(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173252
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】基板処理装置および基板処理方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/3065 20060101AFI20241205BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
H01L21/302 104H
H01L21/304 645Z
H01L21/304 648L
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091559
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000207551
【氏名又は名称】株式会社SCREENホールディングス
(74)【代理人】
【識別番号】100088672
【弁理士】
【氏名又は名称】吉竹 英俊
(74)【代理人】
【識別番号】100088845
【弁理士】
【氏名又は名称】有田 貴弘
(72)【発明者】
【氏名】屋敷 啓之
(72)【発明者】
【氏名】田鎖 学
(72)【発明者】
【氏名】中野 佑太
(72)【発明者】
【氏名】谷川 紘太
【テーマコード(参考)】
5F004
5F157
【Fターム(参考)】
5F004AA15
5F004BA19
5F004BB25
5F004BB26
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5F157AA42
5F157AB13
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5F157CF90
5F157DA43
5F157DB57
5F157DC90
(57)【要約】
【課題】基板に対する金属汚染を抑制できる技術を提供する。
【解決手段】基板処理装置は、チャンバ10と、オゾンガス管51aと、オゾンガス弁51bと、修復ガス管51cと、修復ガス弁52cと、排出管60と、制御部とを備える。チャンバ10は、内部空間10sを有し、開状態と閉状態とを切り換える。オゾンガス管51aの内壁の少なくとも一部はステンレス合金によって形成される。修復ガス管51cは、オゾンガス管51aの途中に接続された下流端を有する。制御部は、チャンバ10を閉状態とした状態において、オゾンガス弁52aを開いてチャンバ10にオゾンガスを供給した後にオゾンガス弁52aを閉じ、チャンバ10が開状態となる状態において、修復ガス弁52cを開いてオゾンガス管51aに修復ガスを供給する。修復ガスは、オゾンガス管51aの内壁の不働態膜を修復する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し、基板が前記内部空間に搬出入可能な開状態と、前記内部空間を外部から遮断する閉状態とを切り換えるチャンバと、
前記チャンバに接続された下流端を有し、オゾンガスが前記チャンバに向かって流れ、かつ、内壁の少なくとも一部がステンレス合金によって形成されたオゾンガス管と、
前記オゾンガス管に介挿されたオゾンガス弁と、
前記オゾンガス管の途中に接続された下流端を有し、前記オゾンガス管の前記内壁の不働態膜を修復する酸素を含む修復ガスが、前記オゾンガス管に向かって流れる修復ガス管と、
前記修復ガス管に介挿された修復ガス弁と、
前記チャンバに接続された上流端を有し、前記チャンバからのガスが流れる排出管と、
前記チャンバを前記閉状態とした状態において、前記オゾンガス弁を開いて前記チャンバに前記オゾンガスを供給した後に前記オゾンガス弁を閉じ、前記チャンバが前記開状態となる状態において、前記修復ガス弁を開いて前記オゾンガス管に前記修復ガスを供給する制御部と
を備える、基板処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の基板処理装置であって、
前記修復ガス管に介挿され、前記修復ガス管を流れる前記修復ガスの流量を調整する流量調整部をさらに備え、
前記制御部は、
前記修復ガス弁が開き、かつ、前記チャンバが前記開状態である状態で、前記基板を搬出し、その後、前記チャンバを前記閉状態とし、
前記流量調整部を制御して、前記閉状態における前記修復ガスの流量を前記開状態における前記修復ガスの流量よりも小さくする、基板処理装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記修復ガス弁が開き、かつ、前記チャンバが前記開状態である状態で、前記基板を搬出し、その後、前記チャンバを前記閉状態とし、前記閉状態において前記修復ガス弁を閉じる、基板処理装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記チャンバに不活性ガスを供給するための不活性ガス管と、
前記不活性ガス管に介挿される不活性ガス弁と
をさらに備え、
前記制御部は、前記オゾンガスの供給後に前記不活性ガス弁を開いて前記チャンバに前記不活性ガスを供給し、前記不活性ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを排出した後に、前記不活性ガス弁を閉じ、その後、前記チャンバを前記開状態とし、少なくとも前記チャンバが前記開状態となる状態において、前記修復ガス弁を開いて前記オゾンガス管に前記修復ガスを供給する、基板処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の基板処理装置であって、
前記不活性ガス管の下流端は、前記オゾンガス管の途中に接続されており、
前記修復ガス管の前記下流端は、前記不活性ガス管の前記下流端よりも、前記オゾンガスの流れの上流側において前記オゾンガス管の途中に接続されている、基板処理装置。
【請求項6】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記制御部は、前記オゾンガスの供給後に前記修復ガス弁を開いて前記オゾンガス管を通じて前記チャンバに前記修復ガスを供給し、前記修復ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを排出した後に、前記チャンバを前記開状態とする、基板処理装置。
【請求項7】
請求項1または請求項2に記載の基板処理装置であって、
前記オゾンガス管の前記内壁はオゾンパッシベーション処理が施されている、基板処理装置。
【請求項8】
内部空間を有し、基板が前記内部空間に搬出入する開状態と、前記内部空間を外部から遮断する閉状態とを切り換えるチャンバが前記開状態となる状態において、前記基板を前記内部空間に搬入し、前記基板が搬入された状態で前記チャンバを前記閉状態とする搬入工程と、
前記搬入工程の後に、内壁の少なくとも一部がステンレス合金によって形成されるオゾンガス管を通じて、オゾンガスを前記チャンバに供給しつつ、排出管を通じて前記チャンバの前記内部空間からのガスを排出する処理工程と、
前記処理工程の後に、前記チャンバを前記開状態とし、前記基板を搬出する搬出工程と、
前記搬入工程および前記搬出工程の少なくともいずれか一方と並行して実行され、前記チャンバが前記開状態となる期間の少なくとも一部において、前記オゾンガス管の途中に接続された下流端を有する修復ガス管を通じて、前記オゾンガス管の前記内壁の不働態膜を修復する酸素を含む修復ガスを、前記オゾンガス管に供給する修復ガス供給工程と
を備える、基板処理方法。
【請求項9】
請求項8に記載の基板処理方法であって、
前記修復ガス供給工程は、前記搬入工程および前記搬出工程の各々と並行して実行される、基板処理方法。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の基板処理方法であって、
前記修復ガス供給工程は、前記搬出工程と並行して実行され、
前記搬出工程において、前記基板を搬出した後に、前記チャンバを前記閉状態とし、
前記修復ガス供給工程において、前記チャンバが前記開状態であるとき、および、前記チャンバが前記閉状態であるときに、前記修復ガスを供給し、
前記チャンバが前記閉状態であるときの前記修復ガスの流量は、前記チャンバが前記開状態であるときの前記修復ガスの流量よりも小さい、基板処理方法。
【請求項11】
請求項8または請求項9に記載の基板処理方法であって、
前記修復ガス供給工程は、前記搬出工程と並行して実行され、
前記搬出工程において、前記基板を搬出した後に、前記チャンバを前記閉状態とし、
前記修復ガス供給工程において、前記チャンバが前記閉状態となった時点以後に、前記修復ガスの供給を終了する、基板処理方法。
【請求項12】
請求項8または請求項9に記載の基板処理方法であって、
前記処理工程と前記搬出工程との間において、不活性ガス管を通じて不活性ガスを前記チャンバに供給し、前記不活性ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを前記排出管に押し出すパージ工程を備える、基板処理方法。
【請求項13】
請求項8または請求項9に記載の基板処理方法であって、
前記処理工程と前記搬出工程との間において、前記オゾンガス管を通じて前記修復ガスを前記チャンバに供給し、前記修復ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを前記排出管に押し出すパージ工程を備える、基板処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理装置および基板処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、オゾンガスを用いて基板を処理する基板処理装置が提案されている(例えば特許文献1)。特許文献1では、基板処理装置は、熱処理チャンバと、オゾン供給ラインと、排気ラインとを含んでいる。熱処理チャンバは、チャンバ本体と、蓋部とを含む。蓋部はチャンバ本体よりも上方において昇降可能に設けられる。蓋部がチャンバ本体から離れることで、熱処理チャンバの内部空間は外部の空間とつながる。蓋部がチャンバから離れた開状態では、未処理の基板が熱処理チャンバの内部に搬入されたり、熱処理チャンバの内部から処理済みの基板が搬出されたりする。蓋部が閉じられると、蓋部の周縁およびチャンバ本体の周縁が密着する。これにより、熱処理チャンバの内部空間が外部から遮断される。
【0003】
オゾンガス供給ラインは、オゾンガスを熱処理チャンバに供給するための供給管であり、その下流端は蓋部に接続される。排気ラインは、熱処理チャンバからのガスを外部に排出するための排気管であり、その上流端はオゾン本体に接続される。
【0004】
基板が搬入され、かつ、蓋部が閉じられた状態で、オゾンガスが熱処理チャンバの内部空間に供給される。このオゾンガスは熱処理チャンバ内の基板の主面に作用し、例えば、基板の主面上の有機膜を酸化分解する。オゾンガスは排気管を通じて外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
オゾンガス供給ラインの供給管の材料には、不働態膜を有する金属を適用することができる。例えば、ステンレス合金を適用することができる。
【0007】
チャンバが開状態であるときには、チャンバの内部空間は外部空間につながる。このため、外部空間内の水分を含んだガス(例えば空気)が供給管の下流端から供給管に流入し得る。水分が供給管の内壁に作用すると、不働態膜を損傷するおそれがある。不働態膜が損傷すると、基板に対する処理時にオゾンガスが供給管の内壁の損傷部分に作用し、損傷部分から金属が供給管内に流出するおそれが高まる。金属が供給管を通じてチャンバの内部空間に流入すると、基板に付着し得る。つまり、基板に対する金属汚染のおそれが高まる。
【0008】
そこで、本開示は、基板に対する金属汚染を抑制できる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の態様は、基板処理装置であって、内部空間を有し、基板が前記内部空間に搬出入可能な開状態と、前記内部空間を外部から遮断する閉状態とを切り換えるチャンバと、前記チャンバに接続された下流端を有し、オゾンガスが前記チャンバに向かって流れ、かつ、内壁の少なくとも一部がステンレス合金によって形成されたオゾンガス管と、前記オゾンガス管に介挿されたオゾンガス弁と、前記オゾンガス管の途中に接続された下流端を有し、前記オゾンガス管の前記内壁の不働態膜を修復する酸素を含む修復ガスが、前記オゾンガス管に向かって流れる修復ガス管と、前記修復ガス管に介挿された修復ガス弁と、前記チャンバに接続された上流端を有し、前記チャンバからのガスが流れる排出管と、前記チャンバを前記閉状態とした状態において、前記オゾンガス弁を開いて前記チャンバに前記オゾンガスを供給した後に前記オゾンガス弁を閉じ、前記チャンバが前記開状態となる状態において、前記修復ガス弁を開いて前記オゾンガス管に前記修復ガスを供給する制御部とを備える。
【0010】
第2の態様は、第1の態様にかかる基板処理装置であって、前記修復ガス管に介挿され、前記修復ガス管を流れる前記修復ガスの流量を調整する流量調整部をさらに備え、前記制御部は、前記修復ガス弁が開き、かつ、前記チャンバが前記開状態である状態で、前記基板を搬出し、その後、前記チャンバを前記閉状態とし、前記流量調整部を制御して、前記閉状態における前記修復ガスの流量を前記開状態における前記修復ガスの流量よりも小さくする。
【0011】
第3の態様は、第1または第2の態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記修復ガス弁が開き、かつ、前記チャンバが前記開状態である状態で、前記基板を搬出し、その後、前記チャンバを前記閉状態とし、前記閉状態において前記修復ガス弁を閉じる。
【0012】
第4の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記チャンバに不活性ガスを供給するための不活性ガス管と、前記不活性ガス管に介挿される不活性ガス弁とをさらに備え、前記制御部は、前記オゾンガスの供給後に前記不活性ガス弁を開いて前記チャンバに前記不活性ガスを供給し、前記不活性ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを排出した後に、前記不活性ガス弁を閉じ、その後、前記チャンバを前記開状態とし、少なくとも前記チャンバが前記開状態となる状態において、前記修復ガス弁を開いて前記オゾンガス管に前記修復ガスを供給する。
【0013】
第5の態様は、第4の態様にかかる基板処理装置であって、前記不活性ガス管の下流端は、前記オゾンガス管の途中に接続されており、前記修復ガス管の前記下流端は、前記不活性ガス管の前記下流端よりも、前記オゾンガスの流れの上流側において前記オゾンガス管の途中に接続されている。
【0014】
第6の態様は、第1から第3のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記制御部は、前記オゾンガスの供給後に前記修復ガス弁を開いて前記オゾンガス管を通じて前記チャンバに前記修復ガスを供給し、前記修復ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを排出した後に、前記チャンバを前記開状態とする。
【0015】
第7の態様は、第1から第6のいずれか一つの態様にかかる基板処理装置であって、前記オゾンガス管の前記内壁はオゾンパッシベーション処理が施されている。
【0016】
第8の態様は、基板処理方法であって、内部空間を有し、基板が前記内部空間に搬出入する開状態と、前記内部空間を外部から遮断する閉状態とを切り換えるチャンバが前記開状態となる状態において、前記基板を前記内部空間に搬入し、前記基板が搬入された状態で前記チャンバを前記閉状態とする搬入工程と、前記搬入工程の後に、内壁の少なくとも一部がステンレス合金によって形成されるオゾンガス管を通じて、オゾンガスを前記チャンバに供給しつつ、排出管を通じて前記チャンバの前記内部空間からのガスを排出する処理工程と、前記処理工程の後に、前記チャンバを前記開状態とし、前記基板を搬出する搬出工程と、前記搬入工程および前記搬出工程の少なくともいずれか一方と並行して実行され、前記チャンバが前記開状態となる期間の少なくとも一部において、前記オゾンガス管の途中に接続された下流端を有する修復ガス管を通じて、前記オゾンガス管の前記内壁の不働態膜を修復する酸素を含む修復ガスを、前記オゾンガス管に供給する修復ガス供給工程とを備える。
【0017】
第9の態様は、第8の態様にかかる基板処理方法であって、前記修復ガス供給工程は、前記搬入工程および前記搬出工程の各々と並行して実行される。
【0018】
第10の態様は、第8または第9の態様にかかる基板処理方法であって、前記修復ガス供給工程は、前記搬出工程と並行して実行され、前記搬出工程において、前記基板を搬出した後に、前記チャンバを前記閉状態とし、前記修復ガス供給工程において、前記チャンバが前記開状態であるとき、および、前記チャンバが前記閉状態であるときに、前記修復ガスを供給し、前記チャンバが前記閉状態であるときの前記修復ガスの流量は、前記チャンバが前記開状態であるときの前記修復ガスの流量よりも小さい。
【0019】
第11の態様は、第8または第9の態様にかかる基板処理方法であって、前記修復ガス供給工程は、前記搬出工程と並行して実行され、前記搬出工程において、前記基板を搬出した後に、前記チャンバを前記閉状態とし、前記修復ガス供給工程において、前記チャンバが前記閉状態となった時点以後に、前記修復ガスの供給を終了する。
【0020】
第12の態様は、第8から第11のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記処理工程と前記搬出工程との間において、不活性ガス管を通じて不活性ガスを前記チャンバに供給し、前記不活性ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを前記排出管に押し出すパージ工程を備える。
【0021】
第13の態様は、第8から第11のいずれか一つの態様にかかる基板処理方法であって、前記処理工程と前記搬出工程との間において、前記オゾンガス管を通じて前記修復ガスを前記チャンバに供給し、前記修復ガスで前記チャンバ内の前記オゾンガスを前記排出管に押し出すパージ工程を備える。
【発明の効果】
【0022】
第1および第8の態様によれば、チャンバが開状態となると、チャンバの外部の空間から、水分を含んだガス(例えば空気)がオゾンガス管に流入し得るものの、開状態において修復ガスがオゾンガス管に供給される。このため、仮にオゾンガス管の内壁の不働態膜が水分によって損傷したとしても、修復ガスが不働態膜を修復することができる。したがって、オゾンガス管の内壁の不働態膜の損傷を抑制することができる。
【0023】
第2および第10の態様によれば、修復ガスの使用量を低減させることができる。
【0024】
第3および第11の態様によれば、修復ガスの使用量を最も低減させることができる。
【0025】
第4および第12の態様によれば、チャンバからのオゾンガスの流出を抑制することができる。
【0026】
第5の態様によれば、オゾンガス管に対してより上流側の位置から修復ガスを供給することができるので、より広い範囲でオゾンガス管の内壁の不働態膜を修復することができる。
【0027】
第6および第13の態様によれば、パージ用のガスとして修復ガスを利用するので、不活性ガス弁の制御が必要なく、制御部の処理負荷を軽減することができる。
【0028】
第7の態様によれば、オゾンガス管の内壁により高品質な不働態膜が形成される。
【0029】
第9の態様によれば、修復ガス供給工程が搬入工程および搬出工程の両方と並行して実行されるので、より確実に、オゾンガス管の内壁の不働態膜の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】基板処理装置の構成の一例を概略的に示す平面図である。
【
図2】制御部の内部構成の一例を概略的に示すブロック図である。
【
図3】オゾン処理ユニット、および、その周囲の配管構造の一例を模式的に示す図である。
【
図4】オゾン処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
【
図5】各ステップにおけるオゾン処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
【
図6】基板の搬出時におけるオゾン処理ユニットの様子の一例を概略的に示す図である。
【
図7】オゾン処理ユニットのタイミングチャートの一例を示す図である。
【
図8】オゾン処理ユニット、および、その周囲の配管構造の一例を模式的に示す図である。
【
図9】オゾン処理ユニットの動作の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、図面を参照しつつ実施の形態について詳細に説明する。なお図面においては、理解容易の目的で、必要に応じて各部の寸法や数を誇張または簡略化して描いている。また同様な構成および機能を有する部分については同じ符号が付されており、下記説明では重複説明が省略される。
【0032】
また、以下に示される説明では、同様の構成要素には同じ符号を付して図示し、それらの名称と機能とについても同様のものとする。したがって、それらについての詳細な説明を、重複を避けるために省略する場合がある。
【0033】
また、以下に記載される説明において、「第1」または「第2」などの序数が用いられる場合があっても、これらの用語は、実施の形態の内容を理解することを容易にするために便宜上用いられるものであり、これらの序数によって生じ得る順序に限定されるものではない。
【0034】
相対的または絶対的な位置関係を示す表現(例えば「一方向に」「一方向に沿って」「平行」「直交」「中心」「同心」「同軸」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、その位置関係を厳密に表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる範囲で相対的に角度または距離に関して変位された状態も表すものとする。等しい状態であることを示す表現(例えば「同一」「等しい」「均質」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、定量的に厳密に等しい状態を表すのみならず、公差もしくは同程度の機能が得られる差が存在する状態も表すものとする。形状を示す表現(例えば、「四角形状」または「円筒形状」など)が用いられる場合、該表現は、特に断らない限り、幾何学的に厳密にその形状を表すのみならず、同程度の効果が得られる範囲で、例えば凹凸や面取りなどを有する形状も表すものとする。一の構成要素を「備える」「具える」「具備する」「含む」または「有する」という表現が用いられる場合、該表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的表現ではない。「A,BおよびCの少なくともいずれか一つ」という表現が用いられる場合、該表現は、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A,BおよびCのうち任意の2つ、ならびに、A,BおよびCの全てを含む。
【0035】
<第1の実施の形態>
<基板処理装置の全体構成>
図1は、基板処理装置100の構成の一例を概略的に示す平面図である。基板処理装置100は、基板Wを1枚ずつ処理する枚葉式の処理装置である。
【0036】
基板Wは、例えば、半導体ウエハ、液晶ディスプレイ用基板、有機EL(Electroluminescence)用基板、FPD(Flat Panel Display)用基板、光ディスプレイ用基板、磁気ディスク用基板、光ディスク用基板、光磁気ディスク用基板、フォトマスク用基板、太陽電池用基板である。基板Wは、薄い平板形状を有する。以下では、基板Wが半導体ウエハであるものとする。基板Wは例えば円板形状を有している。基板Wの直径は例えば300mm程度であり、基板Wの膜厚は例えば0.5mm程度以上かつ3mm程度以下である。
【0037】
図1の例では、基板処理装置100は、インデクサブロック110と、処理ブロック120と、制御部90とを含んでいる。処理ブロック120は、主として基板Wの処理を行う部分であり、インデクサブロック110は、主として、基板処理装置100の外部と処理ブロック120との間での基板Wの搬送を行う部分である。
【0038】
インデクサブロック110は、ロードポート111と、第1搬送部112とを含む。ロードポート111には、外部から搬入された基板収容器(以下、キャリアと呼ぶ)Cが載置される。キャリアCには、複数の基板Wが、例えば鉛直方向において互いに間隔を空けて並んだ状態で、収容される。
図1の例では、複数のロードポート111が配列される。
【0039】
第1搬送部112は搬送ロボットであって、各ロードポート111に載置されたキャリアCから未処理の基板Wを取り出すことができる。第1搬送部112はインデクサロボットとも呼ばれ得る。第1搬送部112は、キャリアCから取り出した未処理の基板Wを処理ブロック120に搬送する。処理ブロック120は該未処理の基板Wに処理を行うことができる。また、第1搬送部112は、処理済みの基板Wを処理ブロック120から受け取り、処理済みの基板Wをロードポート111のキャリアCに搬送することができる。
【0040】
図1の例では、処理ブロック120は、複数の処理ユニット121と、第2搬送部122と、第3搬送部123とを含んでいる。第2搬送部122はシャトル搬送ユニットであって、第1搬送部112と第3搬送部123との間で基板Wを搬送する。第3搬送部123は搬送ロボットであって、第2搬送部122と複数の処理ユニット121との間で基板Wを搬送する。
【0041】
図1の例では、複数(例えば4つ)の処理ユニット121は平面視において第3搬送部123の周りを囲むように設けられている。この第3搬送部123はセンターロボットとも呼ばれ得る。平面視上の各位置において、複数の処理ユニット121が鉛直方向に積層されていてもよい。つまり、鉛直方向に積層された複数の処理ユニット121によって構成されるタワーTWの複数(図では4つ)が、第3搬送部123を囲むように設けられてもよい。
【0042】
図1の例では、複数の処理ユニット121には、ウェット処理ユニット121Wと、ドライ処理ユニット121Dとが含まれている。
【0043】
ウェット処理ユニット121Wは基板Wに対して種々のウェット処理を行う。例えば、ウェット処理ユニット121Wは、薬液を基板Wの主面に供給する薬液処理と、リンス液を基板Wの主面に供給するリンス処理とをこの順に行う。薬液処理としては、例えば、洗浄処理およびエッチング処理を適用することができる。また、ウェット処理ユニット121Wはリンス処理の後に、基板を乾燥させる乾燥処理も行う。
【0044】
ウェット処理ユニット121Wに搬入される直前の基板Wの主面にパターンが形成されている場合がある。この場合、ウェット処理ユニット121Wは、リンス処理と乾燥処理との間で、疎水処理およびリンス処理をこの順に行ってもよい。疎水処理は、シリル化液等の疎水化液を基板Wの主面に供給して基板Wの主面に疎水化膜を形成する処理である。疎水処理の後のリンス処理は、疎水化液をリンス液で押し流す処理である。基板Wに疎水化膜が形成されることにより、リンス液の表面張力を低減させることができる。このため、次の乾燥処理でのパターンの倒壊を抑制することができる。
【0045】
あるいは、ウェット処理ユニット121Wに搬入される直前の基板Wの主面に、硬化層を含むレジスト膜が形成されている場合がある。この場合、ウェット処理ユニット121Wは、薬液処理として、レジスト膜の硬化層を除去する除去処理を行ってもよい。この場合には、薬液として、例えば、硫酸および過酸化水素水の混合液(SPM)を適用することができる。
【0046】
ウェット処理ユニット121Wによる処理後の基板Wの主面には、レジスト膜および疎水化膜等の有機膜が形成されている。
【0047】
ドライ処理ユニット121Dはオゾン処理ユニット1を含んでいる。オゾン処理ユニット1は、基板Wの主面にオゾンガスを供給して、基板Wの主面をオゾンガスで処理する処理ユニットである。例えば、オゾンガスが基板Wの主面に作用することにより、基板Wの主面上の有機物が酸化分解される。有機物は、例えば、上述の有機膜(例えばレジスト膜または疎水化膜)である。オゾン処理ユニット1は、オゾンガスにより基板Wの主面上の有機物を酸化分解することから、ドライ酸化処理ユニットであるともいえる。
【0048】
オゾン処理ユニット1の構成の一例については後述するものの、オゾン処理ユニット1は、基板Wを加熱する加熱機能を有してもよい。この場合、
図1に示されるように、ドライ処理ユニット121Dは、基板Wを冷却する冷却ユニット124と、冷却ユニット124とオゾン処理ユニット1との間で基板Wを搬送するローカル搬送部125とを含んでいてもよい。
図1の例では、第3搬送部123が基板Wを冷却ユニット124に搬送し、ローカル搬送部125が基板Wを冷却ユニット124とオゾン処理ユニット1との間で搬送する。冷却ユニット124は、オゾン処理ユニット1から搬送された処理済みの高温の基板Wを冷却する。
【0049】
制御部90は、基板処理装置100を統括的に制御する。より具体的には、制御部90は第1搬送部112、第2搬送部122、第3搬送部123および処理ユニット121を制御する。
図2は、制御部90の内部構成の一例を概略的に示すブロック図である。制御部90は電子回路であって、例えばデータ処理部91および記憶部92を有している。
図2の具体例では、データ処理部91と記憶部92とはバス93を介して相互に接続されている。データ処理部91は例えばCPU(Central Processor Unit)などの演算処理装置であってもよい。記憶部92は非一時的な記憶部(例えばROM(Read Only Memory)またはハードディスク)921および一時的な記憶部(例えばRAM(Random Access Memory))922を有していてもよい。非一時的な記憶部921には、例えば制御部90が実行する処理を規定するプログラムが記憶されていてもよい。データ処理部91がこのプログラムを実行することにより、制御部90が、プログラムに規定された処理を実行することができる。もちろん、制御部90が実行する処理の一部または全部が専用の論理回路などのハードウェアによって実行されてもよい。
【0050】
<オゾン処理ユニットの概要>
図3は、オゾン処理ユニット1、および、その周囲の配管構造の一例を模式的に示す図である。
図3に示されるように、オゾン処理ユニット1はチャンバ10を含んでいる。チャンバ10は内部空間10sを形成する。内部空間10sは、基板Wを処理する処理室に相当する。内部空間10sはチャンバ10の内壁によって形成される空間である。なお、
図3では、チャンバ10の形状を模式的に示している。
【0051】
チャンバ10は、基板Wの搬出入のための開閉構造を有する。チャンバ10は基板Wの搬出入時において開状態となり、基板Wの処理時において閉状態となる。開状態とは、内部空間10sを、ローカル搬送部125が存在する外部空間と連通させた状態であり、閉状態とは、内部空間10sを当該外部空間から遮断させた状態である。ローカル搬送部125は、チャンバ10が開状態であるときに、チャンバ10の内部空間10sに基板Wを搬出入可能で絵ある。つまり、ローカル搬送部125は、チャンバ10が開状態であるときに、未処理の基板Wを内部空間10sに搬入したり、内部空間10sから基板Wを搬出したりする。オゾン処理ユニット1は、チャンバ10が閉状態であるときに、オゾンガスを用いて基板Wを処理することができる。チャンバ10は制御部90の制御下で開状態と閉状態とを切り換えることができる。
【0052】
図3の例では、チャンバ10は下部材20と上部材30とを含んでいる。下部材20および上部材30は鉛直方向において向かい合っている。
図3の例では、下部材20は、下方に凸となる凹形状を有しており、上部材30は、鉛直上方に凸となる凹形状を有している。上部材30は下部材20よりも鉛直上方に位置しており、上部材30の側壁および下部材20の側壁が鉛直方向において向かい合っている。
【0053】
図3の例では、上部材30は開閉駆動部40によって変位可能に設けられる。開閉駆動部40は制御部90によって制御され、上部材30を、次に説明する開位置と閉位置との間で昇降させる。開位置は、上部材30が下部材20から離れた位置である。
図3の例では、開位置に位置する上部材30が示されている。上部材30が開位置に位置することにより、チャンバ10が開状態となる。一方、閉位置は、上部材30が下部材20と密着し、下部材20および上部材30によって内部空間10sを密閉させる位置である。例えば上部材30が閉位置に位置することにより、上部材30の側壁の下面が下部材20の側壁の上面と密着し、チャンバ10は閉状態となる。開閉駆動部40は例えばエアシリンダまたはリニアモータ等の直動機構を含んでいてもよい。あるいは、開閉駆動部40は、モータと、モータの回転を直線移動に変換する動力伝達部(例えばラックピニオン機構またはボールねじ機構)とを含んでいてもよい。
【0054】
基板Wはチャンバ10内において例えば水平姿勢で保持または載置される。ここでいう水平姿勢とは、基板Wの厚み方向が鉛直方向に沿う姿勢である。
図3の例では、基板Wを載置する載置台11がチャンバ10内に設けられている。なお、
図3の例とは異なるものの、基板Wはチャンバ10の底部によって支持されてもよい。この場合、チャンバ10の底部が、基板Wを支持する載置台として機能する。
【0055】
オゾン処理ユニット1は、チャンバ10内の基板Wを加熱するヒータ12を含んでいてもよい。
図3の例では、ヒータ12はチャンバ10の内部に設けられており、より具体的な一例として載置台11の内部に設けられている。ヒータ12は例えば電気抵抗式のヒータであり、載置台11を通じて基板Wを加熱する。ヒータ12は例えば制御部90によって制御される。ヒータ12は、基板Wの主面上の有機物の酸化分解に適した温度まで、基板Wを加熱することができる。当該温度は例えば摂氏100度以上である。
【0056】
チャンバ10にはオゾンガス管51aの下流端が接続されている。
図3の例では、チャンバ10のうち天井部にオゾンガス管51aの下流端が接続されている。オゾンガス管51aの上流端はオゾン発生器70に接続されている。オゾン発生器70はオゾンガスを発生させる。オゾン発生器70によるオゾン発生方式は特に制限されないものの、例えば、無声放電方式、電気分解方式および紫外線ランプ方式の少なくともいずれか一つを適用できる。オゾン発生器70はオゾンガスをオゾンガス管51aの上流端に供給する。
【0057】
オゾンガス管51aには供給弁(以下、オゾンガス弁と呼ぶ)52aが介挿されている。オゾンガス弁52aはオゾンガス管51aの流路の開閉を切り換える。
図3の例では、オゾンガス管51aには流量調整部53aも介挿されている。流量調整部53aは例えばマスフローコントローラである。流量調整部53aは、オゾンガス管51aを流れるオゾンガスの流量を調整する。オゾンガス弁52aおよび流量調整部53aは制御部90によって制御される。
【0058】
図3の例では、オゾンガス管51aにはフィルタ54aが介挿されている。
図3の例では、フィルタ54aはオゾンガス弁52aおよび流量調整部53aの両方よりも下流側に設けられている。フィルタ54aは、オゾンガスに含まれる異物(例えば金属)を補足する。これにより、より清浄なオゾンガスをチャンバ10内に供給することができる。
【0059】
オゾンガス管51aは金属製の配管である。例えばオゾンガス管51aは合金製、より具体的な一例としてステンレス合金製の配管である。ステンレス合金には主成分としての鉄が含まれ、また、炭素、シリコン、マンガン、リン、硫黄、ニッケル、クロム、モリブデン、銅および窒素等の種々の化学成分が副成分として含まれる。オゾンガス管51aの内壁には不働態膜(酸化膜)が形成される。オゾンガス管51aがステンレス合金によって形成される場合、不働態膜は例えばクロム酸化物を含み、さらにマンガン酸化物を含み得る。オゾンガス管51aの内壁に形成された不働態膜は、オゾンガス管51aの内部の金属を保護することができる。オゾンガス管51aの材料としてステンレス合金を適用する場合には、オゾンガスに対して高い信頼性でオゾンガス管51aを実現することができる。
【0060】
オゾンガス管51aの内壁には、オゾンパッシベーション(登録商標)処理が施されていてもよい。オゾンパッシベーション処理とは、例えば常温(例えば25度程度)下において、対象面に高濃度(例えば50体積%以上)のオゾンガスを作用させることにより、高品質な不働態膜を対象面に形成する処理である。オゾンパッシベーション処理が行われていれば、オゾンガス管51aの内壁には、より高品質な不働態膜が形成される。
【0061】
なお、オゾンガス管51aの全体が金属(ステンレス合金)によって形成される必要はない。例えば、オゾンガス管51aは、内壁を形成する内側部分と、内側部分を外側から囲む金属以外の外側部分とを含んでもよい。この場合、内側部分が金属(例えばステンレス合金)によって形成されればよい。また、オゾンガス管51aの長手方向の全体が金属によって形成される必要はない。例えば、オゾンガス管51aのうち長手方向の一部がフレキシブル配管によって形成されてもよい。例えば、オゾンガス管51aのうちの下流端から長手方向の所定範囲内の一部分が、フレキシブル配管によって構成されてもよい。当該フレキシブル配管には、例えば、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等のフッ素系樹脂によって構成されてもよい。オゾンガス管51aのうちの長手方向の一部がフレキシブル配管であれば、上部材30が移動したときにオゾンガス管51aに生じる応力を低減させることができる。
【0062】
図3の例では、オゾンガス管51aのうちオゾンガス弁52aより上流側の部分にも供給弁(オゾンガス弁と呼ぶ)55aが介挿されている。オゾンガス弁55aもオゾンガス管51aの流路の開閉を切り換える。また、オゾンガス管51aのうちのオゾンガス弁52aとオゾンガス弁55aの間の部分には、配管56aの上流端が接続されている。配管56aの下流端は集合排出管65に接続されている。集合排出管65の下流端は不図示の排出部(例えば工場ユーティリティ)に接続される。配管56aには、圧力調整部57aが介挿されている。圧力調整部57aは例えばオートプレッシャコントローラである。オゾンガス弁55aおよび圧力調整部57aは例えば制御部90によって制御される。オゾンガス管51a内の一部のオゾンガスが、圧力調整部57aによって制御された流量で、配管56aを流れることにより、オゾンガス管51a内の圧力を所定範囲内に調整することができる。
【0063】
図3に示されるように、チャンバ10には排出管60の上流端も接続されている。
図3の例では、排出管60の上流端はチャンバ10の底部に接続され、排出管60の下流端は集合排出管65に接続される。集合排出管65の下流端は不図示の排気部(例えば工場ユーティリティ)に接続される。排出管60には排出弁62が介挿されている。排出弁62は例えば制御部90によって制御され、排出管60の流路の開閉を切り換える。
図3の例では、排出管60には圧力調整部63が介挿されている。圧力調整部63は、例えば、チャンバ10の内部空間10sの圧力が所定の圧力範囲内となるように、チャンバ10からのガスの排気流量を調整する。圧力調整部63は例えば制御部90によって制御される。圧力調整部63は例えばオートプレッシャコントローラであってもよい。チャンバ10の内部空間10sの圧力を測定する圧力センサ(不図示)が設けられてもよい。制御部90は圧力センサの測定値に基づいて圧力調整部63を制御してもよい。
【0064】
図3の例では、オゾンガス管51aにはフィルタ54aが介挿されている。フィルタ54aはオゾンガスに含まれる異物を補足する。これにより、より清浄なオゾンガスをチャンバ10に供給することができる。
【0065】
制御部90は、チャンバ10内に基板Wが搬入されており、かつ、チャンバ10が閉状態である状態で、オゾンガス弁52aおよびオゾンガス弁55aを開く。これにより、オゾンガス管51aを通じてオゾンガスがチャンバ10に供給される。オゾンガスはチャンバ10内において基板Wの主面(上面)に作用し、例えば基板Wの主面上の有機物を酸化分解する。また、制御部90は排出弁62を開いている。これにより、オゾンガスはチャンバ10から排出管60を通じて排出される。基板W上の有機物を十分に除去すると、制御部90はオゾンガス弁52aを閉じる。
【0066】
図3の例では、チャンバ10内のオゾンガスをパージするための不活性ガス管51bが設けられている。
図3の例では、不活性ガス管51bの下流端はオゾンガス管51aの途中の接続位置C1に接続されている。不活性ガス管51bの上流端は不活性ガス供給源に接続されている。不活性ガス供給源は、不活性ガスを貯留する貯留部を有し、不活性ガス管51bの上流端に不活性ガスを供給する。不活性ガスは例えば窒素ガスおよび希ガスの少なくともいずれか一つを含む。希ガスは例えばアルゴンガスを含む。
【0067】
不活性ガス管51bには、供給弁(以下、不活性ガス弁と呼ぶ)52bが介挿されている。不活性ガス弁52bは不活性ガス管51bの流路の開閉を切り替える。また、
図3の例では、不活性ガス管51bには流量調整部53b、フィルタ54bおよび逆止弁55bが介挿されている。流量調整部53bは、不活性ガス管51bを流れる不活性ガスの流量を調整する。流量調整部53bは例えば開度が調整可能な弁である。不活性ガス弁52bおよび流量調整部53bは例えば制御部90によって制御される。フィルタ54bは、不活性ガスに含まれる異物を補足する。これにより、より清浄な不活性ガスをチャンバ10に供給することができる。逆止弁55bは、不活性ガス供給源からチャンバ10に向かって流れる不活性ガスを通過させ、チャンバ10から不活性ガス供給源へ向かって流れる不活性ガスを阻止する。
【0068】
制御部90はオゾンガスによる基板Wの処理後(つまり、オゾンガスの供給後)に、不活性ガス弁52bを開く。これにより、不活性ガス供給源からの不活性ガスが不活性ガス管51bおよびオゾンガス管51aの一部を通じてチャンバ10内に供給される。このため、不活性ガスでチャンバ10内のオゾンガスを排出管60側に押し出すことができる。つまり、チャンバ10内のオゾンガスを不活性ガスに置換することができる。制御部90はオゾンガスが十分に排出された後に、不活性ガス弁52bを閉じる。
【0069】
ところで、
図3の例では、上述のようにフィルタ54aが設けられている。このフィルタ54aにはオゾンガスが滞留しやすい。このため、不活性ガスの供給時(つまりパージ時)において、フィルタ54a内に滞留していたオゾンガスがチャンバ10に向かって流出し得る。したがって、オゾンガスがチャンバ10の内部空間10sに流入し、オゾンガスのパージに要する時間が長くなり得る。
【0070】
そこで、
図3の例では、フィルタ54a内のオゾンガスを、集合排出管65に排出させるための配管構造が設けられている。具体的には、オゾンガス管51aのうちフィルタ54aの直前の部分には、排出管56bの上流端が接続されている。排出管56bには排出弁57bが介挿されている。排出弁57bは例えば制御部90によって制御され、排出管56bの流路の開閉を切り換える。排出管56bの下流端はエジェクタ59bの吸引口に接続されている。エジェクタ59bの流入口は不図示のガス供給源に接続されており、エジェクタ59bの流出口は排出管58bの上流端に接続されている。排出管58bの下流端は集合排出管65に接続される。
【0071】
制御部90はオゾンガスによる基板Wの処理後に排出弁57bを開く。排出弁57bが開いた状態でガス供給源から高圧のガス(例えば空気)がエジェクタ59bを通じて排出管58bを流れると、当該ガスの流れによって排出管56b内の圧力が負圧となる。これにより、排出管56b内のガスがエジェクタ59bに吸引され、排出管58bを通じて集合排出管65に排出される。このガスの流れによってフィルタ54a内のオゾンガスもエジェクタ59bに向かって吸引される。これにより、フィルタ54a内のオゾンガスがチャンバ10に向かって流れることを抑制できる。したがって、不活性ガスによるオゾンガスのパージに要する時間を短縮することができる。
【0072】
なお、フィルタ54aは省略されてもよい。フィルタ54aが設けられない場合、排出管56b、排出弁57b、エジェクタ59bおよび排出管58bも設けられない。
【0073】
制御部90は、チャンバ10内のオゾンガスの排出後に、開閉駆動部40を制御してチャンバ10を開状態とする。これにより、処理済みの基板Wが搬出可能となる。このとき、チャンバ10の内部空間10sが外部と連通するので、外部の空気が内部空間10sを通じてオゾンガス管51aの下流端に流入し得る。外部の空気には通常水分が含まれているので、当該水分がオゾンガス管51aの内壁に作用し得る。このため、オゾンガス管51aの内壁の不働態膜が損傷するおそれがある。不働態膜が損傷すると、オゾンガスがオゾンガス管51aを流れているときに、オゾンガスがオゾンガス管51aの内壁の損傷部分に作用し、内部の金属(例えばマンガン)が管内に流出しやすくなる。例えばオゾンガスによりマンガンが蒸発し得る。このような金属がオゾンガス管51aを通じてチャンバ10内に流入すると、基板Wに対する金属汚染が生じる。
【0074】
そこで、本実施の形態では、オゾンガス管51aの内壁の不働態膜を修復する修復ガスを供給するための修復ガス管51cが設けられている。修復ガス管51cの下流端は、オゾンガス管51aの途中の接続位置C2に接続されており、修復ガス管51cの上流端は修復ガス供給源に接続されている。修復ガスは、酸素元素を含む酸化性ガスであり、例えば酸素ガスを含む。修復ガスは例えばドライエアを含んでいてもよい。なお、修復ガスはオゾンを含まない。また、修復ガスは、水分をほとんど含まない無水ガスである。ここでいう無水とは、例えば、水分の含有量(体積比)が数十(例えば10)vol.ppm以下であることをいう。修復ガス供給源は、修復ガスを貯留する貯留部を含み、修復ガス管51cの上流端に修復ガスを供給する。
【0075】
修復ガス管51cには、供給弁(以下、修復ガス弁と呼ぶ)52cが介挿されている。修復ガス弁52cは修復ガス管51cの流路の開閉を切り替える。また、
図3の例では、修復ガス管51cには流量調整部53c、フィルタ54cおよび逆止弁55cが介挿されている。流量調整部53cは、修復ガス管51cを流れる修復ガスの流量を調整する。流量調整部53cは例えば開度が調整可能な弁である。修復ガス弁52cおよび流量調整部53cは例えば制御部90によって制御される。フィルタ54bは、修復ガスに含まれる異物を補足する。これにより、より清浄な修復ガスをオゾンガス管51aに供給することができる。逆止弁55bは、修復ガス供給源からオゾンガス管51aに向かって流れる修復ガスを通過させ、オゾンガス管51aから修復ガス供給源へ向かって流れる修復ガスを阻止する。
【0076】
修復ガス管51cの下流端はオゾンガス弁52aよりも下流側において、オゾンガス管51aに接続される。つまり、接続位置C2はオゾンガス弁52aよりも下流側の位置である。
図3の例では、フィルタ54aはオゾンガス弁52a、流量調整部53aおよび逆止弁55cの全てよりも下流側に設けられており、修復ガス管51cの下流端はフィルタ54aよりも下流側において、オゾンガス管51aに接続されている。つまり、
図3の例では、接続位置C2はフィルタ54aよりも下流側の位置である。
【0077】
制御部90はオゾンガスによる処理後に、修復ガス弁52cを開く。具体的には、制御部90は、少なくともチャンバ10が開状態となる状態において、修復ガス弁52cを開く。修復ガス弁52cが開くと、修復ガスが修復ガス管51cを通じてオゾンガス管51aに流入し、オゾンガス管51aの下流部分を流れてチャンバ10内に流出する。ここでいうオゾンガス管51aの下流部分とは、オゾンガス管51aの下流端と接続位置C2との間の部分である。当該下流部分の大部分は金属(例えばステンレス合金)によって形成されている。修復ガスはオゾンガス管51aの下流部分の内壁の不働態膜に作用して、当該不働態膜を修復する。
【0078】
<基板処理装置の動作>
次にオゾン処理ユニット1の動作の具体的な一例について説明する。
図4は、オゾン処理ユニット1の動作の一例を示すフローチャートである。制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS1からステップS7の処理を基板処理装置100に実行させる。
図5は、各ステップにおけるオゾン処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。なお、ここでは、オゾンガス弁55aは開いており、オゾン発生器70からのオゾンガスはオゾンガス管51aの一部、配管56aおよび集合排出管65を通じて常時流れている。圧力調整部57aによって、オゾンガス管51aの当該一部内の圧力が所定範囲内に調整される。また、排出弁62も開いているものとする。
【0079】
まず、基板処理装置100は未処理の基板Wをオゾン処理ユニット1に搬入する(ステップS1:搬入工程:
図5(a)参照)。具体的には、まず、制御部90は開閉駆動部40を制御して、開閉駆動部40に上部材30を開位置に上昇させる。これにより、チャンバ10が開状態となる。制御部90はチャンバ10が開状態となる状態でローカル搬送部125を制御して、ローカル搬送部125に基板Wをチャンバ10に搬入させる。これにより、基板Wがチャンバ10内の載置台11の上に載置される。次に、制御部90は基板Wが搬入された状態で、チャンバ10を閉状態とする。具体的には、制御部90は開閉駆動部40に上部材30を閉位置に下降させる。これにより、チャンバ10は、その内部空間10sに基板Wが存在する状態で、閉状態となる。
【0080】
次に、制御部90はヒータ12を制御して基板Wを加熱させる(ステップS2:加熱開始工程)。ヒータ12は、基板Wの温度が、オゾン処理に適した温度範囲内となるように基板Wを加熱する。当該温度は例えば摂氏100度以上である。ヒータ12は少なくともオゾン処理が終了するまで加熱動作を実行する。なお、ステップS2はステップS1よりも前に実行されてもよく、ステップS1と並行して実行されてもよい。
【0081】
次に、制御部90はオゾン処理を行う(ステップS3:処理工程:
図5(b)参照)。具体的には、制御部90はオゾンガス弁52aを開く。これにより、オゾンガスがオゾンガス管51aを通じてチャンバ10に供給される。オゾンガスのオゾン濃度は、例えば100~200g/cm
3であってよい。また、オゾンガスの供給流量は、5~20L(リットル)/分程度であってよい。チャンバ10内に供給されたオゾンガスは基板Wの主面に作用して、基板Wの主面を処理する。例えば、オゾンガスが基板Wの主面上の有機物を酸化分解する。有機物の分解によって生じた有機物ガスおよび水蒸気等の生成物はオゾンガスとともに排出管60を通じて外部に排出される。そして、基板Wの主面が十分に処理されると、制御部90はオゾンガス弁52aを閉じる。例えばオゾンガス弁52aが開いた時点から所定のオゾン処理時間が経過したときに、制御部90がオゾンガス弁52aを閉じる。経過時間は例えば制御部90のタイマ回路(不図示)によって測定される。オゾン処理時間は例えば予め設定される。
【0082】
次に、制御部90はパージ処理を行う(ステップS4:パージ工程:
図5(c)参照)。具体的な一例として、制御部90は不活性ガス弁52bを開く。これにより、不活性ガスが不活性ガス管51bを通じてチャンバ10に供給される。チャンバ10内に供給された不活性ガスはオゾンガスを排出管60に押し出すので、いずれチャンバ10内のガスがオゾンガスから不活性ガスに置換される。このパージ処理により、チャンバ10からのオゾンガスの流出を抑制することができる。
【0083】
このとき、制御部90は排出弁57bを開いてもよい。これにより、フィルタ54a内のオゾンガスが排出管56bおよび排出管58bを通じて集合排出管65に排出される。したがって、フィルタ54a内のオゾンガスがチャンバ10側に流れにくく、より短時間でチャンバ10内のオゾンガスを不活性ガスで置換することができる。フィルタ54a内のオゾンガスが十分に排出されると、制御部90は排出弁57bを閉じる。また、チャンバ10内のオゾンガスが十分に排出されると、制御部90は不活性ガス弁52bを閉じる。例えば不活性ガス弁52bが開いた時点から所定のパージ処理時間が経過したときに、制御部90が不活性ガス弁52bを閉じる。パージ処理時間は例えば予め設定される。このパージ処理により、オゾンガス管51aの下流部分は不活性ガスで満たされる。
【0084】
次に、基板処理装置100は処理済みの基板Wをオゾン処理ユニット1から搬出する(ステップS5:搬出工程:
図5(d)参照)。具体的には、まず、制御部90は開閉駆動部40を制御して、開閉駆動部40に上部材30を開位置に上昇させる。これにより、チャンバ10が開状態となる。次に、制御部90はローカル搬送部125を制御して、ローカル搬送部125に基板Wをチャンバ10から搬出させる。ローカル搬送部125は基板Wを冷却ユニット124に搬送する。
【0085】
ローカル搬送部125は次の未処理の基板Wをオゾン処理ユニット1に搬入する。つまり、次の基板Wに対して上述の一連の処理が再び実行される。これにより、オゾン処理ユニット1は複数の基板Wに対して順次にオゾン処理を行うことができる。
【0086】
さて、基板Wの搬出入時(ステップS1およびステップS5)において、チャンバ10は開状態となる。このため、チャンバ10の外部空間(つまり、ローカル搬送部125が存在する空間)から空気が内部空間10sを通じてオゾンガス管51aの下流端に流入し得る。当該空気中の水分がオゾンガス管51aの内壁の不働態膜に作用すると、不働態膜が損傷し得る。
【0087】
そこで、
図4の例では、基板Wの搬出時(ステップS5)において、修復ガスをオゾンガス管51aに供給する(ステップS7:修復ガス供給工程:
図5(d)参照)。つまり、ステップS7はステップS5に並行して実行される。具体的には、制御部90は、少なくともチャンバ10が開状態となる状態において、オゾンガス管51aに修復ガスを供給する。具体的には、制御部90は修復ガス弁52cを開く。これにより、修復ガスが修復ガス管51cを通じてオゾンガス管51aの下流部分に流入し、オゾンガス管51aの下流部分内の不活性ガスを押し出して、オゾンガス管51aの下流端から流出する。つまり、オゾンガス管51aの下流部分におけるガスが不活性ガスから修復ガスに置換される。修復ガスの流量は特に制限されないものの、例えば5L(リットル)/分程度以上に設定され得る。修復ガスの酸素がオゾンガス管51aの下流部分の内壁の不働態膜に作用することで、不働態膜が修復される。つまり、酸素によって不働態膜の酸化物が成長する。また、修復ガスがオゾンガス管51aの下流端から流出するので、水分を含む空気のオゾンガス管51aの下流端への流入を抑制することもできる。
【0088】
なお、制御部90は、ステップS7において、チャンバ10が開状態となる期間の少なくとも一部において、修復ガス弁52cを開いていればよい。修復ガスが供給される期間では、オゾンガス管51aの内壁の不働態膜を修復でき、また、オゾンガス管51aの下流端への空気の流入を抑制できるからである。
【0089】
制御部90は、ステップS7において、開閉駆動部40に閉状態から開状態への作動を開始させる前に、修復ガス弁52cを開いてもよい。言い換えれば、制御部90は修復ガス弁52cへの開信号を出力した後に、開閉駆動部40に制御信号を出力してもよい。修復ガス弁52cは当該開信号に応答して開動作を開始する。開閉駆動部40は当該制御信号に応答して上部材30を開位置に上昇させ始める。これによれば、オゾンガス管51aの下流端からガスが流出した状態で、開閉駆動部40がチャンバ10を閉状態から開状態とする。このため、オゾンガス管51aの下流端への空気の流入をより確実に抑制することができる。
【0090】
また、制御部90は、ステップS7において、チャンバ10が開状態である期間の全部において、修復ガス弁52cを開き続けてもよい。これによれば、オゾンガス管51aの内壁の不働態膜をより確実に修復でき、また、オゾンガス管51aの下流端への空気の流入をより確実に抑制できる。
【0091】
図4の例では、基板Wの搬入時(ステップS1)においても、修復ガスをオゾンガス管51aに供給する(ステップS6:修復ガス供給工程:
図5(a)参照)。つまり、ステップS6はステップS1に並行して実行される。具体的には、制御部90は修復ガス弁52cを開く。これにより、修復ガスが修復ガス管51cを通じてオゾンガス管51aの下流部分に流入し、オゾンガス管51aの下流部分を流れてオゾンガス管51aの下流端から流出する。ステップS6において修復ガス弁52cが開くタイミングおよび修復ガス弁52cが開く期間については、ステップS7と同様である。なお、制御部90はオゾンガス弁52aを開く際に修復ガス弁52cを閉じてもよい。
【0092】
<作用効果>
以上のように、本実施の形態では、修復ガス管51cの下流端がオゾンガス管51aの途中の接続位置C2に接続されている。このため、修復ガス管51cに介挿された修復ガス弁52cを開くことで、修復ガスをオゾンガス管51aの下流部分に供給することができる。したがって、オゾンガス管51aの下流部分の内壁の不働態膜を修復することができる。
【0093】
上述の例では、制御部90は、チャンバ10が開状態となる状態において、修復ガス管51cを開いている。つまり、チャンバ10の外部の空気がオゾンガス管51aの下流端に流入し得る状態において、修復ガスがオゾンガス管51aの下流端から流出する。このため、空気がオゾンガス管51aの下流端に流入することを抑制することができる。よって、空気中の水分がオゾンガス管51aの内壁に作用することを抑制できる。また、わずかな空気が流入してオゾンガス管51aの内壁の不働態膜を損傷しても、修復ガスが不働態膜を修復することができる。
【0094】
なお、
図4の例では、基板Wの搬入時(ステップS1)でも搬出時(ステップS5)でも、修復ガスがオゾンガス管51aに供給される。このため、オゾンガス管51aの内壁の不働態膜をより確実に修復することができる。ただし、必ずしもこれに限らない。基板Wの搬入時および搬出時の少なくともいずれか一方で、チャンバ10が開状態である期間の少なくとも一部において、修復ガスがオゾンガス管51aに供給されればよい。
【0095】
<接続位置C2>
図3の例では、オゾンガス管51aおよび修復ガス管51cが接続される接続位置C2は、オゾンガス管51aおよび不活性ガス管51bが接続される接続位置C1よりも、オゾンガスの流れについての上流側に位置する。これにより、修復ガス管51cはオゾンガス管51aのうちより広い範囲に修復ガスを供給することができる。つまり、修復ガスが流れるオゾンガス管51aの下流部分をより長くすることができる。したがって、より広い範囲でオゾンガス管51aの内壁の不働態膜を修復することができる。
【0096】
フィルタ54aが設けられない場合、接続位置C2は流量調整部53aとオゾンガス弁52aとの間の位置であってもよい。
【0097】
<基板Wが搬入されていない期間>
チャンバ10の内部空間10sに基板Wが存在していない状態で、チャンバ10が閉状態となる場合もある。例えば、キャリアC内の複数の基板Wが順次に搬送されてオゾン処理ユニット1が複数の基板Wを順次に処理する場合、処理済の基板Wがオゾン処理ユニット1から搬出されると、次の未処理の基板Wが搬入されるまで、チャンバ10の内部空間10sには基板Wが存在しない。このため、次の基板Wの搬入を待っている期間において、開閉駆動部40がチャンバ10を閉状態としてもよい。
【0098】
図6は、基板Wの搬出時(ステップS5)におけるオゾン処理ユニット1の様子の一例を概略的に示す図である。
図6(a)に示されるように、チャンバ10が開状態である状態で、処理済みの基板Wがローカル搬送部125によってオゾン処理ユニット1から搬出される。
図6(a)では、修復ガスがオゾンガス管51aの下流端から流出する。
【0099】
基板Wが搬出されると、
図6(b)に示されるように、制御部90は開閉駆動部40を制御して、開閉駆動部40にチャンバ10を開状態から閉状態とさせる。これにより、チャンバ10の内部空間10sは外部の空間(ローカル搬送部125が存在する空間)から遮断される。つまり、次の基板Wが搬入されるまで、チャンバ10が閉状態となる。このとき、チャンバ10の内部空間10sには基板Wが存在していない。
【0100】
制御部90は、チャンバ10の内部空間10sに基板Wが存在しておらず、かつ、チャンバ10が閉状態となる状態で、修復ガスの流量を低下させてもよい。
図7は、オゾン処理ユニット1のタイミングチャートの一例を示す図である。
図7では、ステップS5におけるタイミングチャートの一例が示されている。
図7では、時点t1の直前で、修復ガスの流量が増加している。つまり、制御部90は時点t1の直前で修復ガス弁52cを開いている。そして、時点t1において、開閉駆動部40は上部材30を閉位置から上昇させ始め、時点t2において、上部材30が開位置に到達する。その後、時点t3において、ローカル搬送部125が基板Wを搬出し始め、時点t4において、基板Wの搬出が完了する。これにより、チャンバ10の内部空間10sには基板Wが存在しなくなる。その後、時点t5において、開閉駆動部40が上部材30を開位置から閉位置へ下降させ始め、時点t6において、上部材30が閉位置に到達する。以上のように、制御部90は、修復ガス弁52cが開き、かつ、チャンバ10が開状態である状態で、ローカル搬送部125に基板Wを搬出させ、その後、開閉駆動部40にチャンバ10を閉状態とさせる。これにより、チャンバ10の内部空間10sは基板Wを収容しない状態で外部から遮断される。
【0101】
チャンバ10が閉状態であるときには、チャンバ10の外部の空気はチャンバ10の内部空間10sにはほとんど流入できず、オゾンガス管51aの下流端にもほとんど流入できない。チャンバ10が閉状態となった直後では、チャンバ10の内部空間10sには空気が存在しているものの、当該空気はいずれ修復ガスで排出管60に押し出される。つまり、チャンバ10内のガスが修復ガスで実質的に満たされる。
【0102】
そこで、
図7に示されるように、制御部90は、チャンバ10が閉状態になる際に、流量調整部53cを制御して修復ガスの流量を第1流量F1から第2流量F2に低下させてもよい。つまり、制御部90は流量調整部53cを制御して、閉状態における修復ガスの第2流量F2(例えば定常値)を、開状態における修復ガスの第1流量F1(例えば定常値)よりも低くする。第2流量F2は、例えば1L/分程度以上である。チャンバ10が閉状態であるときには、チャンバ10の内部空間10sに存在する水分を含んだ空気の量は増加しないので、修復ガスの流量を低下させても、オゾンガス管51aへの空気の流入を適切に抑制することができる。言い換えれば、より少ない修復ガスの使用量でオゾンガス管51aへの空気の流入を適切に抑制することができる。また、修復ガスの流量が少なくても、オゾンガス管51aの下流部分は修復ガスで満たされるので、オゾンガス管51aの下流部分の内壁の不働態膜を適切に修復することができる。
【0103】
図7の例では、制御部90は、チャンバ10が閉状態となった時点t6以後に、修復ガスの流量を低下させる。これによれば、チャンバ10の内部空間10sに残留する空気をより速やかにパージすることができる。
【0104】
また、制御部90は、チャンバ10が閉状態となった時点t6以後に、修復ガス弁52cを閉じて修復ガスの流量をゼロにしてもよい。例えば、時点t6から所定時間が経過した時点t7において、制御部90が修復ガス弁52cを閉じてもよい。また、制御部90は排出弁62も閉じてもよい。これによれば、オゾンガス管51aの下流部分内の修復ガスがほぼ静止する。当該修復ガスもオゾンガス管51aの下流部分の内壁に作用できるので、オゾンガス管51aの内部の不働態膜を修復することができる。
【0105】
なお、必ずしも基板Wが搬出されるたびに、チャンバ10を閉状態とする必要はない。例えば、キャリアC内の複数の基板Wが順次にオゾン処理ユニット1で処理される場合には、基板Wの入れ替え時にチャンバ10を閉状態としなくてもよい。この場合、チャンバ10が開状態であるときには、流量調整部53cは修復ガスの流量を第1流量F1に調整する。一方、当該キャリアC内の最後の基板Wがオゾン処理ユニット1から搬出された時点から、キャリアC内の最初の基板Wがオゾン処理ユニット1に搬入される時点までの期間において、チャンバ10を閉状態としてもよい。チャンバ10が閉状態であるときに、制御部90は修復ガスの流量を第1流量F1から第2流量F2に低減させてもよく、あるいは、修復ガス弁52cを閉じてもよい。
【0106】
<第2の実施の形態>
図8は、オゾン処理ユニット1、および、その周囲の配管構造の一例を模式的に示す図である。第2の実施の形態では、第1の実施の形態と比べて、不活性ガスを供給するための配管構造が設けられていない。
【0107】
次にオゾン処理ユニット1の動作の具体的な一例について説明する。
図9は、オゾン処理ユニット1の動作の一例を示すフローチャートである。制御部90は、予め設定された処理手順(レシピ)にしたがって、ステップS1からステップS3、ステップS4A、ステップS5からステップS7の処理を基板処理装置100に実行させる。
図9に示されるように、第2の実施の形態では、第1の実施の形態におけるステップS4の代わりにステップS4Aが実行される。
【0108】
ステップS4Aでは、制御部90は修復ガス弁52cを開く。これにより、修復ガスが修復ガス管51cおよびオゾンガス管51aの下流部分を通じてチャンバ10の内部空間10sに供給される。修復ガスはチャンバ10の内部空間10sのオゾンガスを排出管60へ押し出すので、チャンバ10内のガスがオゾンガスから修復ガスに置換される。そして、オゾンガスが十分に排出されると、修復ガスの供給を継続しつつ(ステップS7)、基板Wが搬出される(ステップS5)。
【0109】
以上のように、第2の実施の形態によれば、チャンバ10の内部空間10sのオゾンガスのパージに修復ガスが用いられる。このため、不活性ガスを供給するための配管構造が不要である。当該配管構造を設けない場合には、基板処理装置100のコストおよびサイズを低減させることができる。また、制御部90は不活性ガス弁52bの開閉制御を行う必要がないので、制御部90の処理負荷を軽減することもできる。
【0110】
以上のように、基板処理装置100および基板処理方法は詳細に説明されたが、上記した説明は、全ての局面において例示であって、この開示がそれに限定されるものではない。また、上述した各種変形例は、相互に矛盾しない限り組み合わせて適用可能である。そして、例示されていない多数の変形例が、この開示の範囲から外れることなく想定され得るものと解される。
【0111】
上述の例では、開閉駆動部40は上部材30を昇降させるものの、下部材20を昇降させてもよい。また、チャンバ10は必ずしも下部材20および上部材30を含んでいる必要はない。例えば、チャンバ10の側壁に、搬出入口を開閉するためのシャッタ(不図示)と、シャッタを開閉する開閉駆動部(不図示)が設けられてもよい。シャッタが開くことより、チャンバ10が開状態となり、基板Wが搬出入口を通じて搬出入される。シャッタが閉じることにより、チャンバ10が閉状態となる。
【0112】
上述の例では、ステンレス合金について詳しく説明したが、本発明の本旨に沿った用途によりニッケル合金などを用いても良い。
【符号の説明】
【0113】
10 チャンバ
10s 内部空間
100 基板処理装置
51a オゾンガス管
52a オゾンガス弁
51b 不活性ガス管
52b 不活性ガス弁
51c 修復ガス管
52c 修復ガス弁
53c 流量調整部
60 排出管
90 制御部
S1 搬入工程(ステップ)
S3 処理工程(ステップ)
S4、S4A パージ工程(ステップ)
S5 搬出工程(ステップ)
S6,S7 修復ガス供給工程(ステップ)