(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173292
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】管理システム、管理方法、および管理装置
(51)【国際特許分類】
H02J 13/00 20060101AFI20241205BHJP
G06Q 50/06 20240101ALI20241205BHJP
【FI】
H02J13/00 311T
G06Q50/06
H02J13/00 301A
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091618
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平出 博樹
(72)【発明者】
【氏名】関口 隆
(72)【発明者】
【氏名】若見 学司
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 勝
(72)【発明者】
【氏名】奈良 修
【テーマコード(参考)】
5G064
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5G064AA04
5G064AC06
5G064AC09
5G064AC10
5G064CB07
5G064CB08
5G064CB12
5G064CB21
5L049CC06
5L050CC06
(57)【要約】
【課題】拠点の給電能力を活用できる管理システム、管理方法、および管理装置を提供する。
【解決手段】本開示の管理システムは、内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫と、拠点の電源に接続されている前記保冷庫毎の動作状態に基づいて、前記拠点全体で前記複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出し、前記拠点に対し予め設定された最大供給電力および前記想定電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する管理装置と、を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫と、
拠点の電源に接続されている前記保冷庫毎の動作状態に基づいて、前記拠点全体で前記複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出し、前記拠点に対し予め設定された最大供給電力および前記想定電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する管理装置と、
を備える、管理システム。
【請求項2】
前記管理装置は、
前記電源に接続されている前記保冷庫毎の消費電力を、それぞれの保冷庫の前記動作状態に基づいて取得し、
前記電源に接続されている全保冷庫の消費電力の合計を前記想定電力として算出する、
請求項1に記載の管理システム。
【請求項3】
前記管理装置は、
前記保冷庫が蓄冷材に冷熱を蓄積する蓄冷動作を行っている場合には所定の第1電力を当該保冷庫の消費電力として取得し、
前記保冷庫が前記蓄冷材に蓄えられた冷熱を前記内部に循環させるための電力を充電する充電動作を行っている場合には所定の第2電力を当該保冷庫の消費電力として取得し、
前記保冷庫が前記蓄冷動作と前記充電動作の両方を行っている場合には前記第1電力と前記第2電力を加算した第3電力を当該保冷庫の消費電力として取得する、
請求項2に記載の管理システム。
【請求項4】
前記管理装置は、前記電源に新たに保冷庫が接続されたとき、および、前記電源にすでに接続されている前記保冷庫の運転状態が変化したとき、の少なくともいずれかにおいて、前記想定電力の算出を行う、
請求項3に記載の管理システム。
【請求項5】
前記管理装置は、前記想定電力が前記最大供給電力以下である場合、前記電源に接続されている前記保冷庫の少なくともいずれかに対し前記消費電力が増えるように前記動作状態を変更する制御信号を送信する、
請求項4に記載の管理システム。
【請求項6】
前記管理装置は、前記電源に新たに接続された前記保冷庫に対し、前記蓄冷動作と前記充電動作の少なくともいずれかを行うように前記動作状態を変更する前記制御信号を送信する、
請求項5に記載の管理システム。
【請求項7】
前記管理装置は、前記電源に既に接続されている前記保冷庫のうち、
前記蓄冷動作のみを行っている前記保冷庫に対する、前記蓄冷動作と前記充電動作の両方を行うように前記動作状態を変更する前記制御信号、
前記充電動作のみを行っている前記保冷庫に対する、前記蓄冷動作のみ、または前記蓄冷動作と前記充電動作の両方を行うように前記動作状態を変更する前記制御信号、および、
前記蓄冷動作と前記充電動作のいずれも行わない待機動作を行っている前記保冷庫に対する、前記蓄冷動作と前記充電動作の少なくともいずれかを行うように前記動作状態を変更する前記制御信号、
の少なくともいずれかを送信する、
請求項5に記載の管理システム。
【請求項8】
前記管理装置は、前記動作状態を変更させることにより増える前記消費電力の合計値が、前記想定電力と前記最大供給電力との差分値以下となるように、前記制御信号を生成する、
請求項6または7に記載の管理システム。
【請求項9】
前記管理装置は、前記電源に新たに保冷庫が接続され、前記想定電力が前記最大供給電力を超える場合、前記電源に接続されている前記保冷庫の少なくともいずれかに対し前記消費電力が減るように前記動作状態を変更させる制御信号を送信する、
請求項5に記載の管理システム。
【請求項10】
前記管理装置は、前記電源に新たに接続された前記保冷庫に対し、前記蓄冷動作と前記充電動作のいずれも行わない待機動作を行うように前記動作状態を変更する前記制御信号を送信する、
請求項9に記載の管理システム。
【請求項11】
前記管理装置は、
前記蓄冷動作のみを行っている前記保冷庫に対する、前記充電動作のみを行うように前記動作状態を変更する前記制御信号、
前記充電動作のみを行っている前記保冷庫に対する、前記蓄冷動作と前記充電動作のいずれも行わない待機動作を行うように前記動作状態を変更する前記制御信号、および
前記蓄冷動作と前記充電動作の両方を行っている前記保冷庫に対する、前記蓄冷動作のみまたは前記充電動作のみを行う、もしくは前記待機動作を行うように前記動作状態を変更させる前記制御信号、
の少なくともいずれかを送信する、
請求項9に記載の管理システム。
【請求項12】
前記管理装置は、前記動作状態を変更させることにより減る前記消費電力の合計値が、前記想定電力と前記最大供給電力との差分値を超えるように、前記制御信号を生成する、
請求項10または11に記載の管理システム。
【請求項13】
内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫の動作を管理する管理システムにおいてコンピュータにより実行される管理方法であって、
拠点の電源に接続されている前記保冷庫の動作状態に基づいて、前記拠点全体で前記複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出し、
前記想定電力および前記拠点に予め設定された最大供給電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する、
管理方法。
【請求項14】
内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫の動作状態を管理する管理装置であって、
拠点の電源に接続されている前記保冷庫の動作状態に基づいて、前記拠点全体で複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出する算出部と、
前記想定電力および前記拠点に予め設定された最大供給電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、
を備える、管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、保冷庫の動作状態を管理する管理システム、管理方法、および管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
給電を受けることで庫内の蓄冷体に冷熱を蓄え、蓄冷体の冷熱で物品を所定温度域に保持できる保冷庫が知られている。
【0003】
物流などの拠点には、複数の保冷庫に対する給電を管理するための給電装置が設けられることがある。特許文献1には、保冷庫の電源プラグが給電設備のコンセントに挿入されたことを検出し、給電した際に給電中となるコンセントの総数が所定の総数以下になるように管理する給電装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された給電装置では、保冷庫に接続されたコンセントの数に基づいて給電制御を行っている。このため、物流拠点の給電能力に余裕があっても、給電中のコンセントの数が所定数を超えた場合には、一部のコンセントによる給電を停止する運用が行われる。このような事情に鑑み、物流拠点の給電能力を最大限活用したい、という要望がある。
【0006】
本開示は、拠点の給電能力を活用できる管理システム、管理方法、および管理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係る管理システムは、内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫と、拠点の電源に接続されている前記保冷庫毎の動作状態に基づいて、前記拠点全体で前記複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出し、前記拠点に対し予め設定された最大供給電力および前記想定電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する管理装置と、を備える。
【0008】
本開示の一態様に係る管理方法は、内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫の動作を管理する管理システムにおいてコンピュータにより実行される管理方法であって、拠点の電源に接続されている前記保冷庫の動作状態に基づいて、前記拠点全体で前記複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出し、前記想定電力および前記拠点に予め設定された最大供給電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する。
【0009】
本開示の一態様に係る管理装置は、内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫の動作状態を管理する管理装置であって、拠点の電源に接続されている前記保冷庫の動作状態に基づいて、前記拠点全体で複数の保冷庫への給電に必要であると想定される想定電力を算出する算出部と、前記想定電力および前記拠点に予め設定された最大供給電力に基づいて、前記複数の保冷庫の前記動作状態を制御する制御信号を生成する制御信号生成部と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の管理システムによれば、拠点の給電能力を活用できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】管理システムの全体構成について説明するための図
【
図5】保冷庫における各種動作と消費電力との関係を示す図
【
図6】管理システムの全体の動作例を説明するためのシーケンス図
【
図7】管理装置の動作例を説明するためのフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照しながら実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明、または、実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。なお、添付図面および以下の説明は、当業者が本開示を十分に理解するために提供されるのであって、これらにより特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図していない。
【0013】
以下、本開示の実施の形態に係る管理システム100について説明する。
【0014】
<1.構成>
図1は、管理システム100の全体構成について説明するための図である。
図1に示すように、管理システム100は、物流(物的流通)などの拠点にて取り扱われる1または複数の保冷庫10と、管理装置20と、を備える。保冷庫10のそれぞれと管理装置20とは、インターネットまたはイントラネットなどのネットワークNWを介して互いに通信可能に接続されている。
【0015】
以下説明する実施の形態では、本開示の一例として、管理システム100が物流拠点に適用された場合について説明するが、本開示はこれに限定されない。本開示に係る管理システムは、例えば店舗などに適用されてもよい。
【0016】
図1では、1つの物流拠点が複数の保冷庫10全てを取り扱っている例が示されているが、本開示では複数の物流拠点がそれぞれ1または複数の保冷庫10を取り扱っていてもよい。この場合においても、複数の物流拠点にて取り扱われる1または複数の保冷庫10は、それぞれネットワークNWを介して管理装置20と通信可能に接続される。
【0017】
[保冷庫10]
図2は、保冷庫10の構造を説明するための断面模式図である。
図2に示すように、保冷庫10は、筐体11と、筐体11内部に設けられた貯蔵室12と、筐体11の前面に開閉可能に取り付けられた扉13と、冷却装置14と、を有する。扉13が開かれることにより、保冷庫10の外部から貯蔵室12に物品の出し入れが可能となる。
【0018】
冷却装置14は、貯蔵室12の内部を冷却するための蓄冷材15に冷熱を蓄積する装置である。蓄冷材15は、例えばフィルムや樹脂容器等に、塩化ナトリウムと水との混合物、または高吸水性ポリマーと水との混合物等の蓄冷材料が充填されて構成される。蓄冷材15は、液状あるいはゲル状の蓄冷材料が冷却装置14により冷却されると固化して冷熱を蓄えることができる。
【0019】
冷却装置14は、凝縮器141、圧縮機142、膨張弁143、および蒸発器144を有し、冷媒が内部を流れる冷媒管によりこれらの構成が順に接続されている。冷媒は、蒸発器144、圧縮機142、凝縮器141、膨張弁143の順番で通過するようになっている。
【0020】
冷却装置14には電源プラグ18が接続されている。電源プラグ18が物流拠点のコンセントなどに接続されると、冷却装置14は物流拠点に設けられた電源に接続される。電源は、例えば商用電源であってもよいし、物流拠点に設けられた発電機であってもよい。また、物流拠点には複数の電源が設けられていてもよい。本開示の実施の形態に係る管理システム100では、複数の電源が物流拠点に設けられている場合、保冷庫10は、複数の電源のいずれかに接続される。この場合、後述の管理装置20は、複数の保冷庫10がそれぞれ異なる電源に接続されたとしても、複数の保冷庫10を管理することができる。保冷庫10が電源に接続されると、冷却装置14が動作し、蒸発器144を流れる冷媒と周囲の空気とが熱交換することにより、蒸発器144の近傍に配置された蓄冷材15が冷却される。これにより、蓄冷材15に冷熱が蓄えられる。
【0021】
貯蔵室12の内部には、冷気を循環させるファン16が配置されている。ファン16は、バッテリ17と電気的に接続されており、バッテリ17に充電された電力によって回転する。ファン16が回転すると、蓄冷材15の冷気が貯蔵室12内に供給されることで貯蔵室12内が冷却される。バッテリ17には電源プラグ18が接続されており、電源プラグ18が物流拠点のコンセントなどに接続されると、バッテリ17は物流拠点に設けられた電源に接続され、図示しない充電制御装置などの制御に基づいてバッテリ17が充電されるようになっている。
【0022】
以下、保冷庫10の使用態様について説明する。保冷庫10は、物流拠点において電源に接続され、冷却装置14による蓄冷材15への蓄冷動作と、バッテリ17への充電動作と、を行う。これらの動作は、後述の制御部110により制御される。
【0023】
蓄冷材15への蓄冷とバッテリ17の充電が完了すると、保冷庫10は、電源との接続が解除され、例えば複数の物流拠点間における、冷蔵や冷凍の物品の搬送に使用される。保冷庫10が物品の搬送に使用される状態では、冷却装置14は動作せず、バッテリ17に充電された電力によりファン16が回転することで貯蔵室12内部が冷却される。保冷庫10が物品の搬送に使用されている間、蓄冷材15に蓄熱された冷気が徐々に消費されるとともに、ファン16を回転させる電力がバッテリ17から消費される。
【0024】
物品の搬送に使用されることで蓄冷材15の冷熱およびバッテリ17の電力が失われると、保冷庫10は物流拠点において再度電源に接続される。これにより蓄冷動作と充電動作とが行われることで、保冷庫10は再び冷蔵または冷凍の物品の搬送に使用できるようになる。このように、保冷庫10は、蓄冷動作および充電動作と、物品の搬送への使用とを繰り返し行うことができる。
【0025】
図3は、保冷庫10の機能ブロック図である。保冷庫10は、制御部110と、通信部111と、検出部112と、を有する。
【0026】
制御部110は、保冷庫10の動作を制御する。制御部110は、保冷庫10の各部を中枢的に制御するものであり、演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を記憶するROM、RAMなどのメモリ、その他の周辺回路などを備えている。
【0027】
通信部111は、ネットワークNWを介して外部の構成と通信を行うネットワークモジュールである。これにより、
図1に示すように、保冷庫10はネットワークNWを介して管理装置20と通信を行うことができる。
【0028】
通信部111は、例えば物流拠点に設けられた無線通信設備を介した無線通信(Wi-Fiなど)により通信を行う。または、通信部111は、LANケーブルなどの接続による有線通信により通信を行ってもよい。
【0029】
検出部112は、
図2に示す電源プラグ18が電源に接続されたか否かを検出する。検出部112は、例えば電源プラグ18を介して電圧が供給されたか否かに基づいて、電源プラグ18が電源に接続されたか否かを判断する。この場合、検出部112は、制御部110の一機能として実現されてもよい。
【0030】
または、検出部112は、電源プラグ18に設けられた物理スイッチであってもよい。この場合、電源プラグ18がコンセントに挿されると物理スイッチが動作することで、検出部112が電源に接続されたことを検出する。
【0031】
制御部110は、管理装置20からの制御信号に基づいて、蓄冷動作、充電動作、またはその両方を行うように、冷却装置14およびバッテリ17の少なくともいずれかを制御する。制御部110は、蓄冷動作を行っていた場合、蓄冷残量が満容量となる、すなわち蓄冷材15がそれ以上冷熱を蓄えることができなくなったとき、管理装置20の制御信号を待たずして蓄冷動作を終了させる。また、制御部110は、充電動作を行っていた場合、バッテリ17の充電残量が満容量となったとき、管理装置20の制御信号を待たずして充電動作を終了させる。
【0032】
また、制御部110は、物品の搬送に用いられる場合、ファン16の回転を制御する。
【0033】
制御部110は、所定の制御要求送信契機が発生した場合に、通信部111を介して管理装置20に対して制御要求を送信する。制御要求送信契機は、保冷庫10の動作状態を変更する必要がある何らかの契機である。制御要求送信契機には、少なくとも、以下説明する第1から第3の契機が含まれる。
【0034】
第1の契機は、物流拠点に勤務する人物により、保冷庫10が新たに配送拠点の電源に接続されたことである。この場合、当該保冷庫10において蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかが行われる必要がある。
【0035】
第2の契機は、蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを行っていた保冷庫10において、蓄冷残量および充電残量がいずれも満容量となり、蓄冷動作および充電動作を終了させたことである。この場合、当該保冷庫10が消費していた電力がそれ以降消費されなくなるので、物流拠点全体における電力供給能力に余裕が生じる。このため、物流拠点の電源の電力供給能力を有効に活用するためには、当該物流拠点において電源に接続されている他の保冷庫10の動作の見直しを行う必要がある。
【0036】
第3の契機は、物流拠点に勤務する人物により、接続されていた電源との接続が解除された、具体的には電源プラグ18がコンセントから抜かれたことである。この場合にも、当該保冷庫10が消費していた電力がそれ以降消費されなくなるので、物流拠点全体における電力供給能力に余裕が生じ、他の保冷庫10の動作の見直しが必要となる。
【0037】
所定の制御要求送信契機は、上記の例だけではなく、他の契機が含まれてもよい。制御要求送信契機は、例えば管理システム100を管理する人物などにより、予め設定されればよい。
【0038】
制御部110は、制御要求を受信した管理装置20から送信された接続応答を受信したとき、自装置(保冷庫10)の動作状態を示す状態情報を管理装置20に送信する。制御要求および状態情報についての詳細は、後述する。
【0039】
[管理装置20]
管理装置20は、1または複数の物流拠点において使用される、1または複数の保冷庫10の動作状態の管理および制御を行う装置である。管理装置20は、例えば演算実行部としてのCPU、このCPUによって実行可能な基本制御プログラムや所定のデータ等を記憶するROM、RAMなどのメモリ、その他の周辺回路などを備える一種のコンピュータである。具体的には、管理装置20は、PC(Personal Computer)、タブレット端末、ワークステーションなどの複数種類のコンピュータのうちの少なくとも1種類の装置である。管理装置20は、ネットワークNWを介して1または複数の保冷庫10と通信を行うことにより、それぞれの保冷庫10の蓄冷動作および充電動作の管理および制御を行う。
【0040】
図1に示す例では、管理装置20は1つのみ設けられているが、本開示はこれに限定されず、例えば物流拠点毎に管理装置が設けられていてもよい。この場合、物流拠点毎の管理装置がネットワークを介して互いに接続されてもよい。また、複数の物流拠点に設置された複数の管理装置とネットワークを介して互いに接続され、複数の管理装置をさらに管理する集中管理装置がさらに設けられてもよい。この場合、以下説明する管理装置20の機能は、複数の管理装置および集中管理装置の少なくともいずれかに分散して保有されればよい。
【0041】
図4は、管理装置20の機能ブロック図である。管理装置20は、通信部21と、算出部22と、制御信号生成部23と、記憶部24と、を有する。
【0042】
通信部21は、ネットワークNWを介して外部の構成と通信を行うネットワークモジュールである。これにより、
図1に示すように、管理装置20はネットワークNWを介して複数の保冷庫10と通信を行うことができる。
【0043】
算出部22は、物流拠点の電源に接続されている保冷庫10の動作状態に基づいて、物流拠点全体で複数の保冷庫10への給電に必要であると想定される想定電力を算出する。なお、算出部22は、物流拠点に複数の電源が設けられている場合、それぞれの保冷庫10がどの電源に接続されているかにかかわらず、各保冷庫10の動作情報に基づいて算出を行えばよい。
【0044】
算出部22の動作について具体例を挙げて説明する。ある物流拠点において、あるタイミングでは、1台目の保冷庫10Aが蓄冷動作を行っており、2台目の保冷庫10Bが充電動作を行っており、3台目の保冷庫10Cが蓄冷動作と充電動作の両方を同時に行っており、4台目の保冷庫10Dが蓄冷動作と充電動作のいずれも行わない待機動作を行っているとする。ここで、4台の保冷庫10A~10Dは、それぞれ同様の仕様を有しており、同じ動作を行う際には同じ電力を消費するものとする。
【0045】
本明細書において、蓄冷動作における保冷庫10の消費電力を第1電力、充電動作における保冷庫10の消費電力を第2電力とする。また、蓄冷動作と充電動作の両方を同時に行う場合の消費電力を第3電力とする。上述したように、蓄冷動作と充電動作とは互いに独立した動作であり、第3電力は第1電力と第2電力の合計に等しい。
【0046】
図5は、保冷庫10における各種動作と消費電力との関係を示す図である。
図5の縦軸は消費電力の大きさを示している。保冷庫10において、蓄冷動作に要する第1電力の方が、充電動作に要する第2電力よりも大きい。
図5に示す例では、一例として、第1電力は約1200Wであり、第2電力は約200Wである。この場合、第3電力は約1400Wとなる。また、
図5に示す例では、待機動作における消費電力は0となっている。
【0047】
算出部22は、
図5に示す例では、ある物流拠点の想定電力を、4台分の保冷庫10A~10Dの消費電力を加算することで算出する。すなわち、前述の具体例では、算出部22は、想定電力を約2800Wと算出する。
【0048】
このように、算出部22は、保冷庫10毎の動作状態に基づく消費電力を、物流拠点において電源に接続されている全ての保冷庫10の分加算することで、想定電力を算出する。なお、保冷庫10のそれぞれの動作状態における消費電力(第1電力、第2電力、および第3電力)の数値は、予め記憶部24に記憶されており、算出部22は必要に応じて消費電力の値を記憶部24から読み出して取得すればよい。
【0049】
本開示において、物流拠点毎に異なる仕様の保冷庫が使用されてもよい。この場合、物流拠点毎に、保冷庫の消費電力が異なることになる。この場合、物流拠点毎の保冷庫の消費電力の数値が、予め記憶部に記憶されており、算出部は想定電力を算出する対象の物流拠点に対応する保冷庫の消費電力を読み出して想定電力を算出すればよい。
【0050】
制御信号生成部23は、算出部22が算出した想定電力、および物流拠点毎に予め設定された最大供給電力に基づいて、物流拠点において電源に接続されている複数の保冷庫10の動作状態を制御する制御信号を生成する。最大供給電力とは、物流拠点が一度に供給可能な電力である。最大供給電力の数値は、物流拠点に設けられた電源の電力供給能力に基づいて予め設定された数値であり、予め記憶部24に記憶されている。最大供給電力の値は、物流拠点毎に異なっていてもよく、制御信号生成部23は、制御信号を送信する対象となる物流拠点に対応する最大供給電力を記憶部24から読み出して使用すればよい。なお、制御信号生成部23は、物流拠点に複数の電源が設けられている場合、それぞれの保冷庫10がどの電源に接続されているかにかかわらず、各保冷庫10の制御信号を生成する。
【0051】
制御信号生成部23は、想定電力が最大供給電力を超えるか否かに基づいて、異なる制御内容の制御信号を生成する。
【0052】
想定電力が最大供給電力を超える場合、制御信号生成部23は、物流拠点において電源に接続されている複数の保冷庫10のうち、少なくともいずれかに対して、消費電力を減らすように動作状態を変更する制御信号を生成する。想定電力が最大供給電力を超える場合とは、物流拠点において複数の保冷庫10が必要とする電力の合計が、例えば、物流拠点の電力供給能力を超える場合である。
【0053】
制御信号生成部23は、蓄冷動作と充電動作の両方を行っている保冷庫10に対しては、蓄冷動作のみ、または充電動作のみを行う、もしくは、いずれの動作も行わない待機動作を行うように動作状態を変更する制御信号を生成する。また、制御信号生成部23は、蓄冷動作のみを行っている保冷庫10に対しては、充電動作のみを行う、または待機動作を行うように動作状態を変更する制御信号を生成する(上述したように、保冷庫10において、蓄冷動作において消費される第1電力の方が、充電動作において消費される第2電力より大きいため)。制御信号生成部23は、充電動作のみを行っている保冷庫10に対しては、待機動作を行うように動作状態を変更する制御信号を生成する。
【0054】
このような制御信号を保冷庫10に送信することにより、想定電力を最大供給電力以下とさせることができる。このため、物流拠点において保冷庫10の消費電力が最大供給電力を超え、保冷庫10の蓄冷動作または充電動作を行うことができなくなる事態を抑制できる。
【0055】
なお、制御信号生成部23は、物流拠点において電源に接続されている全ての保冷庫10に対し、消費電力を減らすように動作状態を変更する制御信号を生成しなくてもよく、一部の保冷庫10に対してのみ当該制御信号を生成してもよい。すなわち、制御信号生成部23は、蓄冷動作および充電動作の優先順位がより低い保冷庫10に対し、より優先的に制御信号を生成してもよい。ここで、制御信号生成部23は、制御信号を保冷庫10に送信したことにより減ることが予想される保冷庫10の消費電力の合計値が、想定電力と最大供給電力との差分値を上回った時点で、消費電力を減らすように動作状態を変更する制御信号の生成を停止してもよい。
【0056】
このような制御により、物流拠点における全保冷庫10の消費電力の合計を、最大供給電力以下、かつ、最大供給電力にできるだけ近い値とすることができる。これにより、物流拠点において保冷庫10の消費電力が最大供給電力を超えて保冷庫10の蓄冷動作または充電動作を行うことができなくなる事態を抑制しつつ、物流拠点の電源の電力供給能力を最大限活用することができる。
【0057】
一方で、想定電力が最大供給電力以下である場合、制御信号生成部23は、物流拠点において電源に接続されている複数の保冷庫10のうち、少なくともいずれかに対して、消費電力を増やすように動作状態を変更する制御信号を生成する。想定電力が最大供給電力以下である場合とは、物流拠点において複数の保冷庫10が必要とする電力の合計が、物流拠点の電力供給能力を下回る場合である。
【0058】
制御信号生成部23は、蓄冷動作と充電動作のいずれも行わず、待機動作を行っている保冷庫10に対しては、充電動作のみ、蓄冷動作のみ、蓄冷動作および充電動作の両方、のいずれかを行うように動作状態を変更する制御信号を生成する。また、制御信号生成部23は、充電動作のみを行っている保冷庫10に対しては、蓄冷動作のみ、または蓄冷動作および充電動作の両方、を行うように動作状態を変更する制御信号を生成する。また、制御信号生成部23は、蓄冷動作のみを行っている保冷庫10に対しては、蓄冷動作および充電動作の両方、を行うように動作状態を変更する制御信号を生成する。
【0059】
このような制御信号を保冷庫10に送信することにより、想定電力を最大供給電力に近づけることができる。これにより、物流拠点の電源の電力供給能力を最大限活用することができる。
【0060】
なお、制御信号生成部23は、物流拠点において電源に接続されている全ての保冷庫10に対し、消費電力を増やすように動作状態を変更する制御信号を生成しなくてもよい。すなわち、制御信号生成部23は、蓄冷動作および充電動作の優先順位がより高い保冷庫10に対し、より優先的に制御信号を生成すればよい。ここで、制御信号生成部23は、制御信号を保冷庫10に送信したことにより増えることが予想される保冷庫10の消費電力の合計値が、想定電力と最大供給電力との差分値以下となるように、消費電力を増やすように動作状態を変更する制御信号を生成すればよい。
【0061】
このような制御により、物流拠点における全保冷庫10の消費電力の合計を、最大供給電力以下、かつ、最大供給電力にできるだけ近い値とすることができる。これにより、物流拠点において保冷庫10の消費電力が最大供給電力を超えて保冷庫10の蓄冷動作または充電動作を行うことができなくなる事態を抑制しつつ、物流拠点の電源の電力供給能力を最大限活用することができる。
【0062】
なお、物流拠点における、蓄冷動作および充電動作の優先順位は、例えば制御信号生成部23が、以下例示する第1または第2の設定方法によって随時設定すればよい。
【0063】
第1の設定方法では、物流拠点において、新たに電源に接続された保冷庫10は、既に電源に接続されている保冷庫10よりも優先順位が高く設定される。また、第1の設定方法では、物流拠点において、既に電源に接続されている保冷庫10のうち、より蓄冷残量または充電残量が少ないものの方が、優先順位がより高く設定される。また、第1の設定方法では、蓄冷残量が少ない保冷庫10の方が、充電残量が同程度に少ない保冷庫10よりも、優先順位がより高く設定される。このような第1の設定方法で優先順位が設定されることにより、内部を冷却できない保冷庫10から優先的に蓄冷動作または充電動作が行われることになる。これにより、例えば短距離の物品の搬送に利用できる保冷庫の数をいち早く揃えることができる。
【0064】
第2の設定方法では、物流拠点において、既に電源に接続されている保冷庫10は、新たに電源に接続された保冷庫10よりも優先順位が高く設定される。また、第2の設定方法では、物流拠点において、既に電源に接続されている保冷庫10のうち、より蓄冷残量または充電残量が多いものの方が、優先順位がより高く設定される。このような第2の設定方法で優先順位が設定されることにより、物流拠点において蓄冷残量および充電残量が満容量に近い保冷庫10の数を増やすことができる。これにより、例えば長距離の物品の搬送に使用できる満容量の保冷庫10の数をいち早く揃えることができる。
【0065】
物流拠点毎の保冷庫10の優先順位は、例えば保冷庫10から新たに制御要求および状態情報を受信したタイミングで、制御信号生成部23によって設定される。設定された優先順位を示す優先順位情報は、記憶部24に記憶されており、制御信号生成部23は、新たに優先順位を設定した場合、新たな設定に基づいて記憶部24の優先順位情報を更新する。
【0066】
制御信号生成部23が生成した制御信号は、通信部21を介して、対象の保冷庫10に送信される。
【0067】
記憶部24は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、または不揮発性メモリなどの記憶媒体により構成され、管理装置20で用いられる各種情報を記憶する。
【0068】
記憶部24は、上述した優先順位情報の他、物流拠点毎、保冷庫10毎の動作状態を管理する管理情報を記憶する。記憶部24は、例えば保冷庫10から動作状態が変更された状態情報を受信したとき、および、保冷庫10の動作状態を変更させる制御信号が送信されたとき、管理情報を更新する。
【0069】
また、記憶部24は、各動作状態における保冷庫10の消費電力を示す消費電力情報を記憶する。消費電力情報は、
図5に関連して説明した第1電力および第2電力の値を示す情報である。消費電力情報には、さらに第3電力の値が含まれていてもよい。消費電力情報は、管理システム100の構築時に予め記憶部24に記憶されればよい。また、記憶部24は、物流拠点毎の最大供給電力を示す最大供給電力情報を記憶する。
【0070】
<2.動作例>
以下では、上述した構成を有する管理システム100の動作例について説明する。
【0071】
[管理システム100の全体の動作例]
図6は、管理システム100の全体の動作例を説明するためのシーケンス図である。
【0072】
ステップS1において、保冷庫10は、制御要求送信契機が発生したことを検知する。上述したように、制御要求送信契機とは、例えば、新たに保冷庫10が物流拠点の電源に接続されたこと、蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを行っていた保冷庫10において、蓄冷残量および充電残量が満容量となったこと、電源に接続されていた保冷庫10の電源との接続が解除されたこと、などである。
【0073】
保冷庫10は、保冷庫10が新たに電源に接続されたこと、または電源との接続が解除されたことについては、検出部112の検出結果に基づいて検知すればよい。また、保冷庫10は、蓄冷残量および充電残量が満容量となったことについては、制御部110が制御する蓄冷動作および充電動作の進捗状況に基づいて検知すればよい。
【0074】
ステップS2において、制御要求送信契機の発生が検知された保冷庫10は、管理装置20に対し、制御要求を送信する。制御要求は、管理装置20からの制御信号を要求する信号である。
【0075】
ステップS3において、制御要求を受信した管理装置20は、まず保冷庫10との通信接続を確立させるための接続応答を保冷庫10に送信する。これにより、保冷庫10と管理装置20との通信接続が確立される。
【0076】
ステップS4において、保冷庫10は、接続応答の受信に応じて、その時点での保冷庫10の動作状態を示す状態情報を送信する。例えば保冷庫10が蓄冷動作のみを行っていた場合、状態情報は、保冷庫10が蓄冷動作のみを行っていることを示す情報である。例えば保冷庫10が充電動作のみを行っていた場合、状態情報は、保冷庫10が充電動作のみを行っていることを示す情報である。例えば保冷庫10が蓄冷動作と充電動作の両方を同時に行っていた場合、状態情報は、保冷庫10が蓄冷動作と充電動作の両方を同時に行っていることを示す情報である。例えば保冷庫10が待機動作を行っていた場合、状態情報は、保冷庫10が待機動作を行っていることを示す情報である。
【0077】
ステップS5において、管理装置20は、受信した制御要求および状態情報に基づいて、保冷庫10を制御する制御信号を生成し、送信する。この制御信号は、物流拠点において複数の保冷庫10が電源に接続されている場合、保冷庫10毎に生成され、送信される。
【0078】
ステップS6において、保冷庫10は、制御信号に基づいて各種の動作を実行する。これにより、物流拠点において、保冷庫10毎に適切な動作が実行され、物品の搬送に利用可能な保冷庫10の準備が確実に行われる。
【0079】
保冷庫10は、ステップS6の後、制御要求送信契機の発生が検知されるまで、動作を継続する。制御要求送信契機の発生を検知した場合、処理はステップS1に戻る。
【0080】
[管理装置20の動作例]
図7は、管理装置20の動作例を説明するためのフローチャートである。
図7に示すフローチャートは、
図6に示すシーケンス図における、主にステップS5の処理を詳細に説明するものである。
【0081】
ステップS21において、管理装置20は、複数の保冷庫10のいずれかから制御要求および状態情報を受信したか否かを判断する。制御要求および状態情報を受信した場合(ステップS21:YES)、管理装置20は処理をステップS22に進め、そうでない場合(ステップS21:NO)、ステップS21の処理を繰り返す。なお、以下の説明において、ステップS21で受信した制御要求および状態情報を送信した保冷庫10が取り扱われる物流拠点を、単に物流拠点と記載する。
【0082】
ステップS22において、管理装置20は、物流拠点全体の想定電力を新たに算出する。上述したように、想定電力とは、物流拠点にて取り扱われる全ての保冷庫10の、そのタイミングにおける消費電力の合計値である。
【0083】
管理装置20は、ステップS21で受信した制御要求および状態情報を送信した保冷庫10以外の保冷庫10の動作状態を、記憶部24に記憶されている管理情報に基づいて取得する。そして、管理装置20は、物流拠点における全保冷庫10の動作状態に基づく消費電力を消費電力情報に基づいて取得する。そして、管理装置20は、全保冷庫10の消費電力を合計することで想定電力を算出する。
【0084】
ステップS23において、管理装置20は、ステップS21で受信した制御要求および状態情報に基づいて、物流拠点における保冷庫10の優先順位を更新する。なお、ステップS22の処理とステップS23の処理は、必ずしもこの順番で行われなくてもよく、同時に行われてもよいし、ステップS23の処理がステップS22の処理より先に行われてもよい。
【0085】
ステップS24において、管理装置20は、保冷庫10が制御要求および状態情報を送信する契機となった制御要求送信契機の内容が、第1の契機であるか、第2または第3の契機であるか、を判断する。制御要求送信契機の内容は、保冷庫10から受信した制御要求または状態情報に含まれていればよい。
【0086】
上述したように、第1の契機は、物流拠点に勤務する人物により、保冷庫10が新たに配送拠点の電源に接続されたことである。第2の契機は、蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを行っていた保冷庫10において、蓄冷残量および充電残量がいずれも満容量となり、蓄冷動作および充電動作を終了させたことである。第3の契機は、物流拠点に勤務する人物により、接続されていた電源との接続が解除された、具体的には電源プラグ18がコンセントから抜かれたことである。
【0087】
ステップS24で第1の契機であると判断した場合、管理装置20は、処理をステップS25に進め、第2または第3の契機であると判断した場合、処理をステップS28に進める。
【0088】
ステップS25において、管理装置20は、ステップS22で算出した想定電力と、保冷庫10が取り扱われる物流拠点の最大供給電力とを比較し、想定電力が最大供給電力より大きいか否かを判断する。物流拠点の最大供給電力は、記憶部24に記憶されている最大供給電力情報に基づいて取得されればよい。
【0089】
想定電力が最大供給電力より大きい場合(ステップS25:YES)、管理装置20は処理をステップS26に進め、そうでない場合(ステップS25:NO)、処理をステップS27に進める。
【0090】
ステップS26において、管理装置20は、物流拠点で電源に接続されている保冷庫10のうち、少なくともいずれかの保冷庫10に対し、消費電力を減らすように動作状態を変更する制御信号を生成する。ここで、管理装置20は、記憶部24に記憶されている優先順位情報および管理情報に基づいて、蓄冷動作および充電動作の優先順位が低い保冷庫10に対し、より優先的に動作を停止させる制御信号を生成し、送信する。管理装置20は、ステップS26で生成する制御信号により減る消費電力の合計が、ステップS22で算出した想定電力と最大供給電力との差分値を超えるまで、物流拠点において電源に接続されている、異なる保冷庫10に対してこのような制御信号を生成し、送信する。
【0091】
このような処理により、物流拠点における全保冷庫の消費電力の合計を、最大供給電力以下とすることができ、かつ、最大供給電力にできるだけ近い値とすることができる。これにより、物流拠点における電力供給能力を最大限に活用することができる。
【0092】
ステップS27において、管理装置20は、物流拠点で電源に接続されている保冷庫10のうち、少なくともいずれかの保冷庫10に対し、消費電力を増やすように動作状態を変更する制御信号を生成する。ここで、管理装置20は、記憶部24に記憶されている優先順位情報および管理情報に基づいて、蓄冷動作および充電動作の優先順位が高い保冷庫10に対し、より優先的に蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを行わせる制御信号を生成し、送信する。新たに電源に接続された保冷庫10の優先順位は、ステップS23において既に電源に接続されていた他の保冷庫10よりも高く設定されるため、新たに電源に接続された保冷庫10に対しては、より優先的に蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを行わせる制御信号が生成、送信される。管理装置20は、ステップS26で生成する制御信号により増える消費電力の合計が、ステップS22で算出した想定電力と最大供給電力との差分値以下となるまで、1または複数の保冷庫10に対してこのような制御信号を生成し、送信する。
【0093】
このような処理により、物流拠点における全保冷庫の消費電力の合計を、最大供給電力以下とすることができ、かつ、最大供給電力にできるだけ近い値とすることができる。これにより、物流拠点における電力供給能力を最大限に活用することができる。
【0094】
一方、ステップS28において、管理装置20は、物流拠点において待機動作を行っている保冷庫10の少なくともいずれかに対し、消費電力を増やすように動作状態を変更する制御信号を生成する。管理装置20は、ステップS28で生成する制御信号により増える消費電力の合計が、ステップS22で算出した想定電力と最大供給電力との差分値以下となるまで、1または複数の保冷庫10に対してこのような制御信号を生成し、送信する。
【0095】
このような処理により、保冷庫10のいずれかが動作停止、または電源との接続が解除され、物流拠点における消費電力に余裕が生じた場合には、他の保冷庫10に対し、蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを行わせることができる。これにより、物流拠点における電力供給能力を最大限に活用することができる。
【0096】
ステップS29において、管理装置20は、ステップS26、S27、またはステップS28のいずれかで送信した制御信号の内容に基づいて、制御信号を送信した保冷庫10に対応する状態情報を更新する。
【0097】
<3.効果など>
以上説明したように、本開示の実施の形態に係る管理システム100は、内部に収納した物品を保冷する複数の保冷庫10と、拠点の電源に接続されている保冷庫10毎の動作状態に基づいて、拠点全体で複数の保冷庫10への給電に必要であると想定される想定電力を算出し、拠点に対し予め設定された最大供給電力および想定電力に基づいて、複数の保冷庫10の動作状態を制御する管理装置20と、を備える。
【0098】
これにより、拠点において最大供給電力より想定電力の方が大きい場合は、保冷庫10の少なくとも一部に対し消費電力を減らすように動作状態を制御することができるので、拠点の供給電力が消費電力に足りずに保冷庫10の動作を行うことができない事態を抑制できる。また、想定電力が最大供給電力以下である場合は、より多くの電力を使用するように保冷庫10の動作状態を制御することができる。これにより、拠点の電力供給能力を有効に活用することができる。
【0099】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、拠点の電源に接続されている保冷庫10毎の消費電力を、それぞれの保冷庫10の動作状態に基づいて取得し、電源に接続されている全保冷庫10の消費電力の合計を想定電力として算出してもよい。
【0100】
これにより、複数の保冷庫10の動作状態を正確に反映した想定電力を算出できる。
【0101】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、保冷庫10が蓄冷材15に冷熱を蓄積する蓄冷動作を行っている場合には所定の第1電力を当該保冷庫10の消費電力として取得し、保冷庫10が蓄冷材15に蓄えられた冷熱を内部に循環させるための電力を充電する充電動作を行っている場合には所定の第2電力を当該保冷庫10の消費電力として取得し、保冷庫10が蓄冷動作と充電動作の両方を行っている場合には第1電力と第2電力を加算した第3電力を当該保冷庫10の消費電力として取得してもよい。
【0102】
これにより、消費電力の異なる蓄冷動作と充電動作を有する保冷庫10において、複数の保冷庫10の動作状態を正確に反映した想定電力を算出できる。
【0103】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、電源に新たに保冷庫10が接続されたとき、および、電源にすでに接続されている保冷庫10の運転状態が変化したとき、の少なくともいずれかにおいて、想定電力の算出を行う。
【0104】
これにより、想定電力に変更があった場合にのみ想定電力を更新できるので、管理装置20のリソースを節約することができる。
【0105】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、想定電力が最大供給電力以下である場合、電源に接続されている保冷庫10の少なくともいずれかに対し消費電力が増えるように動作状態を変更する制御信号を送信する。
【0106】
このように、拠点全体において、拠点の電力供給能力に余裕がある場合には保冷庫10の消費電力を増やす制御を行うので、拠点の電力供給能力を最大限に活用することができる。
【0107】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、管理装置20は、想定電力が最大供給電力以下である場合、電源に新たに接続された保冷庫10に対し、蓄冷動作と充電動作の少なくともいずれかを行うように動作状態を変更する制御信号を送信する。
【0108】
これにより、拠点の電力供給能力に余裕がある場合には、保冷庫10が電源に接続されたにもかかわらず、保冷庫10の蓄冷動作または充電動作がいずれも行われない事態を回避できる。
【0109】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、管理装置20は、想定電力が最大供給電力以下である場合、電源に既に接続されている保冷庫10のうち、蓄冷動作のみを行っている保冷庫10に対する、蓄冷動作と充電動作の両方を行うように動作状態を変更する制御信号、充電動作のみを行っている保冷庫10に対する、蓄冷動作のみ、または蓄冷動作と充電動作の両方を行うように動作状態を変更する制御信号、および、蓄冷動作と充電動作のいずれも行わない待機動作を行っている保冷庫10に対する、蓄冷動作と充電動作の少なくともいずれかを行うように動作状態を変更する制御信号、の少なくともいずれかを送信する。
【0110】
これにより、消費電力の異なる蓄冷動作と充電動作を有する保冷庫10に対し、効果的に保冷庫10の消費電力を増やすことができるので、拠点の電力供給能力を最大限に活用することができる。
【0111】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、管理装置20は、想定電力が最大供給電力以下である場合、動作状態を変更させることにより増える消費電力の合計値が、想定電力と最大供給電力との差分値以下となるように、制御信号を生成する。
【0112】
これにより、制御信号により保冷庫10の消費電力が増えることで、拠点の電力供給能力を超えてしまう事態を抑制できる。
【0113】
管理装置20は、電源に新たに保冷庫10が接続され、想定電力が最大供給電力を超える場合、電源に接続されている保冷庫10の少なくともいずれかに対し消費電力が減るように動作状態を変更させる制御信号を送信する。
【0114】
これにより、想定電力が最大供給電力を超えた場合には速やかにその状態を解消することができる。
【0115】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、想定電力が最大供給電力を超える場合、電源に新たに接続された保冷庫10に対し、蓄冷動作と充電動作のいずれも行わない待機動作を行うように動作状態を変更する制御信号を送信する。
【0116】
これにより、想定電力が最大供給電力を超えた場合には速やかにその状態を解消することができる。
【0117】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、想定電力が最大供給電力を超える場合、蓄冷動作のみを行っている保冷庫10に対する、充電動作のみを行うように動作状態を変更する制御信号、充電動作のみを行っている保冷庫10に対する、蓄冷動作と充電動作のいずれも行わない待機動作を行うように動作状態を変更する制御信号、および蓄冷動作と充電動作の両方を行っている保冷庫10に対する、蓄冷動作のみまたは充電動作のみを行う、もしくは待機動作を行うように動作状態を変更させる制御信号、の少なくともいずれかを送信する。
【0118】
これにより、消費電力の異なる蓄冷動作と充電動作を有する保冷庫10に対し、効果的に保冷庫10の消費電力を減らすことができる。
【0119】
本開示の実施の形態に係る管理システム100によれば、管理装置20は、想定電力が最大供給電力を超える場合、動作状態を変更させることにより減る消費電力の合計値が、想定電力と最大供給電力との差分値を超えるように、制御信号を生成する。
【0120】
これにより、速やかに、かつ確実に、想定電力が最大供給電力を超えた状態を解消することができる。
【0121】
<変形例>
上述した実施の形態において、保冷庫10は通信部111を有し、管理装置20との通信接続が可能に構成されている。しかしながら、本開示は、通信部を元々有しない保冷庫に対し、後付けの通信モジュールを追加する場合にも適用が可能である。
【0122】
保冷庫に追加される通信モジュールは、ネットワークを介して管理装置と通信する機能と、上述した実施の形態にて説明した制御部110の機能のうち、蓄冷動作および充電動作の少なくともいずれかを制御する機能、ならびに、物品の搬送中にファンを回転させる制御を行う機能を除く機能と、を有する。これにより、既に普及しており、管理装置20との通信機能を有しない保冷庫に対し、後付けの通信モジュールを追加することで、本開示を適用可能な保冷庫とすることができる。これにより、本開示に係る管理システムを比較的安価で提供することができ、好適である。
【産業上の利用可能性】
【0123】
本開示は、複数の保冷庫の動作状態を管理する管理システムに有用である。
【符号の説明】
【0124】
100 管理システム
10,10A,10B,10C,10D,10E 保冷庫
11 筐体
12 貯蔵室
13 扉
14 冷却装置
141 凝縮器
142 圧縮機
143 膨張弁
144 蒸発器
15 蓄冷材
16 ファン
17 バッテリ
18 電源プラグ
110 制御部
111 通信部
112 検出部
20 管理装置
21 通信部
22 算出部
23 制御信号生成部
24 記憶部