(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173281
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】冷却システム、冷却方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
F25B 1/00 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
F25B1/00 381J
F25B1/00 304H
F25B1/00 399Y
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091604
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】兼子 泰明
(72)【発明者】
【氏名】上藤 陽一
(72)【発明者】
【氏名】原 伸英
(57)【要約】
【課題】外気の温度が低下した場合であっても、結露を発生させることなく、所望の温度で、蒸発器において冷媒を蒸発させる。
【解決手段】蒸発器から流出する冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機が圧縮する冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮される冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁が減圧する冷媒を蒸発させて熱交換させる前記蒸発器と、を有する冷媒回路と、前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるポンプと、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出する検出装置と、前記検出装置が検出する前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節する制御装置と、を備える冷却システム。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蒸発器から流出する冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機が圧縮する冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器によって凝縮される冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁が減圧する冷媒を蒸発させて熱交換させる前記蒸発器と、を有する冷媒回路と、
前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるポンプと、
前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出する検出装置と、
前記検出装置が検出する前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節する制御装置と、
を備える冷却システム。
【請求項2】
前記膨張弁の開度に対して、前記膨張弁の調節の限界を示す閾値が予め定められており、
前記制御装置は、
前記膨張弁の開度と、前記閾値とに基づいて、前記膨張弁の開度の調節が限界になっているか否かを判定する、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項3】
前記閾値は、前記膨張弁の開度の最大開度である、
請求項2に記載の冷却システム。
【請求項4】
前記検出装置は、
前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記蒸発器と前記圧縮機の間に存在する前記冷媒の温度と、圧力とを検出し、
前記制御装置は、
前記冷媒の圧力から飽和温度を算出し、
前記冷媒の温度から、算出した前記飽和温度を減算して過熱度を算出し、算出した過熱度を制御量とする、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項5】
前記検出装置は、
前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記蒸発器と前記圧縮機の間に存在する前記冷媒の圧力を検出し、
前記制御装置は、
前記冷媒の圧力から飽和温度を算出し、算出した飽和温度を制御量とする、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項6】
前記検出装置は、
前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記蒸発器と前記圧縮機の間に存在する前記冷媒の第1温度と、前記膨張弁の下流から前記蒸発器の中間部までの間に存在する前記冷媒の第2温度とを検出し、
前記制御装置は、
前記第1温度から前記第2温度を減算して過熱度を算出し、算出した過熱度を制御量とする、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項7】
前記検出装置は、
前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記膨張弁の下流から前記蒸発器の中間部までの間に存在する前記冷媒の飽和温度を検出し、
前記制御装置は、
前記飽和温度を制御量とする、
請求項1に記載の冷却システム。
【請求項8】
圧縮機が、蒸発器から流出する冷媒を圧縮するステップと、
凝縮器が、前記圧縮機が圧縮した冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させるステップと、
膨張弁が、前記凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧するステップと、
前記蒸発器が、前記膨張弁が減圧した冷媒を蒸発させて熱交換させるステップと、
ポンプが、前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるステップと、
検出装置が、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出するステップと、
制御装置が、前記検出装置が検出した前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節するステップと、
を含む冷却方法。
【請求項9】
蒸発器から流出する冷媒を圧縮する圧縮機と、
前記圧縮機が圧縮する冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させる凝縮器と、
前記凝縮器によって凝縮される冷媒を減圧する膨張弁と、
前記膨張弁が減圧する冷媒を蒸発させて熱交換させる前記蒸発器と、を有する冷媒回路と、
前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるポンプと、
前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出する検出装置と、を備える冷却システムに、更に備えられる制御装置として機能するコンピュータに、
前記検出装置が検出した前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節する手順、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、冷却システム、冷却方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、及び特許文献2に開示される圧縮機サイクルのような仕組みで、冷却を行うシステム(以下、冷却システムという)が知られている。このような冷却システムでは、冷媒を蒸発器によって蒸発させて、室内の空気との間で熱交換が行われる。これにより、室内の空気の冷却が行われる。その後、蒸発器から流出した冷媒は、圧縮機によって圧縮されることにより昇圧され、昇圧された冷媒は、凝縮器によって凝縮される。凝縮された冷媒は、膨張弁によって所望の温度で蒸発器において蒸発する状態になるまで減圧される。減圧された冷媒は、再び蒸発器において蒸発するということが繰り返し行われる。このように、圧縮機と膨張弁によって冷媒の圧力を変化させて冷却する方式は、直接膨張方式(以下、直膨式という)と呼ばれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6509047号公報
【特許文献2】特許第6566705号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した冷却システムにおいて用いられる凝縮器として、水冷によって冷媒を凝縮させる凝縮器がある。この凝縮器の場合、冷媒は、循環して流れる冷却水との間で熱交換されて凝縮する。循環して流れる冷却水は、外気によって冷却されるため、外気が低くなると、冷却水の温度は、外気の低下に伴って低下する。冷却水の温度が低下すると、凝縮器内の冷媒の温度も低下し、それによって凝縮器において冷媒の圧力が低下する現象が生じる。
【0005】
冷媒の圧力が、凝縮器において低下すると、膨張弁による減圧の幅が小さくなる。減圧幅が小さくなるということは、膨張弁において調節可能な圧力の範囲が狭くなることを意味する。そのため、減圧幅が小さくなると、膨張弁の開度を最大にしても、所望の温度で冷媒を蒸発器において蒸発させることができなくなる場合がある。
【0006】
この場合に、冷媒が蒸発器において蒸発する温度が、露点温度以下まで低下すると、蒸発器において結露が発生するという課題が生じる。蒸発器において結露が発生すると、例えば、ファンなどによって蒸発器に送り込まれる空気によって、結露が飛散して、水飛びが発生したりする。冷却システムが、例えば、データセンタのサーバラックの冷却や、電子回路の半導体素子の冷却のために用いられる場合、この水飛びのために、サーバラックに備え付けられているサーバ装置や、電子回路においてショート等が発生しないように、防水加工を行ったり、蒸発器の設置位置に制約を設けたりする必要があった。
【0007】
本開示は、上記課題を解決するためになされたものであって、外気の温度が低下した場合であっても、結露を発生させることなく、所望の温度で、蒸発器において冷媒を蒸発させることを可能にする冷却システム、冷却方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するために、本開示に係る冷却システムは、蒸発器から流出する冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機が圧縮する冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮される冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁が減圧する冷媒を蒸発させて熱交換させる前記蒸発器と、を有する冷媒回路と、前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるポンプと、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出する検出装置と、前記検出装置が検出する前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節する制御装置と、を備える。
【0009】
本開示に係る冷却方法は、圧縮機が、蒸発器から流出する冷媒を圧縮するステップと、
凝縮器が、前記圧縮機が圧縮した冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させるステップと、膨張弁が、前記凝縮器によって凝縮された冷媒を減圧するステップと、前記蒸発器が、前記膨張弁が減圧した冷媒を蒸発させて熱交換させるステップと、ポンプが、前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるステップと、検出装置が、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出するステップと、制御装置が、前記検出装置が検出した前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節するステップと、を含む。
【0010】
本開示に係るプログラムは、蒸発器から流出する冷媒を圧縮する圧縮機と、前記圧縮機が圧縮する冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させる凝縮器と、前記凝縮器によって凝縮される冷媒を減圧する膨張弁と、前記膨張弁が減圧する冷媒を蒸発させて熱交換させる前記蒸発器と、を有する冷媒回路と、前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるポンプと、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出する検出装置と、を備える冷却システムに、更に備えられる制御装置として機能するコンピュータに、前記検出装置が検出した前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節する手順、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0011】
本開示の冷却システム、冷却方法、及びプログラムによれば、外気の温度が低下した場合であっても、結露を発生させることなく、所望の温度で、蒸発器において冷媒を蒸発させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る冷却システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る蒸発器の設置例を示す図である。
【
図3】一般的な冷却システムにおける冷却水入口温度に対する、冷媒の飽和温度、過熱度、及び単位時間当たりの冷却水流量の変化を示すグラフである。
【
図4】本開示の実施形態に係る制御装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本開示の実施形態に係る冷却システムにおける冷却水入口温度に対する、冷媒の飽和温度、過熱度、及び単位時間当たりの冷却水流量の変化を示すグラフである。
【
図6】本開示の他の実施形態に係る冷却システムの構成例を示す概略ブロック図である。
【
図7】本開示の実施形態における直膨運転とフリークーリング運転の各々のモリエル線図の一例を示す図である。
【
図8】本開示の実施形態における冷却能力と、冷却水の水温と、直膨運転と、フリークーリング運転との関係を示すグラフである。
【
図9】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示に係る冷却システム、冷却方法、及びプログラムについて、
図1、
図2、
図4~
図9を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る冷却システム1の構成例を示す概略ブロック図である。
図2は、本開示の実施形態に係る蒸発器11の設置例を示す図である。
図4は、本開示の実施形態に係る制御装置5による処理の流れを示すフローチャートである。
図5は、本開示の実施形態に係る冷却システム1における冷却水入口温度に対する、冷媒の飽和温度、過熱度、及び単位時間当たりの冷却水流量の変化を示すグラフである。
図6は、本開示の他の実施形態に係る冷却システム1aの構成例を示す概略ブロック図である。
図7は、本開示の実施形態における直膨運転とフリークーリング運転の各々のモリエル線図の一例を示す図である。
図8は、本開示の実施形態における冷却能力と、冷却水の水温と、直膨運転と、フリークーリング運転との関係を示すグラフである。
図9は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0014】
(冷却システムの構成例)
図1に示すように、冷却システム1は、冷媒が循環して流れる系統となる冷媒回路2と、冷媒を冷却する冷却水が流れる系統となる冷却水回路3と、制御装置5と、検出装置40とを備える。冷媒回路2は、蒸発器11、アキュムレータ12、圧縮機13、凝縮器14、レシーバ15、膨張弁16、及びポンプ17を備える。冷却水回路3は、ポンプ21、及び冷却塔22を備える。なお、凝縮器14は、内部を流れる冷却水によって、内部を流れる冷媒を冷却するため、冷却水回路3を構成する構成要素の1つでもある。
【0015】
冷媒回路2は、更に、配管101~112と、後述するフリークーリング運転の際に用いられる配管121~124を備え、加えて、直膨式の運転(以下、直膨運転という)と、フリークーリング運転との切り替えに用いられる三方弁31~36を備える。三方弁31~36の各々は、1つの流入口から流入する冷媒を、2つの流出口の何れか一方から流出するように、流路の切り替えが可能になっている。
【0016】
直膨運転の際に、冷媒が流れる経路は、太線の実線で示す経路、すなわち蒸発器11、アキュムレータ12、圧縮機13、凝縮器14、レシーバ15、膨張弁16を経由する経路になり、当該経路において、太線の実線の矢印で示す向きに冷媒が循環する。フリークーリング運転の際には、以下のように、三方弁31~36が切り替えられる。三方弁31,32を切り替えることにより、配管102、アキュムレータ12、配管103、圧縮機13、配管104を経由する経路が、配管121を経由する太線の点線で示す経路に切り替わる。三方弁33,34を切り替えることにより、配管108を経由する経路が、配管122、ポンプ17、配管123を経由する太線の点線で示す経路に切り替わる。三方弁35,36を切り替えることにより、配管110、膨張弁16、配管111を経由する経路が、配管124を経由する太線の点線で示す経路に切り替わる。すなわち、フリークーリング運転の際に、冷媒が流れる経路は、アキュムレータ12、圧縮機13、膨張弁16を迂回する経路であって、蒸発器11、凝縮器14、レシーバ15、ポンプ17を経由する経路になり、当該経路において、太線の実線の矢印、及び太線の点線の矢印で示す向きに冷媒が循環する。
【0017】
蒸発器11は、熱交換器であり、配管112から冷媒が流入し、配管101に冷媒を流出する。蒸発器11は、例えば、
図2に示すように、平面形状になっており、データセンタの室内に設置されるサーバラック61のリアドア側に設置される。蒸発器11のサーバラック61のリアドア側に対向する面とは、逆の面側に、送風機62が設置される。送風機62による送風によって、サーバラック61の開口部から空気がサーバラック61の内部に流入し、サーバラック61内に流入した空気が、サーバラック61内に設置されたサーバ装置等を冷却する。サーバ装置等を冷却することによって温かくなった空気は、蒸発器11を通過することにより、蒸発器11において蒸発する冷媒との間で熱交換が行われて、冷却される。蒸発器11によって冷却された空気は、送風機62を介して、データセンタの室内に流出する。これにより、サーバ装置等から生じる熱によるデータセンタの室内の温度の上昇が抑えられる。
【0018】
アキュムレータ12は、配管102から冷媒が流入し、配管103に冷媒を流出する。アキュムレータ12は、蒸発器11から流出する気液二相の冷媒を、気液分離し、分離した気体の冷媒を流出する。圧縮機13は、例えば、回転数によって加える圧力が調節可能になっており、配管103を介して、アキュムレータ12から流出する気体の冷媒を吸入し、吸入した冷媒を圧縮して昇圧し、昇圧した冷媒を配管104に吐出する。凝縮器14は、熱交換器であり、配管105から冷媒が流入し、配管106に冷媒を流出する。凝縮器14は、配管105から流入する冷媒を、内部を流れる冷却水との間で熱交換させることにより凝縮させる。
【0019】
レシーバ15は、配管106から冷媒が流入し、配管107に冷媒を流出する。レシーバ15は、凝縮器14によって凝縮されて液体になった気体と、凝縮されずに気体の状態で留まっている冷媒を分離する。レシーバ15は、分離した液体の冷媒からフィルタ等によって水分等の不純物を除去し、余剰分の液体の冷媒を貯留しつつ、必要分の液体の冷媒を流出する。
【0020】
膨張弁16は、流入する冷媒を減圧する弁であり、配管110から冷媒が流入し、配管111に冷媒を流出する。膨張弁16は、例えば、電子膨張弁であり、開度が変更可能になっており、開度が変わることにより、減圧量が変化する。なお、膨張弁16の開度が小さいほど、減圧量が大きくなり、逆に、開度が大きいほど、減圧量が小さくなる。ポンプ17は、例えば、回転数によって吐出量が調節可能になっており、配管122を介して、レシーバ15から流出する冷媒を吸入し、吸入した冷媒を配管123に吐出する。
【0021】
冷却水回路3は、更に、配管131~133を備える。冷却水回路3において、冷却水が流れる経路は、太線の破線で示す経路、すなわち冷却塔22、凝縮器14、ポンプ21を経由する経路になり、太線の破線の矢印で示す向きに冷却水が循環する。
【0022】
冷却塔22は、配管131から冷却水が流入し、配管132に冷却水を流出する。冷却塔22は、内部にファンを備えており、ファンの回転数によって、外部から取り込む外気の量が調節可能になっている。冷却塔22は、取り込んだ外気を用いて、配管131から流入する冷却水を冷却する。凝縮器14は、配管132から冷却水が流入し、配管133に冷却水を流出する。ポンプ21は、例えば、回転数によって吐出量が調節可能になっており、配管133を介して、凝縮器14から流出する冷却水を吸入し、配管131に冷却水を吐出する。
【0023】
検出装置40は、蒸発器11において冷媒が蒸発する温度である蒸発温度、すなわち蒸発器11における冷媒の飽和温度に関連する検出値を検出する。検出装置40は、温度センサ41と、圧力センサ42とを備える。温度センサ41は、配管101内の冷媒の温度を検出する。圧力センサ42は、配管101内の冷媒の圧力を検出する。したがって、この場合、検出装置40が検出する冷媒の蒸発温度に関連する検出値とは、配管101内の冷媒の温度、及び圧力の値になる。
【0024】
制御装置5は、冷媒回路2及び冷却水回路3を制御する。
図1では、一例として、制御装置5に接続する制御線として、膨張弁16、ポンプ21、温度センサ41、及び圧力センサ42の各々と、制御装置5とを接続する制御線を示している。これに加えて、
図1には図示していないが、冷却システム1には、圧縮機13、ポンプ17、及び三方弁31~36の各々と、制御装置5とを接続する制御線が存在する。
【0025】
制御装置5は、検出装置40が検出して制御線に出力する検出値を取り込む。なお、
図1には図示していないが、冷媒回路2、及び冷却水回路3には、温度センサ41、及び圧力センサ42以外に様々なセンサが設置されている。制御装置5は、図示していない様々なセンサと制御線を介して接続しており、これらの様々なセンサが検出する検出値も取得する。制御装置5は、取得した検出値に基づいて、例えば、冷却システム1において、直膨運転が行われている場合、直膨運転に対応するフィードバック制御を行い、当該フィードバック制御により算出した各種の指令値を、指令値の各々に対応する制御対象、すなわち膨張弁16、圧縮機13、ポンプ21に対して出力する。これに対して、冷却システム1において、フリークーリング運転が行われている場合、制御装置5は、フリークーリング運転に対応するフィードバック制御を行い、当該フィードバック制御により算出した各種の指令値を、指令値の各々に対応する制御対象、すなわちポンプ17、ポンプ21に対して出力する。なお、膨張弁16に対する指令値は、開度であり、圧縮機13、ポンプ17、及びポンプ21に対する指令値は、回転数である。
【0026】
(課題の具体例について)
ここで、
図1に示す冷却システム1の構成を一例として、上記した課題の具体例について説明する。一般的な冷却システムでは、制御装置5から冷却水回路3のポンプ21には、制御線が存在せず、ポンプ21は、自律して一定の回転数で動作する。
図3は、このような一般的な冷却システムにおける各種のパラメータの変化を示すグラフであり、
図3(a)~(c)において、横軸は、何れも凝縮器14における冷却水入口温度、すなわち凝縮器14と配管132とが接続する付近における配管132内の冷却水の温度である。横軸は、右方向に向かって温度が大きくなることを示している。
図3(a)の縦軸は、冷媒の飽和温度であり、上方向に向かって冷媒の飽和温度が大きくなることを示している。
図3(b)の縦軸は、過熱度であり、上方向に向かって過熱度が大きくなることを示している。
図3(c)の縦軸は、単位時間当たりの冷却水流量であり、上方向に向かって単位時間当たりの冷却水流量が大きくなることを示している。
【0027】
図3(c)のグラフにおいて、符号55で示す特性は、単位時間当たりの冷却水流量の変化を示す特性(以下、冷却水流量特性55という)である。上記したように、一般的な冷却システムでは、冷却水回路3のポンプ21は、一定の回転数で動作するため、冷却水流量特性55に示すように冷却水回路3の配管131~133を流れる単位時間当たりの冷却水流量は、冷却水入口温度の変化に関わらず一定になる。
【0028】
外気の温度が低下すると、それと共に冷却水入口温度も低下する。冷却水入口温度が低下すると、凝縮器14を流れる冷媒の温度が低下し、それにより、凝縮器14を流れる冷媒の圧力が低下する。冷媒の圧力が低下すると、冷媒の飽和温度は低下する。
図3(a)のグラフにおいて、符号51で示す特性は、膨張弁16の入口の冷媒の飽和温度の変化を示す特性(以下、飽和温度特性51という)である。ここで、膨張弁16の入口の冷媒の飽和温度とは、膨張弁16と配管110とが接続する付近における配管110内の冷媒の飽和温度である。符号52で示す特性は、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度の変化を示す特性(以下、飽和温度特性52という)である。ここで、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度とは、膨張弁16と配管111とが接続する付近における配管111内の冷媒の飽和温度である。
【0029】
なお、圧縮機13の出口から膨張弁16の入口に至る経路における冷媒の圧力は、配管104~110による圧力損失等によって若干の違いが生じるものの、ほぼ同一になるため、飽和温度特性51は、圧縮機13が吐出する冷媒の飽和温度の特性とみなすことができる。同様に、膨張弁16の出口から圧縮機13の入口に至る経路における冷媒の圧力は、配管112,101~103による圧力損失等によって若干の違いが生じるものの、ほぼ同一になるため、飽和温度特性52は、圧縮機13が吸入する冷媒の飽和温度の特性とみなすことができる。
【0030】
制御装置5は、蒸発器11における冷媒の蒸発温度が一定になるようにフィードバック制御を行うため、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度も一定になる。そのため、飽和温度特性52において、符号50で示すタイミング(以下、タイミング50という)より右側の部分では、冷媒の飽和温度が一定になる。これに対して、凝縮器14において冷媒の圧力が低下すると、膨張弁16における入口の冷媒の圧力は低下する。そのため、飽和温度特性51に示すように、膨張弁16における入口の冷媒の飽和温度は、冷却水入口温度が低下すると共に低くなる。
【0031】
同一の冷却水入口温度における飽和温度特性51と、飽和温度特性52との差は、膨張弁16による減圧によって生じている冷媒の飽和温度の差であり、この差が、間接的に、膨張弁16による減圧量を示すことになる。タイミング50の時点において、飽和温度特性51の値と、飽和温度特性52の値とが一致しており、このタイミング50において、膨張弁16の開度が最大になり、膨張弁16による減圧が行われず、膨張弁16の前後における冷媒の圧力に差が無くなる。したがって、冷却水入口温度が、タイミング50より左側の部分になると、タイミング50の時点で、膨張弁16の開度の調節が限界になっていることから、膨張弁16による減圧ができなくなり、飽和温度特性52は、飽和温度特性51と同様に、冷却水入口温度が低下すると共に減少する変化を示すことになる。その後、飽和温度特性52に示す膨張弁16における出口の冷媒の飽和温度が低下して、例えば、符号53で示す露点温度に到達すると、蒸発器11において冷媒は、露点温度で蒸発するため、蒸発器11において結露が発生する。
【0032】
(冷却システムの動作例)
図4を参照しつつ、冷却システム1の制御装置5による制御処理と、当該制御処理による冷却システム1の動作について説明する。なお、
図4に示す処理は、冷媒回路2が、直膨運転を行っている場合に、行われる処理である。
【0033】
温度センサ41と圧力センサ42の各々は、例えば、一定の間隔で、それぞれ配管101内の冷媒の温度と、圧力とを検出する。温度センサ41は、検出した温度の値を制御装置5に出力し、圧力センサ42は、検出した圧力の値を制御装置5に出力する。制御装置5は、温度センサ41が出力する温度の値と、圧力センサ42が出力する圧力の値とを取得する(S1)。
【0034】
制御装置5には、冷媒の圧力と、冷媒の飽和温度との関係を示す関数の演算を行う仕組みが組み込まれている。制御装置5は、取り込んだ圧力の値を、当該関数に代入して、冷媒の飽和温度を算出する。制御装置5は、取り込んだ温度の値、すなわち温度センサ41が検出した温度から、算出した冷媒の飽和温度を減算することにより得られる減算値を過熱度とする。制御装置5は、算出した過熱度を制御量とし、制御量が、過熱度に対して予め定められる目標値になるようにフィードバック制御を行う。ここで、過熱度に対して予め定められる目標値とは、例えば、以下のような値である。
図3(b)のグラフにおいて、符号54で示す特性は、過熱度の変化を示す特性(以下、過熱度特性54という)である。過熱度特性54において、タイミング50よりも右側の部分は、一定値を示しており、この一定値が、例えば、過熱度に対して予め定められる目標値になる。
【0035】
制御装置5は、制御量が、目標値に一致しているか否かを判定する(S3)。制御装置5は、制御量が、目標値に一致していると判定した場合(S3、Yes)、制御装置5は、温度センサ41が温度の値を出力し、圧力センサ42が圧力の値を出力するのを待機し、温度センサ41が温度の値を出力し、圧力センサ42が圧力の値を出力すると、再びS1の処理を行う。
【0036】
一方、制御装置5は、制御量が、目標値に一致していないと判定した場合(S3、No)、制御装置5は、制御量が、目標値を超過しているか否かを判定する(S4)。制御装置5は、制御量が、目標値を超過していないと判定したとする(S4、No)。この場合、制御量が、目標値未満になっており、過熱度が減少している状態、言い換えると、冷媒の圧力が高くなり、冷媒の飽和温度が上昇している状態になっている。そのため、制御装置5は、膨張弁16の開度を小さくして、膨張弁16の減圧量を増加させるフィードバック制御を行う。すなわち、制御装置5は、制御量と、目標値とに基づいて、制御量が目標値に近づくようにする膨張弁16の開度を示す指令値を算出し、算出した指令値を膨張弁16に出力する(S5)。膨張弁16は、制御装置5から指令値を受けると、指令値にしたがって、開度を小さくして、減圧量を増加させる。これにより、配管101内の冷媒の圧力は低くなり、冷媒の飽和温度は低下するため、過熱度が増加して、目標値に近づくことになる。
【0037】
一方、制御装置5は、制御量が、目標値を超過していると判定したとする(S4、Yes)。この場合、制御量が、目標値を超過しており、過熱度が増加している状態、言い換えると、冷媒の圧力が低くなり、冷媒の飽和温度が低下している状態になっている。制御装置5は、膨張弁16の開度の調節が限界になっているか否かを判定する(S6)。例えば、制御装置5は、膨張弁16に指令値を出力するごとに、内部の記憶領域に、直近で、膨張弁16に対して出力した指令値、すなわち、直近の膨張弁16の開度を示す情報を記録している。制御装置5は、直近の膨張弁16の開度が、予め定められる閾値未満であるか否かに基づいて、膨張弁16の開度の調節が限界になっているか否かを判定する。すなわち、制御装置5は、直近の膨張弁16の開度が、閾値未満である場合、膨張弁16の開度の調節が限界になっていないと判定し、直近の膨張弁16の開度が、閾値未満でない場合、膨張弁16の開度の調節が限界になっていると判定する。なお、ここでは、予め定められる閾値は、例えば、膨張弁16の最大開度であるとする。
【0038】
制御装置5は、膨張弁16の開度が限界になっていないと判定したとする(S6、No)。この場合、膨張弁16の開度を大きくする余地があるので、制御装置5は、膨張弁16の開度を大きくして、膨張弁16の減圧量を減少させるフィードバック制御を行う。すなわち、制御装置5は、制御量と、目標値とに基づいて、制御量が目標値に近づくようにする膨張弁16の開度を示す指令値を算出し、算出した指令値を、膨張弁16に出力する(S7)。膨張弁16は、制御装置5から指令値を受けると、指令値にしたがって、開度を大きくして、減圧量を減少させる。これにより、配管101内の冷媒の圧力は高くなり、冷媒の飽和温度は上昇するため、過熱度が減少して、目標値に近づくことになる。
【0039】
一方、制御装置5は、膨張弁16の開度が限界になっていると判定したとする(S6、Yes)。この場合、制御装置5は、膨張弁16の開度を、更に、大きくすることができない状態になる。この状態において、制御装置5が何も制御も行わない場合、
図3(b)の過熱度特性54のタイミング50より左側の部分に示すように、過熱度が、目標値よりも大きくなる。
【0040】
より詳細に説明すると、過熱度は、上記したように、蒸発器11の出口の冷媒の温度から、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度を減算して得られる値である。蒸発器11の出口の冷媒の温度は、蒸発器11が設置されている周辺の温度と、ほぼ同一になるため、ほぼ一定値になる。これに対して、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度は、蒸発器11の出口の冷媒の圧力が低下すると減少する。
図3(a)の飽和温度特性52に示されるように、タイミング50より左側の部分において、冷却水入口温度の低下に伴って、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度は低下する。上記したように、膨張弁16の出口から圧縮機13の入口に至る経路における冷媒の圧力は、ほぼ同一になる。そのため、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度が低下する場合、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度も低下する。そのため、ほぼ一定値である蒸発器11の出口の冷媒の温度から、タイミング50より左側の部分において減少傾向を示す蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度を減算するため、
図3(b)の過熱度特性54に示されるように、タイミング50より左側の部分において、過熱度が増加する。
【0041】
この増加した過熱度を目標値に近づけるために、本実施形態の制御装置5では、以下のような処理を行う。制御装置5は、膨張弁16の開度を維持した状態で、冷却水回路3のポンプ21の吐出量を減少させて、冷却水回路3を流れる単位時間当たりの冷却水流量を減少させるフィードバック制御を行う。より具体的には、制御装置5は、制御量と、目標値とに基づいて、制御量が目標値に近づくようにするポンプ21の回転数を示す指令値を算出し、算出した指令値をポンプ21に出力する(S8)。ポンプ21は、制御装置5から指令値を受けて回転数を減少させる。
【0042】
S5,S7,S8の処理の後、制御装置5は、温度センサ41が温度の値を出力し、圧力センサ42が圧力の値を出力するのを待機し、温度センサ41が温度の値を出力し、圧力センサ42が圧力の値を出力すると、再びS1の処理を行う。
【0043】
(作用・効果)
上記した実施形態によれば、冷却システム1において、
図4のS6の判定処理において制御装置5が、「Yes」の判定をする場合、言い換えると、冷却システム1において、凝縮器14に流入する冷却水の温度が低下して、凝縮器14によって凝縮される冷媒の圧力が低下し、膨張弁16の開度を最大開度にしたとしても、制御量である過熱度を、目標値に維持することができなくなる場合がある。この場合に、制御装置5は、フィードバック制御の制御対象を膨張弁16から冷却水回路3のポンプ21に変更し、ポンプ21の回転数を減少させる。これにより、ポンプ21の吐出量が減少するので、冷却水回路3を流れる単位時間当たりの冷却水流量が減少し、凝縮器14を流れる単位時間当たりの冷却水流量も減少する。凝縮器14を流れる冷却水の流量が減少すると、凝縮器14における冷媒の温度の低下が抑えられ、それに伴い、冷媒の圧力の低下も抑えられる。そのため、膨張弁16の前後の冷媒の圧力が上昇し、それに伴い、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度が上昇して、過熱度が減少することになる。言い換えると、制御装置5は、
図4のS6の判定処理において「Yes」の判定をする場合、S8の処理として、冷却水回路3を流れる単位時間当たりの冷却水流量が減少させて、凝縮器14による冷却の能力を意図的に低下させるようにしている。
【0044】
その結果、本実施形態の冷却システム1の場合、
図3(b)に示すタイミング50より左側の部分において過熱度が増加することなく、目標値に維持されるため、過熱度の変化は、
図3(b)の過熱度特性54に替えて、
図5(b)の過熱度特性54aが示す変化になる。同様に、膨張弁16の前後の冷媒の飽和温度の変化は、タイミング50より左側の部分において膨張弁16の前後の冷媒の飽和温度が低下して露点温度に至るのではなく、一定値に維持されるため、
図3(a)の飽和温度特性51,52に替えて、
図5(a)の飽和温度特性51a,52aが示す変化になる。なお、飽和温度特性51aが、膨張弁16の入口の冷媒の飽和温度に対応し、飽和温度特性52aが、膨張弁16の出口の冷媒の飽和温度に対応する。単位時間当たりの冷却水流量の変化は、タイミング50より左側の部分において単位時間当たりの冷却水の流量が減少するため、
図3(c)の冷却水流量特性55に替えて、
図5(c)の冷却水流量特性55aが示す変化になる。
【0045】
したがって、本実施形態の冷却システム1を用いることにより、外気の温度が低下した場合であっても、結露を発生させることなく、所望の温度で、蒸発器11において冷媒を蒸発させることができる。これにより、例えば、データセンタのサーバラックの冷却や、電子回路の半導体素子の冷却に対して、本実施形態の冷却システム1を用いれば、ショート等の発生を防ぐために、防水加工を行ったり、蒸発器11の設置位置に制約を設けたりする必要もなくなる。
【0046】
(冷却システムの他の構成例)
上記した実施形態では、制御装置5は、フィードバック制御における制御量を、過熱度としている。ところで、
図3(b)の過熱度特性54において、タイミング50より左側の部分において、過熱度が増加する理由は、
図3(a)の飽和温度特性52が示すように、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度が低下するためである。したがって、制御装置5は、フィードバック制御における制御量を、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度とし、目標値を、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値としてフィードバック制御を行ったとしても、制御量を過熱度とする場合と同様の効果が得られることになる。ここで、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値とは、例えば、
図3(a)の飽和温度特性52において、タイミング50よりも右側の部分に示される一定値である。
【0047】
この場合、冷却システム1の検出装置40は、温度センサ41を備える必要はなく、圧力センサ42のみを備えればよいことになる。したがって、この場合、検出装置40が検出する冷媒の蒸発温度に関連する検出値とは、配管101内の冷媒の圧力の値になる。制御装置5は、
図4のS1の処理において、圧力センサ42が出力する圧力の値を取得し、S2の処理において、過熱度を算出することに替えて、関数に圧力の値を代入して冷媒の飽和温度を算出して制御量とする。制御装置5は、S3,S4,S5,S7,S8の処理において、制御量を、冷媒の飽和温度とし、目標値を、蒸発器11の出口の冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値として、処理を行うことになる。
【0048】
上記した実施形態では、制御装置5は、フィードバック制御における制御量を、過熱度としている。ところで、一般的に、冷媒回路2において、膨張弁16の下流から蒸発器11の中間部までの範囲では、冷媒が気液二相の状態で存在する。そのため、当該範囲における冷媒の温度を過熱度の算出に用いる飽和温度とみなすことができる。したがって、例えば、
図6に示す冷却システム1aを用いて、制御量となる過熱度を算出するようにしてもよい。冷却システム1aにおいて、冷媒回路2aは、
図1の冷媒回路2において、検出装置40を検出装置40aに置き換え、制御装置5を制御装置5aに置き換えた構成を備える。検出装置40aは、温度センサ41と、温度センサ43とを備える。温度センサ43は、上記したように、膨張弁16の下流から蒸発器11の中間部までの範囲であれば、どの箇所の冷媒の温度を検出してもよいが、
図6では、配管112内の冷媒の温度を検出する一例を示している。制御装置5aは、圧力センサ42が検出する圧力から冷媒の飽和温度を算出することに替えて、温度センサ43が検出した温度を、冷媒の飽和温度とする他は、制御装置5と同一の構成を備える。すなわち、制御装置5aは、
図4のS1の処理において、温度センサ41と、温度センサ43とが出力する温度の値を取得し、S2の処理において、温度センサ41が検出した温度から、温度センサ43が検出した冷媒の飽和温度を減算することにより得られる減算値を過熱度とし、この過熱度を制御量としてS3以降の処理を行うことになる。
【0049】
図6に示す冷却システム1aの場合にも、温度センサ43が検出する飽和温度を制御量とし、目標値を、配管112内の冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値としてフィードバック制御を行ったとしても、制御量を過熱度とする場合と同様の効果が得られることになる。この場合、冷却システム1aの検出装置40aは、温度センサ41を備える必要はなく、温度センサ43のみを備えればよいことになる。したがって、この場合、検出装置40aが検出する冷媒の蒸発温度に関連する検出値とは、配管112内の冷媒の温度の値になる。制御装置5aは、
図4のS1の処理において、温度センサ43が出力する温度の値を取得し、S2の処理において、温度センサ43から取得した温度、すなわち冷媒の飽和温度を制御量とする。制御装置5aは、S3,S4,S5,S7,S8の処理において、制御量を、冷媒の飽和温度とし、目標値を、配管112内の冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値として、処理を行うことになる。
【0050】
(フリークーリング運転について)
図7(a)は、冷却システム1が、直膨運転を行う場合のモリエル線図(p-h(pressure-enthalpy)線図ともいう)であり、
図7(b)は、冷却システム1が、フリークーリング運転を行う場合のモリエル線図である。なお、
図7(a)と
図7(b)において、モリエル線図に対して、温度を示すグラフを重ねて示している。
図7(a)と
図7(b)において、横軸は、冷媒のエンタルピーであり、右方向に向かってエンタルピーが大きくなることを示している。左側の縦軸は、冷媒の圧力であり、上方向に向かって冷媒の圧力が大きくなることを示している。右側の縦軸は、温度であり、上方向に向かって温度が大きくなることを示している。符号78で示す曲線は、飽和液線であり、符号79で示す曲線は、飽和ガス線である。符号70で示す実線の線分は、蒸発器11が設置されているデータセンタの室内の温度を示しており、符号71で示す一点鎖線の線分は、外気の温度を示している。なお、
図7(a)と
図7(b)の両方において、符号70で示す実線の線分によって示される右側の軸の温度の値、すなわち蒸発器11が設置されているデータセンタの室内の温度の値は、一致しているものとする。
【0051】
図7(a)に示す符号70で示す実線の線分、及び符号71で示す一点鎖線の線分の位置から分かるように、
図7(a)は、データセンタの室内の温度よりも、外気の温度が高くなっている場合を示している。この場合、直膨運転が行われる。直膨運転が行われる場合、
図7(a)の矢印81で示すように、気体の冷媒は、圧縮機13による圧縮により昇圧されて高圧になる。高圧になった冷媒は、矢印82に示すように、凝縮器14において冷却水との間の熱交換により、凝縮して液体になる。高圧の液体の冷媒は、矢印83で示すように、膨張弁16によって減圧されて冷媒の飽和温度が低下し、矢印84で示すように、蒸発器11において蒸発して気体になる。したがって、直膨運転では、矢印81~84で示すサイクルで冷媒は変化する。
【0052】
図7(b)に示す符号70で示す実線の線分、及び符号71で示す一点鎖線の線分の位置から分かるように、
図7(b)は、データセンタの室内の温度よりも、外気の温度が低くなっている場合を示している。この場合、フリークーリング運転が行われる。フリークーリング運転が行われる場合、冷却水回路3を流れる冷却水の温度は、外気によって冷却されているため、蒸発器11が設置されるデータセンタの室内の温度よりも低くなる。そのため、蒸発器11から流出する気体の冷媒は、圧縮機13によって圧縮されなくても、凝縮器14によって冷却されるだけで、凝縮して液体になる。更に、膨張弁16によって減圧されなくても、蒸発器11において所望の温度で蒸発する。そのため、フリークーリング運転の場合に、冷媒が流れる経路上の配管101,121、105~107、122,123,109,124,112による圧力損失等を補償し、蒸発器11において冷媒が所望の温度で蒸発するようにするだけの圧力を、ポンプ17によって加えさせすれば、直膨運転の場合よりも、低消費電力で、データセンタの室内の温度上昇を抑えることが可能になる。
【0053】
フリークーリング運転の場合、矢印85で示すように、冷媒は、ポンプ17によって、昇圧された後、矢印86で示すように、蒸発器11において蒸発して気体になる。気体になった冷媒は、矢印87で示すように、凝縮器14において冷却水との間の熱交換によって、凝縮して液体になる。したがって、フリークーリング運転においては、矢印85~87で示すサイクルで冷媒は変化する。
【0054】
冷却システム1において、直膨運転と、フリークーリング運転との切り替えは、制御装置5によって行われる。冷却システム1は、図示しない冷却水の温度を検出する冷却水用温度センサを、例えば、凝縮器14と、配管132とが接続する付近に備えており、制御装置5は、冷却水用温度センサが、例えば、一定の間隔で検出する冷却水の温度を取得する。制御装置5は、冷却水用温度センサが検出する冷却水の温度と、冷却システム1に対して要求される冷却能力とに基づいて、直膨運転からフリークーリング運転への切り替えを行うか否かを判定する。制御装置5が、フリークーリング運転への切り替えを行うと判定した場合、三方弁31~36に対して切り替え用の指令値を出力して、冷媒回路2の経路を、上記したフリークーリング運転が行われる際の経路に切り替える。その上で、制御装置5は、直膨運転のフィードバック制御に替えて、フリークーリング運転のフィードバック制御を行う。
【0055】
フリークーリング運転の場合に、制御装置5が行うフィードバック制御は、直膨運転の場合と同様に、温度センサ41から取得する温度と、圧力センサ42から取得する圧力とに基づいて算出する過熱度を制御量とし、制御量を、過熱度に対して予め定められる目標値に維持する制御であってもよいし、圧力センサ42から取得する圧力に基づいて算出する冷媒の飽和温度を、冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値に維持する制御であってもよい。フリークーリング運転の場合に、制御装置5は、
図4のS8に示す処理に相当する処理、すなわち制御量が目標値になるように、ポンプ21の回転数を調節するフィードバック制御を行うようにしてもよいし、行わないようにしてもよい。ポンプ21の回転数を調節するフィードバック制御を行わない場合、例えば、制御装置5は、冷却水回路3のポンプ21に対して、フリークーリング運転に切り替える前の直膨運転の際のポンプ21の回転数を維持する指令値を出力するようにしてもよいし、直膨運転において
図4のS8の処理を行っている場合は、ポンプ21の回転数を、S8の処理を行う前のポンプ21の回転数に戻す指令値を出力するようにしてもよいし、ポンプ21の回転数を、予め定められる回転数にする指令値を出力するようにしてもよい。
【0056】
上記したように、直膨運転からフリークーリング運転への切り替えは、冷却水の温度と、冷却システム1に対して要求される冷却能力とに基づいて判定される。
図8は、冷却水の温度と、冷却能力と、直膨運転と、フリークーリング運転との関係を示すグラフの一例である。
図8において、横軸は、冷却能力であり、右方向に向かって冷却能力が大きくなることを示している。縦軸は、冷却水の温度であり、上方向に向かって冷却水の温度が大きくなることを示している。符号210で示す冷却能力の値が、冷却システム1に要求される最小の冷却能力を示す値であり、符号211で示す冷却能力の値が、冷却システム1に要求される最大の冷却能力を示す値である。
【0057】
この場合に、符号200で示す線が、直膨運転を行う必要がある領域と、フリークーリング運転を行うのが好ましい領域の境界線(以下、境界線200という)になる。境界線200よりも上の領域が、直膨運転を行う必要がある領域であり、境界線200よりも下の領域が、フリークーリング運転を行うのが好ましい領域である。フリークーリング運転を行うのが好ましい領域において、直膨運転が可能であれば、直膨運転が行われてもよい。上記した、
図4のS8の処理に示す冷却水回路3のポンプ21を制御対象とするフィードバック制御は、境界線200を超えて直膨運転の領域を拡張し、フリークーリング運転を行うのが好ましい領域において、直膨運転が可能な領域を増加させる処理ということもできる。
【0058】
直膨運転を行う必要がある領域と、フリークーリング運転を行うのが好ましい領域との関係が、
図8のようになっていることから、例えば、冷却システム1に対して要求される冷却能力は一定であるが、冷却水の温度が一定の範囲に留まらずに、境界線200にまたがって変化をしている状態になる可能性がある。この場合、制御装置5が、境界線200を基準にして、直膨運転と、フリークーリング運転との切り替えを判定すると、直膨運転と、フリークーリング運転とが頻繁に切り替わるという不安定な状態になる。
【0059】
そこで、例えば、制御装置5は、境界線200に基づいて、その時点で冷却システム1に対して要求されている冷却能力に対応する冷却水の温度を検出し、所定時間内の冷却水の温度の最大値が、検出した温度以下の温度になるという条件を満たすまで、直膨運転を行うようにする。上記したように、本実施形態の冷却システム1では、膨張弁16の開度が最大開度になっても、ポンプ21の回転数を減少させることができる間は、直膨運転を行うことができるようになっているので、上記の条件を満たす程度であれば、直膨運転を行うことが可能である。その上で、制御装置5は、当該条件を満たした場合に、直膨運転からフリークーリング運転に切り替える。このようにすれば、直膨運転と、フリークーリング運転とが頻繁に切り替わるという不安定な状態になることを軽減することができる。
【0060】
また、制御装置5が、境界線200を基準として、直膨運転からフリークーリング運転に切り替えた場合に、キャビテーション、脈動、及び冷媒回路内のヘッド差による逆流などによって、ポンプ17が、動作しない場合がある。このような場合でも、本実施形態の冷却システム1では、境界線200を超えて、直膨運転を行うことが可能になっているので、制御装置5は、フリークーリング運転に切り替えた後に、ポンプ17が動作しないことを検出した場合、再び、直膨運転に戻して運用を継続することができる。その上で、直膨運転での運用を行いつつ、冷却システム1の運用者が、ポンプ17が動作しなかった原因を調べるといったことが可能になる。
【0061】
なお、上記した、
図6に示す冷却システム1aに対して、上記した冷却システム1が行うフリークーリング運転をさせてもよい。この場合に、制御装置5aが行うフィードバック制御は、直膨運転の場合と同様に、制御装置5aが、温度センサ41から取得する温度と、温度センサ43から取得する飽和温度とに基づいて算出する過熱度を制御量とし、制御量を、過熱度に対して予め定められる目標値に維持する制御であってもよいし、温度センサ43から取得する冷媒の飽和温度を、冷媒の飽和温度に対して予め定められる目標値に維持する制御であってもよい。
【0062】
(その他の構成例)
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0063】
例えば、上記した実施形態では、冷却水回路3を流れるのは、水としているが、水以外の冷却用流体、すなわち不凍液などの冷却用の液体や冷媒であってもよい。
【0064】
上記の実施形態では、温度センサ41と、圧力センサ42とを配管101の内部の冷媒の状態を検出できるように設置しているが、温度センサ41と、圧力センサ42とを設置する位置は、配管101に限られず、蒸発器11の出口から、圧縮機13の入口までの間であれば、どの位置に設置するようにしてもよく、例えば、温度センサ41が、配管103に設置され、圧力センサ42が、配管101に設置されるなど、それぞれが異なる位置に設置されるようにしてもよい。
【0065】
なお、上記した過熱度は、温度センサ41が検出した配管101内の冷媒の温度から、圧力センサ42が検出した配管101内の冷媒の圧力から算出される冷媒の飽和温度を減算して得られる減算値であり、蒸発器11の出口における過熱度を示している。圧縮機13は、一般的に、蒸発器11と同じ室内に設置されることから、配管101,102,103を流れる冷媒の温度は、ほぼ同一になる。また、上記したように、膨張弁16の出口から圧縮機13の入口に至る経路における冷媒の圧力も、ほぼ同一になる。したがって、温度センサ41と、圧力センサ42とを設置する位置を、蒸発器11の出口から、圧縮機13の入口までの任意の位置にしたとしても、ほぼ同一の過熱度が得られることになる。
【0066】
上記の実施形態では、蒸発器11は、
図2に示すように、サーバラック61と、送風機62との間に設置される例を一例として示しているが、例えば、蒸発器11は、電子回路基盤上の半導体素子に備えられる程度の大きさの蒸発器11であって、半導体素子の冷却に用いられる蒸発器11であってもよい。
【0067】
上記の実施形態において、制御装置5のフィードバック制御の制御対象として、冷却塔22のファンが含まれていてもよい。この場合、制御装置5は、例えば、凝縮器14の入口の冷却水の温度を、予め定められる目標値にする冷却塔22のファンの回転数を算出し、算出した回転数を指令値として、冷却塔22のファンに対して出力することになる。また、上記の実施形態において、冷却水を冷却する冷却機器は、冷却塔22に限られず、冷却塔22以外の冷却水を冷却する冷却機器を備えるようにしてもよいし、配管131と、配管132との間に、冷却水を貯留する貯留タンク等を挿入し、貯留タンク等において冷却水が外気と接触するようにして、外気によって自然に冷却水が冷却されるようにしてもよい。
【0068】
上記の実施形態において、冷媒回路2は、直膨運転と、フリークーリング運転とを切り替えて行うことができる構成になっているが、直膨運転のみを行う構成になっていてもよい。すなわち、冷媒回路2は、三方弁31~36、配管121~124、及びポンプ17を備えず、三方弁31~36の各々の箇所が、各々に接続する2つの配管を直結する構成、例えば、三方弁31の場合、配管101と、配管102とが直結する構成になっていてもよい。また、冷媒回路2は、アキュムレータ12、及びレシーバ15の両方、または、何れか一方を備えない構成であってもよい。
【0069】
上記の実施形態では、
図4のS6の処理において、膨張弁16の開度に対して、予め定められる閾値に基づいて、膨張弁16の開度の調節が限界になっているか否かを判定するようにしている。これに対して、例えば、膨張弁16の入口、及び出口の各々の冷媒の圧力を検出する2つの圧力センサを備え、制御装置5が、2つの圧力センサの各々が検出する圧力の値が一致したと判定した場合、または、2つの圧力センサの各々が検出する圧力の値の差が、予め定められる所定値未満、または、以下になったと判定した場合に、膨張弁16の開度の調節が、限界になったと判定するようにしてもよい。
【0070】
上記の実施形態では、
図4のS6の処理における閾値を、例えば、膨張弁16の最大開度としている。これに対して、閾値を、膨張弁16の最大開度よりも少し小さい開度としてもよい。例えば、制御装置5が、S6の処理において「No」の判定をして、S7の処理を行った結果、当該S7の処理によって、膨張弁16の開度を最大開度にしても、制御量が目標値にならないような状態になることも想定される。このような状態を回避するためには、S7の処理における膨張弁16の開度の調節量に余裕を与える必要があり、そのために、閾値を膨張弁16の最大開度よりも少し小さい開度としてもよい。この場合、S6の処理において、膨張弁16の開度が、最大開度になっていない場合でも、制御装置5は、閾値未満でなくなれば、膨張弁16の開度の調節が限界になったと判定することになる。なお、制御装置5は、S6の処理において、例えば、膨張弁16の開度が、閾値未満であるか否かという処理を行っているが、設定する閾値によっては、膨張弁16の開度が、閾値以下であるか否かという判定をするようにしてもよい。
【0071】
上記の実施形態では、制御装置5は、ポンプ21に対する指令値として、ポンプ21の回転数を適用し、回転数によってポンプ21の吐出量を調節するようにしている。これに対して、ポンプ21の種類によっては、回転数以外のパラメータを指令値として、ポンプ21の吐出量を調節するようにしてもよい。
【0072】
(コンピュータ構成)
図9は、上記した実施形態、及び上記した他の構成例などに示す他の実施形態の中の少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。
上述の制御装置5は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した制御装置5の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って、上記した
図4に示す処理などの各処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、例えば、上記した制御装置5の内部の記憶領域に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。インタフェース94には、上記した制御線が接続し、例えば、検出装置40等が出力する検出値を受信したり、制御対象である圧縮機13、膨張弁16、ポンプ17,21に対して指令値を送信したりする。
【0073】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージに既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0074】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記した
図4に示す処理などの各処理を実行してもよい。上記の実施形態、及び他の実施形態の中の少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0075】
<付記>
上記の実施形態に記載の冷却システム1、1aは、例えば、以下のように把握される。
【0076】
(1)第1の態様に係る冷却システム1は、蒸発器11から流出する冷媒を圧縮する圧縮機13と、前記圧縮機が圧縮する冷媒を冷却用流体との間で熱交換させて凝縮させる凝縮器14と、前記凝縮器によって凝縮される冷媒を減圧する膨張弁16と、前記膨張弁が減圧する冷媒を蒸発させて熱交換させる前記蒸発器と、を有する冷媒回路2と、前記冷却用流体を、前記凝縮器を経由しつつ、外気によって冷却されるように循環させるポンプ21と、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値を検出する検出装置40,40aと、前記検出装置が検出する前記検出値から得られる制御量が、当該制御量に対して定められる目標値になるように前記膨張弁の開度を調節し、前記膨張弁の開度の調節が限界になった場合、前記制御量が前記目標値になるように前記ポンプの吐出量を調節する制御装置5,5aと、を備える。本態様、及び以下の各態様によれば、外気の温度が低下した場合であっても、結露を発生させることなく、所望の温度で、蒸発器において冷媒を蒸発させることができる。
【0077】
(2)第2の態様に係る冷却システム1,1aは、(1)の冷却システム1,1aであって、前記膨張弁の開度に対して、前記膨張弁の調節の限界を示す閾値が予め定められており、前記制御装置5,5aは、前記膨張弁の開度と、前記閾値とに基づいて、前記膨張弁の開度の調節が限界になっているか否かを判定する。
【0078】
(3)第3の態様に係る冷却システム1,1aは、(2)の冷却システム1,1aであって、前記閾値は、前記膨張弁の開度の最大開度である。
【0079】
(4)第4の態様に係る冷却システム1は、(1)から(3)の何れか1つに記載の冷却システム1であって、前記検出装置40は、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記蒸発器と前記圧縮機の間に存在する前記冷媒の温度と、圧力とを検出し、前記制御装置5は、前記冷媒の圧力から飽和温度を算出し、前記冷媒の温度から、算出した前記飽和温度を減算して過熱度を算出し、算出した過熱度を制御量とする。
【0080】
(5)第5の態様に係る冷却システム1は、(1)から(3)の何れか1つに記載の冷却システム1であって、前記検出装置40は、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記蒸発器と前記圧縮機の間に存在する前記冷媒の圧力を検出し、前記制御装置5は、前記冷媒の圧力から飽和温度を算出し、算出した飽和温度を制御量とする。
【0081】
(6)第6の態様に係る冷却システム1aは、(1)から(3)の何れか1つに記載の冷却システム1aであって、前記検出装置40aは、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記蒸発器と前記圧縮機の間に存在する前記冷媒の第1温度と、前記膨張弁の下流から前記蒸発器の中間部までの間に存在する前記冷媒の第2温度とを検出し、前記制御装置5aは、前記第1温度から前記第2温度を減算して過熱度を算出し、算出した過熱度を制御量とする。
【0082】
(7)第7の態様に係る冷却システム1aは、(1)から(3)の何れか1つに記載の冷却システム1aであって、前記検出装置40aは、前記冷媒の蒸発温度に関連する検出値として、前記膨張弁の下流から前記蒸発器の中間部までの間に存在する前記冷媒の飽和温度を検出し、前記制御装置5aは、前記飽和温度を制御量とする。
【符号の説明】
【0083】
1 冷却システム
2 冷媒回路
3 冷却水回路
5 制御装置
11 蒸発器
12 アキュムレータ
13 圧縮機
14 凝縮器
15 レシーバ
16 膨張弁
17,21 ポンプ
22 冷却塔
31~36 三方弁
40 検出装置
41 温度センサ
42 圧力センサ
101~112,121~124,131~133 配管