(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173227
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】工程モニタリング装置、工程モニタリング方法及び工程モニタリングプログラム
(51)【国際特許分類】
G06F 3/12 20060101AFI20241205BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F3/12 359
G06F3/12 303
G06F3/12 334
B41J29/38 301
B41J29/38 201
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091512
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001270
【氏名又は名称】コニカミノルタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】味岡 敬
【テーマコード(参考)】
2C061
【Fターム(参考)】
2C061AP01
2C061AP07
2C061HK07
2C061HK15
2C061HK19
2C061HK23
2C061HV01
2C061HV13
2C061HV21
(57)【要約】
【課題】エラーの原因を容易に判定できる工程モニタリング装置を提供する。
【解決手段】工程モニタリング装置3は、生産設定情報と停止回数情報と実生産時間とを受信するデータ受信手段30と、生産設定情報及び停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する想定生産所要時間算出手段310と、実生産時間、第1想定生産所要時間及び第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、生産設備の停止及び回復の状況を判定する状況判定手段311と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、前記生産設備の実生産時間とを受信するデータ受信手段と、
前記生産設定情報及び前記停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、前記生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する想定生産所要時間算出手段と、
前記実生産時間、前記第1想定生産所要時間及び前記第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、前記生産設備の停止及び回復の状況を判定する状況判定手段と、
を備える工程モニタリング装置。
【請求項2】
前記状況判定手段は、前記実生産時間が、前記第1想定生産所要時間に予め設定した第1設定値を加えた時間を超える場合、前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とをさらに比較し、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間との差が予め設定した第2設定値以内の場合、エラー回数が通常通りだが、エラー回復時間がかかったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間に前記第2設定値を加えた時間を超える場合、エラー回数が通常より少ないが、エラー回復時間がかかったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第2設定値を引いた時間未満の場合、エラー回数が通常より多かったと判定する、
請求項1に記載の工程モニタリング装置。
【請求項3】
前記状況判定手段は、前記実生産時間と前記第1想定生産所要時間との差が前記第1設定値以内の場合、前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とをさらに比較し、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間との差が前記第2設定値以内の場合、通常通りのエラー回数及びエラー回復時間であったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間に前記第2設定値を加えた時間を超える場合、エラー回数が通常より少なかったが、エラー回復時間は通常通りであったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第2設定値を引いた時間未満の場合、エラー回数が通常より多かったが、エラー回復時間が短く、総遅延時間が通常通りであったと判定する、
請求項2に記載の工程モニタリング装置。
【請求項4】
前記状況判定手段は、前記実生産時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第1設定値を引いた時間未満の場合、前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とをさらに比較し、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間との差が前記第2設定値以内の場合、通常通りのエラー回数だが、総回復時間が短かったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間に前記第2設定値を加えた時間を超える場合、エラー回数が通常より少ない上、総回復時間も短かったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第2設定値を引いた時間未満の場合、エラー回数が通常より多かったが、総回復時間が短かったと判定する、
請求項3に記載の工程モニタリング装置。
【請求項5】
前記生産設備が印刷機であり、前記生産設定情報が印刷設定情報であり、前記実生産時間が実印刷時間である、
請求項1に記載の工程モニタリング装置。
【請求項6】
前記状況判定手段は、前記生産設備の停止及び回復の状況と共に、前記生産設備の改善案を出力する、
請求項1に記載の工程モニタリング装置。
【請求項7】
前記想定生産所要時間算出手段は、機械学習により、前記第1想定生産所要時間及び前記第2想定生産所要時間を算出する、
請求項1に記載の工程モニタリング装置。
【請求項8】
工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、前記生産設備の実生産時間とを受信するデータ受信ステップと、
前記生産設定情報及び前記停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、前記生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する想定生産所要時間算出ステップと、
前記実生産時間と前記第1想定生産所要時間とを比較する第1比較ステップと、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とを比較する第2比較ステップと、
前記第1比較ステップ及び前記第2比較ステップの比較結果に基づいて、前記生産設備の停止及び回復の状況を判定する状況判定ステップと、
を実行する工程モニタリング方法。
【請求項9】
コンピュータに、
データ受信手段が、工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、前記生産設備の実生産時間とを受信する手順、
想定生産所要時間算出手段が、前記生産設定情報及び前記停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、前記生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する手順、
状況判定手段が、前記実生産時間、前記第1想定生産所要時間及び前記第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、前記生産設備の停止及び回復の状況を判定する手順、
を実行させるための工程モニタリングプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工程モニタリング装置、工程モニタリング方法及び工程モニタリングプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷等の工程をモニタリングし、稼働率を算出する従来手法が提案されている。特許文献1には、「ジョブログに対応するジョブの実行時の停滞を考慮した上で求められたジョブ処理時間の合計を用いて算出した画像形成装置の稼働時間を管理する」ことが記載されている(特許文献1の要約参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に記載の手法では、稼働率から工程のエラーを把握できるが、そのエラーの原因を判定するのが困難であるという問題があった。つまり、特許文献1に記載の手法では、生産時間という一次元値からでは、エラーの原因が、エラー回数又はエラー回復時間であるのかを判定するのが困難であった。なお、エラーとは、印刷等の工程で発生した異常のことである。
【0005】
そこで、本発明は、エラーの原因を容易に判定できる工程モニタリング装置、工程モニタリング方法及び工程モニタリングプログラムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明の上記課題は、下記の構成により解決される。
(1)工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、前記生産設備の実生産時間とを受信するデータ受信手段と、
前記生産設定情報及び前記停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、前記生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する想定生産所要時間算出手段と、
前記実生産時間、前記第1想定生産所要時間及び前記第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、前記生産設備の停止及び回復の状況を判定する状況判定手段と、
を備える工程モニタリング装置。
【0007】
(2)前記状況判定手段は、前記実生産時間が、前記第1想定生産所要時間に予め設定した第1設定値を加えた時間を超える場合、前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とをさらに比較し、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間との差が予め設定した第2設定値以内の場合、エラー回数が通常通りだが、エラー回復時間がかかったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間に前記第2設定値を加えた時間を超える場合、エラー回数が通常より少ないが、エラー回復時間がかかったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第2設定値を引いた時間未満の場合、エラー回数が通常より多かったと判定する、
(1)に記載の工程モニタリング装置。
【0008】
(3)前記状況判定手段は、前記実生産時間と前記第1想定生産所要時間との差が前記第1設定値以内の場合、前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とをさらに比較し、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間との差が前記第2設定値以内の場合、通常通りのエラー回数及びエラー回復時間であったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間に前記第2設定値を加えた時間を超える場合、エラー回数が通常より少なかったが、エラー回復時間は通常通りであったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第2設定値を引いた時間未満の場合、エラー回数が通常より多かったが、エラー回復時間が短く、総遅延時間が通常通りであったと判定する、
(2)に記載の工程モニタリング装置。
【0009】
(4)前記状況判定手段は、前記実生産時間、前記第1想定生産所要時間から前記第1設定値を引いた時間未満の場合、前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とをさらに比較し、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間との差が前記第2設定値以内の場合、通常通りのエラー回数だが、総回復時間が短かったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間に前記第2設定値を加えた時間を超える場合、エラー回数が通常より少ない上、総回復時間も短かったと判定し、
前記第2想定生産所要時間が、前記第1想定生産所要時間から前記第2設定値を引いた時間未満の場合、エラー回数が通常より多かったが、総回復時間が短かったと判定する、
(3)に記載の工程モニタリング装置。
【0010】
(5)前記生産設備が印刷機であり、前記生産設定情報が印刷設定情報であり、前記実生産時間が実印刷時間である、
(1)に記載の工程モニタリング装置。
【0011】
(6)前記状況判定手段は、前記生産設備の停止及び回復の状況と共に、前記生産設備の改善案を出力する、
(1)に記載の工程モニタリング装置。
【0012】
(7)前記想定生産所要時間算出手段は、機械学習により、前記第1想定生産所要時間及び前記第2想定生産所要時間を算出する、
(1)に記載の工程モニタリング装置。
【0013】
(8)工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、前記生産設備の実生産時間とを受信するデータ受信ステップと、
前記生産設定情報及び前記停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、前記生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する想定生産所要時間算出ステップと、
前記実生産時間と前記第1想定生産所要時間とを比較する第1比較ステップと、
前記第1想定生産所要時間と前記第2想定生産所要時間とを比較する第2比較ステップと、
前記第1比較ステップ及び前記第2比較ステップの比較結果に基づいて、前記生産設備の停止及び回復の状況を判定する状況判定ステップと、
を実行する工程モニタリング方法。
【0014】
(9)コンピュータに、
データ受信手段が、工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、前記生産設備の実生産時間とを受信する手順、
想定生産所要時間算出手段が、前記生産設定情報及び前記停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、前記生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する手順、
状況判定手段が、前記実生産時間、前記第1想定生産所要時間及び前記第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、前記生産設備の停止及び回復の状況を判定する手順、
を実行させるための工程モニタリングプログラム。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、エラーの原因を容易に判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】実施形態に係る工程モニタリング装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】従来のエラー判定手法の一例を表すテーブルである。
【
図3】従来のエラー判定手法の一例を表すテーブルである。
【
図4】実施形態に係る工程モニタリング装置のエラー判定手法の一例を表すテーブルである。
【
図5】実施形態に係る工程モニタリング装置のハードウェア構成を示す図である。
【
図6】実施形態に係る工程モニタリング方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、本発明を実現するための一例であり、本発明が適用される装置の構成や各種条件によって適宜修正又は変更されるべきものであり、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。また、各図において、同一の構成については同一の符号を付し、説明を適宜、省略する。
【0018】
<本実施形態>
[工程モニタリングシステムの概略]
図1は、本実施形態の工程モニタリングシステムの構成を示すブロック図である。
【0019】
図1の工程モニタリングシステム1は、印刷等の工程をモニタリングし、その工程の状況をユーザに提示する。工程モニタリングシステム1は、生産設備としての印刷機2と、工程モニタリング装置3と、表示装置4とを備える。
【0020】
印刷機2は、印刷を行う一般的なプリンタである。例えば、印刷機2は、商業印刷用のデジタル印刷機である。また、印刷機2は、スキャナ機能、コピー機能、ファクシミリ機能、ネットワーク機能、及び、BOX機能といった複数の機能を備える複合機(MFP:Multi Function Peripheral)であってもよい。
【0021】
印刷機2は、生産設定情報(印刷設定情報)、印刷機2の停止回数情報、及び、印刷機2の実生産時間を取得する。以後、印刷機2が取得したこれらの情報を「生産データ」と略記する場合がある。そして、印刷機2は、有線通信回線又は無線通信回線を介して、生産データを工程モニタリング装置3に送信する。
【0022】
生産設定情報は、工程の生産性に関連する情報を予め設定した情報である。例えば、印刷機2の場合、生産設定情報は、印刷枚数、印刷速度、用紙サイズ、用紙種類、色数等を表す印刷設定情報である。停止回数情報は、工程で印刷機2が停止した回数を表す情報である。実生産時間は、工程で印刷機2が実際に印刷した時間を表す情報である。
【0023】
工程モニタリング装置3は、生産データを印刷機2から受信し、印刷機2の停止及び回復の状況を判定して表示装置4に表示する。なお、工程モニタリング装置3の詳細は、後記する。
【0024】
表示装置4は、工程モニタリング装置3からの各種情報を表示する一般的なディスプレイである。例えば、表示装置4は、液晶ディスプレイ、プラズマディスプレイ、有機ELディスプレイ等のフラットパネルディスプレイである。
【0025】
[工程モニタリング装置の構成]
図1に示すように、工程モニタリング装置3は、データ受信手段30と、処理手段31と、機械学習DB32とを備える。
【0026】
データ受信手段30は、生産データを受信する。例えば、データ受信手段30は、有線通信回線又は無線通信回線を介して、印刷機2から生産データを受信し、受信した生産データを処理手段31に出力する。
【0027】
処理手段31は、工程モニタリング装置3の各種処理を行う。
図1の処理手段31は、想定生産所要時間算出手段310と、状況判定手段311とを備える。
【0028】
想定生産所要時間算出手段310は、生産設定情報及び停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する。想定生産所要時間算出手段310は、機械学習により、第1想定生産所要時間及び第2想定生産所要時間を算出する。例えば、想定生産所要時間算出手段310は、機械学習として、ランダムフォレストを用いることとする。
【0029】
以後、Est_Afterが第1想定生産所要時間を表し、Est_beforeが第2想定生産所要時間を表し、Actが実生産時間を表すこととする。
【0030】
想定生産所要時間算出手段310は、機械学習モジュールを有する。機械学習モジュールは、生産設定情報及び停止回数情報から、目標値としての想定生産所要時間を算出する。この機械学習モジュールを用いれば、実際の生産時間が、通常時と比べて早いか遅いかを容易に判定できる。しかし、単に機械学習ジュールを用いるだけでは、生産時間が遅れた原因を判定するのが困難である。そこで、工程モニタリング装置3は、エラー情報である停止回数情報を意図的に除いて機械学習ジュールを用いて、第2想定生産所要時間を算出する。
【0031】
なお、想定生産所要時間算出手段310は、機械学習として、既知の深層学習を用いてもよい。また、想定生産所要時間算出手段310は、機械学習に制限されず、ルールベースの学習により、第1想定生産所要時間及び第2想定生産所要時間を算出してもよい。例えば、ルールベースでは、ページ数÷印刷速度+(ページ数÷用紙トレイサイズ)*用紙補充時間+(ページ数×ジャム率)*ジャム回復時間を想定生産所要時間として求める。なお、ジャム率及びジャム回復時間は、ルール内に予め設定しておく。
【0032】
状況判定手段311は、実生産時間、第1想定生産所要時間及び第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、生産設備の停止及び回復の状況を判定する。さらに、状況判定手段311は、生産設備の停止及び回復の状況と共に、生産設備の改善案を出力する。なお、状況判定手段311の詳細は、後記する。
【0033】
機械学習DB32は、想定生産所要時間算出手段310での機械学習に必要な学習データを蓄積するデータベースである。例えば、機械学習DB32は、学習データとして、印刷機2から受信した生産データを蓄積する。なお、想定生産所要時間算出手段310が機械学習を用いない場合、機械学習DB32を備えずともよい。
【0034】
<従来のエラー判定手法>
以下、状況判定手段311の前提として、従来のエラー判定手法について説明する。
図2は、従来のエラー判定手法の第1例を表すテーブルである。
図3は、従来のエラー判定手法の第2例を表すテーブルである。
【0035】
生産開始前だと停止回数情報を取得できないため、機械学習モジュールは、生産設定情報のみから、平均的なエラー回数及びエラー回復時間であったときの第2想定生産所要時間(Est_Before)を算出する。
【0036】
生産終了後では停止回数情報を取得できるため、機械学習モジュールは、生産設定情報及び停止回数情報から、平均的なエラー回復時間であったときの第1想定生産所要時間(Est_After)を算出する。
【0037】
また、機械学習モジュールは、実際に生産に要した時間を表す実生産時間(Act)を取得できる。
【0038】
図2に示すように、生産開始前において、第1想定生産所要時間(Est_After)と実生産時間(Act)とを比較すれば、何らかの問題が工程で発生したことを把握できるが、その問題がエラー回数又はエラー回復時間に起因するのか判定が困難である。例えば、第1想定生産所要時間(Est_After)が実生産時間(Act)未満の場合、問題の原因が、エラー回数の増加かエラー回復時間の遅延なのかを判定するのが困難なため、不明瞭になりやすい。
【0039】
なお、エラー回数とは、印刷等の工程でエラーが発生した回数を表す。また、エラー回復時間とは、エラーが発生してからエラーを解消するまでの時間を表す。
【0040】
また、
図3に示すように、生産終了後において、第2想定生産所要時間(Est_Before)と実生産時間(Act)とを比較しても、
図2と同様、工程の問題がエラー回数又はエラー回復時間に起因するのか判定が困難である。例えば、第2想定生産所要時間(Est_Before)が実生産時間(Act)未満の場合、問題の原因が、エラー回数の増加かエラー回復時間の遅延なのか判定するのが困難なため、不明瞭になりやすい。
【0041】
このように、従来手法では、生産開始前及び生産終了後の何れの場合であっても、問題の原因を判定するのが困難である。
【0042】
<状況判定手段311のエラー判定手法>
以下、状況判定手段311のエラー判定手法を具体的に説明する。
図4は、状況判定手段311のエラー判定手法を表すテーブルである。
【0043】
最初に、状況判定手段311は、
図4に示すように、実生産時間(Act)と、第1想定生産所要時間(Est_After)とを比較する。次に、状況判定手段311は、第1想定生産所要時間(Est_After)と第2想定生産所要時間(Est_Before)をさらに比較する。このように、状況判定手段311は、2段階で判定を行うことで、その判定結果に基づいて、印刷機2で発生した問題の原因を容易に判定できる。
【0044】
以下、第1設定値をth1と記載し、第2設定値をth2と記載する場合がある。第1設定値及び第2設定値は、0以上の任意の整数でユーザが手動で設定できる。第1設定値及び第2設定値を考慮しない場合、その値を0に設定すればよい。また、第1設定値及び第2設定値は、同一の値に設定してもよく、異なる値に設定してもよい。
【0045】
まず、
図4の左列に示すように、実生産時間(Act)が、第1想定生産所要時間(Est_After)に予め設定した第1設定値(th1)を加えた時間を超える場合について説明する。
【0046】
第1想定生産所要時間(Est_After)と第2想定生産所要時間(Est_Before)との差が予め設定した第2設定値(th2)以内の場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常通りだが、エラー回復時間がかかったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する(
図4の左列上段)。
【0047】
第2想定生産所要時間(Est_Before)が、第1想定生産所要時間(Est_After)に第2設定値(th2)を加えた時間を超える場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常より少ないが、エラー回復時間がかかったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する(
図4の左列中段)。
【0048】
第2想定生産所要時間(Est_Before)が、第1想定生産所要時間(Est_After)から第2設定値(th2)を引いた時間未満の場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常より多かったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する(
図4の左列下段)。
【0049】
次に、
図4の中列に示すように、実生産時間(Act)と第1想定生産所要時間(Est_After)との差が第1設定値(th1)以内の場合について説明する。
【0050】
第1想定生産所要時間(Est_After)と第2想定生産所要時間(Est_Before)との差が予め設定した第2設定値(th2)以内の場合を考える。この場合、状況判定手段311は、通常通りのエラー回数及びエラー回復時間であったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する(
図4の中列上段)。
【0051】
第2想定生産所要時間(Est_Before)が、第1想定生産所要時間(Est_After)に第2設定値(th2)を加えた時間を超える場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常より少なかったが、エラー回復時間は通常通りであったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する。さらに、状況判定手段311は、印刷機2の改善案として、エラー修正に時間がかかったと表示装置4に表示する(
図4の中列中段)。
【0052】
第2想定生産所要時間(Est_Before)が、第1想定生産所要時間(Est_After)から第2設定値(th2)を引いた時間未満の場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常より多かったが、エラー回復時間が短く、総遅延時間が通常通りであったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する。さらに、状況判定手段311は、印刷機2の改善案として、エラー回数を減らせるようにすると望ましいと表示装置4に表示する(
図4の中列下段)。
【0053】
なお、総遅延時間とは、エラー回復時間を含め、エラーが発生してから工程を再開するまでの時間を表す。
【0054】
次に、
図4の右列に示すように、実生産時間(Act)が、第1想定生産所要時間(Est_After)から第1設定値(th1)を引いた時間未満の場合について説明する。
【0055】
第1想定生産所要時間(Est_After)と第2想定生産所要時間(Est_Before)との差が予め設定した第2設定値(th2)以内の場合を考える。この場合、状況判定手段311は、通常通りのエラー回数だが、総回復時間が短かったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する(
図4の右列上段)。
【0056】
なお、状況判定手段311は、印刷機2の改善案を常に表示する必要はない。例えば、通常通りのエラー回数だが、総回復時間が短かった場合、その工程に問題がない。このような場合、状況判定手段311は、印刷機2の改善案を表示する必要はない。
【0057】
第2想定生産所要時間(Est_Before)が、第1想定生産所要時間(Est_After)に第2設定値(th2)を加えた時間を超える場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常より少ない上、総回復時間も短かったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する(
図4の右列中段)。
【0058】
第2想定生産所要時間(Est_Before)が、第1想定生産所要時間(Est_After)から第2設定値(th2)を引いた時間未満の場合を考える。この場合、状況判定手段311は、エラー回数が通常より多かったが、総回復時間が短かったと判定し、印刷機2の停止及び回復の状況として表示装置4に表示する。さらに、状況判定手段311は、印刷機2の改善案として、エラー回数を減らせるようにすると望ましいと表示装置4に表示する(
図4の右列下段)。
【0059】
例えば、印刷機2が、1時間あたりA4モノクロで6000ページ印刷可能な場合を考える。また、A4モノクロで30000ページの印刷を行うジョブにおいて、印刷機2が実際に印刷した時間(実生産時間)が450分、用紙切れの回数(停止回数情報)が15回であったこととする。例えば、印刷枚数=30000、用紙サイズ=A4、印刷方法=モノクロ、用紙切れ回数=15を機械学習モジュールのパラメータとして、第1想定生産所要時間=375が求められたこととする。
【0060】
この場合、第1想定生産所要時間が実生産時間未満なので、
図4のテーブルで左列に該当し、何か問題があったと考えられる。
【0061】
例えば、印刷枚数=30000、用紙サイズ=A4、印刷方法=モノクロ、用紙切れ回数なしを機械学習モジュールのパラメータとすることで、第2想定生産所要時間=350が求められたこととする。
【0062】
この場合、第1想定生産所要時間が第2想定生産所要時間より大きいので、
図4のテーブルの左側の一番上に該当し、エラー回数が通常より多かったと判定できる。
【0063】
[工程モニタリング装置のハードウェア構成]
図5は、工程モニタリング装置3のハードウェア構成を示す図である。
【0064】
例えば、工程モニタリング装置3は、
図5のコンピュータ900によって実現される。コンピュータ900は、CPU(Central Processing Unit)901、ROM(Read Only Memory)902、RAM(Random Access Memory)903、HDD(Hard Disk Drive)904、入出力I/F(Interface)905、通信I/F906およびメディアI/F907を有する。
【0065】
CPU901は、ROM902またはHDD904に記憶されたプログラムに基づき作動し、
図1の各機能部による制御を行う。ROM902は、コンピュータ900の起動時にCPU901により実行されるブートプログラムや、コンピュータ900のハードウェアに係るプログラム等を記憶する。
【0066】
CPU901は、入出力I/F905を介して、マウスやキーボード等の入力装置910、および、表示装置4やプリンタ等の出力装置911を制御する。CPU901は、入出力I/F905を介して、入力装置910からデータを取得するともに、生成したデータを出力装置911へ出力する。
【0067】
HDD904は、CPU901により実行されるプログラムおよび当該プログラムによって使用されるデータ等を記憶する。通信I/F906は、通信網(例えば、ネットワーク920)を介して図示せぬ他の装置(例えば、保守端末等)からデータを受信してCPU901へ出力し、また、CPU901が生成したデータを、通信網を介して他の装置へ送信する。
【0068】
メディアI/F907は、記録媒体912に格納されたプログラムまたはデータを読み取り、RAM903を介してCPU901へ出力する。CPU901は、目的の処理に係るプログラムを、メディアI/F907を介して記録媒体912からRAM903上にロードし、ロードしたプログラムを実行する。記録媒体912は、DVD(Digital Versatile Disc)、PD(Phase change rewritable Disk)等の光学記録媒体、MO(Magneto Optical disk)等の光磁気記録媒体、磁気記録媒体、導体メモリテープ媒体又は半導体メモリ等である。
【0069】
なお、本発明は、コンピュータ900が備えるCPU901、HDD904等のハードウェア資源を、工程モニタリング装置3として機能させるための工程モニタリングプログラムで実現することもできる。
【0070】
すなわち、工程モニタリングプログラムは、コンピュータ900に、データ受信手段30が、工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、生産設備の実生産時間とを受信する手順、想定生産所要時間算出手段310が、生産設定情報及び停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する手順、状況判定手段311が、実生産時間、第1想定生産所要時間及び第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、生産設備の停止及び回復の状況を判定する手順、を実行させる。
【0071】
[工程モニタリング方法]
図6は、実施形態に係る工程モニタリング方法を示すフローチャートである。
【0072】
図6に示すように、工程モニタリング方法では、データ受信ステップS1と、想定生産所要時間算出ステップS2と、第1比較ステップS3と、第2比較ステップS4と、状況判定ステップS5とを実行する。例えば、
図1の工程モニタリング装置3が、工程モニタリング方法を実行する。
【0073】
データ受信ステップS1では、生産データとして、工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、生産設備の実生産時間とを受信する。
【0074】
想定生産所要時間算出ステップS2では、機械学習により、生産設定情報及び停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する。
【0075】
第1比較ステップS3では、実生産時間と第1想定生産所要時間とを比較する。
【0076】
第2比較ステップS4では、第1想定生産所要時間と第2想定生産所要時間とを比較する。
【0077】
状況判定ステップS5では、第1比較ステップS3及び第2比較ステップS4の比較結果に基づいて、生産設備の停止及び回復の状況を判定し、その判定結果を出力する。
【0078】
以上で説明したように、工程モニタリング装置3は、工程の生産性に関連する生産設定情報と、生産設備の停止回数情報と、生産設備の実生産時間とを受信するデータ受信手段30と、生産設定情報及び停止回数情報から第1想定生産所要時間を算出し、生産設定情報から第2想定生産所要時間を算出する想定生産所要時間算出手段310と、実生産時間、第1想定生産所要時間及び第2想定生産所要時間を比較し、当該比較結果に基づいて、生産設備の停止及び回復の状況を判定する状況判定手段311と、を備える。
【0079】
これにより、工程モニタリング装置3は、、エラーの原因を容易に判定することができる。すなわち、工程モニタリング装置3は、実際の工程で発生したエラーの原因がエラー回数又はエラー回復時間であるのかを判定してユーザに提示できる。その結果、工程モニタリング装置3は、工程の管理するユーザの負荷を軽減し、そのエラーの解決案をユーザが実行することで、生産性を向上させることができる。
【0080】
以上、実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。前記した実施形態では、生産設備が印刷機であり、生産設定情報が印刷設定情報であることとして説明したが、本発明がこれらに限定されないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0081】
1 工程モニタリングシステム
2 印刷機(生産設備)
3 工程モニタリング装置
4 表示装置
30 データ受信手段
31 処理手段
32 機械学習DB
310 想定生産所要時間算出手段
311 状況判定手段