(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173265
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】建具及び建具の製造方法
(51)【国際特許分類】
E06B 9/52 20060101AFI20241205BHJP
E06B 3/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
E06B9/52 C
E06B9/52 L
E06B3/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091582
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100179833
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 将尚
(72)【発明者】
【氏名】野澤 潔充
【テーマコード(参考)】
2E014
【Fターム(参考)】
2E014BA02
2E014BB00
(57)【要約】
【課題】養生シートを残さず剥がすことができる建具及び建具の製造方法を提供する。
【解決手段】建具は、框11と、框11に形成された框側加工孔13と、框側加工孔13の外縁に沿って形成された框側切欠き14と、框11に貼り付けられた養生シート4と、養生シート4に框側加工孔13に対応するように形成されたシート側加工孔43と、養生シート4に框側切欠き14に対応するように形成されたシート側切欠き44と、を備え、シート側切欠き44は、框側加工孔13における框11の長さ方向の端部に形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
框と、
前記框に形成された框側加工孔と、
前記框側加工孔の外縁に沿って形成された框側切欠きと、
前記框に貼り付けられた養生シートと、
前記養生シートに前記框側加工孔に対応するように形成されたシート側加工孔と、
前記養生シートに前記框側切欠きに対応する形成されたシート側切欠きと、を備える建具。
【請求項2】
前記シート側切欠きは、前記框側加工孔における前記框の長さ方向の端部に形成されている請求項1に記載の建具。
【請求項3】
前記框側切欠きと前記シート側切欠きとは、同形状である請求項1または2に記載の建具。
【請求項4】
前記シート側切欠きは、鋭角に形成された鋭角部を有する請求項1または2に記載の建具。
【請求項5】
前記框側加工孔に嵌め込まれた嵌め込み部材を備え、
前記嵌め込み部材は、前記框側切欠き及び前記シート側切欠きを覆うフランジ部を有する請求項1または2に記載の建具。
【請求項6】
框に養生シートを貼り付け、
前記框及び前記養生シートの両方を打ち抜いて、前記框に框側加工孔及び前記框側加工孔の外縁に沿って框側切欠きを形成するとともに、前記養生シートに前記框側加工孔に対応するシート側加工孔及び前記框側切欠きに対応するシート側切欠きを形成する建具の製造方法。
【請求項7】
框に框側加工孔を形成し、
前記框に養生シートを貼り付け、
前記養生シートにおける前記框側加工孔の外縁に対応した位置に、シート側切欠きを形成する建具の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建具及び建具の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、下記の特許文献1に記載の網戸のような建具には、框が傷つかないように、框の表面に養生シートが貼られて出荷され、引き渡し後に施主が剥がすことがある。
【0003】
引手が取り付けられた網戸で、引手を取り付けた後に養生シートを貼り付ける場合、引手を取り付ける工程までの間に框に傷がつく可能性がある。このため、引手を取り付ける前の段階で框の表面に養生シートを貼り付けておくことが好ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
養生シートが引手の縁部と框の表面との間に挟み込まれていると、養生シートを剥がす際に、養生シートが完全に剥がれずに一部残ってしまうという問題点がある。
【0006】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、養生シートを残さず剥がすことができる建具及び建具の製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る建具は、框と、前記框に形成された框側加工孔と、前記框側加工孔の外縁に沿って形成された框側切欠きと、前記框に貼り付けられた養生シートと、前記養生シートに前記框側加工孔に対応するように形成されたシート側加工孔と、前記養生シートに前記框側切欠きに対応する形成されたシート側切欠きと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本実施形態に係る建具の加工孔を説明する図である。
【
図3】本実施形態に係る建具の引手部分の断面図である。
【
図4】本実施形態に係る建具の引手を説明する図である。
【
図5】本実施形態の変形例に係る建具の加工孔を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、一実施形態に係る建具について、図面に基づいて説明する。以下の実施形態は、本開示の一態様を示すものであり、本開示を限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。以下の図面においては、各構成を分かりやすくするために、実際の構造と各構造における縮尺等を異ならせている。
【0010】
図1に示すように、建具は、例えば網戸100である。網戸100は、框体1と、網材23と、引手3と、養生シート4と、を備えている。網戸100は、工場から出荷された段階や、建物に取り付けられて使用される前等段階で、養生シート4が貼り付けられた状態である。図では、養生シート4をドットで示している。
【0011】
以下の説明では、網戸100が建物に設置された状態での方向に基づいて、網戸100を正面から見た左右方向を、左右方向と称する。左右方向に直交し水平方向に沿う方向を、屋内外方向と称する。左右方向及び屋内外方向に直交する方向を、上下方向と称する。図面では、左右方向を矢印Xで示し、屋内外方向を矢印Yで示し、上下方向を矢印Zで示す。
【0012】
框体1は、四方枠状に形成されている。框体1は、一対の縦框11,11と、上框21と、下框22と、を有している。框体1は、アルミ合金等の金属材料の押出成形部材である。框体1の材料や製造方法等は、適宜設定可能である。
【0013】
縦框11は、上下方向に延びている。一対の縦框11,11は、左右方向に離れて配置されている。縦框11の長さ方向は、上下方向である。縦框11は、框に対応する。
【0014】
上框21及び下框22は、左右方向に延びている。上框21は、一対の縦框11,11の上端部どうしを連結している。下框22は、一対の縦框11,11の下端部どうしを連結している。上框21及び下框22の長さ方向は、左右方向である。網材23は、框体1の内側に張られている。
【0015】
縦框11は、面材12を有している。面材12は、縦框11の屋内外の両側に配置されている。面材12は、平板状に形成されている。面材12の板面は、屋内外方向を向いている。
【0016】
屋内外両側の面材12は、それぞれ屋内外方向に貫通する框側加工孔13を有している。框側加工孔13は、屋内外両側の面材12のうち一方の面材12にのみ形成されていてもよい。框側加工孔13に引手3が嵌め込まれている。引手3は、嵌め込み部材に対応する。
【0017】
図2では、引手3を二点鎖線で示している。
図2に示すように、框側加工孔13は、正面から見て、上下方向に長い略矩形をしている。框側加工孔13の形状は、略矩形に限らず適宜設定可能である。框側加工孔13は、左右方向に長い形状をしていてもよい。框側加工孔13の外縁には、框側切欠き14が2箇所に設けられている。各框側切欠き14は、例えば框側加工孔13が点対称形状となるような位置に設けられている。一方の框側切欠き14は、框側加工孔13の上端部において左右方向で一方側に設けられている。他方の框側切欠き14は、框側加工孔13の下端部において左右方向で他方側に設けられている。框側切欠き14の位置は、上記に限らず適宜設定可能である。
【0018】
框側切欠き14は、框側加工孔13の上下方向の両端部の辺15から外側に向かって略三角形状に形成されている。框側切欠き14の頂点は、鋭角をなす框側鋭角部16を有している。例えば、框側切欠き14の底辺A1の長さは4mm程度であるのに対して、框側切欠き14の高さA2の長さは3mm以上である。框側切欠き14の形状は、略三角形状に限らず、適宜設定可能である。
【0019】
図1に示すように、養生シート4は、框体1の屋内外の両側の面材12の表面1aに貼り付けられている。養生シート4は、框体1の表面1aの略全域に貼り付けられている。養生シート4における框体1の表面1aに貼り付けられる裏面は、粘着力がある。養生シート4における裏面と反対側の表面は、保護面である。養生シート4は、張力があり、引っ張られると伸びる材料で形成されている。
【0020】
図2に示すように、養生シート4は、縦框11の加工形状と対応した形状をしている。養生シート4には、シート側加工孔43が形成されている。シート側加工孔43は、框側加工孔13と同じ位置に、同形状で形成されている。シート側加工孔43の外縁には、シート側切欠き44が2箇所に設けられている。シート側切欠き44は、縦框11の框側切欠き14と略同じ位置に形成されている。
【0021】
シート側切欠き44は、縦框11の框側切欠き14と同形状で形成されている。シート側切欠き44は、シート側加工孔43の上下方向の両端部の辺45から外側に向かって略三角形状に形成されている。シート側切欠き44の頂点は、鋭角をなすシート側鋭角部46を有している。例えば、シート側切欠き44の底辺B1の長さは4mm程度であるのに対して、シート側切欠き44の高さB2の長さは3mm以上である。シート側鋭角部46は、鋭角部に対応する。
【0022】
図3に示すように、引手3は、引手本体部31と、フランジ部32と、第1係合突起33と、第2係合突起34と、を有している。
【0023】
引手本体部31は、框体1の厚さ方向の中央側に凹む形状をしている。フランジ部32は、引手本体部31の縁部から正面から見て外側に張り出している。
図4に示すように、フランジ部32の張出し寸法は、上側及び下側の方が、左右両側よりも長い。
【0024】
図3に示すように、養生シート4は、引手3のフランジ部32と縦框11の表面1aとの間に挟み込まれている。
図4に示すように、正面から見て、フランジ部32は、縦框11の框側切欠き14及び養生シート4のシート側切欠き44を覆っている。
【0025】
図3に示すように、第1係合突起33は、引手本体部31の外周面の上部及び下部からそれぞれ突出している。第1係合突起33は、縦框11の框側加工孔13の縁部に係合している。第1係合突起33は、框側加工孔13に取り付けられた引手3のがたつきを抑制する。
図4に示すように、第1係合突起33は、引手3の左右方向の略中央に位置している。第1係合突起33は、縦框11の框側切欠き14及び養生シート4のシート側切欠き44とは左右方向の位置をずらして配置されている。縦框11の框側切欠き14及び養生シート4のシート側切欠き44は、第1係合突起33と干渉していない。
【0026】
図3に示すように、第2係合突起34は、引手本体部31の外周面の上部及び下部からそれぞれ突出している。第2係合突起34は、縦框11の框側加工孔13の縁部に係合している。第2係合突起34は、框側加工孔13に取り付けられた引手3のがたつきを抑制する。
図4に示すように、第2係合突起34は、引手3の左右方向において縦框11の框側切欠き14及び養生シート4のシート側切欠き44がある側と反対側に位置している。第2係合突起34は、縦框11の框側切欠き14及び養生シート4のシート側切欠き44とは左右方向の位置をずらして配置されている。縦框11の框側切欠き14及び養生シート4のシート側切欠き44は、第2係合突起34と干渉していない。
【0027】
網戸の製造方法について説明する。框体1を組み立てた後に、框側加工孔13を形成する前に、框体1の表面1aの略全面に養生シート4を貼り付ける。
【0028】
孔加工の機械で、養生シート4及び縦框11の両方に孔を一度に打ち抜いて開ける。縦框11には、框側切欠き14が設けられた框側加工孔13が形成される。養生シート4には、シート側切欠き44が設けられたシート側加工孔43が形成される。養生シート4及び縦框11の両方に孔を一度に打ち抜くため、シート側加工孔43と框側加工孔13とは同じ位置に同形状に形成され、シート側切欠き44と框側切欠き14とは同じ位置に同形状に形成される。
【0029】
縦框11の框側加工孔13に引手3を嵌め込む。引手3のフランジ部32と縦框11の表面1aとの間に養生シート4のシート側加工孔43の外周部分が挟み込まれる。
【0030】
網戸100では、縦框11から養生シート4を剥がす際には、養生シート4をめくり上げるように引っ張る。養生シート4に張力が作用し、養生シート4には框側切欠き14に対応するシート側切欠き44が形成されているため、シート側加工孔43の周りではシート側切欠き44で裂けるように剥がれる。養生シート4をシート側加工孔43の周りで部分的に残すことなく剥がすことができる。
【0031】
シート側切欠き44は、シート側加工孔43の上端部及び下端部に形成されている。養生シート4を剥がす際には、養生シート4を縦框11の長さ方向に引っ張ることが多い。シート側切欠き44は張力の作用する向きに形成されているため、シート側切欠き44で裂けやすくなる。養生シート4をシート側加工孔43の周りで部分的に残すことがより一層抑制される。
【0032】
框側切欠き14とシート側切欠き44とは、同形状である。シート側切欠き44を框側切欠き14と同時に加工することができるため、シート側切欠き44の加工を容易にすることができる。
【0033】
シート側切欠き44は、鋭角に形成されたシート側鋭角部46を有する。シート側鋭角部46は尖っているため、養生シート4はシート側鋭角部46で裂けやすくなる。養生シート4をシート側加工孔43の周りで部分的に残すことがより一層抑制される。
【0034】
框側加工孔13に嵌め込まれた引手3は、框側切欠き14及びシート側切欠き44を覆うフランジ部32を有する。養生シート4がフランジ部32と縦框11の表面1aとの間で挟み込まれていても、養生シート4に作用する張力によって、養生シート4はシート側切欠き44で裂ける。養生シート4をシート側加工孔43の周りで部分的に残すことが抑制される。
【0035】
框側加工孔13、框側切欠き14、シート側加工孔43及びシート側切欠き44を同時に一度に加工することができる。シート側加工孔43及びシート側切欠き44の加工を容易にすることができる。
【0036】
(変形例)
変形例に係る建具について、主に
図5を用いて説明する。以下で説明する変形例において、上記に示す実施形態に対応する構成については同一の符号を付して説明を省略する場合がある。
【0037】
図5に示すように、本変形例の網戸100Aでは、縦框11には框側切欠きは形成されておらず、養生シート4にシート側切欠き44Aが形成されている。シート側切欠き44Aは、シート側加工孔43の上端部及び下端部から例えば線状に形成されている。シート側切欠き44Aの形状及び位置は、
図5に示す例に限らず、適宜設定可能である。
【0038】
網戸の製造方法について説明する。框体1を組み立てた後に、框側加工孔13を形成する前に、框体1の表面1aの略全面に養生シート4を貼り付ける。
【0039】
孔加工の機械で、養生シート4及び縦框11の両方に孔を一度に打ち抜いて、框側加工孔13及びシート側加工孔43を形成する。
【0040】
養生シート4にシート側切欠き44Aを形成する。例えば、養生シート4を縦框11から持ち上げて、カッターナイフ等の工具でシート側切欠き44Aを形成する。養生シート4を縦框11に貼ったままの状態で、カッターナイフ等の工具でシート側切欠き44Aを形成してもよい。使用する工具や機械は適宜設定可能である。
【0041】
網戸100Aでは、縦框11から養生シート4を剥がす際には、養生シート4をめくり上げるように引っ張る。養生シート4に張力がかかり、養生シート4には框側切欠き14に対応するシート側切欠き44Aが形成されているため、シート側加工孔43の周りではシート側切欠き44Aで裂けるように剥がれる。養生シート4をシート側加工孔43の周りで部分的に残すことなく剥がすことができる。
【0042】
縦框11には框側加工孔13の外縁に切欠きを形成することなく、養生シート4にのみシート側切欠き44Aを形成することができる。
【0043】
以上、添付図面を参照しながら本開示に係る好適な実施形態について説明したが、本開示は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本開示の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【0044】
上記実施形態では、建具の一例として網戸を例示したが、本開示の建具は図示例に限定されない。例えば、引違い障子やドア等の各種建具に適用することができる。
【0045】
引手3は、縦框11に取り付けられているが、これに限られない。嵌め込み部材は、上框21や下框22に取り付けられていてもよい。
【0046】
嵌め込み部材として引手3を例示して説明したが、これに限られない。框の框側加工孔に嵌め込まれる部材に適用可能であって、例えばサブロック等の錠部材であってもよい。
【0047】
養生シート4に形成されたシート側切欠き44は、縦框11の框側切欠き14と同じ位置に、同形状で形成されているが、これに限られない。シート側切欠き44は、框側切欠き14に対応するように形成されていればよい。例えば、シート側切欠き44は、框側切欠き14と多少ずれた位置及び形状に形成されていてもよいし、框側加工孔13における框側切欠き14が形成された辺と同じ辺の所定位置に、框側切欠き14とは異なる形状で形成されていてもよい。シート側切欠き44は、框側切欠き14と同時に一度に加工されなくてもよく、框側切欠き14の加工とは異なるタイミングで加工されてもよい。
【0048】
シート側切欠き44は、縦框11の長さ方向の端部に形成されてに形成されているが、これに限られない。シート側切欠き44は、シート側加工孔43の左右側の端部や、シート側加工孔43の角部などに形成されていてもよい。
【0049】
引手3は、第1係合突起33及び第2係合突起34を有していなくてもよい。
【0050】
シート側切欠き44は、シート側加工孔43の左右方向の略中央に形成されていてもよく、形成される位置は適宜設定可能である。
【符号の説明】
【0051】
3 引手(嵌め込み部材)、4 養生シート、11 縦框(框)、13 框側加工孔、14 框側切欠き、32 フランジ部、43 シート側加工孔、44 シート側切欠き、
100 網戸(建具)