(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173282
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】穀類水分計
(51)【国際特許分類】
G01N 27/04 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
G01N27/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091605
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000129884
【氏名又は名称】株式会社ケット科学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100080528
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 冨士男
(74)【代理人】
【識別番号】100073601
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 和男
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓也
(72)【発明者】
【氏名】久城 翔
(72)【発明者】
【氏名】菊地 潤
(72)【発明者】
【氏名】辻谷 大翔
【テーマコード(参考)】
2G060
【Fターム(参考)】
2G060AA12
2G060AC01
2G060AF07
2G060AG03
2G060AG11
2G060CA04
2G060CA05
2G060CB08
2G060CC01
2G060CC08
2G060JA03
(57)【要約】
【課題】本願発明は、粉砕された穀類試料の電気抵抗値の測定における労力や手間の軽減を図ることを可能とした技術を実現し提供するものである。
【解決手段】本発明の穀類水分計1は、穀類試料を粉砕する粉砕部2と、穀類試料の電気抵抗値を測定する検出部3とから構成されている。検出部は、粉砕部の下方に配されており、粉砕部より落下する粉砕された穀類試料を受け止めて収容する試料皿4を挿入する測定口備えている。また、検出部は、試料皿での穀類試料の受け止めを妨げることのない第一位置状態、及び試料皿の上方(真上)に配される第二位置状態を取り得る上部電極と、試料皿の下方(真下)に配された下部電極と、上部電極を第一位置状態から第二位置状態へ配置した後、下部電極を押し上げて、穀類試料とともに試料皿を上部電極と下部電極とで挟み込むリンク機構とを備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穀類試料を粉砕する粉砕部と、
前記穀類試料の電気抵抗値を測定する検出部と、
を少なくとも備えて構成され、
前記検出部は、前記粉砕部の下方に配されており、
前記粉砕部より落下する粉砕された穀類試料を受け止めて収容する試料皿を挿入する測定口と、
前記試料皿での前記穀類試料の受け止めを妨げることのない第一位置状態、及び前記試料皿の上方に配される第二位置状態を取り得る上部電極と、
前記試料皿の下方に配された下部電極と、
前記上部電極を前記第一位置状態から前記第二位置状態へ配置した後、前記下部電極を押し上げて、前記穀類試料とともに前記試料皿を前記上部電極と前記下部電極とで挟み込むリンク機構と、
を備えていることを特徴とする穀類水分計。
【請求項2】
前記リンク機構は、前記上部電極を水平移動させることにより前記第一位置状態から前記第二位置状態へ配置するものであることを特徴とする請求項1に記載の穀類水分計。
【請求項3】
前記リンク機構は、
測定レバーと、上部電極動作機構と、下部電極動作機構とが、水平方向を軸として回動する連動軸を介して連動するように構成され、
前記測定レバーは、
一端側が前記連動軸に取り付けられ、他端側において前記連動軸の回動操作を可能とする棒状部材であり、
前記上部電極動作機構は、
前記連動軸の回動と連動して端部が上下方向に回動する、前記連動軸に取り付けられた第一カムと、
前記第一カムの動きを前記連動軸と直行する水平方向の動きへと変換する、前記第一カムの前記端部に接続された連結杆と、
前記連結杆の動きに伴って水平方向に移動する、前記連結杆に接続された押出部と、
前記押出部の動きを、垂直方向を軸として回動する動きへと変換する、前記押出部の先端が押動する当接部を有する回転軸と、
前記上部電極が取り付けられ、前記回転軸の動きに伴って前記上部電極を前記第一位置状態から前記第二位置状態へ水平移動させる、前記回転軸に取り付けられたアームと、
を備え、
前記下部電極動作機構は、
前記連動軸の回動と連動して一端部と他端部とが上下方向に回動する、前記連動軸に取り付けられた第二カムと、
前記第二カムの一端部が下方へ回動することにより、一端部が押圧されて下方へ回動するとともに他端部が上方へ回動して前記下部電極を押し上げる第三カムと、
を備えていることを特徴とする請求項2に記載の穀類水分計。
【請求項4】
前記第二のカムと前記第三のカムとの間に、ばねが介在することを特徴とする請求項3に記載の穀類水分計。
【請求項5】
前記粉砕部と前記検出部は、測定者と対向する筐体の一面側に収容されていることを特徴とする請求項1に記載の穀類水分計。
【請求項6】
前記筐体は、前記上部電極が前記第一位置状態のときに電極面が露呈することとなる開口空間を前記一面に備えることを特徴とする請求項5に記載の穀類水分計。
【請求項7】
前記粉砕部は、
前記穀類試料を投入する試料投入口と、
前記試料投入口を閉塞する蓋体と、
前記穀類試料を粉砕する一対の粉砕ロールと、
前記ロールを駆動するモータと、
前記モータを起動または停止するスイッチ機構と、
を少なくとも備え、
前記スイッチ機構は、
前記試料投入口を前記蓋体で閉塞することでスイッチが押圧されて起動するものであることを特徴とする請求項5に記載の穀類水分計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、細かい粒状に粉砕した穀類試料を、対向して配された上部電極と下部電極との間に介在させ、両電極間の電気抵抗値を測定して穀類試料の水分値を得るようにした穀類水分計に関するものであり、詳しくは、この装置での測定作業の手間を減らして効率良く行うように省力測定化された装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、穀物に含まれる水分量を測定する簡易型穀類水分計の中には、穀物を粉砕した後、加圧した状態で電気抵抗値を測定し、予め求めておいた電気抵抗値と水分値の関係から、水分値を算出して表示させる電気抵抗測定タイプがある(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
このタイプの水分計の利点は、穀物を粉砕して細かい粒状にすることで、穀物1粒について表面と内部に水分差がある場合や、穀物の母集団1粒1粒に水分差がある場合など、収穫や乾燥直後の水分ムラがある穀物に対して、正確な測定が可能なことである。
【0004】
このような電気抵抗式水分計での測定手順の一例を挙げると、
図9に示すことができる。
まず、水分計601の上面に設けられた試料投入口622より穀物試料Sを投入する(
図9(A)を参照)。
【0005】
続いて、水分計601の側面に設けられたハンドル606を回すことにより、内蔵された粉砕部で穀物試料Sの粉砕を行う(
図9(B)を参照)。粉砕された穀物試料Sは、下方に配置された試料皿604に収容される。
【0006】
更に、粉砕された穀物試料Sを載せた試料皿604を、水分計601の側面に設けられた測定口611に移し替える(
図9(C)を参照)。
【0007】
つまり、穀物試料の粉砕を行う粉砕部と水分(電気抵抗値)の測定を行う検測部の配置が平面的に隣接するように設けられているため、粉砕部から検測部へ穀物試料Sを載せた試料皿604を移動させなければならない。具体的には、粉砕部は水分計601の正面側に位置し、検測部は粉砕部の後ろ(背面)側に位置するものとなっているため、測定において、試料皿604を正面から側面後方へ移動させなければならない。
【0008】
そして、測定レバー605を降ろし、水分計601に内蔵された検測部において、粉砕した穀物試料Sを上部電極と下部電極とで挟み込み、加圧した状態で電気抵抗値を測定する機構となっている(
図9(D)を参照)。
【0009】
ところが、このタイプにおける水分計は、穀物試料を粉砕することの労力を要する。また、粉砕部と検測部が分かれた構造となっているため、粉砕した穀物試料を検測部に移し替える(測定口に持って行く)手間が掛かる。更に、測定終了後、検測部に付着した穀物試料粉を清掃する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、従来における上記事情に鑑みて開発されたものであり、粉砕された穀類試料の電気抵抗値の測定における労力や手間の軽減を図ることを可能とした技術を実現し提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の穀類水分計は、穀類試料を粉砕する粉砕部と、前記穀類試料の電気抵抗値を測定する検出部とを少なくとも備えて構成され、前記検出部は、前記粉砕部の下方に配されており、前記粉砕部より落下する粉砕された穀類試料を受け止めて収容する試料皿を挿入する測定口と、前記試料皿での前記穀類試料の受け止めを妨げることのない第一位置状態、及び前記試料皿の上方に配される第二位置状態を取り得る上部電極と、前記試料皿の下方に配された下部電極と、前記上部電極を前記第一位置状態から前記第二位置状態へ配置した後、前記下部電極を押し上げて、前記穀類試料とともに前記試料皿を前記上部電極と前記下部電極とで挟み込むリンク機構を備えていることを特徴とする。
【0013】
すなわち、本発明の穀類水分計では、粉砕部と検出部とが立体的に隣接する上下に設けられており、検出部は、粉砕部で粉砕された穀類試料が落下して試料皿に収容された後、試料皿を挟んで真上に上部電極が、その真下に下部電極がそれぞれ配置され、両電極で穀類試料を収容する試料皿を挟み込むものとするリンク機構を備えるものとなっている。
【0014】
このようなリンク機構としては、例えば、前記上部電極を垂直方向に起立させておき、試料皿に穀類試料が収容された後、前記上部電極が水平方向に倒伏させることで、前記第一位置状態から前記第二位置状態へ配置する仕組みも考えられるが、前記上部電極を水平移動させることにより前記第一位置状態から前記第二位置状態へ配置する仕組みとすることが望ましい。
【0015】
具体的には、前記リンク機構は、測定レバーと、上部電極動作機構と、下部電極動作機構とが、水平方向を軸として回動する連動軸を介して連動するように構成され、前記測定レバーは、一端側が前記連動軸に取り付けられ、他端側において前記連動軸の回動操作を可能とする棒状部材であり、前記上部電極動作機構は、前記連動軸の回動と連動して端部が上下方向に回動する、前記連動軸に取り付けられた第一カムと、前記第一カムの動きを前記連動軸と直行する水平方向の動きへと変換する、前記第一カムの前記端部に接続された連結杆と、前記連結杆の動きに伴って水平方向に移動する、前記連結杆に接続された押出部と、前記押出部の動きを、垂直方向を軸として回動する動きへと変換する、前記押出部の先端が押動する当接部を有する回転軸と、前記上部電極が取り付けられ、前記回転軸の動きに伴って前記上部電極を前記第一位置状態から前記第二位置状態へ水平移動させる、前記回転軸に取り付けられたアームとを備え、前記下部電極動作機構は、前記連動軸の回動と連動して一端部と他端部とが上下方向に回動する、前記連動軸に取り付けられた第二カムと、前記第二カムの一端部が下方へ回動することにより、一端部が押圧されて下方へ回動するとともに他端部が上方へ回動して前記下部電極を押し上げる第三カムとを備えるものとすることができる。
【0016】
このリンク機構においては、前記第二のカムと前記第三のカムとの間に、ばねが介在することが望ましい。
【0017】
本発明の穀類水分計において、前記粉砕部と前記検出部は、測定者(操作者)と対向する筐体の一面側に収容されていることが望ましい。つまり、測定者と対向する筐体の正面に接するように、粉砕部と検出部が設けられていることが望ましい。
【0018】
また、本発明の穀類水分計において、前記筐体は、前記上部電極が前記第一位置状態のときに、電極面が露呈することとなる開口空間を前記一面に備えることが望ましい。つまり、筐体の正面に開口空間の入口が設けられていることが望ましい。
【0019】
更に、本発明の穀類水分計において、前記粉砕部は、前記穀類試料を投入する試料投入口と、前記試料投入口を閉塞する蓋体と、前記穀類試料を粉砕する一対の粉砕ロールと、前記ロールを駆動するモータと、前記モータを起動または停止するスイッチ機構とを少なくとも備え、前記スイッチ機構は、前記試料投入口を前記蓋体で閉塞することでスイッチが押圧されて起動するものであることが望ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明では、検出部が粉砕部の下方に配されているとともに、粉砕部で粉砕されて落下する穀類試料を受け止めて収容する試料皿が、予め検出部内に配置されたものとなっている。したがって、粉砕された穀類試料を粉砕部から検出部へ移動させる労力や手間を省くことができる。
【0021】
また、本発明の検出部では、上部電極が試料皿での穀類試料の受け止めを妨げることのない第一位置状態と、試料皿の上方(真上)に配される第二位置状態とを取り得るとともに、試料皿の下方(真下)に配された下部電極を押し上げるリンク機構を備えている。したがって、穀類試料の粉砕後ただちに、測定精度を維持しつつ、穀類試料の電気抵抗値の測定を効率良く行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は本発明に係る穀類水分計を示す斜視図である。
【
図3】
図3は
図1に示す穀類水分計において筐体の上面カバーを取り外した状態を示す平面図である。
【
図4】
図4は
図1に示す穀類水分計の粉砕部で用いる粉砕ロールを示す斜視図である。
【
図5】
図5は
図1に示す穀類水分計の粉砕部で用いられるスイッチ機構の仕組みを説明する(A)スイッチが押される前の状態を示す模式図と、(B)スイッチが押された後の状態を示す模式図である。
【
図6】
図6は
図1に示す穀類水分計で用いる試料皿を説明する(A)平面図と、(B)右側面図である。
【
図7】
図7は
図1に示す穀類水分計の検出部が備えるリンク機構での上部電極動作機構の動きを説明する(A)検出部の斜視図と、(B)検出部の左側面図である。
【
図8】
図8は
図1に示す穀類水分計の検出部が備えるリンク機構での下部電極動作機構の動きを説明する側面図、すなわち、筐体の側面カバーを取り外した状態であって(A)測定レバーを降ろす前の下部電極の状態を示す一部断面で示された側面図と、(B)測定レバーを降ろした後の下部電極の状態を示す一部断面で示された側面図である。
【
図9】
図9は従来の水分計での測定手順を段階的に示す取扱説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る穀類水分計の実施の形態の一例について、図面に基づき説明する。
【0024】
なお、以下に述べる実施の形態は、本発明の好適な具体例であるため技術的に種々の限定が付されているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に限定する旨の記載がない限り、これらの形態に限られるものではない。
【0025】
図1乃至
図3に示すように、本実施の形態における穀類水分計1は、粉砕部2と、検出部3とを少なくとも備えて構成されたものであって、一対の電極間の電気抵抗値を測定することで、その測定値を穀物の種類に応じた検量線に基づいて水分値に換算し、表示部11に表示するようにした装置である。
【0026】
本願発明の穀類水分計1では、装置を扱う測定者と対向することとなる筐体10の正面側において、粉砕部2の下方に検出部3が配置された設計となっている。つまり、粉砕部2と検出部3とが、筐体10の正面側において平面的に上下に重なるように設けられており、粉砕部2での穀類試料の粉砕操作と、検出部3での電気抵抗値の測定操作が、移動を要せずに行い易いものとなっている。これにより、装置の小型化は図れるとともに、粉砕操作と測定操作を効率良く円滑に行うことができ、測定完了までに要する時間を短縮することができる。
【0027】
粉砕部2は、水分量の測定を要する穀類試料を粉砕するものであり、粉砕部2及び検出部3を収容する筐体10の上面に、穀類試料を投入するための試料投入口22を備える。この試料投入口22は、上方に向けて開口するものであって、スライドすることで開閉が可能な蓋体(スライドカバー)21が設けられている。
【0028】
また、粉砕部2には、試料投入口22より投入された穀類試料を粉砕する2つ(一対)の粉砕ロール23,23が備えられている。これら2つのロール23,23は、回転する方向が互いに異なり、周面全体に、穀類試料を粉砕するための細かい凹凸が形成されたものとなっている。
【0029】
粉砕ロール23の周面に形成される凹凸は、V字状の溝、或いは突起であって、一定間隔で形成されたものとなっている。この溝や突起は、測定対象(穀類試料)によって、その深さや大きさ、間隔、及び形状等を異ならせるものとなる。このような凹凸加工としては、例えば、平目ローレットや斜目ローレット、綾目ローレットなどを挙げることができる。
【0030】
図4において、粉砕ロール23は、綾目ローレットを備えるものとして示されている。
【0031】
したがって、これら2つのロール23,23の間を穀類試料が通過することで、周面に設けられたローレットにより穀類試料の押し潰しと摺り潰しが同時に行われ、穀類試料は細かく粉砕されるものとなる。
【0032】
粉砕ロール23,23は、筐体10の側面に設けられたハンドル6を操作することで、手動で回転させることができる。つまり、ハンドル6は、粉砕ロール23のギアと直結しており、ハンドル6を回すことで粉砕ロール23,23が回転するものとなっている。
【0033】
本実施の形態において、粉砕ロール23,23は、モータ25の駆動によって自動で回転することが可能なものとなっている。つまり、粉砕部2は、穀類試料を粉砕するのに十分なトルクのモータ25を備え、このモータ25が粉砕ロール23のギアと直結したものとなっている。
【0034】
更に、この粉砕部2は、モータ25を起動または停止するスイッチ機構を備えている。このスイッチ機構は、例えば、試料投入口22が蓋体21により閉塞されることで、マイクロスイッチ24が押圧されてモータ25が起動する仕組みとすることができる。
【0035】
前記スイッチ機構の仕組み、構造としては、例えば、
図5に示すことができる。
図5(A)において矢印線で示すように、粉砕ロール23が隠れるまで蓋体21をスライドさせる。そうすると、
図5(B)に示すように、蓋体21の下面に設けられた突起211がマイクロスイッチ24のスイッチカバー242の上面を押圧するとともに、押圧されたスイッチカバー242が、その下方に配されたスイッチボタン241を押圧する。その結果、モータ25に電源が入って駆動し、粉砕ロール23,23が回転するものとなる。
【0036】
このスイッチ機構では、蓋体21をスライドさせて筐体10の試料投入口22を閉塞するという必要かつ簡単な動作に伴って穀類試料の自動粉砕が行えるものとなっている。したがって、本実施の形態では、測定時の労力がより軽減されたものとなっている。
【0037】
しかも、本実施の形態では、粉砕ロール23が隠れるように蓋体21をスライドさせたときに、モータ25の電源が入って穀類試料の粉砕が可能となる仕組みとなっている。したがって、このスイッチ機構において蓋体21は、粉砕ロール23が露呈しているときは無闇に回転しない(モータ25の電源が入らない)、安全装置の役割を果たすものとなっている。
【0038】
粉砕部2で粉砕された穀類試料は、2つのロール23,23の間を通過することで下方に落下するものとなるが、本実施の形態では、粉砕部2と検出部3との間に配置された試料皿4により受け止められるものとなる。
【0039】
この試料皿4は、例えば、
図6に示すように、粉砕部2で粉砕された落下する穀類試料を受け止める試料収容部41を有する。
【0040】
検出部3は、穀類試料の電気抵抗値を測定するものであり、試料皿4を挿入する測定口33と、試料皿4の上方に配される上部電極31と、試料皿の下方に配された下部電極32とを備えている。
【0041】
本実施の形態において、試料皿4は、筐体10の正面に設けられた測定口33に事前に挿入されたものとなっている。したがって、試料皿4は、粉砕部2で粉砕されて落下する穀類試料を試料収容部41において受け止める。
【0042】
その後、試料皿4の真上に配される上部電極31と、試料皿4の真下に配された下部電極32とで試料皿4を挟み込み、そのまま電気抵抗値が測定されるものとなる。つまり、粉砕部2で粉砕された穀類試料を検出部3へ移動させる労力や手間が必要なくなるとともに、試料皿4の移動の際に、誤って穀類試料を落としてしまうおそれもない。しかも、試料皿4の移動が不要であることから、移動中に異物が混入してしまうおそれを無くすことができる。
【0043】
この検出部3において、上部電極31は、試料皿4での穀類試料の受け止めを妨げることのない第一位置状態と、試料皿4の上方に配される第二位置状態とを取り得るものとなっている。つまり、上部電極31は、設置位置が固定されたものではなく、必要に応じて可動するものであって、電気抵抗値を測定するときは、試料皿4の上方(真上)に位置するが、通常(電気抵抗値を測定するとき以外)は、試料皿4の上方(真上)を避けて位置する上部電極動作機構を備える。
【0044】
具体的には、上部電極31は通常、粉砕部2から落下する穀類試料の試料皿4での受け止めに邪魔とならないように、試料皿4の斜め上方に位置していて、電気抵抗値を測定する際に移動して、試料皿4の上方(真上)に到達するものとなっている。
【0045】
また、この検出部3において、下部電極32は、試料皿の下方であって、試料皿4を挟み込む前の低位置と、上昇して試料皿4を上部電極31とで挟み込む高位置とを取り得る下部電極動作機構を備える。
【0046】
つまり、検出部3は、上部電極動作機構により上部電極31を第一位置状態から第二位置状態へ配置した後、下部電極動作機構により下部電極32を押し上げて、穀類試料とともに試料皿4を上部電極31と下部電極32とで挟み込むリンク機構を備えるものとなっている。
【0047】
このようなリンク機構としては、上部電極31を水平移動させることにより、第一位置状態から第二位置状態へ配置する上部電極動作機構を備えるものとすることが望ましい。
【0048】
本実施の形態では、水平移動という単純な動作で上部電極の移動を行うようにしたので、簡易な構造の機構とすることができる。しかも、垂直方向に倒伏・起立させる機構に比べ、設置スペースが小さくて済むとともに、下部電極の押し上げにより上部電極が押し上げられてしまうおそれがなく、試料皿を挟み込む際の圧力の低減を招くこともない。
【0049】
具体的に説明すると、このリンク機構は、測定レバー5と、上部電極動作機構と、下部電極動作機構とが、水平方向を軸として回動する連動軸51を介して連動するように構成されている。
【0050】
測定レバー5は、一端側が連動軸51に取り付けられ、他端側において上下方向へ操作することで、連動して連動軸51を回動させる棒状部材である。この測定レバー5は、電気抵抗値の測定前は他端側が上げられたものとなっている。
【0051】
上部電極動作機構は、
図7に示すように、第一カム511と、連結杆512と、押出部513と、回転軸514と、アーム516とを備えている。
【0052】
第一カム511は、連動軸51に取り付けられ、測定レバー5の操作による連動軸51の回動と連動して端部511aが上下方向に回動するものとなっており、連結杆512に接続されている。
【0053】
連結杆512は、第一カム511の動きを連動軸51と直行する水平方向の動きへと変換するものであり、一端が第一カムの端部511aに接続されるとともに、他端が押出部513に接続されている。
【0054】
押出部513は、連結杆512の動きに伴って水平方向に移動するものであり、一端が連結杆512に接続されるとともに、他端が回転軸514の当接部515と接するように位置して設けられている。
【0055】
回転軸514は、押出部513の動きを、垂直方向を軸として回動する動きへと変換するものであり、押出部513の先端が押動する当接部515を有するとともに、上部電極31が取り付けられたアーム516を備える。
【0056】
アーム516は、回転軸514の動きに伴って、上部電極31を第一位置状態から第二位置状態へ水平移動させるものである。
【0057】
したがって、この上部電極動作機構では、
図7(A)において下向き矢印で示すように、測定レバー5の他端側を上方から下方へ回動操作すると、測定レバー5の一端側に取り付けられた連動軸51が回動し、この動きに伴って第一カム511の端部511aが下方に回動する。
【0058】
続いて、第一カム511の端部511aに接続された連結杆512が、下がりながら押出部513を筐体10の前面側へ押し出す。
【0059】
更に、押出部513の先端が、回転軸514の当接部515を押動して回転軸514を平面視反時計回りに回転させる。
【0060】
そうすると、
図7(A)において右向き矢印で示すように、回転軸514に取り付けられアーム516も同様に回転し、アーム516に取り付けられた上部電極31が、第一位置状態から第二位置状態へ平面視反時計回りに水平移動する。
【0061】
これにより、上部電極31は試料皿4の真上に配されるものとなる。
【0062】
また、下部電極動作機構は、
図8に示すように、第二カム521と、第三カム522を備えるとともに、第二カム521と第三カム522との間にばね523が介在したものとなっている。
【0063】
第二カム521は、連動軸51に取り付けられ、測定レバー5の操作による連動軸51の回動と連動して一端部521aと他端部521bとが上下方向に回動するものとなっている。つまり、第二カム521は、一端部521aと他端部521bとの間を軸として回動するものである。この第二カム521は、一端側521aが下方へ回動することによりばね523を押圧する。
【0064】
第三カム522は、一端部522aがばね523と当接しており、第二カム521の一端部521aが下方へ回動することで押圧されたばね523により、一端部522aが押圧されて下方へ回動するとともに、他端部522bが上方へ回動するものとなっている。つまり、第三カム522もまた、一端部522aと他端部522bとの間を軸として回動するものである。この第三カム522は、他端部522bが上方へ回動することにより下部電極32を押し上げる。
【0065】
ばね523は、上部電極31と下部電極32による試料皿4の挟み込みにおいて加圧するものであって、電気抵抗値の測定に必要となる圧力を確保している。つまり、ばね523は、上部電極31と下部電極32とで穀類試料と試料皿4を挟み込む際、一定の圧力を安定的に加えることができる。したがって、正確に電気抵抗値の測定を行うことができる。
【0066】
したがって、この下部電極動作機構では、測定レバー5の他端側を上方から下方へ回動操作すると、測定レバー5の一端側に取り付けられた連動軸51が回動し、この動きに伴って第二カム521の一端部521aが下方に回動する。
【0067】
続いて、第二カム521の一端部521aがばね523を押し下げる。
【0068】
また、第二カム521によって押し下げられたばね523は、第三カム522の一端部522a押圧する。
【0069】
そうすると、第三カム522の他端部522bが上方へ回動して下部電極32を押し上げる。
【0070】
これにより、上部電極31と下部電極32とで、試料皿4を一定の圧力で安定して挟み込むことができるものとなる。
【0071】
このように構成されたリンク機構では、前記測定レバー5を下方へ押し下げる操作により、上部電極動作機構での上部電極31の水平移動の完了に追従して、下部電極動作機構での下部電極32の押し上げが完了するものとなっている。
【0072】
すなわち、測定レバー5の下方への回動により、上部電極31が上部電極動作機構により第一位置状態から第二位置状態へ水平移動した後、下部電極32が下部電極動作機構により押し上げられ、上部電極31と下部電極32とで試料皿4を挟み込むものとなる。
【0073】
したがって、上部電極31は、下部電極32の押し上げが完了する前に、試料皿4の真上に配されるものとなり、その後、下部電極32が押し上げられて、上部電極31と下部電極32とで試料皿4を加圧して挟み込んだ後、電気抵抗値の測定が行われる。
【0074】
そして、電気抵抗値の測定が終了したら、前記測定レバー5を上方へ引き上げる。そうすると、上部電極31と下部電極32は元の位置に戻り、試料皿4は無負荷状態となる。
【0075】
なお、測定終了後は、測定口33から試料皿4を引き出して測定済みの穀類試料を捨てるとともに、試料皿4と検出部3(上部電極31)の清掃を行って、次の測定に備えるものとする。
【0076】
また、筐体10は、上部電極31が第一位置状態のときに電極面が露呈することとなる開口空間7を正面に備えるものとすると望ましい。つまり、開口空間7を筐体10の正面に設けることで間口を広く確保することができるとともに、作業が行い易いものとなる。
【0077】
したがって、開口空間7への手指の挿入が容易となり、電気抵抗値の測定修了後の上部電極31の電極面の清掃が行い易いものとなる。
【0078】
以上のように本発明の穀類水分計は、測定精度を維持しつつ、粉砕部2と検出部3を筐体10の前面側に上下に配置する構成としたので、測定や清掃作業の労力や手間を軽減することができる省力測定装置となっている。
【産業上の利用可能性】
【0079】
本発明に係る穀類水分計は、麦やトウモロコシといったイネ科の種子や、大豆や小豆、落花生等といったマメ科の種子に代表される多種の穀物類に限らず、米麹、タピオカ粉、もみ殻といった穀物加工品、乾麺や菓子(クッキーや煎餅など)といった穀物加工食品、及びナッツ類などの水分測定に用いることが期待される。
【0080】
また、タブレット状の薬品や木材ペレットなど、穀物や食品以外でも粉砕することで水分測定が可能なものの水分測定に用いることも期待される。
【符号の説明】
【0081】
1 穀類水分計
2 粉砕部
3 検出部
4 試料皿
5 測定レバー
6 ハンドル
7 開口空間
10 筐体
21 蓋体(スライドカバー)
22 試料投入口
23 粉砕ロール
24 マイクロスイッチ
25 モータ
31 上部電極
32 下部電極
33 測定口
41 試料収容部
51 連動軸
211 突起
241 スイッチボタン
242 スイッチカバー
511 第一カム
512 連結杆
513 押出部
514 回転軸
515 当接部
516 アーム
521 第二カム
522 第三カム
523 ばね