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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173290
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】状況判定装置および電動車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 3/00 20190101AFI20241205BHJP
   B60L 15/20 20060101ALI20241205BHJP
   B60G 9/04 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
B60L3/00 N
B60L15/20 J
B60G9/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091613
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】難波 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ダーラリベラ ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 亮矢
【テーマコード(参考)】
3D301
5H125
【Fターム(参考)】
3D301BA04
3D301BA20
3D301CA04
3D301CA50
3D301DA08
3D301EA04
5H125AA11
5H125AA14
5H125AA16
5H125AC12
5H125BA07
5H125DD08
5H125EE09
5H125EE51
5H125EE58
5H125FF01
5H125FF02
(57)【要約】
【課題】電動車両が段差を超えたのか、あるいは、周辺物に衝突したのかを判定することができる状況判定装置を提供する。
【解決手段】状況判定装置は、電動車両を駆動させるモータにかかるトルクを検知するトルク検知部と、電動車両の車輪に設けられたサスペンションの変位を検知する変位検知部と、前記トルクおよび前記変位に基づいて、前記電動車両が段差を超えたのか、あるいは、周辺物に衝突したのかの少なくとも一方の判定を行う判定部と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電動車両を駆動させるモータにかかるトルクを検知するトルク検知部と、
前記電動車両の車輪に設けられたサスペンションの変位を検知する変位検知部と、
前記トルクおよび前記変位に基づいて、前記電動車両が段差を超えたのか、あるいは、周辺物に衝突したのかの少なくとも一方の判定を行う判定部と、
を備える状況判定装置。
【請求項2】
前記サスペンションは、第一リンクと、第一リンクとサスペンション軸を介して接続され、前記サスペンション軸を中心に揺動する第二リンクと、前記第一のリンクおよび前記第二のリンクに接続され、前記第二リンクの揺動により伸縮するサスペンションばねを有する請求項1に記載の状況判定装置。
【請求項3】
変位検知部は、前記サスペンションの変位を検知する距離センサであり、前記距離センサは、前記サスペンションばねに関して、前記サスペンション軸が配置される側とは反対側に設けられる請求項2に記載の状況判定装置。
【請求項4】
前記電動車両の車体の外郭は、前記サスペンション軸よりも高い位置に配置される請求項2に記載の状況判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記トルクが変化したタイミングと、前記サスペンションの変位が変化したタイミングとの時間差に基づいて、前記判定を行う請求項1に記載の状況判定装置。
【請求項6】
前記判定部は、前記時間差と規定値とを比較することにより前記判定を行い、前記規定値は前記トルクの大きさに応じて変更される請求項5に記載の状況判定装置。
【請求項7】
前記車輪は少なくとも2つあり、前記判定部は、各車輪に設けられたサスペンションの変位に基づいて、前記判定を行うか否かを判定する請求項1に記載の状況判定装置。
【請求項8】
請求項1に記載の状況判定装置を備える電動車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、状況判定装置および電動車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、モータを用いて駆動するもの、例えばロボットが周辺物に衝突したことを検知する方式として、駆動軸モータが受ける推定外乱トルクを算出し、この推定外乱トルクから、外乱トルクの衝突成分を算出し、外乱トルクの衝突成分やその変化量が予め設定された規定値を超えたかどうかで衝突の発生を検出するものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-70490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術では、駆動輪に取り付けられているモータが受けるトルクが段差乗り越え時に発生したのか、壁などの周辺物に衝突して発生したのかを電動車両が判断することが難しい。
【0005】
その結果、上記トルクが段差乗り越え時に発生したものであるにもかかわらず、周辺物に衝突して発生したものと電動車両が判断し、電動車両が停止してしまう可能性がある。逆に、上記トルクが周辺物に衝突して発生したものであるにもかかわらず、段差乗り越え時に発生したものと電動車両が判断し、電動車両に負荷がかかる可能性もある。また、電動車両が衝突しているのに段差乗り越えと判断した場合、電動車両は進み続けるので、周辺物に負荷をかけ続ける問題があった。
【0006】
本開示は、上述したような従来の課題を解決するもので、電動車両が段差を超えたのか、あるいは、周辺物に衝突したのかを判定することができる状況判定装置および電動車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示に係る状況判定装置の一態様は、電動車両を駆動させるモータにかかるトルクを検知するトルク検知部と、前記電動車両の車輪に設けられたサスペンションの変位を検知する変位検知部と、前記トルクおよび前記変位に基づいて、前記電動車両が段差を超えたのか、あるいは、周辺物に衝突したのかの少なくとも一方の判定を行う判定部と、を備える。
【0008】
また、本開示に係る電動車両の一態様は、上記状況判定装置を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電動車両が段差を超えたのか、あるいは、周辺物に衝突したのかを判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施の形態における電動車両を左斜め前方から見た斜視図である。
図2図2は、本実施の形態における電動車両の衝突検出部の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本実施の形態における電動車両の駆動輪ユニットを示す斜視図である。
図4図4は、本実施の形態におけるサスペンション変位検出部の構成を示す図である。
図5図5は、本実施の形態における衝突判定の方法を示すフローチャートである。
図6図6は、本実施の形態における衝突判定の他の方法を示すフローチャートである。
図7図7は、本実施の形態における電動車両の衝突検出部の他の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態等は、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0012】
また、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。なお、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0013】
本開示の電動車両は、屋外、屋内、施設、私有地などにおいて物品を搬送する移動ロボットや、屋外、屋内、施設、私有地などにおいて人が移動のために搭乗する電動車椅子の走行部として用いる場合がある。
【0014】
図1は、本実施の形態における電動車両1を左斜め前方から見た斜視図である。図1に示すように、実施形態における電動車両1は、車体部2と本体部3とを有している。
【0015】
車体部2は複数のフレーム10と、駆動輪タイヤ11a及びモータ11b等を含む駆動輪ユニット11と、従動輪12aを含む従動輪ユニット12と、制御部ユニット13と、モータ11bに電力を供給するバッテリーユニット14と、自律移動する際に周囲の物体を検知する検出部ユニット15とを有し、電動車両1の移動に関する機能を有する。
【0016】
駆動輪ユニット11はクローラでも、脚付きロボットでも良い。制御部ユニット13は、モータ制御部、電源変換供給基板、及び安全用基板で1つのユニットを有している。本体部3は積載機能を有し、本体部3の例として物品を搬送するための収納構造や人が搭乗するため椅子などが挙げられる。なお、本体部3は前述の例に限定されない。また、本体部3は積載機能を有していなくてもよいし、また本体部3が存在しなくてもよい。
【0017】
電動車両1は、駆動輪ユニット11と従動輪ユニット12とを、それぞれ左右1対以上有する。駆動輪ユニット11は左右1対であることが望ましいが、従動輪ユニット12は左右1対のみならず、電動車両1に2対以上あってもよい。
【0018】
電動車両1の駆動輪ユニット11と従動輪ユニット12とは、電動車両1が有する車輪の数が4個の場合、従動輪ユニット12が前輪側、駆動輪ユニット11が後輪側となることが望ましいが、その逆であってもよい。なお、駆動輪ユニット11と従動輪ユニット12との車輪は2輪に限定されず、1輪や3輪以上であってもよい。
【0019】
図2は、本実施の形態における電動車両1の衝突検出部の構成を示すブロック図である。駆動軸制御装置の一部である衝突検出部は、モータトルク検知部25と、サスペンション変位検知部26と、衝突判定部27とを有している。
【0020】
モータトルク検知部25は、例えば特許文献1に記載されているようなオブザーバを用いた公知の方法により、駆動軸モータ11bが受ける推定外乱トルクを算出し、推定外乱トルクから既知の外乱トルクを差し引くことで外乱トルクの衝突成分を算出する。
【0021】
モータトルク検知部25は、外乱トルクの衝突成分が予め設定された第1の規定値を超えた場合に、電動車両1が周辺物に衝突する可能性があると判断する。または、モータトルク検知部25は、外乱トルクの衝突成分の変化量が予め設定された第2の規定値を超えた場合に、電動車両1が周辺物に衝突する可能性があると判断してもよい。
【0022】
サスペンション変位検知部26は、例えばサスペンションの変位量を距離センサで検出し、サスペンションの変位量の大きさ、方向、変化量などの情報に基づいて、電動車両1の周辺物への衝突の可能性を判断する。
【0023】
衝突判定部27は、モータトルク検知部25により衝突の可能性があると判定され、かつ、サスペンション変位検知部26により衝突の可能性があると判定された場合に、衝突が発生したと判定する。これにより、段差乗り越え時に電動車両1が周辺物と衝突したと誤判定することを防止することができる。
【0024】
図3は、本実施の形態における電動車両1の駆動輪ユニット11を示す斜視図である。駆動輪ユニット11は、駆動輪タイヤ11a、モータ11b、減速機11c、駆動輪サスペンション第一リンク11d、駆動輪サスペンション第二リンク11e、駆動輪サスペンションばね11f、駆動輪サスペンション軸11g、駆動輪ストッパ11h、及び駆動輪サスペンションばね受け部11iを有し、駆動輪ユニット締結部(不図示)によりフレーム10と締結される。
【0025】
ただし、減速機11cはモータ11bの仕様によっては存在しなくてもよく、また、モータ11bと減速機11cが一体になっているものを使用してもよい。モータ11bはブレーキ11jを備えてもよい。さらに、必要に応じてダンパーを設けてもよい。
【0026】
駆動輪サスペンション第一リンク11dと駆動輪サスペンション第二リンク11eとは、駆動輪サスペンション軸11gにより接続され、駆動輪サスペンション第二リンク11eは駆動輪サスペンション軸11g(揺動軸)を中心に揺動する。
【0027】
このとき、駆動輪サスペンション軸11gは、車体前後方向と垂直な方向、つまり車体左右方向と平行となる方向に設けられ、駆動輪サスペンション第二リンク11eは車体上下方向と車体前後方向からなる面と並行な面内でのみ揺動する。
【0028】
図3に示すように、駆動輪サスペンション第二リンク11eは二つの板を有し、それら2つの板は、駆動輪サスペンション第一リンク11dを挟むようにして、駆動輪サスペンション軸11gにより接続される。また、駆動輪サスペンション第二リンク11eの2つの板には、駆動輪サスペンションばね受け部11iが締結用シャフトにより締結されている。
【0029】
駆動輪サスペンションばね11fの一端は、駆動輪サスペンション第一リンク11dに接続され、他端は駆動輪サスペンションばね受け部11iを介して駆動輪サスペンション第二リンク11eに接続される。
【0030】
これにより、電動車両1の外郭や駆動輪タイヤ11aに周辺物が衝突した際、駆動輪サスペンション第一リンク11dと駆動輪サスペンションばね受け部11iに両端を固定された駆動輪サスペンションばね11fが一方向で変位するので、サスペンション変位を検知し易くすることができる。
【0031】
図4は、本実施の形態におけるサスペンション変位検出部30の構成を示す図である。サスペンション変位検出部30は、反射板31と距離センサ32とを備える。反射板31と距離センサ32とは、駆動輪サスペンションばね11fを支える両端の機構部に配置されている。
【0032】
距離センサ32は、信号を発信してから反射板31により反射された信号を受信するまでの時間に基づいて、反射板31と距離センサ32との間の距離を検出する。これにより、距離センサ32と反射板31を用いて駆動輪サスペンションばね11fの変位を検出することができる。
【0033】
反射板31は、駆動輪サスペンション軸11gを中心に揺動する駆動輪サスペンション第二リンク11e側に設け、距離センサ32は、揺動しない駆動輪サスペンション第一リンク11d側に設置することが望ましい。
【0034】
また、反射板31及び距離センサ32は、駆動輪サスペンションばね11fに関して、駆動輪サスペンション軸11gが配置される側とは反対側に設けられる。
【0035】
駆動輪サスペンション第二リンク11eの駆動輪サスペンション軸11g周りの回転角度を磁気センサなどで検知し、駆動輪サスペンションばね11fの変位を判断することもできるが、回転する角度の変化量が小さいため、上記変位の検知精度を向上することは困難である。
【0036】
図4に示すように、駆動輪サスペンション軸11gから離れた位置に距離センサ32を配置することで、反射板31と距離センサ32との間の距離の変化量が大きくなるので、駆動輪サスペンションばね11fの変位の検知精度が向上する。
【0037】
また、図1に示す電動車両1のように、駆動輪サスペンション軸11gより高い箇所に車体の外郭を設け、段差は駆動輪タイヤ11aと接触し、それ以外の周辺物は外郭と接触する構造にする。
【0038】
駆動輪タイヤ11aが後輪、従動輪ユニット12が前輪であり、かつ、電動車両1が後進している場合、段差が駆動輪タイヤ11aに接触した時と、周辺物が駆動輪サスペンション軸11gより高い箇所に設けられた車体の外郭に接触した時とで、駆動輪サスペンションばね11fの伸縮が逆になる。
【0039】
具体的には、段差が駆動輪タイヤ11aに接触した時は、駆動輪サスペンションばね11fが縮み、周辺物が駆動輪サスペンション軸11gより高い個所に設けられた車体の外郭と接触した時は、駆動輪サスペンションばね11fが伸びる。
【0040】
そのため、駆動輪サスペンションばね11fが縮む時は、段差が駆動輪タイヤ11aに接触し、電動車両1が段差を乗り越えたと判断できる。また、駆動輪サスペンションばね11fが伸びる時は、周辺物が車体の外郭に接触したと判断できる。
【0041】
駆動輪タイヤ11aが後輪に設置された場合に限定されず、前輪に駆動輪タイヤが設置され、前進する場合であっても、段差が駆動輪タイヤに接触した時と、周辺物が駆動輪サスペンション軸より高い箇所に設けられた車体の外郭に接触した時で、駆動輪サスペンションばねの伸縮が逆になるため、同様の判断が可能である。
【0042】
図5は、本実施の形態における衝突判定の方法を示すフローチャートである。本実施の形態では、駆動輪タイヤ11aが後輪、従動輪ユニット12が前輪であり、かつ、電動車両1が後進している場合である。まず、電動車両1のモータトルク検知部25は、外乱トルクが規定値以上であるか否かを判定する(ステップS1)。
【0043】
例えば、モータトルク検知部25は、駆動軸モータ11bが受ける推定外乱トルクを算出し、推定外乱トルクから既知の外乱トルクを差し引くことで外乱トルクの衝突成分を算出し、その外乱トルクが規定値以上であるか否かを判定する。
【0044】
外乱トルクが規定値未満である場合(ステップS1、NO)、衝突判定部27は、電動車両1が段差を乗り越えておらず、周辺物が電動車両1の車体の外郭に接触してもいないと判定する(ステップS5)。
【0045】
外乱トルクが規定値以上である場合(ステップS1、YES)、サスペンション変位検知部26は、駆動輪サスペンションばね11fが伸びたか否かを判定する(ステップS2)。
【0046】
駆動輪サスペンションばね11fが伸びた場合(ステップS2,YES)、衝突判定部27は、周辺物が駆動輪サスペンション軸11gより高い箇所に設けられた車体の外郭に接触した、すなわち、電動車両1に周辺物が衝突したと判定する(ステップS3)。
【0047】
一方、駆動輪サスペンションばね11fが縮んだ場合(ステップS2、NO)、衝突判定部27は、段差が駆動輪タイヤに接触し、電動車両1が段差を乗り越えたと判定する(ステップS4)。
【0048】
なお、この方法においては、ステップS2における判定処理がステップS1の判定処理よりも先に行われてもよい。
【0049】
またここでは、電動車両1に周辺物が衝突すると駆動輪サスペンションばね11fが伸び、電動車両1が段差を乗り越えると駆動輪サスペンションばね11fが縮む場合について説明したが、これは一例であり、電動車両1に周辺物が衝突すると駆動輪サスペンションばね11fが縮み、電動車両1が段差を乗り越えると駆動輪サスペンションばね11fが延びるように電動車両1を構成してもよい。
【0050】
このように、外乱トルクの検知に加え、駆動輪サスペンションばね11fの伸縮を検知することで、容易に周辺物の衝突か段差乗り越えかを判定することができる。
【0051】
なお、図5に示した方法の代わりに、以下のような方法で衝突判定を行ってもよい。図6は、本実施の形態における衝突判定の他の方法を示すフローチャートである。
【0052】
この場合も、図1に示す駆動輪ユニット11が後輪、従動輪ユニット12が前輪であり、かつ、後進している時を想定している。なお、駆動輪ユニット11が後輪に設置された場合に限定されず、前輪に駆動輪タイヤが設置され、前進する時であってもよい。
【0053】
まず、衝突判定部27は、モータトルク検知部25により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定されたかどうかを判定する(ステップS11)。
【0054】
例えば、モータトルク検知部25は、駆動軸モータ11bが受ける推定外乱トルクを算出し、推定外乱トルクから既知の外乱トルクを差し引くことで外乱トルクの衝突成分を算出し、その外乱トルクが規定値以上であれば、衝突した可能性があると判定する。
【0055】
モータトルク検知部25により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定されなかった場合(ステップS11、NO)、衝突判定部27は、電動車両1が段差を乗り越えておらず、周辺物が電動車両1の車体の外郭に接触してもいないと判定する(ステップ16)。
【0056】
モータトルク検知部25により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定された場合(ステップS11、YES)、衝突判定部27は、サスペンション変位検知部26により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定されたかどうかを判定する(ステップS12)。
【0057】
例えば、サスペンション変位検知部26は、駆動輪サスペンションばね11fの変位量を算出し、その変位量が規定値以上であれば、電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定する。
【0058】
サスペンション変位検知部26により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定されていない場合(ステップS12、NO)、衝突判定部27は、電動車両1が段差を乗り越えておらず、周辺物が電動車両1の車体の外郭に衝突してもいないと判定する(ステップ16)。
【0059】
サスペンション変位検知部26により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定された場合(ステップS12、YES)、モータトルク検知部25により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定されたタイミングと、サスペンション変位検知部26により電動車両1が周辺物に衝突した可能性があると判定されたタイミングとの時間差が規定値以上か否かを判定する(ステップS13)。
【0060】
段差が駆動輪タイヤ11aに接触した場合、モータトルクの外乱トルクが変化して規定値以上となるタイミングと、駆動輪サスペンションばね11fの変位が変化して変位量が規定値以上となるタイミングとの時間差は小さくなる。
【0061】
一方、電動車両1の車体の外郭が、特に駆動輪サスペンション軸11gから離れた箇所で周辺物と衝突すると、モータトルクの外乱トルクが変化して規定値以上となるタイミングと、駆動輪サスペンションばね11fの変位が変化して変位量が規定値以上となるタイミングとの時間差が大きくなる。
【0062】
例えば、図1に示す電動車両1の本体部3に周辺物が衝突した場合、駆動輪サスペンションばね11fを変位させようとする力は、本体部3からフレーム10を経由して駆動輪ユニット11に順次伝達される。
【0063】
一方、段差が駆動輪タイヤ11aに接触した場合、駆動輪サスペンションばね11fを変位させようとする力は、図3に示す駆動輪ユニット11において、駆動輪タイヤ11aから駆動輪サスペンションばね11fに即座に伝達される。
【0064】
そのため、上記2つのタイミングの時間差が規定値以上か否かを判定することにより、電動車両1が段差を乗り越えたのか(ステップS15)、周辺物が電動車両1の車体の外郭に衝突したのかを判定できる(ステップS14)。
【0065】
なお、図6のステップS13における判定処理では規定値が一定値であることとしたが、規定値をモータトルクに応じて変更してもよい。例えば、モータトルクが小さい時は、規定値が小さい値に変更する。
【0066】
モータトルクの大きさに応じて、モータトルク検知部25が衝突の判定をしたタイミングとサスペンション変位検知部26が衝突の判定をしたタイミングとの間の時間差は変化する。
【0067】
そのため、モータトルクの大きさに応じて変化する規定値を用いることにより、例えば、モータトルク検知部25による外乱トルクが小さい時、つまり衝撃が小さい時でも、電動車両1が段差を乗り越えたのか、周辺物に衝突したのかを判定し易くなる。
【0068】
また、電動車両1が、凸凹のある路面を走行した場合などに、段差を乗り越えた、または、周辺物に衝突したと誤判断することを防止する処理をさらに行うこととしてもよい。
【0069】
図7は、本実施の形態における電動車両の衝突検出部の他の構成を示すブロック図である。駆動軸制御装置の一部である衝突検出部は、モータトルク検知部25と、右サスペンション変位検知部41と、左サスペンション変位検知部42と、衝突判定部27とを有している。
【0070】
右サスペンション変位検知部41、及び、左サスペンション変位検知部42は、例えば図3に示すような、駆動輪ユニット11の両輪の各々の駆動輪サスペンションばね11fの変位が検知可能な箇所に設置する。なお、電動車両1が周辺物に衝突した場合、似た傾向を出やすくするため、サスペンションや距離センサの構成は左右同一の方がよい。
【0071】
電動車両1が周辺物に衝突した際、右サスペンション変位検知部41と、左サスペンション変位検知部42とで検知されたサスペンションの変位は、似た傾向になる。
【0072】
そのため、衝突判定部27は、右サスペンション変位検知部41と、左サスペンション変位検知部42とで検知された駆動輪サスペンションばね11fの変位が似た傾向にあるか否かを判定する判定処理を実行する。
【0073】
例えば、この判定処理は、図5に示したステップS1またはステップS2の処理の前、または、図6に示したステップS11、ステップS12、または、ステップS13の処理の前に実行され、上記2つの変位が似た傾向にある場合、その後の処理が継続され、上記2つの変位が似た傾向にない場合、その後の処理が中止される。
【0074】
例えば、電動車両1が凸凹のある路面を走行した時などに、駆動輪サスペンションばね11fだけ変位が変動する場合があるが、このような処理を実行することにより、そのような場合を衝突判定の対象から除外することができるので、段差を乗り越えた時、または、周辺物に衝突した時の判定がし易くなる。
【0075】
なお、上記2つの変位の差が似た傾向にあるか否かは、上記2つの変位の差が所定値以内であるか否かを検出することにより判定してもよいし、他の方法で判定してもよい。
【0076】
また、本実施の形態では、駆動輪ユニット11にサスペンションを配置する構成について説明したが、この構成に限定されず、サスペンションは従動輪ユニット12に配置されてもよい。
【0077】
以上より、本実施の形態によれば、電動車両1の車体の外郭にセンサを設けることなく、電動車両1に周辺物が衝突した時に発生したトルクなのか、電動車両1が段差を乗り越える時に発生したトルクなのかを判定することができる。
【0078】
また、本実施の形態によれば、電動車両1が、段差を乗り越える時に壁などの周辺物と衝突したと誤判定して止まるようなことがなく、また、周辺物に衝突した際にかかる負荷を最小限にすることができる。
【0079】
なお、本実施の形態は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0080】
本開示の状況判定装置及び電動車両は、電動車椅子や移動ロボット等の電動車両に広く利用することができる。
【符号の説明】
【0081】
1 電動車両
2 車体部
3 本体部
10 フレーム
11 駆動輪ユニット
11a 駆動輪タイヤ
11b モータ
11c 減速機
11d 駆動輪サスペンション第一リンク
11e 駆動輪サスペンション第二リンク
11f 駆動輪サスペンションばね
11g 駆動輪サスペンション軸
11h 駆動輪ストッパ
11i 駆動輪サスペンションばね受け部
11j ブレーキ
12 従動輪ユニット
13 制御部ユニット
14 バッテリーユニット
15 検出部ユニット
25 モータトルク検知部
26 サスペンション変位検知部
27 衝突判定部
30 サスペンション変位検出部
31 反射板
32 距離センサ
41 右サスペンション変位検知部
42 左サスペンション変位検知部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7