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特開2024-173239積層光学フィルム用接着剤組成物および積層光学フィルム
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  • 特開-積層光学フィルム用接着剤組成物および積層光学フィルム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173239
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】積層光学フィルム用接着剤組成物および積層光学フィルム
(51)【国際特許分類】
   C09J 4/02 20060101AFI20241205BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20241205BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/04
C09J11/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091533
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】菅野 亮
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EF272
4J040EK032
4J040FA131
4J040FA161
4J040GA05
4J040HA136
4J040HD38
4J040KA13
4J040MA10
4J040MB03
4J040NA17
(57)【要約】      (修正有)
【課題】接着剤層としたときの屈折率が向上するとともに、少なくとも2枚の光学フィルムの間の接着力に優れ、かつ硬化収縮率が低減された接着剤層の原料となる積層光学フィルム用接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】少なくとも2枚の光学フィルムを接着させるための積層光学フィルム用接着剤組成物であって、硬化性成分、金属酸化物粒子および下記一般式(1):

で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)を含有するものである積層光学フィルム用接着剤組成物。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の光学フィルムを接着させるための積層光学フィルム用接着剤組成物であって、
硬化性成分、金属酸化物粒子および下記一般式(1):
【化1】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)を含有するものであることを特徴とする積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項2】
組成物中の全量を100質量%としたとき、前記金属酸化物粒子の含有量が10~50質量%である請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項3】
組成物中の全量を100質量%としたとき、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.1~10質量%である請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項4】
さらに水酸基含有(メタ)アクリレートを含有する請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項5】
組成物中の全量を100質量%としたとき、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの含有量が1~30質量%である請求項4に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項6】
さらに芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートを含有する請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項7】
組成物中の全量を100質量%としたとき、前記芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートの含有量が30~70質量%である請求項6に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項8】
前記芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートが、多環式芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートおよび2個以上の芳香環を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである請求項6に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項9】
前記芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートが、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートである請求項6に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項10】
さらに、イソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するレベリング剤を含有する請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項11】
組成物中の全量を100質量%としたとき、前記イソシアヌレート化合物の含有量が0.05~10質量%である請求項10に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項12】
組成物中の全量を100質量%としたとき、前記ポリシロキサン化合物の含有量が0.05~2.0質量%である請求項10に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項13】
25℃における粘度が100[mPa・s]以下である請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物。
【請求項14】
接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムであって、
前記接着剤層が請求項1に記載の積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層であることを特徴とする積層光学フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2枚の光学フィルムを接着させるための積層光学フィルム用接着剤組成物および積層光学フィルムに関する。当該積層光学フィルムは液晶表示装置(LCD)、有機EL表示装置、CRT、PDPなどの画像表示装置を形成し得る。
【背景技術】
【0002】
画像表示装置の表示画面における外光反射や背景の映り込みなどによる視認性不良を改善するために、表示パネルの視認側に円偏光板が配置された画像表示装置が知られている。
【0003】
例えば、下記特許文献1では、直線偏光板と、1/2波長層と、活性エネルギー線硬化型接着剤を硬化させてなる第1接着層と、1/4波長層とをこの順に備え、1/2波長層の進相軸と、直線偏光板の透過軸とのなす角度が10°以上20°以下であり、第1接着層の波長589nmでの屈折率と、1/2波長層の波長589nmでの進相軸方向の屈折率との差の絶対値が0.05未満である偏光板複合体が記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2では、偏光子と第1位相差層と第2位相差層とをこの順に備え、偏光子と第1位相差層とが第1接着剤層を介して貼り合わされ、第1位相差層と第2位相差層とが第2接着剤層を介して貼り合わされ、第1位相差層および第2位相差層の厚みが5μm以下であり、第2接着剤層の平均屈折率は、1.55以上であるとともに、第1位相差層の平均屈折率との差、および第2位相差層の平均屈折率との差が0.08未満である位相差層付偏光板が記載されている。
【0005】
ところで、下記特許文献3では、光学用途に用いられる光学シートなどに必要とされる種々の特性のバランスが図られた活性エネルギー線硬化型樹脂組成物および硬化物を提供することを目的として、金属酸化物ナノ粒子(A)、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート類(B)および(ポリ)アルキレングリコール構造を有する二官能(メタ)アクリレート(C)を含有することを特徴とする活性エネルギー線硬化型樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-52365号公報
【特許文献2】特開2018-17996号公報
【特許文献3】特開2017-128688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明者が鋭意検討した結果、上記特許文献1および2に記載の技術では、積層フィルムの層間接着剤の屈折率を安定的に向上させる場合に、さらなる改良の余地があることが判明した。なお、上記特許文献3に記載の技術はレンズシートを製造するための活性エネルギー線硬化型樹脂組成物に関するものであり、そもそも少なくとも2枚の光学フィルムを接着させる用途を想定したものではない。加えて、積層光学フィルム用接着剤組成物は、光学フィルムに対し、かなり薄い膜厚で塗工されるため、金属酸化物粒子を含有する場合に、その液安定性に優れることが要求されるが、上記特許文献3に記載の技術ではそのような課題について検討されておらず、ましてやその課題解決の手段について記載も示唆もない。
【0008】
本発明は上記実情に鑑みて開発されたものであり、接着剤層としたときの屈折率が向上するとともに、少なくとも2枚の光学フィルムの間の接着力に優れ、かつ硬化収縮率が低減された接着剤層の原料となる積層光学フィルム用接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0009】
さらには、積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層を接着剤層として備える積層光学フィルムであって、屈折率が高い接着剤層を備える積層光学フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題は下記構成により解決し得る。即ち本発明は、少なくとも2枚の光学フィルムを接着させるための積層光学フィルム用接着剤組成物であって、
硬化性成分、金属酸化物粒子および下記一般式(1):
【化1】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)を含有するものであることを特徴とする積層光学フィルム用接着剤組成物(1)に関する。
【0011】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)において、組成物中の全量を100質量%としたとき、前記金属酸化物粒子の含有量が10~50質量%である積層光学フィルム用接着剤組成物(2)が好ましい。
【0012】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)または(2)において、組成物中の全量を100質量%としたとき、前記一般式(1)で表される化合物の含有量が0.1~10質量%である積層光学フィルム用接着剤組成物(3)が好ましい。
【0013】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)~(3)いずれかにおいて、さらに水酸基含有(メタ)アクリレートを含有する積層光学フィルム用接着剤組成物(4)が好ましい。
【0014】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(4)において、組成物中の全量を100質量%としたとき、前記水酸基含有(メタ)アクリレートの含有量が1~30質量%である積層光学フィルム用接着剤組成物(5)が好ましい。
【0015】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)~(5)いずれかにおいて、さらに芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートを含有する積層光学フィルム用接着剤組成物(6)が好ましい。
【0016】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(6)において、組成物中の全量を100質量%としたとき、前記芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートの含有量が30~70質量%である積層光学フィルム用接着剤組成物(7)が好ましい。
【0017】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(6)において、前記芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートが、多環式芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートおよび2個以上の芳香環を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものである積層光学フィルム用接着剤組成物(8)が好ましい。
【0018】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(6)において、前記芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートが、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートである積層光学フィルム用接着剤組成物(9)が好ましい。
【0019】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)~(9)いずれかにおいて、さらに、イソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するレベリング剤を含有する積層光学フィルム用接着剤組成物(10)が好ましい。
【0020】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(10)において、組成物中の全量を100質量%としたとき、前記イソシアヌレート化合物の含有量が0.05~10質量%である積層光学フィルム用接着剤組成物(11)が好ましい。
【0021】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(10)において、組成物中の全量を100質量%としたとき、前記ポリシロキサン化合物の含有量が0.05~2.0質量%である積層光学フィルム用接着剤組成物(12)が好ましい。
【0022】
上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)~(12)いずれかにおいて、25℃における粘度が100[mPa・s]以下である積層光学フィルム用接着剤組成物(13)が好ましい。
【0023】
また本発明は、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムであって、前記接着剤層が上記積層光学フィルム用接着剤組成物(1)~(13)いずれかの硬化物層であることを特徴とする積層光学フィルム(14)に関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は金属酸化物粒子を含有するため、接着剤層としたとき、屈折率を向上させることができる。加えて、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は金属酸化物粒子とともに一般式(1)で表される化合物を含有するため、屈折率向上と接着剤層の接着力向上とを両立できる。さらに、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は金属酸化物粒子とともに一般式(1)で表される化合物を含有することに起因して、接着剤層の硬化収縮率が低くなる。このため、積層光学フィルムとしたときに、各光学フィルムに加わる応力が低減できるため、積層光学フィルムの耐久性向上が期待できる。本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物が、金属酸化物粒子および一般式(1)で表される化合物に加えて水酸基含有(メタ)アクリレートを含有する場合、接着剤層の接着力がさらに向上するため好ましい。また、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物が、金属酸化物粒子および一般式(1)で表される化合物に加えてフェノキシベンジル(メタ)アクリレートを含有する場合、接着剤層の屈折率をさらに向上させることができるため好ましい。本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物が、金属酸化物粒子および一般式(1)で表される化合物に加えて、少なくとも変性イソシアヌレート化合物および変性ポリジメチルシロキサン化合物を含有するレベリング剤を含有する場合、特に保存中や光学フィルムに塗工する際の液安定性が向上するため好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層を接着剤層として備える積層光学フィルムの一例
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、硬化性成分、金属酸化物粒子および下記一般式(1):
【化2】
で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)を含有する。
【0027】
<一般式(1)で表される化合物>
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物が金属酸化物粒子と共に上記一般式(1)で表される化合物を含有する場合、接着剤層の硬化収縮率が低くなる。このため、積層光学フィルムとしたときに、各光学フィルムに加わる応力が低減できるため、積層光学フィルムの耐久性向上が期待できる。
【0028】
前記脂肪族炭化水素基としては、炭素数1~20の置換基を有してもよい直鎖または分岐のアルキル基、炭素数3~20の置換基を有してもよい環状アルキル基、炭素数2~20のアルケニル基が挙げられ、アリール基としては、炭素数6~20の置換基を有してもよいフェニル基、炭素数10~20の置換基を有してもよいナフチル基などが挙げられ、ヘテロ環基としては例えば、少なくとも一つのヘテロ原子を含む、置換基を有してもよい5員環または6員環の基が挙げられる。これらは互いに連結して環を形成してもよい。一般式(1)中、RおよびRとして好ましくは、水素原子、炭素数1~3の直鎖または分岐のアルキル基であり、最も好ましくは、水素原子である。
【0029】
一般式(1)で表される化合物が有するXは反応性基であって、硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性成分と反応し得る官能基であり、例えば、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド基、カルボキシル基、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、α,β-不飽和カルボニル基、メルカプト基、ハロゲン基などが挙げられる。硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物が活性エネルギー線硬化性である場合、反応性基Xは、ビニル基、(メタ)アクリル基、スチリル基、(メタ)アクリルアミド基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基およびメルカプト基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物がラジカル重合性である場合、反応性基Xは、(メタ)アクリル基、スチリル基および(メタ)アクリルアミド基からなる群より選択される少なくとも1種の反応性基であることが好ましく、一般式(1)で表される化合物が(メタ)アクリルアミド基を有する場合、反応性が高く、硬化物層、特には接着剤層中の硬化性成分との共重合率が高まるためより好ましい。また、(メタ)アクリルアミド基の極性が高く、接着性に優れるため本発明の効果を効率的に得られるという点からも好ましい。硬化物層、特には接着剤層を構成する硬化性樹脂組成物がカチオン重合性である場合、反応性基Xは、ヒドロキシル基、アミノ基、アルデヒド、カルボキシル基、ビニルエーテル基、エポキシ基、オキセタン基、メルカプト基から選ばれる少なくとも1つの官能基を有することが好ましく、特にエポキシ基を有する場合、得られる硬化物層、特には接着剤層と被着体との密着性に優れるため好ましく、ビニルエーテル基を有する場合、硬化性樹脂組成物の硬化性が優れるため好ましい。
【0030】
一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(1a)~(1d)が挙げられる。なお、一般式(1a)および(1b)中のRは水素原子またはメチル基である。
【化3】
【0031】
一般式(1)で表される化合物としては、前記例示した化合物以外にも、ヒドロキシエチルアクリルアミドとホウ酸のエステル、メチロールアクリルアミドとホウ酸のエステル、ヒドロキシエチルアクリレートとホウ酸のエステル、およびヒドロキシブチルアクリレートとホウ酸のエステルなど、(メタ)アクリレートとホウ酸とのエステルを例示可能である。
【0032】
接着剤層の接着力向上との見地から、使用する一般式(1)で表される化合物の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.1~10質量%であることが好ましく、0.3~5質量%であることがより好ましい。
【0033】
<金属酸化物粒子>
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は金属酸化物粒子を含有する。金属酸化物粒子としては、例えば酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、酸化第二鉄、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化ホロミウム、酸化銅、酸化ビスマス、酸化コバルト、四三酸化コバルト、四三酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロビウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウムおよびこれらを結合させた複合酸化物などが挙げられる。これらの中でも、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンが好ましく、酸化ジルコニウムが特に好ましい。なお、本発明で使用する金属酸化物粒子は、上記で挙げた金属酸化物のみで構成されてもよく、あるいはその他の成分を含んでもよいが、粒子中の成分として金属酸化物が最大重量を占めることが好ましい。金属酸化物粒子の形状は、球状、楕円球状、立方体状、直方体状あるいはピラミッド形状など任意の形状を取り得る。なお本発明においては、金属酸化物粒子として、当業者に公知の手法により表面処理したものを使用してもよい。
【0034】
接着剤組成物中の金属酸化物粒子の安定性向上と、接着剤層の屈折率向上との見地から、使用する金属酸化物粒子の平均粒子径は、1~150nmであることが好ましく、1~50nmであることがより好ましい。本発明において金属酸化物粒子の平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)および電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)などを使用して拡大観察し、無作為に例えば1000個の粒子を選択し、その最大長さを測定し、その算術平均を求めることにより算出可能である。
【0035】
接着剤組成物中に配合する金属酸化物粒子の平均粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折法によっても算出可能である。動的光散乱法やレーザー回折法によって算出する場合、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒径を意味する。
【0036】
接着剤組成物中の金属酸化物粒子の安定性向上と、接着剤層の屈折率向上との見地から、使用する金属酸化物粒子の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、10~50質量%であることが好ましく、15~40質量%であることがより好ましい。
【0037】
<硬化性成分>
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は硬化性成分を含有する。本発明において硬化性成分は、活性エネルギー線硬化性の硬化性成分であることが好ましい。活性エネルギー線硬化性の硬化性成分としては、ラジカル重合硬化性の硬化性成分とカチオン重合硬化性の硬化性成分に区分出来る。本発明において、波長範囲10nm~380nm未満の活性エネルギー線を紫外線、波長範囲380nm~800nmの活性エネルギー線を可視光線として表記する。
【0038】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、硬化性成分として単官能ラジカル重合性化合物を含有してもよい。単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシ基を有する各種の(メタ)アクリル酸誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、s-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、n-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類が挙げられる。
【0039】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなどのシクロアルキル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレートなどのアラルキル(メタ)アクリレート;2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレ-ト、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレ-ト、などの多環式(メタ)アクリレート;2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどのアルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリレート;などが挙げられる。これらのなかでも各種保護フィルムとの接着性に優れることから、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレ-ト、フェノキシエチルアクリレートが好ましい。
【0040】
また、前記(メタ)アクリル酸誘導体としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6-ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、8-ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、10-ヒドロキシデシル(メタ)アクリレート、12-ヒドロキシラウリル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートや、[4-(ヒドロキシメチル)シクロヘキシル]メチルアクリレート、シクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有(メタ)アクリレート;2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレート、3-クロロ-2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのハロゲン含有(メタ)アクリレート;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート;3-オキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-メチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-エチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ブチルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレート、3-ヘキシルーオキセタニルメチル(メタ)アクリレートなどのオキセタン基含有(メタ)アクリレート;テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ブチロラクトン(メタ)アクリレート、などの複素環を有する(メタ)アクリレートや、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコール(メタ)アクリル酸付加物、p-フェニルフェノール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらのなかでも、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレートは各種保護フィルムとの接着性に優れるため好ましい。
【0041】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物が、金属酸化物粒子および一般式(1)で表される化合物に加えて水酸基含有(メタ)アクリレートを含有する場合、接着剤層の接着力がさらに向上するため好ましい。 接着剤層の接着力向上との見地から、水酸基含有(メタ)アクリレートの配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、1~30質量%であることが好ましく、3~20質量%であることがより好ましい。
【0042】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸などのカルボキシル基含有モノマーが挙げられる。
【0043】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、N-ビニルピロリドン、N-ビニル-ε-カプロラクタム、メチルビニルピロリドンなどのラクタム系ビニルモノマー;ビニルピリジン、ビニルピペリドン、ビニルピリミジン、ビニルピペラジン、ビニルピラジン、ビニルピロール、ビニルイミダゾール、ビニルオキサゾール、ビニルモルホリンなどの窒素含有複素環を有するビニル系モノマーなどが挙げられる。
【0044】
また、単官能ラジカル重合性化合物としては、活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物を用いることができる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、末端または分子中に(メタ)アクリル基などの活性二重結合基を有し、かつ活性メチレン基を有する化合物である。活性メチレン基としては、例えばアセトアセチル基、アルコキシマロニル基、またはシアノアセチル基などが挙げられる。前記活性メチレン基がアセトアセチル基であることが好ましい。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物の具体例としては、例えば2-アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシプロピル(メタ)アクリレート、2-アセトアセトキシ-1-メチルエチル(メタ)アクリレートなどのアセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート;2-エトキシマロニルオキシエチル(メタ)アクリレート、2-シアノアセトキシエチル(メタ)アクリレート、N-(2-シアノアセトキシエチル)アクリルアミド、N-(2-プロピオニルアセトキシブチル)アクリルアミド、N-(4-アセトアセトキシメチルベンジル)アクリルアミド、N-(2-アセトアセチルアミノエチル)アクリルアミドなどが挙げられる。活性メチレン基を有するラジカル重合性化合物は、アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましい。
【0045】
また、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、硬化性成分として、二官能以上の多官能ラジカル重合性化合物を配合することができる。多官能ラジカル重合性化合物としては、例えば、多官能(メタ)アクリルアミド誘導体であるN,N‘-メチレンビス(メタ)アクリルアミド、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジアクリレート、2-エチル-2-ブチルプロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオぺンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリート、環状トリメチロールプロパンフォルマル(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、EO変性ジグリセリンテトラ(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸と多価アルコールとのエステル化物、9,9-ビス[4-(2-(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレンがあげられる。具体例としては、アロニックスM-220(東亞合成社製)、ライトアクリレート1,9ND-A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDGE-4A(共栄社化学社製)、ライトアクリレートDCP-A(共栄社化学社製)、SR-531(Sartomer社製)、CD-536(Sartomer社製)などが好ましい。また必要に応じて、各種のエポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートや、各種の(メタ)アクリレート系モノマーなどが挙げられる。なお、多官能(メタ)アクリルアミド誘導体は、重合速度が速く生産性に優れる上、接着剤組成物を硬化物とした場合の架橋性に優れるため、接着剤組成物に含有させることが好ましい。
【0046】
例えば光学フィルムとして偏光子および透明保護フィルムを使用する場合、ラジカル重合性化合物は、偏光子や各種透明保護フィルムとの接着性と、過酷な環境下における光学耐久性を両立させる観点から、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物を併用することが好ましい。接着剤組成物中の単官能ラジカル重合性化合物の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、10~95質量%であることが好ましく30~80質量%であることがより好ましい。接着剤組成物中の多官能ラジカル重合性化合物の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.5~60質量%であることが好ましく、1~40質量%であることがより好ましい。
【0047】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、組成物中にイソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有するレベリング剤を含有する場合、金属酸化物粒子がより安定に分散するため好ましい。レベリング剤を含有する場合、金属酸化物粒子を含有するにもかかわらず、粘度を低く抑えることができるため好ましい。積層光学フィルム用接着剤組成物を光学フィルム上に薄く塗工し、接着剤層および積層光学フィルムの薄型化を図る見地から、25℃における組成物の粘度を100[mPa・s]以下にすることが好ましく、60[mPa・s]以下にすることがより好ましい。
【0048】
<レベリング剤>
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、レベリング剤として、イソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。組成物中にイソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有することにより、金属酸化物粒子が安定に分散することに起因して、積層光学フィルム用接着剤組成物の液安定性に優れる。さらに、組成物中に金属酸化物粒子とイソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種とを含有することにより、光学フィルム上での塗工時のハジキおよび気泡の発生を抑制することができる。上記効果をより高める見地から、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、イソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物の両方を含有することが好ましい。積層光学フィルム用接着剤組成物中、イソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物の両方を含有する場合、その配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.1~4質量%であることが好ましく、0.1~2質量%であることがより好ましい。なお、後述のとおり、イソシアヌレート化合物を架橋剤としても配合する場合、積層光学フィルム用接着剤組成物中、イソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物の両方を含有する場合、その配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.1~14質量%であることが好ましく、0.1~7質量%であることがより好ましい。
【0049】
<イソシアヌレート化合物>
イソシアヌレート化合物は、イソシアネートの三量化反応により形成されたイソシアヌレート環構造を含有する化合物である。本発明では特に、反応性基を有する変性イソシアヌレート化合物を使用することが好ましい。変性イソシアヌレート化合物が有する反応性基としては、重合性官能基が挙げられ、具体的には例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有するラジカル重合性官能基、グリシジル基などのエポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、ラクトン基などのカチオン重合性官能基などが挙げられる。積層光学フィルム用接着剤組成物中での反応性の観点から、反応性基として二重結合を有する変性イソシアヌレート化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリルロイル基を有する変性イソシアヌレート化合物である。積層光学フィルム用接着剤組成物中でのイソシアヌレート化合物の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.05~2質量%であることが好ましく、0.05~1質量%であることがより好ましい。
【0050】
なお、イソシアヌレート化合物は、組成物中での金属酸化物粒子の分散の安定化に寄与するだけでなく、例えば接着剤層としたときの硬化収縮率を低減する効果も奏する。したがって、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物中にイソシアヌレート化合物を架橋剤として配合する場合、イソシアヌレート化合物の配合量はより多い方がこの好ましく、具体的には組成物中の全量を100質量%としたとき、0.05~10質量%であることが好ましく、0.05~5質量%であることがより好ましい。
【0051】
<ポリシロキサン化合物>
ポリシロキサン化合物は、ポリジメチルシロキサンなどのポリシロキサン骨格を有する化合物である。本発明では特に、反応性基を有する変性ポリシロキサン化合物を使用することが好ましい。変性ポリシロキサン化合物が有する反応性基としては、重合性官能基が挙げられ、具体的には例えば(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基などのエチレン性二重結合を有するラジカル重合性官能基、グリシジル基などのエポキシ基、オキセタン基、ビニルエーテル基、環状エーテル基、環状チオエーテル基、ラクトン基などのカチオン重合性官能基などが挙げられる。積層光学フィルム用接着剤組成物中での反応性の観点から、反応性基として二重結合を有する変性ポリシロキサン化合物が好ましく、より好ましくは(メタ)アクリルロイル基を有する変性ポリシロキサン化合物である。積層光学フィルム用接着剤組成物中でのポリシロキサン化合物の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.05~2質量%であることが好ましく、0.05~1質量%であることがより好ましい。
【0052】
<芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレート>
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、金属酸化物粒子と共に芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートを含有する場合、接着剤層の屈折率が向上するため好ましい。接着剤層の屈折率をより安定的に高める見地から、本発明においては、芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートとして、多環式芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートおよび2個以上の芳香環を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを使用することが好ましい。芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと(メタ)アクリル酸との反応物などが挙げられる。これらの中でも、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートを使用することが特に好ましい。フェノキシベンジル(メタ)アクリレートは下記式(A):
【化4】
で表される構造を有する化合物である。上記式(A)中、Xは隣接する結合基の一部をなす単結合であるか、あるいはエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドまたはスチレンオキサイド構造を繰り返し1~5個有する構造を表す。Rは水素原子またはメチル基を表す。本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、下記式(A-1):
【化5】
で表されるo位またはm位置換体であるフェノキシベンジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0053】
接着剤層の屈折率向上の見地から、使用する芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレート、特にはフェノキシベンジル(メタ)アクリレートの配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、30~70質量%であることが好ましい。
【0054】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、硬化性成分を活性エネルギー線硬化性成分として用いる場合には活性エネルギー線硬化性接着剤組成物として用いることができる。前記活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は、活性エネルギー線に電子線などを用いる場合には、当該活性エネルギー線硬化性接着剤組成物は光重合開始剤を含有することは必要ではないが、活性エネルギー線に紫外線または可視光線を用いる場合には、光重合開始剤を含有するのが好ましい。
【0055】
光重合開始剤は、活性エネルギー線によって適宜に選択される。紫外線または可視光線により硬化させる場合には紫外線または可視光線開裂の光重合開始剤が用いられる。前記光重合開始剤としては、例えば、ベンジル、ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、3,3’-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノンなどのベンゾフェノン系化合物;4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、α-ヒドロキシ-α,α’-ジメチルアセトフェノン、2-メチル-2-ヒドロキシプロピオフェノン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどの芳香族ケトン化合物;メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフエノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)-フェニル]-2-モルホリノプロパン-1などのアセトフェノン系化合物;べンゾインメチルエーテル、べンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、べンゾインブチルエーテル、アニソインメチルエーテルなどのベンゾインエーテル系化合物;ベンジルジメチルケタールなどの芳香族ケタール系化合物;2-ナフタレンスルホニルクロリドなどの芳香族スルホニルクロリド系化合物;1-フェノン-1,1-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシムなどの光活性オキシム系化合物;チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2,4-ジメチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、2,4-ジクロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2,4-ジイソプロピルチオキサンソン、ドデシルチオキサントンなどのチオキサンソン系化合物;カンファーキノン;ハロゲン化ケトン;アシルホスフィノキシド;アシルホスフォナートなどがあげられる。
【0056】
前記光重合開始剤の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.5~5質量%含有するものであることが好ましく、1~4質量%含有するものであることがより好ましい。
【0057】
また、活性エネルギー線硬化性接着剤組成物を可視光線硬化型で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を用いることが好ましい。380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤については後述する。
【0058】
前記光重合開始剤としては、下記一般式(3)で表される化合物;
【化6】
(式中、RおよびRは-H、-CHCH、-iPrまたはClを示し、RおよびRは同一または異なっても良い)を単独で使用するか、あるいは一般式(3)で表される化合物と後述する380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤とを併用することが好ましい。一般式(3)で表される化合物を使用した場合、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を単独で使用した場合に比べて接着性に優れる。一般式(3)で表される化合物の中でも、RおよびRが-CHCHであるジエチルチオキサントンが特に好ましい。活性エネルギー線硬化性接着剤組成物中の一般式(3)で表される化合物の配合量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.1~5質量%であることが好ましく、0.3~3質量%であることがより好ましい。
【0059】
また、必要に応じて重合開始助剤を添加することが好ましい。重合開始助剤としては、トリエチルアミン、ジエチルアミン、N-メチルジエタノールアミン、エタノールアミン、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸メチル、4-ジメチルアミノ安息香酸エチル、4-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルなどが挙げられ、4-ジメチルアミノ安息香酸エチルが特に好ましい。重合開始助剤を使用する場合、その添加量は、組成物中の全量を100質量%としたとき、0.1~2質量%であることが好ましく、0.3~1質量%であることがより好ましい。
【0060】
また、必要に応じて公知の光重合開始剤を併用することができる。UV吸収能を有する光学機能層および基材フィルムは、380nm以下の光を透過しないため、光重合開始剤としては、380nm以上の光に対して高感度な光重合開始剤を使用することが好ましい。具体的には、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、ビス(η5-2,4-シクロペンタジエン-1-イル)-ビス(2,6-ジフルオロ-3-(1H-ピロール-1-イル)-フェニル)チタニウムなどが挙げられる。
【0061】
本発明においては、積層光学フィルム用接着剤組成物が(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーを含有することが好ましい。積層光学フィルム用接着剤組成物中にアクリル系オリゴマーを含有することで、該組成物に活性エネルギー線を照射・硬化させる際の硬化収縮を低減し、接着剤層と光学フィルムとの界面応力を低減することができる。その結果、接着剤層と光学フィルムとの密着性の低下を抑制することができる。
【0062】
積層光学フィルム用接着剤組成物は、塗工時の作業性や均一性を考慮した場合、低粘度であることが好ましいため、(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマーも低粘度であることが好ましい。低粘度であって、かつ接着剤層の硬化収縮を防止できるアクリル系オリゴマーとしては、重量平均分子量(Mw)が15000以下のものが好ましく、10000以下のものがより好ましく、5000以下のものが特に好ましい。一方、硬化物層(接着剤層)の硬化収縮を十分に抑制するためには、アクリル系オリゴマーの重量平均分子量(Mw)が500以上であることが好ましく、1000以上であることがより好ましく、1500以上であることが特に好ましい。アクリル系オリゴマーを構成する(メタ)アクリルモノマーとしては、具体的には例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、2-メチル-2-ニトロプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、S-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、n-ペンチル(メタ)アクリレート、t-ペンチル(メタ)アクリレート、3-ペンチル(メタ)アクリレート、2,2-ジメチルブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、4-メチル-2-プロピルペンチル(メタ)アクリレート、N-オクタデシル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸(炭素数1-20)アルキルエステル類、さらに、例えば、シクロアルキル(メタ)アクリレート(例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレートなど)、アラルキル(メタ)アクリレート(例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど)、多環式(メタ)アクリレート(例えば、2-イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレート、5-ノルボルネン-2-イル-メチル(メタ)アクリレート、3-メチル-2-ノルボルニルメチル(メタ)アクリレートなど)、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3-ジヒドロキシプロピルメチル-ブチル(メタ)メタクリレートなど)、アルコキシ基またはフェノキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシメトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレートなど)、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、グリシジル(メタ)アクリレートなど)、ハロゲン含有(メタ)アクリル酸エステル類(例えば、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチルエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなど)、アルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。これら(メタ)アクリレートは、単独使用または2種類以上併用することができる。アクリル系オリゴマー(E)の具体例としては、東亞合成社製「ARUFON」、綜研化学社製「アクトフロー」、BASFジャパン社製「JONCRYL」などが挙げられる。
【0063】
積層光学フィルム用接着剤組成物中のアクリル系オリゴマーの配合量は、3~40質量%であることが好ましく、5~20質量%であることがより好ましい。
【0064】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、シランカップリング剤を含有してもよい。シランカップリング剤の具体例としては、活性エネルギー線硬化性の化合物としてビニルトリクロルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0065】
好ましくは、2-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシランである。
【0066】
上記以外の活性エネルギー線硬化性ではないシランカップリング剤の具体例としては、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、3-クロロプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、ビス(トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。
【0067】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、カチオン重合硬化性接着剤組成物であってもよい。カチオン重合硬化性接着剤組成物に使用される硬化性成分(カチオン重合性化合物)としては、分子内にカチオン重合性官能基を1つ有する単官能カチオン重合性化合物と、分子内にカチオン重合性官能基を2つ以上有する多官能カチオン重合性化合物とに分類される。単官能カチオン重合性化合物は比較的液粘度が低いため、カチオン重合硬化性接着剤組成物に含有させることで液粘度を低下させることができる。また、単官能カチオン重合性化合物は各種機能を発現させる官能基を有している場合が多く、カチオン重合硬化性接着剤組成物に含有させることで、カチオン重合硬化性接着剤組成物及び/又はカチオン重合硬化性接着剤組成物の硬化物に各種機能を発現させることができる。多官能カチオン重合性化合物は、カチオン重合硬化性樹脂組成物の硬化物を3次元架橋させることができるため、カチオン重合硬化性接着剤組成物に含有させることが好ましい。単官能カチオン重合性化合物と多官能カチオン重合性化合物の比は、単官能カチオン重合性化合物100質量%に対して、多官能カチオン重合性化合物を10質量%から1000質量%の範囲で混合することが好ましい。カチオン重合性官能基としては、エポキシ基やオキセタニル基、ビニルエーテル基が挙げられる。エポキシ基を有する化合物としては、脂肪族エポキシ化合物、脂環式エポキシ化合物、芳香族エポキシ化合物が挙げられ、本発明のカチオン重合性樹脂組成物としては、硬化性や接着性に優れることから、脂環式エポキシ化合物を含有することが特に好ましい。脂環式エポキシ化合物としては、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレートのカプロラクトン変性物やトリメチルカプロラクトン変性物やバレロラクトン変性物などが挙げられ、具体的には、セロキサイド2021、セロキサイド2021A、セロキサイド2021P、セロキサイド2081、セロキサイド2083、セロキサイド2085(以上、ダイセル化学工業(株製)、サイラキュアUVR-6105、サイラキュアUVR-6107、サイラキュア30、R-6110(以上、ダウ・ケミカル日本(株)製)などが挙げられる。オキセタニル基を有する化合物は、カチオン重合性接着剤組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。オキセタニル基を有する化合物としては、3-エチル-3-ヒドロキシメチルオキセタン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニル)メトキシメチル]ベンゼン、3-エチル-3-(フェノキシメチル)オキセタン、ジ[(3-エチル-3-オキセタニル)メチル]エーテル、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、フェノールノボラックオキセタンなどが挙げられ、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-121、アロンオキセタンOXT-211、アロンオキセタンOXT-221、アロンオキセタンOXT-212(以上、東亞合成社製)などが市販されている。ビニルエーテル基を有する化合物は、カチオン重合性接着剤組成物の硬化性を改善したり、該組成物の液粘度を低下させる効果があるため、含有させることが好ましい。ビニルエーテル基を有する化合物としては、2-ヒドロキシエチルビニルエーテル、ジエチレングリコールモノビニルエーテル、4-ヒドロキシブチルビニルエーテル、ジエチレングリコールものビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノールモノビニルエーテル、トリシクロデカンビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、メトキシエチルビニルエーテル、エトキシエチルビニルエーテル、ペンタエリスリトール型テトラビニルエーテルなどが挙げられる。
【0068】
カチオン重合硬化性接着剤組成物は、硬化性成分として以上説明したエポキシ基を有する化合物、オキセタニル基を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物から選ばれる少なくとも1つの化合物を含有し、これらはいずれもカチオン重合により硬化するものであることから、光カチオン重合開始剤が配合される。この光カチオン重合開始剤は、可視光線、紫外線、X線、電子線などの活性エネルギー線の照射によって、カチオン種又はルイス酸を発生し、エポキシ基やオキセタニル基の重合反応を開始する。光カチオン重合開始剤としては、後述の光酸発生剤が好適に使用される。またカチオン重合性接着剤組成物を可視光線硬化性で用いる場合には、特に380nm以上の光に対して高感度な光カチオン重合開始剤を用いることが好ましいが、光カチオン重合開始剤は一般に、300nm付近またはそれより短い波長域に極大吸収を示す化合物であるため、それより長い波長域、具体的には380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤を配合することで、この付近の波長の光に感応し、光カチオン重合開始剤からのカチオン種または酸の発生を促進させることができる。光増感剤としては、例えば、アントラセン化合物、ピレン化合物、カルボニル化合物、有機硫黄化合物、過硫化物、レドックス系化合物、アゾおよびジアゾ化合物、ハロゲン化合物、光還元性色素などが挙げられ、これらは、2種類以上を混合して使用してもよい。特にアントラセン化合物は、光増感効果に優れるため好ましく、具体的にはアントラキュアUVS-1331、アントラキュアUVS-1221(川崎化成社製)が挙げられる。光増感剤の含有量は、0.1質量%~5質量%であることが好ましく、0.5質量%~3質量%であることがより好ましい。
【0069】
本発明においては、積層光学フィルム用接着剤組成物が、光酸発生剤を含有してもよい。積層光学フィルム用接着剤組成物が光酸発生剤を含有する場合、光酸発生剤を含有しない場合に比べて、接着剤層の耐水性および耐久性を飛躍的に向上することができる。光酸発生剤は、下記一般式(4)で表すことができる。
【0070】
【化7】
(ただし、Lは、任意のオニウムカチオンを表す。また、Xは、PF6 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、ジチオカルバメートアニオン、SCN-よりからなる群より選択されるカウンターアニオンを表す。)
【0071】
次に、一般式(4)中のカウンターアニオンXについて説明する。
【0072】
一般式(4)中のカウンターアニオンXは原理的に特に限定されるものではないが、非求核性アニオンが好ましい。カウンターアニオンXが非求核性アニオンの場合、分子内に共存するカチオンや併用される各種材料における求核反応が起こりにくいため、結果として一般式(4)で表記される光酸発生剤自身やそれを用いた組成物の経時安定性を向上させることが可能である。ここでいう非求核性アニオンとは、求核反応を起こす能力が低いアニオンを指す。このようなアニオンとしては、PF 、SbF 、AsF 、SbCl 、BiCl 、SnCl 、ClO 、B(C 、ジチオカルバメートアニオン、SCNなどが挙げられる。
【0073】
具体的には、「サイラキュアーUVI-6992」、「サイラキュアーUVI-6974」(以上、ダウ・ケミカル日本株式会社製)、「アデカオプトマーSP150」、「アデカオプトマーSP152」、「アデカオプトマーSP170」、「アデカオプトマーSP172」(以上、株式会社ADEKA製)、「Omnicat250」(IGM Resins B.V.社製)、「CI-5102」、「CI-2855」(以上、日本曹達社製)、「サンエイドSI-60L」、「サンエイドSI-80L」、「サンエイドSI-100L」、「サンエイドSI-110L」、「サンエイドSI-180L」(以上、三新化学社製)、「IK-1」、「CPI-100P」、「CPI-101A」、「CPI-110P」、「CPI-200K」、「CPI-210S」、「CPI-310B」、「CPI-410B」、「CPI-410S」(以上、サンアプロ株式会社製)、「WPI-069」、「WPI-113」、「WPI-116」、「WPI-041」、「WPI-044」、「WPI-054」、「WPI-055」、「WPAG-281」、「WPAG-567」、「WPAG-596」(以上、富士フイルム和光純薬社製)が本発明の光酸発生剤の好ましい具体例として挙げられる。
【0074】
本発明に係る積層光学フィルムは、接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムであって、接着剤層が前記記載の積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層である。
【0075】
図1に、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層を接着剤層として備える積層光学フィルムの一例を示す。図1に示す積層光学フィルム10は、第1光学フィルム1および第2光学フィルム2が、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層である接着剤層3を介して積層されている。本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、金属酸化物粒子が安定に分散していることに起因して、その硬化物層の屈折率が高い。このため、第1光学フィルム1および第2光学フィルム2として、例えば位相差フィルム、好ましくは液晶系の位相差フィルムを使用した場合、第1光学フィルム1と接着剤層3との屈折率差を小さくすることができ、同様に、第2光学フィルム2と接着剤層3との屈折率差を小さくすることができるため、積層光学フィルムでの干渉ムラを抑制し、視認性を向上することができる。
【0076】
本発明に係る積層光学フィルムは、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層である接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムであればよく、さらに任意の光学フィルムなどを備えていてもよい。図1に示す積層光学フィルム10は、第1光学フィルム1の上(視認側)に、偏光子5を備え、さらに透明保護フィルム4を備える。なお、第1光学フィルム1と偏光子5との間、偏光子5と透明保護フィルム4との間には通常、接着剤層を備えるが(図1では省略)、これらの接着剤層は、本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層である接着剤層3と同じでもよく、当業者に公知の積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層であってもよい。また、図1に示す積層光学フィルム10は、第2光学フィルムの下(表示装置側)に、粘着剤層6を介して有機発光ダイオード層7を備える。
【0077】
本発明に係る積層光学フィルム用接着剤組成物は、金属酸化物粒子を含有するが、さらにイソシアヌレート化合物およびポリシロキサン化合物からなる群より選択される少なくとも1種を含有する場合、金属酸化物粒子が安定に分散することに起因して、組成物の粘度を低く抑えることができる。このため、積層光学フィルム用接着剤組成物を光学フィルム上に薄く塗工できるため、接着剤層の厚みを薄くすることができる。本発明に係る積層光学フィルムが備える接着剤層の厚みは、0.1~5μmであることが好ましく、0.3~3μmであることがより好ましい。
【0078】
本発明において積層光学フィルムを構成する第1光学フィルムおよび第2光学フィルムとして、偏光子、透明保護フィルム、位相差フィルムなどが挙げられる。
【0079】
本発明において、偏光子は特に制限されず、各種のものを使用できる。偏光子としては、例えば、ポリビニルアルコール系フィルム、部分ホルマール化ポリビニルアルコール系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルムなどの親水性高分子フィルムに、ヨウ素を吸着させて一軸延伸したものなどが挙げられる。偏光子の厚みとしては例えば3~20μmが挙げられる。
【0080】
ただし、本発明においては高温高湿下の過酷な環境における加湿信頼性向上の観点から、偏光子として厚みが3μm以上、15μm以下の薄型偏光子を用いることが好ましい。特に12μm以下であるのが好ましく、さらには10μm以下、特には8μm以下であるのが好ましい。このような薄型偏光子は、厚みムラが少なく、視認性が優れており、また寸法変化が少ないため熱衝撃に対する耐久性に優れる。
【0081】
ポリビニルアルコール系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸した偏光子は、例えば、ポリビニルアルコールをヨウ素の水溶液に浸漬することによって染色し、元長の3~7倍に延伸することで作製することができる。必要に応じてホウ酸や硫酸亜鉛、塩化亜鉛などを含んでいても良いし、ヨウ化カリウムなどの水溶液に浸漬することもできる。さらに必要に応じて染色前にポリビニルアルコール系フィルムを水に浸漬して水洗してもよい。ポリビニルアルコール系フィルムを水洗することでポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色のムラなどの不均一を防止する効果もある。延伸はヨウ素で染色した後に行っても良いし、染色しながら延伸しても良いし、また延伸してからヨウ素で染色しても良い。ホウ酸やヨウ化カリウムなどの水溶液や水浴中でも延伸することができる。
【0082】
偏光子はホウ酸を含有していることが延伸安定性や加湿信頼性の点から好ましい。また、偏光子に含まれるホウ酸含有量は、貫通クラックの発生抑制の観点から、偏光子全量に対して22質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがさらに好ましい。延伸安定性や加湿信頼性の観点から、偏光子全量に対するホウ酸含有量は10質量%以上であることが好ましく、さらには12質量%以上であることが好ましい。
【0083】
薄型の偏光子としては、代表的には、
特許第4751486号明細書、
特許第4751481号明細書、
特許第4815544号明細書、
特許第5048120号明細書、
国際公開第2014/077599号パンフレット、
国際公開第2014/077636号パンフレット、
などに記載されている薄型偏光子またはこれらに記載の製造方法から得られる薄型偏光子を挙げることができる。
【0084】
前記薄型偏光子としては、積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法の中でも、高倍率に延伸できて偏光性能を向上させることのできる点で、特許第4751486号明細書、特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるようなホウ酸水溶液中で延伸する工程を含む製法で得られるものが好ましく、特に特許第4751481号明細書、特許4815544号明細書に記載のあるホウ酸水溶液中で延伸する前に補助的に空中延伸する工程を含む製法により得られるものが好ましい。これら薄型偏光子は、ポリビニルアルコール系樹脂(以下、PVA系樹脂ともいう)層と延伸用樹脂基材を積層体の状態で延伸する工程と染色する工程を含む製法による得ることができる。この製法であれば、PVA系樹脂層が薄くても、延伸用樹脂基材に支持されていることにより延伸による破断などの不具合なく延伸することが可能となる。
【0085】
透明保護フィルムを構成する材料としては、例えば透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れる熱可塑性樹脂が用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース系樹脂フィルムなどのセルロース樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂)、ポリアリレート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、およびこれらの混合物が挙げられる。透明保護フィルム中には任意の適切な添加剤が1種類以上含まれていてもよい。添加剤としては、例えば、紫外線吸収剤、酸化防止剤、滑剤、可塑剤、離型剤、着色防止剤、難燃剤、核剤、帯電防止剤、顔料、着色剤などが挙げられる。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量は、好ましくは50~100重量%、より好ましくは50~99重量%、さらに好ましくは60~98重量%、特に好ましくは70~97重量%である。透明保護フィルム中の上記熱可塑性樹脂の含有量が50重量%以下の場合、熱可塑性樹脂が本来有する高透明性などが十分に発現できないおそれがある。
【0086】
また透明保護フィルムを形成する材料としては、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性などに優れるものが好ましく、特に透湿度が150g/m/24h以下であるものがより好ましく、140g/m/24h以下のものが特に好ましく、120g/m/24h以下のものさらに好ましい。
【0087】
透明保護フィルムの偏光子を接着させない面には、ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層ないしアンチグレア層などの機能層を設けることができる。なお、上記ハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、拡散層やアンチグレア層などの機能層は、透明保護フィルムそのものに設けることができるほか、別途、透明保護フィルムとは別体のものとして設けることもできる。
【0088】
透明保護フィルムの厚みは、適宜に決定しうるが、一般には強度や取扱性などの作業性、薄層性などの点より1~500μm程度であり、1~300μmが好ましく、5~200μmがより好ましい。さらには10~200μmが好ましく、20~80μmが好ましい。
【0089】
前記透明保護フィルムとして、正面位相差が40nm以上および/または、厚み方向位相差が80nm以上の位相差を有する位相差フィルムを用いることができる。正面位相差は、通常、40~200nmの範囲に、厚み方向位相差は、通常、80~300nmの範囲に制御される。透明保護フィルムとして位相差フィルムを用いる場合には、当該位相差フィルムが透明保護フィルムとしても機能するため、薄型化を図ることができる。
【0090】
位相差フィルムとしては、高分子素材を一軸または二軸延伸処理してなる複屈折性フィルム、液晶ポリマーの配向フィルム、液晶ポリマーの配向層をフィルムにて支持したものなどがあげられる。位相差フィルムの厚さも特に制限されないが、1~150μm程度が一般的である。
【0091】
位相差フィルムとしては、下記式(1)ないし(3):
0.70<Re[450]/Re[550]<0.97・・・(1)
1.5×10-3<Δn<6×10-3・・・(2)
1.13<NZ<1.50・・・(3)
(式中、Re[450]およびRe[550]は、それぞれ、23℃における波長450nmおよび550nmの光で測定した位相差フィルムの面内の位相差値であり、Δnは位相差フィルムの遅相軸方向、進相軸方向の屈折率を、それぞれnx、nyとしたときのnx-nyである面内複屈折であり、NZはnzを位相差フィルムの厚み方向の屈折率としたときの、厚み方向複屈折であるnx-nzと面内複屈折であるnx-nyとの比である)を満足する逆波長分散型の位相差フィルムを用いてもよい。
【0092】
本発明に係る積層光学フィルムにおいては位相差層が設けられてもよい。位相差層は単層であっても複数層であってもよく、位相差層が偏光子の保護層を兼ねてもよい。
【0093】
位相差層の形成には液晶性化合物が好ましく用いられ 該液晶性化合物を含む溶媒を、例えばワイヤーバー、ギャップコーター、コンマコーター、グラビアコーター、スロットダイなどを使用して塗布することができる。この際、塗布された液晶性溶液は、自然乾燥させてもよいし、加熱乾燥させてもよい。なお、液晶性溶液は、等方相-液晶相転移濃度よりも低い濃度、即ち、等方相状態で塗工することが好ましい。この場合、ラビング処理や光配向などの方法により安定的に配向させることができる。
【0094】
本発明に係る積層光学フィルムは、例えば以下の製造方法により製造可能である。
接着剤層を介して、少なくとも第1光学フィルムおよび第2光学フィルムが積層された積層光学フィルムの製造方法であって、前記第1光学フィルムの貼合面および前記第2光学フィルムの貼合面の一方または両方に積層光学フィルム用接着剤組成物を塗工する塗工工程と、前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムを貼り合わせる貼合工程と、前記第1光学フィルム面側または前記第2光学フィルム面側から活性エネルギー線を照射して、少なくとも前記積層光学フィルム用接着剤組成物を硬化させることにより形成された前記接着剤層を介して、前記第1光学フィルムおよび前記第2光学フィルムを接着させる接着工程とを含み、前記積層光学フィルム用接着剤組成物が、少なくとも2枚の光学フィルムを接着させるための積層光学フィルム用接着剤組成物であって、硬化性成分、金属酸化物粒子および下記一般式(1):
【化8】

で表される化合物(ただし、Xは反応性基であり、Yは分岐鎖を有してもよい炭素数1~12のアルキレン基、または置換基を有してもよいフェニレン基であり、RおよびRはそれぞれ独立に、水素原子、置換基を有してもよい、脂肪族炭化水素基、アリール基、またはヘテロ環基を表す)を含有するものであることを特徴とする積層光学フィルムの製造方法。
【0095】
上記塗工工程において、第1光学フィルムの貼合面および第2光学フィルムの貼合面の一方または両方に積層光学フィルム用接着剤組成物を塗工する方法としては、組成物の粘度や目的とする厚みによって適宜選択され、例えば、リバースコーター、グラビアコーター(ダイレクト,リバースやオフセット)、バーリバースコーター、ロールコーター、ダイコーター、バーコーター、ロッドコーターなどが挙げられる。
【0096】
なお第1光学フィルムおよび/または第2光学フィルムは、塗工工程前に表面改質処理を行ってもよい。特に光学フィルムとして偏光子を使用する場合、偏光子は表面改質処理を行うことが好ましい。表面改質処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、イトロ処理などの処理が挙げられ、特にコロナ処理であることが好ましい。コロナ処理を行うことで偏光子表面にカルボニル基やアミノ基などの反応性官能基が生成し、接着剤層との密着性が向上する。また、アッシング効果により表面の異物が除去されたり、表面の凹凸が軽減されたりして、外観特性に優れる積層光学フィルムを作成することができる。
【0097】
上記のように塗工した積層光学フィルム用接着剤組成物を介して、第1光学フィルムと第2光学フィルムとをロールラミネーターなどを使用して貼り合わせる(貼合工程)。
【0098】
第1光学フィルムと第2光学フィルムとを貼り合わせた後に、活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)を照射し、積層光学フィルム用接着剤組成物を硬化して接着剤層を形成する。活性エネルギー線(電子線、紫外線、可視光線など)の照射方向は、任意の適切な方向から照射することができる。
【0099】
電子線を照射する場合の照射条件は、上記積層光学フィルム用接着剤組成物を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5kV~300kVであり、さらに好ましくは10kV~250kVである。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムにダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5~100kGy、さらに好ましくは10~75kGyである。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムにダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
【0100】
電子線照射は、通常、不活性ガス中で照射を行うが、必要であれば大気中や酸素を少し導入した条件で行ってもよい。第1光学フィルムおよび第2光学フィルムの材料によるが、酸素を適宜導入することによって、最初に電子線があたる第1光学フィルムおよび第2光学フィルム面にあえて酸素阻害を生じさせ、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムへのダメージを防ぐことができ、接着剤にのみ効率的に電子線を照射させることができる。
【0101】
本発明に係る積層光学フィルムを製造する場合、活性エネルギー線として、波長範囲380nm~450nmの可視光線を含むもの、特には波長範囲380nm~450nmの可視光線の照射量が最も多い活性エネルギー線を使用することが好ましい。紫外線、可視光線を使用する場合であって、光学フィルムとして紫外線吸収能を付与した透明保護フィルム(紫外線不透過型透明保護フィルム)を使用する場合、およそ380nmより短波長の光を吸収するため、380nmより短波長の光は硬化性樹脂組成物に到達せず、その重合反応に寄与しない。さらに、第1光学フィルムおよび第2光学フィルムによって吸収された380nmより短波長の光は熱に変換され、第1光学フィルムまたは第2光学フィルム自体が発熱し、積層光学フィルムのカール・シワなど不良の原因となる。そのため、本発明において紫外線、可視光線を採用する場合、活性エネルギー線発生装置として380nmより短波長の光を発光しない装置を使用することが好ましく、より具体的には、波長範囲380~440nmの積算照度と波長範囲250~370nmの積算照度との比が100:0~100:50であることが好ましく、100:0~100:40であることがより好ましい。本発明に係る積層光学フィルムを製造する場合、活性エネルギー線としては、ガリウム封入メタルハライドランプ、波長範囲380~440nmを発光するLED光源が好ましい。あるいは、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、白熱電球、キセノンランプ、ハロゲンランプ、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、ガリウムランプ、エキシマレーザーまたは太陽光などの紫外線と可視光線を含む光源を使用することができ、バンドパスフィルターを用いて380nmより短波長の紫外線を遮断して用いることもできる。第1光学フィルムおよび第2光学フィルムの間の接着剤層の接着性能を高めつつ、積層光学フィルムのカールを防止するためには、ガリウム封入メタルハライドランプを使用し、かつ380nmより短波長の光を遮断可能なバンドパスフィルターを介して得られた活性エネルギー線、またはLED光源を使用して得られる波長405nmの活性エネルギー線を使用することが好ましい。
【0102】
本発明に係る積層光学フィルムを連続ラインで製造する場合、ライン速度は、積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化時間によるが、好ましくは1~500m/min、より好ましくは5~300m/min、さらに好ましくは10~100m/minである。ライン速度が小さすぎる場合は、生産性が乏しい、あるいは第1光学フィルムおよび第2光学フィルムへのダメージが大きすぎ、耐久性試験などに耐え得る積層光学フィルムが作製できない。ライン速度が大きすぎる場合は、積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化が不十分となり、目的とする接着性が得られない場合がある。
【0103】
本発明に係る積層光学フィルムには、液晶セルなどの他部材と接着するための粘着層を設けることもできる。粘着層を形成する粘着剤は特に制限されないが、例えばアクリル系重合体、シリコーン系ポリマー、ポリエステル、ポリウレタン、ポリアミド、ポリエーテル、フッ素系やゴム系などのポリマーをベースポリマーとするものを適宜に選択して用いることができる。特に、アクリル系粘着剤の如く光学的透明性に優れ、適度な濡れ性と凝集性と接着性の粘着特性を示して、耐候性や耐熱性などに優れるものが好ましく用いうる。
【0104】
粘着層は、異なる組成または種類などのものの重畳層として本発明に係る積層光学フィルムの片面または両面に設けることもできる。また両面に設ける場合に、本発明に係る積層光学フィルムの表裏において異なる組成や種類や厚みなどの粘着層とすることもできる。粘着層の厚みは、使用目的や接着力などに応じて適宜に決定でき、一般には1~500μmであり、1~200μmが好ましく、特に1~100μmが好ましい。
【0105】
粘着層の露出面に対しては、実用に供するまでの間、その汚染防止などを目的にセパレータが仮着されてカバーされる。これにより、通例の取扱状態で粘着層に接触することを防止できる。セパレータとしては、上記厚み条件を除き、例えばプラスチックフィルム、ゴムシート、紙、布、不織布、ネット、発泡シートや金属箔、それらのラミネート体などの適宜な薄葉体を、必要に応じシリコーン系や長鎖アルキル系、フッ素系や硫化モリブデンなどの適宜な剥離剤でコート処理したものなどの、従来に準じた適宜なものを用いうる。
【0106】
本発明に係る積層光学フィルムは液晶表示装置などの各種装置の形成などに好ましく用いることができる。液晶表示装置の形成は、従来に準じて行いうる。すなわち液晶表示装置は一般に、液晶セルと偏光フィルムまたは積層光学フィルム、および必要に応じての照明システムなどの構成部品を適宜に組立てて駆動回路を組込むことなどにより形成されるが、本発明においては本発明による偏光フィルムまたは積層光学フィルムを用いる点を除いて特に限定はなく、従来に準じうる。液晶セルについても、例えばTN型やSTN型、π型などの任意なタイプのものを用いうる。
【0107】
液晶セルの片側または両側に光学積層体を配置した液晶表示装置や、照明システムにバックライトあるいは反射板を用いたものなどの適宜な液晶表示装置を形成することができる。その場合、本発明による光学積層体は液晶セルの片側または両側に設置することができる。両側に光学積層体を設ける場合、それらは同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、液晶表示装置の形成に際しては、例えば拡散板、アンチグレア層、反射防止膜、保護板、プリズムアレイ、レンズアレイシート、光拡散板、バックライトなどの適宜な部品を適宜な位置に1層または2層以上配置することができる。
【実施例0108】
以下に、本発明の実施例を記載するが、本発明の実施形態はこれらに限定されない。
【0109】
(積層光学フィルム用接着剤組成物の調整)
表1に記載の配合表に従い、以下に示す各成分を混合して50℃で1時間撹拌し、実施例1~6および比較例1~2で使用する積層光学フィルム用接着剤組成物を得た。表中の数値は組成物全量を100質量%としたときの重量%を示す。
【0110】
積層光学フィルム用接着剤組成物を構成する各材料を以下に示す。
(i)金属酸化物粒子
・ジルコニア分散体1:平均粒子径100nmの酸化ジルコニウムのフェノキシベンジルアクリレート分散液(粒子濃度50重量%)
・ジルコニア分散体2:平均粒子径20nmの酸化ジルコニウムのフェノキシベンジルアクリレート分散液(粒子濃度50重量%)
・ジルコニア分散体3:平均粒子径8nmの酸化ジルコニウムのフェノキシベンジルアクリレート分散液(粒子濃度50重量%)
・ジルコニア分散体4:平均粒子径8nmの酸化ジルコニウムのフェノキシジエチレングリコールアクリレート分散液(粒子濃度50重量%)
・ジルコニア分散体5:平均粒子径8nmの酸化ジルコニウムのフェノキシエチルアクリレート分散液(粒子濃度50重量%)
・チタニア分散体1:平均粒子径20nmの酸化チタニウムのフェノキシベンジルアクリレート分散液(粒子濃度30重量%)
(ii)芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレート
・フェノキシベンジルアクリレート:商品名「ライトアクリレートPOB-A」、共栄社化学社製
・フェノキシエチルアクリレート:商品名「ライトアクリレートPO-A」、共栄社化学社製
(iii)硬化性成分
・一般式(1)で表される化合物(3-メタクリルアミドフェニルボロン酸):商品名「MAPBA」、純正化学社製
・水酸基含有(メタ)アクリレート(4-ヒドロキシブチルアクリレート):商品名「4HBA」、三菱ケミカル社製
・アクリロイルモルフォリン:商品名「ACMO」、KJケミカルズ社製
・多官能ラジカル重合性化合物(トリプロピレングリコールジアクリレート):商品名「アロニックスM-220」、東亞合成社製
(iv)レベリング剤((メタ)アクリルロイル基を有する変性イソシアヌレート化合物および(メタ)アクリルロイル基を有する変性ポリシロキサン化合物を含有するレベリング剤):商品名「BYK UV-3505」、BYK社製
(v)(メタ)アクリルモノマーを重合してなるアクリル系オリゴマー:商品名「ARUFON UP-1190」、東亞合成社製
(vi)光重合開始剤
・光重合開始剤1(ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド):商品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製
・光重合開始剤2(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン):商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製
・光重合開始剤3(ジエチルチオキサントン):商品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製))
なお、上記ジルコニア分散体1~ジルコニア分散体5およびチタニア分散体1は以下の方法により製造した。
【0111】
(分散剤Aの合成)
トリスチレン化フェノール415g(1モル)および水酸化カリウム1g(0.018モル)をオートクレーブに仕込み、均一に混合した。この反応系が130℃の条件で、該反応系にエチレンオキシド(EO)352g(8モル)を滴下した。エチレンオキシドの滴下終了後、引き続き130℃において圧力を0.1MPaに維持して1時間熟成させ、トリスチレン化フェノールのEO8モル付加物を得た。
【0112】
上記トリスチレン化フェノールEO8モル付加物767g(1モル)およびモノクロロ酢酸ナトリウム152g(1.3モル)を反応器に入れ、均一になるように撹拌した。次いで、反応系が60℃の条件で水酸化ナトリウム52gを添加した後、80℃に昇温させ、3時間熟成させた。熟成後、50℃まで冷却し、同温度で98%硫酸117g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去して分散剤Aを得た。
【0113】
(ジルコニア分散体1の調製)
酸化ジルコニウムの水分散液(シグマ-アルドリッチ製、平均粒径100nm、酸化ジルコニウム固形分濃度:10%)を限外濾過膜を用いて濃縮し、得られた濃縮分散液に得られた濾液量と等量のメタノールを投入して、分散液の濃縮とメタノールによる希釈を連続的に且つ同時に並行して行うことによって、分散液中の酸化ジルコニウム粒子濃度を10重量%に維持しつつ、分散液の分散媒を水からメタノールに置換し、酸化ジルコニウム粒子濃度10重量%を得た。得られた酸化ジルコニウムのメタノール分散液100部に対し、分散剤A0.5部と、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」;以下、「POB-A」と表記する。)9.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体1を得た。このジルコニア分散体Aは、酸化ジルコニウム/分散剤A/POB-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
【0114】
(ジルコニア分散体2の調製)
酸化ジルコニウムのメチルエチルケトン分散液(日産化学工業製、グレード名「OZ-S40K-AC」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):20nm、酸化ジルコニウム固形分濃度:30%)100部に対し、分散剤A1.5部と、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」;以下、「POB-A」と表記する。)28.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体2を得た。このジルコニア分散体Aは、酸化ジルコニウム/分散剤A/POB-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
【0115】
(ジルコニア分散体3の調製)
酸化ジルコニウムのメタノール分散液(堺化学工業製、グレード名「SZR-CM」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):8nm、酸化ジルコニウム固形分濃度:30%)100部に対し、分散剤A1.5部と、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」;以下、「POB-A」と表記する。)28.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体Aを得た。このジルコニア分散体3は、酸化ジルコニウム/分散剤A/POB-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
【0116】
(ジルコニア分散体4の調製)
酸化ジルコニウムのメタノール分散液(堺化学工業製、グレード名「SZR-CM」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):8nm、酸化ジルコニウム固形分濃度:30%)100部に対し、分散剤A1.5部と、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートP2H-A」;以下、「P2H-A」と表記する。)28.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体4を得た。このジルコニア分散体Aは、酸化ジルコニウム/分散剤A/P2H-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
【0117】
(ジルコニア分散体5の調製)
酸化ジルコニウムのメタノール分散液(堺化学工業製、グレード名「SZR-CM」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):8nm、酸化ジルコニウム固形分濃度:30%)100部に対し、分散剤A1.5部と、フェノキシエチルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPO-A」;以下、「PO-A」と表記する。)28.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体5を得た。このジルコニア分散体Aは、酸化ジルコニウム/分散剤A/PO-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
【0118】
(チタニア分散体1の調製)
酸化チタニウムのメタノール分散液(日産化学工業製、グレード名「OT-RA305M7-20」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):20nm、酸化チタニウム固形分濃度:30%)100部に対し、分散剤A1.5部と、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」;以下、「POB-A」と表記する。)68.5部とを加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体Aを得た。このジルコニア分散体Aは、酸化ジルコニウム/分散剤A/POB-Aを、30/1.5/68.5の重量比で含有する。
【0119】
以下に積層光学フィルムを構成する各材料を以下に示す。
【0120】
<偏光子の製造>
非晶性PET基材に9μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を生成し、次に、延伸積層体を染色によって着色積層体を生成し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された5μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体を生成した。このような2段延伸によって非晶性PET基材に製膜されたPVA層のPVA分子が高次に配向され、染色によって吸着されたヨウ素がポリヨウ素イオン錯体として一方向に高次に配向された薄型偏光子を構成する、厚さ5μmのPVA層を含む光学フィルム積層体を得た。
【0121】
<透明保護フィルム>
「TAC」;トリアセチルセルロース(TAC)フィルム(商品名「TJ25UL」、厚み25μm、富士フイルム社製)
【0122】
<光重合性液晶組成物>
ネマチック液晶相を示す光重合性液晶化合物(BASF製「Paliocolor LC242」)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度30重量%の溶液を調製した。この溶液に、界面活性剤(ビック・ケミー製「BYK-360」)および光重合開始剤(IGM Resins製「Omnirad907」)を添加して、液晶組成物溶液を調製した。レベリング剤および重合開始剤の添加量は、光重合性液晶化合物100重量部に対して、それぞれ、0.01重量部および3重量部とした。
【0123】
<λ/2位相差フィルム>
二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み:33μm、正面レターデーション:135nm)を基材として、基材上に上記の液晶組成物を位相差がλ/2となるようにバーコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量400mJ/cmの紫外線を照射して光硬化を行いホモジニアス配向液晶層が設けられた積層体を得た。
【0124】
<λ/4位相差フィルム>
二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み:33μm、正面レターデーション:135nm)を基材として、基材上に上記の液晶組成物を位相差がλ/4となるようにバーコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量400mJ/cmの紫外線を照射して光硬化を行いホモジニアス配向液晶層が設けられた積層体を得た。
【0125】
<偏光フィルム(1)>
MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:700本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、コロナ処理機を用いて処理密度50W・min/mのコロナ処理を行った上記偏光子のPVA層の表面のコロナ処理面に比較例2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物を塗工し、同コロナ処理機を用いて処理密度50W・min/mのコロナ処理を行ったTACフィルムのコロナ処理面と、ロール機で貼り合わせた(貼り合わせのライン速度は15m/min)。その後、TACフィルム側から、可視光線照射装置(ヘレウス社製Light HAMMER10 Mark III、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm、活性エネルギー線の照度と積算照射量は、Power Puck 2(EIT社製、UVVの測定値))により活性エネルギー線を照射して積層光学フィルム用接着剤組成物を硬化させることにより、積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化層を介して、非晶性PET基材と偏光子とTACフィルムとが積層された偏光フィルム(1)を製造した。積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層の厚みは1μmであった。
【0126】
<偏光フィルム(2)>
次いで、偏光フィルム(1)の非晶性PET基材を剥離し、その剥離面の偏光子面にコロナ処理機を用いて処理密度50W・min/mのコロナ処理を行った。MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:700本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いてコロナ処理が付されている偏光子に比較例2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物を塗工し、同コロナ処理機を用いて処理密度50W・min/mのコロナ処理を行ったλ/2位相差フィルムのホモジニアス配向液晶層面と、ロール機でλ/2位相差フィルムの遅層軸が偏光子の透過軸と15°の関係になるように貼り合わせた(貼り合わせのライン速度は15m/min)。その後、λ/2位相差フィルム側から、可視光線照射装置(ヘレウス社製Light HAMMER10 Mark III、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm、活性エネルギー線の照度と積算照射量は、Power Puck 2(EIT社製、UVVの測定値))により活性エネルギー線を照射して積層光学フィルム用接着剤組成物を硬化させることにより、積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化層を介して、λ/2位相差フィルムと偏光子とTACフィルムとが積層された偏光フィルム(2)を製造した。積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層の厚みは1μmであった。
【0127】
(積層光学フィルムの製造例)
偏光フィルム(2)の二軸延伸ノルボルネン系フィルムを剥離し、その剥離面のλ/2位相差フィルム面にコロナ処理機を用いて処理密度50W・min/mのコロナ処理を行った。 MCDコーター(富士機械社製)(セル形状:ハニカム、グラビアロール線数:700本/inch、回転速度140%/対ライン速)を用いて、コロナ処理が付されているλ/2位相差フィルム面に、表1に記載の配合である実施例1~6および比較例1~2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物を塗工し、同コロナ処理機を用いて処理密度50W・min/mのコロナ処理を行ったλ/4位相差フィルムのホモジニアス配向液晶層面と、ロール機でλ/4位相差フィルムの遅層軸が偏光子の透過軸と75°の関係になるようにλ/2位相差フィルム面と貼り合わせた(貼り合わせのライン速度は15m/min)。その後、λ/4位相差フィルム側から、可視光線照射装置(ヘレウス社製Light HAMMER10 Mark III、バルブ:Vバルブ、ピーク照度:1600mW/cm、積算照射量1000/mJ/cm、活性エネルギー線の照度と積算照射量は、Power Puck 2(EIT社製、UVVの測定値))により活性エネルギー線を照射して、実施例1~6および比較例1~2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物を硬化させることにより、積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化層を介して、λ/4位相差フィルム面とλ/2位相差フィルムと偏光子とTACフィルムが積層された積層光学フィルムを製造した。積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層の厚みは1μmであった。
【0128】
各評価方法の詳細は以下のとおりである。
【0129】
<積層光学フィルム用接着剤組成物の粘度>
実施例1~6および比較例1~2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の粘度は、粘度は東機産業社製のE型粘度計TVE22LTを使用して測定した。
【0130】
<接着剤層の屈折率測定>
シクロオレフィン系ポリマーフィルム(COPフィルム)に、実施例1~6および比較例1~2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物を塗工し(厚み100μm)、塗工面に同じCOPフィルムを貼り合わせて、活性エネルギー線照射装置により上記可視光線を照射して、実施例1~6および比較例1~2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層(単体膜)を得た。得られた硬化物層をプリズムカプラーSPA-4000(サイロンテクノロジー製)を用いて、面内の屈折率、厚さ方向の屈折率をそれぞれ測定し、これら平均値を接着剤層の平均屈折率とした。測定温度は23℃、測定波長は594nmとした。
【0131】
<積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化収縮率>
硬化収縮率は樹脂硬化収縮測定装置CUSTRON EU201C(アクロエッジ社製)を用い、レーザー変位計にて測定し、特開2013-104869記載の方法により硬化収縮率を算出した。
【0132】
<積層光学フィルム間のピール力>
上記の積層光学フィルムの二軸延伸ノルボルネン系フィルムを剥離し、λ/4位相差フィルム面に、両面テープ(No.500、日東電工社製)を貼り合わせた。さらに、200mm×15mmの大きさに切り出し、λ/4位相差フィルムとλ/2位相差フィルムとの間にカッターナイフで切り込みを入れた後、両面テープの剥離フィルムを剥がし、粘着剤面をガラス板に貼り合わせた。角度自在タイプ粘着・皮膜剥離解析装置(VPA-2、協和界面化学社製)により、90度方向にλ/4位相差フィルムとλ/2位相差フィルムとを剥離速度20000mm/minで剥離し、その剥離強度(N/15mm)を測定した。
【0133】
【表1】
【0134】
金属酸化物粒子を配合しない比較例1~2に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層(接着剤層)に比して、金属酸化物粒子を配合した実施例1~6に係る積層光学フィルム用接着剤組成物の硬化物層では、屈折率向上と接着剤層の接着力向上とが両立できており、さらに接着剤層の硬化収縮率を低減できることがわかる。
図1