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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173219
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】濁り評価方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20241205BHJP
   G01N 33/18 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G01N21/27 A
G01N33/18 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091478
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000206211
【氏名又は名称】大成建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 百合子
(72)【発明者】
【氏名】大野 剛
【テーマコード(参考)】
2G059
【Fターム(参考)】
2G059AA05
2G059BB05
2G059BB06
2G059EE02
2G059EE13
2G059FF01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
(57)【要約】
【課題】面的に拡がる濁りの影響範囲を定量的に把握することができる濁り評価方法を提供する。
【解決手段】監視対象となる水域の濁りを評価する濁り評価方法であって、前記水域の水面を撮影する水面画像の撮影工程S21と、前記水面画像の撮影工程で撮影された水面画像から濁り分布を作成する濁り分布の作成工程S22と、を有する。濁り分布の作成工程S22では、濁りの影響がない部分の画素値を基準とした場合の色または明るさに関する差と、濁りの度合いとの関係を示した換算式に基づいて、前記濁り分布を作成する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象となる水域の濁りを評価する濁り評価方法であって、
前記水域の水面を撮影する水面撮影工程と、
前記水面撮影工程で撮影された水面画像から濁り分布を作成する濁り分布作成工程と、を有し、
濁り分布作成工程では、濁りの影響がない部分の画素値を基準とした場合の色または明るさに関する差と、濁りの度合いとの関係を示した換算式に基づいて、前記濁り分布を作成する、
ことを特徴とする濁り評価方法。
【請求項2】
不濁水試料、および、前記水域または当該水域と底質の特性が同様である水域から採取した底質材料を用いて濁りの度合いが異なる濁水試料を作成する試料作成工程と、
前記不濁水試料および前記濁水試料を撮影した試料画像から、当該不濁水試料および当該濁水試料の画素値を読み取る画素値読取工程と、
前記試料画像から読み取った試料の画素値と、前記試料を計測して得た濁りの度合いとを用いて、前記換算式を作成する換算式作成工程と、を有し、
前記換算式作成工程では、前記不濁水試料の画素値を基準とした場合における濁水試料の色または明るさに関する差と、各々の試料の濁りの度合いとの関係に基づいて、前記換算式を求める、
ことを特徴とする請求項1に記載の濁り評価方法。
【請求項3】
前記換算式作成工程では、前記試料画像から読み取った前記不濁水試料のRGB値と前記濁水試料のRGB値とに基づいて色差を算出し、近似式を用いて色差と濁りの度合いとの関係を示す換算式を求める、
ことを特徴とする請求項2に記載の濁り評価方法。
【請求項4】
前記水面撮影工程では、水域の上空を飛行する飛行体から前記水面を撮影する、ことを特徴とする請求項1に記載の濁り評価方法。
【請求項5】
前記不濁水試料および前記濁水試料は、透明の素材であって外側または内側に単色の部材を貼付した容器に入れられており、
前記画素値読取工程では、前記単色の部材を背面として前記不濁水試料および前記濁水試料の画素値を読み取る、
ことを特徴とする請求項2に記載の濁り評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水域の濁り評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
埋立てや浚渫等により濁りが発生する海洋工事においては、生態系や海洋環境の保全を目的として、濁りに関する項目(例えば、濁度、SS(浮遊物質量)など)が決められた基準値を超えないように、日々の濁りを監視する必要がある。一般的に、濁りの監視は、監視点における濁度やSSを1日数回程度計測することにより行われる。
濁りの監視に関する技術として、例えば特許文献1,2に記載された技術が存在する。特許文献1,2に記載された技術は、ドップラー流速計を使用して海中の濁りを求めるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-068558号公報
【特許文献2】特開2007-071881号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2のように計測器を用いて濁りの計測を行う方法は、広範囲な領域の濁りを知りたい場合に不向きであった。つまり、海洋工事で発生する実際の濁りは、複数の点源からの重なりや過去の残留分によって面的に広がっているため、計測器による計測は点での計測となり、点計測では海洋工事により発生する濁りを十分に把握できないという問題がある。なお、計測点を増やすことで平面的な情報が得られるが、労力が多大となる。
このような観点から、本発明は、面的に拡がる濁りの影響範囲を定量的に把握することができる濁り評価方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る濁り評価方法は、監視対象となる水域の濁りを評価する方法である。この濁り評価方法は、前記水域の水面を撮影する水面撮影工程と、前記水面撮影工程で撮影された水面画像から濁り分布を作成する濁り分布作成工程とを有する。
濁り分布作成工程では、濁りの影響がない部分の画素値を基準とした場合の色または明るさに関する差と、濁りの度合いとの関係を示した換算式に基づいて、前記濁り分布を作成する。
本発明に係る濁り評価方法では、監視対象となる水域を撮影し、水面画像から濁りの度合いを評価する。そのため、水域での計測器を用いた複数地点での計測を行うことなく、面的に拡がる濁りの影響範囲を定量的に把握することができる。また、濁りが発生している部分の画素値(一例は、RGB値)から濁りの度合いを直接判定するのではなく、同じ画像内において濁りの影響がない部分の画素値を基準とした場合の色または明るさに関する差(一例は、色差)に基づいて濁りの度合いを判定する。そのため、色の見え方が日時や天候などによって異なる場合であっても、その影響を受けずに濁りの度合いの判定を行うことができる。
【0006】
濁り評価方法は、試料作成工程と、画素値読取工程と、換算式作成工程と、を有していてもよい。
前記試料作成工程では、不濁水試料(一例は、純水)、および、前記水域または当該水域と底質の特性が同様である水域から採取した底質材料を用いて濁りの度合いが異なる濁水試料を作成する。
前記画素値読取工程では、前記不濁水試料および前記濁水試料を撮影した試料画像から、当該不濁水試料および当該濁水試料の画素値を読み取る。
前記換算式作成工程では、前記試料画像から読み取った試料の画素値と、前記試料を計測して得た濁りの度合いとを用いて、前記換算式を作成する。例えば、前記不濁水試料の画素値を基準とした場合における濁水試料の色または明るさに関する差と、各々の試料の濁りの度合いとの関係に基づいて、前記換算式を求める。
前記換算式作成工程では、前記試料画像から読み取った前記不濁水試料のRGB値と前記濁水試料のRGB値とに基づいて色差を算出し、近似式を用いて色差と濁りの度合いとの関係を示す換算式を求めてもよい。
【0007】
前記水面撮影工程では、例えば、水域の上空を飛行する飛行体から前記水面を撮影する。このようにすると、水面画像の撮影が容易である。
前記不濁水試料および前記濁水試料は、透明の素材であって外側または内側に単色の部材を貼付した容器に入れられており、前記画素値読取工程では、前記単色の部材を背面として前記不濁水試料および前記濁水試料の画素値を読み取ってもよい。このようにすると、試料の読取り結果が正確になるので、精度のよい濁り評価を行うことが可能である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、面的に拡がる濁りの影響範囲を定量的に把握することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る濁り評価方法の工程を示したフローチャートの例示である。
図2】試料を撮影した試料画像の一例である。
図3】試料画像から読み取った試料のRGB値である。
図4】色差から濁度を求める換算式の一例である。
図5】濁り分布の作成工程を説明するための図であり、(a)は水面を撮影した水面画像の一例であり、(b)は水面画像を濁度に変換した場合の濁り分布の一例である。
図6】本発明の実施形態に係る濁り評価方法の効果に関する検証結果である。
図7】白色のテープと黄色のテープを容器に貼り付けて読み取った場合の結果の比較結果である。
図8】濁度と、色差および輝度の差との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施をするための形態を、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示してあるに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。なお、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
<実施形態に係る濁り評価方法について>
図1を参照して、実施形態に係る濁り評価方法について説明する。図1は、実施形態に係る濁り評価方法の工程を示したフローチャートの例示である。
実施形態に係る濁り評価方法では、監視対象となる水域を上方から撮影し、取得した水面画像(一例は、RGB画像)を画像処理することによって当該水域の濁り分布を作成する。画像処理においては、濁りが発生している部分の画素値(一例は、RGB値)から濁りの度合いを直接判定するのではなく、同じ画像内において濁りの影響がない部分の画素値を基準とした場合の色または明るさに関する差(一例は、色差)に基づいて濁りの度合いを判定する。
本実施形態では、監視対象として海を想定し、海洋工事による特定の海域の濁りの評価を行う場合を想定して説明する。なお、監視対象は海以外(例えば、湖、池、川など)であってもよく、濁りを発生する原因は海洋工事に限定されない。濁りを発生する原因は、例えば、工場からの廃水などであってもよい。本実施形態では、濁りの度合いとして濁度を求めることにする。
【0012】
図1に示すように、濁り評価方法は、主に、事前工程S10と、濁り評価工程S20とで構成される。
事前工程S10は、試料の作成工程S11と、試料の撮影工程S12と、試料のRGB値(画素値)の読み取り工程S13と、RGB値(画素値)から濁度を求める換算式の作成工程S14とを有する。
濁り評価工程S20は、水面画像の撮影工程S21と、濁り分布の作成工程S22と、濁り分布の表示工程S23とを有する。
【0013】
(事前工程「S10」)
事前工程S10は、濁り評価工程S20の前段階で実施される工程である。事前工程S10は、海洋工事の現場ごとに実施されるのが望ましいが、海域の特性(例えば、底質の特性、水深、海水の色など)が同様の現場の場合には、ある海洋工事で行った事前工程S10の結果を他の海洋工事で用いることも可能である。
【0014】
(試料の作成工程「S11」)
図2を参照して、試料Tの作成工程S11について説明する。図2は、試料Tを撮影した試料画像51の一例である。なお、図2の試料画像51は、実際にはカラー画像(RGB値を有するデジタル画像)である。
図2に示す試料Tは、監視対象となる水域で発生する濁りを再現したものである。例えば、純水および監視対象となる水域の底質材料(例えば、砂)を用いて、濃度(濁りの度合い)の異なる液体状の試料Tを作成する。純水に代えて、監視対象の水域から取得した水や清浄水などを用いてもよい。本実施形態では、試料T1~T7の合計で7個の試料Tを作成している。試料Tは、透明の素材でできた容器61に入れられている。容器61には、単色(例えば、白色)の部材62が貼付されている。部材62は、例えばビニール製のテープであり、容器61の外側および内側の何れかに貼付される(本実施形態では外側)。すべての試料T1~T7で、部材62の色は同じである。なお、試料Tに用いる底質材料は、監視対象となる水域と底質の特性(例えば、構成物質や構成比率など)が同様である水域から採取したものであってもよい。
【0015】
試料T1は、底質材料の濃度(含有量)が極めて低くなっている(つまり、濁りの度合いが極めて低くなっている)。試料T1は、例えば純水や清浄水であってよく、試料T1が純水や清浄水の場合には、底質材料の含有量はゼロである。試料T1は、水域における濁りの影響がない領域に対応する試料である。試料T1を「不濁水試料」と呼ぶ場合がある。
試料T2は、試料T1よりも底質材料の濃度が高くなっており(つまり、濁りの度合いが試料T1よりも高い)、試料T3は、試料T2よりも底質材料の濃度がさらに高くなっている(つまり、濁りの度合いが試料T2よりもさらに高い)。このように、本実施形態では、試料Tの番号が大きくなるにつれて底質材料の濃度が高くなっており、試料T7の濃度が最も高くなっている(つまり、濁りの度合いが最も高い)。試料T2ないし試料T7を「濁水試料」と呼ぶ場合がある。
試料Tを作成した段階で、すべての試料Tの濁度を計測しておく。試料Tを計測することで取得した濁度は、後述する換算式の作成で用いられる。
【0016】
(試料の撮影工程「S12」)
試料Tを撮影し、図2に示す試料画像51を取得する。図2に示すように、貼付した部材62が撮影位置を基準として奥側になるように(つまり、撮影位置から遠くなるように)、容器61を適宜回して配置する。これにより、撮影位置から見た場合に、容器61内の試料Tの奥側に部材62が位置する。試料Tを横に並べてカメラの画角内にすべての試料Tが含まれるようにして撮影するのがよい(つまり、1枚の画像内にすべての試料Tが写るようにする)。
【0017】
(試料のRGB値の読み取り工程「S13」)
試料画像51(図2参照)から、試料TのRGB値(画素値)を読み取る。本実施形態では、試料Tを容器61に入れているので、容器61越しに試料TのRGB値を読み取ることになる。例えば、部材62が写る領域のRGB値を読み取り、その読み取ったRGB値の平均値を試料TのRGB値とする。つまり、部材62を基準色として試料TのRGB値を読み取る。読み取った試料TのRGB値の一例を図3に示す。図3は、試料画像51から読み取った試料Tの読み取り結果(RGB値)である。
【0018】
図3に示すように、試料T1のRGB値は、部材62の色のRGB値またはそれに近い値になる。本実施形態では、部材62は白色なので、白色のRGB値(RGB:255,255,255)に近いRGB値(RGB:246,241,247)になっている。
試料T2のRGB値は、試料T1のRGB値よりも低い値になっており(つまり、試料T1よりも黒色(RGB:0,0,0)に近い色になっている)、試料T3のRGB値は、試料T2のRGB値よりもさらに低い値になっている(つまり、試料T2よりも黒色にさらに近い色になっている)。このように、試料Tの濁りの度合いが高くなるにつれて、黒色に近い色になっており、試料T7の色が最も黒色に近くなっている。
【0019】
(RGB値から濁度を求める換算式の作成工程「S14」)
工程S13で読み取った試料TのRGB値と、工程S11で計測した試料Tの濁りの度合い(一例は、濁度)とを用いて換算式を作成する。具体的には、不濁水試料(本実施形態では、試料T1)のRGB値を基準とした場合における濁水試料(本実施形態では、試料T2~T7)の色差と、各々の試料Tの濁りの度合いと、の関係に基づいて換算式を求める。色差は、色彩学分野で用いられている色の表し方のひとつで、色(RGB)をRGB空間における位置で表した場合の2色間の距離である。2色間の距離が近いと2色が似ており、距離が遠いと色の差が大きい。
不濁水試料(試料T1)のRGB値を「R0,G0,B0」とし、濁水試料(試料T2~T7)のRGB値を「R,G,B」とした場合、色差を以下の式によりそれぞれ求める。
・色差= ((R-R0)2+(G-G0)2+(B-B0)2)1/2
【0020】
試料Tから求めた色差と濁度の関係に基づいて、色差から濁度を求める換算式を得る。色差から濁度を求める換算式の一例を図4に示す。
図4での横軸は色差であり、縦軸は濁度である。図4における6つの黒丸は、試料T2~T7の値であり、例えばこれらの値に基づく近似式を求めて換算式とする。本実施形態では、試料T2~T7に基づいて以下の換算式を得ることができる。換算式では、y:濁度、x:色差である。
・換算式y=2.5×10-5×x3
【0021】
(濁り評価工程「S20」)
濁り評価工程S20は、事前工程S10の後段階で実施される工程であり、事前工程S10で求めた換算式を用いて監視対象の水域の濁り分布を作成する。例えば、濁り評価工程S20を所定時間ごとに複数回実施することで、時間経過に伴う濁り分布を得ることができる。時間経過に伴う濁り分布からは、濁りの広がりや移動を把握することができる。
【0022】
(水面画像の撮影工程「S21」)
監視対象となる水域の水面を撮影する。例えば、水域の上空に飛行体(一例は、ドローン)を飛行させ、飛行体から水面を撮影する。水面の撮影に用いるカメラは、飛行体の下部に設置される。撮影では、濁りの影響がない部分を画角に含めるようにする。
図5(a)に、水面を撮影した水面画像71の一例を示す。なお、図5(a)の水面画像71は、実際にはカラー画像(RGB値を有するデジタル画像)である。図5(a)で示す水域では、フェンス72を設置することで、水域内に濁りの影響がない部分を作成している。フェンス72は、濁水の浸入を防止するためのものであり、例えば、水面に浮くフロート部と、フロート部から垂れ下がった状態のカーテン部とで構成される。カーテン部は、例えばポリエステル製である。
【0023】
(濁り分布の作成工程「S22」、濁り分布の表示工程「S23」)
工程S21で撮影した水面画像71から濁り分布を作成する。具体的には、濁りの影響がない部分のRGB値を基準とした場合における監視対象の水域(各画素)の色差と、工程S14で得た換算式と、に基づいて濁り分布を作成する。
濁りの影響がない部分のRGB値を「R0,G0,B0」とし、監視対象の水域の各画素のRGB値を「R,G,B」とした場合、水面画像71での色差を以下の式により求める。
・色差= ((R-R0)2+(G-G0)2+(B-B0)2)1/2
また、以下の換算式のx値として、監視対象の水域の各画素の色差を代入して、濁度を画素単位で求める。
・換算式:y=2.5×10-5×x3
これにより、例えば、図5(b)に示す濁度に関する分布図81が作成される。作成した分布図81を、例えば海洋工事の関係者が使用する端末に表示する。所定時間ごとに水面の撮影および分布の作成を行い、濁りの広がりや移動を時系列で表示するようにしてもよい。
【0024】
以上のように、本実施形態に係る濁り評価方法によれば、監視対象となる水域を撮影し、水面画像71(図5参照)から濁りの度合いを評価する。そのため、水域での計測器を用いた複数地点での計測を行うことなく、面的に拡がる濁りの影響範囲を定量的に把握することができる。また、濁りが発生している部分の画素値(一例は、RGB値)から濁りの度合いを直接判定するのではなく、同じ画像内において濁りの影響がない部分の画素値を基準とした場合の色または明るさに関する差(一例は、色差)に基づいて濁りの度合いを判定する。そのため、色の見え方が日時や天候などによって異なる場合であっても、その影響を受けずに濁りの度合いの判定を行うことができる。
【0025】
本実施形態に係る濁り評価方法の効果に関する検証を行ったので説明する。換算式を用いて水面画像71から濁度を算出した値と、おおむね同じ位置および時刻に計測した実際の水域での濁度の値とを比較した。図6に、濁り評価方法の効果に関する検証結果を示す。図6に示すように、実際の計測値と画像から求めた換算値とには、正の相関が得られている。そのため、低濃度、中濃度、高濃度(例えば、0~30[mg/L]、30~100[mg/L]、100~300[mg/L])という濁り度合いを少なくとも評価できることが分かる。
【0026】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
例えば、実施形態では白色の部材62(一例は、テープ)を容器61に貼り付け、部材62を基準色として試料TのRGB値を読み取っていた。しかしながら、基準色となる部材62の色は白色に限定されず、他の色であってもよい。底質材料の色によっては、白色以外の色がよい場合もある。白色のテープと黄色のテープを容器61に貼り付けて読み取った場合の結果の比較を図7に示す。両者ともに濁度と色差に比例関係があるので、黄色の部材62を用いることが可能である。なお、白色に対して黄色の方が上がり方が鈍いので、実施形態で想定した底質材料では、白色の方が色差を明確に表すことが可能である。
【0027】
また、実施形態では、色差を用いて試料画像51および水面画像71から濁度を求めていた。しかしながら、色差以外の色または明るさに関する値(例えば、輝度や明度)を用いることも可能である。図8に、濁度(計測値)と色差との関係(本実施形態で想定したもの)、および、濁度(計測値)と輝度の差との関係を示す。両者ともに濁度と比例関係にあるので、実施形態で説明した評価方法での色差に代えて輝度の差を用いることが可能である。なお、色差に対して輝度の差の幅が狭いので、実施形態で想定した底質材料では、輝度の差よりも色差の方が適しているといえる。
【符号の説明】
【0028】
51 試料画像
61 容器
62 部材
71 水面画像
72 フェンス
81 分布図
T 試料
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8