(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173277
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】自重補償装置
(51)【国際特許分類】
B25J 19/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B25J19/00 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091599
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】石田 誠
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 篤
(72)【発明者】
【氏名】浅野 伸
(72)【発明者】
【氏名】樋口 優
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS10
3C707CY22
3C707HS26
3C707HT03
3C707HT20
3C707HT40
3C707KV06
(57)【要約】
【課題】被支持体の着脱にかかわらず、安定したバランス状態を維持する。
【解決手段】自重補償装置は、支持点で第一アーム及び第二アームを回転可能に支持する架台と、第一アームに接続されて被支持体を支持可能な支持アームと、第一ウェイトの位置を調整可能な第一位置調整部と、第二ウェイトの位置を調整可能な第二位置調整部と、第一アームの回転を規制する第一ブレーキ部と、第二アームの回転を規制する第二ブレーキ部と、支持アームに生じるひずみを検出する第一ひずみ検出部と、第二アームに生じるひずみを検出する第二ひずみ検出部と、各検出部の検出結果に基づいて、第一ブレーキ部及び第二ブレーキ部や第一位置調整部及び第二位置調整部を駆動させる制御部と、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一端部と、第二端部と、前記第一端部及び前記第二端部の間に配置された支持点とを有する第一アームと、
前記第一アームを前記支持点で回転可能に支持する架台と、
前記支持点から前記第一端部に向かように前記第一アームの延在方向に離間した位置で前記第一アームに支持された第一ウェイトと、
前記支持点で前記第一アームと独立して回転可能に支持され、前記支持点から前記第一アームの延在方向と交差する方向に延びる第二アームと、
前記支持点から前記第二アームの延在方向に離間した位置で前記第二アームに支持された第二ウェイトと、
前記第二端部で回転可能に支持され、前記第二アームが延びる方向と平行かつ反対方向に延びる支持アームと、
前記第一アームと接続されている端部と反対側の端部で前記支持アームに接続され、被支持体を着脱可能な把持部と、
前記支持アームと前記第二アームとが常時互いに平行となるように動作を連動させる連動機構と、
前記第二端部と前記支持点と前記第一端部とを結ぶ仮想直線上における前記支持点と前記第一ウェイトの距離を変更するように、前記支持点に対する前記第一ウェイトの位置を調整可能な第一位置調整部と、
前記支持点から前記第二アームの延在方向に延びる仮想直線上における前記支持点と前記第二ウェイトの距離を変更するように、前記支持点に対する前記第二ウェイトの位置を調整可能な第二位置調整部と、
前記支持点での前記架台に対する前記第一アームの回転を規制する第一ブレーキ部と、
前記支持点での前記架台に対する前記第二アームの回転を規制する第二ブレーキ部と、
前記支持アームに配置され、前記支持アームに生じるひずみを検出する第一ひずみ検出部と、
前記第二アームに配置され、前記第二アームに生じるひずみを検出する第二ひずみ検出部と、
前記第一ひずみ検出部及び前記第二ひずみ検出部の検出結果が入力されるとともに、入力された前記検出結果に基づいて、前記第一ブレーキ部及び前記第二ブレーキ部を駆動させるブレーキ信号と、前記第一位置調整部及び前記第二位置調整部を駆動させる位置調整信号を出力する制御部とを備え、
前記第二アームは、前記支持点を通る第一軸線を中心に前記第一アームに対して独立に回転可能とされ、
前記支持アームは、前記第一アーム上の前記第二端部を通り前記第一軸線に対して平行に延びる第二軸線を中心に、前記第一アームに対して回転可能とされ、
前記第二アームと前記支持アームとは、同期して動作するように連結されている自重補償装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記第一ひずみ検出部及び前記第二ひずみ検出部の前記検出結果の比が予め定めた値を超えた時に、前記第一ブレーキ部及び前記第二ブレーキ部を駆動させるブレーキ信号を出力する請求項1に記載の自重補償装置。
【請求項3】
前記把持部を操作する操作部をさらに備え、
前記制御部は、前記操作部によって前記第一ブレーキ部及び前記第二ブレーキ部にブレーキ信号を出力する請求項1又は2に記載の自重補償装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記把持部が前記被支持体を把持した状態で、前記第一ひずみ検出部及び前記第二ひずみ検出部の前記検出結果の比が予め定めた基準値に近づくように、前記第一位置調整部及び前記第二位置調整部に位置調整信号を出力する請求項1又は2に記載の自重補償装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、自重補償装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、製造現場において、機械及びロボット等による自動化や作業者の少人数化が推進されているが、人手による作業を完全に無くすことは難しい。人手による作業のうちの1つとして、作業者が重い工具を扱う作業がある。このような作業は、作業の効率化を図るうえで、大きな障壁となっている。このような重い工具の自重を補償する機構として、自重補償装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1には、異なる被支持体の質量に応じて、重量補償力を調整可能な自重補償装置が記載されている。この自重補償装置は、第一アームと、支持点で第一アームと独立して回転可能に支持された第二アームと、被支持体を支持可能な支持アームと、支持アームと第二アームとを常時平行に維持する連動機構とを備えている。さらに、第一アームに支持された第一ウェイトと支持点との距離は第一位置調整部によって調整可能とされている。また、第二アームに支持された第二ウェイトと支持点との距離は第二位置調整部によって調整可能とされている。このような構成とされた自重補償装置を用いることで、被支持体の質量が変化しても、第一ウェイト及び第二ウェイトの位置を調整するだけで、被支持体の自重を補償するための重量補償力が調整可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示された自重補償装置の場合、被支持体を着脱可能なハンドで把持する際に、把持する被支持体の質量に合わせてウェイトの位置を正確に調整して、第一アーム周りのバランスを調整する必要がある。さらに、ハンドで把持していた被支持体を離した場合のように、被支持体が急に支持アームから外れた場合には、第一アーム周りのバランスが崩れて、第一アームが急激に跳ね上がる可能性がある。そのため、被支持体の着脱にかかわらず、操作の安全性を維持することが望まれている。
【0006】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、被支持体の着脱にかかわらず、操作の安全性を維持することが可能な自重補償装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る自重補償装置は、第一端部と、第二端部と、前記第一端部及び前記第二端部の間に配置された支持点とを有する第一アームと、前記第一アームを前記支持点で回転可能に支持する架台と、前記支持点から前記第一端部に向かうように前記第一アームの延在方向に離間した位置で前記第一アームに支持された第一ウェイトと、前記支持点で前記第一アームと独立して回転可能に支持され、前記支持点から前記第一アームの延在方向と交差する方向に延びる第二アームと、前記支持点から前記第二アームの延在方向に離間した位置で前記第二アームに支持された第二ウェイトと、前記第二端部で回転可能に支持され、前記第二アームが延びる方向と平行かつ反対方向に延びる支持アームと、前記第一アームと接続されている端部と反対側の端部で前記支持アームに接続され、被支持体を着脱可能な把持部と、前記支持アームと前記第二アームとが常時互いに平行となるように動作を連動させる連動機構と、前記第二端部と前記支持点と前記第一端部とを結ぶ仮想直線上における前記支持点と前記第一ウェイトの距離を変更するように、前記支持点に対する前記第一ウェイトの位置を調整可能な第一位置調整部と、前記支持点から前記第二アームの延在方向に延びる仮想直線上における前記支持点と前記第二ウェイトの距離を変更するように、前記支持点に対する前記第二ウェイトの位置を調整可能な第二位置調整部と、前記支持点での前記架台に対する前記第一アームの回転を規制する第一ブレーキ部と、前記支持点での前記架台に対する前記第二アームの回転を規制する第二ブレーキ部と、前記支持アームに配置され、前記支持アームに生じるひずみを検出する第一ひずみ検出部と、前記第二アームに配置され、前記第二アームに生じるひずみを検出する第二ひずみ検出部と、前記第一ひずみ検出部、及び前記第二ひずみ検出部の検出結果が入力されるとともに、入力された前記検出結果に基づいて、前記第一ブレーキ部及び前記第二ブレーキ部を駆動させるブレーキ信号と、前記第一位置調整部及び前記第二位置調整部を駆動させる位置調整信号を出力する制御部とを備え、前記第二アームは、前記支持点を通る第一軸線を中心に前記第一アームに対して独立に回転可能とされ、前記支持アームは、前記第一アーム上の前記第二端部を通り前記第一軸線に対して平行に延びる第二軸線を中心に、前記第一アームに対して回転可能とされ、前記第二アームと前記支持アームとは、同期して動作するように連結されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示の自重補償装置によれば、被支持体の着脱にかかわらず、操作の安全性を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係る自重補償装置の構成を示す模式図である。
【
図2】自重補償装置の制御部を示す機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本開示による自重補償装置1を実施するための形態を説明する。しかし、本開示はこの実施形態のみに限定されるものではない。
【0011】
(自重補償装置)
図1を参照して、第一実施形態の自重補償装置1について説明する。本開示に係る実施形態の自重補償装置1は、第一アーム10と、架台Bと、第一ウェイト15と、第二アーム20と、第二ウェイト25と、支持アーム30と、把持部35と、操作部37と、連動機構60と、第一位置調整部70と、第二位置調整部80と、第一ブレーキ部91と、第二ブレーキ部92と、第一ひずみ検出部95と、第二ひずみ検出部96と、制御部100とを備える。
【0012】
(第一アームの構成)
第一アーム10は、第一端部11及び第二端部12を有している。第一アーム10は、第一端部11と第二端部12とを繋ぐ第一仮想中心線C1に沿って、直線状をなす形状を基本とする。第一仮想中心線C1は、第一ウェイト15の重心と第二端部12とを繋ぐ仮想直線であり、その間に支持点13が存在する。なお、第一アーム10は、支持点13と第一ウェイト15の重心と第二端部12とが第一仮想中心線C1上に存在し、支持点13と第一ウェイト15の重心との距離及び支持点13と第二端部12との距離を、それぞれ一定に保つことができれば良く、直線状の部材として形成されていることに限定されるものでない。第一アーム10は、第一端部11及び第二端部12の間の支持点13で回転可能に支持されている。
【0013】
支持点13は、第一アーム10において、回動可能な状態で支持されている位置である。支持点13は、第一アーム10において第一仮想中心線C1上の回転中心となる点である。第一アーム10は、支持点13を基準として紙面と直交する軸まわりに回転可能であることを基本とするが、紙面と直交する軸に加えて鉛直方向Dvの軸を含めた直交二軸、あるいは、直交三軸全てに対して回転可能に支持する構成でも良い。
図1では省略しているが、直交二軸を回転可能に支持する構成、および、直交三軸を回転可能に支持する構成としては、光学機器の雲台に用いられる二軸可動雲台、三軸可動雲台、および、ボール式自由雲台などの構成が考えられる。
【0014】
(架台の構成)
架台Bは、第一アーム10を支持点13で回転可能に、また、支持点13が鉛直方向Dvに対して水平方向に回転可能に支持している。架台Bは、支持点13から鉛直方向Dvの下方に真っすぐ設置面まで延びている。架台Bは、設置面に対して移動不能な状態で固定されていてもよく、移動可能な状態とされていてもよい。移動可能な構成として、架台Bは、例えば、車両等の大型の移動装置または台車やキャスタ付き支持架台等の小型の移動装置であってもよい。その際、架台Bは、車輪の固定などによって任意の位置で移動不能な状態に一時的に固定可能とされていてもよい。また、架台Bは、アウトリガー等の転倒防止用部材を有していてもよい。また、架台Bは、支持点13の高さを調整可能な昇降装置を有していてもよい。つまり、架台Bは、第一アーム10を鉛直方向Dvに移動可能となるように支持する構成にされていてもよい。
【0015】
(第一ウェイトの構成)
第一ウェイト15は、支持点13から第一端部11に向かって第一アーム10の延在方向において離間した位置で第一位置調整部70に支持されている。第一ウェイト15は、変動しない一定の質量を有するカウンタウェイトである。第一ウェイト15の重心は、支持点13に対して離れた位置で第一仮想中心線C1とできるだけ重なるように配置されていればよい。第一ウェイト15は、支持点13と第一端部11との間に配置される。また、本実施形態の第一ウェイト15は、一つのみ配置されている。ただし、本実施形態では、第一ウェイト15に対して、ウェイトの交換、ウェイト内の液体あるいは粉体の増減、第一ウェイト15の位置に複数のウェイトを追加あるいは除去する手段を制限するものではない。
【0016】
(第二アームの構成)
第二アーム20は、支持点13で第一軸線O1を中心に、第一アーム10に対して独立して回転可能に支持されている。第一軸線O1は、支持点13を通る仮想直線であって、第一仮想中心線C1と直交する直線である。第二アーム20は、支持点13に位置する基端22から先端21まで第一アーム10の延在方向と交差する方向に延びている。第二アーム20は、第一仮想中心線C1と交差する第二仮想中心線C2に沿って、直線状をなすように支持点13から先端21まで延びる形状を基本とする。第二仮想中心線C2は、第二ウェイト25の重心と支持点13とを繋ぐ仮想直線である。第二仮想中心線C2は、第一仮想中心線C1と同じ仮想面内で延びる仮想直線であって、第一軸線O1に対して直交する仮想直線である。なお、第二ウェイト25の重心が第二仮想中心線C2上となるように支持できれば良いため、必ずしも直線状に形成されていることに限定されるものでない。
【0017】
(第二ウェイトの構成)
第二ウェイト25は、支持点13から第二アーム20の延在方向に離間した位置で第二位置調整部80に支持されている。第二ウェイト25は、変動しない一定の質量を有するカウンタウェイトである。第二ウェイト25は、支持点13に対して離れた位置で第二仮想中心線C2と重なるように配置されていればよい。したがって、第二ウェイト25は、支持点13と先端21との間に配置される。また、本実施形態の第二ウェイト25は、一つのみ配置されている。ただし、本実施形態では、第二ウェイト25に対して、ウェイトの交換、ウェイト内の液体あるいは粉体の増減、第二ウェイト25の位置に複数のウェイトを追加あるいは除去する手段を制限するものではない。
【0018】
(支持アームの構成)
支持アーム30は、第二端部12で第一アーム10に回転可能に支持されている。支持アーム30は、支持第一端部31と支持第二端部32とを繋ぐ第三仮想中心線C3に沿って、直線状をなすように支持第一端部31から支持第二端部32まで延びる形状を基本とする。第三仮想中心線C3は、第二端部12と被支持体50の重心とを繋ぐ仮想直線であって、第一仮想中心線C1に対して交差しつつ、第二仮想中心線C2と平行な直線である。支持アーム30は、支持第一端部31が第二端部12と重なるように配置されて、第二軸線O2を中心に第一アーム10に対して回転可能に接続されている。第二軸線O2は、第二端部12を通る仮想直線であって、第一仮想中心線C1及び第三仮想中心線C3と直交する直線である。第二軸線O2は、第二端部12で第一軸線O1に対して平行に延びている。なお、支持アーム30は、第三仮想中心線C3に沿って延びる直線状であることを基本とするが、被支持体50の重心が第三仮想中心線C3上となるように支持できれば良いため、必ずしも直線状に形成されていることに限定されるものでない。支持アーム30は、第一アーム10の延在方向と交差する方向のうち第二アーム20が延びる方向とは反対方向に向かって延びている。つまり、支持アーム30が第一アーム10の第二端部12に接続している支持第一端部31から支持第二端部32に延びる向きと、第二アーム20が支持点13に回転可能に支持されている基端22から先端21に延びる向きとは、逆方向である。支持アーム30は、第一アーム10と接続されている端部と反対側の端部である支持第二端部32には、把持部35が固定されている。
【0019】
(把持部の構成)
把持部35は、被支持体50を支持可能とされている。把持部35は、被支持体50を着脱可能とされている。したがって、把持部35は、任意のタイミングで、被支持体50を把持又は放下できる。
【0020】
(操作部の構成)
操作部37は、把持部35を操作可能とされている。操作部37は、作業員が操作することで、把持部35に対して、被支持体50を把持又は放下させる。操作部37は、把持部35に接続されている。また、操作部37は、作業員によって操作されることで、操作に関する情報を後述する制御部100に出力する。
【0021】
(被支持体の構成)
被支持体50は、把持部35を介して支持アーム30に対して着脱可能な状態で取り付けられている。被支持体50は、自重補償装置1によって鉛直方向Dvの下方へ向かう重力に逆らって持ち上げられた状態で移動される対象物であって、任意の重量物である。被支持体50としては、例えば、工場等で作業員が使用する重量物(例えば、重い工具等)を例示することが可能である。被支持体50は、把持部35に把持されることで、支持第一端部31に対して離れた位置で第三仮想中心線C3と重なるように配置される。
【0022】
(連動機構の構成)
連動機構60は、支持アーム30と第二アーム20とが常時互いに平行となるように動作を連動させる機能を有する。つまり、第二アーム20と支持アーム30とは、連動機構60によって、同期して動作するように連結されている。具体的には、第一アーム10の第二端部12に接続された支持第一端部31を中心にして支持アーム30が回転するのに追従して、支持点13に支持された状態で基端22を中心に第二アーム20が回転し、第三仮想中心線C3と第二仮想中心線C2とが常に平行となるように連動させる機能を有する。この連動機構60は、第三仮想中心線C3と第二仮想中心線C2とが常に平行となるように相互の動作を拘束する機能であるため、支持アーム30が回転する場合、第二アーム20が追従して回転する機能も同時に有している。本実施形態の連動機構60は、第一スプロケット61と、第二スプロケット62と、チェーン63と、チェーン調整機構64と、を有する。
【0023】
第一スプロケット61は、その回転中心軸である第二軸線O2周りの回転をチェーン63に伝達し、チェーン63による回転をその中心軸に伝達するための円板形状をなした歯車である。第一スプロケット61は、支持アーム30の支持第一端部31に接続され、支持アーム30の回転と同期するように拘束されて、第一アーム10に対して回転可能に接続されている。その拘束方法には、キー及びキー溝による方法、スプライン加工による方法、ボルト締結による方法、溶接等が考えられるが、これらに限定はしない。第一スプロケット61は、支持アーム30が支持する被支持体50の重量を、第二軸線O2まわりの回転力に変換し、チェーン63の張力に変換し、荷重を伝達する。
【0024】
第二スプロケット62は、第一スプロケット61からチェーン63を介して伝達された
回転力を、その回転中心軸である第一軸線O1の中心軸に伝達するための円板形状をなした歯車である。第二スプロケット62は、第二アーム20の基端22に接続され、第二アーム20が支持アーム30と同期して回転するように拘束されている。その拘束方法には、キー及びキー溝による方法、スプライン加工による方法、ボルト締結による方法、溶接等が考えられるが、これらに限定はしない。この基端22は、第二アーム20を第一軸線O1まわりに回転可能に支持する支持点13と一致する。つまり、第二スプロケット62は、第一スプロケット61に対して離れた位置に配置されている。第二スプロケット62は、第一アーム10に対して独立に回転可能である。第二スプロケット62は、第二アーム20が支持する第二ウェイト25の重量を、第一軸線O1まわりのトルクに変換し、チェーン63の張力と釣り合うように伝達する。本実施形態の第二スプロケット62は真円の形状を基本とし、ピッチ径は、第一スプロケット61のピッチ径と等しくなるように構成されることを基本とする。
【0025】
チェーン63は、第一スプロケット61及び第二スプロケット62の外周部の歯と係合している。チェーン63は、環状に形成されており、第一スプロケット61及び第二スプロケット62を内側に配置している。
【0026】
チェーン調整機構64は、チェーン63の経路上に配置されている。チェーン調整機構64は、チェーン63の張りの状態を調整可能(第一スプロケット61と第二スプロケット62との相対位相を調整可能)な構成とされている。即ち、チェーン調整機構64によって、支持アーム30の第三仮想中心線C3と第二アーム20の第二仮想中心線C2の平行度を調整可能な機能を有している。チェーン調整機構64としては、例えば、ターンバックルやチェーンテンショナ等を用いることが可能である。
【0027】
(第一位置調整部の構成)
第一位置調整部70は、第一アーム10の支持点13と第一端部11の間に取付けられ、第一仮想中心線C1上に存在する支持点13と第一ウェイト15の距離を調整可能とされている。本実施形態の第一位置調整部70は、支持点13と第一端部11との間で第一ウェイト15の位置を調整可能とされている。第一位置調整部70は、被支持体50の質量に応じて、第一ウェイト15の位置を手動あるいは半自動あるいは自動で調整する。手動で調整する場合、具体的には、被支持体50の質量を任意の手法で計測し、その大きさに応じて、自重補償装置1の使用者が第一ウェイト15の位置を変え、再度固定する手法がある。第一ウェイト15の固定方法としては、ロックピン、ねじ、キャッチクリップ等が考えられるが、これらに限定しない。半自動で調整する場合、具体的には、被支持体50の質量を任意の手法で計測し、自重補償装置1の使用者が手動で被支持体50の質量を数値として自重補償装置1に入力し、入力された被支持体50の質量(使用者によって取得された被支持体50の質量)の数値に応じて、第一アーム10の支持点13と第一ウェイト15との距離を、第一位置調整部70のアクチュエータを用いて自動的に調整する手法がある。第一位置調整部70が支持点13と第一ウェイト15との距離を調整するアクチュエータとしては、例えば、ボールねじ、ワイヤチェーン、油圧シリンダ、リニアモータ、リンク機構等が挙げられる。本実施形態の第一位置調整部70は、第一アーム10の支持点13と第一端部11との間を移動させ支持点13と第一ウェイト15との距離を調整する。第一位置調整部70は、支持点13と第一端部11との間で第一アーム10に配置されている。自動で調整する場合、自重補償装置1で被支持体50の質量を直接検出し、半自動で調整する場合では使用者が実施していた被支持体50の質量の数値入力を省略し、直接計測で得られた被支持体50の質量(検出した被支持体50の質量)の値を用いて、支持点13と第一ウェイト15との距離を第一位置調整部70が、自動で、半自動の場合と同様の方法を用いて調整を行う。
【0028】
(第二位置調整部の構成)
第二位置調整部80は、第二アーム20の基端22と先端21の間に取付けられ、第二仮想中心線C2上に存在する支持点13と先端21との間で第二ウェイト25との距離を調整可能とされている。第二位置調整部80は、被支持体50の質量に応じて、第二ウェイト25の位置を手動あるいは半自動あるいは自動で調整する。手動で調整する場合、具体的には、被支持体50の質量を任意の手法で計測し、その大きさに応じて、自重補償装置1の使用者が第二位置調整部80の固定を解除し、長さを変え、再度固定する手法がある。第二位置調整部80の固定方法としては、ロックピン、ねじ、キャッチクリップ等が考えられるが、これらに限定しない。半自動で調整する場合、具体的には、被支持体50の質量を任意の手法で計測し、自重補償装置1の使用者が手動で被支持体50の質量を数値として自重補償装置1に入力し、入力された被支持体50の質量(使用者によって取得された被支持体50の質量)の数値に応じて、第二アーム20の支持点13と第二ウェイト25との距離を、第二位置調整部80がアクチュエータを用いて自動的に調整する手法がある。第二位置調整部80が支持点13と第二ウェイト25との距離を調整するアクチュエータとしては、例えば、ボールねじ、ワイヤチェーン、油圧シリンダ、リニアモータ、リンク機構等が挙げられる。第二位置調整部80は、支持点13と先端21との間で第二アーム20に配置されている。自動で調整する場合、自重補償装置1で被支持体50の質量を直接検出し、半自動で調整する場合では使用者が実施していた被支持体50の質量の数値入力を省略し、直接計測で得られた被支持体50の質量(検出した被支持体50の質量)の値を用いて、支持点13と第二ウェイト25との距離を第二位置調整部80が、自動で、半自動の場合と同様の方法を用いて調整を行う。第二位置調整部80は、ウェイトを移動させる構成を基本としている。第二位置調整部80は、基本的に、被支持体50の質量に応じて第一位置調整部70と同時に稼働する。これにより、第一位置調整部70及び第二位置調整部80は、第一ウェイト15の位置及び第二ウェイト25の位置を同時に調整する。ただし、第一ウェイト15の位置及び第二ウェイト25の位置の調整を、同時で行うことに限定するわけではない。
【0029】
(第一ブレーキ部の構成)
第一ブレーキ部91は、支持点13での架台Bに対する第一アーム10の回転を規制する。第一ブレーキ部91は、支持点13に配置されている。第一ブレーキ部91は、支持点13での第一アーム10の回転を抑制するように、第一アーム10に対して支持点13周りの制動力を付与する。
【0030】
(第二ブレーキ部の構成)
第二ブレーキ部92は、支持点13での架台Bに対する第二アーム20の回転を規制する。第二ブレーキ部92は、支持点13に配置されている。第二ブレーキ部92は、支持点13での第二アーム20の回転を抑制するように、第二アーム20に対して支持点13周りの制動力を付与する。
【0031】
(第一ひずみ検出部の構成)
第一ひずみ検出部95は、支持アーム30に生じるひずみを検出する。第一ひずみ検出部95は、支持アーム30に配置されている。本実施形態の第一ひずみ検出部95は、支持アーム30の表面に取り付けられ、支持アーム30の表面に生じるひずみ量を検出結果として電気的に検出する。第一ひずみ検出部95は、検出結果を制御部100に出力する。
【0032】
(第二ひずみ検出部の構成)
第二ひずみ検出部96は、第二アーム20に生じるひずみを検出する。第二ひずみ検出部96は、第二アーム20に配置されている。本実施形態の第二ひずみ検出部96は、第二アーム20の表面に取り付けられ、第二アーム20の表面に生じるひずみ量を検出結果として電気的に検出する。第二ひずみ検出部96は、検出結果を制御部100に出力する。
【0033】
(制御部の構成)
制御部100は、第一ひずみ検出部95、第二ひずみ検出部96の検出結果の信号が入力される。さらに、制御部100は、操作部37が操作された信号を受信する。具体的には、制御部100には、操作部37によって把持部35が被支持体50を把持するよう指示された信号と、操作部37によって把持部35が被支持体50を放下するよう指示された信号とが入力される。また、制御部100は、入力された検出結果に基づいて、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92を駆動させるブレーキ信号を出力する。制御部100は、入力された検出結果に基づいて、第一位置調整部70及び第二位置調整部80を駆動させる位置調整信号を出力する。
【0034】
具体的には、制御部100は、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果の比が予め定めた値に近づくように、第一位置調整部70及び第二位置調整部80を駆動させる信号を出力する。また、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果の比が予め定めた値を超えた場合は、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92を駆動させるブレーキ信号を出力する。また、制御部100は、操作部37によって把持部35が操作されることで、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92にブレーキ信号を出力する。
【0035】
制御部100は、CPU、ROM、RAM、ストレージ、及び、信号受信モジュールを備えるコンピュータである。
図2に示すように、本実施形態の制御部100は、入力部101と、第一判定部102と、ブレーキ出力部105と、位置調整出力部106とを有している。
【0036】
入力部101は、第一ひずみ検出部95、第二ひずみ検出部96からの検出結果を検出信号としてそれぞれ受信する。入力部101は、ハードウェア的には信号受信モジュールである。また、入力部101は、作業員によって操作された操作部37での操作に関する情報を受け付ける。
【0037】
第一判定部102は、入力部101から操作部37で入力された情報が入力される。また、第一判定部102は、入力部101から第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果が入力される。第一判定部102は、入力されたデータから第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果の比であるひずみ比を算出する。第一判定部102は、取得したひずみ比が小さくなっているか否かを判定する。本実施形態の第一判定部102は、予め定めた基準値に対して所定範囲内まで近づくように、ひずみ比が小さくなっているか否かを判定する。
【0038】
第一判定部102は、基準値として、支持アーム30と第二アーム20との相対位置が支持点13周りで釣り合っている状態とみなせる値である。第一判定部102は、ひずみ比が基準を満たしていないと判定した場合に、ブレーキ出力部105に信号を出力する。本実施形態の第一判定部102は、入力部101から操作部37で入力された情報が入力された状態で、判定を開始する。
【0039】
ブレーキ出力部105は、第一アーム10での支持点13周りの回転に対して、第一ブレーキ部91に制動力を生じさせるブレーキ信号を出力する。また、ブレーキ出力部105は、第二アーム20での支持点13周りの回転に対して第二ブレーキ部92に制動力を生じさせるブレーキ信号を出力する。本実施形態のブレーキ出力部105は、入力部101からの信号を受信することで、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92を駆動させるブレーキ信号を出力する。したがって、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92には、操作部37が操作されて把持部35によって被支持体50が把持又は放下されることで、ブレーキ出力部105からブレーキを開始するようにブレーキ信号が入力される。ブレーキ出力部105は、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92に対して、同時にブレーキ信号を出力する。
【0040】
位置調整出力部106は、支持点13と第一ウェイト15との距離を調整させる位置調整信号を第一位置調整部70へ出力する。また、位置調整出力部106は、支持点13と第二ウェイト25との距離を調整させる位置調整信号を第二位置調整部80へ出力する。本実施形態の位置調整出力部106は、第一判定部102からの信号を受信することで、第一位置調整部70や第二位置調整部80に対して位置調整信号を出力する。
【0041】
次に、本実施形態に係る自重補償装置1で被支持体50を鉛直方向Dvの上方へ持ち上げる場合について説明する。自重補償装置1では、操作部37が作業員に操作されることで把持部35によって被支持体50が把持される。これにより、支持アーム30の支持第二端部32に被支持体50が取り付けられる。この際、架台Bに対して支持点13で第一軸線O1まわりに第一アーム10を回転させることで、また、支持第一端部31で第二軸線O2まわりに支持アーム30を回転させることで、被支持体50を任意の位置に移動させることができる。この際、連動機構60によって、第二アーム20が支持アーム30に対して常に平行な状態となるように維持される。その結果、被支持体50と第一ウェイト15と第二ウェイト25の合成重心は、支持点13と常に一致することとなり、被支持体50の位置に関わらず被支持体50の自重を補償し、被支持体50を安定して支持可能となる。
【0042】
制御部100で、第一アーム10に対してブレーキを掛けた状態で、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果が釣り合っている状態とみなせる値になるように、第二位置調整部80を駆動させて第二ウェイト25の位置調整を行い、支持アーム30と第二アーム20のバランスを調整する。次に第二ウェイト25の位置調整情報を基に、第一位置調整部70を動作させて第一ウェイト15の位置調整を行い、第一アーム10のバランスを調整する。
【0043】
制御部100では、第一位置調整部70及び第二位置調整部80に位置調整信号をそれぞれ出力する。これにより、第一位置調整部70では、第一ウェイト15の位置が調整されて、支持点13と第一ウェイト15との距離が変化する。また、第二位置調整部80では、第二ウェイト25の位置が調整されて、支持点13と第二ウェイト25との距離が変化する。その結果、支持点13から第一ウェイト15の重心までの距離、及び、支持点13から第二ウェイト25の重心までの距離が変化し、被支持体50と第一ウェイト15と第二ウェイト25との合成重心が支持点13と一致する。これにより、被支持体50を移動させても、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスが維持され、被支持体50が安定して支持される。
【0044】
また、自重補償装置1で把持していた被支持体50を放下する場合について説明する。自重補償装置1では、操作部37が作業員に操作されることで、把持部35から被支持体50が離される。操作部37が作業員に操作されて、把持部35から被支持体50が放下されることで、操作部37での操作に関する情報が制御部100に入力される。その結果、制御部100から第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92にブレーキ信号が出力される。そのため、第一ブレーキ部91によって、第一アーム10に対して支持点13周りの制動力が付与された状態が維持される。また、第二ブレーキ部92によって、第二アーム20に対して支持点13周りの制動力が付与された状態が維持される。したがって、操作部37が操作された被支持体50が放下された状態では、把持部35が被支持体50を把持している状態と同様に、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92によって、第一アーム10及び第二アーム20に対してブレーキが掛かった状態が維持される。これにより、被支持体50を放下した瞬間に、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20が、架台Bに対して急激に移動してしまうことが抑制される。そのため、被支持体50を把持していた状態と同様に、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスが維持される。
【0045】
さらに、被支持体50が脱落するなどによって、操作部37での操作を介さずに作業員の意図しないタイミングで、支持アーム30が鉛直方向Dvに移動した場合について説明する。意図しないタイミングで被支持体50が脱落した場合、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果のひずみ比が基準値から外れるため、制御部100では第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92を駆動させブレーキ信号を出力する。つまり、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92により、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20が急激に移動してしまうことが抑制される。
【0046】
(作用効果)
上記構成の自重補償装置1では、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果に基づいて、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92や、第一位置調整部70及び第二位置調整部80が制御部100によって駆動される。そのため、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96によって、支持アーム30及び第二アーム20に生じるひずみの変化を検出できる。支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20では、釣り合って架台Bに対してバランスが取れている状態では、支持点13周りに負荷が生じていない。さらに、このバランスが取れている状態で緩やかに支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20が移動した場合では、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20のそれぞれに負荷が生じず、ひずみがほぼ変化していない状態となっている。一方で、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスが崩れた状態では、支持点13周りに負荷が生じる。加えて、バランスが崩れて支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20が急に移動した場合には、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20のそれぞれへ負荷が生じ、異なったひずみが生じる。これに対し、本実施形態の自重補償装置1では、検出したひずみの情報に基づいて、第一位置調整部70及び第二位置調整部80を駆動させることで、被支持体50を把持した瞬間や放下した瞬間のように、被支持体50から支持アーム30が受ける負荷が大きく変わった場合であっても、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスを安定して維持できる。さらに、検出した情報に基づいて、第二アーム20の急な動きを検出したうえで、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92を駆動させることで、支持アーム30及び第二アーム20の急な動きを検出したうえで、第一アーム10及び第二アーム20の急激な動きを抑制でき、操作の安全性が保たれる。
【0047】
また、上述したように、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスが維持されている状態では、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20のそれぞれに生じる負荷の割合が一定に近い。そのため、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96での検出結果から取得されるひずみ比も一定に近い値が維持される。しかしながら、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20のバランスが崩れると、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20のそれぞれに負荷の割合が変化し、ひずみ比が一定の値からずれてしまう。これに対し、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96の検出結果から取得されるひずみ比が基準値に近づくように、第一位置調整部70及び第二位置調整部80が駆動されている。その結果、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20のバランスが保たれる。
【0048】
特に、把持部35が被支持体50を把持した状態で支持アーム30が鉛直方向Dvに移動した際や把持部35が被支持体50を放下した際に、第一位置調整部70及び第二位置調整部80が駆動されている。その結果、バランスを崩しやすい被支持体50の移動時や被支持体50の放下時に、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスを調整できる。
【0049】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0050】
なお、連動機構60は、支持アーム30と第二アーム20とが互いに平行となるように連動させることができれば、本実施形態のような構造に限定されるものではない。例えば、連動機構60は、プーリやワイヤを用いた構造や、プッシュロッド用いた構造や、油圧システムを用いた構造や、ドライブシャフトを用いた構造を用いてもよい。
【0051】
また、第一位置調整部70は、第一アーム10の支持点13と第一端部11との間を伸縮させる構造のように第一アーム10の長さを調整可能な構造に限定されるものではない。つまり、第一位置調整部70は、支持点13と第一ウェイト15の位置を調整可能な構造であればよい。例えば、第一位置調整部70は、第一ウェイト15が移動可能とされて第一アーム10上に配置されたレール状の部材であってもよい。また、第一位置調整部70は、重なり合った筒状の部材が伸び縮みする構造であってもよい。また、第一位置調整部70は、支持点13と第一端部11との間に関節が配置されたリンク構造であってもよい。
【0052】
第二位置調整部80は、第二アーム20の基端22と先端21との間を伸縮させる構造のように第二アーム20の長さを調整可能な構造に限定されるものではない。つまり、第二位置調整部80は、支持点13と第二ウェイト25の位置を調整可能な構造であればよい。例えば、第二位置調整部80は、第二ウェイト25が移動可能とされて第二アーム20上に配置されたレール状の部材であってもよい。また、第二位置調整部80は、筒状の部材が伸び縮みする構造であってもよい。また、第二位置調整部80は、支持点13と先端21との間に関節が配置されたリンク構造であってもよい。
【0053】
<付記>
各実施形態に記載の自重補償装置1は、例えば以下のように把握される。
【0054】
(1)第1の態様に係る自重補償装置1は、第一端部11と、第二端部12と、前記第一端部11及び前記第二端部12の間に配置された支持点13とを有する第一アーム10と、前記第一アーム10を前記支持点13で回転可能に支持する架台Bと、前記支持点13から前記第一端部11に向かように前記第一アーム10の延在方向に離間した位置で前記第一アーム10に支持された第一ウェイト15と、前記支持点13で前記第一アーム10と独立して回転可能に支持され、前記支持点13から前記第一アーム10の延在方向と交差する方向に延びる第二アーム20と、前記支持点13から前記第二アーム20の延在方向に離間した位置で前記第二アーム20に支持された第二ウェイト25と、前記第二端部12で回転可能に支持され、前記第二アーム20が延びる方向と平行かつ反対方向に延びる支持アーム30と、前記第一アーム10と接続されている端部と反対側の端部で前記支持アーム30に接続され、被支持体50を着脱可能な把持部35と、前記支持アーム30と前記第二アーム20とが常時互いに平行となるように動作を連動させる連動機構60と、前記第二端部12と前記支持点13と前記第一端部11とを結ぶ仮想直線上における前記支持点13と前記第一ウェイト15の距離を変更するように、前記支持点13に対する前記第一ウェイト15の位置を調整可能な第一位置調整部70と、前記支持点13から前記第二アーム20の延在方向に延びる仮想直線上における前記支持点13と前記第二ウェイト25の距離を変更するように、前記支持点13に対する前記第二ウェイト25の位置を調整可能な第二位置調整部80と、前記支持点13での前記架台Bに対する前記第一アーム10の回転を規制する第一ブレーキ部91と、前記支持点13での前記架台Bに対する前記第二アーム20の回転を規制する第二ブレーキ部92と、前記支持アーム30に配置され、前記支持アーム30に生じるひずみを検出する第一ひずみ検出部95と、前記第二アーム20に配置され、前記第二アーム20に生じるひずみを検出する第二ひずみ検出部96と、前記第一ひずみ検出部95及び前記第二ひずみ検出部96の検出結果が入力されるとともに、入力された前記検出結果に基づいて、前記第一ブレーキ部91及び前記第二ブレーキ部92を駆動させるブレーキ信号と、前記第一位置調整部70及び前記第二位置調整部80を駆動させる位置調整信号を出力する制御部100と、を備え、前記第二アーム20は、前記支持点13を通る第一軸線O1を中心に前記第一アーム10に対して独立に回転可能とされ、前記支持アーム30は、前記第一アーム10上の前記第二端部12を通り前記第一軸線O1に対して平行に延びる第二軸線O2を中心に、前記第一アーム10に対して回転可能とされ、前記第二アーム20と前記支持アーム30とは、同期して動作するように連結されている。
【0055】
このような構成によれば、第一ひずみ検出部95及び第二ひずみ検出部96によって、支持アーム30及び第二アーム20に生じるひずみの変化を検出できる。ひずみの検出した情報に基づいて、第一位置調整部70及び第二位置調整部80を駆動させることで、被支持体50から支持アーム30が受ける負荷が大きく変わった場合であっても、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスを安定して維持できる。さらに、検出した情報に基づいて、第二アーム20の急な動きを検出したうえで、第一ブレーキ部91及び第二ブレーキ部92を駆動させることで、支持アーム30及び第一アーム10及び第二アーム20の急激な動きを抑制でき、操作の安全性が保たれる。
【0056】
(2)第2の態様に係る自重補償装置1は、(1)の自重補償装置1あって、前記制御部100は、前記第一ひずみ検出部95及び前記第二ひずみ検出部96の前記検出結果の比が予め定めた値を超えた時に、前記第一ブレーキ部91及び前記第二ブレーキ部92を駆動させるブレーキ信号を出力する。
【0057】
(3)第3の態様に係る自重補償装置1は、(1)又は(2)の自重補償装置1であって、前記把持部35を操作する操作部37をさらに備え、前記制御部100は、前記操作部37によって前記第一ブレーキ部91及び前記第二ブレーキ部92にブレーキ信号を出力する。
【0058】
(4)第4の態様に係る自重補償装置1は、(1)から(3)のいずれか一つの自重補償装置1であって、前記制御部100は、前記把持部35が前記被支持体50を把持した状態で、前記第一ひずみ検出部95及び前記第二ひずみ検出部96の前記検出結果の比が予め定めた基準値に近づくように、前記第一位置調整部70及び前記第二位置調整部80に位置調整信号を出力する。
【0059】
このような構成によれば、バランスを崩しやすい被支持体50の移動時に、支持アーム30、第一アーム10、及び第二アーム20の架台Bに対するバランスを調整できる。
【符号の説明】
【0060】
1…自重補償装置
10…第一アーム
11…第一端部
12…第二端部
13…支持点
O1…第一軸線
C1…第一仮想中心線
B…架台
15…第一ウェイト
20…第二アーム
21…先端
22…基端
O1…第一軸線
C2…第二仮想中心線
25…第二ウェイト
30…支持アーム
31…支持第一端部
32…支持第二端部
35…把持部
37…操作部
O2…第二軸線
C3…第三仮想中心線
50…被支持体
60…連動機構
61…第一スプロケット
62…第二スプロケット
63…チェーン
64…チェーン調整機構
70…第一位置調整部
80…第二位置調整部
91…第一ブレーキ部
92…第二ブレーキ部
95…第一ひずみ検出部
96…第二ひずみ検出部
100…制御部
101…入力部
102…第一判定部
105…ブレーキ出力部
106…位置調整出力部
Dv…鉛直方向