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  • 特開-水中熱利用システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173260
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】水中熱利用システム
(51)【国際特許分類】
   F24V 50/00 20180101AFI20241205BHJP
   F03D 80/60 20160101ALI20241205BHJP
【FI】
F24V50/00
F03D80/60
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091571
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】500575972
【氏名又は名称】株式会社リビエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】今 喜代美
(72)【発明者】
【氏名】今 修一郎
(72)【発明者】
【氏名】今 祐治郎
【テーマコード(参考)】
3H178
【Fターム(参考)】
3H178AA03
3H178AA24
3H178AA43
3H178BB52
3H178CC25
3H178DD12Z
3H178DD64X
(57)【要約】
【課題】災害に強い、耐久性の高い水中熱利用システムの提供を課題とすること。
【解決手段】本発明は、このような課題に鑑みて、ブロック部と流路管と循環パイプを備え、前記ブロック部は、充填材で充填されているものであり、水に沈降する比重を有し、水に沈められており、前記流路管は、内部に熱媒体流体を流すもので、前記ブロック部内に設けられ、前記ブロック部の外にある水と熱交換するもので、前記循環パイプに接続されており、前記循環パイプは、ポンプ部と熱交換部を経由して前記流路管内の前記熱媒体流体を循環させるものであることを特徴とする水中熱利用システムとすることで課題を解決した。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック部と流路管と循環パイプを備え、
前記ブロック部は、充填材で充填されているものであり、水に沈降する比重を有し、水に沈められており、
前記流路管は、内部に熱媒体流体を流すもので、前記ブロック部内に設けられ、前記ブロック部の外にある水と熱交換するもので、前記循環パイプに接続されており、
前記循環パイプは、ポンプ部と熱交換部を経由して前記流路管内の前記熱媒体流体を循環させるものであることを特徴とする水中熱利用システム。
【請求項2】
前記ブロック部は、複数あり、互いにジョイントで連結されていることを特徴とする請求項1記載の水中熱利用システム。
【請求項3】
前記熱媒体流体が、不凍液、水、または空気であることを特徴とする請求項1記載の水中熱利用システム。
【請求項4】
前記ブロック部が、漁礁であることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の水中熱利用システム。
【請求項5】
さらに、水上風力発電装置を備え、
前記水上風力発電装置は、発電機を備えるものであり、
前記発電機は、前記熱交換部によって冷却される請求項1記載の水中熱利用システム。
【請求項6】
前記発電機は、前記熱交換部で熱交換された清浄な空気で冷却される請求項5記載の水中熱利用システム。
【請求項7】
前記水上風力発電装置は、水中に基礎部を有しており、
前記基礎部の一部は、前記ブロック部となっていることを特徴とする請求項5または6記載の水中熱利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流路が主に海、湖、河川などの底に沈められて使用される水中熱利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、海、湖、河川などを熱源とする水中熱利用システムは、特許文献1に記載のように存在していた。
従来のシステムは、海、湖、河川などから水を汲み上げてその熱を利用するという発想であり、水中で熱交換する発想はなかった。
その理由は、水中に熱交換器を沈めた熱交換システムは、洪水や台風などの災害により、熱交換器が流される、流木などが当たるなどの事故が多発し、実用化できなかったからである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭55-160105
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、災害に強い、耐久性の高い水中熱利用システムの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みて、ブロック部と流路管と循環パイプを備え、前記ブロック部は、充填材で充填されているものであり、水に沈降する比重を有し、水に沈められており、前記流路管は、内部に熱媒体流体を流すもので、前記ブロック部内に設けられ、前記ブロック部の外にある水と熱交換するもので、前記循環パイプに接続されており、前記循環パイプは、ポンプ部と熱交換部を経由して前記流路管内の前記熱媒体流体を循環させるものであることを特徴とする水中熱利用システムとすることで課題を解決した。
【発明の効果】
【0006】
本発明の水中熱利用システムは、災害に強く、耐久性の高いシステムになった。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は水中熱利用システムの全体図である。
図2図1はブロック部の説明図である。
図3図3は水中熱利用システムの漁礁としての使用した説明図である。
図4図4は水中熱利用システムを水上風力発電装置に応用した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0009】
[実施例1]
図1は水中熱利用システム1の全体図である。図2はブロック部2の説明図である。
実施例1の水中熱利用システム1は、大きく分けて、水中に沈められているブロック部2と地上にある熱交換部5で構成されている。ブロック部2内は、後述する流路管3が埋設されており、流入口31から流出口32に向かって熱媒体流体が流れるように構成されている。
実施例1で使われている熱媒体流体は、不凍液などのブラインである。
【0010】
流入口31から流出口32は、循環パイプ4に接続されており熱媒体流体が地上と水中を循環するように構成されている。
地上には、熱媒体流体を循環するポンプ部Pが設けられている。また、地上には、熱交換部5としてヒートポンプ63が設けられており、ヒートポンプ63から送られる熱資源により、施設内に取り付けられたエアコンディショナー62などの熱利用機器が駆動されている。
【0011】
(ブロック部)
図2に拡大して図示されているように、ブロック部2は、内部に流路管3が埋設されている。実施例1のブロック部2は、水底WB側に錘となる鋼材21が取り付けられており、台風や洪水などが起きても水底WBから動かないような配慮がなされている。実施例1のブロック部2は、充填材22としてコンクリートが採用されており、流路管3の周囲はコンクリートで充填されている。
ブロック部2は、流路管3の周囲を充填材22で充填しているものであるため、耐久性に富む。流路管3は、充填材22で守られており、充填材22は、流木などから流路管3を守る。
【0012】
また、海で使用する場合、フジツボや貝類などの付着生物は、ブロック部2を構成する充填材22の表面に付着するが、流路管3に直接付着することが無い。そのため、流路管3は熱交換器としての耐久性が非常に高い。海草類が流路管3に付着すると、海水の流れにより流路管3が移動しやすくなり、破損に繋がる。特に、台風による波により、海草が付着した流路管3は大きく動き破損する。
実施例1のブロック部2は、充填材22がコンクリートであるため、水に沈降する十分な比重を有しており、大きな波が来ても動くことはない。
【0013】
ブロック部2の熱交換効率は、流路管3が充填材22で覆われるため劣るが、十分な長さの流路管3を用いることで、効率の悪さを補うことができる。海底や、河川の水底WBは、熱資源としてこれまで使われてこなかった場所であり、十分な長い流路管3を埋設したブロック部2を設置できる広大な場所がある。
【0014】
(循環パイプ)
循環パイプ4は、凹凸のある水底WBに設けられるため、柔軟な材料であることが好ましい。循環パイプ4は、ブロック部2で集められた熱を守るよう、周囲に断熱材などが装着されることが好ましい。また、循環パイプ4は、台風や高波から守るために、水底WB下に埋設することは好ましい態様である。循環パイプ4を保護するために、循環パイプ4は、一回り大きな丈夫な鋼管内に収められてもよい。
さらに、循環パイプ4は、その周囲を充填材22で充填し保護されていてもよい。
【0015】
(漁礁としての使用)
図3は、水中熱利用システム1の漁礁8としての使用した説明図である。
ブロック部2は、水底WBに置かれるため、漁礁8として機能することができる。これまで邪魔者であった、海草、フジツボや貝類などの付着生物は、小魚の隠れる場所や産卵場所となり、漁礁8としての機能を高める。
【0016】
また、ブロック部2は、海底近くを流れる水流の方向を変える。水流は、ブロック部2を乗り越えるように上昇し、栄養塩類豊富な海底近くの海水を水面近くまで持ち上げるいわゆる「湧昇流」を発生させる。このような水流のある位置に設置されたブロック部2は、プランクトンの発生を促す。
【0017】
複数のブロック部2を沈めることは、漁礁8としての機能を高める。
図3に図示したブロック部2は、密着して積み上げられたものであった。変形例として、ブロック部2は、隙間を空けて積み上げられてもよい。このように隙間を空けると、小魚が隠れることができ、漁礁8としての機能を高めることができる。
【0018】
(ブロック部の連結)
ブロック部2は、ジョイント23で複数連結して用いることができる。特に、実施例1の漁礁8は、巨大になる程大きな効果を得ることができる構造物であり、小分けにして沈めた複数のブロック部2を互いにジョイント23で連結することで、巨大な漁礁8に施工できる。
【0019】
ブロック部2にある流路管3の流出口32と別のブロック部2にある流路管3の流入口31は図示されていない連結管で直列に連結される。
また、複数のブロック部2は並列に連結されてもよい。
複数のブロック部2が連結されることで、より水底WBから動きにくくなり、水害に対する耐久性が向上する。
【0020】

複数のブロック部2は、堅牢なジョイント23で相互に接続され、台風などが来ても動きにくくなり耐久性を高めることができる。
【0021】
漁礁8の一部は、本発明の流路管3を埋設していない単なるコンクリートブロックとすることもできる。
単なるコンクリートブロックと本発明のブロック部2がジョイント23で連結されたとしても、連結されたブロック部2は動きにくく堅牢になる。
【0022】
[実施例2]
実施例2は、水上風力発電装置61を熱利用施設6としている例である。図4は水中熱利用システム1を水上風力発電装置61に応用した説明図である。水上風力発電装置61は、巨大なプロペラで風をとらえ、プロペラを回転させる。プロペラの回転は、複雑な歯車の組み合わせから成る増速装置612に送られ、発電効率の良い回転数まで増速される。発電機611は、回転エネルギーを電力に変換するが、その効率は100%ではない。電気エネルギーに変換されなかった回転エネルギーは、熱となり熱交換部5となるハウジング614内に蓄積される。
【0023】
従来の水上風力発電装置61は、海上を流れる外気などによりハウジング614内にたまった熱を冷却していたが、湿気や塩分を含む外気は、当然のことながらハウジング614内に収められた増速装置612や発電機611を錆びさせる。
実施例2の水上風力発電装置61は、ハウジング614内が清浄な空気Aで満たされている。循環パイプ4内を循環する熱媒体流体は、ハウジング614内の清浄な空気Aであり、当該空気Aがブロック部2との間を循環するようになっている。
【0024】
熱媒体流体として使用される清浄な空気Aは、機器類を錆びさせることは無く、実施例2は、メンテナンスの頻度を劇的に少なくすることができる。図示していないが、循環する空気Aは、含まれる水分を除去する装置や塩分などを除去するフィルタを通過することで、正常に保たれている。循環する空気Aは、閉鎖空間を巡っており、外気と接触することがないため、湿気や塩気を含んだ外気を扱うより、フィルタの維持コストや除湿の維持コストは低く抑えられる。
【0025】
実施例2のポンプ部Pは、熱媒体流体が空気Aであるため、ファンを使うことができる。循環パイプ4の適宜な箇所にポンプ部Pとして使われるファンが設置される。ファンの回転数は、ハウジング614内の温度や、発電機611の発電量などを計測することで制御され、ハウジング614内の温度を一定に保つ。実施例2の循環パイプ4は、ポンプ部Pと熱交換部5となるハウジング614を経由して流路管3内の空気Aを循環させるものである。
【0026】
図4は、説明のための概念図であるため、循環パイプ4の吹出口41と吸入口42の位置は最適な位置として図示されていない。発熱量が多い、発電機611の近くに、吹出口41を設け、増速装置612とプロペラの間に吸入口42を設けることは、好ましい態様である。
【0027】
水上風力発電装置61の基礎部613はブロック部2となるコンクリートブロックである。内部に流路管3が埋設されている。水底WB近くの海水は、水温が低く、発電機611や増速装置612を冷却するための冷熱源として極めて優れている。
【0028】
以上で説明した水上風力発電装置61は、水底WBに接地させる態様であった。実施例2の水上風力発電装置61は、水底WBに接地させない浮体式の水上風力発電装置61に適用することも可能である。
【0029】
さらに、実施例2の水中熱利用システム1で使用する熱媒体流体は、空気Aであったが、不凍液などの液体であってもよい。
ハウジング614内に、熱交換部5が設置され、熱交換部5内を通る不凍液が循環パイプ4を通って循環される。熱交換部5は、発電機611や増速装置612に設けられ、直接これらの装置を冷却してもよいし、ハウジング614内の空気Aを冷却することで間接的にこれらの装置を冷却してもよい。発電機611に直接熱交換部5を配置する場合は、発熱領域と空間を空けて又は接触して熱交換部5が配置される。
【0030】
[実施例3]
本発明の流路管3は、充填材22に埋設され保護される。実施例3は酸性の温泉などを利用熱源とする態様である。実施例3の充填材22は、酸性の温泉に耐えうる材質であり、流路管3を保護する。流路管3の流入口31と流出口32は、耐食性の材料で形成された循環パイプ4に接続される。流路管3が充填材22で埋設されたブロック部2は、高温の温泉に沈められ、循環パイプ4を介して熱が取り出される。取り出された熱は、暖房や発電に使用される。
実施例3の水中熱利用システム1は、特に小規模発電に有利であり、メンテナンスの頻度を劇的に下げる。
【0031】
また、ブロック部2の温泉への施工は、ブロック部2を温泉に沈めるだけであり、実施例3は施工性が非常に高い。
【0032】
以上、本発明に係る実施の態様を、実施例や変形例に沿って詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施の態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 水中熱利用システム
2 ブロック部
21 鋼材
22 充填材
23 ジョイント
3 流路管
31 流入口
32 流出口
4 循環パイプ
41 吹出口
42 吸入口
5 熱交換部
6 熱利用施設
61 水上風力発電装置
611 発電機
612 増速装置
613 基礎部
614 ハウジング
62 エアコンディショナー
63 ヒートポンプ
8 漁礁
A 清浄な空気
WB 水底
P ポンプ部
図1
図2
図3
図4
【手続補正書】
【提出日】2024-11-28
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブロック部と流路管と循環パイプを備え、
前記ブロック部は、充填材で充填されているものであり、水に沈降する比重を有し、水に沈められ水底に着底している漁礁であり、複数の前記ブロック部を互いにジョイントで連結するものであり、
前記流路管は、内部に熱媒体流体を流すもので、前記ブロック部内に設けられ、前記ブロック部の外にある水と熱交換するもので、前記循環パイプに接続されており、
前記循環パイプは、ポンプ部と熱交換部を経由して前記流路管内の前記熱媒体流体を循環させるものであることを特徴とする水中熱利用システム。
【請求項2】
前記熱媒体流体が、不凍液、水、または空気であることを特徴とする請求項1記載の水
中熱利用システム。
【請求項3】
さらに、水上風力発電装置を備え、
前記水上風力発電装置は、発電機を備えるものであり、
前記発電機は、前記熱交換部によって冷却される請求項1記載の水中熱利用システム。
【請求項4】
前記発電機は、前記熱交換部で熱交換された清浄な空気で冷却される請求項記載の水中熱利用システム。
【請求項5】
前記水上風力発電装置は、水中に基礎部を有しており、
前記基礎部の一部は、前記ブロック部となっていることを特徴とする請求項または記載の水中熱利用システム。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
本発明は、このような課題に鑑みて、ブロック部と流路管と循環パイプを備え、前記ブロック部は、充填材で充填されているものであり、水に沈降する比重を有し、水に沈められ水底に着底している漁礁であり、複数の前記ブロック部を互いにジョイントで連結するものであり、前記流路管は、内部に熱媒体流体を流すもので、前記ブロック部内に設けられ、前記ブロック部の外にある水と熱交換するもので、前記循環パイプに接続されており、前記循環パイプは、ポンプ部と熱交換部を経由して前記流路管内の前記熱媒体流体を循環させるものであることを特徴とする水中熱利用システム。