(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173276
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】車両用のドア開閉装置
(51)【国際特許分類】
E05B 81/90 20140101AFI20241205BHJP
E05B 79/08 20140101ALI20241205BHJP
E05B 81/14 20140101ALI20241205BHJP
【FI】
E05B81/90
E05B79/08
E05B81/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091598
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110000213
【氏名又は名称】弁理士法人プロスペック特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】成田 大悟
【テーマコード(参考)】
2E250
【Fターム(参考)】
2E250AA21
2E250HH01
2E250JJ48
2E250LL01
2E250PP04
2E250PP05
2E250PP13
2E250QQ09
2E250RR11
(57)【要約】
【課題】他の装置を要することなく、リリース動作とリリースキャンセル動作を実行できる車両用のドア開閉装置を提供する。
【解決手段】車両用のドア開閉装置30は、初期位置からリリース位置へ移動することによりラッチ機構32をアンラッチ状態に切替えるように構成される第一レバー40と、第一レバー40に対して移動することにより第一位置と第二位置とに移動可能に構成されるオープンレバーピン42と、電動モータ351が出力する駆動力によって中立位置からリリース位置に移動するときに第一位置に位置するオープンレバーピン42を押すことによって第一レバー40を初期位置からリリース位置に移動させるように構成されるアクティブレバー34と、第一位置に位置するオープンレバーピン42をアクティブレバー34の移動軌跡外の位置に移動させるように構成される第二レバー41とを備える。
【選択図】
図3A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両ドアを閉位置に保持可能なラッチ状態と前記車両ドアの開放を許容するアンラッチ状態とに切替え可能に構成されるラッチ機構と、
初期位置からリリース位置へ移動することにより、前記ラッチ状態である前記ラッチ機構を前記アンラッチ状態に切替えるように構成される第一レバーと、
前記第一レバーに係合しており、前記第一レバーに対して移動することにより第一位置と第二位置とに移動可能に構成される係合部材と、
駆動力源が出力する駆動力によって中立位置とリリース位置とに移動可能であり、前記中立位置から前記リリース位置に移動するときに前記第一位置に位置する前記係合部材を押すことによって前記係合部材に係合した前記第一レバーを前記初期位置から前記リリース位置に移動させるように構成されるアクティブレバーと、
前記係合部材に連係しており、初期位置から動作位置に移動することにより、前記第一位置に位置する前記係合部材を、前記アクティブレバーの移動軌跡外の位置である前記第二位置に移動させるように構成される第二レバーと、
を備える、車両用のドア開閉装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車両用のドア開閉装置であって、
前記係合部材に係合するとともに前記第二レバーに対して回転可能かつ往復移動可能に係合するリンク部材を備え、
前記第一レバーと前記第二レバーとは、前記リンク部材を介して連係しており、
前記第一レバーは、前記第二レバーが前記初期位置に位置する状態で前記リンク部材と前記第二レバーとが相対的に移動することにより、前記初期位置から前記リリース位置への移動が許容される、
車両用のドア開閉装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車両用のドア開閉装置であって、
前記第二レバーは、前記初期位置から前記動作位置へ移動すると、前記リンク部材を引っ張るように構成されており、
前記係合部材は、前記リンク部材が前記第二レバーに引っ張られることにより、前記リンク部材と連動して前記第一位置から前記第二位置へ移動するように構成される、
車両用のドア開閉装置。
【請求項4】
請求項1に記載の車両用のドア開閉装置であって、
前記第二レバーは、前記車両ドアに設けられ車両の乗員が手動により操作可能な操作部材に連係しており、前記操作部材の操作に連係して前記初期位置から前記動作位置へ移動するように構成される、
車両用のドア開閉装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用のドア開閉装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駆動力源の駆動力によりラッチ機構をラッチ状態からアンラッチ状態に切替え可能に構成される車両用のドア開閉装置が知られている。例えば、特許文献1に開示される車両用のドア開閉装置は、駆動力源の駆動力によってアクティブレバーを介してリリースレバーを回転させ、リモコン装置を介してリリースレバーの回転をオープンレバーに伝達し、オープンレバーを回転させることによりラッチ機構をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えるように構成される。なお、車両用のドア開閉装置とリモコン装置とは別体の装置である。そして、車両用のドア開閉装置は、リモコン装置とリリースケーブルおよびオープンケーブルを介して連結されることにより、前記動作を実現可能である。
【0003】
さらに、特許文献1に記載の車両用のドア開閉装置は、キャンセルケーブルを介してリモコン装置と連結される。そして、リモコン装置からキャンセルケーブルが引っ張られると、車両用のドア開閉装置の前記動作がキャンセルされるように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
しかしながら、特許文献1に記載の車両用のドア開閉装置は、前記のラッチ機構をラッチ状態からアンラッチ状態に切り替える動作、およびこの動作をキャンセルする動作を実現するためには、所定のケーブルで連結されたリモコン装置が必要である。換言すると、特許文献1に記載の車両用のドア開閉装置は、リモコン装置を備えない車両ドアには適用できない。
【0006】
上記実情に鑑み、本発明が解決しようとする課題は、リモコン装置(駆動力を中継する装置)などの別の装置が無くても、リリース動作とリリースキャンセル動作を実現できる車両用のドア開閉装置を提供することである。なお、リリース動作は、ラッチ機構をラッチ状態からアンラッチ状態に切替える動作、またはこのような動作を含む動作である。リリースキャンセル動作は、ラッチ機構をアンラッチ状態からラッチ状態に切替えられるようにする動作、またはこのような動作を含む動作である。
【0007】
(課題を解決するための手段)
前記課題を解決するため、本発明に係る車両用のドア開閉装置は、
車両ドアを閉位置に保持可能なラッチ状態と前記車両ドアの開放を許容するアンラッチ状態とに切替え可能に構成されるラッチ機構と、
初期位置からリリース位置へ移動することにより、前記ラッチ状態である前記ラッチ機構を前記アンラッチ状態に切替えるように構成される第一レバーと、
前記第一レバーに係合しており、前記第一レバーに対して移動することにより第一位置と第二位置とに移動可能に構成される係合部材と、
駆動力源が出力する駆動力によって中立位置とリリース位置とに移動可能であり、前記中立位置から前記リリース位置に移動するときに前記第一位置に位置する前記係合部材を押すことによって前記係合部材に係合した前記第一レバーを前記初期位置から前記リリース位置に移動させるように構成されるアクティブレバーと、
前記係合部材に連係しており、初期位置から動作位置に移動することにより、前記第一位置に位置する前記係合部材を、前記アクティブレバーの移動軌跡外の位置である前記第二位置に移動させるように構成される第二レバーと、を備える。
【0008】
本発明によれば、駆動力源の駆動力によってアクティブレバーを中立位置からリリース位置に移動させると、アクティブレバーが第一位置に位置する係合部材を押すことにより、第一レバーは初期位置からリリース位置へ移動する。その結果、ラッチ機構はラッチ状態からアンラッチ状態に切替わる。また、アクティブレバーおよび第一レバーがリリース位置に位置するときに、第二レバーを初期位置から動作位置に移動させることにより、係合部材を第一位置から第二位置へ移動させることができる。そして、係合部材が第二位置に位置すると、第二レバーとアクティブレバーとは干渉しなくなるから、アクティブレバーがリリース位置に位置する状態のままで、第一レバーはリリース位置から初期位置に戻ることができる。したがって、ラッチ機構をアンラッチ状態からラッチ状態に切り替えることができる。
【0009】
また、本発明に係る車両用のドア開閉装置によれば、アクティブレバーに連動して回転する第一レバーによってラッチ機構をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えるように構成される。このため、従来の車両用のドア開閉装置のようなリリースレバーが不要である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2A】
図2Aは、車両用の開閉装置の構成を示す斜視図である。
【
図2B】
図2Bは、車両用の開閉装置の構成を示す斜視図である。
【
図3A】
図3Aは、オープンレバーおよびアクティブレバーの構成を示す分解斜視図である。
【
図3B】
図3Bは、オープンレバーの構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態について説明する。以下の説明では、車両用のドア開閉装置を「開閉装置」と略して記すことがある。また、以下の説明において、開閉装置およびその構成部材の前、後、上、下、車幅方向(左右方向)の車内側、および車幅方向の車外側の各方向は、閉止状態にある車両ドアの各方向を基準とする。各図においては、開閉装置の前側を矢印Frで示し、後側を矢印Rrで示し、上側を矢印Upで示し、下側を矢印Dwで示し、車幅方向内側を矢印Inで示し、車幅方向外側を矢印Outで示す。
【0012】
<車両ドア>
図1Aは、開閉装置30が適用された車両ドア20の側面図であり、車両の車内側から見た図である。
図1Bは、開閉装置30が適用された車両ドア20の後端部近傍の断面図であり、
図1AのIB-IB矢視断面図である。開閉装置30が適用された車両ドア20はいわゆるスイングドアであり、その前端部は、車体11に対して回転可能に連結される。そして、車両ドア20は、上下方向に略平行な軸線を中心として車体11に対して回転移動することにより、全閉位置と半閉位置と開位置とに移動できるように構成される。全閉位置は、車両ドア20が車体11に設けられる乗降用の開口部を塞ぐ位置であり、車体11に対する往復移動可能な範囲の一端の位置である。半閉位置は、車両ドア20が車体11に設けられる乗降用の開口部を塞ぐ位置であり、全閉位置からわずかに開位置に移動した位置である。なお、全閉位置および半閉位置を「閉位置」と総称することがある。開位置は、車両ドア20が車体11に設けられる乗降用の開口部を塞がない位置であり、車両ドア20の後端部が閉位置に位置するときよりも車体11から離れている位置である。
【0013】
車両ドア20は、その下半部を構成するドア本体部201と、その上半部に設けられるドアサッシュ202とを有する。ドア本体部201は、インナーパネル203、アウターパネル204、およびトリム205を有する。アウターパネル204は、車両ドア20の外側面を構成する。インナーパネル203は、アウターパネル204の車内側に位置しており、アウターパネル204と互いに固定されている。トリム205は、インナーパネル203の車内側に固定されており、ドア本体部201の内側面を構成する。
【0014】
インナーパネル203には、インサイドドアハンドル206およびドア開操作スイッチ208が取り付けられている。インサイドドアハンドル206は、車両ドア20に対して回転移動可能に構成される。インサイドドアハンドル206は、車両の使用者(乗員)により手動操作可能な操作部材であり、車両ドア20に対して回転することにより初期位置と動作位置とに回転移動可能である。インサイドドアハンドル206は、図略の付勢部材によって初期位置に向けて常時弾性付勢されており、使用者により操作されていない状態では(外力が掛かっていない状態では)初期位置に保持されている。ドア開操作スイッチ208は、車両の使用者が操作可能な電気的なスイッチであり、車両10の使用者が後述するラッチ機構32をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えるために操作する操作部材である。
【0015】
このほか、車両ドア20は、ドア駆動装置209を備える。ドア駆動装置209は、駆動力源を備え、この駆動力源の駆動力によって車両ドア20を半閉位置から開位置へ、および開位置から半閉位置に移動させることができるように構成される。なお、ドア駆動装置209には従来公知の構成(例えば、特開2019-090258号公報参照)が適用できる。そして、車両10は、ドア開閉装置30およびドア駆動装置209を制御可能に構成される制御装置13を備える。また、制御装置13は前記のドア開操作スイッチ208と接続されており、ドア開操作スイッチ208の操作を検出できるように構成される。
【0016】
<開閉装置>
開閉装置30は、
図1Bに示すように、車両ドア20の内部空間(すなわち、インナーパネル203とアウターパネル204とに囲まれる空間)に配置される。そして、開閉装置30は、インナーパネル203(すなわち車両ドア20)に固定される。
【0017】
図2Aおよび
図2Bは、開閉装置30の構成を示す斜視図である。
図2Aおよび
図2Bに示すように、開閉装置30は、ベース部材31と、ラッチ機構32と、オープンレバー33と、アクティブレバー34と、駆動機構35と、クローズレバー36とを備える。また、開閉装置30は、オープンケーブル207によってインサイドドアハンドル206と連結されている(
図1B参照)。
【0018】
(ベース部材)
ベース部材31は、アクティブレバー34とオープンレバー33とを回転可能に支持するように構成される。具体的には、ベース部材31には、アクティブレバー34を回転可能に支持するアクティブレバー支持軸311と、オープンレバー33を回転可能に支持するオープンレバー支持軸312とが設けられる。アクティブレバー支持軸311とオープンレバー支持軸312とは、いずれも車幅方向外側に向かって突出する略丸棒状の構成を備える部分である。また、ベース部材31には、ラッチ機構32および駆動機構35が取り付けられる。
【0019】
(ラッチ機構)
ラッチ機構32は、フルラッチ状態と、ハーフラッチ状態と、アンラッチ状態(リリース状態と称されることもある)とに切替え可能に構成される。フルラッチ状態は、車両ドア20を全閉位置に保持可能な状態であり、ハーフラッチ状態は、車両ドア20を半閉位置に保持可能な状態であり、アンラッチ状態は、車両ドア20の開位置への移動(すなわち、車両ドア20の開放)を許容する状態である。なお、フルラッチ状態およびハーフラッチ状態はラッチ状態と総称されることがある。ラッチ機構32は、ベース部材31の後端部に取付けられる。
【0020】
ラッチ機構32は、ベースプレート321、ラッチ322、ポール(図略)およびリフトレバー323を備える。ベースプレート321は、ラッチ322、ポールおよびリフトレバー323を回転可能に支持する部材である。ラッチ322は、ベースプレート321に対して回転することにより、フルラッチ位置と、ハーフラッチ位置と、アンラッチ位置とに移動可能に構成される。ラッチ322のフルラッチ位置は、車両ドア20が全閉位置に位置するときに車体11に設けられるストライカ12(
図1B参照)と係合することにより、車両ドア20を全閉位置に保持する位置である。ラッチ322のハーフラッチ位置は、車両ドア20が半閉位置に位置するときに車体11に設けられるストライカ12と係合することにより、車両ドア20を半閉位置に保持する位置である。ラッチ322のアンラッチ位置は、車体11に設けられるストライカ12に係脱自在な位置である。ラッチ322は、図略のラッチ復帰バネによって、アンラッチ位置に向かって常時弾性付勢される。
【0021】
ポールおよびリフトレバー323は互いに結合しており、ベースプレート321に対して一体的に回転するように構成される。ポールおよびリフトレバー323は、ベース部材31に対して回転することにより、ラッチ状態保持位置とアンラッチ状態許容位置とに移動可能に構成される。ポールおよびリフトレバー323のラッチ状態保持位置は、ポールがフルラッチ位置またはハーフラッチ位置に位置するラッチ322と係合することにより、ラッチ322がアンラッチ位置に移動することを規制する(すなわち、ラッチ機構32をラッチ状態に保持する)位置である。そして、ラッチ機構32がラッチ状態にあるときにポールおよびリフトレバー323がラッチ状態保持位置からアンラッチ状態許容位置に移動すると、ラッチ322がラッチ復帰バネの付勢力によってアンラッチ位置に移動し、ラッチ機構32はアンラッチ状態に切り替わる。
【0022】
本実施形態では、リフトレバー323は、車幅方向に長い棒状の構成を備える。そして、リフトレバー323は、車幅方向内側の端部が略上下方向に往復移動可能なように、車幅方向外側の端部の近傍においてベース部材31に対して前後方向に略平行な軸線を中心に回転可能に支持される(振り子状に揺動可能に支持される、ということもできる)。リフトレバー323のラッチ状態保持位置は、リフトレバー323の車幅方向内側の端部が往復移動可能な範囲の上端に位置するときの位置である。リフトレバー323のアンラッチ状態許容位置は、車幅方向内側の端部がラッチ状態保持位置よりも下方に位置するときの位置(例えば、車幅方向内側の端部が往復移動可能な範囲の下端またはその近傍に位置するときの位置)である。なおリフトレバー323(およびポール)は、図略のポール復帰バネにより、ラッチ状態保持位置に向かって常時弾性付勢される。
【0023】
なお、ラッチ機構32の具体的な構成は特に限定されるものではなく、公知の各種の構成が適用できる。例えば、ラッチ機構32には、特開2010-31569号公報や特開2016-98612号公報に記載のラッチ機構が適用できる。
【0024】
(オープンレバー)
オープンレバー33は、後述するアクティブレバー34の動作によってリフトレバー323(およびポール)をラッチ状態保持位置からアンラッチ状態許容位置に移動させることにより、ラッチ機構32をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えるように構成される部材である。また、オープンレバー33は、インサイドドアハンドル206の操作により、後述するリリースキャンセル動作を実現できるように構成される。
図3Aは、オープンレバー33およびアクティブレバー34の構成を示す分解斜視図である。
図3Bは、オープンレバー33の構成を示す斜視図である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、オープンレバー33は、互いに別体の部材である第一レバー40、第二レバー41、オープンレバーピン42、およびオープンレバーリンク43を備える。
【0025】
第一レバー40は、第一レバー軸孔401、リフトレバー押圧部402、およびオープンレバーピンスライド孔403を備える。第一レバー軸孔401は、ベース部材31に設けられるオープンレバー支持軸312を挿通可能に構成される孔であり、具体的には、ドア幅方向に略平行な方向に貫通する断面略円形の貫通孔である。リフトレバー押圧部402は、リフトレバー323の車幅方向内側の端部近傍の箇所に上方から接触および離脱自在に構成される部分である。
図3Aおよび
図3Bに示すように、リフトレバー押圧部402は、第一レバー軸孔401およびオープンレバーピンスライド孔403が設けられる部分(以下、基部404と記すことがある)の上端近傍から後方に突出する突起状の構成を備える。オープンレバーピンスライド孔403は、基部404に設けられ、後述するオープンレバーピン42を係合可能に構成される。オープンレバーピンスライド孔403は、所定の方向に延伸し車幅方向に貫通する長孔であり、第一レバー軸孔401の後方かつ上方に設けられる。
【0026】
第二レバー41は、第二レバー軸孔411とケーブル連結部412とオープンレバーリンク係合ピン413とを備える。第二レバー41は、長尺の帯板状の形状を備えており、長尺方向の一方の端部に第二レバー軸孔411が設けられ、他方の端部にケーブル連結部412が設けられる。第二レバー軸孔411は、オープンレバー支持軸312を挿通可能に構成される孔であり、具体的には、ドア幅方向に略平行な方向に貫通する断面略円形の貫通孔である。ケーブル連結部412は、オープンケーブル207の一方の端部を連結可能に構成される。オープンレバーリンク係合ピン413は、後述するオープンレバーリンク43の第二レバー係合孔432に挿入可能に(または挿通可能に)構成される部分である。オープンレバーリンク係合ピン413は、車幅方向外側に突出する丸棒状の構成を備え、軸孔の後方に設けられる。
【0027】
オープンレバーピン42は、本発明の係合部材の例である。オープンレバーピン42は、第一レバー40のオープンレバーピンスライド孔403に係合する部材である。オープンレバーピン42は、第一レバー40に対して、オープンレバーピンスライド孔403の長尺方向(延伸方向)に往復移動可能であるが、それ以外の方向には移動できない。オープンレバーピン42は、オープンレバーピンスライド孔403に係合する状態で、ベース部材31に対して第一レバー40と一体的に回転可能(オープンレバー支持軸312を中心として回転可能)である。オープンレバーピン42は、オープンレバーリンク43に連結されるとともに、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343に係脱自在に構成される。
図3Aに示すように、オープンレバーピン42は、第一レバー係合部421と、オープンレバーリンク係合部422と、アクティブレバー係合部423とを備える。なお、
図3Aには、部分的な断面が示されたオープンレバーピン42が示される
【0028】
オープンレバーピン42の第一レバー係合部421は、略円板形状を備えオープンレバーピンスライド孔403の内部に収容可能な挿入部424と、その車幅方向の両側に設けられオープンレバーピンスライド孔403の幅よりも大きい径を有する略円板形状の一対の挟持部425とを備える。そして、挿入部424がオープンレバーピンスライド孔403に挿入された状態で、一対の挟持部425が第一レバー40のオープンレバーピンスライド孔403の内周側の縁部を車幅方向の両側から挟む。これにより、オープンレバーピン42は、オープンレバーピンスライド孔403から脱落することなく、オープンレバーピンスライド孔403の延伸方向に沿って第一レバー40に対して往復移動可能である。
【0029】
オープンレバーピン42のオープンレバーリンク係合部422は、オープンレバーリンク43のオープンレバーピン係合孔431に挿入可能に(または挿通可能に)構成される部分である。具体的には、オープンレバーリンク係合部422は、第一レバー係合部421の車幅方向の外側の端部から車幅方向外側に突出する丸棒状の構成を備える部分である。オープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423は、後述するアクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343に係脱自在に構成される部分であり、具体的には、第一レバー係合部421の車幅方向の内側の端部から車幅方向内側に突出する丸棒状の構成を備える部分である。
【0030】
オープンレバーリンク43は、本発明のリンク部材の例である。オープンレバーリンク43は、長尺棒状(長尺の帯板状ということもできる)の部材である。オープンレバーリンク43の長尺方向の一方の端部には、オープンレバーピン係合孔431が設けられ、他方の端部には第二レバー係合孔432が設けられる。オープンレバーピン係合孔431は、オープンレバーピン42のオープンレバーリンク係合部422を挿通可能に構成される孔であり、具体的には、車幅方向に貫通する断面略円形の貫通孔である。第二レバー係合孔432は、第二レバー41のオープンレバーリンク係合ピン413を挿入可能(または挿通可能)に構成される貫通孔であり、具体的には、オープンレバーリンク43の長尺方向に略平行な方向に長い長孔である。
【0031】
図3Bに示すように、第一レバー40と第二レバー41とは、第一レバー軸孔401と第二レバー軸孔411とが同軸で、かつ、一部どうしが互いに車幅方向に互いに重なるように配置される。本実施形態では、第二レバー41が第一レバー40の車幅方向外側に重なる構成を示す。なお、第一レバー40と第二レバー41とはいずれも車幅方向が厚さ方向である板状の部材である。このため、オープンレバーが一体の部材である構成に比較して、オープンレバー33の配置スペースがさほど大きくならない。
【0032】
第一レバー40のオープンレバーピンスライド孔403には、オープンレバーピン42が係合される。オープンレバーピンスライド孔403は長孔であるため、オープンレバーピン42は第一レバー40に対してオープンレバーピンスライド孔403の長尺方向(延伸方向)に往復移動可能である。なお、オープンレバーピンスライド孔403の長尺方向の一方の端部であって第一レバー軸孔401から遠い側の端部(またはその近傍)の位置を第一位置と記し、その反対側の端部(またはその近傍)の位置を第二位置と記す。このため、オープンレバーピン42は、第一レバー40と一体的にオープンレバー支持軸312を中心としてベース部材31に対して回転できるとともに、第一レバー40に対して移動することにより、(オープンレバー支持軸312を中心とする円に交差する方向に移動することにより)第一位置と第二位置とに移動可能である。
【0033】
オープンレバーリンク43のオープンレバーピン係合孔431にオープンレバーピン42のオープンレバーリンク係合部422が挿通され、第二レバー係合孔432に第二レバー41のオープンレバーリンク係合ピン413が挿通される。これにより、第二レバー41とオープンレバーピン42とは、オープンレバーリンク43を介して連係する。なお、前記のとおり、オープンレバーリンク43の第二レバー係合孔432は長孔であるため、第二レバー41とオープンレバーリンク43とは、第二レバー係合孔432に第二レバー41のオープンレバーリンク係合ピン413が挿通している状態で、第二レバー係合孔432の長尺方向(延伸方向)に相対的に移動可能である。
【0034】
第一レバー40および第二レバー41は(すなわちオープンレバー33は)、ラッチ機構32の前側に配置され、ベース部材31に設けられるオープンレバー支持軸312によってベース部材31に対して回転可能に支持される(
図2A参照)。
【0035】
第一レバー40は、ベース部材31に対して回転することにより、初期位置(
図4A参照)とリリース位置(
図4D参照)とに移動可能である。第一レバー40の初期位置は、ラッチ機構32のリフトレバー323がラッチ状態保持位置に位置することを許容する位置である。具体的には、第一レバー40の初期位置は、第一レバー40のリフトレバー押圧部402がラッチ状態保持位置に位置するリフトレバー323の車幅方向内側の端部の上側に近接する(但し接触しない)位置である。第一レバー40のリリース位置は、リフトレバー323をアンラッチ状態許容位置に位置させる位置であり、具体的には、リフトレバー押圧部402が初期位置に位置する場合よりも下方に位置する位置である。本実施形態では、リフトレバー押圧部402が第一レバー軸孔401の上方かつ後方に位置するため、第一レバー40は、その基部404が略後方に移動する(ラッチ機構32に接近する)態様で回転することにより(
図4Aにおいては反時計回りに回転することにより)、初期位置からリリース位置に移動する。
【0036】
なお、第一レバー40は、第一レバー付勢バネ37(
図2A参照)により、初期位置に向かって常時弾性付勢される。このため、第一レバー40は、後述するリリース動作が実行されない場合には、初期位置に保持される。
【0037】
第二レバー41は、ベース部材31に対して回転移動することにより、初期位置(
図4A参照)と動作位置(
図5C参照)とに移動可能である。第二レバー41の初期位置は、第一レバー40が初期位置、リリース位置、およびそれらの間の位置に位置することを許容し、かつ、オープンレバーピン42が第一位置に位置することを許容する位置である。第二レバー41の動作位置は、初期位置から「第一レバー40が初期位置からリリース位置へ回転移動する方向(
図4Aにおいては反時計回り方向)」と同じ方向に所定の角度回転した位置である。そして、第二レバー41は、初期位置から動作位置に移動する場合にオープンレバーリンク係合ピン413が下方に移動するように構成および配置される。このため、第二レバー41の動作位置は、「初期位置に位置するときよりもオープンレバーリンク係合ピン413が下方に位置するような位置である」ということもできる。
【0038】
なお、第二レバー41は、第二レバー付勢バネ38によって初期位置に向かって常時弾性付勢される。このため、第二レバー41は、インサイドドアハンドル206が操作されていない場合には、第二レバー付勢バネ38の付勢力によって初期位置に保持される。
【0039】
(アクティブレバー)
アクティブレバー34は、後述する駆動機構35が出力する駆動力によってベース部材31に対して回転移動することにより、オープンレバー33の第一レバー40を初期位置からリリース位置へ移動させること、および、クローズレバー36を初期位置からクローズ位置へ移動させることができるように構成される部材である。
【0040】
図3Aに示すように、アクティブレバー34は、扇形歯車状の構成を備える部材である。アクティブレバー34は、基部341、歯部342、およびオープンレバーピン押圧部343を備える。アクティブレバー34の基部341には、アクティブレバー軸孔344およびクローズレバー支持軸345が設けられる。アクティブレバー軸孔344は、ベース部材31に設けられるアクティブレバー支持軸311を挿通可能に構成される孔である。クローズレバー支持軸345は、クローズレバー36を回転可能に支持できるように構成される部分であり、具体的には車幅方向外側に突出する略丸棒状の部分である。アクティブレバー34の歯部342は、第一レバー軸孔401の中心を中心とする略円弧形状を備える。そして、アクティブレバー34の歯部342には、駆動機構35のピニオン353と噛み合う歯が設けられる。
【0041】
オープンレバーピン押圧部343は、アクティブレバー34が後述する中立位置からリリース位置に移動する際に、第一レバー40に対して第一位置に位置するオープンレバーピン42を押すように構成される部分である。オープンレバーピン押圧部343は、歯部342の円周方向の一方の端部に設けられる。本実施形態では、アクティブレバー34が歯部342の円周方向の端部から半径方向外側に向かって突出するアーム部346を有し、オープンレバーピン押圧部343はアーム部346の先端部(より具体的には、アクティブレバー軸孔344を中心とする円の半径方向先端部)に設けられる構成を示す。
【0042】
アクティブレバー34は、オープンレバーピン押圧部343が「第一レバー40に対して第一位置に位置するオープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423の前側」に位置するように、ラッチ機構32の前側に配置される。ただし、アクティブレバー34は、アーム部346がオープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423に対して車幅方向内側にズレるように配置される。そして、アクティブレバー34は、アクティブレバー軸孔344にベース部材31のアクティブレバー支持軸311が挿通されることにより、ベース部材31に対して車幅方向に略平行な軸線を中心として所定の角度範囲内で正逆両方向に回転可能(往復可能ということもできる)に支持される。
【0043】
アクティブレバー34は、駆動機構35から伝達される回転動力によってベース部材31に対して回転することにより、初期位置(
図4A参照)と、リリース位置(
図4D参照)と、クローズ位置とに移動可能に構成される。初期位置は、回転可能な範囲の中間の位置である。リリース位置は、回転可能な範囲の一方の端の位置であって、オープンレバーピン押圧部343が初期位置に位置するときよりも後方に位置する状態となる位置である。クローズ位置は、回転可能な範囲の他方の端の位置であって、クローズレバー支持軸345が初期位置に位置するときよりも上方に位置する状態となる位置である。
【0044】
(駆動機構)
駆動機構35は、本発明の駆動力源の例である電動モータ351と、電動モータ351が出力する回転動力を減速してアクティブレバー34に伝達するように構成される減速機構352とを備える。電動モータ351は正逆両方向の回転動力を出力できればよく、具体的な構成は限定されない。減速機構352は、アクティブレバー34の歯部342と噛み合い可能で、電動モータ351の回転動力により回転する歯車(ピニオン353)を備えればよく、具体的な構成は限定されない。
【0045】
(クローズレバー)
クローズレバー36は、アクティブレバー34に対して回転可能に支持される。また、クローズレバー36は、ラッチ322に係脱自在に構成される。そして、クローズレバー36は、アクティブレバー34が初期位置からクローズ位置に移動すると上昇するように構成および配置される。クローズレバー36は、アクティブレバー34が初期位置からクローズ位置に移動することにより、ハーフラッチ位置に位置するラッチ322の下部(例えば、ラッチ322から下方に突出するように設けられる突起状の脚部)に係合し、ラッチ322の下部を押し上げる。これにより、ラッチはハーフラッチ位置からフルラッチ位置に移動する。このように、クローズレバー36は、アクティブレバー34の中立位置からクローズ位置への移動によって、ハーフラッチ位置に位置するラッチ322をフルラッチ位置に移動させることができるように構成される。なお、クローズレバー36の構成は特に限定されるものではなく、従来公知の構成が適用できる。例えば、クローズレバー36には、特開2015-004217号公報や特開2016-030982号公報に記載のクローズレバー(なお、当該文献中では、それぞれ「シーソー型レバー」および「パッシブレバー」と記される)が適用できる。
【0046】
<開閉装置のリリース動作>
次に、開閉装置30のリリース動作について説明する。リリース動作は、駆動機構35から伝達される駆動力によってラッチ機構32をラッチ状態からアンラッチ状態に切替える動作である。
【0047】
図4Aは、開閉装置30のリリース動作の開始前の状態を示す図である。
図4Aに示す状態を初期状態と記すことがある。開閉装置30の初期状態は、アクティブレバー34が中立位置に位置し、かつ、オープンレバー33の第一レバー40および第二レバー41が初期位置に位置する状態である。また、開閉装置30の初期状態においては、オープンレバーピン42は第一位置に位置する。オープンレバーピン42が第一位置に位置すると、オープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423は、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343の後側であって、アクティブレバー34が中立位置からリリース位置に位置する際のオープンレバーピン押圧部343の移動軌跡内に位置する。なお、オープンレバーピン42は、図略のバネなどによって第一位置に向かって常時弾性付勢されてもよい。
【0048】
また、開閉装置30が初期状態である場合には、第二レバー41のオープンレバーリンク係合ピン413は、オープンレバーリンク43の第二レバー係合孔432の延伸方向の一方の端部であって、オープンレバーピン42から遠い側の端部またはその近傍に位置する。このため、第二レバー41が初期位置に位置する状態のまま、オープンレバーリンク43の下方への移動が許容される。
【0049】
図4Bおよび
図4Cは、リリース動作中の状態を示す図である。制御装置13は、ドア開操作スイッチ208への操作を検出すると、駆動機構35を動作させることにより、アクティブレバー34を初期位置からリリース位置へ移動させる。これにより、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343がオープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423に接触してオープンレバーピン42を略後方に向かって押す。このため、オープンレバー33の第一レバー40は、第一レバー付勢バネ37の付勢力に抗して初期位置からリリース位置に向かって移動する。
【0050】
アクティブレバー34がさらにリリース位置に向かって移動すると、
図4Cに示すように第一レバー40のリフトレバー押圧部402がリフトレバー323の車幅方向内側の端部を押下げる。このため、リフトレバー323はラッチ状態保持位置からアンラッチ状態許容位置に向かって移動する。そして、
図4Dに示すように、アクティブレバー34がリリース位置に到達すると、第二レバー41もリリース位置に到達し、第二レバー41に押し下げられたリフトレバー323もアンラッチ状態許容位置に到達する。このため、ラッチ機構32はラッチ状態からアンラッチ状態に切替わる。
【0051】
なお、第一レバー40が初期位置からリリース位置に向かって移動すると、オープンレバーピン42およびオープンレバーリンク43は円弧軌道を描いて後方斜め下方に向かって移動する。オープンレバーリンク43と第二レバー41とは、第二レバー係合孔432の延伸方向に相対移動可能であるため、第一レバー40が初期位置からリリース位置へ移動しても第二レバー41は初期位置から移動しない。
【0052】
その後、制御装置13は、駆動機構35を制御してリリース動作のときとは反対方向の回転動力を出力することにより、アクティブレバー34をリリース位置から初期位置に移動させる。これにより、開閉装置30は、
図4Dに示す状態から、
図4Cに示す状態、
図4Bに示す状態を経て、
図4Aに示す初期状態に戻る(初期状態に切替わる)。
【0053】
リリース動作が完了すると、車両ドア20は半閉位置よりもわずかに開位置に移動した位置に位置するようになる。そして、制御装置13は、ドア駆動装置209を制御することにより、車両ドア20を開位置へ移動させる。
【0054】
このように、本実施形態によれば、駆動機構35が出力する駆動力によってアクティブレバー34を中立位置からリリース位置が移動することにより、ラッチ機構32がラッチ状態からアンラッチ状態に切替わる。
【0055】
<開閉装置のリリースキャンセル動作>
次に、開閉装置30のリリースキャンセル動作について説明する。リリースキャンセル動作は、何らかの原因によりアクティブレバー34をリリース位置から中立位置に移動させることができなくなった場合に、車両10の使用者の手動操作によってラッチ機構32をアンラッチ状態からラッチ状態に切替えることができるようにする動作である。
【0056】
前記したリリース動作によりラッチ機構32がラッチ状態からアンラッチ状態に切替わった後に、何らかの原因によりアクティブレバー34がリリース位置から中立位置に戻らなくなった場合を想定する。アクティブレバー34がリリース位置に留まることにより第一レバー40がリリース位置に位置する状態に保持されると、リフトレバー323はアンラッチ状態許容位置からラッチ状態保持位置に移動できない。このため、ラッチ機構32をアンラッチ状態からラッチ状態に切替えることができなくなるから、開閉装置30は車両ドア20を全閉位置または半閉位置に保持できなくなる。アクティブレバー34をリリース位置から中立位置に移動させることができない原因としては、例えば、電源の喪失、駆動機構35の不調などが挙げられる。
【0057】
リリースキャンセル動作は、アクティブレバー34がリリース位置に位置する状態(
図4Dに示す状態)から開始される。
図5A~
図5Cは、リリースキャンセル動作を示す図である。インサイドドアハンドル206が操作される(初期位置から動作位置へ移動する)ことにより、リリースキャンセル動作が実行される(リリースキャンセル動作が実現する)。
【0058】
図4Dに示す状態において、インサイドドアハンドル206が操作されると、インサイドドアハンドル206の動きによってオープンケーブル207が引かれ、第二レバー41は初期位置から動作位置へ向かって移動する。これにより、第二レバー41のオープンレバーリンク係合ピン413は、円弧軌道を描いて略下方に移動する。なお、第一レバー40がリリース位置に位置し、第二レバー41が初期位置に位置する状態では、第二レバー41のオープンレバーリンク係合ピン413は、オープンレバーリンク43の第二レバー係合孔432の「オープンレバーピン係合孔431に近い側の端部」またはその近傍に位置する。このため、第二レバー41の移動開始直後は、第二レバー41のみが移動し、オープンレバーリンク43は移動しない。
【0059】
そして、
図5Aに示すように、第二レバー41がさらに動作位置に向かって移動すると、オープンレバーリンク係合ピン413は、オープンレバーリンク43の第二レバー係合孔432の「オープンレバーピン係合孔431から遠い側の端部」の内周面に接触する。その後は、
図5Bに示すように、オープンレバーリンク43はオープンレバーリンク係合ピン413によって略下方に引張られる。このため、オープンレバーピン42は、オープンレバーリンク43の移動によって、第一位置から第二位置に向かって移動する。
【0060】
そして、第二レバー41が動作位置に到達すると、オープンレバーピン42は第二位置に到達する。オープンレバーピン42の第二位置は、オープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423がアクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343の移動軌跡外(移動軌跡から回転中心であるオープンレバー支持軸312に近い側に外れた位置)に位置するようになる位置である。このため、
図5Cに示すように、第一レバー40は第一レバー付勢バネ37の付勢力によって初期位置に移動する。そして、リフトレバー323はオープンレバー33の第一レバー40に押されなくなる。このため、リフトレバー323およびポールは、ポール復帰バネの付勢力によってアンラッチ状態許容位置からラッチ状態保持位置に移動できるようになる。したがって、ラッチ機構32はアンラッチ状態からラッチ状態に切替わることができるようになる。
【0061】
なお、このようなリリースキャンセル動作を実現するため、第一レバー40のオープンレバーピンスライド孔403は、第二レバー41の第二レバー軸孔411の中心(第二レバー41のベース部材31に対する回転中心)を中心とする円、およびアクティブレバー34の回転中心であるアクティブレバー支持軸311の中心を中心とする円と交差するように設けられる。そして、オープンレバーピンスライド孔403の長尺方向(延伸方向)の一方の端部(第一レバー軸孔401の中心から遠い側の端部)は、第一レバー40が初期位置とリリース位置との間のいずれに位置する場合であっても、車幅方向視においてアクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343の移動軌跡内に位置する。一方、オープンレバーピンスライド孔403の長尺方向(延伸方向)の他方の端部(第一レバー軸孔401の中心に近いの端部)は、第一レバー40が初期位置とリリース位置との間のいずれに位置する場合であっても、車幅方向視においてアクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343の移動軌跡外(移動軌跡からアクティブレバー支持軸311の中心に近い側に外れた位置)に位置する。
【0062】
このような構成であると、オープンレバーピン42が第一位置に位置するときには、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343はオープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423を押すことができる。また、オープンレバーピン42が第二位置に位置するときには、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343は、オープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423に接触しない。
【0063】
なお、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343の移動軌跡の中心および半径と、第一レバー40に対して第一位置に位置するオープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423の移動軌跡の中心および半径は互いに相違する。このため、リリース動作中(すなわち、アクティブレバー34が中立位置からリリース位置に移動することにより、オープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423を押している間)に、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343と、オープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423との接触位置は、それらの移動軌跡の半径方向に互いにずれる。
【0064】
このため、リリース動作中にアクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343とオープンレバーピン42のアクティブレバー係合部423とが離脱しないように、アクティブレバー34のオープンレバーピン押圧部343は、アクティブレバー軸孔344を中心とする円の半径方向に所定の大きさを有する形状に形成される。本実施形態では、オープンレバーピン押圧部343は、後方に向かって張り出すように湾曲した形状を備える。この場合、オープンレバーピン押圧部343は、アクティブレバー34の他の部分と一体に、金属板をプレス加工することにより形成される。このような構成によれば、オープンレバーピン押圧部343の重量の増加を抑制できる。
【0065】
このように、本実施形態によれば、インサイドドアハンドル206が操作されることにより、リリースキャンセル動作が実行されるように構成される。そして、リリースキャンセル動作が実行されると、ラッチ機構32はラッチ状態に切替わることができる。したがって、車両ドア20を半閉位置または全閉位置に保持できるようになる。そして、本実施形態によれば、第二レバー41がオープンレバーリンク43を介してオープンレバーピン42を第一位置から第二位置に移動させるため、リモコン装置のような、開閉装置30とは別の装置(具体的には、インサイドドアハンドル206の動作や第一レバー40の動作を中継する装置)は不要である。すなわち、本実施形態に係る開閉装置30は、開閉装置30とは別の装置を要することなく、リリース動作とリリースキャンセル動作を実行できる。
【0066】
また、本実施形態に係る開閉装置30によれば、アクティブレバー34に連動して回転するオープンレバー33によってラッチ機構32をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えるように構成される。このため、従来の車両用のドア開閉装置のようなリリースレバーが不要である。したがって、部品点数を削減できる。また、リリースレバーの配置スペースが不要になるから、開閉装置30の小型化を図ること(または大型化の防止もしくは抑制を図ること)ができる。
【0067】
<開閉装置のクローズ動作>
次に、クローズ動作について説明する。クローズ動作は、車両ドア20が半閉位置に位置し、ラッチ機構32がハーフラッチ状態であるときに、駆動力源の駆動力によってラッチ機構32をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切り替える動作である。クローズ動作の開始時点においては、開閉装置30は
図4Aに示す初期状態である。また、車両ドア20は半閉位置に位置し、ラッチ機構32はハーフラッチ状態である。
【0068】
制御装置13は、駆動機構35を制御することにより、アクティブレバー34を中立位置からクローズ位置に向かって移動させる。このアクティブレバー34の動作により、アクティブレバー34に支持されているクローズレバー36は、略上方に移動する。そして、クローズレバー36は、ラッチ機構32のラッチ322の下部(例えば脚部)に接触し、当該下部を押し上げる。その結果、ラッチ322はハーフラッチ位置からフルラッチ位置に向かって移動する。そして、ラッチ322のこの回転により、車両ドア20は半閉位置から全閉位置に向かって移動する。ラッチ322がフルラッチ位置に到達すると、車両ドア20は全閉位置に到達する。そして、ラッチ322は、ポールによってフルラッチ位置に保持される。このため、車両ドア20は全閉位置に保持される。その後、駆動機構35の駆動力によって、アクティブレバー34をクローズ位置から中立位置へ移動させる。
【0069】
このように、アクティブレバー34が中立位置からリリース位置とは反対側に向かって回転移動することにより、ラッチ機構32をハーフラッチ状態からフルラッチ状態に切替えることができ、それにより、車両ドア20を半閉位置から全閉位置に移動させることができる。
【0070】
<実施形態のまとめ>
本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30は、
車両ドア20を閉位置に保持可能なラッチ状態と車両ドア20の開放を許容するアンラッチ状態とに切替え可能に構成されるラッチ機構32と、
初期位置からリリース位置へ移動することにより、ラッチ状態であるラッチ機構32をアンラッチ状態に切替えるように構成される第一レバー40と、
第一レバー40に係合しており、第一レバー40に対して移動することにより第一位置と第二位置とに移動可能に構成される係合部材の例であるオープンレバーピン42と、
駆動機構35(より正確には駆動機構35に設けられる電動モータ351)が出力する駆動力によって中立位置とリリース位置とに移動可能であり、中立位置からリリース位置に移動するときに第一位置に位置するオープンレバーピン42を押すことによって第一レバー40を初期位置からリリース位置に移動させるように構成されるアクティブレバー34と、
オープンレバーピン42に連係しており、初期位置から動作位置に移動することにより、第一位置に位置するオープンレバーピン42を、アクティブレバー34の移動軌跡外の位置である第二位置に移動させるように構成される第二レバー41と、を備える。
【0071】
本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30によれば、駆動機構35(電動モータ351)駆動力によってアクティブレバー34を中立位置からリリース位置に移動させると、アクティブレバー34が第一位置に位置するオープンレバーピン42を押す。これにより、第一レバー40は初期位置からリリース位置へ移動する。その結果、ラッチ機構32はラッチ状態からアンラッチ状態に切替わる。したがって、全閉位置または半閉位置に位置する車両ドア20は、開位置へ移動できるようになる。すなわち、車両ドア20の開放が許容される。アクティブレバー34および第一レバー40がリリース位置に位置するときに、第二レバー41を初期位置から動作位置に移動させることにより、オープンレバーピン42を第一位置から第二位置へ移動させることができる。そして、オープンレバーピン42が第二位置に位置すると、第二レバー41とアクティブレバー34とは干渉しなくなるから、アクティブレバー34がリリース位置に位置する状態のままで、第一レバー40はリリース位置から初期位置に戻ることができる。したがって、ラッチ機構32をアンラッチ状態からラッチ状態に切り替えることができる。
【0072】
このように、本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30によれば、リモコン装置などといった、車両用のドア開閉装置30とは別の装置を要することなく、リリース動作およびキャンセル動作を実行できる。
【0073】
また、本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30によれば、アクティブレバー34に連動して回転するオープンレバー33によってラッチ機構32をラッチ状態からアンラッチ状態に切替えるように構成される。このため、従来の車両用のドア開閉装置のようなリリースレバーが不要である。したがって、部品点数を削減できる。また、リリースレバーの配置スペースが不要になるから、車両用のドア開閉装置30の小型化を図ること(または大型化の防止もしくは抑制を図ること)ができる。
【0074】
また、本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30においては、
オープンレバーピン42に係合し、第二レバー41に対して回転可能かつ往復移動可能に係合するリンク部材の例であるオープンレバーリンク43を備え、
第一レバー40と第二レバー41とは、オープンレバーリンク43を介して連係しており、
第一レバー40は、第二レバー41が初期位置に位置する状態でオープンレバーリンク43と第二レバー41とが相対的に移動することにより、初期位置からリリース位置への移動が許容される。
【0075】
このような構成によれば、第二レバー41の動作はオープンレバーリンク43を介してオープンレバーピン42に伝達される。このためこのような構成によれば、リモコン装置などといった、ドア開閉装置30とは別の装置を要することなく、リリースキャンセル動作のための第二レバー41の動作を、オープンレバーピン42に伝達できる。また、このような構成によれば、リリース動作の際の第一レバー40の動作は第二レバー41に伝達されない。このため、第二レバー41を動作させることなく、第一レバー40を初期位置からリリース位置へ移動させることができる。
【0076】
また、本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30においては、
第二レバー41は、初期位置から動作位置へ移動すると、オープンレバーリンク43を引張るように構成されており、
オープンレバーピン42は、オープンレバーリンク43が第二レバー41に引張られることにより、オープンレバーリンク43と連動して第一位置から第二位置へ移動するように構成される。
【0077】
このような構成によれば、第二レバー41の動作はオープンレバーリンク43を介してオープンレバーピン42に伝達される。このためこのような構成によれば、リモコン装置などといった、ドア開閉装置30とは別の装置を要することなく、リリースキャンセル動作のための第二レバー41の動作を、オープンレバーピン42に伝達できる。
【0078】
また、本実施形態に係る車両用のドア開閉装置30においては、
第二レバー41は、車両ドア20に設けられ車両10の乗員が手動により操作可能な操作部材の例であるインサイドドアハンドル206に連係しており、操作部材の操作に連係して初期位置から動作位置へ移動するように構成される。
【0079】
このような構成によれば、車両10の使用者(乗員)はインサイドドアハンドル206を操作することにより、車両用のドア開閉装置30にキャンセル動作を実行させることができる(キャンセル動作を実現できる)。
【0080】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態に限定されない。本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲において改変が可能であり、それらも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0081】
例えば、前記実施形態では、オープンレバーリンク43に長孔である第二レバー係合孔432が設けられ、第二レバー41に突起であるオープンレバーリンク係合ピン413が設けられる構成を示したが、このような構成に限定されない。オープンレバーリンク43に突起が設けられ、第二レバー41に長孔が設けられる構成であってもよい。また、前記実施形態では、オープンレバーリンク43がオープンレバーピン42と回転可能に連結され、第二レバー41と回転可能かつ相対移動可能に係合する構成を示したが、このような構成に限定されない。オープンレバーリンク43がオープンレバーピン42と回転可能かつ相対移動可能に係合し、第二レバー41と回転可能に連結する構成であってもよい。
【符号の説明】
【0082】
20…車両ドア、30…車両用のドア開閉装置、32…ラッチ機構、33…オープンレバー、40…オープンレバーの第一レバー、41…オープンレバーの第二レバー、42…オープンレバーピン、43…オープンレバーリンク、34…アクティブレバー、35…駆動機構