IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社Lean on Meの特許一覧

特開2024-173222所持者支援タグ及びICタグ提供方法
<>
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図1
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図2
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図3
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図4
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図5
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図6
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図7
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図8
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図9
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図10
  • 特開-所持者支援タグ及びICタグ提供方法 図11
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173222
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】所持者支援タグ及びICタグ提供方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/00 20060101AFI20241205BHJP
   G06K 19/07 20060101ALI20241205BHJP
   G06Q 30/0601 20230101ALI20241205BHJP
【FI】
G09F3/00 M
G06K19/07 230
G06Q30/0601 320
G09F3/00 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091482
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】516331993
【氏名又は名称】株式会社Lean on Me
(74)【代理人】
【識別番号】100126675
【弁理士】
【氏名又は名称】福本 将彦
(72)【発明者】
【氏名】志村 駿介
【テーマコード(参考)】
5L030
5L049
【Fターム(参考)】
5L030BB24
5L030BB58
5L049BB24
5L049BB58
(57)【要約】
【課題】 障がい者など支援を要する者が周囲の者から適切な支援を得ることを可能にする所持者支援タグを提供する。
【解決手段】 本開示による所持者支援タグは、記憶媒体を有するICタグを有している。記憶媒体には、所持者支援タグの所持者への周囲の者による適切な支援の仕方が電子データとして書き込まれている。また、所持者支援タグは、所持者が支援を要することを表示する標識を、更に有している。記憶媒体に書き込まれている電子データには、所持者に適した支援の仕方を静止画・動画・又は音声により教示するデータが格納されているウェブ上のアドレスへのリンクが含まれている。
【選択図】 図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所持者支援タグであって、
記憶媒体を有するICタグを備え、
前記記憶媒体には、前記所持者支援タグの所持者への周囲の者による適切な支援の仕方が電子データとして書き込まれている、所持者支援タグ。
【請求項2】
前記所持者が支援を要することを表示する標識を、更に備える、請求項1に記載の所持者支援タグ。
【請求項3】
前記記憶媒体に書き込まれている前記電子データは、前記所持者に適した支援の仕方が、電子データとして格納されているウェブ上のアドレスへのリンクを含んでいる、請求項1に記載の所持者支援タグ。
【請求項4】
前記ウェブ上のアドレスに格納されている前記電子データは、前記所持者に適した支援の仕方を静止画・動画・又は音声により教示するデータを含んでいる、請求項3に記載の所持者支援タグ。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の所持者支援タグが備える前記ICタグを提供する方法であって、
ネットワークに接続されたサーバが、前記ネットワークを通じて注文者端末から送られる注文を受信することと、
前記サーバが、受信した前記注文に応じて、提供すべきICタグの前記記憶媒体に書き込むべき前記電子データの入力フォームを前記注文者端末に送信することと、
前記サーバが、前記入力フォームに入力され、前記注文者端末から返送された電子データを受信することと、
前記サーバが、受信した前記電子データを、提供すべき前記ICタグの前記記憶媒体に書き込むことと、を含むICタグ提供方法。
【請求項6】
前記注文者端末に送信される前記入力フォームは、複数通りの支援の仕方を列挙し、その中から前記所持者支援タグの所持者に適した項目を選択させる形式のデータを含んでいる、請求項5に記載のICタグ提供方法。
【請求項7】
前記記憶媒体に前記電子データが書き込まれた前記ICタグを、注文者に向けて発送すること、を更に含む、請求項5に記載のICタグ提供方法。
【請求項8】
前記電子データが書き込まれた前記ICタグに、所持者が支援を要することを表示する標識を付随させること、を更に含み、
前記ICタグを、前記注文者に向けて発送することは、付随する前記標識とともに前記ICタグを、前記注文者に向けて発送することを含む、請求項7に記載のICタグ提供方法。
【請求項9】
前記サーバが、受信した前記電子データを、提供すべき前記ICタグの前記記憶媒体に書き込むことは、前記ICタグの所持者又は前記周囲の者の使用後の感想を求めるアンケートと、当該アンケートへの回答の返送先としての前記サーバのウェブ上のアドレスと、を含めて、前記記憶媒体に書き込むことを含む、請求項5に記載のICタグ提供方法。
【請求項10】
前記アンケートは、前記ICタグの所持者又は前記周囲の者の使用後の感想についての選択肢を含んでいる、請求項9に記載のICタグ提供方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支援を要する所持者が周囲の者から適切な支援を得ることを可能にする、所持者支援タグ及びICタグ提供方法に関する。
【背景技術】
【0002】
障がい者が、公道・公共の場・商業施設などにおいて、周囲の者の支援・配慮を得易くするために、ヘルプマーク(赤地に白十字+白ハートマーク:東京都作成)等の障がい者標識(福祉マーク)の利用が広まっている。例えばヘルプマークについては、非特許文献1に次のように述べられている。
「義足や人工関節を使用している方、内部障害や難病の方、または妊娠初期の方など、外見から分からなくても援助や配慮を必要としている方々が、周囲の方に配慮を必要としていることを知らせることができるマークです(JIS規格)。
ヘルプマークを身に着けた方を見かけた場合は、電車・バス内で席をゆずる、困っているようであれば声をかける等、思いやりのある行動をお願いします。」
【0003】
しかし、ヘルプマーク等を装着した障がい者が、見た目でわかりづらく、知的・発達・精神障がいのある人など、支援が届きにくい内部障がい者である場合には、ヘルプマーク等は視認できても、外見からはどのような支援が必要なのかが分からず、適切な支援が得られない、という問題があった。なお、特許文献1,2には、障がい者が所持するICタグの情報を、エスカレータに設置されたICタグリーダが読み出し、読み出した情報に基づいてエスカレータの動作を自動で制御する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6874180号公報
【特許文献2】特開2006-321601号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】内閣府ウェブサイト「障害者に関係するマークの一例」(https://www8.cao.go.jp/shougai/mark/mark.html)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記の問題点に鑑みてなされたもので、障がい者など支援を要する者が周囲の者から適切な支援を得ることを可能にする所持者支援タグ及びICタグ提供方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明のうち第1の態様によるものは、所持者支援タグであって、記憶媒体を有するICタグを備えている。前記記憶媒体には、前記所持者支援タグの所持者への周囲の者による適切な支援の仕方が電子データとして書き込まれている。
【0008】
この構成による所持者支援タグを所持すると、周囲の者は、スマートフォンなどの携帯端末を用いてICタグの記憶媒体に書き込まれている電子データを読み取り、携帯端末の画面に表示することにより、所持者に適切な支援の仕方を認識することができる。それにより、所持者は周囲の者から適切な支援を受けることができる。なお、「周囲の者」とは、所持者に適切な支援ができる程度に近くに居る者の意であり、一般公衆に限らず、所持者が利用する公共施設・商業施設などにおいて支援が予定されている係員、例えば列車の駅の駅員、テーマパークのゲートに待機する補助者などをも含む。
【0009】
本発明のうち第2の態様によるものは、第1の態様による所持者支援タグであって、前記所持者が支援を要することを表示する標識を、更に備えている。
【0010】
この構成による所持者支援タグを所持すると、周囲の者は、まず標識を目視することにより所持者が支援を要することを認識することができ、それにより、スマートフォンなどの携帯端末を用いてICタグの記憶媒体に書き込まれている電子データを読み取る、という行動に導かれ易くなる。ヘルプマークは標識の一例である。
【0011】
本発明のうち第3の態様によるものは、第1又は第2の態様による所持者支援タグであって、前記記憶媒体に書き込まれている前記電子データは、前記所持者に適した支援の仕方が、電子データとして格納されているウェブ上のアドレスへのリンクを含んでいる。
この構成によれば、ICタグの記憶媒体の記憶容量が限られているにも拘わらず、周囲の者は、携帯端末の画面に表示されるリンクをアクティブにすることにより、所持者支援タグの所持者に適切な支援の仕方を認識することができる。
【0012】
本発明のうち第4の態様によるものは、第3の態様による所持者支援タグであって、前記ウェブ上のアドレスに格納されている前記電子データは、前記所持者に適した支援の仕方を静止画・動画・又は音声により教示するデータを含んでいる。
この構成によれば、ICタグの記憶媒体の記憶容量が限られているにも拘わらず、周囲の者は、携帯端末の画面に表示されるリンクをアクティブにすることにより、所持者支援タグの所持者に適切な支援の仕方を、静止画・動画・又は音声という分かり易い形式の情報により、認識することができる。
【0013】
本発明のうち第5の態様によるものは、第1~第4のいずれかの態様による所持者支援タグが備える前記ICタグを提供する方法であって、以下の(a)~(d)を含んでいる。(a)ネットワークに接続されたサーバが、前記ネットワークを通じて注文者端末から送られる注文を受信すること。(b)前記サーバが、受信した前記注文に応じて、提供すべきICタグの前記記憶媒体に書き込むべき前記電子データの入力フォームを前記注文者端末に送信すること。(c)前記サーバが、前記入力フォームに入力され、前記注文者端末から返送された電子データを受信すること。(d)前記サーバが、受信した前記電子データを、提供すべき前記ICタグの前記記憶媒体に書き込むこと。
【0014】
この構成によれば、所持することが予定される者に適した支援の仕方が電子データとして書き込まれたICタグが、注文に応じて作成される。
【0015】
本発明のうち第6の態様によるものは、第5の態様によるICタグ提供方法であって、前記注文者端末に送信される前記入力フォームは、複数通りの支援の仕方を列挙し、その中から前記所持者支援タグの所持者に適した項目を選択させる形式のデータを含んでいる。
【0016】
この構成によれば、所持者支援タグの所持者に適した支援の仕方を入力する作業が、容易に行い得る。
【0017】
本発明のうち第7の態様によるものは、第5又は第6の態様によるICタグ提供方法であって、(e)前記記憶媒体に前記電子データが書き込まれた前記ICタグを、注文者に向けて発送すること、を更に含んでいる。
【0018】
この構成によれば、ICタグの注文者は、所持することが予定される者に適した支援の仕方が電子データとして書き込まれているICタグを、入手することができる。
【0019】
本発明のうち第8の態様によるものは、第7の態様によるICタグ提供方法であって、(f)前記電子データが書き込まれた前記ICタグに、所持者が支援を要することを表示する標識を付随させること、を更に含んでいる。(e)前記ICタグを、前記注文者に向けて発送することは、付随する前記標識とともに前記ICタグを、前記注文者に向けて発送することを含んでいる。
この構成によれば、ICタグの注文者は、標識が付随した形態でICタグを入手することができる。
【0020】
本発明のうち第9の態様によるものは、第5から第8のいずれかの態様によるICタグ提供方法であって、(d)前記サーバが、受信した前記電子データを、提供すべき前記ICタグの前記記憶媒体に書き込むことは、前記ICタグの所持者又は前記周囲の者の使用後の感想を求めるアンケートと、当該アンケートへの回答の返送先としての前記サーバのウェブ上のアドレスと、を含めて、前記記憶媒体に書き込むことを含んでいる。
【0021】
この構成によれば、ICタグの所持者の周囲の者は、携帯端末の画面に表示されるアンケートに回答し、リンクをアクティブにすることにより、所持者又は周囲の者の使用後の感想を、サーバに返送することができる。サーバを管理する者は、返送された感想に基づいて、入力フォームを改善することができる。
【0022】
本発明のうち第10の態様によるものは、第9の態様によるICタグ提供方法であって、前記アンケートは、前記ICタグの所持者又は前記周囲の者の使用後の感想についての選択肢を含んでいる。
この構成によれば、ICタグの所持者の周囲の者は、携帯端末の画面に表示される選択肢を選択するという簡単な操作により、所持者又は周囲の者の使用後の感想を、サーバに返送することができる。サーバを管理する者は、返送された感想に基づいて入力フォームを改善する作業を、より容易に行うことができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように本発明によれば、支援を要する者が周囲の者から適切な支援を得ることを可能にする所持者支援タグ及びICタグ提供方法が実現する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の一実施の形態による所持者支援タグの外観を例示する正面図である。
図2図1の所持者支援タグが有するICタグの回路構造を例示するブロック図である。
図3図1の所持者支援タグの使用方法を例示する概略図である。
図4図1の所持者支援タグが有するICタグから読み取られ、画面に表示されたタグデータを例示する概略図である。
図5図1の所持者支援タグを取り扱うシステムの構成を例示する概略図である。
図6図5のシステムを構成するタグ制作サーバのハードウェア構成を例示するブロック図である。
図7図5のシステムが図1の所持者支援タグを取り扱う手順の流れを例示するシーケンス図である。
図8図1の所持者支援タグに書き込まれるタグデータの入力フォームを例示する概略図である。
図9】タグの注文者が入力を終えた後の図8の入力フォームを例示する概略図である。
図10図9の入力後の入力フォームに基づいて制作されるタグデータを例示する概略図である。
図11図10のタグデータに組み込まれるアンケートを例示する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、本発明の一実施の形態による所持者支援タグの外観を例示する正面図である。この所持者支援タグ1は、ICタグ3、タグケース5、紐7を有している。ICタグ3は、図示例ではカード状である。タグケース5は、ICタグ3を収納するケースであり、図示例では、透明で柔軟なプラスチック製である。紐7は、タグケース5を吊り下げるもので、ICタグ3の所持者の首に掛けることにより、ICタグ3を所持者の胸に保持する役割を果たす。
【0026】
図示例では、ICタグ3の前面には、所持者が支援を要することを表示する標識9が付されている。標識9は、一例としてICタグ3に印刷される。図示例とは別の例として、標識9は、タグケース5に付されていても良い。標識9は、例えば、ヘルプマークなどの障がい者標識(福祉マーク)である。図示例の標識9は仮想例である。所持者支援タグ1の所持者の周囲の者(公共・商業施設の係員を含む)は、標識9を目視することにより、所持者が支援を要することを認識することができる。
【0027】
図2は、ICタグ3の回路構造を例示するブロック図である。ICタグ3は、アンテナ31、制御回路33及びメモリー(記憶媒体)35を有している。ICタグ3は、一例として、電池などの電源を内蔵しておらず、動作時にはアンテナ31を通じて外部からエネルギーの供給を受ける。制御回路33は、アンテナ31に接続されるとともに、メモリー35に接続され、メモリー35を制御する。メモリー35には、所持者支援タグ1の所持者への周囲の者による適切な支援の仕方が電子データとして書き込まれている。メモリー35は、一例として不揮発性の半導体メモリである。
【0028】
図示例のように、スマートフォン37などの携帯端末には、アンテナ39及び制御回路41を有することにより、ICタグ3に対してICタグリーダとして機能し得るタイプのものが知られている。スマートフォン37のICタグリーダとしての機能を起動すると、制御回路41の働きによりアンテナ39から電磁波43が放射される。スマートフォン37をICタグ3に近づけると、電磁波43がICタグ3のアンテナ31により受信され、それにより、ICタグ3の制御回路33、メモリー35等に電力が供給される。制御回路33が動作することにより、メモリー35に記憶されているデータ(すなわちタグデータ)が、メモリー35から読み出され、アンテナ31を通じて電磁波に載せて放射される。放射された電磁波は、スマートフォン37のアンテナ39により受信され、制御回路41の働きにより、メモリー35のデータが取り出される。取り出されたデータは、スマートフォン37のメモリー(図示略)に保持され、かつ画面(図示略)に表示される。
【0029】
このようにして、スマートフォン37などの携帯端末を用いることにより、ICタグ3のメモリー35に記憶されているデータを読み出し、表示することができる。従って、所持者支援タグ1の所持者の周囲の者は、例えばスマートフォン37を用いてICタグ3のメモリー35に書き込まれているデータを読み取り、スマートフォン37の画面に表示することにより、所持者に適切な支援の仕方を認識することができる。それにより、所持者は周囲の者から適切な支援を受けることができる。
【0030】
図3は、所持者支援タグ1の使用方法を例示する概略図である。所持者支援タグ1を利用するユーザである所持者支援タグ1の所持者45は、紐7を首に掛けることにより、ICタグ3を胸の位置に保持する。周囲の者47は、所持者支援タグ1に付された標識9(図1参照)を目視することにより、まず、所持者45が支援を要することを認識することができる。それにより、周囲の者47は、例えばスマートフォン37を用いてICタグ3のメモリー35に記憶されているデータ(タグデータ)を読み取る、という行動に導かれることとなる。すなわち、周囲の者47は、スマートフォン37をICタグリーダとして機能させつつ、ICタグ3に近づける。その結果、メモリー35に記憶されているデータが、スマートフォン37に読み取られ、その画面49に表示される。
【0031】
図4は、ICタグ3から読み取られ、スマートフォン37の画面49に表示されたタグデータを例示する概略図である。図示例のタグデータには、所持者45の顔写真データ、氏名、呼び名、障害特性、行動を起こし易い声かけ、行動に移したときの方法、行動から次の行動に移行するのに苦労するか否か、苦労する場合のテクニック、男性か女性のどちらの声かけによく反応するか、年上か年下か同年代のいずれが良いか、などのデータが含まれている。このように、同一の障がいを有する者に共通の適切な支援の仕方だけでなく、所持者45に特有の適切な支援の仕方が、タグデータに含まれている。
【0032】
図5は、所持者支援タグ1を取り扱うシステムの構成を例示する概略図である。このシステム101を構成する機器には、所持者45が所持する所持者支援タグ1のほか、タグ制作者51が管理するタグ制作サーバ53、タグを注文する注文者55が操作する注文者端末57、所持者45の周囲の者47が操作する端末であるタグ読取端末59、及びウェブサーバ61が含まれる。タグ制作サーバ53、注文者端末57、タグ読取端末59、及びウェブサーバ61は、インターネット63などの広域のネットワークを通じて、相互に通信することが可能である。
【0033】
タグ制作者51は、所持者支援タグ1を制作する者であり、例えば、所持者支援タグ1の制作を業として行う会社等の組織である。図示例では、注文者端末57及びタグ読取端末59は、スマートフォンである。図2図4に例示したスマートフォン37は、タグ読取端末59の一例に該当する。ウェブサーバ61は、一例としてレンタルウェブサーバであり、その一部記憶領域を、タグ制作者51がレンタルしている。
【0034】
タグ制作サーバ53は、注文者端末57から所持者支援タグ1の注文を受けると、注文者端末57とのデータのやり取りを通じて、所持者支援タグ1のICタグ3のメモリー35に書き込むべきデータを完成させ、完成したデータをメモリー35に書き込む。データがメモリー35に書き込まれたICタグ3は、制作者51により、標識9(図1参照)が付され、更に、ケース5、紐7などのアクセサリーが付されて、所持者支援タグ1として、注文者55に届けられる。注文者55に届けられるものは、ICタグ3のみであってもよい。
【0035】
所持者支援タグ1は、注文者55から所持者45に手渡され、所持者45によって使用に供される。注文者55は、例えば、所持者45の保護者である。所持者45の周囲の者47は、スマートフォン37などのタグ読取端末59を用いて、所持者支援タグ1からデータを読取り、画面49に表示する。周囲の者47は、表示されたデータを参照することにより、所持者45に適切な仕方で支援を行うことができる。
【0036】
画面49に表示されるデータには、所持者45に適切な支援の仕方を、静止画・動画・又は音声により教示するデータが含まれていると、周囲の者47は適切な支援の仕方を容易に理解することができる。しかし、静止画・動画・音声などのデータは、データ量が大きいため、記憶容量が限られているICタグ3のメモリー35に書き込むのは必ずしも適切ではない。このため、タグ制作サーバ53は、データ量の大きい動画等のデータを、ウェブサーバ61にアップロードしておき、メモリー35に書き込むデータに、動画等のデータのウェブアドレスへのリンクを含めておく。周囲の者47は、タグ読取端末59の画面49に表示されたリンクをクリック(又はタッチ)することにより、動画等のデータを画面49に表示することができる。
【0037】
タグ制作サーバ53は、メモリー35に書き込むデータに、アンケートを付加することができる。アンケートは、所持者45又は周囲の者47による所持者支援タグ1の使用後の感想に関するものである。アンケートの形式は、回答に便宜な択一式であるのが望ましい。周囲の者47は、タグ読取端末59の画面49に表示されたアンケートに対して、所持者45の感想又は周囲の者47自身の感想を回答することができる。アンケートへの回答は、タグ制作サーバ53に返送される。タグ制作者51は、返送されたアンケート回答に基づいて、メモリー35に書き込むデータを改善することができる。
【0038】
図6は、システム101を構成するタグ制作サーバ53のハードウェア構成を例示するブロック図である。注文者端末57、タグ読取端末59、及びウェブサーバ61も、一例として同様に構成される。図示例では、タグ制作サーバ53は、パーソナルコンピュータと同様に構成されており、主要回路部12、入力装置11、表示装置13及びハードディスク装置(HDD)14を有している。また、主要回路部12は、CPU(Central Processing Unit;中央演算処理部)21、ROM(Read Only Memory)22、RAM(Random Access Memory)23、インタフェース(I/F)24、及び読取装置25を有している。
【0039】
CPU21は、ROM22及びRAM23に格納されたプログラムを実行する。ROM22には、例えば、タグ制作サーバ53の立ち上げ直後にOS(Operating System)の起動やハードウェアの設定を行うBIOS(Basic Input Output System)が格納されている。RAM23には、ハードディスク装置14に保存されているOS、アプリケーション等が必要に応じて展開され、CPU21による実行に供される。RAM23は、CPU21が処理を実行する際に生成されるデータを、一時的に格納するワークメモリとしても用いられる。
【0040】
インタフェース(I/F)24は、不図示のIDE(Integrated Device Electronics)コントローラ、LANコントローラ、入出力コントローラなどを有しており、これらの回路を通じて、入力装置11等の外部装置がCPU21に接続される。CPU21、ROM22、RAM23及びインタフェース24は、バスライン26を通じて互いに接続されている。
【0041】
入力装置11は、例えばキーボード、マウスなどを含み、操作者が手操作によりデータを入力するための装置である。表示装置13は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)装置であり、画像データを目視可能な画像として表示する装置である。ハードディスク装置14は、OS、アプリケーション等を格納すると共に、処理に要するデータを格納する。ハードディスク装置14に代えて、半導体メモリなど他の不揮発性記憶媒体を利用することも可能である。読取装置25は、プログラムやデータを記録したCD-ROM等の記録媒体27から、記録された内容を読み取る装置である。タグ制作サーバ53は、例えばLAN15を通じて、インターネット63等の広域のネットワーク(図5)に接続され、例えばTCP/IPプロトコルによる通信を実現する。LAN15は、インタフェース24に含まれているLANコントローラを通じてバスライン26に接続され、ルータ(図示略)を通じて広域ネットワークに接続される。
【0042】
図7は、システム101により所持者支援タグ1を取り扱う手順の流れを例示するシーケンス図である。所持者支援タグ1を利用する前提として、所持者支援タグ1の制作が行われなければならない。所持者支援タグ1の制作を担うのが、タグ制作サーバ53及びその管理者であるタグ制作者51である。まず、タグ制作サーバ53は、タグ制作者51の操作により、タグデータの入力フォームを制作する(S1)。入力フォームは、所持者45が適切な支援を得られるために必要なデータを、注文者55に入力してもらうための書式データである。
【0043】
図8は、所持者支援タグ1に書き込まれるタグデータの入力フォームを例示する概略図である。例示する入力フォーム64には、顔写真データを貼り付ける部位、所持者45の氏名・呼び名の記入欄のほか、障害特性・行動を起こし易い声かけなど、所持者45に適した支援の仕方に関する項目毎に、複数の(白抜き四角に続く)選択肢が表されている。入力フォーム64は、注文者55のタグ注文に応じて注文者端末57に送信され、注文者端末57の画面65に表示することができる。
【0044】
図7に戻って、タグ制作サーバ53は、入力フォームの制作(S1)と前後して、支援の仕方を静止画・動画・又は音声により教示するデータを制作する(S3)。制作された動画等のデータは、タグ制作サーバ53により、ウェブサーバ61にアップロードされる(S5)。ウェブサーバ61は、アップロードされた動画等のデータを、自身の記憶媒体(図示略)にウェブデータとして記録する(S7)。
【0045】
注文者55が注文者端末57を操作することにより、所持者支援タグ1の注文をタグ制作サーバ53に送信すると(S9)、タグ制作サーバ53は、制作されている入力フォーム64を注文者端末57に送信する(S11)。注文者55は、注文者端末57に入力フォーム64を受信すると、受信した入力フォーム64を画面65に表示し、表示した入力フォーム64に、所持者45の立場に立って所定事項を入力する(S13)。所持者45自身が、タグ注文(S9)、入力フォームへの入力(S13)が可能であれば、所持者45は注文者55であり得る。
【0046】
図9は、注文者55が入力を終えた後の入力フォーム64を例示する概略図である。例示する入力済み入力フォーム67には、顔写真データが、例えば写真データフォルダからコピーアンドペーストすることにより、所定の部位に貼り付けられている。また、所持者45の氏名及び呼び名が入力されている。更に、障害特性など所持者45に適した支援の仕方に関する項目毎に、準備された複数の選択肢のうちのいずれかが選択されている(黒塗り四角)。
【0047】
図7に戻って、注文者55は注文者端末57を操作することにより、入力済み入力フォーム67を、タグ制作サーバ53に返送する(S15)。タグ制作サーバ53は、入力フォーム67の返送を受けると、返送された入力フォーム67に基づいて、所持者支援タグ1のICタグ3に書き込むべきデータ(タグデータ)を制作する(S17)。タグデータの制作(S17)は、タグ制作サーバ53が、タグ制作者51の操作により行っても良く、タグ制作者51の操作によらずに自動で行っても良い。自動でタグデータの制作(S17)を行う場合には、タグ制作サーバ53は人工知能(AI)を利用しても良い。
【0048】
図10は、入力済み入力フォーム67に基づいて制作されるタグデータを例示する概略図である。図示例のタグデータ69には、入力済み入力フォーム67に貼り付けられた所持者45の顔写真データが、所定位置に貼り付けられ、入力済み入力フォーム67に入力された所持者45の氏名・呼び名が、所定位置に記載されている。また、入力済み入力フォーム67において、障害特性など、所持者45に適した支援の仕方に関する項目毎に、選択された選択肢の内容が、項目の内容とともに記載されている。タグデータ69が書き込まれた所持者支援タグ1を受け取った注文者55は、注文者端末57の画面65に、タグデータ69を表示し、内容の確認をすることができ、また図示例のように、所持者45が所持する所持者支援タグ1からタグデータ69を読み取ったタグ読取端末59の画面49に表示することができる。
【0049】
タグ制作サーバ53は、更に、入力済み入力フォーム67に入力された内容に基づいて、ウェブサーバ61にアップロードしている各種の静止画・動画・音声のうち、所持者45に適した支援の仕方を教示するデータ(図示例では動画データ)を選択し、そのウェブアドレスへのリンク70をタグデータ69に記録する。タグ制作サーバ53は、また、タグデータ69に、所持者45又は周囲の者47による所持者支援タグ1の使用後の感想に関するアンケートを付加することができる。図示例では、アンケートのページのリンク72がタグデータ69に記録されている。周囲の者47が操作するタグ読取端末59の画面49に表示されたタグデータ69において、アンケートのリンク72をクリック(又はタッチ)することにより、画面49にアンケートのページを表示することができる。アンケートのページもタグデータ69に記録されている。
【0050】
図11は、タグデータ69に組み込まれるアンケートを例示する概略図である。図示例のアンケート71は、タグデータ69に記録されたリンク72を通じて開かれるアンケートのページの一例である。アンケート71には、複数の質問事項が並んでおり、各質問事項ごとに複数の回答が選択肢として記載されている。周囲の者47が操作するタグ読取端末59の画面49に表示されたアンケート71において、周囲の者47は、各質問事項ごとに適切な回答を選択することができる。アンケート71の末尾には、「アンケート回答を送信」することを指示するスイッチ73が記載されており、スイッチ73をクリック(又はタッチ)することにより、回答済みのアンケート71をタグ制作サーバ53に返送することができる。
【0051】
図7に戻って、タグデータ69が仕上がると、タグ制作サーバ53は、仕上がったタグデータ69をICタグ3のメモリー35に書き込む(S19)。ICタグ3へのタグデータ69の書き込みは、例えば、タグ制作サーバ53にICタグライタを接続することにより可能となる。ICタグライタは、図2に例示したICタグリーダとして機能するスマートフォン37と同様に、アンテナ39、制御回路41を有し、アンテナ39から放射される電磁波43を通じて、タグデータ69をICタグ3に送り込む。
【0052】
ICタグ3へのタグデータ69の書き込み(S19)が終了すると、タグ制作者51は、ICタグ3の表側の主面に印刷を施す(S21)。印刷する色彩・模様等のデザインは、注文者55がタグ注文(S9)とともに伝える希望に基づいて選ばれる。例えば、タグ制作サーバ53は、入力フォーム64(図8参照)の末尾に、複数種類のデザインを選択肢として含めておき、注文者55に希望するデザインを選択させることが可能である。タグデータ69には、デザインの選択肢は含める必要がないので、タグデータ69のデータ容量が増える恐れは無い。タグ制作者51は、ICタグ3の表側の主面に色彩・模様等の印刷(S21)をするときに(S21)、同じ主面に標識9をも印刷する。
【0053】
ICタグ3への印刷(S21)が終了すると、タグ制作者51は、ICタグ3にタグケース5、紐7を付加することにより、所持者支援タグ1を完成させる(S23)。その後、タグ制作者51は、完成した所持者支援タグ1を注文者55に向けて発送する(S25)。
【0054】
タグデータ69の制作(S17)、タグデータ69の書き込み(S19)、ICタグ3への印刷(S21)の間において、時間の前後関係は任意である。例えば、ICタグ3への印刷(S21)の後に、タグデータ69の制作(S17)、タグデータ69の書き込み(S19)を行っても良い。また、標識9は、ステップS21においてICタグ3に印刷する代わりに、ステップS23において、タグケース5に印刷しても良い。また、標識9は印刷以外の手段により、ICタグ3に付随させることも可能である。例えば、標識9が表示された皮革製リボンを、紐7に吊り下げることも可能である。
【0055】
注文者55に送り届けられた所持者支援タグ1は、注文者55から所持者45に手渡される(S27)。所持者45は、紐7を自身の首に掛けることにより、所持者支援タグ1を所持しつつ、公道を歩いたり、車椅子にて移動したり、駅などの公共施設を利用したり、商店・テーマパークなどの商業施設を訪れたりすることができる。そのような活動の中で、所持者45の周囲の者47(施設の係員を含む)は、標識9を目視することにより、所持者45が支援を要することを認識し、自身が所持するスマートフォン37などのタグ読取端末59を用いて、所持者支援タグ1からタグデータ69を読み出し、タグ読取端末59の画面49に表示する(S29)。
【0056】
周囲の者47は、画面49に表示されたタグデータ69に含まれる動画等のリンク70(図10参照)をクリック(又はタッチ)することにより、ウェブサーバ61からダウンロードされる動画等を参照することができる(S31)。周囲の者47は、また、アンケートのリンク72(図10参照)をクリック(又はタッチ)することにより、図11に例示したアンケート71を画面49に表示させ、表示されたアンケート71に回答を入力することができる(S33)。回答の入力は、アンケート71の項目毎に並ぶ複数の回答に付された「白抜き四角」のいずれかを選択してタッチし、「黒塗り四角」に反転させることにより、簡単に行うことができる。周囲の者47は、回答の入力が終了すると、アンケート71に付されたスイッチ73をクリック(又はタッチ)する。それにより、回答済みのアンケート71がタグ制作サーバ53に返送される(S35)。
【0057】
タグ制作者51は、タグ制作サーバ53に返送された回答済みのアンケート71を参照することにより、タグ制作サーバ53を操作しつつ、入力フォーム64(図8参照)の内容を改善することができる(S37)。また、回答済みのアンケート71を参照することにより、動画等のデータを変更したり、新たに追加したりすることができ(S39)、変更・追加された動画等のデータを、ウェブサーバ61にアップロードすることもできる(S41)。ウェブサーバ61は、アップロードされた動画等のデータを、ウェブデータとして自身の記憶媒体(図示略)に記憶する(S43)。このように、アンケート71をフィードバックのツールとして利用し、タグデータ69の内容を改善してゆくことができる。
【0058】
(その他の実施の形態)
(1) 以上の実施の形態では、支援の仕方を静止画・動画・又は音声により教示するデータが、ウェブサーバ61にアップロードされる例を示した。これに対して、静止画・動画・又は音声以外の形態で支援の仕方を教示するデータ、例えば文字データであっても、ウェブサーバ61にアップロードしてもよい。それにより、ICタグ3のメモリー35に記録されるデータの量を更に軽減することができる。
【0059】
(2) 入力フォーム64(図8参照)には、択一式の入力欄に追加して、あるいはそれに代えて、所持者45に適切な支援の内容について、文字により自由に入力する欄を設けても良い。また、アンケート71(図11参照)にも同様に、択一式の入力欄に追加して、あるいはそれに代えて、所持者支援タグ1の使用後の感想を、文字により自由に入力する欄を設けても良い。
【0060】
(3) 図2には、ICタグ3の構造として、電池などの電源を有しない形態を例示した。それに対して、電池などの電源を有する形態を採ることも可能である。この場合には、スマートフォン37などの読取端末59が、ICタグ3からより遠くに(例えば数m)離れていても、ICタグ3のタグデータ69を読み取ることが可能となる。
【0061】
(4) 以上の実施の形態では、入力フォーム64(図8参照)に「障害特性」と記されるように、所持者45として障がいを持つ人を想定していた。しかし、所持者支援タグ1は、障がい者に限らず、周囲の者47による何らかの支援(配慮も支援の一形態として含める)が求められる人の利用にも供することができる。すなわち、所持者45は、障がい者に限られない。
【符号の説明】
【0062】
1 所持者支援タグ、 3 ICタグ、 5 タグケース、 7 紐、 9 標識、 11 入力装置、 12 主要回路部、 13 表示装置、 14 ハードディスク装置(HDD)、 15 LAN、 21 CPU、 22 ROM、 23 RAM、 24 インタフェース、 25 読取装置、 26 バスライン、 31 アンテナ、 33 制御回路、 35 メモリー(記憶媒体)、 37 スマートフォン(タグ読取端末)、 39 アンテナ、 41 制御回路、 43 電磁波、 45 所持者、 47 周囲の者、 49 画面、 51 タグ制作者、 53 タグ制作サーバ(サーバ)、 55 注文者、 57 注文者端末、 59 タグ読取端末、 61 ウェブサーバ、 63 インターネット、 64 入力フォーム、 65 画面、 67 入力フォーム、 69 タグデータ、 70 リンク、 71 アンケート、 72 リンク、 73 スイッチ、 101 システム。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11