(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173221
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】プロトコル評価支援装置およびプロトコル評価支援方法
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/04 20120101AFI20241205BHJP
【FI】
G06Q50/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091481
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】神田 喬之
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 啓幸
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩之
(72)【発明者】
【氏名】倉田 明佳
【テーマコード(参考)】
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】複数の経路を含む工程手順が表現されたプロトコルを適正に評価するための支援を行うことを可能とする技術を提供する。
【解決手段】プロトコル評価支援装置が備える処理装置が、プロトコル中で複数の要素が一つの要素に同時合流する部分に同時合流記号を作成し、プロトコル中で一つの要素が複数の要素に同時分岐する部分に同時分岐記号を作成する作成処理S302,S303と、プロトコルを工程手順に含まれる経路毎に展開する展開処理S304と、プロトコルについて同時合流記号よりも後の工程における要素の全てが重複するものを除去し、同時分岐記号よりも前の工程における要素の全てが重複するものを除去する除去処理S305,S306と、プロトコルについて残存する要素のそれぞれに個別評価値を対応させ、個別評価値に基づいてプロトコルの全体評価値を算出する算出処理S307,S308と、を実行する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の要素をつなぐ複数の経路を含む工程手順が表現されたプロトコルの評価を支援するプロトコル評価支援装置であって、
処理装置を備え、
前記処理装置は、
前記プロトコル中で複数の前記要素が一つの前記要素に同時合流する部分に前記同時合流であることを特定する同時合流記号を作成し、前記プロトコル中で一つの前記要素が複数の前記要素に同時分岐する部分に前記同時分岐であることを特定する同時分岐記号を作成する作成処理と、
前記作成処理の後の前記プロトコルを、前記工程手順に含まれる前記経路毎に展開する展開処理と、
前記展開処理の後の前記プロトコルについて、前記同時合流記号よりも後の工程における前記要素の全てが重複するものを除去し、前記同時分岐記号よりも前の工程における前記要素の全てが重複するものを除去する除去処理と、
前記除去処理の後の前記プロトコルについて、残存する前記要素のそれぞれに個別評価値を対応させ、対応させた前記個別評価値に基づいて前記プロトコルの全体評価値を算出する算出処理と、
を実行する、
プロトコル評価支援装置。
【請求項2】
請求項1に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、
前記作成処理として、前記プロトコル中で複数の前記要素が一つの前記要素につながる部分であって同時記号が付与されている部分に前記同時合流記号を作成し、前記プロトコル中で一つの前記要素が複数の前記要素につながる部分であって前記同時記号が付与されている部分に前記同時分岐記号を作成する、
プロトコル評価支援装置。
【請求項3】
請求項2に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、前記作成処理の前に、操作者による前記同時記号の入力操作を受け付け、評価対象として設定された前記プロトコル中の所定位置に前記同時記号を付与する付与処理を、実行する、
プロトコル評価支援装置。
【請求項4】
請求項1に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記プロトコルは、プロトコルIDに関連付けられて記憶部に記憶されており、
前記処理装置は、前記作成処理の前に、操作者による前記プロトコルIDの入力操作を受け付けて前記記憶部から前記プロトコルIDに対応する前記プロトコルを読み出し、読み出した前記プロトコルを評価対象として設定する設定処理を、実行する、
プロトコル評価支援装置。
【請求項5】
請求項1に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、前記算出処理を実行する際、操作者による前記個別評価値の入力操作を受け付けて、受け付けた前記個別評価値を前記除去処理後に残存する前記要素のそれぞれに対応させる、
プロトコル評価支援装置。
【請求項6】
請求項1に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、前記算出処理により算出された前記プロトコルの前記全体評価値を表示装置の画面に表示させる表示処理を、実行する、
プロトコル評価支援装置。
【請求項7】
請求項6に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、前記表示処理として、前記作成処理の前の前記プロトコルを前記表示装置の画面にさらに表示させる、
プロトコル評価支援装置。
【請求項8】
請求項6に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、前記表示処理として、前記作成処理の後の前記プロトコルを前記表示装置の画面にさらに表示させる、
プロトコル評価支援装置。
【請求項9】
請求項6に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記処理装置は、前記表示処理として、前記展開処理の後の前記プロトコルに残存する前記要素と、各要素に対応する前記個別評価値と、を前記表示装置の画面にさらに表示させる、
プロトコル評価支援装置。
【請求項10】
請求項1に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記個別評価値および前記全体評価値は、コストを評価する値を含む、
プロトコル評価支援装置。
【請求項11】
請求項1に記載のプロトコル評価支援装置において、
前記工程手順が、材料研究における実験手順である、
プロトコル評価支援装置。
【請求項12】
複数の要素をつなぐ複数の経路を含む工程手順が表現されたプロトコルの評価を支援するプロトコル評価支援方法であって、
コンピュータによって実行されるステップとして、
前記プロトコル中で複数の前記要素が一つの前記要素に同時合流する部分に前記同時合流であることを特定する同時合流記号を作成し、前記プロトコル中で一つの前記要素が複数の前記要素に同時分岐する部分に前記同時分岐であることを特定する同時分岐記号を作成する作成ステップと、
前記工程手順に含まれる前記経路毎に前記プロトコルを展開する展開ステップと、
前記展開ステップで展開された前記プロトコルについて、前記同時合流記号よりも後の工程における前記要素の全てが重複するものを除去し、前記同時分岐記号よりも前の工程における前記要素の全てが重複するものを除去する除去ステップと、
前記除去ステップ後に残存する前記要素のそれぞれに個別評価値を対応させ、対応させた前記個別評価値に基づいて前記工程手順の全体評価値を算出する算出ステップと、
を有する、
プロトコル評価支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プロトコル評価支援装置およびプロトコル評価支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
工程手順(作業手順とも言う)の設定においては、手順を構成する様々な要素の組み合わせに対してコストや時間などの評価項目を考慮する必要があり、その設定作業は多くの労力を要するものとなっている。このような設定作業の支援に関する技術として、例えば、データ分析作業の支援を行う支援技術がある(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、分析作業の効率性と多様性をあわせて踏まえつつ、条件変化に柔軟に対応したデータ分析作業の支援を行うデータ分析作業支援装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述のごとき困難を伴う設定作業としては、例えば、材料研究における実験手順の設定作業が挙げられる。材料の研究開発では、原料やそれに対する処理、測定、解析など様々な要素(工程)が存在し、要素の種類が多いことから多様な組み合わせが存在しうる。そして多くの場合、工程手順には複数の経路が含まれ、経路の合流や分岐もあることから、工程手順の内容は複雑なものとなることも多く、その設定は専門家による詳細な検討を要するものとなっている。
【0006】
そこで、材料研究等における工程手順(例えば、実験手順)を表現したプロトコルのデータを格納しておき、このプロトコルに基づいて、工程手順の実行にかかるコストなどの評価値を必要に応じて計算することで、工程手順の設定を支援することが考えられる。
【0007】
従来技術では、工程手順を有向グラフの形で表現されたプロトコルについて、それに含まれる分岐の重要度などに基づく評価が行われている。例えば、材料研究の分野においても、工程手順を有向グラフの形で表現されたプロトコルについて、適切な評価が行われることが期待される。
【0008】
しかしながら、例えば、材料研究の分野において、工程手順を表現したプロトコルを適切に評価することは難しい。材料研究においては、複数種類の原料を使用する際、複数種類の原料を個別に使う場合のほか、複数種類の原料を同時に使う場合もありうる。すなわち、材料研究における工程手順を簡潔に表現したプロトコルには、複数種類の要素(例えば、原料)が一つの要素に合流する経路が存在する場合、複数の要素から個別に次の要素に進む場合と、複数種類の要素から同時(「一斉」とも言える)に次の要素に進む場合とが存在し得る。言い換えれば、上記「合流」には、「個別に合流」と「同時に合流」との意味合いが含まれる場合がある。
【0009】
同様に、材料研究の工程手順を表現したプロトコルには、一つの要素から複数の要素に分岐する場合があり、この「分岐」には、「個別に分岐」と「同時に分岐」との意味合いが含まれる場合がある。
【0010】
そして、プロトコルの適切な評価を行うためには、どの要素が何回出現するかを正しく表現する必要がある。そのためには上記「合流」や「分岐」の意味合いに関して、「個別」と「同時」の2種類の意味合いの両方を扱える必要がある。
【0011】
しかしながら、従来技術では、この点には対応できていない。従来技術における有向グラフで表現されるプロトコルでは、上記「合流」および「分岐」については、「個別」の意味合いを前提として扱っており、「同時」の意味合いを表現することは難しい。「同時」としての意味合いを扱えない場合、本来のプロトコル内容に比べて要素の出現回数が過剰なものとなってしまう虞がある。それに伴い、要素の出現回数に基づいたコストなどの評価値を正しく算出することができない虞がある。
【0012】
そこで本開示の目的は、複数の経路を含む工程手順が表現されたプロトコルを適正に評価するための支援を行うことを可能とする技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
一実施形態に係るプロトコル評価支援装置は、複数の要素をつなぐ複数の経路を含む工程手順が表現されたプロトコルの評価を支援するものであって、処理装置を備える。前記処理装置は、前記プロトコル中で複数の前記要素が一つの前記要素に同時合流する部分に前記同時合流であることを特定する同時合流記号を作成し、前記プロトコル中で一つの前記要素が複数の前記要素に同時分岐する部分に前記同時分岐であることを特定する同時分岐記号を作成する作成処理と、前記作成処理の後の前記プロトコルを、前記工程手順に含まれる前記経路毎に展開する展開処理と、を実行する。さらに処理装置は、前記展開処理の後の前記プロトコルについて、前記同時合流記号よりも後の工程における前記要素の全てが重複するものを除去し、前記同時分岐記号よりも前の工程における前記要素の全てが重複するものを除去する除去処理と、前記除去処理の後の前記プロトコルについて、残存する前記要素のそれぞれに個別評価値を対応させ、対応させた前記個別評価値に基づいて前記プロトコルの全体評価値を算出する算出処理と、を実行する。
【発明の効果】
【0014】
一実施形態に係るプロトコル評価支援装置によれば、工程手順が簡潔に表現されたプロトコルを適正に評価するための支援を行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】実施形態1に係るプロトコル評価支援装置の全体構成図である。
【
図2】実施形態1に係るプロトコル評価支援装置の機能ブロック図である。
【
図3】実施形態1に係るプロトコル評価支援処理の流れの一例を示す図である。
【
図4A】実施形態1に係るプロトコルデータの一例を説明する図である。
【
図4B】実施形態1に係るプロトコルデータの一例を説明する図である。
【
図5A】実施形態1に係る作成処理の一例を説明する図である。
【
図5B】実施形態1に係る作成処理の一例を説明する図である。
【
図6】実施形態1に係る展開処理の一例を説明する図である。
【
図7A】実施形態1に係る除去処理の一例を説明する図である。
【
図7B】実施形態1に係る除去処理の一例を説明する図である。
【
図8A】実施形態1に係る除去処理の一例を説明する図である。
【
図8B】実施形態1に係る除去処理の一例を説明する図である。
【
図9】実施形態1に係る算出処理の一例を説明する図である。
【
図10】実施形態1に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図11】実施形態1に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の他の例を示す図である。
【
図12】実施形態1に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の他の例を示す図である。
【
図13】実施形態1に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の他の例を示す図である。
【
図14】実施形態1に係るプロトコルデータの他の例を説明する図である。
【
図15A】実施形態2に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図15B】実施形態2に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図15C】実施形態2に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の一例を示す図である。
【
図16】比較例1のプロトコル評価支援方法を説明する図である。
【
図17】比較例1のプロトコル評価支援方法を説明する図である。
【
図18】比較例2のプロトコル評価支援方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、実施形態に係るプロトコル評価支援装置及びプロトコル評価支援方法について、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。本発明の思想ないし趣旨から逸脱しない範囲で、その具体的構成を変更し得ることは当業者であれば容易に理解される。
【0017】
以下に説明する構成において、同一部分又は同様な機能を有する部分には同一の符号を異なる図面間で共通して用い、重複する説明は省略することがある。同一あるいは同様な機能を有する要素が複数ある場合には、同一の符号に異なる添字を付して説明する場合がある。ただし、複数の要素を区別する必要がない場合には、添字を省略して説明する場合がある。
【0018】
本明細書等における「第1」、「第2」、「第3」などの表記は、構成要素を識別するために付するものであり、必ずしも、数、順序、もしくはその内容を限定するものではない。また、構成要素の識別のための番号は文脈毎に用いられ、一つの文脈で用いた番号が、他の文脈で必ずしも同一の構成を示すとは限らない。また、ある番号で識別された構成要素が、他の番号で識別された構成要素の機能を兼ねることを妨げるものではない。
【0019】
図面等において示す各構成の位置、大きさ、形状、範囲などは、実施形態の構成の理解を容易にするため、実際の位置、大きさ、形状、範囲などを表していない場合がある。このため、実施形態の構成は、必ずしも、図面等に開示された位置、大きさ、形状、範囲などに限定されない。
【0020】
以下で詳細に説明される実施形態の一つの特徴は、下記のように、材料研究の実験手順が有向グラフとして簡潔に表現されたプロトコルの評価について支援を行う点にある。具体的には、実験手順に含まれる経路の合流または分岐について、同時(一斉とも言える)に行うことを表現する「S」記号を用い、この「S」記号をもとに同時合流を表現する「SMe」記号と、同時分岐を表現する「SRe」記号とを作成する。そして、作成した記号を起点に所定の演算を行い、展開後の経路中の余分な要素を除去することにより、各要素の出現回数に関する情報を正しく扱えるようにし、これを基に各要素へコストなどの評価値を割り付けてプロトコル全体の評価値を算出する。
【0021】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るプロトコル評価支援装置のハードウェア構成を示す図である。
図2は、実施形態1にプロトコル評価支援装置の機能ブロック図である。
図3は、実施形態1に係るプロトコル評価支援処理の流れの一例を示す図である。また、
図4Aおよび
図4Bは、実施形態1に係るプロトコルデータの一例を説明する図である。
図5Aおよび
図5Bは、実施形態1に係る作成処理の一例を説明する図である。また
図6は、実施形態1に係る展開処理の一例を説明する図である。
図7A、
図7B、
図8Aおよび
図8Bは、実施形態1に係る除去処理の一例を説明する図である。
図9は、実施形態1に係る算出処理の一例を説明する図である。
【0022】
図1に示すように、プロトコル評価支援装置1は、処理装置としてのプロセッサ2、メモリ3、記憶装置4、およびネットワークアダプタ5を備える。これらプロセッサ2、メモリ3、記憶装置4、およびネットワークアダプタ5は、システムバス6によって信号送受可能に接続される。また、プロトコル評価支援装置1は、ネットワーク9を介してプロトコルデータベース10や評価値データベース11と信号送受可能に接続されるとともに、表示装置7と入力装置8とに接続される。ここで、「信号送受可能に」とは、電気的、光学的に有線、無線を問わずに、相互にあるいは一方から他方へ信号送受可能な状態を示す。
【0023】
プロセッサ2は、各構成要素の動作を制御したり、記憶装置4に格納されるプログラムを実行したりする装置である。メモリ3は、プロセッサ2が実行するプログラムや演算処理の途中経過を記憶するものである。記憶装置4は、プロセッサ2が実行するプログラムやプログラムの実行に必要なデータを格納する装置であり、具体的には、HDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid state Drive)等が挙げられる。ネットワークアダプタ5は、プロトコル評価支援装置1をLAN、電話回線、インターネット等のネットワーク9に接続するためのものである。プロセッサ2が扱う各種データはLAN(Local Area Network)等のネットワーク9を介してプロトコル評価支援装置1の外部と送受信されてもよい。
【0024】
表示装置7は、プロトコル評価支援装置1によるプロトコルの全体評価値等の算出結果を表示する装置であり、具体的には液晶ディスプレイやタッチパネル等で構成される。入力装置8は、例えば、ユーザ等の操作者がプロトコル評価支援装置1に対して入力操作を行うための操作デバイスであり、具体的には、キーボードやマウス、タッチパネル等で構成される。また入力装置8は、トラックパッドやトラックボール等のポインティングデバイスで構成されていてもよい。
【0025】
プロトコルデータベース10は、文献や過去実績等をもとに予め作成されたプロトコルのデータ(以下、プロトコルデータともいう)を記憶するデータベースシステムである。プロトコルデータベース10には、例えば、材料研究の工程手順(実験手順)を簡潔に表現する複数種類のプロトコルのデータが、プロトコルIDに関連付けられて記憶されている。評価値データベース11は、プロトコルに含まれる複数の要素に対応した評価値のデータ(以下、評価値データという)を記憶するデータベースシステムである。
【0026】
ここで、材料研究における実験手順の一例としては、次のようなものがある。「ポリエチレンとポリプロピレンとの両方を使用して、またポリアミドを単独で使用して、溶融成形し、引張試験と衝撃試験とを行う。引張試験の結果(データ)は、破断強度の解析と機械学習とに用いる。」
【0027】
この実験手順を表現するプロトコルのデータ401は、例えば、
図4Aに示すように、簡潔な表現が可能な有向グラフとして表される。また、このように有向グラフとして表されるプロトコルには、例えば、
図4Bに示すように、経路の合流または分岐について、同時(一斉とも言える)に行うことを表現するS記号100が所定のタイミングで付与される。本例においては、このようにS記号100が付与されたプロトコルデータ402が、プロトコルデータベース10に記憶されているものとする。
【0028】
なお、プロトコルデータおよび評価値データを記憶する記憶部の構成は、特に限定されるものではない。プロトコルデータおよび評価値データは、例えば、プロトコル評価支援装置1が備える記憶装置4に記憶されていてもよい。
【0029】
次に、
図2を参照して、実施形態1に係るプロトコル評価支援装置1の機能ブロックについて説明する。なお、
図2に示される各機能は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field-Programmable Gate Array)等で構成される専用のハードウェアで実現されてよいし、プロセッサ2上で動作するソフトウェアで実現されてもよい。以下では、プロトコル評価支援装置1がコンピュータであり、当該コンピュータが、記憶装置4に記憶されているプログラムを実行することにより各機能ブロックとして機能する場合について説明する。
【0030】
プロトコル評価支援装置1のプロセッサ2は、機能ブロックとして、プロトコル設定部201、同時合流記号作成部202、同時分岐記号作成部203、経路展開部204、後方重複除去部205、前方重複除去部206、評価値対応部207、評価値算出部208を備える。
【0031】
プロトコル設定部201は、プロトコル評価支援処理が実施される際、所定のプロトコルデータを、例えば、ネットワークアダプタ5を介してプロトコルデータベース10から取得し、評価対象として設定する設定処理を実行する。一例として、プロトコル設定部201は、例えば、入力装置8から入力されるユーザの入力操作を受け付け、入力操作による操作者の指示(以下、操作指示という)に応じて、所定のプロトコルデータを取得して評価対象として設定する。なお、プロトコルデータは、例えば、ユーザがプロトコル評価支援装置1に対して適宜入力するようにしてもよい。
【0032】
同時合流記号作成部202は、プロトコル設定部201によって評価対象として設定されたプロトコル中のS記号および経路を示す矢印の内容に基づいて、同時合流を表現する「SMe記号」を作成する。言い換えれば、同時合流記号作成部202は、プロトコル中のS記号および経路を示す矢印の内容に基づいて、所定のS記号をSMe記号に置き換える。さらに別の言い方をすれば、同時合流記号作成部202は、プロトコル中のS記号および経路を示す矢印の内容に基づいて、所定のS記号に対してSMe記号を要素の一つとして割り当てる。
【0033】
例えば、
図4Bに示すプロトコルデータ402の場合、複数の要素110から延びる矢印120がS記号100につながり、S記号100から延びる一つの矢印120が次の要素110につながっている部分について、そのS記号100がSMe記号に置き換えられる。すなわち、同時合流記号作成部202は、
図5Aに示すように、複数の要素110から延びる矢印120がS記号100につながり、S記号100から延びる一つの矢印120が次の要素110につながっている部分について、そのS記号100をSMe記号130に置き換えたプロトコルデータ403を作成する。
【0034】
同時分岐記号作成部203は、プロトコル中のS記号および経路を示す矢印の内容に基づいて、同時分岐を表現する「SRe記号」を作成する。言い換えれば、同時分岐記号作成部203は、プロトコル中のS記号および経路を示す矢印の内容に基づいて、所定のS記号をSRe記号に置き換える。さらに別の言い方をすれば、同時分岐記号作成部203は、プロトコル中のS記号および経路を示す矢印の内容に基づいて、所定のS記号に対してSRe記号を要素の一つとして割り当てる。
【0035】
例えば、
図5Aに示すプロトコルデータ403の場合、一つの要素110から延びる矢印120がS記号100につながり、S記号100から延びる複数の矢印120が複数の要素110につながっている部分について、そのS記号100がSRe記号に置き換えられる。すなわち、同時分岐記号作成部203は、
図5Bに示すように、一つの要素110から延びる矢印120がS記号100につながり、S記号100から延びる複数の矢印120が複数の要素110につながっている部分について、そのS記号100をSRe記号140に置き換えたプロトコルデータ404を作成する。
【0036】
このように、同時合流記号作成部202は、プロトコル中で複数の要素が一つの要素に同時合流する部分に、同時合流であることを特定するSMe記号(同時合流記号)を作成する作成処理を実行する。また同時分岐記号作成部203は、プロトコル中で一つの要素が複数の要素に同時分岐する部分に、同時分岐であることを特定するSRe記号(同時分岐記号)を作成する作成処理を実行する。
【0037】
経路展開部204は、プロトコル中のSMe記号、SRe記号に基づいて、プロトコルの経路を展開する。言い換えれば、経路展開部204は、プロトコルで表現された工程手順に含まれる複数の経路を、独立する個別の経路に展開する。言い換えれば、経路展開部204は、作成処理の後のプロトコルを、工程手順に含まれる経路毎に展開する展開処理を実行する。
【0038】
後方重複除去部205は、展開処理の後のプロトコルについて、SMe記号よりも後の工程、つまりSMe記号の後方、における要素の全てが重複するものを除去する除去処理を実行する。言い換えれば、後方重複除去部205は、経路展開部204によって展開された個別の経路について、SMe記号よりも後の工程で重複しているものを除去する。また、前方重複除去部206は、展開処理後のプロトコルについて、SRe記号よりも前の工程、つまりSRe記号の前方、における要素の全てが重複するものを除去する除去処理を実行する。言い換えれば、前方重複除去部206は、展開された個別の経路について、SRe記号よりも前の工程で重複している要素を除去する。
【0039】
評価値対応部207は、後方重複除去部205および前方重複除去部206によって重複する要素が除去された後に、算出処理の一つとして、プロトコルに残存する各要素に評価値を対応させる処理を実行する。具体的には、評価値対応部207は、除去処理の後のプロトコルに残存する各要素の個別の評価値である個別評価値を、例えば、評価値データベース11から取得して、各要素に対応付ける。
【0040】
評価値算出部208は、評価値データベース11から取得された個別評価値に基づいて、展開されたプロトコル全体での評価値(以下、全体評価値という)を算出する。言い換えれば、評価値算出部208は、評価値対応部207が各要素に対応させた個別評価値に基づいて、算出処理の一つとして、プロトコル全体での評価値である全体評価値を算出する処理を実行する。
【0041】
なお、このように評価値算出部208により算出されたプロトコル全体評価値は、その後、プロセッサ2によりユーザに向けて出力される。本例では、プロトコル全体評価値を含む評価結果が、表示装置7の画面に表示される。図示は省略するが、プロセッサ2は、評価結果を表示装置7の画面に表示させる表示処理を実行する表示処理部を備える。
【0042】
次に、
図3を参照して、プロトコル評価支援装置1におけるプロトコル評価支援処理の流れの一例について説明する。
【0043】
図3に示すように、プロトコル評価支援装置1によるプロトコル評価支援処理が開始されると、まずはステップS301において、プロトコル設定部201により、所定のプロトコルが評価対象として設定する設定ステップが実行される。すなわちプロトコル設定部201により設定処理が実行される。一例として、プロトコル設定部201は、ユーザによる入力操作を受け付けて、操作指示に応じてプロトコルデータベース10に記憶されている所定のプロトコルデータを取得し、そのプロトコルを評価対象として設定する。
【0044】
次に、ステップS302において、同時合流記号作成部202により作成処理が実行される。すなわち、プロトコル中のS記号が付与されている合流部分にSMe記号を作成する作成ステップが実行される。プロトコル設定部201により、
図4Bに示すプロトコルデータ402が取得された場合、同時合流記号作成部202は、S記号100に複数の矢印120が入りこんでいる箇所を検出し、検出した箇所のS記号100をSMe記号130に置き換えたプロトコルデータ403を作成する(
図5A参照)。
【0045】
次に、ステップS303において、同時分岐記号作成部203により作成処理が実行される。すなわち、プロトコル中のS記号が付与されている分岐部分にSRe記号を作成する作成ステップが実行される。例えば、同時合流記号作成部202によりプロトコルデータ403が作成された場合、同時分岐記号作成部203は、S記号100から複数の矢印120が出ている箇所を検出し、
図5Bに示すように、検出した箇所のS記号100をSRe記号140に置き換えたプロトコルデータ404を作成する。
【0046】
なお、プロトコル中に複数個のSMe記号130が作成される場合、個別の番号などを付与してそれぞれを区別できるようにする。例えば、一つ目のSMe記号を「SMe1」と表し、二つ目のSMe記号を「SMe2」と表す。同様に、プロトコル中に複数のSRe記号140が作成される場合、個別の番号などを付与してそれぞれを区別できるようにする。例えば、一つ目のSRe記号を「SRe1」と表し、二つ目のSRe記号を「SRe2」と表す。
【0047】
ステップS304では、経路展開部204により展開処理が実行される。すなわち、作成処理の後のプロトコルを、SMe記号(同時合流記号)、SRe記号(同時分岐記号)に基づいて展開する展開ステップが実行される。一例として、経路展開部204は、
図5Bに示すプロトコルデータ404に基づいて、プロトコルを、工程手順に含まれる複数の各経路に展開する。その際、プロトコルに表現されている工程手順の合流部分と分岐部分とをすべて「個別」の意味合いで扱い、工程手順に含まれる複数の経路を個別の経路に展開する(
図6参照)。
【0048】
図6に示す展開結果のプロトコルデータ601は、プロトコルデータ404で示される合流部分および分岐部分にて取りうるすべての経路の組み合わせを並べたものとなる。言い換えれば、この展開結果のデータ601には、例えば、複数の要素110を同時に一つの次要素110で使用したり、1つの要素110を同時に複数の次要素110で使用したりする場合における取り扱いが反映されていない。すなわち、この展開後のプロトコルには、余分な要素110を組み合わせた経路が含まれる。例えば、ポリエチレンとポリプロピレンとを同時に用いて溶融成形を行う場合、溶融成形の回数はポリエチレンとポリプロピレンとを個別に成形する場合に比べて少なくなるはずである。
【0049】
そこで、ステップS305およびステップS306では、個別の経路のうち、SMe記号130よりも後の工程における要素110の全てが重複するものを除去し、SRe記号140よりも前の工程における要素110の全てが重複するものを除去する除去ステップが実行される。まずは、ステップS305において、後方重複除去部205が、SMe記号(SMe1)130よりも後の工程の要素110が同一となっている経路を検出し、重複している要素110を統合して1つだけを残す除去処理を実行する。この除去処理後、SMe記号(SMe1)は全て除去する。ただし、この処理において、SRe記号(SRe1)についてはそのまま残しておく。
【0050】
例えば、
図7Aに示すように、プロトコルデータ601にはSMe記号(SMe1)130よりも後方の各要素110が同一となる3組の経路A,B,Cが存在する。この場合、3組の経路A,B,Cについて、それぞれ一つを残して、SMe記号(SMe1)130よりも後方の各要素110を除去する。すなわち後方重複除去部205は、
図7Bに示すように、3組の経路A,B,Cについて、それぞれ一つを残して、SMe記号(SMe1)130よりも後方の各要素110を除去したプロトコルデータ602を作成する。なお、経路中に複数のSMe記号(SMe1,SMe2等)130が存在する場合、番号の異なるSMe記号130毎に前述の除去処理を逐次実行する。
【0051】
次に、ステップS306では、前方重複除去部206が、SRe記号(SRe1)140よりも前工程の要素110が同一となっている経路を検出し、重複している要素110を統合して1つだけを残す除去処理を実行する。この除去処理後、SRe記号(SRe1)140を全て除去する。
【0052】
例えば、
図8Aに示すように、プロトコルデータ602には、SRe記号(SRe1)140よりも前方の各要素110が同一となる3つの経路D,E,Fが存在する。この場合、3組の経路D,E,Fについて、それぞれ一つを残して、SRe記号(SRe1)140よりも前方の各要素110を除去する。すなわち前方重複除去部206は、
図8Bに示すように、3組の経路D,E,Fについて、それぞれ一つを残して、SRe記号(SRe1)140よりも前方の各要素110を除去したプロトコルデータ801を作成する。なお、経路中に複数のSRe記号(SRe1,SRe2等)140が存在する場合、番号の異なるSRe記号140毎に前述の除去処理を逐次実行する。これにより、プロトコルデータ801中には、実験工程において実際に必要な要素110のみが残存する。
【0053】
このように、後方重複除去部205および前方重複除去部206によって重複する要素110が除去された後、ステップS307にて、算出ステップの一つとして、残存する各要素110に評価値を対応させるステップが実行される。すなわち、評価値対応部207が、残存する各要素110に評価値を対応させる処理を実行する。評価値対応部207は、例えば、評価値データベース11から評価値データを取得し、残存した各要素110のそれぞれに対して個別評価値を対応させる。評価値対応部207は、例えば、
図9に示すように、プロトコルデータ801と、各要素と個別評価値との対応関係を示す評価値データ802とに基づいて、各要素110のそれぞれに評価値を対応させたデータ803を作成する。
【0054】
なお、評価値データは、例えば、ユーザが入力装置8を操作して適宜入力することもできる。つまり、評価値対応部207は、ユーザによる個別評価値の入力操作を受け付けて、受け付けた個別評価値を除去処理後に残存する要素のそれぞれに対応させることもできる。また、評価値対応部207が評価値データベース11から取得した評価値データを、ユーザが必要に応じて修正できるようにしてもよい。また評価値の項目は、任意に設定することができる。例えば、プロトコルが材料研究の実験手順の場合、評価値の項目としては、コストのほか、例えば、作業工数、所要時間等が挙げられる。
【0055】
次に、ステップS308で、各要素に対応させた個別評価値に基づいて、工程手順の全体評価値を算出する算出ステップが実行される。すなわち、評価値算出部208が、評価値対応部207が各要素110に対応させた評価値を集計し、プロトコル全体での評価値である全体評価値を算出する。
図9に示す例では、データ803に含まれる「合計:8000」という値がプロトコルの全体評価値であり、評価値算出部208による算出結果である。
【0056】
その後、ステップ309において、評価値の算出結果として、例えば、評価値算出部208により算出されたプロトコルの全体評価値を表示装置7の画面に表示させる表示ステップが実行される。すなわち、ステップS309では、プロトコルの全体評価値を含む算出結果がユーザに対して出力される。
【0057】
なお、上記のプロトコル評価支援処理において、ステップS302とステップS303とは、互いに順序を入れ替えることができ、入れ替えた場合でもプロトコルの評価値への影響は生じない。同様に、ステップS305とステップS306とは、互いに順序を入れ替えることができ、入れ替えた場合でもプロトコルの評価値への影響は生じない。
【0058】
図10は、プロトコル評価支援装置の表示画面の一例を示す図である。
図10に示すように、プロトコル評価支援処理を実行する際、表示装置7には、例えばGUI(Graphical User Interface)を構成する構成要素を含む入出力画面1000が表示される。一例として、入出力画面1000は、第1表示部1001、第2表示部1002、第3表示部1003および第4表示部1004で構成される。
【0059】
第1表示部1001には、評価対象となるプロトコルの設定を行うためのGUIの構成要素が表示される。例えば、第1表示部1001には、ユーザがプロトコルIDを入力するID入力欄1005と、プロトコルIDを確定させるプロトコル選択ボタン1006と、が表示される。また第2表示部1002には、評価対象として設定されたプロトコル1007が表示される。一例として、第2表示部1002には、上述した作成処理が実行される前のプロトコルが表示される。
【0060】
第3表示部1003には、上述した除去処理後にプロトコル中に残存した各要素110に対応する個別評価値を対応させるためのGUIの構成要素等が表示される。例えば、第3表示部1003には、除去処理後に残存した各要素110の一覧1008が表示されると共に、各要素110に対応する個別評価値を入力する評価値入力欄1009と、入力した個別評価値を確定させる評価値入力確定ボタン1010と、が表示される。また第4表示部1004には、評価値の算出結果であるプロトコルの全体評価値1011が表示される。
【0061】
ユーザは、第1表示部1001において、ID入力欄1005に所定のプロトコルIDを入力し、プロトコル選択ボタン1006をクリックする。これにより、プロトコルデータベース10から所定のプロトコルデータが読み出され、入力されたIDに対応するプロトコル1007が第2表示部1002に表示される。
図10に示す例では、第1表示部1001のID入力欄1005に、プロトコルIDとして「1」が入力されており、第2表示部1002には、ID:1に対応するプロトコル1007が表示されている。
【0062】
その際、上述したプロトコル評価支援処理が実行され、第3表示部1003には、残存した各要素110の一覧1008が表示される。また、評価値入力欄1009には、評価値データベース11から読み出された評価値データに基づいて、各要素110に対応する個別評価値が自動入力されて表示される。ユーザは評価値入力欄1009に入力された個別評価値を必要に応じて書き換えた後、評価値入力確定ボタン1010をクリックする。これにより、各要素110に対応する個別評価値が確定され、第4表示部1004には、プロトコルの全体評価値1011が表示される。
【0063】
図10に示す例では、第3表示部1003に、「ポリエチレン」、「ポリプロピレン」および「溶融成形」の各要素に対して、個別評価値(コスト)として「100」、「200」および「400」の値が表示されている。また、第4表示部1004には、プロトコルの全体評価値1011として、個別評価値の合計である「8000」という値が表示されている。
【0064】
このように本実施形態に係るプロトコル評価支援装置1では、プロトコルの評価値についての算出結果が比較的容易に得られる。このため、工程手順を設定する際のユーザの作業が省力化される。また複数の作業工程を含むプロトコルが、余分な重複要素を含まない簡潔な有向グラフの形で格納されるため、データベースあるいは記憶装置の容量を効率的に用いることができる。さらには、ユーザがプロトコルを確認して内容を把握する際の所要時間も削減できる。
【0065】
なお、本実施形態では、入出力画面1000の第3表示部1003に個別評価値が自動入力され、ユーザがこの個別評価値を書き換えられるようにしたが、個別評価値は自動入力されることなく、例えば、入力装置8を介してユーザが入力するようにしてもよい。例えば、評価値対応部207が、ユーザによる個別評価値の入力操作を受け付けて、受け付けた個別評価値を除去処理後に残存する要素のそれぞれに対応させるようにしてもよい。
【0066】
また、本実施形態では、表示装置7に表示される入出力画面1000の一例として、第2表示部1002に、作成処理が実行される前のプロトコル1007が表示される場合について説明したが、第2表示部1002に表示されるプロトコル1007はこれに限定されない。例えば、
図11に示すように、第2表示部1002には、作成処理が実行された後のプロトコル1007Aが表示されるようにしてもよい。すなわち、S記号100がSMe記号130またはSRe記号140に置き換えられたプロトコル1007Aが第2表示部1002に表示されるようにしてもよい。
【0067】
また、本実施形態では、表示装置7に表示される入出力画面1000の一例として、一つのプロトコルのみが表示される場合について説明したが、表示装置7の入出力画面1000には、複数のプロトコルが表示されるようにしてもよい。さらに、表示装置7に表示される入出力画面1000として、コストである一つの個別評価値および全体評価値が表示される場合について説明したが、複数種の個別評価値および全体評価値が表示されるようにしてもよい。
【0068】
例えば、
図12に示す例では、第1表示部1001のID入力欄1005に、2つのプロトコルID「1」「2」が入力され、第2表示部1002には、ID:1,2のそれぞれに対応する2つのプロトコル1007,1007Bが表示される。第4表示部1004には、プロトコルの全体評価値1011として、2つのプロトコルIDに対応するに2つの値「8000」および「12000」が表示される。
【0069】
また、
図13に示す例では、第3表示部1003に、個別評価値の項目を入力する項目入力欄1012と、個別評価値の列の追加を確定するボタンである「評価値の列を追加」ボタン1013と、が設定されている。ユーザが、項目入力欄1012に個別評価値の項目名として、例えば、「所要時間」を入力し、上記ボタン1013をクリックすることで、各要素に対応する個別評価値の欄が追加設定される。これにより、第3表示部1003には、評価値入力欄1009として、個別評価値1である「コスト」に加え、個別評価値2である「所要時間」の項目が追加設定され、各要素に対応する所要時間(個別評価値2)の入力が可能となる。また、第4表示部1004には、プロトコルの全体評価値1011として、コストである全体評価値1に加えて、所要時間である全体評価値2の欄が追加設定される。
【0070】
また上述の実施形態では、プロトコル中で同時合流および同時分岐となる部分に、「同時」を意味するS記号100を付与していた。すなわち、プロトコル評価支援処理を行う際、表示装置7の入出力画面1000を構成する第2表示部1002には、矢印120が繋がる要素110の一つとして、S記号100が表示されるようにした。しかしながら、「同時」を意味するS記号100の表示形式は、これに限定されるものではない。例えば、
図14に示すように、第2表示部1002に表示されるプロトコル1401中、同時合流および同時分岐となる部分の矢印120に対して「同時」の意味を割り当て、その矢印120に近接してS記号100を表示するようにしてもよい。
【0071】
この場合、S記号100を要素110の一つとして扱うことが不要となる。つまりプロトコルに含まれる要素の数が少なく抑えられる。したがって、複数の経路を含む工程手順の内容を有向グラフであるプロトコルとして簡潔に表現することが可能となる。また、一例として、
図14に示すプロトコル1401では、矢印120の上部にS記号100を表記しているが、矢印120の色や形を他の矢印120とは異なるものとすることで、矢印120自体がS記号100を兼ねるようにしてもよい。
【0072】
<実施形態2>
図15A、
図15Bおよび
図15Cは、実施形態2に係るプロトコル評価支援装置の表示画面の一例を示す図である。なお、
図15A、
図15Bおよび
図15Cでは、表示装置7に表示される入出力画面1000を構成する第2表示部1002のみを示している。実施形態2に係る入出力画面1000を構成する第1表示部1001、第3表示部1003および第4表示部1004は、実施形態1と同様であるため図示は省略している。
【0073】
実施形態1では、S記号100が付与されたプロトコルデータがプロトコルデータベース10に記憶されている場合について説明した。すなわち実施形態1では、プロトコル設定部201が、S記号100が付与されたプロトコルデータをプロトコルデータベース10等から読み出す例について説明した。
【0074】
これに対し、実施形態2は、プロトコルデータベース10に記憶されているプロトコルデータにはS記号100が付与されていない例である。つまり実施形態2では、プロトコル設定部201が、S記号が付与されていないプロトコルデータをプロトコルデータベース10から読み出し、その後、ユーザの操作指示により、読み出されたプロトコルにS記号100を付与する。例えば、プロセッサ2が備えるプロトコル設定部201が、上述した作成処理の前に、ユーザによるS記号100の入力操作を受け付け、評価対象として設定されたプロトコル中の所定位置にS記号100を付与する付与処理を、実行する。
【0075】
このため、実施形態2では、プロトコル設定部201により所定のプロトコルが取得されて評価対象として設定されると、
図15Aに示すように、第2表示部1002には、S記号100が付与されていないプロトコル1501が表示される。そして、例えば、プロトコル設定部201がユーザによる入力操作を受け付けて、
図15Bおよび
図15Cに示すように、有向グラフで表されるプロトコル1501の所定位置にS記号100を適宜追加する。なお、第2表示部1002には、プロトコル1501中にS記号100の追加をユーザが指示するためのS記号作成ボタン1502が表示されている。
【0076】
例えば、プロトコル1501中の同時合流する部分にS記号100を追加作成する場合、まずは、
図15Bに示すように、第2表示部1002に表示されているプロトコル1501において、同時合流する部分の複数の矢印120を選択する。この例では、2つの矢印120が選択されており、選択された2つの矢印120が図中に点線で示されている。
【0077】
このように複数の矢印120が選択された状態で、ユーザはS記号作成ボタン1502をクリックする。これにより、
図15Cに示すように、選択されている2つの矢印120に対応する部分にS記号100が付与されたプロトコル1503が作成されて第2表示部1002に表示される。なお、その後は、実施形態1と同様に、除去処理、および算出処理が適宜実行される。
【0078】
このような実施形態2に係るプロトコル評価支援装置1においても、実施形態1と同様に、プロトコルの評価値についての算出結果が比較的容易に得られる。このため、作業工程を設定する際のユーザの作業が省力化される。また、複数の経路を含む工程手順の内容が有向グラフであるプロトコルとして簡潔に表現される。このため、データベースあるいは記憶装置の容量を効率的に用いることができる。さらには、ユーザがプロトコルを確認して内容を把握する際の所要時間も削減できる。
【0079】
なお、実施形態2では、ユーザが、プロトコル1501中にS記号100を追加するようにしたが、S記号100と共に、要素110や矢印120を追加または削除できるようにしてもよい。
【0080】
<比較例1>
図16および
図17は、比較例1に係るプロトコル評価支援方法を説明する図である。
【0081】
比較例1のプロトコル評価支援方法は、
図16に示すように、SMe記号、SRe記号を用いずに作業手順を有向グラフとして表現したプロトコル1601を用い、プロトコルに含まれる経路を展開する際、各経路の「合流」と「分岐」とを全て「個別」の意味合いで扱う点で、実施形態1のプロトコル評価支援方法と相違する。なお、プロトコルとして表現される作業工程としては、実施形態1と同様に次の内容としている。
【0082】
作業工程:「ポリエチレンとポリプロピレンを両方使用して、またポリアミドは単独で使用して溶融成形し、引張試験と衝撃試験を行う。引張試験の結果(データ)は、破断強度の解析と機械学習に用いる。」
【0083】
作業手順をSMe記号、SRe記号を用いずに有向グラフとして表現したプロトコル1601では、ポリエチレンとポリプロピレンを同時に使用して溶融成形を行うといった内容や、引張試験で得られたデータを破断強度解析と機械学習へ同時に用いる(同じものを用いる)といった内容を表現することができていない。
【0084】
比較例1では、
図16に示すように、このプロトコル1601に基づいて、作業工程の経路を展開した結果であるデータ1602が得られるが、このデータ1602においてどれが余分な要素なのか特定することはできない。
【0085】
このため、
図17に示すように、展開結果であるデータ1602と、各要素と個別評価値との対応関係を示す評価値データ1603とに基づいて、プロトコル全体の評価値を含むデータ1604を作成しても、適正な全体評価値を得ることができない。上記プロトコルの全体評価値の適正値は、実施形態1で示したように「8000」である。しかしながら、比較例1では、余分な要素が含まれているために全体評価値は「14700」となる。このように比較例1のプロトコル評価支援方法は、プロトコルの全体評価値が過剰に算出されてしまうため、プロトコル評価支援の用に供することは難しい。
【0086】
<比較例2>
図18は、比較例2に係るプロトコル評価支援方法を説明する図である。
【0087】
図18に示すように、比較例2のプロトコル評価支援方法は、作業工程における「合流」と「分岐」とを全て「個別」の意味合いとして、SMe記号、SRe記号を用いずに、作業手順を有向グラフとして表現したプロトコル1801を作成し、このプロトコル1801からプロトコルの全体評価値を算出している点で、実施形態1のプロトコル評価支援方法と相違する。なお、プロトコルとして表現される作業工程は、実施形態1と同様に次の内容としている。
【0088】
作業工程:「ポリエチレンとポリプロピレンを両方使用して、またポリアミドは単独で使用して溶融成形し、引張試験と衝撃試験を行う。引張試験の結果(データ)は、破断強度の解析と機械学習に用いる。」
【0089】
図18に示すプロトコル1801では、作業工程を有向グラフとして表現しているが、プロトコル中の「合流」と「分岐」とを、全て「個別」の意味合いとしている。このため、プロトコルを作成する際には、作業経路に含まれるすべての経路を個別に表現する必要がある。
【0090】
比較例2のプロトコル評価支援方法では、比較例1の場合とは異なり、
図18に示すプロトコル1801と、各要素と個別評価値との対応関係を示す評価値データ1802とに基づいて、プロトコル全体の評価値を含むデータ1803を作成した場合、プロトコルの全体評価値として適正な値を得ることができる場合がある。
【0091】
しかしながら、比較例2のプロトコル評価支援方法では、プロトコルの全体評価値として、常に適正な値が得られるとは限らない。また、比較例2のプロトコル評価支援方法では、冗長な表現方法をとらざるを得ないことから非効率である。すなわち1つのプロトコル中で、同じ要素が何度も出現する表現となってしまう。このため、比較例2のプロトコル評価支援方法は、データの記憶容量を過剰に必要とするほか、ユーザが確認する際の内容把握の困難化や確認時間の増加を招くことになり、プロトコル評価支援の用に供することは難しい。
【符号の説明】
【0092】
1…プロトコル評価支援装置、2…プロセッサ、3…メモリ、4…記憶装置、5…ネットワークアダプタ、6…システムバス、7…表示装置、8…入力装置、9…ネットワーク、10…プロトコルデータベース、11…評価値データベース、201…プロトコル設定部、202…同時合流記号作成部、203…同時分岐記号作成部、204…経路展開部、205…後方重複除去部、206…前方重複除去部、207…評価値対応部、208…評価値算出部