(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173240
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】X線コンピュータ断層撮影装置
(51)【国際特許分類】
A61B 6/03 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
A61B6/03 330B
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091534
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】594164542
【氏名又は名称】キヤノンメディカルシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001771
【氏名又は名称】弁理士法人虎ノ門知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】西島 輝
【テーマコード(参考)】
4C093
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093BA17
4C093EB30
4C093EE16
4C093FA13
4C093FA18
4C093FA59
4C093FB11
(57)【要約】
【課題】適切な容量の高圧電源を用いることができるようにすること。
【解決手段】実施形態に係るX線コンピュータ断層撮影装置は、X線検出器と、高圧電源と、判定部とを備える。前記X線検出器は、X線を検出する。前記高圧電源は、前記X線検出器を動作させる電力を供給する。前記判定部は、本スキャンの実行前に、前記本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超えるか否かを判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
X線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器を動作させる電力を供給する高圧電源と、
本スキャンの実行前に、前記本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超えるか否かを判定する判定部と
を備える、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項2】
前記判定部による判定の結果に基づいて、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超える場合に操作者に通知する通知部をさらに備える、
請求項1に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項3】
前記判定部は、前記スキャンプロトコル及び前記被検体の情報から、前記本スキャンにおいて必要とされる前記X線検出器の消費電流を導出し、当該消費電流が前記高圧電源の定格電流容量を超える場合に、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超えると判定する、
請求項1又は2に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項4】
X線を検出するX線検出器と、
前記X線検出器を動作させる電力を供給する高圧電源と、
本スキャンの実行前に、前記本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超える場合に操作者に通知する通知部と
を備える、X線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項5】
前記通知部は、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超える場合に、前記スキャンプロトコルを変更することを促す情報を前記操作者に通知する、
請求項2又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項6】
前記通知部は、前記スキャンプロトコルを変更することを促す情報として、スキャン可能なスキャンプロトコルを提案する情報を前記操作者に通知する、
請求項5に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項7】
前記通知部は、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超える場合に、前記被検体の位置を変更することを促す情報を前記操作者に通知する、
請求項2又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項8】
前記通知部は、前記位置決め撮影が行われてから前記本スキャンが行われるまでの間に前記被検体が動くことによって前記高圧電源の出力の再判定が必要となった場合にさらに操作者に通知する、
請求項2又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項9】
前記被検体の情報は、前記本スキャンの前に撮影された前記被検体のスキャノ画像の情報である、
請求項1又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項10】
前記被検体の情報は、カメラによって撮影された前記被検体のカメラ画像の情報である、
請求項1又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【請求項11】
前記高圧電源は、前記X線を電荷に変換する変換部に対してバイアス電圧を引加するように構成されている、
請求項1又は4に記載のX線コンピュータ断層撮影装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書及び図面に開示の実施形態は、X線コンピュータ断層撮影装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、X線コンピュータ断層撮影(Computed Tomography:CT)装置の一例として、X線を検出するX線検出器としてフォトンカウンティング検出器を備えたフォトンカウンティングCTが知られている。
【0003】
ここで、一般的に、フォトンカウンティングCTでは、フォトンカウンティング検出器を動作させる電力を供給する高圧電源が必要となるが、設計上、実装面積やコスト等の制約とシステムの最大線量との間でボトルネックやトレードオフが生じるため、適切な容量の高圧電源を選定することが難しい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2001-509048号公報
【特許文献2】特開2004-103345号公報
【特許文献3】特表2018-520815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本明細書及び図面に開示の実施形態が解決しようとする課題の一つは、適切な容量の高圧電源を用いることができるようにすることである。ただし、本明細書及び図面に開示の実施形態により解決しようとする課題は上記課題に限られない。後述する実施形態に示す各構成による各効果に対応する課題を他の課題として位置付けることもできる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態に係るX線CT装置は、X線検出器と、高圧電源と、判定部とを備える。前記X線検出器は、X線を検出する。前記高圧電源は、前記X線検出器を動作させる電力を供給する。前記判定部は、本スキャンの実行前に、前記本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、前記本スキャンにおいて前記高圧電源の出力が基準を超えるか否かを判定する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【
図3】
図3は、第2の実施形態に係るX線CT装置によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、X線CT装置の実施形態について詳細に説明する。
【0009】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るX線CT装置の構成例を示す図である。
【0010】
例えば、
図1に示すように、本実施形態に係るX線CT装置1は、架台装置10と、寝台装置30と、コンソール装置40とを有する。ここで、本実施形態では、非チルト状態での回転フレーム13の回転軸又は寝台装置30の天板33の長手方向をZ軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し水平である軸方向をX軸方向、Z軸方向に直交し、床面に対し垂直である軸方向をY軸方向とそれぞれ定義するものとする。
【0011】
架台装置10は、患者等である被検体PにX線を照射し、被検体Pを透過したX線を検出して、コンソール装置40に出力する装置である。具体的には、架台装置10は、X線管11と、X線検出器12と、回転フレーム13と、X線高電圧装置14と、制御装置15と、ウェッジ16と、コリメータ17と、DAS(Data Acquisition System)18と、高圧電源(High-Voltage Power Supply:HVPS)19とを備える。なお、
図1では、図示の便宜上、X軸方向から見た架台装置10とZ軸方向から見た架台装置10とを示しているが、実際には、X線CT装置1は、一つの架台装置10を有している。
【0012】
X線管11は、熱電子を発生する陰極(フィラメント)と、熱電子の衝突を受けてX線を発生する陽極(ターゲット)とを有する真空管である。X線管11は、X線高電圧装置14からの高電圧の印加により、陰極から陽極に向けて熱電子を照射することで、被検体Pに対し照射するX線を発生する。例えば、X線管11は、回転する陽極に熱電子を照射することでX線を発生させる回転陽極型のX線管である。
【0013】
ウェッジ16は、X線管11から照射されたX線量を調節するためのフィルタである。具体的には、ウェッジ16は、X線管11から被検体Pへ照射されるX線が、予め定められた分布になるように、X線管11から照射されたX線を透過して減衰するフィルタである。例えば、ウェッジ16は、所定のターゲット角度や所定の厚みとなるようにアルミニウムを加工したフィルタである。なお、ウェッジ16は、ウェッジフィルタ(wedge filter)や、ボウタイフィルタ(bow-tie filter)とも呼ばれる。
【0014】
X線絞り17は、ウェッジ16を透過したX線の照射範囲を絞り込むための鉛板等を含み、複数の鉛板等を組み合わせることによってスリットを形成している。なお、X線絞り17は、コリメータと呼ばれる場合もある。
【0015】
X線検出器12は、X線管11から照射されて被検体Pを通過したX線を検出し、当該X線の線量に応じた電気信号をDAS18に出力する。例えば、X線検出器12は、X線管11の焦点を中心として一つの円弧に沿ってチャネル方向に複数の検出素子が配列された複数の検出素子列を有する。例えば、X線検出器12は、チャネル方向に複数の検出素子が配列された検出素子列が列方向(スライス方向、row方向とも呼ばれる)に複数配列された構造を有する。
【0016】
本実施形態では、X線検出器12は、HVPS19から印加されるバイアス電圧によってX線を電荷に変換する変換部を有する、直接変換型の検出器である。具体的には、X線検出器12は、入射したX線を電気信号に変換する半導体素子を検出素子として有し、HVPS19から供給される電力によって動作するフォトンカウンティング検出器である。ここで、X線検出器12は、それぞれが半導体素子である複数の検出素子と、当該複数の検出素子から出力される信号を処理する複数の電子素子とを有する。
【0017】
検出素子は、X線のフォトン(光子)が入射するごとに、当該X線のフォトンのエネルギー値を計測可能な信号を出力する。具体的には、検出素子は、複数の電極から構成され、X線のフォトンが入射するごとに、入射したX線の線量に応じた電気信号(パルス)を出力する。この電気信号(パルス)の数をカウント(計数)することで、各検出素子に入射したX線のフォトンの数をカウントすることができる。また、この電気信号に対して、所定の演算処理を行なうことで、当該信号の出力を引き起こしたX線のフォトンのエネルギー値を計測することができる。
【0018】
電子素子は、検出素子から出力される個々の電荷量に比例した高さを有する電気パルスを波高弁別することで、検出素子に入射したX線のフォトンの数をカウントする。また、電子素子は、個々の電荷の大きさに基づく演算処理を行なうことで、カウントしたX線のフォトンのエネルギーを計測する。また、電子素子は、検出素子からの信号をA/D(Analog to Digital)変換することで、X線のフォトンの数のカウント結果をデジタルデータとしてDAS18に出力する。例えば、電子素子は、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)によって実現される。
【0019】
DAS18は、X線検出器12から出力される検出データを収集する。そして、DAS18は、収集した検出データをコンソール装置40へ転送する。
【0020】
X線高電圧装置14は、変圧器(トランス)及び整流器等の電気回路を有し、X線管11に印加する高電圧を発生する機能を有する高電圧発生装置と、X線管11が照射するX線出力に応じた出力電圧の制御を行うX線制御装置とを有する。例えば、高電圧発生装置は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0021】
HVPS19は、X線検出器12を動作させる電力を供給する装置である。具体的には、HVPS19は、X線検出器12に含まれる、X線を電荷に変換する変換部に対してバイアス電圧を印加するように構成されている。例えば、HVPS19は、変圧器方式であってもよいし、インバータ方式であってもよい。
【0022】
ここで、X線高電圧装置14及びHVPS19は、後述する回転フレーム13に設けられてもよいし、架台装置10の固定フレーム(図示は省略)側に設けられても構わない。なお、固定フレームは、回転フレーム13を回転可能に支持する支持フレームである。
【0023】
回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とが固定され、回転軸を中心として回転する円環状のフレームである。具合的には、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12とを回転軸を挟んで対向配置した状態で支持し、後述する制御装置15によってX線管11とX線検出器12とを回転させる。なお、回転フレーム13は、X線管11とX線検出器12に加えて、X線高電圧装置14を更に備えて支持する。
【0024】
ここで、回転フレーム13は、架台装置10の非回転部分(例えば、固定フレーム。
図1での図示は省略している)により回転可能に支持される。回転機構は、例えば、回転駆動力を生ずるモータと、当該回転駆動力を回転フレーム13に伝達して回転させるベアリングとを含む。モータは、例えば、当該非回転部分に設けられ、ベアリングは、回転フレーム13及び当該モータと物理的に接続され、モータの回転力に応じて回転フレーム13が回転する。
【0025】
また、回転フレーム13及び非回転部分にはそれぞれ、非接触方式又は接触方式の通信回路が設けられ、これにより回転フレーム13に支持されるユニットと当該非回転部分或いは架台装置10の外部装置との通信が行われる。例えば、非接触の通信方式として光通信を採用する場合、DAS18によって生成された検出データは、回転フレーム13に設けられた発光ダイオード(Light Emitting Diode:LED)を有する送信機から光通信によって架台装置10の非回転部分に設けられた、フォトダイオードを有する受信機に送信され、さらに送信機により当該非回転部からコンソール装置40へ転送される。なお、通信方式としては、この他に容量結合式や電波方式等の非接触型のデータ伝送方式の他、スリップリングと電極ブラシを使った接触型のデータ伝送方式を採用しても構わない。
【0026】
制御装置15は、CPU(Central Processing Unit)等を有する処理回路と、モータ及びアクチュエータ等の駆動機構とを有する。制御装置15は、コンソール装置40若しくは架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43からの入力信号を受けて、架台装置10及び寝台装置30の動作制御を行う機能を有する。例えば、制御装置15は、入力信号を受けて回転フレーム13を回転させる制御や、架台装置10をチルトさせる制御、及び寝台装置30及び天板33を動作させる制御を行う。なお、架台装置10をチルトさせる制御は、架台装置10に取り付けられた入力インターフェース43によって入力される傾斜角度(チルト角度)情報により、制御装置15がX軸方向に平行な軸を中心に回転フレーム13を回転させることによって実現される。なお、制御装置15は、架台装置10に設けられてもよいし、コンソール装置40に設けられても構わない。
【0027】
寝台装置30は、スキャン対象である被検体Pを載置、移動させる装置であり、基台31と、寝台駆動装置32と、天板33と、支持フレーム34とを有する。基台31は、支持フレーム34を鉛直方向に移動可能に支持する筐体である。寝台駆動装置32は、被検体Pが載置された天板33を天板33の長軸方向に移動するモータあるいはアクチュエータである。支持フレーム34の上面に設けられた天板33は、被検体Pが載置される板である。なお、寝台駆動装置32は、天板33に加え、支持フレーム34を天板33の長軸方向に移動してもよい。
【0028】
コンソール装置40は、操作者によるX線CT装置1の操作を受け付けるとともに、架台装置10によって収集された検出データを用いてCT画像データを再構成する装置である。コンソール装置40は、メモリ41と、ディスプレイ42と、入力インターフェース43と、処理回路44とを有する。なお、ここでは、コンソール装置40と架台装置10とが別体である場合の例を説明するが、架台装置10にコンソール装置40又はコンソール装置40の構成要素の一部が含まれてもよい。
【0029】
メモリ41は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、ハードディスク、光ディスク等により実現される。メモリ41は、例えば、投影データやCT画像データを記憶する。ここで、メモリ41は、記憶部の一例である。
【0030】
ディスプレイ42は、各種の情報を表示する。例えば、ディスプレイ42は、処理回路44によって生成された医用画像(CT画像)や、操作者からの各種操作を受け付けるためのGUI(Graphical User Interface)等を出力する。例えば、ディスプレイ42は、液晶ディスプレイやCRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイである。なお、例えば、ディスプレイ42は、架台装置10に設けられてもよい。また、例えば、ディスプレイ42は、デスクトップ型でもよいし、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。
【0031】
入力インターフェース43は、操作者からの各種の入力操作を受け付け、受け付けた入力操作を電気信号に変換して処理回路44に出力する。例えば、入力インターフェース43は、投影データを収集する際のスキャン条件や、CT画像データを再構成する際の再構成条件、CT画像データから後処理画像データを生成する際の画像処理条件等を操作者から受け付ける。例えば、入力インターフェース43は、マウスやキーボード、トラックボール、スイッチ、ボタン、ジョイスティック等により実現される。なお、例えば、入力インターフェース43は、架台装置10に設けられてもよい。また、例えば、入力インターフェース43は、コンソール装置40本体と無線通信可能なタブレット端末等で構成されてもよい。
【0032】
処理回路44は、X線CT装置1全体の動作を制御する。例えば、処理回路44は、システム制御機能441と、前処理機能442と、再構成処理機能443と、画像処理機能444と、判定機能445と、通知機能446とを有する。
【0033】
システム制御機能441は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、架台装置10の制御装置15及び処理回路44の各種機能を制御する。例えば、システム制御機能441は、操作者から受け付けたスキャン条件に基づいて、架台装置10の制御装置15を制御することで、X線CT装置1において実行されるCTスキャンを制御する。また、システム制御機能441は、操作者から受け付けた再構成条件及び画像処理条件に基づいて、前処理機能442、再構成処理機能443及び画像処理機能444を制御することで、コンソール装置40におけるCT画像データの生成や表示を制御する。
【0034】
前処理機能442は、DAS18から出力された検出データに対して対数変換処理やオフセット補正処理、チャネル間の感度補正処理、ビームハードニング補正等の前処理を施した投影データを生成する。なお、前処理前のデータ(検出データ)及び前処理後のデータを総称して投影データと称する場合もある。
【0035】
再構成処理機能443は、前処理機能442にて生成された投影データに対して、フィルタ補正逆投影法や逐次近似再構成法等を用いた再構成処理を行ってCT画像データ(再構成画像データ)を生成する。
【0036】
画像処理機能444は、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、再構成処理機能443によって生成されたCT画像データを公知の方法により、任意断面の断層像データや3次元画像データに変換する。なお、3次元画像データの生成は再構成処理機能443が直接行っても構わない。
【0037】
以上、本実施形態に係るX線CT装置1の主な構成について説明した。上述したように、本実施形態に係るX線CT装置1は、X線を検出するX線検出器12としてフォトンカウンティング検出器を備えたフォトンカウンティングCTである。
【0038】
ここで、一般的に、フォトンカウンティングCTでは、フォトンカウンティング検出器を動作させる電力を供給するHPVSが必要となるが、設計上、実装面積やコスト等の制約とシステムの最大線量との間でボトルネックやトレードオフが生じるため、適切な容量のHVPSを選定することが難しい。
【0039】
具体的には、フォトンカウンティング検出器は、検出素子に入射したX線のフォトンの数をカウントするものであるため、検出器に入射するX線の線量が多いほど、すなわち、X線管が照射するX線の線量が大きいほど、消費電流が大きくなる。したがって、例えば、システムの最大線量の条件を満たすために大きな容量のHVPSを用いた場合には、実装面積やコスト等が大きくなるという問題が生じ得る。この一方で、例えば、実装面積やコスト等の制約の条件を満たすために小さい容量のHVPSを用いた場合には、HVPSの容量の範囲内でシステムの最大線量が制限されるという問題が生じ得る。
【0040】
しかしながら、実際にX線CT装置によって撮影が行われる際には、寝台装置の天板に載置された被検体がX線管とX線検出器との間に配置された状態となり、被検体によってX線が吸収されるため、必ずしも、X線管から照射されたX線の全てがフォトンカウンティング検出器に入射するわけではない。
【0041】
したがって、X線CT装置の効率的な設計を行うためには、このような実際の撮影時の状態を考慮し、X線検出器に実際に入射するX線の線量に基づいて撮影を制御する仕組みを導入することで、適切な容量のHVPSを用いることができるようにすることが求められる。
【0042】
このようなことから、本実施形態に係るX線CT装置1は、適切な容量のHVPSを用いることができるようにするための機能を有する。
【0043】
具体的には、処理回路44の判定機能445が、本スキャンの実行前に、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えるか否かを判定する。ここで、判定機能445は、判定部の一例である。
【0044】
例えば、判定機能445は、スキャンプロトコル及び被検体の情報から、本スキャンにおいて必要とされるX線検出器12の消費電流を導出し、当該消費電流がHVPS19の定格電流容量を超える場合に、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えると判定する。
【0045】
また、処理回路44の通知機能446が、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超える場合に操作者に通知する。具体的には、通知機能446は、判定機能445による判定の結果に基づいて、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超える場合に操作者に通知する。ここで、通知機能446は、通知部の一例である。
【0046】
例えば、通知機能446は、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超える場合に、スキャンプロトコルを変更することを促す情報を操作者に通知する。
【0047】
このような構成によれば、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコルや位置決め撮影によって得られた被検体の情報を用いることで、実際の撮影時の状態を考慮しつつ、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えないように制御することができる。
【0048】
これにより、例えば、X線管の管電流を100mAとした場合に必要なHVPSの電流容量が10mAであり、X線管の管電流を200mAとした場合に必要なHVPSの電流容量が20mAであった場合に、実際の撮影時の状態によっては、定格電流容量が10mAのHVPSを用いて、管電流を200mAとした撮影を行うことも可能になる。
【0049】
したがって、本実施形態によれば、X線CT装置の設計において、システムの最大線量に見合った容量に満たない容量のHVPSを選定することが可能になり、適切な容量のHVPSを用いることができるようになる。
【0050】
以下、このような構成を有するX線CT装置1について、詳細に説明する。なお、ここでは、位置決め撮影によって得られる被検体の情報として、本スキャンの前に撮影される被検体のスキャノ画像の情報が用いられる場合の例を説明する。
【0051】
図2は、第1の実施形態に係るX線CT装置1によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0052】
例えば、
図2に示すように、本実施形態では、まず、システム制御機能441が、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、本スキャン用のスキャンプロトコルを設定する(ステップS101)。
【0053】
ここで、スキャンプロトコルは、スキャン条件を定義する情報であり、X線管11からX線を照射するためにX線管11に供給する管電流や、X線管11及びX線検出器12を支持する回転フレーム13を回転させる回転速度、被検体のスキャン範囲等をスキャンパラメータとして含む。
【0054】
その後、システム制御機能441は、被検体のスキャノ画像を撮影する(ステップS102)。
【0055】
ここで、スキャノ画像は、本スキャンのスキャン範囲や撮影条件等を決定するための被検体のCT画像データであり、位置決め画像やスカウト画像と呼ばれることもある。
【0056】
例えば、システム制御機能441は、X線管11の位置を所定の回転角度に固定し、寝台装置30の天板33をZ方向に移動させながらX線管11からX線を被検体に照射して検出データを収集し、収集された検出データから2次元のCT画像データを生成することで、被検体の2次元のスキャノ画像を撮影する。
【0057】
または、例えば、システム制御機能441は、ヘリカルスキャン又はノンヘリカルスキャンによって被検体に対する全周分の投影データを収集し、収集された投影データから3次元のCT画像データを生成することで、被検体の3次元のスキャノ画像を撮影する。このとき、システム制御機能441は、例えば、被検体の胸部全体、腹部全体、上半身全体、全身などの広範囲に対して本スキャンよりも低線量でヘリカルスキャン又はノンヘリカルスキャンを実行する。ここで、ノンヘリカルスキャンとしては、例えば、天板33の位置を一定間隔で移動させて、複数の位置で天板33が停止した状態でスキャンを行うステップアンドシュート方式が実行される。
【0058】
または、例えば、システム制御機能441は、被検体に対する全周分の投影データから生成された3次元のX線CT画像データに基づいて、任意の方向に応じた2次元の画像データを生成することで、被検体の2次元のスキャン画像を撮影してもよい。
【0059】
続いて、判定機能445が、本スキャン用のスキャンプロトコル及び被検体のスキャノ画像の情報から、本スキャンにおいて必要とされるX線検出器12の消費電流を導出する(ステップS103)。
【0060】
例えば、判定機能445は、被検体のスキャノ画像の情報に基づいて、X線検出器12に含まれる検出素子ごとに、被検体の厚みを水の厚みに換算した水等価厚を導出する。具体的には、判定機能445は、被検体が配置されていない位置の検出素子については水等価厚を0とし、被検体が配置されている位置の検出素子については、配置されている被検体の部位に応じた水等価厚を導出する。
【0061】
その後、判定機能445は、スキャンプロトコルに含まれる管電流等の情報、及び、検出素子ごとに導出した水等価厚に基づいて、各検出素子に入射するX線の線量を導出することで、X線検出器12全体の入射線量を導出する。そして、判定機能445は、導出したX線検出器12全体の入射線量から、X線検出器12の消費電流を導出する。例えば、判定機能445は、X線の入射線量と消費電流との関係を表す計算式、又は、入射線量と消費電流とを対応付けたテーブルを用いて、X線検出器12全体の入射線量から消費電流を導出する。
【0062】
なお、スキャンプロトコル及びスキャノ画像の情報からX線検出器12の消費電流を導出する方法はこれに限られず、他の公知の各種の方法を用いることが可能である。
【0063】
その後、判定機能445は、導出されたX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えるか否かを判定する(ステップS104)。
【0064】
ここで、定格電流容量は、HVPS19が出力可能な最大の電流量であり、電流容量や電流の定格容量と呼ばれることもある。
【0065】
そして、判定機能445によってX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えないと判定された場合には(ステップS104,No)、システム制御機能441が、設定された本スキャン用のスキャンプロトコルに従って被検体の本スキャンを実施し(ステップS105)、撮影の処理を終了する。
【0066】
一方、判定機能445によってX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えると判定された場合には(ステップS104,Yes)、通知機能446が、スキャンプロトコルを変更することを促す情報を操作者に通知する(ステップS106)。
【0067】
例えば、通知機能446は、スキャンプロトコルを変更することを促す情報として、スキャン可能なスキャンプロトコルを提案する情報を操作者に通知する。
【0068】
例えば、通知機能446は、その時点で設定されている本スキャン用のスキャンプロトコル及び被検体のスキャノ画像の情報に基づいて、X線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を下回るようなスキャンパラメータ(例えば、管電流等)を導出し、導出したスキャンパラメータを示す情報を操作者に通知する。
【0069】
また、例えば、通知機能446は、判定機能445によってX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えると判定された場合に、被検体の位置を変更することを促す情報を操作者に通知してもよい。
【0070】
例えば、通知機能446は、被検体の位置を変更することを促す情報として、スキャン可能な被検体の位置を提案する情報を操作者に通知する。このとき、通知機能446は、スキャンプロトコルを変更することを促す情報に加えて、被検体の位置を変更することを促す情報を通知してもよいし、スキャンプロトコルを変更することを促す情報に替えて、被検体の位置を変更することを促す情報を通知してもよい。
【0071】
例えば、通知機能446は、その時点で設定されている本スキャン用のスキャンプロトコル及び被検体のスキャノ画像の情報に基づいて、X線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を下回るような被検体の位置を導出し、導出した被検体の位置を示す情報(例えば、被検体を移動させる方向や移動量等)を操作者に通知する。
【0072】
ここで、例えば、通知機能446は、コンソール装置40のディスプレイ42や架台装置10に設けられている情報表示用のパネルにメッセージを出力することで、スキャンプロトコルを変更することを促す情報や被検体の位置を変更することを促す情報を操作者に通知する。例えば、通知機能446は、各情報の内容を示すメッセージを表示したウィンドウをディスプレイ42やパネルの表示領域にポップアップさせてもよい。
【0073】
また、例えば、通知機能446は、スキャンプロトコルを変更する前のスキャンパラメータや消費電力等の情報と、提案に従ってスキャンプロトコルを変更した後のスキャンパラメータや消費電力等の情報とをそれぞれディスプレイ42や架台装置10のパネルに表示したうえで、当該提案を了承するか否かを操作者から受け付けてもよい。例えば、通知機能446は、変更前の情報と変更後の情報とともに、変更を了承するか否かを操作者から受け付けるためのボタン等を表示し、操作者が変更を了承した場合は、後続のスキャンプロトコルの変更及び本スキャンの実施に進み、操作者が変更を了承しない場合は、ステップS103に戻って、再度、スキャンプロトコルを設定するようにしてもよい。
【0074】
続いて、システム制御機能441が、入力インターフェース43を介して操作者から受け付けた入力操作に基づいて、スキャン可能となるように、本スキャン用のスキャンプロトコルを変更する(ステップS107)。
【0075】
そして、システム制御機能441は、変更された本スキャン用のスキャンプロトコルに従って被検体の本スキャンを実施し(ステップS105)、撮影の処理を終了する。
【0076】
ここで、本実施形態では、処理回路44は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、処理回路44が有する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41に記憶される。そして、処理回路44は、メモリ41から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、
図1の処理回路44内に示された各処理機能を有することとなる。
【0077】
例えば、
図2に示す処理手順のうち、ステップS101、S102、S105及びS107の処理は、例えば、処理回路44が、システム制御機能441に対応する所定のプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS103及びS104の処理は、例えば、処理回路44が、判定機能445に対応する所定のプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS106の処理は、例えば、処理回路44が、通知機能446に対応する所定のプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより実現される。
【0078】
上述したように、第1の実施形態では、判定機能445が、本スキャンの実行前に、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えるか否かを判定する。また、通知機能446が、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の少なくとも一方に基づいて、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超える場合に操作者に通知する。
【0079】
このような構成によれば、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコルや位置決め撮影によって得られた被検体の情報を用いることで、実際の撮影時の状態を考慮しつつ、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えないように制御することができる。
【0080】
したがって、本実施形態によれば、X線CT装置の設計において、システムの最大線量に見合った容量に満たない容量のHVPSを選定することが可能になり、適切な容量のHVPSを用いることができるようになる。これにより、実装面積やコスト等の制約とシステムの最大線量との間のボトルネックやトレードオフを解消することができる。
【0081】
また、例えば、本スキャン中にHVPS19の出力が不足した場合には、生成される画像が不良となることがあり得るが、本実施形態によれば、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えないように制御することができるため、HVPS19の出力不足による画像の不良や、それに伴う再検査等を回避することができる。
【0082】
(第2の実施形態)
なお、上述した第1の実施形態では、被検体のスキャノ画像を用いてHVPS19の出力の判定を行うこととしたが、例えば、スキャノ画像を撮影した後に被検体が動いてしまった場合には、再判定が必要となることもあり得る。そこで、以下では、第2の実施形態として、被検体が動くことによってHVPS19の出力の再判定が必要な状態となった場合に操作者に通知するようにX線CT装置1を構成した場合の例を説明する。なお、以下では、第2の実施形態について、第1の実施形態と異なる内容を中心に説明し、重複する内容については詳細な説明を省略する。
【0083】
具体的には、本実施形態では、通知機能446が、位置決め撮影が行われてから本スキャンが行われるまでの間に被検体が動くことによってHVPS19の出力の再判定が必要な状態となった場合にさらに操作者に通知する。
【0084】
以下、本実施形態に係るX線CT装置1によって行われる処理について詳細に説明する。なお、ここでは、第1の実施形態と同様に、位置決め撮影によって得られる被検体の情報として、本スキャンの前に撮影されるスキャノ画像の情報が用いられる場合の例を説明する。
【0085】
図3は、第2の実施形態に係るX線CT装置1によって行われる処理の処理手順を示すフローチャートである。
【0086】
例えば、
図3に示すように、本実施形態では、まず、システム制御機能441が、第1の実施形態と同様に、本スキャン用のスキャンプロトコルを設定し(ステップS201)。被検体のスキャノ画像を撮影する(ステップS202)。
【0087】
続いて、判定機能445が、第1の実施形態と同様に、本スキャン用のスキャンプロトコル及び被検体のスキャノ画像の情報から、本スキャンにおいて必要とされるX線検出器12の消費電流を導出し(ステップS203)、導出されたX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えるか否かを判定する(ステップS204)。
【0088】
そして、本実施形態では、判定機能445が、X線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えないと判定した場合に(ステップS204,No)、さらに、スキャノ画像が撮影された後に被検体が動いたか否かを判定する(ステップS205)。
【0089】
例えば、判定機能445は、天板33に載置された被検体を撮影可能な位置に設けられたカメラによって撮影されたカメラ画像に基づいて、被検体が動きた否かを判定する。この場合に、カメラは、例えば、架台装置10(例えば、架台装置10の天板33が挿入される孔の内壁や架台装置10の前面カバー等)に設けられていてもよいし、X線CT装置1が設置されている撮影室(例えば、撮影室の天井や壁等)に配置されていてもよい。例えば、カメラは、撮影が行われている間、被検体のカメラ画像を連続して撮影する。
【0090】
一方、判定機能445によってX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えると判定された場合には(ステップS204,Yes)、第1の実施形態と同様に、通知機能446が、スキャンプロトコルを変更することを促す情報を操作者に通知し(ステップS207)、システム制御機能441が、本スキャン用のスキャンプロトコルを変更し(ステップS208)、その後、判定機能445が、スキャノ画像が撮影された後に被検体が動いたか否かを判定する(ステップS205)。
【0091】
そして、判定機能445によって被検体が動いていないと判定された場合には(ステップS205,No)、システム制御機能441が、設定又は変更された本スキャン用のスキャンプロトコルに従って被検体の本スキャンを実施し(ステップS206)、撮影の処理を終了する。
【0092】
一方、判定機能445によって被検体が動いたと判定された場合には(ステップS205,Yes)、通知機能446が、HVPS19の出力の再判定が必要なことを示す情報を操作者に通知し(ステップS209)、撮影の処理を終了する。
【0093】
例えば、通知機能446は、HVPS19の出力の再判定が必要なことを示す情報として、スキャノ画像を再撮影することを促す情報を操作者に通知する。
【0094】
ここで、例えば、通知機能446は、コンソール装置40のディスプレイ42や架台装置10に設けられている情報表示用のパネルにメッセージを出力することで、HVPS19の出力の再判定が必要なことを示す情報を操作者に通知する。例えば、通知機能446は、HVPS19の出力の再判定が必要なことを示すメッセージを表示したウィンドウをディスプレイ42やパネルの表示領域にポップアップさせてもよい。
【0095】
なお、上述した処理手順では、判定機能445は、ステップS204において、X線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えるか否かを判定した後に、ステップS205において、スキャノ画像が撮影された後に被検体が動いたか否かを判定することとしたが、例えば、これらの判定を並行して行ってもよい。その場合には、通知機能446は、判定機能445によって被検体が動いたと判定された時点で、HVPS19の出力の再判定が必要なことを示す情報を操作者に通知し、撮影の処理を終了する。
【0096】
ここで、本実施形態でも、処理回路44は、例えば、プロセッサによって実現される。この場合に、処理回路44が有する各処理機能は、例えば、コンピュータによって実行可能なプログラムの形態でメモリ41に記憶される。そして、処理回路44は、メモリ41から各プログラムを読み出して実行することで、各プログラムに対応する機能を実現する。換言すると、各プログラムを読み出した状態の処理回路44は、
図1の処理回路44内に示された各処理機能を有することとなる。
【0097】
例えば、
図3に示す処理手順のうち、ステップS201、S202、S206及びS208の処理は、例えば、処理回路44が、システム制御機能441に対応する所定のプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS203、S204及びS205の処理は、例えば、処理回路44が、判定機能445に対応する所定のプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより実現される。また、ステップS207及びS209の処理は、例えば、処理回路44が、通知機能446に対応する所定のプログラムをメモリ41から読み出して実行することにより実現される。
【0098】
上述したように、第2の実施形態では、通知機能446が、位置決め撮影が行われてから本スキャンが行われるまでの間に被検体が動くことによってHVPS19の出力の再判定が必要な状態となった場合にさらに操作者に通知する。
【0099】
このような構成によれば、スキャノ画像を撮影した後に被検体が動いてしまった場合も考慮しつつ、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えないように制御することができる。
【0100】
以上、第1及び第2の実施形態について説明したが、各実施形態は、上述した構成の一部を適宜に変更して実施することも可能である。そこで、以下では、上述した実施形態に関するいくつかの変形例について説明する。なお、以下では、上述した実施形態と異なる内容を中心に説明し、重複する内容については詳細な説明を省略する。
【0101】
(第1の変形例)
例えば、上述した実施形態では、位置決め撮影によって得られる被検体の情報として、本スキャンの前に撮影される被検体のスキャノ画像の情報が用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0102】
例えば、位置決め撮影によって得られる被検体の情報として、カメラによって撮影された被検体のカメラ画像の情報であってもよい。この場合に、カメラは、例えば、架台装置10(例えば、架台装置10の天板33が挿入される孔の内壁や架台装置10の前面カバー等)に設けられていてもよいし、X線CT装置1が設置されている撮影室(例えば、撮影室の天井や壁等)に配置されていてもよい。例えば、カメラは、撮影が行われている間、被検体のカメラ画像を連続して撮影する。
【0103】
この場合には、判定機能445が、本スキャン用のスキャンプロトコル及び被検体のカメラ画像の情報から、本スキャンにおいて必要とされるX線検出器12の消費電流を導出する。
【0104】
例えば、判定機能445は、被検体のカメラ画像の情報に基づいて、X線検出器12に含まれる検出素子ごとに、被検体の厚みを水の厚みに換算した水等価厚を導出する。具体的には、判定機能445は、被検体が配置されていない位置の検出素子については水等価厚を0とし、被検体が配置されている位置の検出素子については、配置されている被検体の部位に応じた水等価厚を導出する。その後、判定機能445は、上述した実施形態と同様に、スキャンプロトコルに含まれる管電流等の情報、及び、検出素子ごとに導出した水等価厚に基づいて、X線検出器12全体の入射線量を導出し、導出したX線検出器12全体の入射線量から、X線検出器12の消費電流を導出する。
【0105】
そして、判定機能445は、導出されたX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えるか否かを判定する。ここで、例えば、判定機能445は、カメラによって連続して撮影される被検体のカメラ画像に基づいてX線検出器12の消費電流を連続して導出し、導出した消費電流が閾値を超えた時点で、X線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えたと判定する。
【0106】
そして、判定機能445によってX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えると判定された場合に、通知機能446が、スキャンプロトコルを変更することを促す情報や、被検体の位置を変更することを促す情報を操作者に通知する。
【0107】
なお、例えば、判定機能445は、被検体のカメラ画像に基づいて、X線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えるか否かを判定するだけでなく、被検体がX線の照射範囲を外れているか否かをさらに判定してもよい。
【0108】
この場合には、例えば、通知機能446は、判定機能445によって被検体がX線の照射範囲を外れていると判定された場合に、被検体の位置を変更することを促す情報を操作者に通知する。例えば、通知機能446は、カメラ画像に基づいて、X線の照射範囲に入るように被検体を移動させるための被検体の移動方向や移動量を導出し、導出した移動方向や移動量を示す情報を操作者に通知する。
【0109】
ここで、例えば、通知機能446は、判定機能445によってX線検出器12の消費電流がHVPS19の定格電流容量を超えると判定された場合には、HVPS19の容量が原因で被検体の位置変更が必要であることを通知し、判定機能445によって被検体がX線の照射範囲を外れていると判定された場合には、X線の照射範囲が原因で被検体の位置変更が必要であることを通知するというように、原因と組み合わせて、被検体の位置を変更することを促す情報を操作者に通知してもよい。
【0110】
(第2の変形例)
また、上述した実施形態では、X線CT装置1に一つのHVPS19が備えられている場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0111】
例えば、X線CT装置1に複数のHVPSが備えられており、各HVPSが、X線検出器12に含まれている複数の検出素子のグループに電力を供給するように構成されていてもよい。
【0112】
この場合には、判定機能445が、HVPSごとに、本スキャンにおいてHVPSの出力が基準を超えるか否かを判定する。
【0113】
例えば、判定機能445は、X線検出器12に含まれる検出素子のグループごとに、本スキャンにおいて必要とされる消費電流を導出する。そして、判定機能445は、HVPSごとに、当該HVPSに接続されている検出素子のグループの消費電流が定格電流容量を超えているか否かを判定する。
【0114】
そして、通知機能446が、少なくとも一つのHVPSの出力が基準を超える場合に、操作者に通知する。
【0115】
例えば、通知機能446は、少なくとも一つのHVPSについて、対応する検出素子のグループの消費電流が定格電流容量を超える場合に、スキャンプロトコルを変更することを促す情報や被検体の位置を変更することを促す情報を操作者に通知する。
【0116】
(第3の変形例)
また、上述した実施形態では、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコル及び位置決め撮影によって得られた被検体の情報の両方が用いられる場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。
【0117】
例えば、判定機能445は、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコルのみに基づいて、本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えるか否かを判定してもよい。この場合には、判定機能445は、本スキャン用に設定されたスキャンプロトコルによってX線管11から照射されるX線の全てが被検体によって吸収されずにX線検出器12に入射すると仮定して、X線検出器12全体の入射線量を導出する。
【0118】
または、例えば、判定機能445は、位置決め撮影によって得られた被検体の情報本スキャンにおいてHVPS19の出力が基準を超えるか否かを判定してもよい。この場合には、判定機能445は、システムで使用可能なX線の最大線量が本スキャン用のスキャンプロトコルとして設定されたと仮定して、X線検出器12全体の入射線量を導出する。
【0119】
(他の実施形態)
また、上述した実施形態では、単一の処理回路44によって各処理機能が実現されるものとして説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、処理回路44は、複数の独立したプロセッサを組み合わせて構成されてもよく、各プロセッサがプログラムを実行することで、上述した各処理機能が実現されてもよい。また、処理回路44が有する各処理機能は、単一又は複数の処理回路に適宜に分散又は統合されて実現されてもよい。また、処理回路44が有する各処理機能は、回路等のハードウェアとソフトウェアとの混合によって実現されても構わない。また、ここでは、単一のメモリ41が各処理機能に対応するプログラムを記憶する場合の例を説明したが、実施形態はこれに限られない。例えば、複数のメモリが分散して配置され、処理回路44が、個別のメモリから対応するプログラムを読み出して実行する構成としても構わない。
【0120】
また、上記説明では、「プロセッサ」が各処理機能に対応するプログラムをメモリから読み出して実行する例を説明したが、実施形態はこれに限られない。「プロセッサ」という文言は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)、プログラマブル論理デバイス(例えば、単純プログラマブル論理デバイス(Simple Programmable Logic Device:SPLD)、複合プログラマブル論理デバイス(Complex Programmable Logic Device:CPLD)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA))等の回路を意味する。プロセッサが例えばCPUである場合、プロセッサはメモリに保存されたプログラムを読み出して実行することで、各処理機能を実現する。一方、プロセッサがASICである場合、メモリにプログラムを保存する代わりに、当該処理機能がプロセッサの回路内に論理回路として直接組み込まれるなお、本実施形態の各プロセッサは、プロセッサごとに単一の回路として構成される場合に限らず、複数の独立した回路を組み合わせて1つのプロセッサとして構成され、その処理機能を実現するようにしてもよい。さらに、
図1における複数の構成要素を1つのプロセッサへ統合して、その処理機能を実現するようにしてもよい。
【0121】
ここで、プロセッサによって実行されるプログラムは、ROM(Read Only Memory)やメモリ等に予め組み込まれて提供される。このプログラムは、これらの装置にインストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD(Compact Disk)-ROM、FD(Flexible Disk)、CD-R(Recordable)、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な非一時的な記憶媒体に記録されて提供されてもよい。また、このプログラムは、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納され、ネットワーク経由でダウンロードされることにより提供又は配布されてもよい。例えば、このプログラムは、上述した各機能部を含むモジュールで構成される。実際のハードウェアとしては、CPUが、ROM等の記憶媒体からプログラムを読み出して実行することにより、各モジュールが主記憶装置上にロードされて、主記憶装置上に生成される。
【0122】
また、上述した実施形態において、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散又は統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部又は一部を、各種の負荷や使用状況等に応じて、任意の単位で機能的又は物理的に分散又は統合して構成することができる。更に、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部又は任意の一部が、CPU及び当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、或いは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0123】
また、上述した実施形態で説明した各処理のうち、自動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を手動的に行なうこともでき、或いは、手動的に行なわれるものとして説明した処理の全部又は一部を公知の方法で自動的に行なうこともできる。この他、上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0124】
以上説明した少なくとも一つの実施形態によれば、適切な容量の高圧電源を用いることができる。
【0125】
いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更、実施形態同士の組み合わせを行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0126】
1 X線CT装置
12 X線検出器
19 高圧電源(High-Voltage Power Supply:HVPS)
44 処理回路
445 判定機能
446 通知機能