジピン酸、クエン酸、コハク酸、乳酸等のカルボキシル基含有有機酸、が含まれることが、pH緩衝効果をより安定に得ることができるため好ましい。
【0058】
糖類の具体例としては、グルコース、マンノース、フルクトース、リボース、キシロース、アラビノース、ガラクトース、アルドン酸、グルシトール(ソルビット)、マルトース、セロビオース、ラクトース、スクロース、トレハロース、及びマルトトリオース等が挙げられる。
【0059】
キレート化剤としては、例えば、エチレンジアミン四酢酸及びそれらの塩類(エチレンジアミン四酢酸二水素二ナトリウム塩、又は、エチレンジアミンのニトリロトリ酢酸塩、ヘキサメタリン酸塩、ピロリン酸塩、若しくはメタリン酸塩等)等が挙げられる。
【0060】
防腐剤、防かび剤としては、例えば、安息香酸ナトリウム、ペンタクロロフェノールナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、プロキセルCRL、プロキセルBDN、プロキセルGXL、プロキセルXL-2、プロキセルIB、及びプロキセルTN(いずれもロンザジャパン社製、商品名)、4-クロロ-3-メチルフェノール(バイエル社のプリベントールCMK等)などが挙げられる。
【0061】
防錆剤の例としては、ベンゾトリアゾール、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオグリコール酸アンモン、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、ジシクロヘキシルアンモニウムニトライト等が挙げられる。この中でも特にベンゾトリアゾールが好適である。
【0062】
その他の添加剤としては、粘度調整剤、防黴剤、酸化防止剤、酸素吸収剤等が挙げられる。
【0063】
なお反応液組成物においては、色材の含有量は、反応液組成物の総量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。すなわち、反応液組成物は、着色を意図して用いられないことが好ましい。
【0064】
1.2.1.(4)製造及び物性
反応液組成物は、布帛等の布帛にインクジェット法により付着される場合は、その粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0065】
反応液組成物は、布帛への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。また、表面張力は、20mN/m以上がこのましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0066】
なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0067】
反応液組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0068】
1.2.2.付着の態様
反応液付着工程は、インクジェット法、スプレー法、浸漬法などにより行われる。反応液を布帛に付着させる方法としては、インクジェット法、反応液を各種のスプレーを用いて布帛に塗布する方法のいずれか又はそれらを組み合わせた方法を用いることが好ましい。
【0069】
反応液付着工程は、インクジェット法によって行われることがより好ましい。その場合には、20℃における粘度を、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。反応液がインクジェット法によって布帛に付着される場合、所定の反応液付着領域を効率的に布帛に形成することが容易である。
【0070】
反応液付着工程における反応液組成物の付着量は、10g/m2以上80g/m2以下が好ましく、15g/m2以上60g/m2以下がより好ましく、20g/m2以上40g/m2以下がさらに好ましい。このようにすれば、処理液のにじみをさらに抑制できる。また、必要最小限の塗布とできるので、布帛の本来の吸水性や風合いを良好に維持することができる。さらに、良好な発色性を有する有色画像を得ることができる。
【0071】
反応液組成物は、黒インク組成物、コート液組成物の成分の少なくとも1種を凝集させることができる。
【0072】
1.3.インク付着工程
インク付着工程では、黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる。
【0073】
1.3.1.黒インク組成物
インク組成物は、黒色顔料と、水と、を含有する。
【0074】
1.3.1.(1)黒色顔料
黒色顔料としては、カーボンブラック、アニリンブラックなどが挙げられ、具体例として、No.2300、No.900、MCF88、No.33、No.40、No.45、No.52、MA7、MA8、MA100、No.2200B等(以上、三菱化学社(Mitsubishi Chemical Corporation)製)、Raven 5750、Raven 5250、Raven 5000、Raven 3500、Raven 1255、Raven 700等(以上、コロンビアカーボン(Carbon Columbia)社製)、Rega1 400R、Rega1 330R、Rega1 660R、Mogul L、Monarch 700、Monarch 800、Monarch 880、Monarch 900、Monarch 1000、Monarch 1100、Monarch 1300、Monarch 1400等(キャボット社(CABOT JAPAN K.K.)製)、Color Black FW1、Color Black FW2、Color Black FW2V、Color Black FW18、Color Black FW200、Color B1ack S150、Color Black S160、Color Black S170、Printex 35、Printex U、Printex V、Printex 140U、Special Black 6、Special Black 5、Special Black 4A、Special Black 4(以上、デグッサ(Degussa)社製)が挙げられる。
【0075】
黒色顔料は、分散媒中に安定的に分散できることが好適であり、そのために分散剤を使用して分散させてもよい。分散剤としては、樹脂分散剤等が挙げられ、インク組成物中での顔料の分散安定性を良好とできるものから選択される。また、顔料は、例えば、オゾン、次亜塩素酸、発煙硫酸等により、顔料表面を酸化、あるいはスルホン化して顔料粒子の表面を修飾することにより、自己分散型の顔料として使用してもよい。
【0076】
樹脂分散剤(分散剤樹脂)としては、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸-アクリルニトリル共重合体、(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン-(メタ)アクリル酸共重合体等の(メタ)アクリル系樹脂及びその塩;スチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-マレイン酸共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等のスチレン系樹脂及びその塩;イソシアネート基とヒドロキシル基とが反応したウレタン結合を含む高分子化合物(樹脂)であって直鎖状及び/又は分岐状であってもよく、架橋構造の有無を問わないウレタン系樹脂及びその塩;ポリビニルアルコール類;ビニルナフタレン-マレイン酸共重合体及びその塩;酢酸ビニル-マレイン酸エステル共重合体及びその塩;並びに;酢酸ビニル-クロトン酸共重合体及びその塩等の水溶性樹脂を挙げることができる。これらの中でも、疎水性官能基を有するモノマーと親水性官能基を持つモノマーとの共重合体、疎水性官能基と親水性官能基とを併せ持つモノマーからなる重合体が好ましい。共重合体の形態としては、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれの形態でも用いることができる。
【0077】
スチレン系樹脂分散剤の市販品としては、例えば、X-200、X-1、X-205、X-220、X-228(星光PMC社製)、ノプコスパース(登録商標)6100、6110(サンノプコ株式会社製)、ジョンクリル67、586、611、678、680、682、819(BASF社製)、DISPERBYK-190(ビックケミー・ジャパン株式会社製)、N-EA137、N-EA157、N-EA167、N-EA177、N-EA197D、N-EA207D、E-EN10(第一工業製薬製)等が挙げられる。
【0078】
また、アクリル系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-187、BYK-190、BYK-191、BYK-194N、BYK-199(ビックケミー株式会社製)、アロンA-210、A6114、AS-1100、AS-1800、A-30SL、A-7250、CL-2東亜合成株式会社製)等が挙げられる。
【0079】
さらに、ウレタン系樹脂分散剤の市販品としては、BYK-182、BYK-183、BYK-184、BYK-185(ビックケミー株式会社製)、TEGO Disperse710(Evonic Tego Chemi社製)、Borchi(登録商標)Gen1350(OMG Borschers社製)等が挙げられる。
【0080】
分散剤は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。分散剤の合計の含有量は、黒色顔料50質量部に対して、0.1質量部以上30質量部以下が好ましく、より好ましくは0.5質量部以上25質量部以下、さらにより好ましくは1質量部以上20質量部以下、よりさらに好ましくは1.5質量部以上15質量部以下である。分散剤の含有量が顔料50質量部に対して0.1質量部以上であることにより、黒色顔料の分散安定性をさらに高めることができる。また、分散剤の含有量が顔料50質量部に対して30質量部以下であれば、得られる分散体の粘度を小さく抑えることができる。
【0081】
分散剤としてこのような樹脂分散剤を用いることにより、黒色顔料の分散及び凝集性がより良好となり、さらに良好な分散安定性及びさらに良好な画質の画像を得ることができる。
【0082】
分散剤樹脂は酸価を有することが好ましく、酸価が5mgKOH/g以上が好ましく、10~200mgKOH/gがより好ましく、15~150mgKOH/gがさらに好ましい。さらに20~100mgKOH/gが好ましく、25~70mgKOH/gがさらに好ましい。
【0083】
酸価は、JIS K0070に従って、中和電位差滴定法で測定することができる。滴定装置として、例えば、京都電子工業社製の「AT610」を用いることができる。
【0084】
黒色顔料の含有量は、黒インク組成物の全質量に対して、好ましくは0.3質量%以上20質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以上15質量%以下である。さらには、1質量%以上10質量%以下が好ましく、2質量%以上7質量%以下がより好ましい。
【0085】
1.3.1.(2)水
黒インク組成物は、水を含む。水については、上述の反応液組成物と含有量ともに同様であるので、説明を省略する。
【0086】
1.3.1.(3)その他の成分
黒インク組成物は、顔料、水の他に、アニオン性樹脂粒子、保湿剤、溶剤、界面活性剤、添加剤等を含んでもよい。保湿剤、溶剤、界面活性剤、添加剤については、すでに説明したと同様であるので、説明を省略する。
【0087】
黒インク組成物は、アニオン性樹脂粒子を含有してもよい。樹脂粒子は、布帛に付着させた組成物による画像の密着性などを向上させることができる。アニオン性の樹脂粒子としては、例えば、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂(スチレンアクリル系樹脂を含む)、フルオレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ロジン変性樹脂、テルペン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、エチレン酢酸ビニル系樹脂、シリコーン・アクリル系樹脂等からなる樹脂粒子のうち、アニオン性を有するものが挙げられる。なかでも、ウレタン系樹脂、シリコーン・アクリル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂が好ましい。これらの樹脂粒子は、エマルジョン形態で取り扱われることが多いが、粉体の性状であってもよい。また、樹脂粒子は1種単独又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0088】
ウレタン系樹脂とは、ウレタン結合を有する樹脂の総称である。ウレタン系樹脂には、ウレタン結合以外に、主鎖にエーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、主鎖にエステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、主鎖にカーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂等を使用してもよい。また、ウレタン系樹脂として、市販品を用いてもよく、例えば、スーパーフレックス 460、460s、840、E-4000(商品名、第一工業製薬株式会社製)、レザミン D-1060、D-2020、D-4080、D-4200、D-6300、D-6455(商品名、大日精化工業株式会社製)、タケラック WS-6021、W-512-A-6(商品名、三井化学ポリウレタン株式会社製)、サンキュアー2710(商品名、LUBRIZOL社製)、パーマリンUA-150(商品名、三洋化成工業社製)、ETERNACOLL UWシリーズ、例えばUW-1527等(宇部興産株式会社製)などの市販品を用いてもよい。
【0089】
アクリル系樹脂は、少なくとも(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルなどのアクリル系単量体を1成分として重合して得られる重合体の総称であって、例えば、アクリル系単量体から得られる樹脂や、アクリル系単量体とこれ以外の単量体との共重合体などが挙げられる。例えばアクリル系単量体とビニル系単量体との共重合体であるアクリル-ビニル系樹脂などが挙げられる。また例えば、ビニル系単量体としては、スチレンなどが挙げられる。
【0090】
アクリル系単量体としてはアクリルアミド、アクリロニトリル等も使用可能である。アクリル系樹脂を原料とする樹脂エマルジョンには、市販品を用いてもよく、例えばFK-854(商品名、中央理科工業社製)、モビニール952B、718A、6760(商品名、日本合成化学工業社製)、NipolLX852、LX874(商品名、日本ゼオン社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0091】
なお、本明細書において、アクリル系樹脂は、スチレン・アクリル系樹脂であってもよい。また、本明細書において、(メタ)アクリルとの表記は、アクリル及びメタクリルの少なくとも一方を意味する。
【0092】
スチレン・アクリル系樹脂は、スチレン単量体と(メタ)アクリル系単量体とから得られる共重合体であり、スチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸共重合体、スチレン-メタクリル酸-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸共重合体、スチレン-α-メチルスチレン-アクリル酸-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。スチレン・アクリル系樹脂には、市販品を用いても良く、例えば、ジョンクリル62J、7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(商品名、BASF社製)、モビニール966A、975N(商品名、日本合成化学工業社製)、ビニブラン2586(日信化学工業社製)等を用いてもよい。
【0093】
シリコーン・アクリル共重合体樹脂は市販品を用いることができる。例えば、日信化学工業のシャリーヌシリーズのFE-230N、FE-502、E-370、RU-911、R-170、R170S、LC-190、R-170BX、東亞合成株式会社のサイマックUS-380 サイマックUS-450、サイマックUS-480、東レ・ダウコーニング株式会社のIE-7170、SE1980CLEAR、BY22-826EX、プロピレンオキシLON-MF-40、SABICイノベーティブプラスチックスジャパン合同会社のレキサンEXL、出光興産株式会社のタフロンネオ、サイデン化学株式会社のバンスタ-S-806、日本合成株式会社のモビニール、東レ株式会社のコータックス、大東化成工業株式会社のダイトゾール5000SJ、日本エヌエスシー株式会社の「ヨドゾールGH41、信越化学工業株式会社のアクリレーツ/アクリル酸エチルヘキシル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー(商品名:KP578)、DIC株式会社のボンコート、セラネート、JSRのアクリルシリコーン系エマルジョン「SIFCLEAR S101」、「SIFCLEAR S102」等が挙げられる。
【0094】
ポリオレフィン系樹脂は、エチレン、プロピレン、ブチレン等のオレフィンを構造骨格に有するものであり、公知のものを適宜選択して用いることができる。オレフィン樹脂としては、市販品を用いることができ、例えばアローベースCB-1200、CD-1200(商品名、ユニチカ株式会社製)等を用いてもよい。
【0095】
また、樹脂粒子は、エマルジョンの形態で供給されてもよく、そのような樹脂エマルジョンの市販品の例としては、マイクロジェルE-1002、E-5002(日本ペイント社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート4001(DIC社製商品名、アクリル系樹脂エマルジョン)、ボンコート5454(DIC社製商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAM-710、AM-920、AM-2300、AP-4735、AT-860、PSASE-4210E(アクリル系樹脂エマルジョン)、ポリゾールAP-7020(スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、ポリゾールSH-502(酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールAD-13、AD-2、AD-10、AD-96、AD-17、AD-70(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ポリゾールPSASE-6010(エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)(昭和電工社製商品名)、ポリゾールSAE1014(商品名、スチレン-アクリル系樹脂エマルジョン、日本ゼオン社製)、サイビノールSK-200(商品名、アクリル系樹脂エマルジョン、サイデン化学社製)、AE-120A(JSR社製商品名、アクリル樹脂エマルジョン)、AE373D(イーテック社製商品名、カルボキシ変性スチレン・アクリル樹脂エマルジョン)、セイカダイン1900W(大日精化工業社製商品名、エチレン・酢酸ビニル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2682(アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン2886(酢酸ビニル・アクリル樹脂エマルジョン)、ビニブラン5202(酢酸アクリル樹脂エマルジョン)(日信化学工業社製商品名)、エリーテルKA-5071S、KT-8803、KT-9204、KT-8701、KT-8904、KT-0507(ユニチカ社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、ハイテックSN-2002(東邦化学社製商品名、ポリエステル樹脂エマルジョン)、タケラックW-6020、W-635、W-6061、W-605、W-635、W-6021、WS-5100(三井化学ポリウレタン社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、スーパーフレックス870、800、150、420、460、470、610、700(第一工業製薬社製商品名、ウレタン系樹脂エマルジョン)、パーマリンUA-150(三洋化成工業株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、サンキュアー2710(日本ルーブリゾール社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、NeoRez R-9660、R-9637、R-940(楠本化成株式会社製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、アデカボンタイター HUX-380,290K(株式会社ADEKA製、ウレタン系樹脂エマルジョン)、モビニール966A、モビニール7320(日本合成化学株式会社製)、ジョンクリル7100、390、711、511、7001、632、741、450、840、74J、HRC-1645J、734、852、7600、775、537J、1535、PDX-7630A、352J、352D、PDX-7145、538J、7640、7641、631、790、780、7610(以上、BASF社製)、NKバインダーR-5HN(新中村化学工業株式会社製)、ハイドランWLS-210(非架橋性ポリウレタン:DIC株式会社製)、ジョンクリル7610(BASF社製)等の中から選択して用いてもよい。
【0096】
黒インク組成物がアニオン性樹脂粒子を含有する場合、その樹脂粒子の含有量は、不揮発成分の総量に対して20質量%以上であることが好ましい。黒インク組成物の樹脂粒子の含有量は、不揮発成分の総量に対して30質量%以上であることがより好ましく、40質量%以上であることがさらに好ましい。
【0097】
1.3.1.(4)製造及び物性
黒インク組成物は、布帛等の布帛にインクジェット法により付着される点で、その粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0098】
黒インク組成物は、布帛への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。また、表面張力は、20mN/m以上がこのましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0099】
黒インク組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0100】
1.3.2.付着の態様
インク付着工程は、インクジェット法により行われる。インク付着工程、コート液付着工程、及び処理液付着工程は、布帛の所定の領域に対していずれが先に行われてもよく、同時に行われてもよい。
【0101】
インク付着工程における黒インク組成物の付着量は、15g/m2以上120g/m2以下が好ましく、30g/m2以上80g/m2以下がより好ましく、30g/m2以上60g/m2以下がさらに好ましい。このようにすれば、処理液のにじみをさらに抑制できる。また、必要最小限の塗布とできるので、布帛の本来の吸水性や風合いを良好に維持することができる。さらに、良好な発色性を有する有色画像を得ることができる。
【0102】
1.4.コート液付着工程
コート液付着工程では、アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、布帛に付着させる。
【0103】
1.4.1.コート液組成物
コート液組成物は、アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有する。アニオン性樹脂粒子、水は、上述したと同様であるので説明を省略する。
【0104】
1.4.1.(1)その他の成分
コート液組成物は、アニオン性樹脂粒子、水の他に、水溶性樹脂、ワックス、保湿剤、その他の溶剤、添加剤、界面活性剤等を含んでもよい。保湿剤、その他の溶剤、添加剤については、上述したと同様であるので、説明を省略する。
【0105】
コート液組成物は樹脂を含有してもよい。樹脂としては、水溶性樹脂であることが好ましい。水溶性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキサイド、及びオキサゾリン基含有アクリル樹脂が挙げられる。ポリビニルピロリドンとしては、ホモポリマーに限定されず、ビニルピロリドンと他のモノマーとも共重合体を用いてもよい。ポリビニルピロリドンの市販品としては、例えば、ポリビニルピロリドンK-30、K-30W(以上製品名、株式会社日本触媒製)、ピッツコール(登録商標)K-17L、K-30、K-30L、K-30AL、K-60L、K-30、K-50、K-90クリージャス(登録商標)K-30、アイフタクト(登録商標)K-30PH(以上製品名、第一工業製薬株式会社製)、PVP K-30、PVP K-25、PVP K-17(以上製品名、アシュランド社)が挙げられる。また、オキサゾリン基含有アクリル樹脂としては、エポクロス(登録商標)K-2010、K-2020、K-2030、K-2035E、WS-300、WS-500、及びWS-700(以上、商品名、(株)日本触媒)が挙げられる。
【0106】
ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、炭化水素ワックス、及び脂肪酸と1価アルコール又は多価アルコールとの縮合物であるエステルワックスが挙げられる。炭化水素ワックスとしては、特に限定されないが、例えば、パラフィンワックス、並びに、ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックス等のポリオレフィンワックスが挙げられる。これらのワックスは1種類を単独で用いてもよいし、2種以上を組合せて用いてもよい。これらのワックスの中でも、耐擦性を向上させる観点から、炭化水素ワックスが好ましく、ポリオレフィンワックスがより好ましく、ポリエチレンワックスがさらに好ましい。ワックスは、例えば、ワックス粒子が水中に分散したエマルジョンの状態であってもよい。
【0107】
コート液組成物においては、色材の含有量は、コート液組成物の総量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。すなわち、コート液組成物は、着色を意図して用いられないことが好ましい。
【0108】
1.4.1.(2)製造及び物性
コート液組成物は、布帛等の布帛にインクジェット法により付着される点で、その粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0109】
コート液組成物は、布帛への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。また、表面張力は、20mN/m以上がこのましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0110】
コート液組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0111】
1.4.2.付着の態様
コート液付着工程は、インクジェット法により行われる。コート液付着工程は、処理液付着工程よりも先に行われる。コート液付着工程によりコート液組成物を付着させてから、コート液組成物が付着した領域上に、処理液付着工程により処理液組成物が付着するまでの時間差は、60秒以下である。コート液付着工程は、処理液付着工程と同一の主走査で行われてもよいし、コート液付着工程は、処理液付着工程と異なる主走査で行われてもよい。
【0112】
コート液付着工程におけるコート液組成物の付着量は、10g/m2以上80g/m2以下が好ましく、15g/m2以上60g/m2以下がより好ましく、20g/m2以上40g/m2以下がさらに好ましい。このようにすれば、処理液のにじみをさらに抑制できる。また、必要最小限の塗布とできるので、布帛の本来の吸水性や風合いを良好に維持することができる。さらに、良好な発色性を有する有色画像を得ることができる。
【0113】
1.5.処理液付着工程
処理液付着工程は、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる。
【0114】
1.5.1.処理液組成物
処理液組成物は、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、特定物質の含有量が、処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上である。
【0115】
1.5.1.(1)特定物質
特定物質は、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択される。特定物質は、発色剤として機能できる。
【0116】
(オルガノポリシロキサンを含有する粒子)
オルガノポリシロキサンを含有する粒子は、オルガノポリシロキサンを含有すれば特に限定されず、例えば、オルガノポリシロキサンの粒子そのものであってもよいし、オルガノポリシロキサンが乳化剤等により分散された状態の粒子でもよい。かかる粒子におけるオルガノポリシロキサンの性状は、固体であっても、液体であってもよい。例えば、オイル状のオルガノポリシロキサンが、強制的に乳化剤により水中に粒子状に分散された場合には、分散された粒子がオルガノポリシロキサンを含有する粒子に相当する。
【0117】
オルガノポリシロキサンは、シロキサン結合「-Si(R1R2)-O-」を骨格とし、これに有機の基R1、R2として、メチル基、フェニル基、ビニル基、アミノ基等が結合している有機ケイ素化合物の総称である。オルガノポリシロキサンは、化学組成及び分子量により、油状(オイル状)、ゴム状、樹脂状の性状を呈し、それぞれ,シリコーンオイル(シリコーン油)、シリコーンゴム、シリコーン樹脂(ケイ素樹脂)と称されることがある。
【0118】
本実施形態の処理液組成物に用いるオルガノポリシロキサンは、オイル状化合物であることがより好ましい。オルガノポリシロキサンがオイル状化合物であると、強制乳化処理により水性マトリックスに粒子状に安定に分散させやすい。
【0119】
オルガノポリシロキサンの分子構造としては、特に限定されず、直鎖状、分岐状、環状、格子状、籠状などを例示できる。オルガノポリシロキサンの分子構造が非環状構造である場合、この分子の末端のSi原子には、通常、置換基を有していても良い炭化水素基、アルコキシ基、水酸基、水素原子、及びハロゲンから選択される一種または二種以上の基が結合している。
【0120】
オルガノポリシロキサンは、特に限定されるものではないが、例えば、ジメチルシリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、環状シリコーン、メチルフェニルシリコーンなどが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上混合して使用することができる。
【0121】
また、オルガノポリシロキサンは、シリコーンオイルとして市販されているものを使用してもよい。その例としては、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル、ポリエーテル変性シリコーンオイル、アラルキル変性シリコーンオイル、フロロアルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸エステル変性シリコーンオイル、高級脂肪酸アミド変性シリコーンオイル、ポリエーテル・長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、長鎖アルキル・アラルキル変性シリコーンオイル、フェニル変性シリコーンオイル、ポリエーテル・メトキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0122】
また、上記例示したオルガノポリシロキサンのうち、非イオン性シリコーン(ノニオン性シリコーン)であることがより好ましい。また、上記例示したオルガノポリシロキサンのうち、変性していないシリコーンであることがより好ましい。このようなオルガノポリシロキサンは、化学的により安定であり、形成される画像の黄変等をより生じにくい。
【0123】
さらに、オルガノポリシロキサンは、ジメチルシリコーン、メチルフェニルシリコーン、メチルハイドロジェンシリコーンから選択される1種以上であることがより好ましい。
【0124】
シリコーンオイルの市販品としては、ジメチルシリコーン(信越化学工業(株)製:KF-96シリーズ)、メチルハイドロジェン型ポリシロキサン(信越化学工業(株)製:KF-99シリーズ,KF-9901等)、メチルフェニルシリコーン(信越化学工業(株)製:KF-50シリーズ等)、アミノ変性シリコーン(信越シリコーン社製、KF-868等)、シリコーン分岐型シリコーン処理剤(信越化学工業(株)製:KF-9908,KF-9909等)等を挙げることができる。
【0125】
シリコーンは、例えば25℃における粘度が、特に限定されないが、好ましくは1000mPa・s以下であり、また、好ましくは50mPa・s以上であり、より好ましくは500mPa・s以上900mPa・s以下、さらに好ましくは600mPa・s以上700mPa・s以下である。また、シリコーンが乳化分散されている場合の基油粘度は、特に限定されないが、上限は、好ましくは1000000mm2/s以下、より好ましくは100000mm2/s以下、下限は、好ましくは10mm2/s以上、より好ましくは100mm2/s以上である。なお、基油粘度とは、基油の粘性を表し、基油の内部抵抗の大きさを測定した数値である。基油粘度の数値が大きいほど粘度が高く、小さいほど粘度が低い基油となる。
【0126】
オルガノポリシロキサンは、各種界面活性剤を乳化剤としてエマルジョン化して粒子状にして配合されてもよい。本明細書では、これを強制乳化ということがある。その際の乳化剤としては、例えば、非イオン(ノニオン)性界面活性剤、陰イオン(アニオン)性界面活性剤、陽イオン(カチオン)性界面活性剤、両性界面活性剤、リン脂質等を使用することができる。
【0127】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、及びソルビトールの脂肪酸エステル、並びにこれらのアルキレングリコール付加物、ポリアルキレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリソルベート20、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等を例示することができる。
【0128】
また、非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンひまし油、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンフィトステロール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン、ポリオキシエチレンラノリンアルコール、ポリオキシエチレンミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合体、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸(塩)等の非イオン界面活性剤を使用するのも好適である。
【0129】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等が挙げられる。カチオン性界面活性剤としては、塩化アルキルトリメチルアンモニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウム等が挙げられる。両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルアミドジメチルアミノ酢酸ベタイン等が挙げられる。さらに天然由来の界面活性剤を用いてもよく、レシチン、ラノリン、コレステロール、サポニン等が挙げられる。
【0130】
オルガノポリシロキサンを乳化する際の乳化剤の配合量は、乳化組成物全量の、好ましくは20質量%未満、より好ましくは15質量%以下、特に好ましくは10質量%以下である。
【0131】
また、エマルジョン化した粒子状のオルガノポリシロキサンの粒子の平均粒子径は2μm以下、好ましくは1μm以下、さらに好ましくは0.05~0.5μmの範囲であることが望ましい。
【0132】
(脂肪酸エステル)
脂肪酸エステルの例としては、ポリオキシエチレンモノカプレート、ポリオキシエチレンモノカプリレート、ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンモノパルミテート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノオレエート、ポリオキシエチレンモノイソステアレート、ポリオキシエチレンモノベヘネート、ポリオキシエチレンジカプレート、ポリオキシエチレンジカプリレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジパルミテート、ポリオキシエチレンジステアレート、ポリオキシエチレンジオレエート、ポリオキシエチレンジイソステアレート、ポリオキシエチレジベヘネート等を挙げることができる。
【0133】
また、特定物質は、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子から選択される少なくとも1種であることがより好ましい。これにより処理液組成物によって布帛の繊維に撥水効果を付与できるので、記録物の画像の摩擦堅牢性をさらに良好にできる。
【0134】
また、特定物質としてオルガノポリシロキサンを含有する粒子を選択する場合、オルガノポリシロキサンは非イオン性シリコーンであることがより好ましい。これにより記録物の黄変をより少なくできる。
【0135】
また、特定物質としてオルガノポリシロキサンを含有する粒子を選択する場合、オルガノポリシロキサンはアミノ変性シリコーンであることも好ましい。これにより処理液組成物のにじみをさらに抑制できる。
【0136】
処理液組成物における特定物質の含有量は、処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であるが、65質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
【0137】
1.5.1.(2)水
拒理液組成物は、水を含む。水については、上述の反応液組成物と含有量ともに同様であるので、説明を省略する。
【0138】
1.5.1.(3)その他の成分
処理液組成物は、特定物質、水の他に、アニオン性樹脂粒子、水溶性樹脂、保湿剤、溶剤、界面活性剤、添加剤等を含んでもよい。アニオン性樹脂粒子、水溶性樹脂、保湿剤、溶剤、界面活性剤、添加剤については、すでに説明したと同様であるので、説明を省略する。
【0139】
処理液組成物が、界面活性剤を含有する場合、当該界面活性剤は、界面活性剤は、いずれもHLB値が8以上であることがより好ましい。界面活性剤は、上述したものを用いることができるが、その中から、HLB値が8以上であるものを用いることが好ましい。このようにすれば、処理液組成物の保存安定性をさらに良好にできる。HLB値が低い界面活性剤は疎水性の粒子に吸着しやすく、他の界面活性剤の吸着を阻害することが一因となって、粒子の分散安定性を損ねる場合があるが、HLB値が8以上である界面活性剤を用いることで、処理液組成物の保存安定性をさらに良好にできる。
【0140】
なお処理液組成物においては、色材の含有量は、処理液組成物の総量に対して、0.1質量%以下であることが好ましい。すなわち、処理液組成物は、着色を意図して用いられないことが好ましい。
【0141】
1.5.1.(4)製造及び物性
処理液組成物は、布帛等の布帛にインクジェット法により付着されるので、その粘度は、20℃において、1.5mPa・s以上15mPa・s以下とすることが好ましく、1.5mPa・s以上7mPa・s以下とすることがより好ましく、1.5mPa・s以上5.5mPa・s以下とすることがより好ましい。
【0142】
処理液組成物は、布帛への濡れ拡がり性を適切なものとする観点から、25℃における表面張力は、40mN/m以下、好ましくは38mN/m以下、より好ましくは35mN/m以下、さらに好ましくは30mN/m以下であることが好ましい。また、表面張力は、20mN/m以上がこのましく、25mN/m以上がより好ましい。
【0143】
なお、表面張力の測定は、自動表面張力計CBVP-Z(協和界面科学社製)を用いて、25℃の環境下で白金プレートを組成物で濡らしたときの表面張力を確認することにより測定することができる。
【0144】
処理液組成物は、前述した成分を任意の順序で混合し、必要に応じて濾過等をして不純物を除去することにより得られる。各成分の混合方法としては、メカニカルスターラー、マグネチックスターラー等の撹拌装置を備えた容器に順次材料を添加して撹拌混合する方法が好適に用いられる。濾過方法としては、遠心濾過、フィルター濾過等を必要に応じて行なうことができる。
【0145】
1.5.2.付着の態様
処理液付着工程は、インクジェット法により行われる。処理液付着工程がインクジェット法により行われる場合には、処理液付着工程は、例えば、コート液付着工程と同一の走査で行われてもよいし、処理液付着工程の主走査とは異なる主走査でコート液付着工程が行われてもよい。また、処理液付着工程が、コート液付着工程と同一の走査で行われる場合、処理液組成物及びコート液組成物は、どちらが先に布帛に着弾してもよい。
【0146】
処理液付着工程における処理液組成物の付着量は、5g/m2以上100g/m2以下が好ましく、10g/m2以上70g/m2以下がより好ましく、15g/m2以上40g/m2以下がさらに好ましい。このようにすれば、処理液のにじみをさらに抑制できる。また、必要最小限の塗布とできるので、布帛の本来の吸水性や風合いを良好に維持することができる。さらに、良好な発色性を有する画像を得ることができる。
【0147】
1.6.その他の工程
(乾燥工程)
本実施形態に係る記録方法は、上述の、各工程の間や、前後に、乾燥工程を備えていてもよい。乾燥工程としては、乾燥機構を用いて乾燥させる手段により行うことができる。乾燥機構を用いて乾燥させる手段としては、布帛に対して常温の送風や温風の送風を行う手段(送風式)、及び、布帛に熱を発生する放射線(赤外線等)を照射する手段(放射式)、布帛に接して布帛に熱を伝える部材(伝導式)、並びに、これらの手段の2種以上を組み合わせが挙げられる。乾燥工程を有する場合、布帛に加熱を行う乾燥機構により行うことが好ましい。乾燥機構として、布帛に加熱を行う乾燥機構を用いる場合を、特に、加熱工程という。
【0148】
各組成物の付着時の布帛の表面温度は45℃以下が好ましく、10℃以上45℃以下がより好ましい。また、15℃以上40℃以下が好ましく、20℃以上30℃以下がより好ましい。該温度は付着工程における布帛の記録面の液体の付着を受ける部分の表面温度であり、記録領域における付着工程の最高の温度である。表面温度が上記範囲の場合、画質や耐擦性や目詰まり低減の点でより好ましい。
【0149】
布帛を加熱する方法としては、特に限定されないが、例えば、ヒートプレス法、常圧スチーム法、高圧スチーム法、サーモフィックス法などが挙げられる。加熱の熱源は、特に限定されないが、例えば、赤外線ランプなどを用いることができる。加熱温度は、インク中の樹脂粒子が融着され、かつ水分等の媒体が揮発する温度であることが好ましい。例えば、100℃以上200℃以下であることが好ましく、170℃以下であることがより好ましく、160℃以下であることがさらに好ましい。ここで、加熱工程における加熱温度とは、布帛である布帛に形成された画像等の表面温度を指す。加熱を施す時間は、特に限定されないが、例えば、30秒以上20分以下である。
【0150】
また、乾燥工程を有しないことも好ましい。これにより発色が良好な画像がより短時間で得られる場合がある。
【0151】
1.7.各工程のタイミング及び順序
本実施形態の記録方法では、コート液付着工程は、処理液付着工程よりも先に行われる。そして、コート液付着工程によりコート液組成物を付着させてから、コート液組成物が付着した領域上に、処理液付着工程により処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である。
【0152】
処理液組成物は、コート液組成物と混合すると、コート液組成物と反応液組成物の凝集反応を阻害(強制乳化されており、乳化剤を多量に含むため)し、画像の乾燥摩擦堅牢性が向上しにくくなる場合がある。そのため、本実施形態の記録方法では、コート液組成物を処理液組成物より先に塗布し、凝集反応を起こしてコート液組成物が増粘してから処理液組成物を塗布する。その結果、コート液組成物は下地上に留まり、下地を十分に被覆できることで乾燥摩擦堅牢性が向上する。一方で、時間差が長すぎると、コート液組成物が増粘しきってしまい、処理液組成物を付着しても増粘したコート液組成物が処理液組成物中に拡散せず、処理液組成物の増粘が引き起こされない。そうなると、処理液組成物が滲みやすい。しかし本実施形態の記録方法では、コート液組成物付着~処理液組成物付着の時間差を60秒以下であるので、処理液組成物の滲みを抑制することができる。
【0153】
コート液付着工程によりコート液組成物を付着させてから、コート液組成物が付着した領域上に、処理液付着工程により処理液組成物が付着するまでの時間差は、1秒以下であることがより好ましい。
【0154】
コート液組成物付着~処理液組成物付着の時間差が長すぎると、コート液組成物が増粘しきってしまい、処理液組成物を付着しても増粘したコート液組成物が処理液組成物中に拡散しにくくなり、処理液組成物の増粘が引き起こされにくい。そうなると、処理液組成物が滲みやすい。この記録方法によれば、コート液-処理液付着の時間差を1秒以下とすることにより、処理液の滲みをさらに抑制することができる。
【0155】
本実施形態の記録方法は、処理液付着工程により処理液組成物を付着させてから、処理液組成物が付着した領域上にコート液組成物を付着させる、第2コート液付着工程をさらに有してもよい。そして、コート液付着工程と、処理液付着工程と、第2コート液付着工程とが、同一の走査内で行われてもよい。
【0156】
この記録方法によれば、反応液の特定物質に対して凝集しにくい処理液組成物の滲みだしを、反応液組成物の特定物質に対して凝集しやすいコート液組成物で被覆することができる。すなわち、コート液組成物の塗膜で処理液組成物を挟むことにより、処理液組成物のにじみをさらに抑制できる。
【0157】
一方、布帛の所定の領域に対し、処理液付着工程の開始から終了までの時間を25秒以上とすることがより好ましい。またかかる時間は、30秒以上であることがより好ましく、40秒以上であることがさらに好ましい。
【0158】
このようにすると、処理液付着工程の開始から工程終了までの時間を長くとれるので、水分蒸発による増粘や、反応液組成物とインク組成物やコート液組成物とが混合、拡散する時間を十分に確保できる。これにより、インク組成物やコート液組成物の凝集がより進むので、処理液組成物の滲みをさらに抑制できる。
【0159】
ここで、「所定領域」としては、布帛の搬送方向と垂直方向にヘッドを走査(主走査)する記録方法で、一回の主走査でノズル列が走査する1inch四方の領域のことを指す。1回の主走査では必要な処理液組成物の塗布量に達しないことがあり、単位面積あたり、約4回の主走査によって付着が完了するような塗布方法が考えられる。このような場合の上記の処理液付着工程の開始から終了までの時間は、付着の開始から最後の主走査が完了するまでの時間であり、これが25秒以上であることが好ましい。
【0160】
インク付着工程は、コート液付着工程よりも先に行われることが好ましい。このようにすることで、さらに乾燥摩擦堅牢性の良好な捺染物が得られる。
【0161】
2.記録装置の一例
本実施形態に係る記録方法に適用可能な、インクジェットヘッドを備えるインクジェット捺染装置(記録装置)の例について
図1を参照しながら説明する。
【0162】
なお、
図1においては、各層や各部材を認識可能な程度の大きさにするため、各層や各部材の尺度を実際とは異ならせている。また、
図1では、説明の便宜上、互いに直交する三軸として、X軸、Y軸及びZ軸を図示しており、軸方向を図示した矢印の先端側を「+側」、基端側を「-側」としている。X軸に平行な方向を「X軸方向」、Y軸に平行な方向を「Y軸方向」、Z軸に平行な方向を「Z軸方向」という。
【0163】
2.1.全体概略構成
図1は、記録装置100の概略全体構成を示す模式図である。まず、記録装置100の全体構成について
図1を参照して説明する。
【0164】
図1に示すように、記録装置100は、媒体搬送部20、媒体密着部60、ベルト支持部91、印刷部40、加熱ユニット27、洗浄ユニット50などを備えている。記録装置100では、媒体密着部60及びベルト支持部91の少なくとも一方が無端ベルト23を加熱する加熱部に相当する。そして、これらの各部を制御する制御部1を有している。記録装置100の各部は、フレーム部90に取り付けられている。
【0165】
なお無端ベルトを加熱する加熱部を設ける場合には、印刷部40よりも搬送方向の上流側にあればよく、媒体密着部60及びベルト支持部91とは異なる場所に設けられていてもよい。例えば、加熱部は、媒体密着部60よりも搬送方向の上流側であってもよい。このような構成とすることで加熱部は、洗浄の際に濡れた無端ベルト23を乾燥させることもできる。また、加熱部は、非接触で無端ベルトを加熱するものであってもよい。
【0166】
媒体搬送部20は、布帛95を搬送方向に搬送する。媒体搬送部20は、媒体供給部10、搬送ローラー21,22、無端ベルト23、ベルト回転ローラー24、駆動ローラーとしてのベルト駆動ローラー25、搬送ローラー26,28、及び媒体回収部30を備えている。
【0167】
2.2.媒体搬送部
まず、媒体供給部10から媒体回収部30に至る布帛95の搬送経路について説明する。なお、
図1では、重力の作用する方向に沿う方向をZ軸方向とし、印刷部40において布帛95が搬送される方向を+X軸方向とし、Z軸方向及びX軸方向の双方と交差する布帛95の幅方向をY軸方向とする。また、布帛95の搬送方向又は無端ベルト23の移動方向に沿う位置関係を「上流側」「下流側」ともいう。
【0168】
媒体供給部10は、画像を形成させる布帛95を印刷部40側に供給するものである。媒体供給部10は、供給軸部11及び軸受部12を有している。供給軸部11は、円筒状又は円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。供給軸部11には、帯状の布帛95がロール状に巻かれている。供給軸部11は、軸受部12に対して着脱可能に取り付けられている。これにより、予め供給軸部11に巻かれた状態の布帛95は、供給軸部11と共に軸受部12に取り付けできるようになっている。
【0169】
軸受部12は、供給軸部11の軸方向の両端を回転可能に支持している。媒体供給部10は、供給軸部11を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転駆動部は、布帛95が送り出される方向に供給軸部11を回転させる。回転駆動部の動作は、制御部1によって制御される。搬送ローラー21,22は、布帛95を媒体供給部10から無端ベルト23まで中継する。
【0170】
無端ベルト23は、無端ベルト23を回転させる少なくとも2つのローラー間に保持され、無端ベルト23が回転移動することで布帛95を支持しながら搬送方向(+X軸方向)に搬送する。詳しくは、無端ベルト23は、帯状のベルトの両端部を継ぎ目なく接続し形成されるシームレスベルトであり、ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25の2つのローラー間に掛けられている。
【0171】
無端ベルト23は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間の部分が水平になるように、所定の張力が作用した状態で保持されている。無端ベルト23の表面(支持面)23aには、布帛95を粘着させる粘着剤29が塗布されている。すなわち無端ベルト23は、粘着剤29からなる粘着層を有している。布帛95は、粘着剤29を介して無端ベルト23に貼り付けられる。無端ベルト23は、搬送ローラー22から供給され、後述する媒体密着部60で粘着剤29に密着された布帛95を支持(保持)する。
【0172】
粘着剤29は、加熱されることによって粘着性が増大することが好ましい。加熱されることによって粘着性が増大する粘着剤29を用いることで、布帛95を粘着層と良好に密着させることができる。このような粘着剤29としては、例えば熱可塑性エラストマーSIS(スチレン-イソプレン-スチレン)を主成分とするホットメルト系粘着剤が挙げられる。
【0173】
ベルト回転ローラー24及びベルト駆動ローラー25は、無端ベルト23の内周面23bを支持する。ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間には、無端ベルト23を支持する当接部69、ベルト支持部91及びプラテン46が設けられている。当接部69は、無端ベルト23を介して後述する押圧部61と対向する領域に、プラテン46は、無端ベルト23を介して印刷部40と対向する領域に、ベルト支持部91は当接部69とプラテン46との間に設けられている。当接部69、ベルト支持部91及びプラテン46が無端ベルト23を支持することにより、無端ベルト23を移動させることに伴って無端ベルト23が振動することなどを抑制することができる。
【0174】
ベルト駆動ローラー25は、無端ベルト23を回転させることで、布帛95を搬送方向に搬送する駆動部であり、ベルト駆動ローラー25を回転駆動させるモーター(図示せず)を有している。ベルト駆動ローラー25は、布帛95の搬送方向において印刷部40よりも下流側に設けられ、ベルト回転ローラー24は、印刷部40よりも上流側に設けられている。ベルト駆動ローラー25が回転駆動されるとベルト駆動ローラー25の回転に伴って無端ベルト23が回転し、無端ベルト23の回転によりベルト回転ローラー24が回転する。無端ベルト23の回転により、無端ベルト23に支持された布帛95が搬送方向(+X軸方向)に搬送され、後述する印刷部40で布帛95に画像が形成される。
【0175】
図1に示す例では、無端ベルト23の表面23aが印刷部40と対向する側(+Z軸側)において布帛95が支持され、布帛95が無端ベルト23と共にベルト回転ローラー24側からベルト駆動ローラー25側に搬送される。また、無端ベルト23の表面23aが洗浄ユニット50と対向する側(-Z軸側)においては、無端ベルト23のみがベルト駆動ローラー25側からベルト回転ローラー24側に移動する。
【0176】
搬送ローラー26は、画像の形成された布帛95を無端ベルト23の粘着剤29から剥離させる。搬送ローラー26,28は、布帛95を無端ベルト23から媒体回収部30まで中継する。
【0177】
媒体回収部30は、媒体搬送部20によって搬送された布帛95を回収する。媒体回収部30は、巻取り軸部31及び軸受部32を有している。巻取り軸部31は、円筒状又は円柱状に形成されており、円周方向に回転可能に設けられている。巻取り軸部31には、帯状の布帛95がロール状に巻き取られる。巻取り軸部31は、軸受部32に対して着脱可能に取り付けられている。これにより、巻取り軸部31に巻き取られた状態の布帛95は、巻取り軸部31と共に取り外せるようになっている。
【0178】
軸受部32は、巻取り軸部31の軸線方向の両端を回転可能に支持している。媒体回収部30は、巻取り軸部31を回転駆動させる回転駆動部(図示せず)を有している。回転駆動部は、布帛95が巻き取られる方向に巻取り軸部31を回転させる。回転駆動部の動作は、制御部1によって制御される。
【0179】
次に、媒体搬送部20に沿って設けられている、加熱部、印刷部40、加熱ユニット27、洗浄ユニット50について説明する。
【0180】
2.3.加熱部
当接部69及びベルト支持部91の少なくとも一方には、無端ベルト23を加熱するヒーターが設けられることが好ましい。ヒーターは加熱部を構成する。当接部69にヒーターが設けられる場合には、押圧部61により無端ベルト23に対して押圧力及び熱を付与できるので、無端ベルト23への布帛95の密着性を向上できる点で好ましい。したがって当接部69及びベルト支持部91の一方にヒーターが設けられる場合には、当接部69に設けられるほうがより好ましい。
【0181】
加熱部は、粘着層を加熱することで柔らかくして粘着性を発揮させ、布帛95と粘着層との密着性を向上させる。これにより無端ベルト23上で布帛95が動くことが抑制され、良好な搬送精度を得ることができる。
【0182】
当接部69及びベルト支持部91の少なくとも一方にヒーターが設けられ、無端ベルト23が加熱される際、無端ベルト23の表面23aの温度は80度以下であることが好ましく、70℃以下であることがより好ましく、60℃以下であることがさらに好ましい。無端ベルト23の表面23aの温度が上記範囲内であると、インク組成物に含有される樹脂粒子の反応性を抑制し、ベルトの洗浄をより容易に行うことができる場合がある。なお、無端ベルト23の表面23aの温度の下限は、粘着層の粘着性を発揮するものであればよく、30℃以上が好ましく、35℃以上がより好ましく、40℃以上がさらに好ましい。なお、無端ベルト23の表面23aの温度は、例えば、輻射型温度計、接触型温度計等により測定することができ、輻射型温度計により測定することがより好ましい。
【0183】
当接部69及びベルト支持部91の少なくとも一方にヒーターが設けられる場合、無端ベルト23の表面温度を検出する温度検出部(図示せず)を備えてもよい。温度検出部としては、例えば熱電対などを用いることができる。これにより、制御部1は、温度検出部で検出された温度に基づいてヒーターを制御することにより、無端ベルト23を所定の温度にすることができる。なお、温度検出部は、赤外線を利用した非接触式の温度計を用いてもよい。
【0184】
2.4.印刷部
印刷部40は、無端ベルト23の配置位置に対して上方(+Z軸側)に配置され、無端ベルト23の表面23a上に載置された布帛95に印刷を行う。印刷部40は、インクジェットヘッド42、インクジェットヘッド42が搭載されるキャリッジ43、キャリッジ43を搬送方向と交差する布帛95の幅方向(Y軸方向)に移動させるキャリッジ移動部45などを有している。
【0185】
インクジェットヘッド42は、液体カートリッジ(図示せず)から供給される液体組成物を制御部1による制御のもとで複数のノズルから布帛95に噴射して付着させる手段である。インクジェットヘッド42は、液体組成物を付着させる布帛95に、液体組成物を吐出して布帛95へ付着させる複数のノズルを備える。これらの複数のノズルは列状に配列されてノズル列が形成され、ノズル列は液体組成物に対応して個別に配置される。液体組成物は、各液体カートリッジからインクジェットヘッド42に供給され、インクジェットヘッド42内のアクチュエーター(図示せず)によって、ノズルから液滴として吐出される。吐出された液体組成物の液滴は布帛95に着弾し、布帛95の捺染領域に画像、テキスト、模様、色彩等が形成される。
【0186】
ここでいう液体組成物は、上述した処理液組成物、コート液組成物、インク組成物、反応液組成物とすることができる。またこれらの液体組成物の種類、数については適宜に設定できる。
【0187】
インクジェットヘッド42では、駆動手段であるアクチュエーターとして圧電素子を用いているが、この方式に限定されない。例えば、アクチュエーターとしての振動板を静電吸着により変位させる電気機械変換素子や、加熱によって生じる気泡によって液体組成物などを液滴として吐出させる電気熱変換素子を用いてもよい。
【0188】
図2は、インクジェットヘッドのノズル列の配列の一例を示す模式図である。
図2の例では、インクジェットヘッドは、コート液組成物を吐出するノズル群を有するノズル列42a、処理液組成物を吐出するノズル群を有するノズル列42b、インク組成物を吐出するノズル群を有するノズル列42c、反応液組成物を吐出するノズル群を有するノズル列42dが設けられている。2列のノズル群が1チップを構成している。そしてX方向の上流側に位置するチップaと、下流側に位置するチップbとが、それぞれY方向に沿って8個配置されて、チップaの列及びチップbの列を形成している。この例では、これらの16個のチップが、Y方向に沿ってジグザグに(千鳥状に)配置されて、キャリッジに備えられている。
【0189】
X方向の上流側及び下流側のそれぞれのチップの列は、1回の主走査で布帛の同一領域に、各組成物を適宜のタイミングで付着させることができる。また、2つのチップの列は、副走査方向(X軸方向)にずらして配置され、副走査による布帛の移動距離に応じて、各組成物を付着させる領域を変更したり、同一領域に複数回各組成物を付着させたりできる。
【0190】
なお、吐出するヘッドノズル群は、記録方法において記録に用いるノズル群の意味である。主走査(Y軸方向)を行う際に、該ノズル群と対向する布帛の領域に仮に記録すべき画像があればノズルから液体組成物を吐出し得るノズルの群であり、搬送方向(+X軸方向)に連続するノズル群である。よってノズル群自体は存在するものの記録方法において記録に用いないノズル群は吐出するノズル群に含めない。
【0191】
キャリッジ移動部45は、無端ベルト23の上方(+Z軸側)に設けられている。キャリッジ移動部45は、Y軸方向に沿って延在する一対のガイドレール45a,45bを有している。インクジェットヘッド42は、キャリッジ43と共にY軸方向に沿って往復移動可能な状態でガイドレール45a,45bに支持されている。
【0192】
キャリッジ移動部45は、図示しない移動機構及び動力源を備えている。移動機構としては、例えば、ボールねじとボールナットとを組み合わせた機構や、リニアガイド機構などを採用することができる。さらに、キャリッジ移動部45は、キャリッジ43をガイドレール45a,45bに沿って移動させるための動力源として、モーター(図示せず)を有している。モーターとしては、ステッピングモーター、サーボモーター、リニアモーターなどの種々のモーターを採用することができる。制御部1の制御によりモーターが駆動されると、インクジェットヘッド42は、キャリッジ43と共にY軸方向に沿って移動する。
【0193】
2.5.加熱ユニット
加熱ユニット27を、搬送ローラー26と搬送ローラー28との間に設けてもよい。加熱ユニット27は、布帛95上に吐出されたインク組成物や処理液を加熱する。これにより、インク組成物に含有される樹脂粒子の反応を十分に進行させることができる傾向にある。樹脂粒子が十分に反応することにより、摩擦堅牢性の良好な画像を形成することができる場合がある。なお、加熱ユニット27は、布帛95を乾燥させる目的で用いられてもよい。加熱ユニット27には、例えば、IRヒーターが含まれ、IRヒーターを駆動させることにより布帛95上に吐出されたインク組成物や処理液を短時間で反応させることができる。これにより、画像などの形成された帯状の布帛95を巻取り軸部31に巻き取ることができる。
【0194】
2.6.洗浄ユニット
洗浄ユニット50は、X軸方向においてベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25の間に配置されている。洗浄ユニット50は、洗浄部51、押圧部52及び移動部53を有している。移動部53は、床面99に沿って洗浄ユニット50を一体的に移動させて所定の位置に固定させる。
【0195】
押圧部52は、例えば、エアーシリンダー56とボールブッシュ57とで構成された昇降装置であり、その上部に備えられている洗浄部51を無端ベルト23の表面23aに当接させるものである。洗浄部51は、ベルト回転ローラー24とベルト駆動ローラー25との間で所定の張力が作用した状態で掛けられ、ベルト駆動ローラー25からベルト回転ローラー24に向かって移動する無端ベルト23の表面(支持面)23aを下方(-Z軸方向)から洗浄する。
【0196】
洗浄部51は、洗浄槽54、洗浄ローラー58及びブレード55を有している。洗浄槽54は、無端ベルト23の表面23aに付着したインクや異物の洗浄に用いる洗浄液を貯留する槽であり、洗浄ローラー58及びブレード55は洗浄槽54の内側に設けられている。洗浄液としては、例えば、水や水溶性溶剤(アルコール水溶液など)を用いることができ、必要に応じて界面活性剤や消泡剤を添加させてもよい。
【0197】
洗浄ローラー58が回転すると、洗浄液が無端ベルト23の表面23aに供給されると共に、洗浄ローラー58と無端ベルト23とが摺動する。これにより、無端ベルト23に付着したインク組成物や布帛95の繊維などが洗浄ローラー58で取り除かれる。
【0198】
ブレード55は、例えば、シリコーンゴムなどの可撓性の材料で形成することができる。ブレード55は、無端ベルト23の搬送方向において洗浄ローラー58よりも下流側に設けられている。無端ベルト23とブレード55とが摺動することにより、無端ベルト23の表面23aに残っている洗浄液が除去される。
【0199】
このような記録装置100によれば、本実施形態の記録方法を容易に実行できる。
【0200】
3.実施例及び比較例
以下、本発明を実施例によって具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下、「部」「%」は、特に記載のない限り、質量基準である。なお評価は、特に断りが無い場合は、温度25℃、相対湿度40.0%の環境下で行った。
【0201】
3.1.各組成物の調製
以下のように反応液組成物、黒インク組成物、コート液組成物及び処理液組成物を調製した。
【0202】
3.1.1.反応液組成物の調製
表1の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に用いる反応液組成物「ink1-1~ink1-4」を得た。なお、表中の数値は有効成分量を表す。
【0203】
3.1.2.黒インク組成物の調製
表2の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に用いる黒インク組成物「ink2-1」を得た。なお、表中の数値は有効成分量を表す。またアニオン性自己分散顔料及びアニオン性樹脂分散顔料は、以下のように調製した顔料分散液を用いた。
【0204】
<自己分散顔料>
ファーネス法で調製したカーボンブラック原末500g(一次粒子径=18nm、BET比表面積=180m2/g、DBP吸収量=186mL/100g)を、イオン交換水3750gに加え、ディゾルバーで攪拌しながら、45℃まで昇温した。その後、直径0.8mmのジルコニアビーズを用いたサンドミルにより、粉砕しながらこれに、次亜塩素酸ナトリウム(有効塩素濃度=12%)の水溶液30000gを45℃で3.5時間かけて滴下した。引き続きサンドミルにより30分間粉砕し続け、自己分散型カーボンブラックが含まれている反応液を得た。この反応液を400メッシュの金網で濾過し、ジルコニアビーズ及び未反応カーボンブラックと、反応液とを分別した。分別して得た反応液に、水酸化カリウム5%水溶液を加えて、pH=7.5に調整した。液の電導度が1.5mS/cmになるまで限外濾過膜により、脱塩及び精製を行なった。電気透析装置を用いて液の電導度が1.0mS/cmになるまでさらに脱塩及び精製を行った。その液を、自己分散型カーボンブラックの濃度が17質量%になるまで濃縮した。この濃縮液を、遠心分離機にかけ粗大粒子を取り除き、0.6μmフィルターで濾過した。得られた濾液にイオン交換水を加え、自己分散型カーボンブラックの濃度が15質量%になるまで希釈し、分散させて、自己分散顔料分散液を得た。
【0205】
3.1.3.コート液組成物の調製
表3の組成になるように各成分を容器に入れて、マグネチックスターラーで2時間混合及び攪拌した後、孔径5μmのメンブランフィルターで濾過することで、実施例及び比較例に用いる第3インク(コート液組成物)「ink3-1~ink3-2」を得た。なお、表中の数値は有効成分量を表す。
【0206】
3.1.4.処理液組成物の調製
以下のようにして表4に示す第4インク(処理液組成物)「ink4-1~ink4-7」を得た。なお、表中の数値は有効成分量を表す。
【0207】
<ink4-2、ink4-6及びink4-7>
90gのジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン、KF-96H-1万cs)、171.5gのイオン交換水、6.4gのポリオキシエチレントリデシルエーテル(日本乳化剤、ニューコール1310)、6.4gのポリオキシエチレントリデシルエーテル(日本乳化剤、ニューコール1305)、表4に記載の他のノニオン性界面活性剤及び25.7gの1,2-ヘキサンジオールをビーカーに入れ、ホモミクサー(PRIMIX社製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて、回転速度2000rpm、50℃で30分間、ビーカーの内容物を攪拌し、30分間静置した。次いで、10μmのメンブレンフィルターで、ビーカーの内容物をろ過し、シリコーンオイルを含むオイル粒子が分散しているエマルション300gを得た。続いて、イオン交換水とグリセリンを添加して撹拌し、表4に記載のink4-2、ink4-6及びink4-7を作製した。
【0208】
ink4-4及びink4-5は、ジメチルシリコーンオイル(信越シリコーン、KF-96H-1万cs)の使用量を変更し、同様にしてエマルジョンを得て、イオン交換水、グリセリン及びポリビニルピロリドンを表4に記載の濃度になるように追加で添加して撹拌し、作製した。ink4-3は、ジメチルシリコーンオイルの代わりにポリオキシエチレンジラウレートを用いた以外はink4-2と同様にして作成した。
【0209】
<ink4-1>
90gのアミノ変性シリコーンオイル(信越化学工業株式会社製「KF-868」、官能基当量:8,800g/mol)、173.2gのイオン交換水、5.1gのポリオキシエチレントリデシルエーテル(日本乳化剤、ニューコール1310)、25.7gの1,2-ヘキサンジオール及び6gの乳酸をビーカーに入れ、ホモミクサー(PRIMIX社製、ホモミクサーMARKII2.5型)を用いて、回転速度2000rpm、50℃で30分間、ビーカーの内容物を攪拌し、30分間静置した。次いで、10μmのメンブレンフィルターで、ビーカーの内容物をろ過し、アミノ変性シリコーンオイルを含むオイル粒子が分散しているエマルション300gを得た。続いて、イオン交換水とグリセリンを添加して撹拌し、ink4-1を作製した。
【0210】
表1~表3に記載の「オルフィンE1010」は、日信化学工業社製のアセチレングリコール系界面活性剤である。また、表3に記載の「ワックス」は、ポリエチレンワックス(BYK、AQUACER515)を用いた。
【0211】
3.2.評価方法
3.2.1.記録試験
ML-8000(セイコーエプソン株式会社製)を改造した装置を用いて、綿100%白色ブロード布(#4000、日清紡株式会社製)の布帛に対して、実施例に記載の条件で印刷を行い、同一の走査領域に対して、主走査を複数回(2回、4回、8回、12回又は16回)行うことで、布帛に20cm×5cmのベタパターン画像を形成した。
【0212】
画像形成後、3分放置した後オーブンにて160℃で3分間加熱処理を開始し、乾燥させることで各実施例及び各比較例に係る捺染物を作製した。なお、「ベタパターン画像」とは、各インクの塗布量が実施例記載の数値となるように、記録領域(主走査方向×副走査方向:20cm×5cm)の全面に均一にドットを形成した画像を意味する。
【0213】
なお、インクジェットヘッドは、副走査方向のノズル間距離600dpi、ヘッドチップを2つ副走査方向に配置して
図2に示すようなノズル長さを2inch超となるようにしたヘッドユニットを用いた。また、各実施例においては、各インクを吐出するヘッドノズル群が
図3中のヘッド構成に示すように主走査方向に配置されるように各インクを充填した。
【0214】
また、表5~表7に記入した打ち方1~打ち方5について、
図3に詳細を示した。
図3はヘッドのノズル列構成のイメージ図である。
図3における左右方向に複数のノズル列が平行に並んでいる。なお、チップa、チップbは
図3中で、上下に記載しているが、実際のノズル配列では
図2のように左右に並んでいる。つまり、各列には左右に並ぶチップa、チップbが備えられている。チップa、チップbは、それぞれ、2列のノズル列を有している。それぞれの列から吐出する組成物を
図3中に記載している。空欄は該当組成物を吐出しないことを示す。
【0215】
図3中、左右方向が主走査方向である。主走査方向に複数回走査を行うことで記録を行う。まず、Step1に記載されたノズル列構成で各組成物を吐出し、所定の塗布量となったところで、次いでStep2に記載されたノズル列構成で各組成物を吐出する。打ち方1~打ち方5では、ヘッドのノズル列構成を変更することで、打ち方を変更している。各打ち方において、同一のStepに記載された組成物は、同一の主走査内で吐出されるものである。左方向に走査を行うと、記録媒体の所定の領域上を、列1、2、3の順にヘッドのノズル列が通過し、この順に組成物が付着されることとなる。また、各例においては、布帛の副走査を行わず、布帛の同じ位置において、Step1~Step3を行うことを表している。
【0216】
図4は、実施例11の記録方法における各組成物の付着の時間的イメージを示す模式図である。
図4は、打ち方1を、例示的に説明する図である。
【0217】
3.2.2.発色(ブラック)の評価
上記印刷方法により得られた印捺物に対して、印刷した画像の表面を測色機(FD-7、コニカミノルタ社製)を用いて、印刷画像のブラックの光学濃度(OD値、 Status E)を測定し、下記基準により判定した。
判定基準
S:OD値が1.60以上
A:OD値が1.51以上、1.60未満
B:OD値が1.46以上、1.51未満
C:OD値が1.46未満
【0218】
3.2.3.にじみの評価
上記印刷方法のうち、画像形成後に60分放置した時点でオーブンにて160℃で3分間加熱処理を開始して乾燥させた印捺物を各例で用意した。加えて、実施例1のうち反応液組成物と黒インク組成物で印刷後に乾燥した時点の印捺物をリファレンスとして用意した。印刷した画像領域と、印刷されていない非印刷領域の境界を観察し、リファレンスの印捺画像に対して各例で60分放置した印捺画像の副走査方向の長さ(mm)の差を下記基準により判定した。
判定基準
S:長さの差が1mm以下
A:長さの差が1mm超、3mm以下
B:長さの差が3mm超、7mm以下
C:長さの差が7mm超
【0219】
3.2.4.黄変の評価
上記印刷方法のうち、各例の第4インク(処理液)のみを記録布に30g/m2で記録し、上記方法で乾燥させた印捺布を用意し、印刷した画像の表面を測色機(FD-7、コニカミノルタ社製)を用いて、L*、a*、b*を測定し、サンプルとした。加えて、上記方法のうち、プリンターで印刷せずにオーブンで160℃3分で乾燥を実施した布を用意し、同様にしてL*、a*、b*を測定し、リファレンスとした。このリファレンスに対し、サンプルの色差ΔE00(ΔE2000)を計算し、下記基準により判定した。
判定基準
A:色差ΔE00が2以下
B:色差ΔE00が2超
【0220】
3.2.5.耐擦性(乾燥)の評価
上記印刷方法を用いて作成した捺染物に対して、クロックメーター(FI-306、テスター産業社製)を用いて、金巾(綿白布)で、捺染物の画像上を荷重9Nで10回摩擦した。その後、摩擦した金巾のインクで汚染されている領域に対して、測色機(FD-7、コニカミノルタ社製)を用いて、印刷画像の黒の光学濃度(OD、Status E)を測定し、下記基準により判定した。
判定基準
S:黒のODが0.15以下
A:黒のODが0.15超、0.19以下
B:黒のODが0.19超、0.23以下
C:黒のODが0.23超
【0221】
3.2.6.処理液組成物の保存安定性の評価
各例の第4インク(処理液)を調製し、40℃環境で3日静置した。その後、目視にて乳化分散粒子の浮上や沈降による濃度変化を外観で確認し下記基準により判定した。
判定基準
A:外観上の変化なし
B:乳化分散粒子が浮上または沈降しており、外観上の濃淡差が生じている
【0222】
3.2.7.反応液組成物との混合凝集性の評価
容量30mLのガラス瓶に第1インク(反応液)を15mL入れ、25℃にてその上からスポイトで第2インク(黒インク組成物)、第3インク(コート液)又は第4インク(処理液)を0.1mL滴下する。滴下して25℃にて1分間静置し、その後5回振とう撹拌する。目視で、沈殿物又は浮遊物を確認できた場合、混合凝集性「有り」とする。一方、目視で、溶解又は希釈された状態となった場合、混合凝集性「無し」とする。結果を表5~表7に記載した。
【0223】
なお、本発明に係る記録方法では、反応液組成物及び黒インク組成物は、互いを混合した際に沈殿物及び浮遊物を生成しない(以下、当該性質を「混合凝集性」ともいう。)。このような混合凝集性を示す反応液組成物及び黒インク組成物の組み合わせを選択することで、捺染物の表面の凝集物の生成を抑制することができる。同様に、黒インク組成物の代わりにコート液組成物、処理液組成物で試験を実施し、それぞれの反応液組成物との混合凝集性を評価した。
【0224】
3.3.評価結果
インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる反応液付着工程と、黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるインク付着工程と、アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるコート液付着工程と、強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる処理液付着工程と、を有し、前記特定物質の含有量が、前記処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であり、前記コート液付着工程は、前記処理液付着工程よりも先に行われ、前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である、各実施例では、いずれも、画像の発色性、耐擦性(乾燥)が良好で、にじみの少ない良好な記録物が得られることが判明した。
【0225】
本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成、例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び効果が同一の構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。
【0226】
上述した実施形態及び変形例から以下の内容が導き出される。
【0227】
記録方法は、
インク中の成分を凝集させる凝集剤を含有する反応液組成物を布帛に付着させる反応液付着工程と、
黒色顔料と、水と、を含有する黒インク組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるインク付着工程と、
アニオン性樹脂粒子と、水と、を含有するコート液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させるコート液付着工程と、
強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子、脂肪族エステルから選択されるいずれかの特定物質と、水と、を含有し、色材を含有しないか、色材の含有量が処理液組成物の総量に対して0.1質量%以下である処理液組成物を、インクジェット法により布帛に付着させる処理液付着工程と、を有し、
前記特定物質の含有量が、前記処理液組成物中の不揮発成分の総量に対して60質量%以上であり、
前記コート液付着工程は、前記処理液付着工程よりも先に行われ、
前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、60秒以下である。
【0228】
この記録方法によれば、布帛に、処理液を塗布することで、黒の発色性を向上することができる。しかし、処理液の付着により(特に付着量が多い場合)、乾燥摩擦堅牢性の低下や、処理液の滲みを生じることがある。これに対し、処理液は、後から付着させることで滲みを抑制し、さらにコート液を併用することで乾燥摩擦堅牢性の向上をはかることができる。
【0229】
処理液は、コート液と混合すると、コート液と反応液の凝集反応を阻害(強制乳化されており、乳化剤を多量に含むため)し、乾燥摩擦堅牢性が向上しにくくなるため、この記録方法では、コート液を処理液より先に塗布し、凝集反応を起こしてコート液が増粘してから処理液を塗布する。その結果、コート液はインク被膜上に留まり、インク被膜を十分に被覆できることで乾燥摩擦堅牢性が向上する。一方で、時間差が長すぎると、コート液が増粘しきってしまい、処理液を付着しても増粘したコート液が処理液中に拡散せず、処理液の増粘が引き起こされない。そうなると、処理液が滲みやすい。そこで、コート液-処理液付着の時間差を60秒以下とすることにより、処理液の滲みを抑制することができる。
【0230】
上記記録方法において、
前記コート液付着工程により前記コート液組成物を付着させてから、前記コート液組成物が付着した領域上に、前記処理液付着工程により前記処理液組成物が付着するまでの時間差が、1秒以下であってもよい。
【0231】
時間差が長すぎると、コート液が増粘しきってしまい、処理液を付着しても増粘したコート液が処理液中に拡散せず、処理液の増粘が引き起こされない。そうなると、処理液が滲みやすい。この記録方法によれば、コート液-処理液付着の時間差を1秒以下とすることにより、処理液の滲みをより良好に抑制することができる。
【0232】
上記記録方法において、
前記処理液付着工程により前記処理液組成物を付着させてから、前記処理液組成物が付着した領域上に、前記コート液組成物を付着させる、第2コート液付着工程をさらに有し、
前記コート液付着工程と、前記処理液付着工程と、前記第2コート液付着工程とが、同一の走査内で行われてもよい。
【0233】
この記録方法によれば、反応液と凝集しにくい処理液の滲みだしを、反応液と凝集しやすいコート液で被覆することで抑制し、処理液をより滲みにくくできる。
【0234】
上記記録方法において、
布帛の所定の領域に対し、前記処理液付着工程の開始から終了までの時間が25秒以上であってもよい。
【0235】
この記録方法によれば、処理液付着工程の開始から工程終了までの時間が長いので、水分蒸発による増粘や、反応液とインクやコート液が混合、拡散する時間が十分に確保できるため凝集しやすく、処理液の滲み抑制効果がさらに向上する。
【0236】
上記記録方法において、
前記処理液組成物は、前記強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子を含有し、
前記オルガノポリシロキサンが、非イオン性シリコーンであってもよい。
【0237】
この記録方法によれば、捺染物の黄変をより低減できる。
【0238】
上記記録方法において、
前記処理液組成物は、前記強制乳化されたオルガノポリシロキサンを含有する粒子を含有し、
前記オルガノポリシロキサンが、アミノ変性シリコーンであってもよい。
【0239】
この記録方法によれば、処理液のにじみをさらに抑制できる。
【0240】
上記記録方法において、
前記処理液組成物は、界面活性剤を含有し、
前記界面活性剤は、いずれもHLB値が8以上であってもよい。
【0241】
この記録方法によれば、処理液の保存安定性がさらに良好である。HLB値が低い界面活性剤は疎水性の発色剤に吸着しやすく、他の界面活性剤の吸着を阻害することが一因と考えられる。
【0242】
上記記録方法において、
前記インク付着工程は、前記コート液付着工程よりも先に行われてもよい。
【0243】
この記録方法によれば、さらに乾燥摩擦堅牢性の良好な捺染物が得られる。
【0244】
上記記録方法において、
前記コート液組成物中の色材の含有量は、前記コート液組成物の総量に対して、0.1質量%以下であってもよい。
【符号の説明】
【0245】
1…制御部、10…媒体供給部、11…供給軸部、12…軸受部、20…媒体搬送部、21…搬送ローラー、22…搬送ローラー、23…無端ベルト、23a…表面、23b…内周面、24…ベルト回転ローラー、25…ベルト駆動ローラー、26…搬送ローラー、27…加熱ユニット、28…搬送ローラー、29…粘着剤、30…媒体回収部、31…巻取り軸部、32…軸受部、40…印刷部、42…インクジェットヘッド、42a,42b,42c,42d…ノズル列、43…キャリッジ、45…キャリッジ移動部、45a…ガイドレール、45b…ガイドレール、46…プラテン、50…洗浄ユニット、51…洗浄部、52…押圧部、53…移動部、54…洗浄槽、55…ブレード、56…エアーシリンダー、57…ボールブッシュ、58…洗浄ローラー、60…媒体密着部、61…押圧部、69…当接部、90…フレーム部、91…ベルト支持部、95…布帛、99…床面、100…記録装置