(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173241
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】保持装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/683 20060101AFI20241205BHJP
H02N 13/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/68 R
H02N13/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091538
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100160691
【弁理士】
【氏名又は名称】田邊 淳也
(72)【発明者】
【氏名】川鍋 光慶
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA02
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA68
5F131CA69
5F131EA03
5F131EA04
5F131EA05
5F131EB15
5F131EB18
5F131EB54
5F131EB78
5F131EB81
5F131EB82
5F131EB84
5F131KA23
5F131KA54
(57)【要約】
【課題】保持する対象物の温度を精度よく測定できる保持装置を提供すること。
【解決手段】本開示の一態様は、保持面11と、保持面11とは反対側に設けられる下
図12と、を備える板状部材10を有し、板状部材10は、保持面11に凸部14を備え、凸部14にて半導体ウエハWを保持する静電チャック1において、板状部材10は、内部にチャック電極51と第1測温抵抗体61を備え、第1測温抵抗体61は、チャック電極51よりも保持面11側の位置であって、かつ、保持面11側から見たときに凸部14と重なる位置に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、を備える板状部材を有し、
前記板状部材は、前記第1の面に凸部を備え、
前記凸部にて対象物を保持する
保持装置において、
前記板状部材は、内部にチャック電極と第1測温抵抗体を備え、
前記第1測温抵抗体は、前記チャック電極よりも前記第1の面側の位置であって、かつ、前記第1の面側から見たときに前記凸部と重なる位置に配置されていること、
を特徴とする保持装置。
【請求項2】
請求項1の保持装置において、
前記板状部材は、前記第1測温抵抗体よりも前記第2の面側の位置に配置され、かつ、前記第1測温抵抗体に接続する第2測温抵抗体を備えていること、
を特徴とする保持装置。
【請求項3】
請求項2の保持装置において、
前記第2測温抵抗体は、前記板状部材の厚み方向について前記チャック電極と同じ位置または略同じ位置、あるいは、前記チャック電極よりも前記第1の面側の位置に配置されていること、
を特徴とする保持装置。
【請求項4】
請求項2または3の保持装置において、
前記板状部材は、円盤状に形成されており、
前記板状部材の内径側に、前記第1測温抵抗体のみで構成される1層構造の測温抵抗体部が配置されており、
前記板状部材の外径側に、前記第1測温抵抗体と前記第2測温抵抗体で構成される2層構造の測温抵抗体部が配置されていること、
を特徴とする保持装置。
【請求項5】
請求項1または2の保持装置において、
前記第1測温抵抗体は、前記凸部の内部に配置されていること、
を特徴とする保持装置。
【請求項6】
請求項1または2の保持装置において、
前記板状部材は、前記チャック電極よりも前記第2の面側の位置にヒータ電極を備えること、
を特徴とする保持装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、対象物を保持する保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、載置台本体の基板載置面側に形成される凸部の間の凹部の表面に熱電対を設け、この熱電対により基板載置面近傍の温度を検出する基板載置台(保持装置)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示される基板載置台において、熱電対は、基板載置面近傍の温度を検出するものであり、基板(対象物)が載置される凸部から離れた位置に設けられている。そのため、特許文献1に開示される熱電対は、凸部の上に保持する基板から離れているので、基板の温度を精度よく測定できないおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は上記した課題を解決するためになされたものであり、保持する対象物の温度を精度よく測定できる保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するためになされた本開示の一形態は、第1の面と、前記第1の面とは反対側に設けられる第2の面と、を備える板状部材を有し、前記板状部材は、前記第1の面に凸部を備え、前記凸部にて対象物を保持する保持装置において、前記板状部材は、内部にチャック電極と第1測温抵抗体を備え、前記第1測温抵抗体は、前記チャック電極よりも前記第1の面側の位置であって、かつ、前記第1の面側から見たときに前記凸部と重なる位置に配置されていること、を特徴とする。
【0007】
この態様によれば、第1測温抵抗体を凸部に保持される対象物に近づけることができる。そのため、対象物の近くで第1測温抵抗体による温度測定ができる。したがって、保持する対象物の温度を精度よく測定できる。
【0008】
上記の態様においては、前記板状部材は、前記第1測温抵抗体よりも前記第2の面側の位置に配置され、かつ、前記第1測温抵抗体に接続する第2測温抵抗体を備えていること、が好ましい。
【0009】
この態様によれば、2つの測温抵抗体を用いることにより、測定できる抵抗値の範囲を拡げることができる。そのため、保持する対象物の温度をさらに精度よく測定できる。
【0010】
上記の態様においては、前記第2測温抵抗体は、前記板状部材の厚み方向について前記チャック電極と同じ位置または略同じ位置、あるいは、前記チャック電極よりも前記第1の面側の位置に配置されていること、が好ましい。
【0011】
この態様によれば、2つの測温抵抗体を凸部に保持される対象物に近づけることができる。そのため、対象物の近くで2つの測温抵抗体による温度測定ができる。したがって、より確実に、保持する対象物の温度を精度よく測定できる。
【0012】
上記の態様においては、前記板状部材は、円盤状に形成されており、前記板状部材の内径側に、前記第1測温抵抗体のみで構成される1層構造の測温抵抗体部が配置されており、前記板状部材の外径側に、前記第1測温抵抗体と前記第2測温抵抗体で構成される2層構造の測温抵抗体部が配置されていること、が好ましい。
【0013】
この態様によれば、板状部材の外径側において、測定できる抵抗値の範囲を拡げて、保持する対象物の温度をさらに精度よく測定できる。そのため、例えば、板状部材がその内径側で第1の面側に反るように変形した場合であっても、板状部材の外径側において、2層構造の測温抵抗体部を用いて対象物の温度を精度よく測定できる。
【0014】
上記の態様においては、前記第1測温抵抗体は、前記凸部の内部に配置されていること、が好ましい。
【0015】
この態様によれば、第1測温抵抗体を凸部に保持される対象物にさらに近づけることができる。そのため、対象物のさらに近くで第1測温抵抗体による温度測定ができる。したがって、保持する対象物の温度をさらに精度よく測定できる。
【0016】
上記の態様においては、前記板状部材は、前記チャック電極よりも前記第2の面側の位置にヒータ電極を備えること、が好ましい。
【0017】
この態様によれば、ヒータ電極はチャック電極よりも第2の面側の位置に設けられているので、第1測温抵抗体や第2測温抵抗体は、ヒータ電極から離れた位置にある。そのため、第1測温抵抗体や第2測温抵抗体は、ヒータ電極の発熱による直接的な影響を受け難い。したがって、第1測温抵抗体や第2測温抵抗体を用いて対象物の温度を精度よく測定できる。
【発明の効果】
【0018】
本開示の保持装置によれば、保持する対象物の温度を精度よく測定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の静電チャックの概略斜視図である。
【
図2】本実施形態の静電チャックのXZ断面の概略構成図である。
【
図3】本実施形態の静電チャックの概略平面図である。
【
図4】
図2における板状部材の一部を拡大して示した図である。
【
図5】
図3にて一点鎖線で囲んだ領域を拡大して示した図である。
【
図6】第2測温抵抗体がチャック電極よりも保持面側にある例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本開示の保持装置の実施形態について説明する。本実施形態では、保持装置として、例えば、成膜装置(CVD成膜装置やスパッタリング成膜装置など)やエッチング装置(プラズマエッチング装置など)といった半導体製造装置に使用される静電チャック1を例示する。
【0021】
(静電チャックの概要について)
本実施形態の静電チャック1について、
図1~
図3を参照しながら説明する。本実施形態の静電チャック1は、半導体ウエハW(対象物)を静電引力により吸着して保持する装置であり、例えば、半導体製造装置の真空チャンバー内で半導体ウエハWを固定するために使用される。
図1に示すように、静電チャック1は、板状部材10と、ベース部材20と、板状部材10とベース部材20とを接合する接合層30とを有する。
【0022】
なお、以下の説明においては、説明の便宜上、
図1に示すようにXYZ軸を定義する。ここで、Z軸は、静電チャック1の軸線方向(
図1において上下方向)の軸であり、X軸とY軸は、静電チャック1の径方向の軸である。
【0023】
板状部材10は、
図1に示すように、円盤状に形成されており、上面であって半導体ウエハWを保持する保持面11と、板状部材10の厚み方向(Z軸方向)について保持面11とは反対側に設けられる下面12とを備えている。そして、板状部材10は、中心部分に形成された載置部110と、その載置部110から径方向外側へ張り出した鍔部120とを備えている。なお、保持面11は本開示の「第1の面」の一例であり、下面12は本開示の「第2の面」の一例である。
【0024】
載置部110の上面が保持面11になっており、載置部110に半導体ウエハWが固定されるようになっている。また、鍔部120の上面121には、不図示の環状リング(フォーカスリング)が配置されるようになっている。このような板状部材10の直径は、例えば50~500mm程度(通常は200mm~350mm程度)であり、板状部材10の厚さは、例えば1~10mm程度である。
【0025】
板状部材10は、セラミックスにより形成されている。セラミックスとしては、様々なセラミックスが用いられるが、強度や耐摩耗性、耐プラズマ性等の観点から、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ、Al2O3)または窒化アルミニウム(AlN)を主成分とするセラミックスが用いられることが好ましい。なお、ここでいう主成分とは、含有割合の最も多い成分(例えば、体積含有率が90vol%以上の成分)を意味する。
【0026】
板状部材10の保持面11は、凹凸形状をなしている。具体的には、保持面11には、
図2と
図3に示すように、その外縁付近に環状の環状凸部13が形成され、環状凸部13の内側に複数の独立した柱状の凸部14が形成されている。このようにして、保持面11には、複数の凸部14のすべてを囲むように配置された環状凸部13が形成されている。なお、環状凸部13は、シールバンドとも呼ばれる。
【0027】
環状凸部13の断面(XZ断面)の形状は、
図2に示すように、略矩形である。環状凸部13の高さ(Z軸方向の寸法)は、例えば、10μm~20μm程度である。また、環状凸部13の幅(X軸方向の寸法)は、例えば、0.5mm~5.0mm程度である。
【0028】
各々の凸部14は、
図3に示すように、Z軸方向視(平面視)で略円形をなしており、略均等間隔で配置されている。また、各々の凸部14の断面(XZ断面)の形状は、
図2に示すように、略矩形である。凸部14の高さは、環状凸部13の高さと略同一であり、例えば、10μm~20μm程度である。また、凸部14の幅(Z軸方向視での凸部14の最大径)は、例えば、0.5mm~1.5mm程度である。なお、板状部材10の保持面11における環状凸部13より内側において、凸部14が形成されていない部分は、凹部15となっている。
【0029】
そして、半導体ウエハWは、板状部材10の保持面11における環状凸部13と、複数の凸部14に支持されて、静電チャック1に保持される。半導体ウエハWが静電チャック1に保持された状態では、半導体ウエハWの表面(下面)と、板状部材10の保持面11(詳細には、保持面11の凹部15)との間に、空間Sが存在することとなる(
図2参照)。この空間Sには、静電チャック1内に形成されたガス流路40を介して、保持面11に開口するガス孔16から不活性ガス(例えば、ヘリウムガス)が供給されるようになっている。なお、ガス孔16は、複数(
図2と
図3に示す例では3つ)設けられている。
【0030】
板状部材10は、
図2に示すように、その内部に、チャック電極51を備えている。チャック電極51は、載置部110において保持面11側に配置されており、不図示の電源から電力が供給されることによって、静電引力(吸着力)を発生させるものである。そして、チャック電極51が発生する静電引力によって、半導体ウエハWが板状部材10の保持面11に吸着固定される。このチャック電極51は、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン等)により形成されている。
【0031】
板状部材10は、
図2に示すように、その内部において、チャック電極51よりも下面12側の位置にヒータ電極52を備えている。ヒータ電極52は、導電性材料(例えば、タングステンやモリブデン、白金等)により形成されている。このヒータ電極52に対して不図示の電源から電力が供給されてヒータ電極52が発熱することによって、保持面11ひいては半導体ウエハWが加熱される。
【0032】
本実施形態では、
図2に示すように、板状部材10は、保持面11にて保持する半導体ウエハWの温度を測定するための測温抵抗体として、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62を備えている。なお、この第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62の詳細は、後述する。
【0033】
ベース部材20は、
図1と
図2に示すように、上面21と、ベース部材20の厚さ方向(Z軸方向)について上面21とは反対側に設けられる下面22とを備え、円柱状に形成されている。このベース部材20は、金属(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金、チタン等)、セラミックス、金属とセラミックスの複合材により形成されている。
【0034】
このベース部材20の直径は、例えば220mm~550mm程度(通常は220mm~350mm程度)であり、ベース部材20の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば20mm~40mm程度である。
【0035】
そして、ベース部材20には、
図2に示すように、冷媒(例えば、フッ素系不活性液体や水等)を流すための冷媒流路23が形成されており、この冷媒流路23内に冷媒を流すことにより、ベース部材20が冷却され、これにより、接合層30を介して板状部材10が冷却されるようになっている。なお、ベース部材20には、上面21と下面22との間を厚み方向(Z軸方向、
図2において上下方向)に貫通するようにしてガス流路40の一部が形成されている。
【0036】
接合層30は、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21との間に配置され、板状部材10とベース部材20とを接合している。この接合層30を介して、板状部材10の下面12とベース部材20の上面21とが熱的に接続されている。なお、接合層30は、例えばシリコーン系樹脂やアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂等の熱硬化性接着材により構成されており、材料は樹脂に限定されない。なお、接合層30には、
図2に示すように、ガス流路40の一部が形成されている。
【0037】
このような接合層30の厚さ(Z軸方向の寸法)は、例えば0.1~5.0mm程度である。また、接合層30の熱伝導率は、例えば1.0W/mKである。なお、接合層30(シリコーン系樹脂を想定)の熱伝導率は、0.1~2.0W/mK(好ましくは、0.5~1.5W/mK)の範囲内が望ましい。
【0038】
また、板状部材10は、詳しくは後述するように、第1測温抵抗体61のみで構成される1層構造の測温抵抗体部81と、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62で構成される2層構造の測温抵抗体部82とを備えている。そして、静電チャック1は、1層構造の測温抵抗体部81と2層構造の測温抵抗体部82のそれぞれに印加される電圧を測定するための不図示の電圧計を有する。さらに、静電チャック1は、1層構造の測温抵抗体部81と2層構造の測温抵抗体部82のそれぞれに流れる電流を測定するための不図示の電流計も有する。
【0039】
(測温抵抗体に関して)
本実施形態では、保持面11にて保持する半導体ウエハWの温度を測定するために、板状部材10は、その内部に、測温抵抗体を備えている。この測温抵抗体は、温度変化によって金属の電気抵抗値(以下、単に「抵抗値」という。)が変化する特性を利用して温度を測定するセンサである。
【0040】
ここで、測温抵抗体を、保持面11(凸部14)から離れた位置、例えば、チャック電極51よりも下面12側の位置に設けると、測温抵抗体と凸部14に保持される半導体ウエハWとの間の距離が大きくなるので、測温抵抗体で測定される温度と半導体ウエハWの実際の温度との間に差異が生じて、測温抵抗体により半導体ウエハWの温度を精度よく測定できないおそれがある。
【0041】
そこで、本実施形態では、測温抵抗体を出来るだけ半導体ウエハWに近づけるために、
図2と
図4に示すように、測温抵抗体である第1測温抵抗体61が、チャック電極51よりも保持面11側の位置であって、かつ、
図5に示すように、保持面11側から見たときに凸部14と重なる位置に配置されている。第1測温抵抗体61は、温度が変化すると抵抗値が変化する導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。なお、
図5において、第1測温抵抗体61や第2測温抵抗体62は、実際には目視できないが、凸部14との位置関係を示すために敢えて図示している。
【0042】
ここでは一例として、
図2と
図4に示すように、第1測温抵抗体61は、凸部14の内部に配置されているが、これに限定されず、第1測温抵抗体61は、チャック電極51よりも保持面11側の位置であって、かつ、凸部14よりも下面22側の位置に配置されていてもよい。
【0043】
板状部材10は、
図2と
図4に示すように、第1測温抵抗体61の他に、第1測温抵抗体61よりも下面12側の位置に、測温抵抗体である第2測温抵抗体62も備えている。第2測温抵抗体62は、第1測温抵抗体61と同様に、
図5に示すように、保持面11側から見たときに凸部14と重なる位置に配置され、
図4に示すように、第1測温抵抗体61に接続している。第2測温抵抗体62は、温度が変化すると抵抗値が変化する導電性材料(例えば、タングステン、モリブデン、白金等)により形成されている。
【0044】
ここでは、一例として、
図4に示すように、第2測温抵抗体62は、板状部材10の厚み方向(Z軸方向)についてチャック電極51と同じ位置、または、略同じ位置に配置されているが、これに限定されず、
図6に示すように、第2測温抵抗体62は、チャック電極51よりも保持面11側の位置に配置されていてもよい。
【0045】
また、
図4に示すように、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62は、配線部70を介して、不図示の電源に接続している。なお、配線部70は、第1測温抵抗体61や第2測温抵抗体62に接続する測温抵抗体側ビア71と、この測温抵抗体側ビア71に接続するドライバ電極72と、このドライバ電極72に接続する給電側ビア73と、測温抵抗体間ビア74とを備えている。そして、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62は、測温抵抗体間ビア74を介して、直列に接続されている。
【0046】
また、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62は、例えば、
図5に示すように、線材を略同心円状に巻いたように形成されている。
【0047】
このように、板状部材10は、測温抵抗体として、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62を備えており、本実施形態では、
図2と
図4と
図5に示すように、円盤状に形成される板状部材10の内径側(すなわち、中央側)に、第1測温抵抗体61のみで構成される1層構造の測温抵抗体部81が配置されている。また、板状部材10の外径側に、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62で構成される2層構造の測温抵抗体部82が配置されている。
【0048】
なお、
図4では、板状部材10が複数のセラミックスグリーンシート101を積層させて形成されることを示しており、説明の便宜上、第2測温抵抗体62やチャック電極51やヒータ電極52が配置される様子を分かりやすく示すために、各々のセラミックスグリーンシート101の間に隙間を設けて示しているが、実際には、各々のセラミックスグリーンシート101は、その間に隙間がなく、密着した状態になっている。
【0049】
そして、このように板状部材10にて第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62を備えている静電チャック1は、1層構造の測温抵抗体部81(すなわち、第1測温抵抗体61)と2層構造の測温抵抗体部82(すなわち、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62)の抵抗値を測定し、この測定した抵抗値をもとに、半導体ウエハWの温度を測定する。具体的には、静電チャック1は、不図示の電源から配線部70を介して1層構造の測温抵抗体部81と2層構造の測温抵抗体部82に電圧を印加させて電流を流し、1層構造の測温抵抗体部81と2層構造の測温抵抗体部82における電圧の測定値と電流の測定値に基づき、1層構造の測温抵抗体部81と2層構造の測温抵抗体部82の抵抗値を測定する。そして、この測定した抵抗値をもとに、半導体ウエハWの温度を測定する。
【0050】
(本実施形態の作用効果について)
本実施形態によれば、第1測温抵抗体61は、チャック電極51よりも保持面11側の位置であって、かつ、保持面11側から見たときに凸部14と重なる位置に配置されている。
【0051】
これにより、第1測温抵抗体61を凸部14に保持される半導体ウエハWに近づけることができる。そのため、半導体ウエハWの近くで第1測温抵抗体61による温度測定ができる。したがって、保持する半導体ウエハWの温度を精度よく測定できる。
【0052】
また、第1測温抵抗体61は、保持面11側から見たときに凸部14と重なる位置に配置されているので、凸部14を介して半導体ウエハWの温度を精度よく測定できる。
【0053】
そして、
図4に示すように第1測温抵抗体61を凸部14の内部に配置すれば、第1測温抵抗体61を凸部14に保持される半導体ウエハWにさらに近づけることができる。そのため、半導体ウエハWのさらに近くで第1測温抵抗体61による温度測定ができる。したがって、より確実に、保持する半導体ウエハWの温度を精度よく測定できる。
【0054】
また、板状部材10は、第1測温抵抗体61とともに、第2測温抵抗体62も備えている。
【0055】
このようにして、2つの測温抵抗体を用いることにより、測定できる抵抗値の範囲を拡げることができる。例えば、第1測温抵抗体61のみ、または、第2測温抵抗体62のみで測定できる抵抗値の範囲が50Ωである場合には、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62の2つの測温抵抗体を用いることにより、測定できる抵抗値の範囲を100Ωにすることができる。そのため、保持する半導体ウエハWの温度をさらに精度よく測定できる。
【0056】
また、第2測温抵抗体62は、保持面11側から見たときに凸部14と重なる位置に配置されているので、凸部14を介して半導体ウエハWの温度を精度よく測定できる。
【0057】
そして、第2測温抵抗体62は、板状部材10の厚み方向についてチャック電極51と同じ位置、または、略同じ位置、あるいは、チャック電極51よりも保持面11側の位置に配置されている。
【0058】
このようにして、2つの測温抵抗体を凸部14に保持される半導体ウエハWに近づけることができる。そのため、半導体ウエハWの近くで2つの測温抵抗体による温度測定ができる。したがって、保持する半導体ウエハWの温度をさらに精度よく測定できる。
【0059】
また、
図2と
図4と
図5に示すように、板状部材10の内径側に1層構造の測温抵抗体部81が配置されており、板状部材10の外径側に2層構造の測温抵抗体部82が配置されている。
【0060】
これにより、板状部材10の外径側において、板状部材10の内径側よりも、測定できる抵抗値の範囲を拡げて、保持する半導体ウエハWの温度をさらに精度よく測定できる。そのため、例えば、板状部材10がその内径側で保持面11側に反るように変形して、板状部材10の外径側で2層構造の測温抵抗体部82が凸部14から離れた場合であっても、板状部材10の外径側において、2層構造の測温抵抗体部82を用いて半導体ウエハWの温度を精度よく測定できる。
【0061】
また、ヒータ電極52はチャック電極51よりも下面12側の位置に設けられているので、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62は、ヒータ電極52から離れた位置に設けられている。そのため、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62は、ヒータ電極52の発熱による直接的な影響を受け難い。したがって、第1測温抵抗体61と第2測温抵抗体62を用いて半導体ウエハWの温度を精度よく測定できる。
【0062】
なお、上記した実施の形態は単なる例示にすぎず、本開示を何ら限定するものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることはもちろんである。
【0063】
例えば、第1測温抵抗体61や第2測温抵抗体62は、必ずしも全ての凸部14に対応して設ける必要はなく、一部の凸部14のみに対応して設けてもよい。なお、一部の凸部14のみに対応して設ける場合には、例えば、凸部14が一定の間隔ごとに設けられるようにすることが望ましい。
【0064】
また、第1測温抵抗体61や第2測温抵抗体62は、環状凸部13に対応する位置、すなわち、保持面11側から見たときに環状凸部13と重なる位置に配置されていてもよい。このとき、環状凸部13は、本開示の「凸部」の一例である。
【0065】
また、第2測温抵抗体62を凸部14の内部に配置してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1 静電チャック
10 板状部材
11 保持面
12 下面
14 凸部
16 ガス孔
20 ベース部材
30 接合層
40 ガス流路
51 チャック電極
52 ヒータ電極
61 第1測温抵抗体
62 第2測温抵抗体
81 1層構造の測温抵抗体部
82 2層構造の測温抵抗体部
W 半導体ウエハ