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特開2024-173285並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173285
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両
(51)【国際特許分類】
   F02B 61/02 20060101AFI20241205BHJP
   B62M 25/00 20060101ALI20241205BHJP
   F16D 28/00 20060101ALI20241205BHJP
   F16H 61/28 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
F02B61/02 C
B62M25/00 Z
F16D28/00 Z
F16H61/28
F02B61/02 A
F02B61/02 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091608
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001531
【氏名又は名称】弁理士法人タス・マイスター
(72)【発明者】
【氏名】寺島 佳希
(72)【発明者】
【氏名】関谷 優
【テーマコード(参考)】
3J067
【Fターム(参考)】
3J067AA21
3J067AB23
3J067AC03
3J067BA51
3J067BB02
3J067BB04
3J067DB32
3J067FB83
3J067GA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータをコンパクトに配置する。
【解決手段】並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗車両1は、エンジン10と、クラッチアクチュエータ30と、シフトアクチュエータ40と、を備え、クラッチギアボックス32、クラッチモータ31、シフトモータ41、シフトギアボックス42が、この順に左右方向Xに並び、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、側面視において、上下方向仮想線K4とシリンダ11の後縁11eとの間で、かつ、前後方向仮想線K2とクランクケース12の上縁12eとの間に位置するように、車体フレーム5を介さずにエンジン10に取り付けられている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
並列配置された複数のシリンダ、及びクランク軸を支持するクランクケースを含む並列多気筒エンジンと、 多段変速装置と、を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、 前記多段変速装置は、 前記クランクケースに回転可能に支持され、複数の駆動ギアが設けられた入力軸と、 前記クランクケースに回転可能に支持され、前記駆動ギアと噛み合う複数の被駆動ギアが設けられ、駆動輪へ向けて動力を出力する出力軸と、 前記クランク軸から前記出力軸までの動力伝達経路上に設けられたクラッチと、 クラッチモータ、及び当該クラッチモータの動力が伝達される減速機構を収容するクラッチギアボックスを含み、当該減速機構は、前記クラッチモータから前記クラッチへの動力伝達経路に設けられているクラッチアクチュエータと、 シフトモータ、及び当該シフトモータの動力が伝達される減速機構を収容するシフトギアボックスを含み、当該減速機構は、前記シフトモータからシフター機構への動力伝達経路に設けられているシフトアクチュエータと、を含み、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、 前記要件は、 前記クラッチギアボックス、前記クラッチモータ、前記シフトモータ、前記シフトギアボックスが、この順に、車両の左右方向に並ぶこと、並びに、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、車両の前後方向における前記クランクケースの後端を通って車両の上下方向に延びる直線と前記シリンダの後縁との間で、かつ、前記上下方向における前記シリンダの上端を通って前記前後方向に延びる直線と前記クランクケースの上縁との間に位置することである。
【請求項2】
請求項1に記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、 前記要件は、 左右配置距離が、クラッチアクチュエータ左右全長とシフトアクチュエータ左右全長との合算よりも小さくなることであり、 前記クラッチアクチュエータ左右全長は、前記クラッチアクチュエータが車両に配置された状態において、前記クラッチアクチュエータの前記左右方向の右端から左端までの長さであるとして定義され、 前記シフトアクチュエータ左右全長は、前記シフトアクチュエータが車両に配置された状態において、前記シフトアクチュエータの前記左右方向の右端から左端までの長さであるとして定義され、 前記左右配置距離は、前記クラッチアクチュエータの前記右端及び前記シフトアクチュエータの前記右端のうち右方にあるものを右端基準位置とし、前記クラッチアクチュエータの前記左端及び前記シフトアクチュエータの前記左端のうち左方にあるものを左端基準位置とし、前記右端基準位置から前記左端基準位置までの前記左右方向の距離であるとして定義される。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、 前記要件は、 前記クラッチギアボックスと、前記シフトギアボックスとは、右方向又は左方向に見て、少なくとも一部が重なるように配置されていることである。
【請求項4】
請求項1~3のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、 前記要件は、 ケース中心線に対する右方、及び左方のうち、 一方には、前記クラッチギアボックスが配置されており、 他方には、前記シフトギアボックスが配置されていること、並びに、 前記ケース中心線は、前記クランクケースの前記左右方向の中間点を含み、前記前後方向に延びる直線であると定義される。
【請求項5】
請求項1~4のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、 前記要件は、 前記クラッチモータ及び前記シフトモータのそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、仮想接線よりも下方に位置することであり、 前記仮想接線は、前記シリンダの上端部との接点、及び前記クランクケースの後端部との接点を含む接線であると定義される。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、 前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、 前記要件は、 前記クラッチモータ及び前記シフトモータのそれぞれの軸線が、前記左右方向に延びることである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クラッチや変速機に対してアクチュエータの作動力を入力可能な多段変速装置を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、多段変速装置に対してアクチュエータの作動力を入力可能とし、ライダーのシフト操作を補助する多段変速装置を備えた並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両が提供されている。多段変速装置を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、多段変速装置を構成するクラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータを備えている。多段変速装置を備える鞍乗型車両は、例えば、下記特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-17221号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、ライダーの体重移動により旋回する車両である。そのため、車両の小型化への要求が高い。並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両の小型化のニーズに応えつつ、車両に上記のような多段変速装置を設けようとすると、部品の配置スペースが制限される。その結果、多段変速装置を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両では、多段変速装置を構成するクラッチアクチュエータやシフトアクチュエータの配置に工夫が必要となる。
【0005】
本発明の目的は、ライダーのシフト操作を補助する多段変速装置を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータをコンパクトに配置することができ、それによって車両の小型化を図ることが可能な並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の発明者等は、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータをコンパクトに配置することについて検討した。その結果、以下の知見を得るに至った。 上述のとおり、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は小型化への要求が高く、部品の配置スペースが制限されている。本願の発明者等は、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両に上記のような多段変速装置を設けるにあたり、多段変速装置を構成するアクチュエータ(クラッチアクチュエータやシフトアクチュエータ)の配置スペースを検討した。ここで、本願の発明者等は、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両では変速機もクラッチも並列多気筒エンジンに設けられていることに着目した。また、本願の発明者等は、クラッチアクチュエータやシフトアクチュエータを並列多気筒エンジンの近くに配置したいとの考えに至るとともに、並列多気筒エンジンの近くでクラッチアクチュエータやシフトアクチュエータを配置可能なスペースがあるか否かを検討した。その結果、本願の発明者等は、並列多気筒エンジンの周辺のスペースのうち、シリンダの後方かつクランクケースの上方(エンジンの背中)であれば、クラッチアクチュエータやシフトアクチュエータを配置することができるスペースがあるのではないかとの知見を得た。しかしながら、エンジンの背中となるスペースには、例えば、エアクリーナやリアサスペンション、スタータモータ、スロットルボディ、キャニスタ等もあり、コンパクトに配置するには工夫を凝らす必要がある。また、多段変速装置を構成するアクチュエータは必要な出力を得るためにサイズが大きくなることがある。本願の発明者等は、エンジンの背中となる限られたスペースに、アクチュエータを配置するための構成についてさらに検討した。その結果、本願の発明者等は、多段変速装置を構成するアクチュエータを左右横並びに配置し、かつアクチュエータ同士を近づけるよう配置すれば、限られたスペース内に多段変速装置を構成するアクチュエータをコンパクトに配置することができるとの知見に至った。このような知見に基づいて、本願発明が完成した。
【0007】
以上の知見に基づいて完成した本発明の各観点による並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、次の構成を備える。
【0008】
(1)本発明の一実施形態に係る並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、並列配置された複数のシリンダ、及びクランク軸を支持するクランクケースを含む並列多気筒エンジンと、多段変速装置と、を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記多段変速装置は、前記クランクケースに回転可能に支持され、複数の駆動ギアが設けられた入力軸と、前記クランクケースに回転可能に支持され、前記駆動ギアと噛み合う複数の被駆動ギアが設けられ、駆動輪へ向けて動力を出力する出力軸と、前記クランク軸から前記出力軸までの動力伝達経路上に設けられたクラッチと、クラッチモータ、及び当該クラッチモータの動力が伝達される減速機構を収容するクラッチギアボックスを含み、当該減速機構は、前記クラッチモータから前記クラッチへの動力伝達経路に設けられているクラッチアクチュエータと、シフトモータ、及び当該シフトモータの動力が伝達される減速機構を収容するシフトギアボックスを含み、当該減速機構は、前記シフトモータからシフター機構への動力伝達経路に設けられているシフトアクチュエータと、を含み、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、前記クラッチギアボックス、前記クラッチモータ、前記シフトモータ、前記シフトギアボックスが、この順に、車両の左右方向に並ぶこと、並びに、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、車両の前後方向における前記クランクケースの後端を通って車両の上下方向に延びる直線と前記シリンダの後縁との間で、かつ、前記上下方向における前記シリンダの上端を通って前記前後方向に延びる直線と前記クランクケースの上縁との間に位置することである。
【0009】
(1)本願発明では、各アクチュエータの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、シリンダの後方かつクランクケースの上方の空間(エンジンの背中となる空間)に位置するように並列多気筒エンジンに車体フレームを介さずに取り付けられていることで各アクチュエータを並列多気筒エンジンに近づけて並列多気筒エンジンの背中となる空間を有効活用しつつ、クラッチギアボックス、クラッチモータ、シフトモータ、シフトギアボックスを、この順に車両の左右方向に並べて互いに近づけ、コンパクトに配置することができる。また、シリンダの後方、かつクランクケースの上方には様々な部品(例えばエアクリーナ、リアサスペンションなど)が配置されており、スペースが制限されている。本願発明では、多段変速装置の各アクチュエータをエンジンに近づけて、制限されたスペース内でコンパクトに配置することができる。鞍乗型車両は、ライダーの体重移動により旋回する車両であることから、小型化への要求が高い。本願発明によれば、多段変速装置を構成するアクチュエータをコンパクトに配置でき、車両の小型化に寄与できる。
【0010】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (2)上記(1)に記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、左右配置距離が、クラッチアクチュエータ左右全長とシフトアクチュエータ左右全長との合算よりも小さくなることであり、前記クラッチアクチュエータ左右全長は、前記クラッチアクチュエータが車両に配置された状態において、前記左右方向における前記クラッチアクチュエータの右端から左端までの長さであるとして定義され、前記シフトアクチュエータ左右全長は、前記シフトアクチュエータが車両に配置された状態において、前記左右方向における前記シフトアクチュエータの右端から左端までの長さであるとして定義され、前記左右配置距離は、前記クラッチアクチュエータの前記右端及び前記シフトアクチュエータの前記右端のうち右方にあるものを右端基準位置とし、前記クラッチアクチュエータの前記左端及び前記シフトアクチュエータの前記左端のうち左方にあるものを左端基準位置とし、前記右端基準位置から前記左端基準位置までの前記左右方向の距離であるとして定義される。
【0011】
上記(2)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、各アクチュエータのモータを互いに寄せて配置し、各アクチュエータを左右方向にコンパクトに配置することができる。具体的に説明すると、各アクチュエータの配置では、モータの長さを考慮する必要がある。各アクチュエータのモータは、各機能(シフトの切り替え、及びクラッチの接続及び遮断)を実現するために大きな出力が必要となるため、大きさがあるもの(長さが大きいもの、又は直径が大きいもの)が用いられる。クラッチモータとシフトモータとをオーバーラップするように配置すれば、2つのモータの長さを互いに相殺するように配置して、さらに各アクチュエータをコンパクトに配置できる。
【0012】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (3)上記(1)又は(2)に記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、前記クラッチギアボックスと、前記シフトギアボックスとは、右方向又は左方向に見て、少なくとも一部が重なるように配置されていることである。
【0013】
上記(3)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、各アクチュエータを前後方向及び上下方向の少なくとも一方に寄せて、コンパクトに配置することができる。
【0014】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (4)上記(1)~(3)のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、ケース中心線に対する右方、及び左方のうち、一方には、前記クラッチギアボックスが配置されており、他方には、前記シフトギアボックスが配置されていること、並びに、前記ケース中心線は、前記クランクケースの前記左右方向の中間点を含み、前記前後方向に延びる直線であると定義される。
【0015】
上記(4)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、車両の左右の重量バランスを向
上させつつ、各アクチュエータを配置させることができる。
【0016】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (5)上記(1)~(4)のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、前記クラッチモータ及び前記シフトモータのそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、仮想接線よりも下方に位置することであり、前記仮想接線は、前記シリンダの上端部との接点、及び前記クランクケースの後端部との接点を含む接線であると定義される。
【0017】
上記(5)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、各アクチュエータをさらにエンジンに近づけて、コンパクトに配置できる。
【0018】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (6)上記(1)~(5)のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、前記クラッチモータ及び前記シフトモータのそれぞれの軸線が、前記左右方向に延びることである。
【0019】
上記(6)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、例えば、2つのモータを軸線方向にオーバーラップするように配置すれば、2つのモータの長さを互いに相殺するように配置して、さらに各アクチュエータをコンパクトに配置できる。付言して説明すると、モータは必要な動力に応じた大きさのものが選択される。具体的には、各アクチュエータのモータは、各機能(シフトの切り替え、及びクラッチの接続及び遮断)を実現するために大きな出力が必要となるため、大きさがあるもの(長さが大きいもの、又は直径が大きいもの)が用いられる。例えば、各モータを軸線が左右方向に延びるようにオーバーラップさせて配置すれば、2つのモータの長さを相殺して、左右方向にコンパクトに配置することができる。
【0020】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (7)上記(1)~(6)のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、前後配置距離がクラッチアクチュエータ前後全長とシフトアクチュエータ前後全長との合算よりも小さくなるか、又は上下配置距離がクラッチアクチュエータ上下全長とシフトアクチュエータ上下全長との合算よりも小さくなることであり、前記クラッチアクチュエータ前後全長は、前記クラッチアクチュエータが車両に配置された状態において、前記前後方向における前記クラッチアクチュエータの前端から後端までの長さであるとして定義され、前記シフトアクチュエータ前後全長は、前記シフトアクチュエータが車両に配置された状態において、前記前後方向における前記シフトアクチュエータの前端から後端までの長さであるとして定義され、前記前後配置距離は、前記クラッチアクチュエータの前記前端及び前記シフトアクチュエータの前記前端のうち前方にあるものを前端基準位置とし、前記クラッチアクチュエータの前記後端及び前記シフトアクチュエータの前記後端のうち後方にあるものを後端基準位置とし、前記前端基準位置から前記後端基準位置までの前記前後方向の距離であるとして定義され、前記クラッチアクチュエータ上下全長は、前記クラッチアクチュエータが車両に配置された状態において、前記上下方向における前記クラッチアクチュエータの上端から下端までの長さであるとして定義され、前記シフトアクチュエータ上下全長は、前記シフトアクチュエータが車両に配置された状態において、前記上下方向における前記シフトアクチュエータの上端から下端までの長さであるとして定義され、前記上下配置距離は、前記クラッチアクチュエータの前記上端及び前記シフトアクチュエータの前記上端のうち上方にあるものを上端基準位置とし、前記クラッチアクチュエータの前記下端及び前記シフトアクチュエータの前記下端のうち下方にあるものを下端基準位置とし、前記上端基準位置から前記下端基準位置までの前記上下方向の距離であるとして定義される。
【0021】
上記(7)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、上下方向及び前後方向のうち少なくとも一方において、各アクチュエータをコンパクトに配置することができる。
【0022】
本発明の一つの観点によれば、並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、以下の構成を採用できる。 (8)上記(1)~(7)のいずれかに記載の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータは、さらに、以下の要件を満たすように、車体フレームを介さずに、前記並列多気筒エンジンに取り付けられ、前記要件は、前記クラッチアクチュエータ及び前記シフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、下方向に見て、前記クランクケースの外縁がなす領域内に位置することである。
【0023】
上記(8)の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、クランクケースの上方の領域を活用して、各アクチュエータを左右方向にコンパクトに配置することができる。
【0024】
この発明の上述の目的及びその他の目的、特徴、局面及び利点は、添付図面に関連して行われる以下のこの発明の実施形態の詳細な説明から一層明らかとなろう。本明細書にて使用される場合、用語「及び/又は(and/or)」は1つの、又は複数の関連した列挙されたアイテム(items)のあらゆる又は全ての組み合わせを含む。本明細書中で使用される場合、用語「含む、備える(including)」、「含む、備える(comprising)」又は「有する(having)」及びその変形の使用は、記載された特徴、工程、操作、要素、成分及び/又はそれらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/又はそれらのグループのうちの1つ又は複数を含むことができる。他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、本発明が属する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。一般的に使用される辞書に定義された用語のような用語は、関連する技術及び本開示の文脈における意味と一致する意味を有すると解釈されるべきであり、本明細書で明示的に定義されていない限り、理想的又は過度に形式的な意味で解釈されることはない。本発明の説明においては、多数の技術及び工程が開示されていると理解される。これらの各々は個別の利益を有し、それぞれは、他の開示された技術の1つ以上、又は、場合によっては全てと共に使用することもできる。従って、明確にするために、この説明は、不要に個々のステップの可能な組み合わせの全てを繰り返すことを控える。それにもかかわらず、明細書及び特許請求の範囲は、そのような組み合わせが全て本発明及び特許請求の範囲内にあることを理解して読まれるべきである。
【0025】
以下の説明では、説明の目的で、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な詳細を述べる。しかしながら、当業者には、これらの特定の詳細なしに本発明を実施できることが明らかである。本開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面又は説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0026】
並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、並列多気筒エンジン及びマニュアル多段変速機を有する鞍乗型車両である。鞍乗型車両(straddled vehicle)とは、ライダーがサドルに跨って着座する形式のビークルをいう。鞍乗型車両としては、例えば、モペット型、オフロード型、オンロード型の自動二輪車が挙げられる。また、鞍乗型車両は、自動二輪車に限定されず、例えば、自動三輪車、ATV(All-Terrain Vehicle)等であってもよい。自動三輪車は、2つの前輪と1つの後輪とを備えていてもよく、1つの前輪と2つの後輪とを備えていてもよい。鞍乗型車両の駆動輪は、後輪であってもよく、前輪であってもよい。また、鞍乗型車両の駆動輪は、後輪及び前輪の双方であってもよい。また、鞍乗型車両は、リーン姿勢で旋回可能に構成されていてもよい。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、カーブの中心に傾いた姿勢で旋回するように構成される。これにより、リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両は、旋回時にビークルに加わる遠心力に対抗する。リーン姿勢で旋回可能に構成された鞍乗型車両では、軽快性が求められるため、発進の操作に対する進行の応答性が重要視される。MT型鞍乗型車両では、例えば、エンジンから駆動輪までの動力伝達経路に、流体の力学的作用を利用したトルクコンバータが設けられていない。
【0027】
「並列多気筒エンジン」とは、複数のシリンダが車両の左右方向に並列配置されたエンジンである。並列多気筒エンジンには、二気筒エンジン、三気筒エンジンなどが含まれる。また、並列多気筒エンジンは、等爆エンジンであってもよく、不等爆エンジンであってもよい。例えば、エンジンは、4ストロークエンジンである。エンジンは、例えば、ガソリンエンジンであるが、ディーゼルエンジンであってもよい。エンジンは、例えば、水冷式エンジンであるが、空冷式エンジンであってもよい。エンジンは、例えば、吸気管噴射方式であるが、直噴射方式であってもよい。クランク軸は、車両の左右方向に延びている。すなわち、クランク軸の軸線方向は、例えば、車両の左右方向と平行である。並列多気筒エンジンは、クランクケース内に変速機が収容されているものであってもよい。
【0028】
クランクケースは、クランク軸を回転可能に支持するように構成されている。クランクケースは、複数の構成体により構成することができる。クランクケースを構成する構成体として、例えば、クランクケース本体、クランクケースカバー、及びクラッチカバーが挙げられる。さらに、クランクケース本体は、複数の構成体により構成することができる。例えば、クランクケース本体は、車両の左右方向に二分割に分離可能なもの(縦割り型)、又は3つ以上の構成体に分離可能なものとすることができる。また、クランクケースは、シリンダブロックと一体であってもよく、シリンダと別体であってもよい。クランクケースカバーは、車両の左右方向においてクランクケース本体の外方に配置される。
【0029】
「モータの軸線が左右方向に延びており」とは、モータの軸線が概ね左右方向に延びていることを意味し、モータの軸線が左右方向と完全に一致することを意味するものではない。すなわち、二つのモータの軸線は、左右方向に対して完全に平行であるものに限定されない。例えば、モータの軸線は、左右方向に対して所定の傾きを有するものであってもよい。また、「軸線が左右方向に対して所定の傾きを有する」とは、左右方向に対してモータの軸線が所定の角度(例えば±45度以内の鋭角)をなしていることを意味する。
【0030】
すなわち、クラッチモータの軸線、及びシフトモータの軸線は、クランク軸の軸線に対して平行であってもよく、クランク軸に対して傾いているものであってもよい。また、クラッチモータの軸線、及びシフトモータの軸線は、入力軸又は出力軸の軸線に対して平行であってもよく、傾いているものであってもよい。
【0031】
多段変速装置は、複数の変速段を有する。多段変速装置は、更に、ニュートラルポジションを有していてもよい。変速段数は、特に限定されず、例えば、ニュートラルポジションに加えて、4~6個の変速段を有する。多段変速装置は、
更に、後進ポジションを有していてもよい。多段変速装置は、例えば、ボトムニュートラル式であるが、ハーフニュートラル式(ボトムロー式)であってもよい。なお、ボトムニュートラル式とは、ニュートラルポジションが第1速の下に位置するシフトパターンをいう。ハーフニュートラル式とは、ニュートラルポジションが第1速と第2速との間に位置するシフトパターンをいう。多段変速装置は、例えば、リターン式の変速装置であるが、ロータリー式であってもよい。
【0032】
入力軸は、クランク軸と平行又は実質的に平行である。入力軸は、例えば、クランク軸に設けられたギアと噛み合うギアを備え、当該ギアを介してクランク軸から動力が入力されるように構成されている。入力軸は、複数の変速段の各々に対応する複数の駆動ギアを有する。複数の駆動ギアは、例えば、入力軸の軸線方向に並ぶように配置される。
【0033】
出力軸は、入力軸と平行又は実質的に平行である。出力軸は、複数の変速段の各々に対応する複数の被駆動ギアを有する。各被駆動ギアは、対応する駆動ギアと噛み合う。出力軸は、例えば、スプロケットを備え、スプロケットにはドライブチェーンが巻き掛けられており、ドライブチェーンを介して動力を駆動輪に伝達する。出力軸から駆動輪へ動力を伝達する態様は、この例に限定されない。
【0034】
シフター機構は、シフトシャフト、及びシフトカムを備えている。シフトアクチュエータは、シフトシャフトと連結して動力を伝達している。シフトシャフトが回転するとシフトカムが回転し、入力軸や出力軸のギアが軸方向に動き、変速する構造となっている。
【0035】
クラッチは、ライダーによる操作に応じて作動するように構成されている。クラッチは、例えば、車両の発進時及び変速段の変更の両方の場面で、接続又は切断の状態が変化するように動作する発進・変速両用クラッチである。クラッチとしては、湿式又は乾式の多板又は単板のクラッチが挙げられる。
【0036】
クラッチアクチュエータは、クラッチモータ、及び当該クラッチモータの動力が伝達される減速機構を収容するクラッチギアボックスを含む。当該減速機構は、例えば、クラッチモータからクラッチへの動力伝達経路に設けられている複数のギアにより構成されている。クラッチモータは、クラッチの接続及び切断を行うためのモータである。
【0037】
シフトアクチュエータは、シフトモータ、及び当該シフトモータの動力が伝達される減速機構を収容するシフトギアボックスを含む。当該減速機構は、例えば、シフトモータからシフター機構への動力伝達経路に設けられている複数のギアにより構成されている。当該減速機構は、シフトモータからシフター機構への動力伝達経路に設けられている。なお、クラッチモータ、及びシフトモータとしては、特に限定されず、従来公知のモータを採用し得る。
【0038】
「クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータは、車体フレームを介さずに並列多気筒エンジンに取り付けられている」とは、各アクチュエータが並列多気筒エンジンに直接取り付けられていること、又はブラケット等を介して各アクチュエータが間接的にエンジンに取り付けられていることを意味する。
【0039】
「左右方向に並び」とは、必ずしも同一直線上に配置されていることを意味するものではない。「左右方向に並び」とは、配置された順が右から、あるいは左から所定の順に配置されていることを意味する。すなわち、「左右方向に並び」とは、一部の構成が同一線上から外れて配置されている場合も含まれる。
【0040】
「右方向又は左方向に見て」とは、鞍乗型車両の側面視(右側面視、又は左側面視)を意味する。
【0041】
「シリンダの後縁」とは、側面視において、シリンダの後方面のうち輪郭として見える線(シリンダの後方の輪郭線)である。別の観点から説明すると、「シリンダの後縁」とは、シリンダの後方面上を通る線(シリンダの後方面に含まれる線)であり、側面視において、シリンダと他(他の部品、又は空間)との境界をなす線(境界線)である。
【0042】
「シリンダの上端」とは、側面視において、シリンダの最も上方となる位置である。また、「シリンダの上端を通って前後方向に延びる線」とは、側面視において、シリンダの上端を通って前後方向に延びる仮想線(前後方向仮想線)である。
【0043】
「クランクケースの上縁」とは、クランクケースの上方面のうち、側面視において、輪郭として見える線(クランクケースの上方の輪郭線)である。別の観点から説明すると、「クランクケースの上縁」とは、クランクケースの上方面上を通る線(クランクケースの上方面に含まれる線)であり、側面視において、クランクケースと他(他の部品又は空間)との境界をなす線(境界線)である。
【0044】
「クランクケースの後端」とは、側面視において、クランクケースの最も後方となる位置である。さらに、「クランクケースの後端を通って上下方向に延びる直線」とは、側面視において、クランクケースの後端を通って上下方向に延びる直線(上下方向仮想線)である。
【0045】
「クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、車両の前後方向におけるクランクケースの後端を通って車両の上下方向に延びる直線とシリンダの後縁との間で、かつ、車両の上下方向におけるシリンダの上端を通って前後方向に延びる直線とクランクケースの上縁との間に位置する」とは、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、側面視において、シリンダの後縁(側面視におけるシリンダの後方の輪郭線)、クランクケースの上縁(側面視におけるクランクケースの上方の輪郭線)、前後方向仮想線、及び上下方向仮想線に囲まれた領域内に配置されていることを意味する。
【0046】
「クラッチモータ及びシフトモータのそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、仮想接線よりも下方に位置する」とは、側面視において、仮想接線により区画される領域のうち、上方の領域を上方領域とし、下方の領域を下方領域とした場合、クラッチモータ及びシフトモータのそれぞれの少なくとも一部が、側面視において、下方領域に位置することを意味する。
【0047】
なお、「下方領域」は、「側面視において、車両の前後方向におけるクランクケースの後端を通って車両の上下方向に延びる直線とシリンダの後縁との間で、かつ、車両の上下方向におけるシリンダの上端を通って前後方向に延びる直線とクランクケースの上縁との間」に含まれる領域となっている。より具体的には、「側面視において、車両の前後方向におけるクランクケースの後端を通って車両の上下方向に延びる直線とシリンダの後縁との間で、かつ、車両の上下方向におけるシリンダの上端を通って前後方向に延びる直線とクランクケースの上縁との間」のうち、仮想接線を境界として、側面視において上方の領域が上方領域となり、下方の領域が下方領域となる。
【0048】
「クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、下方向に見て、クランクケースの外縁がなす領域内に位置する」とは、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータのそれぞれの少なくとも一部が、鞍乗型車両の平面視において、クランクケースの輪郭線(外縁)により区画される領域内に位置することである。
【0049】
クラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの相対的な位置関係は限定されない。具体的には、クラッチギアボックス、及びシフトギアボックスは、どちらが右方にあってもよい。例えば、クラッチギアボックスをケース中心線に対して右方に配置し、シフトギアボックスを左方に配置してもよい。また、クラッチギアボックスをケース中心線に対して左方に配置し、シフトギアボックスを右方に配置してもよい。また、クラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータのうち、いずれかを前方に配置してもよいし、これらの前後方向の位置を略一致するように配置してもよい。例えば、一方のアクチュエータの前後全長の領域内に他方のアクチュエータが収まるように配置してもよい。
【0050】
「左右配置距離」とは、各アクチュエータの右端のうち右方寄りにある右端と、各アクチュエータの左端のうち左方寄りにある左端との左右方向の離間距離を意味する。すなわち、二つのアクチュエータのうち、一方の左右方向の全長が占める範囲内に他方の前後左右の全長が収まる場合、「左右配置距離=クラッチアクチュエータ左右全長、又はシフトアクチュエータ左右全長」となる場合がある。
【0051】
「前後配置距離」とは、各アクチュエータの前端のうち前方寄りにある前端と、各アクチュエータの後端のうち後方寄りにある後端との前後方向の離間距離を意味する。すなわち、二つのアクチュエータのうち、一方の前後方向の全長が占める範囲内に他方の前後方向の全長が収まる場合、「前後配置距離=クラッチアクチュエータ前後全長、又はシフトアクチュエータ前後全長」となる場合がある。
【0052】
「上下配置距離」とは、各アクチュエータの上端のうち上方寄りにある上端と、各アクチュエータの下端のうち下方寄りにある下端との上下方向の離間距離を意味する。すなわち、二つのアクチュエータのうち、一方の上下方向の全長が占める範囲内に他方の上下方向の全長が収まる場合、「上下配置距離=クラッチアクチュエータ上下全長、又はシフトアクチュエータ上下全長」となる場合がある。
【0053】
なお、シフター機構とシフトアクチュエータとを連結するシフト連結装置(ロッド、レバーなど)は、シフトアクチュエータよりも左右方向において外方に配置されるものであってもよい。また、クラッチとクラッチアクチュエータとを連結するクラッチ連結装置(ロッド、レバーなど)は、クラッチアクチュエータよりも左右方向において外方に配置されるものであってもよい。このような構成とすれば、連結装置(ロッド、レバーなど)の配置について自由度が向上する。そのため、ロッドやレバーの可動領域の確保が容易となる。また、連結装置を構成する部品の取付作業性を確保することができるという利点もある。
【0054】
本発明の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、クラッチモータの軸線とシフトモータの軸線との離間距離(軸線距離)が、所定の距離以内であるとよい。例えば、本発明の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両は、各モータの軸線距離が、左右配置距離、上下配置距離、及び前後配置距離のいずれかよりも小さいものであるとよい。このような構成とすれば、各モータを近づけて、各アクチュエータをコンパクトに配置することができる。
【0055】
なお、「軸線距離」とは、ケース中心仮想平面とクラッチモータの軸線との交差点を第1交差点とし、ケース中心仮想平面とシフトモータの軸線との交差点を第2交差点とした場合、第1交差点と第2交差点との離間距離であると定義される。また、「ケース中心仮想平面」とは、ケース中心線を通って上下方向に広がる仮想平面であるとして定義される。
【発明の効果】
【0056】
本発明によれば、ライダーのシフト操作を補助する多段変速装置を備える並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両において、クラッチアクチュエータ及びシフトアクチュエータをコンパクトに配置することができ、それによって車両の小型化を図ることが可能な並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1】本発明の第1実施形態に係る鞍乗型車両の左側面図と、鞍乗型車両が備えるエンジン、クラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す模式図と、を併せて示す図である。
図2図1の鞍乗型車両が備えるエンジンに構成される領域を示す側面視における模式図である。
図3図1の鞍乗型車両が備えるエンジンに構成される領域を示す平面視における模式図である。
図4図1の鞍乗型車両が備える多段変速機を示す斜視図である。
図5図1の鞍乗型車両が備えるクラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す平面図である。
図6図1の鞍乗型車両が備えるクラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す後面図である。
図7図1の鞍乗型車両が備えるエンジン、クラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す側面図である。
図8】本発明の第2実施形態に係る鞍乗型車両が備えるクラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す平面図である。
図9図8の鞍乗型車両が備えるエンジン、クラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す側面図である。
図10図8の鞍乗型車両が備えるクラッチアクチュエータ、及びシフトアクチュエータの位置を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0058】
以下、図面を参照しながら、本発明の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両の実施形態による鞍乗型車両1の詳細について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、あくまでも一例である。本発明は、以下に説明する実施形態によって、何等、限定的に解釈されるものではない。
【0059】
本明細書では、鞍乗型車両1の前後方向を「前後方向Y」と定義する。前後方向Yのうち、前方を「前方Fr」と定義する。前後方向Yのうち、後方を「後方Rr」と定義する。鞍乗型車両1の左右方向(車両の幅方向)を「左右方向X」と定義する。左右方向Xのうち左方を「左方L」と定義する。左右方向Xのうち右方を「右方R」と定義する。鞍乗型車両1の上下方向を「上下方向H」と定義する。上下方向Hのうち上方を「上方Up」と定義する。上下方向Hのうち下方を「下方Lw」と定義する。なお、鞍乗型車両1の前後上下左右は、鞍乗型車両1のシート4に着座した乗員から見た前後上下左右である。
【0060】
本明細書において、左右方向Xに延びる軸線や部材は、必ずしも左右方向Xと平行である軸線や部材だけを示すものではない。左右方向Xに延びる軸線や部材とは、左右方向Xに対して±45°の範囲で傾斜している軸線や部材を含む。
【0061】
<第1実施形態の鞍乗型車両の全体構成> 図1を参照して、鞍乗型車両1(並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両)の構成について説明する。図1は、鞍乗型車両1の左側面図と、鞍乗型車両1が備えるエンジン10、クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40の位置を示す模式図と、を併せて示す図である。
【0062】
図1(a)に示すとおり、鞍乗型車両1は、エンジン10と、多段変速装置20と、前輪2と、駆動輪としての後輪3と、シート4と、車体フレーム5と、を備える。後輪3は、エンジン10から出力される動力が多段変速装置20を介して伝達されることにより、鞍乗型車両1を走行させるように回転する。
【0063】
エンジン10は、並列多気筒エンジンである。なお、第1実施形態の鞍乗型車両1では、エンジン10は、3つのシリンダ11が並列配置された三気筒並列エンジンとなっている。そのため、第1実施形態に係る鞍乗型車両1のエンジン10は、単気筒エンジンや二気筒エンジンと比較して左右方向Xに長く、シリンダ11の後方Rrのスペースが左右方向Xに大きいものとなっている。すなわち、エンジン10は、左右方向に大きく、各アクチュエータの横向きレイアウト(モータの横向き配置)に適している。
【0064】
図1(b-1)に示すとおり、エンジン10は、シリンダ11、クランクケース12、及びクランク軸17を備えている。図1(b-1)に示すように、シリンダ11は、上方Up(シリンダヘッド)が前方Frに傾斜するような姿勢で配置されている。クランク軸17の軸線C1は、左右方向Xに延びている(図5(a)参照)。
【0065】
図5(a)に示すとおり、クランクケース12には、クランクケース本体13、ケースカバー14、クラッチカバー15、及びチェーンカバー16が含まれている。クランクケース本体13は、クランク軸17を支持している。クランクケース本体13は、左右分割型となっている。ケースカバー14は、クランクケース本体13の左方Lに設けられている。クラッチカバー15は、クランクケース本体13の右方Rに設けられている。チェーンカバー16は、クランクケース本体13の左方Lに設けられている。
【0066】
多段変速装置20は、エンジン10と駆動輪(本実施形態では後輪3)の間の変速比を、多段階に変更する。多段変速装置20は、鞍乗型車両1のライダーの操作に応じて変速比を多段階に変更する。多段変速装置20は、クランクケース12に回転可能に支持されている。
【0067】
図4に示すとおり、多段変速装置20は、入力軸21、出力軸22、クラッチ23、シフター機構24、クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40を備えている。
【0068】
入力軸21は、クランクケース本体13に回転可能に支持されている。図4に示すとおり、入力軸21には、複数の駆動ギア21aが設けられている。出力軸22は、クランクケース12に回転可能に支持されている。また、図4に示すとおり、出力軸22には、駆動ギア21aと噛み合う複数の被駆動ギア22aが設けられている。出力軸22は、後輪3へ向けて動力を出力する。図4に示すとおり、入力軸21の軸線C2、及び出力軸22の軸線C3は、左右方向Xに延びている。
【0069】
シフター機構24は、シフトシャフト25、及びシフトカム26を備えている。シフトアクチュエータ30は、シフトシャフト25と連結して動力を伝達している。シフトシャフト25が回転するとシフトカム26が回転し、入力軸21や出力軸22のギアが軸線方向に動き、変速する構造となっている。
【0070】
クラッチ23は、クランク軸17から出力軸22までの動力伝達経路上に設けられている。クラッチ23は、入力軸21に設けられている。クラッチ23は、多板摩擦クラッチである。クラッチ23は、発進の時に使用されるだけでなく、切断状態にすることにより変速を行うこともできる、変速用クラッチの機能も有する。動力伝達経路は、クランク軸17→入力軸21→駆動ギア21a→被駆動ギア22a→出力軸22の順の経路となっている。
【0071】
クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40は、ライダーのシフトの切り替え操作(シフト操作)を補助するためのシフト補助装置を構成している。鞍乗型車両1では、シフトモータ41及びクラッチモータ31が、鞍乗型車両1の変速時(即ち多段変速装置20の変速動作時)に動作する。シフトモータ41及びクラッチモータ31は、例えば、鞍乗型車両1が備えるECU(electronic control unit)(図示せず)により制御され、動作する。なお、鞍乗型車両1の変速タイミングは、例えば、鞍乗型車両1に設けられた変速用操作子(例えばシフトスイッチ)がライダーに操作されることにより決定される。
【0072】
図4に示すとおり、クラッチアクチュエータ30は、クラッチモータ31、及び当該クラッチモータ31の動力が伝達される減速機構を収容するクラッチギアボックス32を含んでいる。また、クラッチアクチュエータ30の当該減速機構は、クラッチモータ31からクラッチ23への動力伝達経路に設けられている。
【0073】
図4に示すとおり、シフトアクチュエータ40は、シフトモータ41、及び当該シフトモータ41の動力が伝達される減速機構を収容するシフトギアボックス42を含んでいる。また、シフトアクチュエータ40の当該減速機構は、シフトモータ41からシフター機構24への動力伝達経路に設けられている。
【0074】
図4に示すとおり、多段変速装置20には、上記のほか、クラッチアクチュエータ30とクラッチ23とを連結する第1連結装置33(レバー、及びロッド等)と、シフトアクチュエータ40とシフター機構24とを連結する第2連結装置43(レバー、及びロッド等)と、が設けられている。なお、第1連結装置33及び第2連結装置43の各構成(レバー、及びロッド)は、所定の領域内で変位可能となっている。すなわち、第1連結装置33、及び第2連結装置43は、可動領域を要する部材となっている。なお、本実施形態の鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30は、クラッチ23の外側から動力を作動させるアウタープルタイプとなっている。
【0075】
<各アクチュエータの配置> 図1(b-1)、及び(b-2)を参照して、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40の配置について説明する。なお、各アクチュエータ30,40の位置の説明に先立って、以下の説明における各文言の定義について説明する。
【0076】
「ケース中心線C6」は、クランクケース12の左右方向Xの中間点P1を含み、前後方向Yに延びる線であるとして定義される。また、「ケース中心仮想平面F1」は、ケース中心線C6を通って上下方向Hに広がる仮想平面であるとして定義される(図3参照)。
【0077】
「軸間距離L2」は、ケース中心仮想平面F1とクラッチモータ31の軸線C4との第1交差点Pk1から、ケース中心仮想平面F1とシフトモータ41の軸線C5との第2交差点Pk2までの離間距離であるとして定義される(図6(b)参照)。
【0078】
「クラッチアクチュエータ前後全長Dy1」は、クラッチアクチュエータ30が鞍乗型車両1に配置された状態において、前後方向Yにおけるクラッチアクチュエータ30の前端30fから後端30rまでの長さであるとして定義される(図5(b)参照)。「シフトアクチュエータ前後全長Dy2」は、シフトアクチュエータ40が鞍乗型車両1に配置された状態において、前後方向Yにおけるシフトアクチュエータ40の前端40fから後端40rまでの長さであるとして定義される(図5(b)参照)。
【0079】
「前端基準位置Py1」は、クラッチアクチュエータ30の前端30f及びシフトアクチュエータ40の前端40fのうち前方Frにあるものとして定義される(図5(b)参照)。「後端基準位置Py2」は、クラッチアクチュエータ30の後端30r及びシフトアクチュエータ40の後端40rのうち後方Rrにあるものとして定義される。「前後配置距離Ly1」は、前端基準位置Py1から後端基準位置Py2までの前後方向Yの距離であるとして定義される。
【0080】
「クラッチアクチュエータ左右全長Dx1」は、クラッチアクチュエータ30が鞍乗型車両1に配置された状態において、クラッチギアボックス32の左右方向Xの外端32a(クラッチアクチュエータ30の右端)からクラッチモータの先端31a(クラッチアクチュエータ30の左端)までの長さであると定義される(図6(b)参照)。「シフトアクチュエータ左右全長Dx2」は、シフトアクチュエータ40が鞍乗型車両1に配置された状態において、シフトギアボックス42の左右方向Xの外端42a(シフトアクチュエータ40の左端)からシフトモータ41の先端41a(シフトアクチュエータ40の右端)までの長さであるとして定義される(図6(b)参照)。
【0081】
「右端基準位置Px1」は、クラッチアクチュエータ30の右端30a及びシフトアクチュエータ40の右端40aのうち右方Rにあるものとして定義される。「左端基準位置Px2」は、クラッチアクチュエータ30の左端30b及びシフトアクチュエータ40の左端40bのうち左方Lにあるものとして定義される(図6(b)参照)。「左右配置距離Lx1」は、右端基準位置Px1から左端基準位置Px2までの左右方向Xの距離であるとして定義される。
【0082】
「クラッチアクチュエータ上下全長Dh1」は、上下方向Hにおけるクラッチアクチュエータ30の上端30uから下端30lまでの長さであるとして定義される。「シフトアクチュエータ上下全長Dh2」は、上下方向Hにおけるシフトアクチュエータ40の上端40uから下端40lまでの長さであるとして定義される。
【0083】
「上端基準位置Ph1」は、クラッチアクチュエータ30の上端30u及びシフトアクチュエータ40の上端40uのうち上方Upにあるものとして定義される。「下端基準位置P
h2」は、クラッチアクチュエータ30の下端30l及びシフトアクチュエータ40の下端40lのうち下方Lwにあるものとして定義される。「上下配置距離Lh1」は、上端基準位置Ph1から下端基準位置Ph2までの上下方向Hの距離であるとして定義される。
【0084】
「第1領域R1」は、右方向又は左方向に見て、前後方向Yにおけるクランクケース12の後端12rを通って上下方向Hに延びる直線(上下方向仮想線K4)とシリンダ11の後縁11eとの間で、かつ、上下方向Hにおけるシリンダ11の上端11uを通って前後方向Yに延びる直線(前後方向仮想線K2)とクランクケース12の上縁12eとの間の領域であると定義される(図1(b-1)参照)。
【0085】
「第1領域R1」について、図2(a)を参照しつつ、より詳細に説明する。「シリンダ11の後縁11e」とは、右方向又は左方向に見て(以下、「側面視において」と記載する場合がある)、シリンダ11の後方面11fのうち輪郭として見える線(輪郭線K1)である。別の観点で説明すると、「シリンダ11の後縁11e」とは、シリンダ11の後方面11f上を通る線(シリンダ11の後方面11fに含まれる線)であり、側面視において、シリンダ11と他(他の部品、又は空間)との境界をなす線である。
【0086】
また、図2(a)に示すとおり、「シリンダ11の上端11u」とは、側面視において、シリンダ11の最も上方Upとなる位置である。さらに、「シリンダ11の上端11uを通って前後方向Yに延びる直線」とは、側面視において、シリンダ11の上端11uを通って前後方向Yに延びる直線(前後方向仮想線K2)である。
【0087】
さらに、「クランクケース12の上縁12e」とは、クランクケース12の上方面12fのうち、側面視において、輪郭として見える線(クランクケース12の上方Upの輪郭線)である。別の観点で説明すると、「クランクケース12の上縁12e」とは、クランクケース12の上方面12f上を通る線(クランクケース12の上方面12fに含まれる線)であり、側面視において、クランクケース12と他(他の部品又は空間)との境界をなす線である。
【0088】
図2(a)を例に挙げて説明すると、クランクケース12の上縁12eとは、クランクケース12の左方Lの部分がなす輪郭線(左側面視において手前となる第1境界線K3a、及び第3境界線K3c)と、クランクケース12の右方Rの部分がなす輪郭線(左側面視において奥となる第2境界線K3b)とがなすひとつの輪郭線K3である。
【0089】
図2(a)に示すとおり、「クランクケース12の後端12r」とは、側面視において、クランクケース12の最も後方Rrとなる位置である。さらに、「クランクケース12の後端12r通って上下方向Hに延びる直線」とは、側面視において、クランクケース12の後端12rを通って上下方向Hに延びる直線(上下方向仮想線K4)である。
【0090】
図2(a)に示すとおり、「第1領域R1」は、側面視において、シリンダ11の後縁11e(輪郭線K1)、クランクケース12の上縁12e(輪郭線K3)、前後方向仮想線K2、及び上下方向仮想線K4に囲まれた領域である。
【0091】
「仮想接線C7」は、シリンダ11の上端部11a及びクランクケース12の後端部12aに対し、接点Psを含む接線であると定義される。図2(b)に示すとおり、本実施形態の鞍乗型車両1では、仮想接線C7は、シリンダ11の上端部11aとの接点Ps1を備えている。また、仮想接線C7は、クランクケースの後端部との接点Ps2を備えている。
【0092】
「下方領域R2」は、側面視において、仮想接線C7よりも下方Lwの領域である。なお、図2(b)に示すとおり、「下方領域R2」は、第1領域R1に含まれる領域となっている。すなわち、第1領域R1のうち、仮想接線C7を境界として、下方Lwの領域が下方領域R2となる。
【0093】
図3に示すとおり、「クランクケース12の外縁12gがなす第3領域R3」は、下方向に見て(以下、「平面視において」と記載する場合がある)、クランクケース12の外縁12gに囲まれた領域である。すなわち、「第3領域R3」は、平面視におけるクランクケース12の輪郭線K5(外縁12g)により区画される領域内である。
【0094】
図1(b-1)、及び(b-2)に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40は、以下の(A)、及び(B)の要件を満たすように、車体フレーム5を介さずに、エンジン10に取り付けられている。 (A)クラッチギアボックス32、クラッチモータ31、シフトモータ41、シフトギアボックス42が、この順に、左右方向Xに並ぶこと。 (B)クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40のそれぞれの少なくとも一部が、右方向又は左方向に見て、前後方向Yにおけるクランクケース12の後端12rを通って上下方向Hに延びる直線(上下方向仮想線K4)とシリンダ11の後縁11eとの間で、かつ、上下方向Hにおけるシリンダ11の上端11uを通って前後方向Yに延びる直線(前後方向仮想線K2)とクランクケース12の上縁12eとの間に位置すること。
【0095】
鞍乗型車両1では、各アクチュエータ30,40の少なくとも一部が、第1領域R1に位置するようにエンジン10に車体フレーム5を介さずに取り付けられていることで各アクチュエータ30,40をエンジン10に近づけてエンジンの背中となる空間(第1領域R1)を有効活用しつつ、クラッチギアボックス32、クラッチモータ31、シフトモータ41、シフトギアボックス42を、この順に、左右方向Xに並べて互いに近づけ、コンパクトに配置することができる。また、シリンダ11の後方Rr、かつクランクケース12の上方Upには様々な部品(例えばエアクリーナ、リアサスペンションなど)が配置されており、スペースが制限されている。鞍乗型車両1では、多段変速装置20の各アクチュエータ30,40をエンジン10に近づけて、制限されたスペース内でコンパクトに配置することができる。鞍乗型車両1は、ライダーの体重移動により旋回する車両であることから、小型化への要求が高い。鞍乗型車両1によれば、多段変速装置20を構成する各アクチュエータ30,40をコンパクトに配置でき、車両の小型化に寄与できる。
【0096】
図5(a)に示すとおり、第1実施形態の鞍乗型車両1では、ケース中心線C6に対して、右方Rにはクラッチギアボックス32が配置されており、左方Lにはシフトギアボックス42が配置されている。鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40は、左右方向Xにおいて、右方Rから、クラッチギアボックス32、クラッチモータ31、シフトモータ41、シフトギアボックス42、の順に並んでいる。図6に示すとおり、鞍乗型車両1では、後面視において、シフトギアボックス42、シフトモータ41、及びクラッチギアボックス32は、1つの直線上(例えばシフトモータ41の軸線C5上)に並んでおり、クラッチモータ31はシフトモータ41の軸線C5から下方Lwに外れた位置にある。
【0097】
図5(a)に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40は、第3領域R3内に収まるように配置されている。図6に示すとおり、鞍乗型車両1では、シフトアクチュエータ40に対してクラッチアクチュエータ30が相対的に下方Lwに配置されている。具体的には、図6に示すとおり、後面視において、クラッチギアボックス32はシフトギアボックス42よりも相対的に下方Lw寄りに配置されており、かつ、クラッチモータ31はシフトモータ41よりも相対的に下方Lw寄りに配置されている。
【0098】
図5に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチモータ31及びシフトモータ41のそれぞれの軸線が、左右方向Xに延びている。シフトモータ41の軸線C5は、左右方向Xに実質的に平行となっている。すなわち、シフトモータ41の軸線C5は、クランク軸17、入力軸21、及び出力軸22の各軸線と平行となっている。
【0099】
一方、本実施形態の鞍乗型車両1では、クラッチモータ31は、基端31bに対して先端31aが下方Lwかつ前方Frに向くように傾いた姿勢となっている。すなわち、クラッチモータ31の軸線C4は、左右方向Xに対して角度をなしている。従って、本実施形態の鞍乗型車両1では、クラッチモータ31の軸線C4は、左右方向Xと平行となっている各軸線(シフトモータ41の軸線C5、クランク軸17の軸線C1、入力軸21の軸線C2、及び出力軸22の軸線C3)に対して、角度をなしている(傾いている)。別の言い方をすれば、本実施形態の鞍乗型車両1では、クラッチモータ31の軸線C4は、基端31bから先端31aに向けた線が左右方向Xに対して鋭角(±45度以内)をなしている。
【0100】
図5(b)に示すとおり、本実施形態の鞍乗型車両1では、前端基準位置Py1は、クラッチアクチュエータ30の前端30f及びシフトアクチュエータ40の前端40fのうち前方Frにあるシフトアクチュエータ40の前端40fとなっている。また、本実施形態の鞍乗型車両1では、後端基準位置Py2は、クラッチアクチュエータ30の後端30r及びシフトアクチュエータ40の後端40rのうち後方Rrにあるクラッチアクチュエータ30の後端30rとなっている。
【0101】
図5(b)に示すとおり、鞍乗型車両1では、前後配置距離Ly1が、クラッチアクチュエータ前後全長Dy1とシフトアクチュエータ前後全長Dy2との合算よりも小さくなっている(前後配置距離Ly1<クラッチアクチュエータ前後全長Dy1+シフトアクチュエータ前後全長Dy2)。言い方を換えて説明すると、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40が、前後方向Yにおける配置範囲において重複する範囲(前後方向重複範囲Ly2)を有する。
【0102】
図6(b)に示すとおり、鞍乗型車両1では、左右配置距離Lx1が、クラッチアクチュエータ左右全長Dx1とシフトアクチュエータ左右全長Dx2との合算よりも小さくなっている(左右配置距離Lx1<クラッチアクチュエータ左右全長Dx1+シフトアクチュエータ左右全長Dx2)。言い方を換えて説明すると、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40が、左右方向Xにおける配置範囲において重複する範囲(左右方向重複範囲Lx2)を有する。
【0103】
図6(b)に示すとおり、本実施形態の鞍乗型車両1では、上端基準位置Ph1は、クラッチアクチュエータ30の上端30u及びシフトアクチュエータ40の上端40uのうち上方Upにあるシフトアクチュエータ40の上端40uとなる。また、本実施形態の鞍乗型車両1では、下端基準位置Ph2は、クラッチアクチュエータ30の下端30l及びシフトアクチュエータ40の下端40lのうち下方Lwにあるクラッチアクチュエータ30の下端30lとなる。
【0104】
さらに、図6(b)に示すとおり、鞍乗型車両1では、上下配置距離Lh1が、クラッチアクチュエータ上下全長Dh1とシフトアクチュエータ上下全長Dh2との合算よりも小さくなっている(上下配置距離Lh1<クラッチアクチュエータ上下全長Dh1+シフトアクチュエータ上下全長Dh2)。言い方を換えて説明すると、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40が、上下方向Hにおける配置範囲において重複する範囲(上下方向重複範囲Lh2)を有する。
【0105】
このように、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40の前後方向Y及び上下方向Hの配置範囲において、重複する範囲を有する。その結果、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40は、側面視(例えば左側面視)において一部が重なっている。より具体的には、図7に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチギアボックス3
2と、シフトギアボックス42とは、左右方向Xに見て、少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0106】
図7に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40は、クランクケース12に取り付けられている。クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40には、それぞれ2つのボス51が形成されている。また、クランクケース12には、複数のボス18(本実施形態では計4つのボス18)が形成されている。各アクチュエータ30,40は、クランクケース12に対してボルト52を介して取り付けられている。すなわち、各アクチュエータ30,40は、車体フレーム5を介さず、エンジン10(クランクケース12)に取り付けられている。
【0107】
さらに詳細に説明すると、図7(a)に示すとおり、シフトアクチュエータ40は、シフトギアボックス42の下方Lw寄りに2つのボス51が形成されており、これらの2つのボス51は前後方向Yに離間するよう形成されている。また、クランクケース12の左方L(ケースカバー14の上方Up)には、2つのボス18が形成されている。シフトアクチュエータ40のボス51及びクランクケース12のボス18をボルト52により締結することで、シフトアクチュエータ40がクランクケース12に取り付けられている。
【0108】
また、図7(b)に示すとおり、クラッチアクチュエータ30は、クラッチギアボックス32の下方Lw寄りに2つのボス51が形成されており、これらの2つのボス51は前後方向Yに離間するよう形成されている。また、クランクケース12の右方R(クラッチカバー15の上方Up)には、2つのボス18が形成されている。クラッチアクチュエータ30のボス51及びクランクケース12のボス18をボルト52により締結することで、クラッチアクチュエータ30がクランクケース12に取り付けられている。
【0109】
図7(a)に示すとおり、鞍乗型車両1では、各アクチュエータ30,40のうち少なくとも一部が、側面視において第1領域R1に位置している。また、鞍乗型車両1では、クラッチモータ31及びシフトモータ41のそれぞれの少なくとも一部が、仮想接線C7よりも下方Lw(下方領域R2)に位置している。なお、本実施形態では、各アクチュエータ30,40は、概ね全体が下方領域R2に位置している。従って、クラッチモータ31及びシフトモータ41は、いずれも下方領域R2に収まるように配置されている。
【0110】
<第2実施形態> 次に、図8~10を参照しつつ、本発明の並列多気筒エンジン搭載MT型車両の第2実施形態に係る鞍乗型車両60について説明する。鞍乗型車両60の車両全体については、図示を省略する。鞍乗型車両60は、第1実施形態に係る鞍乗型車両1と同様に、前輪2、後輪3、多段変速装置20等を備えている。
【0111】
第2実施形態の鞍乗型車両60は、並列二気筒エンジンであるエンジン70を備えている。図8に示すとおり、エンジン70は、並列多気筒エンジンである。なお、第2実施形態の鞍乗型車両60では、エンジン70は、2つのシリンダ71が並列配置された二気筒並列エンジンとなっている。
【0112】
なお、第2実施形態に係る鞍乗型車両60の各構成は、エンジン70を除き同様の構成となっている。そのため、以下の第2実施形態に係る鞍乗型車両1の各アクチュエータ30,40の配置に関する説明では、第1実施形態の鞍乗型車両1で説明した符号と同じ符号を付して説明し、構成についての詳細な説明を省略する。
【0113】
図8(a)に示すとおり、第2実施形態の鞍乗型車両60では、ケース中心線C6に対して、右方Rにはクラッチギアボックス32が配置されており、左方Lにはシフトギアボックス42が配置されている。鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40は、左右方向Xにおいて、右方Rから、クラッチギアボックス32、クラッチモータ31、シフトモータ41、シフトギアボックス42、の順に並んでいる。鞍乗型車両60では、平面視において、シフトギアボックス42、シフトモータ41、及びクラッチギアボックス32は、1つの直線上(例えばシフトモータ41の軸線C5上)に並んでおり、クラッチモータ31は、軸線C5から外れた位置にある。
【0114】
図8(a)に示すとおり、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30、及びシフトアクチュエータ40は、第3領域R3内に収まるように配置されている。図10に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチアクチュエータ30に対してシフトアクチュエータ40が相対的に前方Frに配置されている。
【0115】
図8に示すとおり、鞍乗型車両60では、クラッチモータ31及びシフトモータ41のそれぞれの軸線が、左右方向Xに延びている。クラッチモータ31の軸線C4及びシフトモータ41の軸線C5は、左右方向Xに実質的に平行となっている。すなわち、クラッチモータ31の軸線C4及びシフトモータ41の軸線C5は、クランク軸17、入力軸21、及び出力軸22の各軸線と平行となっている。
【0116】
図8(b)に示すとおり、第2実施形態の鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30の右端30a及びシフトアクチュエータ40の右端40aのうち右方Rにあるクラッチアクチュエータ30の右端30aが右端基準位置Px1となる。また、本実施形態の鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30の左端30b及びシフトアクチュエータ40の左端40bのうち左方Lにあるシフトアクチュエータ40の左端40bが左端基準位置Px2となる。
【0117】
図8(b)に示すとおり、鞍乗型車両60では、左右配置距離Lx1が、クラッチアクチュエータ左右全長Dx1とシフトアクチュエータ左右全長Dx2との合算よりも小さくなっている(左右配置距離Lx1<クラッチアクチュエータ左右全長Dx1+シフトアクチュエータ左右全長Dx2)。言い方を換えて説明すると、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40が、左右方向Xにおける配置範囲において重複する範囲(左右方向重複範囲Lx2)を有する。
【0118】
図9に示すとおり、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40は、クランクケース12に取り付けられている。クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40には、それぞれ2つのボス51が形成されている。また、クランクケース12には、複数のボス18(本実施形態では計4つのボス18)が形成されている。各アクチュエータ30,40は、クランクケース12に対してボルト52を介して取り付けられている。すなわち、各アクチュエータ30,40は、車体フレーム5を介さず、エンジン10(クランクケース12)に取り付けられている。
【0119】
さらに詳細に説明すると、図9(a)に示すとおり、シフトアクチュエータ40は、シフトギアボックス42の下方Lw寄りに2つのボス51が形成されており、これらの2つのボス51は前後方向Yに離間するよう形成されている。また、クランクケース12の左方L(ケースカバー14の上方Up)には、2つのボス18が形成されている。シフトアクチュエータ40のボス51及びクランクケース12のボス18をボルト52により締結することで、シフトアクチュエータ40がクランクケース12に取り付けられている。
【0120】
また、図9(b)に示すとおり、クラッチアクチュエータ30は、クラッチギアボックス32の下方Lw寄りに2つのボス51が形成されており、これらの2つのボス51は前後方向Yに離間するよう形成されている。また、クランクケース12の右方R(クラッチカバー15の上方Up)には、2つのボス18が形成されている。クラッチアクチュエータ30のボス51及びクランクケース12のボス18をボルト52により締結することで、クラッチアクチュエータ30がクランクケース12に取り付けられている。
【0121】
図9(a)に示すとおり、鞍乗型車両60では、側面視において、各アクチュエータ30,40の少なくとも一部は、第1領域R1に位置している。また、鞍乗型車両60では、クラッチモータ31及びシフトモータ41のそれぞれの少なくとも一部が、仮想接線C7よりも下方Lw(下方領域R2)に位置している。なお、本実施形態の鞍乗型車両60では、各アクチュエータ30,40は、概ね全体が下方領域R2に位置している。従って、クラッチモータ31及びシフトモータ41は、いずれも下方領域R2に収まるように配置されている。
【0122】
図10に示すとおり、第2実施形態の鞍乗型車両60では、前端基準位置Py1は、クラッチアクチュエータ30の前端30f及びシフトアクチュエータ40の前端40fのうち前方Frにあるシフトアクチュエータ40の前端40fとなる。また、本実施形態の鞍乗型車両1では、後端基準位置Py2は、クラッチアクチュエータ30の後端30r及びシフトアクチュエータ40の後端40rのうち後方Rrにあるクラッチアクチュエータ30の後端30rとなる。
【0123】
図10に示すとおり、鞍乗型車両60では、前後配置距離Ly1が、クラッチアクチュエータ前後全長Dy1とシフトアクチュエータ前後全長Dy2との合算よりも小さくなっている(前後配置距離Ly1<クラッチアクチュエータ前後全長Dy1+シフトアクチュエータ前後全長Dy2)。言い方を換えて説明すると、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40が、前後方向Yにおける配置範囲において重複する範囲(前後方向重複範囲Ly2)を有する。
【0124】
図10に示すとおり、鞍乗型車両60では、上端基準位置Ph1は、クラッチアクチュエータ30の上端30u及びシフトアクチュエータ40の上端40uのうち上方Upにあるクラッチアクチュエータ30の上端30uとなる。また、鞍乗型車両60では、下端基準位置Ph2は、クラッチアクチュエータ30の下端30l及びシフトアクチュエータ40の下端40lのうち下方Lwにあるシフトアクチュエータ40の下端40lとなる。
【0125】
さらに、図10に示すとおり、鞍乗型車両60では、上下配置距離Lh1が、クラッチアクチュエータ上下全長Dh1とシフトアクチュエータ上下全長Dh2との合算よりも小さくなっている(上下配置距離Lh1<クラッチアクチュエータ上下全長Dh1+シフトアクチュエータ上下全長Dh2)。言い方を換えて説明すると、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40が、上下方向Hにおける配置範囲において重複する範囲(上下方向重複範囲Lh2)を有する。
【0126】
このように、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40の前後方向Y及び上下方向Hの配置範囲において、重複する範囲を有する。その結果、鞍乗型車両60では、クラッチアクチュエータ30及びシフトアクチュエータ40は、側面視(例えば左側面視)において一部が重なっている。より具体的には、図9に示すとおり、鞍乗型車両1では、クラッチギアボックス32と、シフトギアボックス42とは、左右方向Xに見て、少なくとも一部が重なるように配置されている。
【0127】
ここで、図9に示すとおり、鞍乗型車両60では、クランクケース12の上方Upにエアクリーナ6が配置されており、クランクケース12の後方Rrにリアサスペンション7が配置されている。別の言い方をすれば、鞍乗型車両60では、シリンダ71の後方Rrの領域において、上方Upのスペースがエアクリーナ6により制限され、後方Rrのスペースがリアサスペンション7により制限されている。鞍乗型車両60では、第1領域R1に各アクチュエータ30,40を配置すること、各モータ31,41を軸線C4,C5を左右方向Xに向けて配置することなどにより、制限されたスペースを有効活用している。
【0128】
このように、本発明の並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両によれば、他の部品(エアクリーナ6、リア
サスペンション7など)により制限されるシリンダ後方のスペースを有効活用して、各アクチュエータ30,40をコンパクトに配置することができる。
【0129】
(その他の実施形態) 本明細書において記載と図示の少なくとも一方がなされた実施形態及び変形例は、本開示の理解を容易にするためのものであって、本開示の思想を限定するものではない。上記の実施形態及び変形例は、その趣旨を逸脱することなく変更・改良され得る。当該趣旨は、本明細書に開示された実施形態に基づいて当業者によって認識されうる、均等な要素、修正、削除、組み合わせ(例えば、実施形態及び変形例に跨る特徴の組み合わせ)、改良、変更を包含する。特許請求の範囲における限定事項は当該特許請求の範囲で用いられた用語に基づいて広く解釈されるべきであり、本明細書あるいは本願のプロセキューション中に記載された実施形態及び変形例に限定されるべきではない。そのような実施形態及び変形例は非排他的であると解釈されるべきである。例えば、本明細書において、「好ましくは」、「よい」という用語は非排他的なものであって、「好ましいがこれに限定されるものではない」、「よいがこれに限定されるものではない」ということを意味する。
【符号の説明】
【0130】
1 鞍乗型車両(並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両)5 車体フレーム10 エンジン11 シリンダ11e シリンダの後縁11u シリンダの上端12 クランクケース12e クランクケースの上縁12r クランクケースの後端20 多段変速装置30 クラッチアクチュエータ31 クラッチモータ(クラッチアクチュエータ)32 クラッチギアボックス(クラッチアクチュエータ)40 シフトアクチュエータ41 シフトモータ(シフトアクチュエータ)42 シフトギアボックス(シフトアクチュエータ)60 鞍乗型車両(並列多気筒エンジン搭載MT型鞍乗型車両)70 エンジン71 シリンダ71e シリンダの後縁71u シリンダの上端H 上下方向K1 輪郭線(シリンダの後縁)K2 前後方向仮想線K3 輪郭線(クランクケースの上縁)K4 上下方向仮想線R1 第1領域X 左右方向Y 前後方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10