(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173251
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】ろ過装置およびろ過方法
(51)【国際特許分類】
B01D 29/66 20060101AFI20241205BHJP
B01D 29/50 20060101ALI20241205BHJP
B01D 39/20 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B01D29/38 530A
B01D29/24 E
B01D39/20 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091558
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】390002118
【氏名又は名称】株式会社いけうち
(71)【出願人】
【識別番号】523206116
【氏名又は名称】日本特殊セラミックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】304031081
【氏名又は名称】有限会社日本庭園由志園
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中井 志郎
(72)【発明者】
【氏名】岩村 恭直
(72)【発明者】
【氏名】藤田 洪太郎
(72)【発明者】
【氏名】武野 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】門脇 竜也
【テーマコード(参考)】
4D019
4D116
【Fターム(参考)】
4D019AA03
4D019BA05
4D019BB06
4D019BD01
4D019CA03
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4D116AA01
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4D116QC02B
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4D116QC52B
4D116RR01
4D116RR05
4D116RR12
4D116RR16
4D116VV07
4D116VV09
4D116VV10
4D116VV14
(57)【要約】
【課題】効果的にろ材を逆洗することができるろ過装置とろ過方法を提供する。
【解決手段】処理槽31にセラミック製のろ材35を有するろ過モジュール34が設けられ、逆洗流路51に圧縮気体制御弁11が設けられたろ過装置1であって、圧縮気体制御弁11は、第1空間13と第2空間14と第3空間15を有する弁筐体12と、コンプレッサ41から供給された圧縮気体が第1空間13に導入される導入口16と、第1空間13から第2空間14に流入した圧縮気体が排出される排出口17と、第1空間13と第2空間14の境界に設けられた弁座18と、弁座18に接離可能に設けられた弁体19と、弁体19とともに第1空間13と第2空間14を第3空間15から隔てるとともに、第1空間13と第3空間15とを連通する漏洩孔21を有する弾性膜20と、第3空間15と圧縮気体制御弁11の外部とを開閉可能に繋ぐパイロット弁23とを有する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被処理液が保持される処理槽と、
前記処理槽に設けられ、セラミック製のろ材を有するろ過モジュールと、
前記ろ過モジュールのろ液取出側に連通して設けられた逆洗流路と、
前記逆洗流路に連通して設けられ、圧縮気体を供給するコンプレッサと、
前記逆洗流路に設けられ、前記コンプレッサから供給された圧縮気体が前記ろ過モジュールのろ液取出側に移送されるのを一時的に遮断する圧縮気体制御弁とを有するろ過装置であって、
前記圧縮気体制御弁は、
内部に第1空間と第2空間と第3空間を有する弁筐体と、
前記コンプレッサに連通し、前記コンプレッサから供給された圧縮気体が前記第1空間に導入される導入口と、
前記ろ過モジュールのろ液取出側に連通し、前記第1空間から前記第2空間に流入した圧縮気体が前記圧縮気体制御弁から排出される排出口と、
前記第1空間と前記第2空間の境界に設けられた弁座と、
前記弁座に接離可能に設けられ、前記弁座に当接することにより前記第1空間から前記第2空間への圧縮気体の流れを遮断する弁体と、
前記弁筐体の内面と前記弁体とを繋いで設けられた弾性膜であって、前記弁体とともに前記第1空間と前記第2空間を前記第3空間から隔てるとともに、前記第1空間と前記第3空間とを連通する漏洩孔を有する弾性膜と、
前記第3空間と前記圧縮気体制御弁の外部とを開閉可能に繋ぐパイロット弁とを有し、
前記パイロット弁が閉じた状態で、前記弁体が前記弁座に当接し、前記コンプレッサから供給された圧縮気体が前記第1空間に溜められるとともに、前記第1空間に保持された圧縮気体が前記漏洩孔を通じて前記第3空間に漏洩し、
前記パイロット弁が開くことにより、前記第3空間の圧力が低下し前記弁体が前記弁座から離れ、前記第1空間に溜められた圧縮気体が前記第2空間に流れるように構成されている
ことを特徴とするろ過装置。
【請求項2】
前記ろ過モジュールは前記ろ材を複数備え、前記ろ材は管状に形成されている請求項1に記載のろ過装置。
【請求項3】
前記ろ材は、管軸方向が鉛直方向を向くように配置されている請求項2に記載のろ過装置。
【請求項4】
前記逆洗流路は、前記圧縮気体制御弁の排出口から前記ろ過モジュールの間で、前記ろ材の延在方向に略平行に延びている請求項2に記載のろ過装置。
【請求項5】
前記逆洗流路は、前記コンプレッサと前記圧縮気体制御弁の間に圧縮気体タンクを備える請求項1に記載のろ過装置。
【請求項6】
前記圧縮気体制御弁は、前記弁体を前記弁座に向かって押し当てるバネ部材を有する請求項1に記載のろ過装置。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のろ過装置を用いて被処理液をろ過する方法であって、
前記処理槽に保持された被処理液を前記ろ材によりろ過し、ろ液を取り出すろ過工程と、
前記圧縮気体制御弁において、前記パイロット弁が閉じ、前記弁体が前記弁座に当接した状態で、前記コンプレッサから前記圧縮気体制御弁に圧縮気体を供給する逆洗準備工程と、
前記逆洗準備工程の後、前記圧縮気体制御弁の前記パイロット弁を開き、前記圧縮気体制御弁から前記ろ過モジュールのろ液取出側に圧縮気体を供給し、前記ろ材の逆洗を行う逆洗工程とを有することを特徴とするろ過方法。
【請求項8】
前記逆洗準備工程を前記ろ過工程と並行して行う請求項7に記載のろ過方法。
【請求項9】
前記逆洗工程において、前記処理槽に被処理液を供給するとともに前記処理槽から被処理液を排出しながら、前記ろ材の逆洗を行う請求項7に記載のろ過方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミック製のろ材を備えたろ過装置と、当該ろ過装置を用いたろ過方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミック製のろ材を用いたろ過装置やろ過方法が知られている。ろ材を用いたろ過では、ろ過を行うことによりろ材が目詰まりして、ろ過性能が低下する。そのため、ろ材の目詰まりを解消するために、ろ材の逆洗などが行われる。例えば特許文献1には、ケーシングに設けたセラミックフィルターを、ケーシングに設けた圧縮気体注入口より圧縮気体をケーシング内に吹き込み、ケーシングに設けた原液排出口のバルブを調節し、原液排出口よりセラミックフィルターを通過したろ液と空気を排出するフィルターの洗浄方法が開示されている。特許文献2には、逆洗操作後に、ろ過水側水路の圧力を調整して原水側水路の圧力と均衡させながら原水を循環させる循環操作を行い、その後に通常のクロスフローろ過操作に復帰するろ過方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭61-161114号公報
【特許文献2】特開2004-195377号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ろ材の逆洗方法が様々提案されているが、より効果的にろ材を逆洗できることが望まれる。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、効果的にろ材を逆洗することができるろ過装置とろ過方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決することができた本発明のろ過装置は下記の通りである。
[1] 被処理液が保持される処理槽と、
前記処理槽に設けられ、セラミック製のろ材を有するろ過モジュールと、
前記ろ過モジュールのろ液取出側に連通して設けられた逆洗流路と、
前記逆洗流路に連通して設けられ、圧縮気体を供給するコンプレッサと、
前記逆洗流路に設けられ、前記コンプレッサから供給された圧縮気体が前記ろ過モジュールのろ液取出側に移送されるのを一時的に遮断する圧縮気体制御弁とを有するろ過装置であって、
前記圧縮気体制御弁は、
内部に第1空間と第2空間と第3空間を有する弁筐体と、
前記コンプレッサに連通し、前記コンプレッサから供給された圧縮気体が前記第1空間に導入される導入口と、
前記ろ過モジュールのろ液取出側に連通し、前記第1空間から前記第2空間に流入した圧縮気体が前記圧縮気体制御弁から排出される排出口と、
前記第1空間と前記第2空間の境界に設けられた弁座と、
前記弁座に接離可能に設けられ、前記弁座に当接することにより前記第1空間から前記第2空間への圧縮気体の流れを遮断する弁体と、
前記弁筐体の内面と前記弁体とを繋いで設けられた弾性膜であって、前記弁体とともに前記第1空間と前記第2空間を前記第3空間から隔てるとともに、前記第1空間と前記第3空間とを連通する漏洩孔を有する弾性膜と、
前記第3空間と前記圧縮気体制御弁の外部とを開閉可能に繋ぐパイロット弁とを有し、
前記パイロット弁が閉じた状態で、前記弁体が前記弁座に当接し、前記コンプレッサから供給された圧縮気体が前記第1空間に溜められるとともに、前記第1空間に保持された圧縮気体が前記漏洩孔を通じて前記第3空間に漏洩し、
前記パイロット弁が開くことにより、前記第3空間の圧力が低下し前記弁体が前記弁座から離れ、前記第1空間に溜められた圧縮気体が前記第2空間に流れるように構成されている
ことを特徴とするろ過装置。
[2] 前記ろ過モジュールは前記ろ材を複数備え、前記ろ材は管状に形成されている[1]に記載のろ過装置。
[3] 前記ろ材は、管軸方向が鉛直方向を向くように配置されている[2]に記載のろ過装置。
[4] 前記逆洗流路は、前記圧縮気体制御弁の排出口から前記ろ過モジュールの間で、前記ろ材の延在方向に略平行に延びている[2]または[3]に記載のろ過装置。
[5] 前記逆洗流路は、前記コンプレッサと前記圧縮気体制御弁の間に圧縮気体タンクを備える[1]~[4]のいずれかに記載のろ過装置。
[6] 前記圧縮気体制御弁は、前記弁体を前記弁座に向かって押し当てるバネ部材を有する[1]~[5]のいずれかに記載のろ過装置。
【0006】
本発明のろ過方法は下記の通りである。
[7] [1]~[6]のいずれか一項に記載のろ過装置を用いて被処理液をろ過する方法であって、
前記処理槽に保持された被処理液を前記ろ材によりろ過し、ろ液を取り出すろ過工程と、
前記圧縮気体制御弁において、前記パイロット弁が閉じ、前記弁体が前記弁座に当接した状態で、前記コンプレッサから前記圧縮気体制御弁に圧縮気体を供給する逆洗準備工程と、
前記逆洗準備工程の後、前記圧縮気体制御弁の前記パイロット弁を開き、前記圧縮気体制御弁から前記ろ過モジュールのろ液取出側に圧縮気体を供給し、前記ろ材の逆洗を行う逆洗工程とを有することを特徴とするろ過方法。
[8] 前記逆洗準備工程を前記ろ過工程と並行して行う[7]に記載のろ過方法。
[9] 前記逆洗工程において、前記処理槽に被処理液を供給するとともに前記処理槽から被処理液を排出しながら、前記ろ材の逆洗を行う[7]または[8]に記載のろ過方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明のろ過装置およびろ過方法によれば、逆洗流路に圧縮気体制御弁が設けられることにより、圧縮気体による効果的なろ材の逆洗を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明のろ過装置に設けられる圧縮気体制御弁の内部の構成例を表し、圧縮気体制御弁が閉じた状態を表す。
【
図2】本発明のろ過装置に設けられる圧縮気体制御弁の内部の構成例を表し、圧縮気体制御弁が開いた状態を表す。
【
図4】実施例において、ろ材Aを用いてろ過と逆洗を繰り返し行ったときの1回のろ過時間の推移の結果を表す。
【
図5】実施例において、ろ材Bを用いてろ過と逆洗を繰り返し行ったときの1回のろ過時間の推移の結果を表す。
【
図6】圧縮気体制御弁を用いてろ材のろ液取出側に圧縮空気を供給してろ材の逆洗を行ったときの圧力の経時変化の測定結果を表す。
【
図7】電磁弁を用いてろ材のろ液取出側に圧縮空気を供給してろ材の逆洗を行ったときの圧力の経時変化の測定結果を表す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、セラミック製のろ材を備えたろ過モジュールを有するろ過装置と、当該ろ過装置を用いたろ過方法に関するものである。本発明のろ過装置は、逆洗流路に圧縮気体制御弁が設けられており、これにより、圧縮気体による効果的なろ材の逆洗を実現できる。
【0010】
本発明のろ過装置についてまず説明する。本発明のろ過装置は、被処理液が保持される処理槽と、処理槽に設けられ、セラミック製のろ材を備えたろ過モジュールを有する。被処理液を処理槽に導入し、処理槽内に保持された被処理液にセラミック製のろ材を浸漬し、ろ過することにより、ろ液が得られる。
【0011】
ろ材は、処理槽に保持された被処理液に浸漬可能に設置される。ろ材は、少なくともろ過を行う際に被処理液に浸漬され、逆洗の際は、ろ材は被処理液に浸漬されても浸漬されなくてもよい。処理槽は、上部が開放した水槽であってもよく、密閉可能な容器であってもよい。後者の場合、処理槽内に保持された被処理液を加圧することができる。処理槽はろ材を収容するハウジングであってもよく、処理槽とろ過モジュールが一体的に組み立てられユニット化されたものであってもよい。なお、密閉可能な容器とは、容器に接続した流路を閉じたりろ液の出入りを止めることで外部から閉鎖することができる容器を意味する。
【0012】
処理槽は、被処理液の導入部を有することが好ましい。導入部を通して被処理液を処理槽に導入することができる。導入部には被処理液の供給流路が接続されることが好ましく、供給流路には被処理液を処理槽に供給する送液ポンプが設けられることが好ましい。
【0013】
処理槽は、被処理液の排出部を有していてもよい。排出部を通して、ろ材によりろ過されなかった被処理液を処理槽から排出することができる。なお、ろ過モジュールが被処理液を全量ろ過するものである場合は、処理槽に排出部が設けられなくてもよい。排出部は、ろ材の逆洗時に発生した排水(逆洗排水)を処理槽から排出するものであってもよい。
【0014】
処理槽には散気手段が設けられてもよい。これにより、処理槽において被処理液を好気性生物処理することができる。また、散気手段から被処理液にガスが供給されることで、当該ガスによるろ材のクロスフロー洗浄をすることができる。一方、処理槽には散気手段が設けられなくてもよい。例えば処理槽が密閉可能な容器の場合は、処理槽には散気手段が設けられないことが好ましい。
【0015】
被処理液の種類は特に限定されないが、ろ材により被処理液のろ過を行うことから、被処理液には夾雑物や懸濁物質等の固形分が含まれていることが好ましい。被処理液の媒体は特に限定されないが、水であることが簡便である。被処理液のpHは特に限定されず、被処理液は、中性であってもよく、酸性であってもよく、アルカリ性であってもよい。ろ材はセラミック製であることから、耐久性に優れ、酸性またはアルカリ性の被処理液にも浸漬設置することができる。
【0016】
被処理液としては、製鉄、鉄鋼、非鉄金属、機械、金属加工、セラミック加工、めっき、塗装、電子部品、ガラス、セメント等の各種工場で発生する廃水;発電所で発生する廃水;埋立浸出水;鉱山廃水;下水、し尿、畜産糞尿等の有機性廃水;各種プラントのプロセス廃水等が挙げられる。また、河川水、湖沼水、地下水、海水等の環境水を被処理液としてもよい。
【0017】
ろ過モジュールは、ろ材を被処理液に浸漬して被処理液のろ過を行う際に、ろ材を挟んで被処理液が存在する供給側とろ液が存在するろ液取出側とを有する。供給側がろ材の外側(表面)であり、ろ液取出側がろ材の内側(内部)となる。ろ材によるろ過は、ろ材の供給側とろ液取出側の間の差圧を利用して行われる。ろ過は、ろ材の供給側を加圧することによって行ってもよく、ろ材のろ液取出側を減圧することによって行ってもよく、またその両方を組み合わせることにより行ってもよい。なお、ろ材は被処理液に浸漬設置されるため、ろ材の供給側はろ材の設置深さに基づく液深圧によっていくらか加圧されることとなる。処理槽が密閉可能な容器の場合は、処理槽(容器)に導入する被処理液の圧力によっても、ろ材の供給側を加圧することができる。ろ材のろ液取出側を減圧する場合は、ろ材のろ液取出側に連通して吸引ポンプを設ければよい。
【0018】
ろ材はセラミック製であり、膜ろ材を用いることができる。セラミック製のろ材を用いることにより、ろ材の耐圧性が高まり、ろ材の逆洗を過酷な条件下で行うことができる。具体的には、ろ材の逆洗は、ろ材のろ液取出側に圧縮気体を供給することにより行われるが、逆洗用の圧縮気体の圧力を高めたり、逆洗用の圧縮気体を瞬時に供給してろ材のろ過取出側の圧力が急激に変化するようにしても、ろ材の破損を抑えることができる。ろ材を構成するセラミックの種類は特に限定されず、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、ムライト等の金属酸化物;炭化ケイ素;窒化ケイ素等が挙げられる。これらは結晶質であっても非晶質であってもよい。ろ材は、セラミックの焼結体から構成されることが好ましい。
【0019】
ろ材は、いわゆる精密ろ過膜(MF膜)や限外ろ過膜(UF膜)であってもよく、精密ろ過膜よりも目の粗いものであってもよい。ろ材の形状は、管状や平板状等、特に限定されないが、ろ材の耐圧性を高めることが容易な点から、ろ材は管状であることが好ましい。管状のろ材は断面が円形であることが好ましいが、断面が楕円形や多角形、不定形であってもよい。
【0020】
管状のろ材は、例えば、管軸方向の一方側がオープンに形成され、他方側が封止される。この場合、オープンに形成された管状のろ材の一方側からろ材を透過したろ液を取り出すとともに、逆洗時には、当該一方側から逆洗用の圧縮気体を供給することができる。管状のろ材は、管軸方向の一方側と他方側がオープンに形成されてもよい。このようにろ材が構成される場合は、管状のろ材の一方側からろ材を透過したろ液を取り出し、逆洗時に、管状のろ材の他方側から逆洗用の圧縮気体を供給するようにしてもよい。
【0021】
ろ過モジュールは次のようにろ材が配置されることが好ましい。ろ材が管状の場合は、管状のろ材の管軸方向が鉛直方向を向くように配置されることが好ましい。ろ材が平板状の場合は、ろ材の主面が鉛直方向に延びるように配置されることが好ましい。なお、ここで説明した鉛直方向は、鉛直方向に対して10°以内(好ましくは5°以内)の角度で傾斜した方向も含まれる。このようにろ材が配置されることにより、ろ材を逆洗した際に、ろ材の細孔に詰まった懸濁物質がろ材の表面に留まらずにろ材から離脱して、処理槽の底部に溜まりやすくなる。そのため、逆洗時に発生した懸濁物質を、処理槽から除去することが容易になる。
【0022】
ろ材は、ろ材そのものが分離層として機能するものでもよく、支持体が被処理液に浸漬され、被処理液に含まれる懸濁物質等の固形分が支持体上に堆積し、この堆積層が分離層として機能するものであってもよい。後者は、一般にダイナミックろ過と称されるものである。分離層とは、固液分離能を決定する層であり、ろ材を構成する層の中で最も孔径が小さくなる層である。
【0023】
ろ過モジュールは、ろ材を1つのみ備えるものであってもよく、ろ材を複数備えるものであってもよいが、ろ過モジュールはろ材を複数備えることが好ましい。これにより、ろ材を集積設置することができ、ろ過装置のコンパクト化を図ることができる。あるいは、ろ過装置の処理量を高めることが容易になる。
【0024】
ろ過モジュールが複数のろ材を備える場合、ろ過モジュールは次のようにろ材が配置されることが好ましい。ろ材が管状の場合は、それぞれのろ材の管軸方向が互いに略平行に配置され、いわば管状のろ材の束が形成されることが好ましい。ろ材が平板状の場合は、それぞれのろ材の主面が互いに略平行に配置されることが好ましい。
【0025】
ろ過モジュールは、ろ材を保持する支持部を有することが好ましい。ろ過モジュールが複数のろ材を備えるものである場合は、1つの支持部によって複数のろ材が保持されることが好ましい。ろ材が管状の場合は、管状のろ材の管軸方向の端部が支持部によって保持されることが好ましい。この場合、管状のろ材の管軸方向の一方側のみが支持部によって保持されてもよく、一方側と他方側の両方が支持部によって保持されてもよい。ろ材が平板状の場合は、平板状のろ材の周縁部の少なくとも一部が支持部によって保持されることが好ましい。支持部は、独立した部材として、処理槽の内壁から離れて設けられてもよく、処理槽の内壁の一部から形成されてもよい。
【0026】
支持部はろ材の上部を保持するものであることが好ましい。例えば、ろ材の上半分の少なくとも一部が支持部によって保持され、ろ材の下半分は支持部によって保持されなくてもよい。このようにろ材が保持されることにより、ろ材を逆洗した際に、ろ材の細孔に詰まった懸濁物質がろ材から離脱して、処理槽の底部に溜まりやすくなる。
【0027】
ろ過モジュールは集水部を有し、集水部がろ材のろ液取出側に連通していることが好ましい。ろ過モジュールが複数のろ材を備える場合は、それぞれのろ材のろ液取出側が集水部に連通していることが好ましい。これにより、ろ材を透過したろ液が集水部に集められる。集水部は、支持部によって形成されてもよい。すなわち、支持部が集水部を兼ねるものであってもよい。この場合、支持部は内部に中空空間を有し、この中空空間を集水部として機能させることができる。
【0028】
ろ過装置は、ろ液流路を有することが好ましい。ろ液流路はろ過モジュールのろ液取出側に連通して設けられ、ろ材を透過したろ液が、ろ液流路を通ってろ過モジュールから引き抜かれる。ろ液流路は集水部に接続して設けられてもよい。ろ材のろ液取出側を減圧する場合は、ろ液流路に、吸引ポンプが連通して設けられることが好ましい。
【0029】
ろ材の逆洗は、ろ過モジュールのろ液取出側に圧縮気体を供給することにより行われる。従って、ろ過装置は、ろ材の逆洗手段として、ろ過モジュールのろ液取出側に連通して設けられた逆洗流路と、逆洗流路に連通して設けられ、圧縮気体を供給するコンプレッサとを有する。逆洗流路は、集水部に接続して設けられてもよく、ろ液流路の途中に接続して設けられてもよい。逆洗流路を通って、コンプレッサから供給された圧縮気体がろ過モジュールのろ液取出側に供給される。
【0030】
コンプレッサから供給する圧縮気体の種類は特に限定されない。圧縮気体は、簡便には空気を用いればよいが、被処理液が空気との反応性を有していたり、空気と触れることにより変質するような場合は、被処理液に不活性なガス(例えば、窒素ガス等)を用いることもできる。
【0031】
コンプレッサとしては、レシプロ式(ピストンリング式、ラビリンス式、プランジャー式を含む)、ロータリー式、ルーツ式、ローリングピストン式、スクリュー式、斜板式、ダイヤフラム式、スクロール式、ロータリーベーン式等の容積式コンプレッサ;遠心式、軸流式、斜流式等のターボ式コンプレッサ等を採用することができるが、容積式コンプレッサを採用することが好ましい。容積式コンプレッサを用いれば、圧縮気体の圧力を高めることが容易になる。
【0032】
コンプレッサはろ過装置の専用に設けられてもよいが、他の用途に使用されるコンプレッサをろ過装置に兼用するものであってもよい。本発明のろ過装置では、コンプレッサは必ずしも常時稼働するものとはならず、むしろ断続的に稼働することが想定される。従って、例えば工場に既設のコンプレッサを、ろ過装置のコンプレッサとして兼用することもできる。
【0033】
逆洗流路には、コンプレッサから供給された圧縮気体がろ過モジュールのろ液取出側に移送されるのを一時的に遮断する圧縮気体制御弁(以下、「制御弁」と称する場合がある)が設けられる。制御弁を設けることにより、コンプレッサから供給された圧縮気体が制御弁によって遮断され、圧縮気体が、制御弁の内部とそれより上流側に圧縮状態で溜められる。制御弁を開くと、溜められた圧縮気体が瞬時に開放される。その結果、逆洗用の圧縮気体をろ過モジュールのろ液取出側に一気に供給することができ、効率的なろ材の逆洗を実現できる。
【0034】
また、逆洗流路に制御弁を設けることにより、コンプレッサの小型化を図ることもできる。コンプレッサから供給された圧縮気体は制御弁の内部とそれより上流側に一旦溜められるため、コンプレッサからの圧縮気体の単位時間当たりの吐出量が少なくても、ろ過を行っている間に時間をかけて圧縮気体を制御弁の内部とそれより上流側に溜めることができる。そして、制御弁の内部とそれより上流側に圧縮気体が溜まったら、逆洗時に制御弁を開くことで圧縮気体をろ過モジュールのろ液取出側に一気に供給することができる。従って、コンプレッサとしては、逆洗時に圧縮気体をろ過モジュールのろ液取出側に供給する量よりも少ない吐出量のコンプレッサを用いることが好ましく、これによりろ過装置の小型化と低コスト化を図ることができる。
【0035】
制御弁の構造について、
図1および
図2を参照して詳しく説明する。なお、本発明で用いられる制御弁は、図面に示した態様に限定されない。
図1は、制御弁が開いた状態を示しており、
図2は、制御弁が閉じた状態を示している。
【0036】
圧縮気体制御弁(制御弁)11は弁筐体12を有する。弁筐体12は制御弁11の弁本体を構成し、制御弁11を構成する各部材が内部に設置されるとともに、内部に圧縮気体が流れる空間を有する。弁筐体12の内部空間として、具体的に、弁筐体12は内部に第1空間13と第2空間14と第3空間15を有する。コンプレッサから制御弁11の内部に導入された圧縮気体は基本的に、第1空間13から第2空間14を通って制御弁11から排出され、ろ過モジュールのろ液取出側に供給される。第3空間15は、第1空間13から第2空間14に圧縮気体を流すのを制御するために設けられる。
【0037】
制御弁11は、第1空間13に導入口16が形成され、第2空間14に排出口17が形成される。導入口16は、コンプレッサに連通し、コンプレッサから供給された圧縮気体が導入口16を通って第1空間13に導入される。排出口17は、ろ過モジュールのろ液取出側に連通し、第1空間13から第2空間14に流入した圧縮気体が排出口17を通って制御弁11から排出される。
【0038】
第1空間13と第2空間14の境界には弁座18が設けられ、弁座18に接離可能に弁体19が設けられる。
図1に示すように、弁体19が弁座18に当接することにより、第1空間13から第2空間14への圧縮気体の流れが遮断され、制御弁11が閉じた状態となる。一方、
図2に示すように、弁体19が弁座18から離れることにより、第1空間13から第2空間14へ圧縮気体が流れることが可能となり、制御弁11が開いた状態となる。弁体19は、弁座18に対して近づいたり離れたりする方向に変位するように形成されていることが好ましい。
【0039】
弁座18は環状に形成されることが好ましく、弁体19が弁座18に当接すると、弁体19と弁座18との当接部が環状に形成されることが好ましい。また、環状の弁座18を端として第1空間13と第2空間14の隔壁が延在していることが好ましい。なお環状は、閉じた環であればその形状は特に限定されず、円形であっても非円形であってもよい。このように弁座18と隔壁が形成される場合、環状の弁座18の内側および隔壁の内側が第2空間14を形成し、環状の弁座18の外側および隔壁の外側が第1空間13を形成することが好ましい。図面では、第1空間13と第2空間14の隔壁が管状に形成され、管(管状に形成された隔壁)の一方端が弁座18となり、管の内側が第2空間14、外側が第1空間13となっている。また、管の他方端が排出口17となっている。
【0040】
制御弁11には、弁筐体12の内面と弁体19とを繋いで弾性膜20が設けられる。弾性膜20は、弁筐体12の内面と弁体19とに固定され、弁体19とともに第1空間13と第2空間14を第3空間15から隔てるとともに、第1空間13と第3空間15とを連通する漏洩孔21を有する。このように弁体19と弾性膜20が設けられることにより、弁筐体12の内部に第3空間15が形成される。第3空間15は、漏洩孔21において第1空間13と連通しているが、それ以外の部分では第1空間13と第2空間14から隔てられている。
【0041】
図1に示すように弁体19が弁座18に当接した状態で、コンプレッサから供給された圧縮気体が第1空間13に導入されると、圧縮気体が第1空間13に溜められるとともに、漏洩孔21を通って圧縮気体が第3空間15に漏洩する。第1空間13の圧縮気体は、第1空間13と第3空間15との圧力差に従い第1空間13から第3空間15に漏洩する。漏洩孔21は、第1空間13に保持された圧縮気体が第3空間15に徐々に漏洩する大きさで形成されていることが好ましく、例えば漏洩孔21の1個の面積は0.5mm
2以上が好ましく、1mm
2以上がより好ましく、2mm
2以上がさらに好ましく、また20mm
2以下が好ましく、15mm
2以下がより好ましく、10mm
2以下がさらに好ましい。弾性膜20に設けられる漏洩孔21の数は1個以上であれば特に限定されないが、漏洩孔21の数は多すぎないことが好ましく、10個以下が好ましく、6個以下がより好ましく、4個以下がさらに好ましい。
【0042】
弾性膜20は、膜状であって弾性変形可能なものであれば特に限定されず、例えばゴムから構成することができる。弾性膜20は、弁体19の変位方向に垂直な方向の周縁を取り囲むように設けられることが好ましい。弾性膜20の一部は、弁体19と厚み方向に重なって設けられてもよい。弾性膜20が弁体19の周縁から外方(弁体19から離れる方向)に延び、弁筐体12の内面に固定されることで、弾性膜20の弾性によって、弁体19が弁座18に対して近づいたり離れたりする方向に変位するように構成することができる。
【0043】
弁体19は、弁座18の位置と弾性膜20の弁筐体12の内面への固定位置を適宜調整することで、弁座18に当接させることができる。弁体19は、弁筐体12の内部に圧縮気体が導入されない状態で、弁座18に向かって押し当てられることが好ましい。これにより、弁筐体12の内部に圧縮気体が導入されない状態で、弁体19が弁座18へ当接される。また、第1空間13に圧縮気体を導入した際に第1空間13と第3空間15の間に圧力差が生じ、弾性膜20に第1空間13から第3空間15へ向かう力がかかっても、弁体19が弁座18に向かって押し当てられることが好ましい。これにより、第1空間13に圧縮気体を導入した場合にも、弁体19が弁座18へ当接した状態が維持される。一方、制御弁11は、後述するようにパイロット弁23を開いた際に、第3空間15の圧力が低下し弁体19が弁座18から離れるように構成されている。従って、制御弁11は、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔP(=第1空間13の圧力-第3空間15の圧力)が所定値未満で弁体19が弁座18へ当接し、圧力差ΔPが所定値以上で弁体19が弁座18から離れるように構成されることが好ましい。制御弁11は、このように弁体19が弁座18に当接されるように、弁座18の位置と弾性膜20の弁筐体12の内面への固定位置を適宜設定することが好ましい。
【0044】
制御弁11には、弁体19を弁座18に向かって押し当てるバネ部材22が設けられてもよい。これにより、弁体19を弁座18に安定して当接することができる。この場合は、バネ部材22の弾性力を加味して、弁座18の位置と弾性膜20の弁筐体12の内面への固定位置を適宜設定すればよい。この場合もまた、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが所定値未満で弁体19が弁座18へ当接し、圧力差ΔPが所定値以上で弁体19が弁座18から離れるように構成されることが好ましい。
【0045】
バネ部材22としては、圧縮コイルバネ、板バネ、皿バネ等を用いることができる。このようなバネ部材22を、弁体19の、弁座18とは反対側に配置することで、弁体19を弁座18に向かって押し当てることができる。なお、バネ部材22には前述の弾性膜20は含まれない。
【0046】
制御弁11は、第3空間15と制御弁11の外部とを開閉可能に繋ぐパイロット弁23を有する。パイロット弁23は、弁体19を操作するための弁であり、パイロット弁23の開閉により、弁体19を弁座18に当接させたり弁座18から離れるようにすることができ、制御弁11を開いたり閉じたりすることができる。
図1に示すようにパイロット弁23が閉じた状態では、第3空間15内の圧縮気体は制御弁11の外部に流出せず、制御弁11の内部に留まる。
図2に示すようにパイロット弁23を開くと、第3空間15から制御弁11の外部に圧縮気体が流出する。
【0047】
制御弁11の内部に圧縮気体を溜める際は、パイロット弁23を閉じた状態で、コンプレッサから圧縮気体を第1空間13に供給する。パイロット弁23を開くのは、圧縮気体が第1空間13に導入され、漏洩孔21を通って第1空間13の圧縮気体が第3空間15に漏洩することにより、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが十分に小さくなった状態で行う。第1空間13に圧縮気体を導入する際は、漏洩孔21を通って第1空間13の圧縮気体が第3空間15に漏洩することと相まって、圧力差ΔPが所定値未満に維持され、弁体19が弁座18へ当接した状態が維持される。パイロット弁23を開くと第3空間15内の圧縮気体が制御弁11の外部に流出し、第3空間15の圧力が急激に低下し、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが大きくなる。その結果、
図2に示すように、弁体19が弁座18から離れ(すなわち制御弁11が開き)、第1空間13とそれより上流側に溜められた圧縮気体が瞬時に開放され、第2空間14に一気に流れ込む。
【0048】
パイロット弁23は、手動式であっても、電動式(モーター式)であっても、電磁式であってもよい。なお、パイロット弁23の速やかな開閉を実現できる点から、パイロット弁23は電磁弁を用いることが好ましい。
【0049】
パイロット弁23の全開状態の流路面積、具体的には、パイロット弁23の全開状態における流路断面の最小面積は、漏洩孔21の面積(漏洩孔21が複数ある場合は総面積)よりも大きいことが好ましい。例えば、パイロット弁23の全開状態の流路面積は漏洩孔21の面積の2倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましく、10倍以上がさらに好ましい。これにより、パイロット弁23を開いたときに、漏洩孔21を通って圧縮気体が第1空間13から第3空間15に漏洩するよりも早く第3空間15から圧縮気体が制御弁11の外部に流出し、第3空間15の圧力を急激に低下させることが容易になる。その結果、パイロット弁23を開いたときに、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPをより大きくすることができる。なお、前記倍率の上限は特に限定されず、パイロット弁23が過剰に大きくならず、パイロット弁23の所望の機能が発揮される範囲で適宜設定すればよい。
【0050】
上記のように構成された制御弁11は、パイロット弁23が閉じた状態で、弁体19が弁座18に当接し、コンプレッサから供給された圧縮気体が第1空間13に溜められるとともに、第1空間13に保持された圧縮気体が漏洩孔21を通じて第3空間15に漏洩し、パイロット弁23を開くことにより、第3空間15の圧力が低下し弁体19が弁座18から離れ、第1空間13に溜められた圧縮気体が第2空間14に流れる。第2空間14に流れ込んだ圧縮気体は、排出口17を出て、ろ過モジュールのろ液取出側に供給される。これにより、ろ材の効果的な逆洗を実現できる。制御弁11は、パイロット弁23を開き、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが所定値以上になると、弁体19が弁座18から離れ、瞬時に全開状態になる。そのため、圧縮気体が制御弁11からろ過モジュールに一気に供給され、ろ材のろ液取出側の圧力が急激に高められる。この急激な圧力変化によって、ろ材の逆洗を効果的に行うことができる。
【0051】
圧縮気体が制御弁11からろ過モジュールに供給されると、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが所定値未満に低下し、弁体19が弁座18に当接し、制御弁11が閉じる。その結果、制御弁11からろ過モジュールへの圧縮気体の供給が止まり、ろ材の逆洗が終了する。その後、パイロット弁23を閉じ、次の逆洗に備える。あるいは、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが十分に低下する前にパイロット弁23を閉じてもよい。この場合は、パイロット弁23を閉じた後に、第1空間13と第3空間15の圧力差ΔPが所定値未満に低下し、弁体19が弁座18に当接し、制御弁11が閉じる。
【0052】
ろ過装置の全体の構成例について、
図3を参照して説明する。なお、本発明のろ過装置は、図面に示した態様に限定されない。制御弁11の詳細については、上記の説明が参照される。
【0053】
ろ過装置1は、被処理液Qが保持される処理槽31と、処理槽31に設けられ、セラミック製のろ材35を備えたろ過モジュール34を有する。ろ材35により被処理液Qのろ過を行う際、ろ材35は、処理槽31の被処理液Qに浸漬設置される。処理槽31は導入部32を有し、導入部32に供給流路52が接続している。供給流路52には送液ポンプが設けられ、送液ポンプにより被処理液Qが処理槽31に供給される。
【0054】
ろ過モジュール34には、ろ材35として、管状のろ材35が複数設けられている。管状のろ材35は、管の外側が被処理液Qの存在する供給側となり、管の内側がろ液の存在するろ液取出側となる。ろ材35は管軸方向が鉛直方向を向くように処理槽31内に配置され、管状のろ材35の上端がオープンに形成され、下端が封止されている。処理槽31の上部には集水部36が設けられており、ろ材35の上端が集水部36に接続し、ろ材35のろ液取出側が集水部36と連通している。
【0055】
集水部36にはろ液流路53と逆洗流路51が接続しており、ろ液流路53と逆洗流路51はそれぞれろ液取出側に連通している。ろ過装置1によりろ過を行う際は、送液ポンプで被処理液Qを供給流路52を通って処理槽31内に供給することで、処理槽31内の被処理液Qが加圧され、これにより、ろ材35の供給側が加圧され、被処理液Qがろ材35によりろ過される。ろ材35を透過したろ液Fは、ろ液流路53を通ってろ過モジュール34から抜き出される。ろ液流路53には、ろ液流路53を開閉するバルブ55が設けられることが好ましい。ろ過を行う際はバルブ55を開け、ろ材35の逆洗を行う際はバルブ55を閉じるようにすることが好ましい。
【0056】
逆洗流路51には、逆洗用の圧縮気体を供給するコンプレッサ41が連通して設けられており、コンプレッサ41とろ過モジュール34の間に上記に説明した制御弁11が設けられている。制御弁11は、コンプレッサ41から供給された圧縮気体が導入される導入口16と、制御弁11から圧縮気体が排出される排出口17を有し、コンプレッサ41から供給された圧縮気体がろ過モジュール34のろ液取出側に移送されるのを一時的に遮断する。制御弁11のパイロット弁23を開くと、制御弁11の弁体19が弁座18から離れ、制御弁11の内部とそれより上流側に溜まった圧縮気体が、ろ過モジュール34のろ液取出側に一気に供給される。これにより、ろ材35の逆洗を効果的に行うことができる。
【0057】
ろ過装置1は、コンプレッサ41と制御弁11の間に圧縮気体タンク42が設けられることが好ましい。この場合、圧縮気体タンク42にも、コンプレッサ41から供給された圧縮気体を溜めることができる。そのため、制御弁11を開くことにより、より多くの圧縮気体をろ過モジュール34のろ液取出側に供給することができ、ろ材35の逆洗をより効果的に行うことができる。
【0058】
ろ過装置1は、圧縮気体タンク42を1つのみ有してもよく、複数有してもよい。圧縮気体タンク42が複数設けられることにより、ろ材35の逆洗の際、圧縮気体を複数回に分けて制御弁11からろ液取出側に供給することができる。これにより、圧縮気体によるろ材35の逆洗を複数回連続して行うことができ、より効果的なろ材35の逆洗を実現できる。例えば、1回目の逆洗を、ろ材35のろ液取出側にろ液が存在する状態で、制御弁11から圧縮気体をろ液取出側に供給して行い、これによりろ材35のろ液取出側に存在するろ液をろ材35の外側に追い出し、2回目以降の逆洗を、ろ材35のろ液取出側からろ液の一部または全部が取り除かれた状態で、制御弁11から圧縮気体をろ液取出側に供給することで行ってもよい。
【0059】
複数の圧縮気体タンク42は、直列に設けられてもよく、並列に設けられてもよく、また直列と並列を組み合わせて設けられてもよい。複数の圧縮気体タンク42が直列に設けられる場合、逆洗流路51には、複数の圧縮気体タンク42の間にバルブが設けられることが好ましい。下流側(制御弁11に近い側)の圧縮気体タンク42が空になったら、圧縮気体タンク42の間に設けられたバルブを開くことで、下流側の圧縮気体タンク42に圧縮気体を補充することができる。バルブは、圧縮気体タンク42と制御弁11の間にも設けられてもよい。複数の圧縮気体タンク42が並列に設けられる場合は、逆洗流路51には、各圧縮気体タンク42と制御弁11の間にバルブが設けられることが好ましく、また各圧縮気体タンク42とコンプレッサ41の間にバルブが設けられることが好ましい。これにより、各圧縮気体タンク42に圧縮気体を充填したり、各圧縮気体タンク42から制御弁11に圧縮気体を供給することができる。
【0060】
ろ過装置1は、制御弁11の第1空間13の容積を大きく確保して、圧縮気体タンク42を設けることと同様の機能が発揮されるように構成してもよい。すなわち、制御弁11が圧縮気体タンクを備え、当該圧縮気体タンクの内部空間が第1空間13を構成するものであってもよい。ろ過装置1は、制御弁11が圧縮気体タンクを備えるとともに、圧縮気体タンクを備えた制御弁11とコンプレッサ41の間のろ過流路51に、圧縮気体タンク42が設けられてもよい。
【0061】
逆洗流路51は、制御弁11の排出口17からろ過モジュール34の間で、ろ材35の延在方向に略平行に延びていることが好ましい。例えばろ材35が管状の場合は、当該区間において逆洗流路51が管状のろ材35の管軸方向に略平行に延びていることが好ましい。ろ材35が平板状の場合は、当該区間において逆洗流路51がろ材35の主面の延在方向に略平行に延びていることが好ましい。このように逆洗流路51が設けられることにより、制御弁11から排出された圧縮気体がろ材35に達するまでの間に圧力が損失することが抑えられる。そのため、制御弁11から排出された圧縮気体が、勢いを保ったままろ材35のろ液取出側に供給されやすくなる。同様の観点から、制御弁11の内部においても、第2空間14が、弁座18から排出口17の間において、ろ材35の延在方向に略平行に延びていることが好ましい。なお略平行には、完全な平行のみならず、10°以内(好ましくは5°以内)の角度のずれも含まれる。
【0062】
処理槽31には、逆洗排水Dを抜き出すために、排出部33が設けられることが好ましい。排出部33は導入部32よりも下方に位置するように設けられることが好ましく、これにより逆洗の際に発生した懸濁物質を効果的に処理槽31から排出しやすくなる。排出部33は、処理槽31の下側1/3の部分(例えば処理槽31の被処理液Qの存在部分の下側1/3の部分)に設けられることが好ましく、処理槽31の底部に設けられることがより好ましい。一方、導入部32は処理槽31の上側1/3の部分(例えば処理槽31の被処理液Qの存在部分の上側1/3の部分)に設けられることが好ましく、これにより、処理槽31内における被処理液Qの導入部32から排出部33への流れによって、逆洗の際に発生した懸濁物質が効果的に処理槽31から排出されやすくなる。
【0063】
導入部32から処理槽31内に被処理液Qを供給する際、被処理液Qは、導入部32からろ材35に向かって供給されてもよく、ろ材35の周囲に向かって、ろ材35の周りに旋回流が形成されるように、被処理液Qが導入部32から供給されてもよい。例えば、管状のろ材35の束の周りを旋回するように、被処理液Qが導入部32から供給されてもよい。後者のように被処理液Qを処理槽31内に導入した場合は、逆洗の際に発生した懸濁物質を処理槽31の底部の中央に懸濁物質を集めやすくなる。また、処理槽31の内壁に懸濁物質が付着するのを防いだり、処理槽31の内壁に付着した懸濁物質を除去しやすくなる。そのため、逆洗の際に発生した懸濁物質を処理槽31から効率的に排出しやすくなる。
【0064】
排出部33には排出流路54が接続し、排出流路54に、排出流路54を開閉するバルブ56が設けられることが好ましい。逆洗の際は、バルブ56を開けて、処理槽31内の被処理液Qが逆洗排水Dとして排出されるようにした状態で、あるいは処理槽31から被処理液Qが排出された状態で、制御弁11からろ過モジュール34のろ液取出側に圧縮気体が供給されることが好ましい。
【0065】
本発明は、上記に説明したろ過装置を用いたろ過方法も提供する。本発明のろ過方法は、本発明のろ過装置を用いて被処理液をろ過する方法であって、処理槽に保持された被処理液をろ材によりろ過し、ろ液取出側からろ液を取り出すろ過工程と、制御弁において、パイロット弁が閉じ、弁体が弁座に当接した状態で、コンプレッサから圧縮気体制御弁に圧縮気体を供給する逆洗準備工程と、逆洗準備工程の後、制御弁のパイロット弁を開き、圧縮気体制御弁からろ過モジュールのろ液取出側に圧縮気体を供給し、ろ材の逆洗を行う逆洗工程とを有する。
【0066】
ろ過工程では、処理槽に保持された被処理液をろ材によりろ過し、ろ液を取り出す。ろ過は、ろ材の供給側を加圧することによって行ってもよく、ろ材のろ液取出側を減圧することによって行ってもよく、またその両方を組み合わせることにより行ってもよい。
【0067】
ろ過工程では、導入部から処理槽内に被処理液を供給し、排出部から処理槽内の被処理液を排出しないようにして、処理槽内の被処理液をろ過してもよい。あるいは、導入部から処理槽内に被処理液を供給するとともに、排出部から処理槽内の被処理液を排出するようにして、処理槽内の被処理液をろ過してもよい。前者の場合は、送液ポンプで被処理液を処理槽内に供給することで、ろ材の供給側を加圧することができ、これによりろ材によるろ過を行うことができる。後者の場合は、吸引ポンプでろ材のろ液取出側を減圧することにより、ろ過を行うことが好ましい。
【0068】
ろ過工程は、ろ材を透過したろ液の流量やろ材の差圧(ろ材の供給側とろ液取出側の間の差圧)を測定しながら行うことが好ましい。そして、ろ液の流量が設定値を下回ったり、ろ材の差圧が設定値を上回ったりしたときに、ろ過工程を終了することが好ましい。
【0069】
逆洗準備工程では、制御弁において、パイロット弁が閉じ、弁体が弁座に当接した状態で、コンプレッサから制御弁に圧縮気体を供給する。逆洗準備工程では、コンプレッサから供給された圧縮気体が、制御弁の第1空間とそれより上流側に溜められ、逆洗の準備が進められる。逆洗準備工程は圧縮気体を十分な量あるいは十分な圧力で溜めることができれば終了し、次の逆洗工程に備える。
【0070】
逆洗準備工程で制御弁に溜められる圧縮気体の圧力(逆洗準備工程での最終圧力)は、圧縮気体による逆洗効果、ろ材の耐圧強度、ろ過装置の耐圧仕様等に基づき適宜設定すればよい。逆洗準備工程で制御弁に溜められる圧縮気体の圧力(ゲージ圧)は、例えば0.05MPa以上が好ましく、0.08MPa以上がより好ましく、0.1MPa以上がさらに好ましい。これにより、より効果的にろ材を逆洗することができる。逆洗準備工程で制御弁に溜められる圧縮気体の圧力(ゲージ圧)の上限は、ろ過装置が第二種圧力容器に該当しないようにする場合は、0.2MPa以下とすればよい。そのような制限を考慮しなければ、当該上限は0.5MPa以下、0.8MPa以下、1MPa以下、5MPa以下など特に限定されない。
【0071】
逆洗準備工程はろ過工程と並行して行うことが好ましい。これにより、ろ過工程を終了した直後に逆洗を実施することができ、効率的なろ過を行うことができる。
【0072】
逆洗準備工程の後、逆洗工程を行う。逆洗工程では、制御弁のパイロット弁を開き、制御弁からろ過モジュールのろ液取出側に圧縮気体を供給し、ろ材の逆洗を行う。逆洗工程により、制御弁からろ過モジュールのろ液取出側に一気に供給され、ろ材の細孔に詰まった懸濁物質がろ材から離脱し、ろ材の目詰まりを解消することができる。逆洗工程はろ過工程と交互に行う。
【0073】
逆洗工程では、ろ材が被処理液に浸漬した状態で逆洗を行ってもよく、ろ材が被処理液に浸漬しない状態で逆洗を行ってもよい。また、処理槽に被処理液を供給しながらろ材の逆洗を行ってもよく、処理槽への被処理液の供給を止めてろ材の逆洗を行ってもよく、処理槽から被処理液を排出しながらろ材の逆洗を行ってもよく、処理槽から被処理液を排出せずにろ材の逆洗を行ってもよい。
【0074】
逆洗工程では、ろ材が被処理液に浸漬しない状態で逆洗を行うことが好ましい。これにより、ろ過モジュールのろ液取出側に供給された圧縮気体が、勢いを保ったままろ材を通過しやすくなり、より効果的にろ材の目詰まりを解消することができる。従って、逆洗工程では、処理槽から被処理液を排出し、ろ材が被処理液から露出した後、ろ材の逆洗を行うことが好ましい。
【0075】
逆洗工程では、処理槽に被処理液を導入するとともに処理槽から被処理液を排出しながら、ろ材の逆洗を行ってもよい。このように逆洗を行うことにより、逆洗の際にろ材から離脱した懸濁物質が処理槽から効率的に排出されやすくなる。ろ材が被処理液に浸漬しない状態でこのように逆洗を行う場合は、ろ材が被処理液に浸漬しない限り、処理槽に導入した被処理液がろ材にかかってもよい。
【0076】
圧縮気体による逆洗が終了した後に、導入部から処理槽に被処理液を供給するとともに排出部から処理槽内の被処理液を排出するようにしてもよい。これにより、逆洗の際にろ材から離脱した懸濁物質を逆洗排水として処理槽から抜き出すことができる。
【0077】
逆洗工程では、圧縮気体による逆洗を1回のみ行ってもよく、複数回行ってもよい。後者の場合、ろ材の逆洗をより効果的に行うことができる。例えば、1回目の逆洗を、ろ材の内側にろ液が存在する状態で、圧縮気体をろ過モジュールのろ液取出側に供給して行い、これによりろ材の内側に存在するろ液をろ材の外側に追い出し、2回目以降の逆洗を、ろ材の内側からろ液の一部または全部が取り除かれた状態で、圧縮気体をろ過モジュールのろ液取出側に供給して行ってもよい。
【0078】
逆洗工程は、上記に説明した圧縮気体による逆洗を行う第1逆洗工程と、第1逆洗工程の後で、ろ過モジュールのろ液取出側に洗浄液を供給し、ろ材の逆洗を行う第2逆洗工程を含むものであってもよい。圧縮気体によりろ材の逆洗を行った後、洗浄液によりろ材の逆洗を行うことで、ろ材の目詰まりをより解消することができる。この場合の洗浄液としては、水、薬液、ろ過工程で得られたろ液等を用いることができる。第2逆洗工程は行わなくてもよい。
【実施例0079】
以下に、実施例を示すことにより本発明を更に詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0080】
(1)実験1:ろ過および逆洗の繰り返し処理
(1-1)方法
日本特殊セラミックス社製の管状ろ材(アルミナ製、外径4mm、長さ100mm)を90本束ね、ろ過モジュールを作製した。ろ材として、平均気孔径5.5μm、ろ過精度0.6~1.2μmのろ材Aと、平均気孔径1.2μm、ろ過精度0.2~0.4μmのろ材Bの2種類を用意した。ろ材は管軸方向の一方端が封止され、他方端がオープンに形成されており、オープンに形成された他方端を集水部に接続した。ろ過モジュールは、ろ材が鉛直方向に延在し、かつオープンに形成された他方端が上側に位置するように、処理槽内に配置した。処理槽は円筒形状を有し、円筒形状の周面が側面となり、端面が底面となるように設置された。処理槽の側面に被処理液の導入部が設けられ、底面に排出部が設けられ、処理槽の上部が集水部によって封止され、処理槽内に被処理液を導入した際に、ろ材が被処理液に浸漬されるとともに、被処理液の液面が外気に接しないように形成された。
【0081】
集水部に接続して逆洗流路を設け、逆洗流路の集水部の反対側に接続してコンプレッサを設けた。逆洗流路には、コンプレッサと集水部の間に上記に説明した圧縮気体制御弁、または比較対象として電磁弁を設置した。電磁弁は、単に逆洗流路の開閉を行うものである。コンプレッサと圧縮気体制御弁または電磁弁の間に圧縮気体タンクを設置した。コンプレッサからは、圧縮気体として圧縮空気を供給した。
【0082】
処理槽に供給する被処理液が貯められた原水槽と、ろ液が貯められるろ液槽を設け、原水槽と処理槽の導入部を繋いで供給流路を設け、集水部とろ液槽を繋いでろ液流路を設けた。また、処理槽の排出部に接続して排出流路を設けた。供給流路には、原水槽から処理槽に被処理液を供給する送液ポンプ(川本製作所社製、カワエース(登録商標)250、揚程22m、吐出量28L/分)を設置した。ろ液流路と排出流路にはそれぞれバルブを設置した。
【0083】
原水槽に、被処理液として濃縮還元100%オレンジジュースを貯め、供給流路に設けた送液ポンプにより被処理液を処理槽に導入し、ろ材によるろ過を行った。ろ過の際は、ろ液流路のバルブを開状態とし、排出流路のバルブを閉状態とした。ろ過は、送液ポンプからの被処理液の送液圧力によって、ろ材の供給側を加圧することにより行った。ろ材の供給側とろ液取出側の差圧を測定し、当該差圧が上昇し0.3MPaとなったところで、逆洗流路に設置した圧縮気体制御弁または電磁弁が開くようにして、ろ材の逆洗を実施した。逆洗用の圧縮気体の圧力は0.20MPaに設定し、電磁弁を用いた場合は圧力0.35MPaの条件も検討した。逆洗用の圧縮気体の圧力は、圧縮気体制御弁または電磁弁が閉じた状態で、その上流側の圧力(ゲージ圧)を測定することにより求めた。逆洗の際は、ろ液流路のバルブを閉状態とし、排出流路のバルブを開状態とし、処理槽から被処理液を排出し、その状態で逆洗を行った。圧縮気体による逆洗は、圧縮気体制御弁または電磁弁を5秒間開くことにより行った。逆洗は上記の設定圧力で2回行った。その後、水による逆洗を10秒間行った。逆洗終了後、再び被処理液のろ材によるろ過を行った。1回のろ過においてろ材の供給側とろ液取出側の差圧が0.3MPaとなるまでの時間を計測し、当該時間が6秒以下となるとほとんどろ液が得られなくなったため、その時点で処理を終了した。
【0084】
(1-2)結果
処理結果を
図4および
図5に示す。
図4にはろ材Aを用いた結果が示され、
図5にはろ材Bを用いた結果が示されている。ろ材Aを用いた場合もろ材Bを用いた場合も、圧縮気体制御弁を逆洗流路に設置することにより、電磁弁を設置した場合と比べて、効果的なろ材の逆洗を行うことができた。すなわち、ろ過と逆洗を繰り返し行った際に、ろ過回数を重ねたときの1回のろ過時間の低下の程度が、電磁弁を用いた場合よりも圧縮気体制御弁を用いた場合の方が小さくなった。圧縮気体制御弁では、逆洗用の圧縮気体の圧力を0.20MPaにして逆洗を行ったが、電磁弁を用いて逆洗用の圧縮気体の圧力を0.20MPaから0.35MPaに上げた場合と比べて、効果的にろ材を逆洗できた。
【0085】
(2)実験2:逆洗時の圧力の経時変化の計測
(2-1)方法
実験1と同様の装置を用い、ろ材を十分に洗浄して目詰まりを解消した状態で、圧縮気体によるろ材の逆洗を行い、ろ材の供給側にかかる圧力(すなわち逆洗用の圧縮気体がろ材を通過した後の圧力)の経時変化を計測した。圧力の計測は、ろ材を被処理液に浸漬しない状態で行った。逆洗流路には、圧縮気体制御弁または電磁弁を設置した。ろ材にはろ材Aを用い、逆洗用の圧縮気体の圧力は0.20MPaに設定した。
【0086】
(2-2)結果
計測結果を
図6および
図7に示す。
図6には圧縮気体制御弁を用いた結果が示され、
図7には電磁弁を用いた結果が示されている。
図6および
図7の結果から、圧縮気体制御弁を用いた場合は、電磁弁を用いた場合と比べて、圧縮気体によるろ材の供給側の圧力が急激に増加することが分かった。圧縮気体制御弁を用いた場合は、約0.06秒で圧力が0kPaから30kPaまで直線的に上がったのに対し、電磁弁を用いた場合は、約0.10秒かけて圧力が0kPaから25kPaまで上がり、その後約0.05秒かけて圧力が25kPaから30kPaまで上がった。以上のことから、圧縮気体制御弁を用いることにより、逆洗用の圧縮気体をろ材のろ液取出側に一気に供給することができ、その結果、効率的なろ材の逆洗を実現できたと考えられる。
本発明のろ過装置およびろ過方法は、製鉄、鉄鋼、非鉄金属、機械、金属加工、セラミック加工、めっき、塗装、電子部品、ガラス、セメント等の各種工場で発生する廃水;発電所で発生する廃水;埋立浸出水;鉱山廃水;下水、し尿、畜産糞尿等の有機性廃水;各種プラントのプロセス廃水;河川水、湖沼水、地下水、海水等の環境水等の処理に用いることができる。