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特開2024-173278燃焼設備用システムおよび情報処理方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173278
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】燃焼設備用システムおよび情報処理方法
(51)【国際特許分類】
   G06N 99/00 20190101AFI20241205BHJP
   F23G 5/50 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
G06N99/00 180
F23G5/50 H
F23G5/50 G
F23G5/50 N
F23G5/50 L
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091600
(22)【出願日】2023-06-02
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2024-02-13
(71)【出願人】
【識別番号】501370370
【氏名又は名称】三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】太田 裕二
(72)【発明者】
【氏名】新保 裕哉
(72)【発明者】
【氏名】佐瀬 遼
(72)【発明者】
【氏名】大丸 卓一郎
(72)【発明者】
【氏名】草加 浩都
(72)【発明者】
【氏名】瀬戸口 稔彦
(72)【発明者】
【氏名】江草 知通
(72)【発明者】
【氏名】寺沢 良則
【テーマコード(参考)】
3K062
【Fターム(参考)】
3K062AA02
3K062AB01
3K062AC01
3K062AC17
3K062AC20
3K062BA02
3K062CA03
3K062CB05
3K062CB08
3K062DA01
3K062DA22
3K062DA23
3K062DA25
3K062DA27
3K062DA32
3K062DA35
3K062DA36
3K062DB01
3K062DB03
3K062DB05
3K062DB09
3K062DB11
(57)【要約】
【課題】燃焼設備に関するパラメータを適切に決定することが可能になる燃焼設備用システムおよび情報処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】燃焼設備用システムは、燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部と、前記パレート解生成部により生成された前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部と、
前記パレート解生成部により生成された前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部と、
を備えた燃焼設備用システム。
【請求項2】
前記複数の指標は、一酸化炭素発生量、窒素酸化物発生量、酸素濃度変動、ガス温度変動、または蒸気流量変動のうち2つ以上に関する指標である、
請求項1に記載の燃焼設備用システム。
【請求項3】
前記制御パラメータは、被焼却物の含有水分、前記被焼却物のカロリー、前記被焼却物の供給量、前記被焼却物の搬送速度、燃焼空気の流量、前記燃焼空気の配分量、または前記燃焼空気の温度に関する1つ以上の制御パラメータである、
請求項1または請求項2に記載の燃焼設備用システム。
【請求項4】
前記選好解決定部は、前記複数の指標に含まれる第1指標に関する値が所定の閾値以上である運転状況と、前記第1指標に関する値が前記閾値未満である運転状況とについて、それぞれ前記選好解を決定する、
請求項1または請求項2に記載の燃焼設備用システム。
【請求項5】
季節変動に関する所定指標値を監視する監視部と、
前記監視部により監視された前記所定指標値が閾値を超えて変化した場合に、前記モデルを同定し直すモデル同定部と、
をさらに備えた、
請求項1または請求項2に記載の燃焼設備用システム。
【請求項6】
1つ以上のコンピュータが、
燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成し、
生成した前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する、
ことを含む情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、燃焼設備用システムおよび情報処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ビルの自動制御設備のリニューアルに関する要求度の決定に用いられる意思決定支援装置として、最上位に最終目標を設定し、その下に問題を解決するため或いは代替案を選択するための複数の評価基準を並べて最終目標と線で結び、その下に複数の代替案を並べて評価基準と線で結ぶことにより形成される階層構造を画面に表示する表示手段と、その画面に表示された階層構造における各評価基準相互の一対比較による比較値、定量値又は絶対評価値で評価される代替案名、その定量値又は絶対評価値を、操作者が入力するための入力手段と、該入力手段から入力されたデータに基づいて、各評価基準の一対比較及び絶対評価又は定量値によるウェイトを算出し、各評価基準のウェイトを全て加えることによって得られる総合ウェイトを、階層構造における各代替案の重要度として決定する演算処理を実行し、その結果を出力する演算処理手段とを備える装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-69051号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、燃焼設備に関するパラメータを適切に決定することは困難である。
【0005】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、燃焼設備に関するパラメータを適切に決定することが可能になる燃焼設備用システムおよび情報処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る燃焼設備用システムは、燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部と、前記パレート解生成部により生成された前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部と、を備える。
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理方法は、1つ以上のコンピュータが、燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成し、生成した前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する、ことを含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示の燃焼設備用システムおよび情報処理方法によれば、燃焼設備に関するパラメータを適切に決定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本開示の第1実施形態の燃焼設備の全体構成を示す図である。
図2】本開示の第1実施形態の焼却設備の機能構成を示すブロック図である。
図3】本開示の第1実施形態のプラントモデルの概要を説明するための図である。
図4】本開示の第1実施形態のO濃度とCO濃度との関係を示す図である。
図5】本開示の第1実施形態のO濃度とNOx濃度との関係を示す図である。
図6】本開示の第1実施形態のO濃度の変化パターンを説明するための図である。
図7】本開示の第1実施形態のモデルパラメータに関するパレート解を説明するための図である。
図8】本開示の第1実施形態で用いられる階層分析法の流れを示す図である。
図9】本開示の第1実施形態の最適なモデルパラメータの導出に関する階層構造を説明するための図である。
図10】本開示の第1実施形態のモデルパラメータ同士の一対比較の処理を概念的に示す図である。
図11】本開示の第1実施形態の制御パラメータに関するパレート解を説明するための図である。
図12】本開示の第1実施形態の最適な制御パラメータの導出に関する階層構造を説明するための図である。
図13】本開示の第1実施形態の制御パラメータの評価基準同士の一対比較の結果の一例を示す図である。
図14】本開示の第1実施形態の制御パラメータ同士の一対比較の処理を概念的に示す図である。
図15】本開示の第1実施形態の制御パラメータセットの一例を示す図である。
図16】本開示の第1実施形態の情報処理の流れを示すフローチャートである。
図17】本開示の第2実施形態の焼却設備の機能構成を示すブロック図である。
図18】本開示の第2実施形態の情報処理の流れを示すフローチャートである。
図19】本開示の実施形態のコンピュータの構成を示すハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態を、図面を参照して説明する。以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付す。そして、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。本開示で「XXに基づく」とは、「少なくともXXに基づく」ことを意味し、XXに加えて別の要素に基づく場合も含み得る。また「XXに基づく」とは、XXを直接に用いる場合に限定されず、XXに対して演算や加工が行われたものに基づく場合も含み得る。本開示で「XXまたはYY」とは、XXとYYのうちいずれか一方の場合に限定されず、XXとYYの両方の場合も含み得る。これは選択的要素が3つ以上の場合も同様である。「XX」および「YY」は、任意の要素(例えば任意の情報)である。
【0011】
本出願で「取得する」とは、送信要求を送信して能動的に取得する場合に限定されず、他の装置から送信される情報を受動的に受信することで取得する場合も含み得る。また「取得」とは、目的の情報(取得対象の情報)を外部から直接取得する場合に限定されず、外部から得られた情報に対して演算または加工などを行うことで、目的の情報を生成して取得する場合も含み得る。
【0012】
(第1実施形態)
<1.焼却設備の全体構成>
図1は、第1実施形態に係る燃焼設備1の全体構成を示す図である。燃焼設備1は、例えば、都市ごみ、産業廃棄物、またはバイオマスなどを被焼却物Gとする焼却設備である。以下では説明の便宜上、「被焼却物」を「ごみ」と称する場合がある。燃焼設備1は、例えばストーカ炉である。なお、燃焼設備1は、ストーカ炉に限定されず、別タイプの燃焼設備でもよい。本実施形態では、燃焼設備1は、例えば、焼却炉2、排熱回収ボイラ3、減温塔4、集塵装置5、煙道6、煙突7、および制御装置100を備える。
【0013】
焼却炉2は、後述するホッパ21に投入された被焼却物Gを搬送しながら燃焼させる炉である。焼却炉2内での被焼却物Gの燃焼に伴って焼却炉2では排ガスが発生する。発生した排ガスは、焼却炉2の上部に設けられた排熱回収ボイラ3に送られる。排熱回収ボイラ3は、焼却炉2で発生した排ガスと水との間で熱交換を行うことで水を加熱して蒸気を発生させる。排熱回収ボイラ3を通過した排ガスは、減温塔4で冷却された後、集塵装置5に送られる。排ガスは、集塵装置5でススや塵埃が除去された後、煙道6および煙突7を通じて大気中に排出される。
【0014】
<2.焼却炉>
次に、焼却炉2について詳しく説明する。焼却炉2は、例えば、供給機構20、炉本体30、ストーカ40、排出シュート43、複数の風箱50、火炉60、および送風機構70を有する。
【0015】
<2.1 供給機構>
供給機構20は、例えば不図示のクレーンによって運ばれた被焼却物Gを一時的に貯留するとともに、一時的に貯留した被焼却物Gを後述する炉本体30の処理空間Vに向けて順次供給する機構である。供給機構20は、例えば、ホッパ21、フィーダ22、押出装置23(図2参照)、および水分計測器24を有する。
【0016】
(ホッパ)
ホッパ21は、炉本体30の内部へ被焼却物Gを供給するために設けられた貯留部である。ホッパ21は、被焼却物Gが投入されるための入口部と、後述する炉本体30の処理空間Vに通じる出口部とを有する。ホッパ21には、クレーンによって運ばれた被焼却物Gが投入される。
【0017】
(フィーダ)
フィーダ22は、ホッパ21内の被焼却物Gを炉本体30の処理空間Vに向けて押し出すための装置である。フィーダ22は、ホッパ21の底部に設けられている。フィーダ22は、例えば、ホッパ21の底部に沿う板状に形成されている。フィーダ22は、押出装置23によって駆動され、ホッパ21から炉本体30の処理空間Vに向かう方向に沿って往復移動可能である。フィーダ22は、押出装置23によって駆動され、ホッパ21の内部に貯留された被焼却物Gを炉本体30の処理空間Vに向けて押し出す。
【0018】
(水分計測器)
水分計測器24は、ホッパ21に投入される被焼却物Gの含有水分に関する情報(例えば水分率または水分量)を検出する計測器である。例えば、水分計測器24は、ホッパ21に設けられた照射部および検出部と、解析部とを有する。照射部は、ホッパ21内に堆積する被焼却物Gに所定の周波数帯域の電磁波を照射する。検出部は、照射部から照射されて、被焼却物Gを透過したまたは被焼却物Gで反射した電磁波を受信する。解析部は、例えば、電磁波の特性変化(例えば振幅の変化または位相の変化)と水分率との関係を示す相関関係情報を予め記憶している。解析部は、照射部と検出部との間での電磁波の特性変化と、上記相関関係情報とに基づき、被焼却物Gの水分率を検出する。なお、水分計測器24は、上記水分率と、ホッパ21に投入される被焼却物Gの重量とに基づき、被焼却物Gの水分量を検出してもよい。
【0019】
<2.2 炉本体>
炉本体30は、ホッパ21に隣接して設けられ、被焼却物Gを搬送しながら燃焼させる設備である。以下では、燃焼設備1における被焼却物Gの搬送方向を「搬送方向D」と称する。炉本体30は、搬送方向Dにおける上流側から下流側に向けて、乾燥段30a、燃焼段30b、および後燃焼段30cをこの順に有する。乾燥段30aは、燃焼段30bおよび後燃焼段30cよりも上流側に位置し、ホッパ21から供給された被焼却物Gを、ストーカ40上での燃焼に先立って乾燥させる領域である。燃焼段30bおよび後燃焼段30cは、乾燥段30aを通過して乾燥した状態の被焼却物Gをストーカ40上で燃焼させる領域である。燃焼段30bでは、被焼却物Gから発生する熱分解ガスによる拡散燃焼が起き、火炎Fが生じる。後燃焼段30cでは、被焼却物Gの拡散燃焼後の固定炭素燃焼が起きるため、火炎Fは生じない。
【0020】
<2.3 ストーカ>
ストーカ40は、複数の火格子41と、火格子駆動装置42(図2参照)とを含む。複数の火格子41は、炉本体30の底面となるストーカ面40aを形成している。ストーカ面40aには、供給機構20によって被焼却物Gが層状に供給される。ストーカ面40aは、上述した乾燥段30a、燃焼段30b、および後燃焼段30cに亘り設けられている。複数の火格子41は、固定火格子と、可動火格子とを含む。固定火格子は、後述する風箱50の上面に固定されている。可動火格子は、一定の速度で搬送方向Dに沿って往復移動することで、可動火格子と固定火格子の上(ストーカ面40a上)にある被焼却物Gを攪拌混合しながら下流側へ搬送する。
【0021】
<2.4 排出シュート>
排出シュート43は、燃焼を終えて灰となった被焼却物Gを炉本体30よりも下方に位置する灰押出装置へ落下させる装置である。排出シュート43は、炉本体30の炉尻に設けられている。
【0022】
<2.5 風箱>
複数の風箱50は、ストーカ40の下方に設けられ、ストーカ40を通じて炉本体30の内部に燃焼用の一次空気を供給する。一次空気は、「燃焼空気」の一例である。本実施形態では、複数の風箱50は、例えば複数の火格子41に対応して搬送方向Dに並べて配置されている。
【0023】
<2.6 火炉>
火炉60は、炉本体30の上部から上方に向けて延びている。火炉60は、火格子41の上方に配置されて燃焼後のガスが流入する。すなわち、炉本体30内で被焼却物Gが燃焼することで生じた排ガスは、火炉60を通じて排熱回収ボイラ3に流れる。
【0024】
<2.7 送風機構>
送風機構70は、炉本体30および火炉60の内部に燃焼空気を供給する。送風機構70は、例えば、送風機71、一次空気ライン72、空気予熱器73、二次空気ライン74、およびダンパ75を有する。
【0025】
送風機71は、炉本体30および火炉60の内部に燃焼空気を圧送する押込送風機である。送風機71は、例えば、第1送風機71Aと、第2送風機71Bとを含む。第1送風機71Aは、一次空気ライン72および複数の風箱50を通じて炉本体30の内部(例えば処理空間V)に燃焼用の一次空気を圧送する。一方で、第2送風機71Bは、二次空気ライン74を通じて、火炉60の内部に燃焼用の二次空気を圧送する。二次空気は、「燃焼空気」の別の一例である。
【0026】
一次空気ライン72は、第1送風機71Aと複数の風箱50とを接続している。一次空気ライン72の途中には、1つ以上(例えば複数)の一次空気ダンパ75Aが設けられている。本実施形態では、複数の一次空気ダンパ75Aは、複数の風箱50と1対1で対応して設けられている。一次空気ダンパ75Aは、当該一次空気ダンパ75Aの開度によって、当該一次空気ダンパ75Aが対応する風箱50から炉本体30内に供給される一次空気の流量を変更する。
【0027】
空気予熱器73は、第1送風機71Aから圧送される一次空気を予熱する熱交換器である。例えば、空気予熱器73は、一次空気ライン72の途中に設けられている。
【0028】
二次空気ライン74は、第2送風機71Bと火炉60とを接続している。二次空気ライン74は、火炉60の壁部に開口した供給口を有し、火炉60内の空間(排ガス流路)に二次空気を供給する。二次空気ライン74の途中には、1つ以上(例えば複数)の二次空気ダンパ75Bが設けられている。二次空気ダンパ75Bは、当該二次空気ダンパ75Bの開度によって、当該二次空気ダンパ75Bが対応する上記供給口から火炉60内に供給される二次空気の流量を変更する。以下では説明の便宜上、一次空気ダンパ75Aと二次空気ダンパ75Bとを合わせて「ダンパ75」と称する。
【0029】
<3.各種センサ>
次に、燃焼設備1に設けられた各種センサについて説明する。
【0030】
<3.1 放射温度センサ>
放射温度センサ(赤外線温度センサ)81は、例えば、火炉60の内部に設けられ、火炉60の内部の温度を検出する。これに代えて/加えて、放射温度センサ81は、排熱回収ボイラ3の内部に設けられ、排熱回収ボイラ3の内部の温度を検出してもよい。
【0031】
<3.2 蒸気流量センサ>
蒸気流量センサ82は、排熱回収ボイラ3内の管路の途中に設けられ、管路を流れる蒸気の流量を検出する。例えば、蒸気流量センサ82は、一次減温器を通過する蒸気の流量(一次過熱器減温器流量)を検出する第1蒸気流量センサ82Aと、二次減温器を通過する蒸気の流量(二次過熱器減温器流量)を検出する第2蒸気流量センサ82Bとを含む。以下の説明で「蒸気流量センサ82の検出結果」とは、例えば、第1蒸気流量センサ82Aの検出結果と、第2蒸気流量センサ82Bの検出結果とを含む。
【0032】
<3.3 ガスセンサ>
ガスセンサ83は、例えば、煙道6に設けられ、煙道6を流れる排ガスに含まれる酸素濃度、一酸化炭素濃度、二酸化炭素濃度、またはNOx濃度などを検出する。なお、ガスセンサ83は、煙道6に代えて/加えて、火炉60、排熱回収ボイラ3、減温塔4、集塵装置5、または、煙突7などに設けられてもよい。
【0033】
<3.4 外部環境センサ>
外部環境センサ84(図2参照)は、例えば、燃焼設備1の外部に露出し、燃焼設備1が設置された環境に関する値(例えば季節の変化に応じて変動する値)を検出する。外部環境センサ84は、例えば外気温を検出する温度センサであるが、これに限定されない。外部環境センサ84は、季節の変化に応じて変動する値を検出可能なセンサであればよい。例えば、水分計測器24が外部環境センサ84の一例に該当してもよい。
【0034】
<4.制御装置>
次に、制御装置100について説明する。
図2は、焼却設備1の機能構成を示すブロック図である。制御装置100は、焼却設備1を統括的に制御する。本実施形態では、制御装置100は、階層分析法を用いることで、燃焼設備1を模した数式モデルの同定および制御パラメータの決定を行い、決定した制御パラメータに基づいて燃焼制御を行う。本開示で「燃焼制御」とは、被焼却物Gの燃焼の関する制御を広く意味し、例えば、被焼却物Gの供給量(例えばフィーダ22の移動速度)、被焼却物Gの搬送速度(例えば火格子41の駆動速度)、一次空気の流量、複数の風箱50に対する一次空気の配分量、一次空気の予熱温度、二次空気の流量、火炉60の複数の供給口に対する二次空気の配分量などのうち1つ以上を制御することを意味する。
【0035】
本実施形態では、制御装置100は、例えば、情報取得部110、監視部120、モデル同定部130、制御パラメータ決定部140、制御部150、および記憶部160を有する。制御部150による制御対象の装置(以下「制御対象装置VD」と称する)は、押出装置23、火格子駆動装置42、送風機71、空気予熱器73、およびダンパ75などを含む。
【0036】
なお以下では、モデルの同定および制御パラメータの決定の両方が階層分析法を用いて行われる例について説明するが、階層分析法を用いて行われるのは、モデルの同定と、制御パラメータの決定とのうち一方のみでもよい。
【0037】
<4.1 情報取得部>
情報取得部110は、焼却設備1に設けられた各種センサにより検出された検出結果を取得する。例えば、情報取得部110は、水分計測器24の検出結果(被焼却物Gの含有水分に関する情報)、放射温度センサ81の検出結果、蒸気流量センサ82の検出結果、ガスセンサ83の検出結果、および外部環境センサ84の検出結果を取得する。
【0038】
<4.2 監視部>
監視部120は、季節など外部環境の状態を監視する。ここで、燃焼設備1に関する状態(例えば被焼却物Gの性状)は、季節など外部環境により異なる。このため、燃焼設備1に関するモデルの同定および制御パラメータの決定は、季節など外部環境が変化するごとに行う必要がある。
【0039】
本実施形態では、監視部120は、季節変動に関する所定指標値を監視することで、モデル同定部130による処理および制御パラメータ決定部140による処理の要否を判定する。所定指標値の一例は、外部環境センサ84による検出される検出値(例えば外気温)の所定期間における平均値である。なお、所定指標値は、上記例に代えて、水分計測器24により計測される被焼却物Gの水分含有率の所定期間における平均値などでもよい。
【0040】
監視部120による判定は、所定の周期(例えば1日1回)で繰り返し実行される。監視部120は、監視対象の所定指標値が所定の閾値を超えて変化した場合、モデルの再同定が必要であることを示す信号をモデル同定部130に出力するとともに、制御パラメータの再決定が必要であることを示す信号を制御パラメータ決定部140に出力する。
【0041】
<4.3 モデル同定部>
次に、モデル同定部130について説明する。
モデル同定部130は、燃焼設備1に関するモデルとして、プラントモデルMを同定する。プラントモデルMは、燃焼設備1の実機の特性を模した数式モデル(計算モデル)である。本実施形態では、モデル同定部130は、階層分析法を用いてプラントモデルMを同定する。モデル同定部130は、燃焼設備1の実機の挙動と、プラントモデルMを用いて計算により導出される計算値とが整合するように、プラントモデルMを規定する1つ以上のパラメータ(以下「モデルパラメータ」と称する)を同定する。モデル同定部130は、例えば、パレート解生成部131と、選好解決定部132とを含む。
【0042】
(プラントモデルの概要)
まず、プラントモデルMの概要を説明する。
図3は、プラントモデルMの概要を説明するための図である。図3に示すように、火炉60は、排ガスヘッダ61と、排ガスヘッダ61の下流側に設けられた二次燃焼ヘッダ62とを含む。二次空気ライン74は、二次空気ヘッダ74aを含む。
【0043】
プラントモデルMでは、例えば、以下のように条件が設定される。まず、固体燃料(被焼却物G)の反応は以下のように設定される。
C+1/2O→CO
2H+1/2O→H
【0044】
炉本体30において固体燃料の過剰供給時には、一部の固体燃料中の炭素元素(C)および水素元素(H)が揮発し、揮発した炭素元素および水素元素は、排ガスヘッダ61を通じて二次燃焼ヘッダ62に流入し、二次燃焼ヘッダ62で反応する。炉本体30において気体燃料(窒素元素(N)および酸素元素(O))はガス化し、窒素(N)および酸素(O)が発生する。
【0045】
また、一酸化炭素(CO)の低減指令が出力させ、酸素を多く含む排ガス(IGRガス)が発生する場合は、IGRガスの一部は二次空気ヘッダ74aを介して、二次空気の一部として利用される。排ガスヘッダ61での二次燃焼の反応は以下のように設定される。
CO+1/2O→CO
【0046】
本実施形態では、モデル同定部130は、階層分析法を用いてプラントモデルMを同定する。本出願で「モデルを同定する」とは、例えば、モデルを規定する1つ以上のモデルパラメータを決定することを意味する。
【0047】
例えば本実施形態では、プラントモデルMに関するモデルパラメータとして、被焼却物Gの供給状態と、燃焼状態に関する1つ以上の指標(1つ以上のプロセス値)との関係を模擬するためのパラメータが決定される。上記1つ以上の指標は、例えば、一酸化炭素の発生量(CO発生量)、窒素酸化物の発生量(NOx発生量)、酸素濃度(O濃度)、または温度センサ81により検出される温度(IR温度)などのうち1つ以上を含む。
【0048】
なお本実施形態では、計算を単純化するため、CO発生量およびNOx発生量については以下に示すようにO濃度の関数として定義される。
【0049】
図4は、O濃度とCO濃度との関係を示す図である。本実施形態では、燃焼設備1での実測データに基づき、O濃度とCO濃度との関係が図4に示すように定義される。図5は、O濃度とNOx濃度との関係を示す図である。本実施形態では、燃焼設備1での実測データに基づき、O濃度とNOx濃度との関係が図5に示すように定義される。
【0050】
一方で、O濃度については、被焼却物Gのどか落ちの影響を考慮するため、以下に示すように定義される。本出願で「どか落ち」とは、フィーダ22によって炉本体30に向けて押し出された所定量以上の被焼却物Gが意図せずに一度に纏まってストーカ40上に落ちる(供給される)ことを意味する。「どか落ち」の発生状態は、被焼却物Gの性状によって異なるため、季節に応じて変化する。
【0051】
図6は、O濃度の変化パターンを説明するための図である。本実施形態では、どか落ちが発生した場合にストーカ40上に供給される被焼却物Gの変化パターン(供給量の変化パターン)を台形状に模擬される。具体的には、どか落ちの発生時点をt0、被焼却物Gの供給量の増加が停滞した時点をt1、被焼却物Gの供給量が減少に転じた時点をt2、被焼却物Gの供給量が初期値に戻った時点をt3とすると、被焼却物Gの時間当たりの最大供給量S、増加した被焼却物Gが減少に転じるまでの時間T(=t2-t0)、被焼却物Gの供給量の増加速度α(=S/(t1-t0))、被焼却物Gの供給量の減少速度β(=S/t3-t2)という4つのモデルパラメータを用いて、被焼却物Gのどか落ちが模擬される。これら4つのモデルパラメータ(最大供給量S、時間T、増加速度α、減少速度β)の各々は、プラントモデルMを規定するモデルパラメータである。そして、O濃度の変化パターンは、時点t0と時点t3との間で下に凸となる円弧状に模擬される。
【0052】
(モデルパラメータに関するパレート解生成部)
次に、パレート解生成部131について説明する。パレート解生成部131は、燃焼設備1の実機で検出された検出値と、プラントモデルMを用いて計算により導出される計算値とに基づき、燃焼設備1の燃焼状態に関する複数の指標(例えば2つ以上の指標、さらに言えば例えば3つ以上の指標)の上記検出値と上記計算値との誤差最小化を目的関数として、プラントモデルMを規定する1つ以上(例えば複数)のモデルパラメータに関するパレート解を生成する。
【0053】
例えば、パレート解生成部131は、燃焼設備1の燃焼状態に関する複数の指標として、CO発生量、NOx発生量、IR温度、およびO濃度の各々について、燃焼設備1の実機で検出された検出値(例えば放射温度センサ81またはガスセンサ83による検出値)と、プラントモデルMを用いて計算により導出される計算値との誤差が最小となる1つ以上(例えば複数)のモデルパラメータの複数のパレート解を生成する。
【0054】
本実施形態では、上記複数のモデルパラメータは、上述した4つのモデルパラメータ(最大供給量S、減少までの時間T、増加速度α、減少速度β)を含む。また、上記複数のモデルパラメータは、上記4つのモデルパラメータに加え、被焼却物Gの含有水分、被焼却物Gのカロリー、被焼却物Gの供給量、被焼却物Gの搬送速度、一次空気の流量、複数の風箱50に対する一次空気の配分量、一次空気の温度、二次空気の流量、火炉60の複数の供給口に対する二次空気の配分量などのうち1つ以上に関するモデルパラメータを含んでもよい。
【0055】
パレート解生成部131は、例えば、進化型多目的アルゴリズムMOEA/D(Multiobjective Evolutionary Algorithm Based on Decomposition)を用いて、上記複数のパレート解を生成する。ただし、パレート解を生成するアルゴリズムは、上記例に限定されず、他の手法が用いられてもよい。
【0056】
図7は、パレート解生成部131により生成されたモデルパラメータの複数のパレート解を説明するための図である。図7中の複数の黒三角形の各々は、モデルパラメータセットに関する複数のパレート解(パレート解集合)を示す。「モデルパラメータセット」とは、パレート解の生成対象となる複数のモデルパラメータの組み合わせを示す。それぞれパレート解である複数の黒三角形は、1つ以上のモデルパラメータの値が互い異なる複数のモデルパラメータセット(モデルパラメータセットA、モデルパラメータセットB、モデルパラメータセットC、…)を示す。
【0057】
なお、図7では、説明の便宜上、IR温度およびO濃度の2つの指標を評価関数とした二次元平面上でパレート解を示す。実際には、パレート解は、例えば、CO発生量、NOx発生量、IR温度、およびO濃度の4つの指標を評価関数とした四次元上で求められる。ただし、パレート解は、上記例に限定されず、2つあるいは3つの指標に基づいて求められてもよく、または5つ以上の指標に基づいて求められてもよい。
【0058】
(モデルパラメータに関する選好解決定部)
次に、選好解決定部132について説明する。選好解決定部132は、パレート解生成部131により生成されたモデルパラメータに関する複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解(最適なモデルパラメータセット)を決定する(選択する)。
【0059】
図8は、本実施形態で用いられる階層分析法の流れを示す図である。階層分析法では、階層構造の構築(S101)、一対比較の実施(S102)、重要度の計算(S103)、総合評価(S104)の順に処理が進められる。
【0060】
(階層構造の構築)
まず、選好解決定部132は、階層構造の構築の処理を行う。
図9は、選好解決定部132により生成される最適なモデルパラメータ導出に関する階層構造を説明するための図である。本実施形態では、評価基準として、CO発生量、NOx発生量、IR温度、およびO濃度に関する4つの評価基準が設定される。すなわち、(1)CO発生量の実機の検出値と計算値との誤差最小化、(2)NOx発生量の実機の検出値と計算値との誤差最小化、(3)IR温度の実機の検出値と計算値との誤差最小化、および(4)O濃度の実機の検出値と計算値との誤差最小化がそれぞれ評価基準として設定される。ここで言う「計算値」は、プラントモデルMを用いた計算(シミュレーション)により導出される計算値を意味する。
【0061】
なお本実施形態では、上記4つの評価基準の重みは全て同じとする。このため、上記4つの評価基準同士の一対比較の処理は省略される。ただし、上記4つの評価基準に対して優先度に応じた重み付けが行われてもよい。この場合、後述する一対比較の処理の一部として、上記4つの評価基準同士の一対比較に基づくスコアの付与が行われてもよい。
【0062】
本実施形態では、選好解決定部132は、階層構造の構築の処理として、複数の代替案の設定を行う。選好解決定部132は、例えば、パレート解生成部131により生成されたそれぞれパレート解である複数のモデルパラメータセット(モデルパラメータセットA、モデルパラメータセットB、モデルパラメータセットC、…)を、それぞれ代替案として設定する。
【0063】
(一対比較の実施)
次に、選好解決定部132は、複数の代替案同士の一対比較の処理を行う。
図10は、モデルパラメータに関する一対比較の処理を概念的に示す図である。例えば、図10は、O濃度の実機の検出値と計算値との誤差最小化が評価基準である場合の複数のモデルパラメータセットの一対比較の結果を示す。図10中で区分1から区分9は、O濃度の実機の検出値と計算値との誤差の大きさを所定基準で分けた区分である。
【0064】
(重要度の計算)
次に、選好解決定部132は、一対比較の結果に基づき、各モデルパラメータセットについて重要度の計算を行う。例えば、選好解決定部132は、上記区分1から区分9に対して予め設定されたスコアに基づき、例えば幾何平均法を用いることで、各評価基準に関する各モデルパラメータセットの重要度の評価値を算出する。
【0065】
(総合評価)
次に、選好解決定部132は、各モデルパラメータセットの総合評価値を算出する。例えば、選好解決定部132は、各モデルパラメータセットについて、各評価基準に関して算出された重要度の評価値を複数の評価基準に関して合計することで、各モデルパラメータセットの総合評価値を算出する。そして、選好解決定部132は、複数のモデルパラメータセットのなかで、総合評価値が最も高いモデルパラメータセットを最適なモデルパラメータセットとして導出することで、プラントモデルMを同定する。そして、選好解決定部132は、同定されたプラントモデルMを示す情報(例えば導出された最適なモデルパラメータセットを示す情報)を制御パラメータ決定部140に出力する。
【0066】
<4.4 制御パラメータ決定部>
次に、制御パラメータ決定部140について説明する。
制御パラメータ決定部140は、燃焼設備1の制御に用いられる制御パラメータを決定する。本実施形態では、制御パラメータ決定部140は、階層分析法を用いて制御パラメータを決定する。制御パラメータ決定部140は、例えば、パレート解生成部141と、選好解決定部142とを含む。
【0067】
(制御パラメータに関するパレート解生成部)
まず、パレート解生成部141について説明する。パレート解生成部141は、モデル同定部130により同定されたプラントモデルMに基づき、燃焼設備1の燃焼状態に関する複数の指標(例えば2つ以上の指標、さらに言えば例えば3つ以上の指標)を目的関数として、燃焼設備1の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成する。
【0068】
例えば、パレート解生成部141は、燃焼設備1の燃焼状態に関する複数の指標として、CO発生量、NOx発生量、IR温度変動、およびO濃度変動の各々について、プラントモデルMを用いて計算により導出される計算値が最小となる1つ以上の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成する。
【0069】
上記制御パラメータは、例えば、燃焼空気のダンパ75の開度である。以下では、制御パラメータとして、二次空気ダンパ75Bの開度を階層分析法により導出する例について説明する。ただし、階層分析法により導出される制御パラメータは、上記例に代えて/加えて、被焼却物Gの含有水分、被焼却物Gのカロリー、被焼却物Gの供給量(例えばフィーダ22の速度)、被焼却物Gの搬送速度(例えば火格子41の移動速度)、一次空気の流量(例えば一次空気ダンパ75Aの開度および/または第1送風機71Aの駆動量)、複数の風箱50に対する一次空気の配分量(例えば一次空気ダンパ75Aの開度)、一次空気の温度(例えば空気予熱器73の加熱量)、二次空気の流量(例えば二次空気ダンパ75Bおよび/または第2送風機71Bの駆動量)、火炉60の複数の供給口に対する二次空気の配分量(例えば二次空気ダンパ75B)などのうち1つ以上に関する制御パラメータを含んでもよい。
【0070】
パレート解生成部141は、例えば、進化型多目的アルゴリズムMOEA/Dを用いて、制御パラメータに関する複数のパレート解を生成する。ただし、パレート解を生成するアルゴリズムは、上記例に限定されず、他の手法が用いられてもよい。
【0071】
図11は、パレート解生成部141により生成された制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの開度)に関する複数のパレート解を説明するための図である。図11中の複数の白三角形の各々は、上記制御パラメータの複数のパレート解(パレート解集合)を示す。それぞれパレート解である複数の白三角形は、制御パラメータの値が互いに異なる複数の制御パラメータとして、二次空気ダンパ75Bの複数の開度(開度A、開度B、開度C、…)を示す。
【0072】
なお、図11では、説明の便宜上、CO発生量およびNOx発生量の2つの指標を評価関数とした二次元平面上でパレート解を示す。実際には、パレート解は、例えば、CO発生量、NOx発生量、IR温度変動量、およびO濃度変動量の4つの指標を評価関数とした四次元上で求められる。ただし、パレート解は、上記例に限定されず、2つあるいは3つの指標に基づいて求められてもよく、または5つ以上の指標に基づいて求められてもよい。
【0073】
(制御パラメータに関する選好解決定部)
次に、選好解決定部142について説明する。選好解決定部142は、パレート解生成部141により生成された制御パラメータに関する複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記パレート解のなかから1つ以上の選好解(最適な制御パラメータ、例えば二次空気ダンパ75Bの最適な開度)を選択して決定する(選択する)。
【0074】
なお、制御パラメータに関する階層分析法の流れは、図8を参照して説明したモデルパラメータに関する階層分析法の流れと同様である。このため重複する説明は省略する。以下では、制御パラメータに関する階層分析法の具体的な処理について説明する。
【0075】
(階層構造の構築)
まず、選好解決定部142は、階層構造の構築の処理を行う。
図12は、選好解決定部142により生成される最適な制御パラメータ導出に関する階層構造を説明するための図である。本実施形態では、評価基準として、CO発生量、NOx発生量、IR温度変動、およびO濃度変動に関する4つの評価基準が設定される。すなわち、(1)CO発生量の計算値の最小化、(2)NOx発生量の計算値の最小化、(3)IR温度変動量(または変動率)の計算値の最小化、および(4)O濃度変動量(または変動率)の計算値の最小化がそれぞれ評価基準として設定される。ここで言う「計算値」は、モデル同定部130により導出された最適なモデルパラメータセットと、プラントモデルMとを用いた計算(シミュレーション)により導出される計算値を意味する。
【0076】
本実施形態では、選好解決定部142は、階層構造の構築の処理として、複数の代替案の設定を行う。選好解決定部142は、例えば、パレート解生成部141により生成されたそれぞれパレート解である複数の制御パラメータ(例えば、二次空気ダンパ75Bに関する開度A、開度B、開度C、…)を、それぞれ代替案として設定する。
【0077】
(一対比較の実施)
次に、選好解決定部142は、複数の評価基準同士および複数の代替案同士のそれぞれについて一対比較の処理を行う。まず、複数の評価基準同士の一対比較について説明する。本実施形態のように4つの基準がある場合は、(i)CO発生優先とO変動優先、(ii)CO発生優先とNOx発生優先、(iii)CO発生優先とIR温度変動優先、(iv)NOx発生優先とO変動優先、(v)NOx発生優先vsとIR温度変動優先、(vi)O変動優先とIR温度変動優先の6通りの一対比較が行われる。
【0078】
図13は、制御パラメータの評価基準同士の一対比較の結果の一例を示す図である。本実施形態では、制御パラメータの評価基準同士の一対比較として、燃焼設備1に生じる得る複数の運転状況ごとに異なる優先度が付与される。図13では、(a)CO優先の運転状況、(b)NOx優先の運転状況、(c)IR温度(蒸気流量)優先の運転状況3つの運転状況それぞれにおける一対比較を示す。
【0079】
「CO優先」の運転状況とは、CO発生量の計算値が所定の閾値(例えばCO用高位閾値)以上であるが、NOx発生量の計算値が所定の閾値(例えばNOx用低位閾値)未満であり、CO発生量が厳しいがNOx発生量には余裕がある状況を示す。この場合、CO発生量の変動を1番に優先し、次にIR温度(蒸気流量)の変動を優先し、その次にO濃度の変動またはNOxの変動を優先(例えば、燃焼設備1の安定運転の観点ではO濃度の変動を優先)するように、複数の評価基準に対してスコアが付与される。図13では、数字が大きいほど、優先度が高いことを意味する。例えば、図13中のAで示す交点部分に付与されたスコア「7」は、NOxの変動に対してCOの変動を7倍優先することを意味する。
【0080】
「NOx優先」の運転状況とは、CO発生量の計算値が所定の閾値(例えばCO用低位閾値)未満であるが、NOx発生量の計算値が所定の閾値(例えばNOx用高位閾値)以上であり、CO発生量には余裕があるがNOx発生量が厳しい状況を示す。この場合、NOx発生量の変動を1番に優先し、次にIR温度(蒸気流量)の変動を優先し、その次にO濃度の変動またはCOの変動を優先(例えば、燃焼設備1の安定運転の観点ではCO発生量の変動を優先)するように、複数の評価基準に対してスコアが付与される。
【0081】
「IR温度(蒸気流量)優先」の状況とは、CO発生量の計算値が所定の閾値(例えばCO用低位閾値)未満であるとともに、NOx発生量の計算値が所定の閾値(例えばNOx用低位閾値)未満であり、CO発生量およびNOx発生量ともに余裕がある状況を示す。この場合、IR温度(蒸気流量)の変動を1番に優先し、次にCO発生量の変動を優先し、その次にO濃度の変動またはNOxの変動を優先(例えば、燃焼設備1の安定運転の観点ではO発生量の変動を優先)するように、複数の評価基準に対してスコアが付与される。
【0082】
次に、選好解決定部142は、複数の代替案同士の一対比較の処理を行う。なお本実施形態では、選好解決定部142は、上記3つの運転状況の各々について、以下に説明する処理を行う。
【0083】
図14は、制御パラメータ同士の一対比較の処理を概念的に示す図である。例えば、図14は、O濃度変動の最小化が評価基準である場合の複数の制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの複数の開度)同士の一対比較の結果を示す。図14中で区分1から区分9は、O濃度変動の大きさを所定基準で分けた区分である。
【0084】
(重要度の計算)
次に、選好解決定部142は、複数の評価基準同士の一対比較の結果に基づき、各評価基準の重要度の計算を行う。例えば、選好解決定部142は、一対比較で設定されたスコアに基づき、例えば幾何平均法を用いることで、各評価基準の重要度(以下「評価基準重要度」と称する)の評価値を算出する。
【0085】
次に、選好解決定部142は、複数の制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの複数の開度)同士の一対比較の結果に基づき、各制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの各開度)の重要度の計算を行う。例えば、選好解決定部142は、上記区分1から区分9に対して予め設定されたスコアに基づき、例えば幾何平均法を用いることで、各評価基準に関する各制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの各開度)の重要度の評価値を算出する。
【0086】
(総合評価)
次に、選好解決定部142は、各制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの各開度)の総合評価値を算出する。例えば、選好解決定部142は、各制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの各開度)について、各評価基準の評価基準重要度を反映させた(例えば乗算させた)上で、当該制御パラメータ(当該開度)の重要度の評価値を上記複数の評価基準に関して合計することで、各制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの各開度)の総合評価値を算出する。そして、選好解決定部142は、複数の制御パラメータ(例えば二次空気ダンパ75Bの複数の開度)のなかで、総合評価値が最も高い制御パラメータを、最適な制御パラメータ(例えば最適な開度)として導出する。
【0087】
本実施形態では、選好解決定部142は、上述した複数(例えば3つ)の運転状況ごとの複数の評価基準同士の一対比較の結果に基づき、上述した最適な制御パラメータ(例えば最適な開度)を、上述した複数の状況ごとに導出する(決定する)。例えば、選好解決定部142は、「CO優先」の運転状況で最適な制御パラメータS1(例えば最適な開度S1)、「NOx優先」の運転状況で最適な制御パラメータS2(例えば最適な開度S2)、「IR温度(蒸気流量)優先」の運転状況で最適な制御パラメータS3(例えば最適な開度S3)を導出する。そして、選好解決定部142は、運転状況ごとに導出した複数の最適な制御パラメータS1,S2,S3に基づき、より多くの種々の運転状況に対応可能な制御パラメータセットを導出する。
【0088】
図15は、選好解決定部142により導出される制御パラメータセットの一例を示す図である。図15中の(a)は、二次空気ダンパ75Bの最大開度(単位は[%])の制御パラメータセットを示す。図15中の(b)は、二次空気ダンパ75Bの中間開度(単位は[%])の制御パラメータセットを示す。「最大開度」とは、例えば、CO濃度またはNOx濃度が所定の基準を超えて増加した場合(例えば「どか落ち」が生じた場合)に、制御部150により所定時間(第1所定時間)に亘り設定される開度である。「中間開度」とは、例えば、二次空気ダンパ75Bが最大開度で所定時間に亘り設定された後に、制御部150により所定時間(第2所定時間)に亘り設定される開度である。
【0089】
本実施形態では、選好解決定部142は、上記制御パラメータセットとして、「最大開度」に対応した制御パラメータセットと、「中間開度」に対応した制御パラメータセットとをそれぞれ決定する。
【0090】
例えば、選好解決定部142は、「最大開度」に対応した制御パラメータセットを導出する場合、20%以上、100%以下の開度であることを制約条件として、上述したS101からS104の処理を行うことで、複数の最適な制御パラメータS1,S2,S3として、上記運転状況ごとに適した複数の最適な制御パラメータS1A,S2A,S3Aを導出する。そして、選好解決定部142は、例えば、制御パラメータS1A,S2A,S3Aに基づく線形補完を行うことで、図15中の(a)に示す制御パラメータセットを導出する。
【0091】
同様に、選好解決定部142は、「中間開度」に対応した制御パラメータセットを導出する場合、10%以上、60%以下の開度であることを制約条件として、上述したS101からS104の処理を行うことで、複数の最適な制御パラメータS1,S2,S3として、上記運転状況ごとに適した複数の最適な制御パラメータS1B,S2B,S3Bを導出する。そして、選好解決定部142は、例えば、制御パラメータS1B,S2B,S3Bに基づく線形補完を行うことで、図15中の(b)に示す制御パラメータセットを導出する。
【0092】
なお図15中では、CO濃度またはNOx濃度のそれぞれにおいて、区分1から区分5のうち、数値が小さい区分は厳しい状況であることを意味し、数値が大きい区分は余裕が大きい状況であることを意味する。例えば、CO濃度に関する区分1は、CO発生量が上記CO用高位閾値以上であることを意味する。例えば、CO濃度に関する区分5は、CO発生量が上記CO用低位閾値未満であることを意味する。同様に、NOx濃度に関する区分1は、NOx発生量が上記NOx用高位閾値以上であることを意味する。例えば、NOx濃度に関する区分5は、NOx発生量が上記NOx用低位閾値未満であることを意味する。なお、図15中の(a)で設定されるCO濃度およびNOx濃度の区分1から区分5と、図15中の(b)で設定されるCO濃度およびNOx濃度の区分1から区分5とは、同じでもよく、異なってもよい。
【0093】
<4.5 制御部>
制御部150は、燃焼設備1の全体を統括的に管理する。本実施形態では、制御部150は、情報取得部110により取得された各種検出値と、制御パラメータ決定部140により決定された制御パラメータとに基づき制御対象装置VDを制御することで、燃焼設備1に関する燃焼制御を行う。例えば、本実施形態では、制御部150は、情報取得部110により取得されたCOおよびNOxに関する検出値(例えばガスセンサ83による検出値)と、制御パラメータ決定部140により決定された制御パラメータ(例えば図15中の(a)または(b)に示す制御パラメータセット)とに基づき、二次空気ダンパ75Bを制御する。
【0094】
例えば、制御部150は、ガスセンサ83により検出されたCO濃度(CO発生量)またはNOx濃度(NOx発生量)が上記所定の基準を超えて増加した場合(例えば「どか落ち」が生じた場合)には、図15中の(a)示される複数の開度のなかで、ガスセンサ83により検出されたCO濃度(CO発生量)およびNOx濃度(NOx発生量)に対応する開度(第1開度)に二次空気ダンパ75Bを制御する。
【0095】
そして、制御部150は、二次空気ダンパ75Bを上記第1開度に設定して所定時間に亘り燃焼設備1を運転した後、図15中の(b)示される複数の開度のなかで、ガスセンサ83により検出されたCO濃度(CO発生量)およびNOx濃度(NOx発生量)に対応する開度(第2開度)に二次空気ダンパ75Bを制御する。その後、制御部150は、二次空気ダンパ75Bを上記第2開度に設定して所定時間に亘り燃焼設備1を運転した後、二次空気ダンパ75Bを予め設定された基準開度に戻す。
【0096】
<5.情報処理の流れ>
次に、制御装置100による情報処理の流れを説明する。
図16は、情報処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、まず、監視部120は、情報取得部110に取得された検出値に基づき、季節変動に関する所定指標値(例えば、外部環境センサ84による検出された検出値の所定期間における平均値)を算出することで取得する(S111)。そして、監視部120は、取得された所定指標値が所定の閾値を超えて変化したか否かを判定する(S112)。
【0097】
上記所定指標値が所定の閾値を超えて変化していないと判定された場合(S112:NO)、監視部120は、所定時間待機し(例えば1日待機し)、S111の処理を繰り返す。一方で、上記所定指標値が所定の閾値を超えて変化したと判定された場合(S112:YES)、S121の処理に進む。
【0098】
本実施形態では、上記所定指標値が所定の閾値を超えて変化したと判定された場合(S112:YES)、モデル再同定および制御パラメータの再設定の処理が行われる。例えば、情報取得部110は、対象プラントである燃焼設備1に関する種々のデータを取得する(S121)。例えば、情報取得部110は、放射温度センサ81の検出結果およびガスセンサ83の検出結果などを取得する。そして、情報取得部110は、例えば各検出値に対して時間遅れまたは時間進みに応じた補正を行うことで、必要な検出値を取得する。
【0099】
次に、モデル同定部130のパレート解生成部131は、S121の処理で情報取得部110により取得された検出値と、プラントモデルMを用いて計算により導出される計算値とに基づき、例えばCO発生量、NOx発生量、IR温度、およびO濃度に関する上記検出値と上記計算値との誤差最小化を目的関数として、プラントモデルMを規定する1つ以上のモデルパラメータに関する複数のパレート解を生成する(S131)。
【0100】
次に、モデル同定部130の選好解決定部132は、パレート解生成部131により生成されたモデルパラメータに関する複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解(最適なモデルパラメータセット)を決定する(S132)。これにより、プラントモデルMが同定される。
【0101】
次に、制御パラメータ決定部140のパレート解生成部141は、モデル同定部130により同定されたプラントモデルMに基づき、例えばCO発生量、NOx発生量、IR温度変動、およびO濃度変動に関する計算値が最小となる制御パラメータに関する複数のパレート解を生成する(S141)。
【0102】
次に、制御パラメータ決定部140の選好解決定部142は、パレート解生成部141により生成された制御パラメータに関する複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解(最適な制御パラメータ)を決定する(S142)。本実施形態では、選好解決定部142燃焼設備1の運転状況ごとに1つ以上の選好解を決定することで得られた複数の選好解(制御パラメータS1,S2,S3)に基づき、制御パラメータセットを導出する(S143)。
【0103】
次に、制御部150は、制御パラメータ決定部140により決定された1つ以上の選好解に基づき(例えば、導出された制御パラメータセットに基づき)、燃焼設備1に関する燃焼制御を行う(S151)。そして、所定期間(例えば1日)が経過すると、S111の処理に戻り、S111からの一連の処理が繰り返される。
【0104】
<6.作用効果>
燃焼設備1は、例えば、燃焼設備1ごとの固有の特性、および/または、季節による燃料性状の変化などに対応するため、制御パラメータの最適化が必要になる。しかしながら、最適な制御パラメータの決定には、プラントモデル同定や多数目的のトレードオフとなるパレート解からの解の選択が必要になり、完全自動化が難しい。
【0105】
一方で、本実施形態では、制御装置100は、プラントモデルMに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、燃焼設備1の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部141と、パレート解生成部141により生成された複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部142とを有する。このような構成によれば、燃焼設備1の制御パラメータを制御装置100により適切に決定することができ、燃焼設備1の運転の自動化を進めることができる。
【0106】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態は、プラントモデルMに関する応答曲面が生成され、生成された応答曲面に基づいて最適化計算が行われる点で、第1実施形態とは異なる。なお以下に説明する以外の構成は、第1実施形態の構成と同じである。
【0107】
図17は、第2実施形態の焼却設備1の機能構成を示すブロック図である。本実施形態では、制御装置100は、応答曲面生成部170を有する。応答曲面生成部170は、応答曲面作成法(例えば線形補完法)を用いて、プラントモデルMに関する応答曲面を生成する。例えば、応答曲面生成部170は、プラントモデルMに関する対象パラメータ(モデルパラメータ)を変化させることで、プラントモデルMに関する応答曲面を生成する。
【0108】
図18は、第2実施形態の情報処理の流れを示すフローチャートである。本実施形態では、応答曲面生成部170により応答曲面の生成が行われる(S161)。そして、モデル同定部130のパレート解生成部131は、応答曲面生成部170により生成された応答曲面に基づき最適化計算を行う(S131)。
【0109】
このような構成によれば、第1実施形態と同様に、燃焼設備1の制御パラメータを制御装置100により適切に決定することができ、燃焼設備1の運転の自動化を進めることができる。また本実施形態のように応答曲面を生成することで、モデル同定部130による最適化計算の計算時間を短くすることができ、燃焼状態に応じて迅速に最適な制御パラメータを導出することができる。なお、応答曲面作成手法は、線形補間法に限定されず、クリギング法などが用いられてもよい。
【0110】
(その他の実施形態)
以上、本開示の実施形態について説明したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更なども含まれる。
【0111】
図15は、実施形態に係るコンピュータ1100の構成を示すハードウェア構成図である。コンピュータ1100は、例えば、プロセッサ1110、メインメモリ1120、ストレージ1130、インターフェース1140を備える。
【0112】
上述の制御装置100の各機能部は、コンピュータ1100に実装される。そして、上述した各機能部の動作は、プログラムの形式でストレージ1130に記憶されている。プロセッサ1110は、プログラムをストレージ1130から読み出してメインメモリ1120に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ1110は、プログラムに従って、上述した各機能部が使用する記憶領域をメインメモリ1120に確保する。
【0113】
プログラムは、コンピュータ1100に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。また、コンピュータ1100は、上記構成に加えて、又は上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。この場合、プロセッサ1110によって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0114】
ストレージ1130の例としては、磁気ディスク、光磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。ストレージ1130は、コンピュータ1100のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インターフェース1140又は通信回線を介してコンピュータ1100に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ1100に配信される場合、配信を受けたコンピュータ1100が当該プログラムをメインメモリ1120に展開し、上記処理を実行してもよい。また、当該プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、当該プログラムは、前述した機能をストレージ1130に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせで実現するもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0115】
<付記>
各実施形態に記載の燃焼設備用システムおよび情報処理方法は、例えば以下のように把握される。
【0116】
(1)第1態様の燃焼設備用システム(例えば制御装置100)は、燃焼設備1に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、燃焼設備1の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部141と、パレート解生成部141により生成された複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部142と、を備える。このような構成によれば、制御装置100によって燃焼設備1の制御パラメータを適切に決定することができ、燃焼設備1の運転の自動化を進めることができる。
【0117】
(2)第2態様の燃焼設備用システムは、(1)に記載の燃焼設備用システムにおいて、前記複数の指標は、一酸化炭素発生量、窒素酸化物発生量、酸素濃度変動、ガス温度変動、または蒸気流量変動のうち2つ以上に関する指標である。このような構成によれば、排ガスに含まれる成分または蒸気流量などに基づいて、燃焼設備1の制御パラメータを適切に決定することができる。
【0118】
(3)第3態様の燃焼設備用システムは、(1)または(2)に記載の燃焼設備用システムにおいて、上記制御パラメータは、被焼却物の含有水分、被焼却物のカロリー、被焼却物の供給量、被焼却物の搬送速度、燃焼空気の流量、燃焼空気の配分量、または燃焼空気の温度に関する1つ以上の制御パラメータである。このような構成によれば、燃焼設備1の制御パラメータとして、被焼却物の含有水分、被焼却物のカロリー、被焼却物の供給量、被焼却物の搬送速度、燃焼空気の流量、燃焼空気の配分量、または燃焼空気の温度を適切に調整することができる。これにより、燃焼設備1に関する制御の自動化を進めることができる。
【0119】
(4)第4態様の燃焼設備用システムは、(1)から(3)のうちいずれか1つに記載の燃焼設備用システムにおいて、選好解決定部142は、前記複数の指標に含まれる第1指標に関する値が所定の閾値以上である運転状況と、前記第1指標に関する値が前記閾値未満である運転状況とについて、それぞれ前記選好解を決定する。このような構成によれば、複数の運転状況に応じて、運転状況ごとに適した制御パラメータを適切に決定することができる。
【0120】
(5)第5態様の燃焼設備用システムは、(1)から(4)のいずれか1つに記載の燃焼設備用システムにおいて、季節変動に関する所定指標値を監視する監視部120と、監視部120により監視された上記所定指標値が閾値を超えて変化した場合に、上記モデルを同定し直すモデル同定部130とをさらに備える。このような構成によれば、外部環境に応じたモデルを用いて制御パラメータを適切に決定することができる。
【0121】
(6)第6態様の情報処理方法は、1つ以上のコンピュータが、燃焼設備1に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、燃焼設備1の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成し、生成した複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、上記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する、ことを含む。このような構成によれば、燃焼設備1の制御パラメータを適切に決定することができ、燃焼設備1の運転の自動化を進めることができる。
【符号の説明】
【0122】
1…燃焼設備
2…焼却炉
21…ホッパ
22…フィーダ
23…押出装置
24…水分計測器
30…炉本体
40…ストーカ
50…風箱
60…火炉
70…送風機構
71…送風機
73…空気予熱器
75…ダンパ
81…放射温度センサ
82…蒸気流量センサ
83…ガスセンサ
100…制御装置
110…情報取得部
120…監視部
130…モデル同定部
131…パレート解生成部
132…選好解決定部
140…制御パラメータ決定部
141…パレート解生成部
142…選好解決定部
150…制御部
170…応答曲面生成部
G…被焼却物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
【手続補正書】
【提出日】2023-10-10
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部と、
前記パレート解生成部により生成された前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部と、
を備え、
前記複数の指標は、第1指標と、前記第1指標とは異なる第2指標とを含み、
前記選好解決定部は、前記第2指標よりも前記第1指標を優先する第1運転状況と、前記第1指標よりも前記第2指標を優先する第2運転状況とにおいて、前記階層分析法における前記第1指標と前記第2指標との一対比較における優先度を異ならせ、前記第1運転状況と前記第2運転状況とについてそれぞれ前記選好解を決定する、
焼設備用システム。
【請求項2】
前記複数の指標は、一酸化炭素発生量、窒素酸化物発生量、酸素濃度変動、ガス温度変動、または蒸気流量変動のうち2つ以上に関する指標である、
請求項1に記載の燃焼設備用システム。
【請求項3】
前記制御パラメータは、被焼却物の含有水分、前記被焼却物のカロリー、前記被焼却物の供給量、前記被焼却物の搬送速度、燃焼空気の流量、前記燃焼空気の配分量、または前記燃焼空気の温度に関する1つ以上の制御パラメータである、
請求項1または請求項2に記載の燃焼設備用システム。
【請求項4】
季節変動に関する所定指標値を監視する監視部と、
前記監視部により監視された前記所定指標値が閾値を超えて変化した場合に、前記モデルを同定し直すモデル同定部と、
をさらに備えた、
請求項1または請求項2に記載の燃焼設備用システム。
【請求項5】
1つ以上のコンピュータが、
燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成し、
生成した前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する、
ことを含み、
前記複数の指標は、第1指標と、前記第1指標とは異なる第2指標とを含み、
前記選好解を決定することは、前記第2指標よりも前記第1指標を優先する第1運転状況と、前記第1指標よりも前記第2指標を優先する第2運転状況とにおいて、前記階層分析法における前記第1指標と前記第2指標との一対比較における優先度を異ならせ、前記第1運転状況と前記第2運転状況とについてそれぞれ前記選好解を決定することを含む、
報処理方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0006】
上記課題を解決するために、本開示に係る燃焼設備用システムは、燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成するパレート解生成部と、前記パレート解生成部により生成された前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する選好解決定部と、を備える。前記複数の指標は、第1指標と、前記第1指標とは異なる第2指標とを含む。前記選好解決定部は、前記第2指標よりも前記第1指標を優先する第1運転状況と、前記第1指標よりも前記第2指標を優先する第2運転状況とにおいて、前記階層分析法における前記第1指標と前記第2指標との一対比較における優先度を異ならせ、前記第1運転状況と前記第2運転状況とについてそれぞれ前記選好解を決定する。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る情報処理方法は、1つ以上のコンピュータが、燃焼設備に関するモデルに基づき、燃焼状態に関する複数の指標を目的関数として、前記燃焼設備の制御パラメータに関する複数のパレート解を生成し、生成した前記複数のパレート解に対して階層分析法を用いることで、前記複数のパレート解のなかから1つ以上の選好解を決定する、ことを含む。前記複数の指標は、第1指標と、前記第1指標とは異なる第2指標とを含む。前記選好解を決定することは、前記第2指標よりも前記第1指標を優先する第1運転状況と、前記第1指標よりも前記第2指標を優先する第2運転状況とにおいて、前記階層分析法における前記第1指標と前記第2指標との一対比較における優先度を異ならせ、前記第1運転状況と前記第2運転状況とについてそれぞれ前記選好解を決定することを含む。