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特開2024-173305シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173305
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20241205BHJP
   C08L 45/00 20060101ALI20241205BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20241205BHJP
   F16C 13/00 20060101ALI20241205BHJP
【FI】
C08L9/00
C08L45/00
C08L23/08
F16C13/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091642
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125184
【弁理士】
【氏名又は名称】二口 治
(74)【代理人】
【識別番号】100188488
【弁理士】
【氏名又は名称】原谷 英之
(72)【発明者】
【氏名】▲濱▼窪 眞司
(72)【発明者】
【氏名】藤井 良輔
【テーマコード(参考)】
3J103
4J002
【Fターム(参考)】
3J103AA02
3J103AA12
3J103AA23
3J103BA41
3J103FA23
3J103GA02
3J103GA33
3J103HA03
3J103HA53
4J002AC011
4J002AC061
4J002BB05X
4J002BK00Y
4J002CE00Y
4J002GM00
(57)【要約】
【課題】摩擦係数が向上したシート搬送ローラを作製できるゴム組成物を提供する。
【解決手段】本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、基材ゴムとテルペン系樹脂とを含有し、前記基材ゴムが、ジエン系ゴムを含有することを特徴とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材ゴムとテルペン系樹脂とを含有し、
前記基材ゴムが、ジエン系ゴムを含有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項2】
前記基材ゴム100質量%中のジエン系ゴムの含有率が、50質量%以上である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項3】
前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムを含む請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項4】
前記テルペン系樹脂の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して、1質量部~15質量部である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項5】
前記基材ゴムが、さらにエチレン-α-オレフィン共重合体を含有する請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項6】
前記シートが、枚葉紙である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物から成型されたことを特徴とするシート搬送ローラ。
【請求項8】
基材ゴムとテルペン系樹脂とを含有するシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法であって、
ジエン系ゴムを含有する基材ゴムと、テルペン系樹脂とを、テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混練することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
基材ゴムとテルペン系樹脂と加硫剤とを含有するシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法であって、
ジエン系ゴムを含有する基材ゴムとテルペン系樹脂とを、テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得る第1工程と、
前記混練物に加硫剤を混合する第2工程とを有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート搬送ローラの形成に使用されるゴム組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
静電式複写機、レーザープリンタ、普通紙ファクシミリ装置、およびこれらの複合機、インクジェットプリンタ等の画像形成装置、ならびに自動現金預払機(ATM)等の機器類におけるシート搬送機構には、各種のシート搬送ローラが組み込まれている。前記シート搬送ローラは、紙、プラスチックフィルム等のシートと接触しながら回転して摩擦によってシートを搬送する。
【0003】
シート搬送ローラの材料としては、摩擦係数、耐環境性能(耐オゾン性等)、コストなどの観点からエチレンプロピレンジエンモノマー共重合体(EPDM)が使用されることが多い。ここで、近年、画像形成装置等で使用されるシートの種類が多岐にわたるようになり、シート搬送ローラに対して高い摩擦係数が要求される場合がある。特に、帳票類のスキャナやソートを行う書類処理装置に使用される枚葉類搬送用のローラは、高速で多様な枚葉類を送り出すため、摩耗しやすく、摩耗した状態でも高い摩擦係数の維持が要求されている。そこで、ローラの摩擦係数を高める様々な技術が提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、紙送りローラのローラ本体を形成するためのゴム組成物であって、少なくともエチレンプロピレンジエンゴムを含むゴム、前記ゴムの総量100質量部あたり20質量部以下のフィラー、および前記ゴムの総量100質量部あたり2.5質量部以上の過酸化物架橋剤を含み、前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレン含量が55%以上、72%以下の非油展エチレンプロピレンジエンゴムと、油展エチレンプロピレンジエンゴムであり、前記非油展エチレンプロピレンジエンゴムの割合は、前記ゴムの総量100質量部中の20質量部以上、80質量部以下であるゴム組成物が記載されている。
【0005】
また、特許文献2には、ローラ本体を含み、前記ローラ本体は、イソプレンゴム、および天然ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種のイソプレン系ゴム(ただし、エポキシ化天然ゴムを除く)を、ゴムの総量100質量部中に55質量部以上の割合で含むゴム組成物の架橋物からなる紙送りローラが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2020-02271号公報
【特許文献2】特開2021-91549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、シート搬送ローラの摩擦係数を向上するゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、EPDMを含む基材ゴムにテルペン系樹脂を添加したゴム組成物から摩擦係数に優れたシート搬送ローラを作製できることについて既に出願済みであるが、さらなる摩擦係数の向上を求めて鋭意検討した結果、ジエン系ゴムを含む基材ゴムにテルペン系樹脂を添加することにより、作製されたシート搬送ローラの摩擦係数が一層向上することを見出し、本発明を完成するに至った。即ち、上記課題を解決することができた本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、基材ゴムとテルペン系樹脂とを含有し、前記基材ゴムが、ジエン系ゴムを含有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、摩擦係数が向上したシート搬送ローラを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明のシート搬送ローラの一例を示す斜視図である。
図2】摩擦係数測定方法を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<シート搬送ローラ用ゴム組成物>
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物(以下、単に「ゴム組成物」と称する場合がある。)は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム、および、テルペン系樹脂を含有する。
【0012】
(基材ゴム)
前記ゴム組成物は、基材ゴムとして、ジエン系ゴムを含有する。前記ジエン系ゴムは、構成成分として、ジエン化合物を主体として含む重合体であれば特に限定されず、ジエン化合物からなる重合体(1種のジエン化合物からなる単独重合体、または、複数種のジエン化合物からなる共重合体)であってもよいし、ジエン化合物と非ジエン化合物からなる共重合体であってもよい。これらのジエン系ゴムは、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0013】
前記ジエン化合物としては、例えば、イソプレン、クロロプレン、ブタジエン、ペンタジエンなどが挙げられる。前記ジエン化合物は、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。なお、前記ジエン化合物としては、共役ジエン化合物を用いることが好ましい。
【0014】
前記非ジエン化合物としては、例えば、スチレン、アクリロニトリル、エチレン、プロピレンなどが挙げられる。前記非ジエン化合物は、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。
【0015】
前記ジエン系ゴムの具体例としては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)等が挙げられる。これらの中でも、摩擦係数をより向上させる点から、天然ゴム、イソプレンゴム、スチレンブタジエンゴムが好ましく、天然ゴム、イソプレンゴムがより好ましい。
【0016】
天然ゴムは、ゴム含有植物に由来し、純粋なシス-1,4-ポリイソプレンを含むものである。前記天然ゴムとしては、例えば、生産地で分類されるSMR(標準マレーシアゴム)、SVR(標準ベトナムゴム)、SIR(標準インドネシアゴム)、STR(標準タイゴム)、SSR(標準シンガポールゴム)、SCR(標準セイロンゴム)等の各種天然ゴムや、グリーンブックによって分類される品種等級のうちリブドスモークドシート、ホワイトクレープ、ペールクレープ、エステートブラウンクレープ、コンポクレープ、薄手ブラウンクレープ、厚手ブランケットクレープ等の各種シートゴムが挙げられる。また、前記天然ゴムとしては、脱蛋白天然ゴム、水素添加天然ゴム、グラフト化天然ゴム等の改質天然ゴムも挙げられる。これらの天然ゴムは、単独で使用してもよく、2種を併用してもよい。なお、本発明では、天然ゴムとして、特に改質されないものを使用することが好ましい。
【0017】
イソプレンゴムは、天然ゴムの構造を人工的に再現したものである。前記イソプレンゴムとしては、例えば、ムーニー粘度によって分類される各種品番のイソプレンゴムが挙げられる。
【0018】
前記ジエン系ゴムは、ジエン化合物に由来する構造単位の含有率が、50質量%以上が好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、特に好ましくは90質量%以上である。なお、前記含有率の上限は、100質量%である。ジエン化合物に由来する構造単位の含有率が前記範囲であればローラの摩擦係数がより向上する。
【0019】
基材ゴムは、前記ジエン系ゴムを主成分として含有することが好ましい。前記基材ゴム100質量%中のジエン系ゴムの含有率は、50質量%以上であることが好ましく、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。なお、本発明では、前記基材ゴムとして、ジエン系ゴムのみを含有することも好ましい態様である。ジエン系ゴムの含有率が前記範囲であればローラの摩擦係数がより向上する。
【0020】
本発明のゴム組成物は、基材ゴムとして、前記ジエン系ゴムに加えて、さらに非ジエン系ゴムを含有してもよい。前記非ジエン系ゴムは、構成成分として、非ジエン化合物を主体として含む重合体であれば特に限定されず、例えば、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エピクロルヒドリン系ゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、シリコンゴム等が挙げられる。これらの非ジエン系ゴムは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、耐オゾン性を向上させる観点などで、特にエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0021】
エチレン-α-オレフィン共重合体は、構成成分として、少なくともエチレンとα-オレフィンとを含む共重合体である。また、前記エチレン-α-オレフィン共重合体には、エチレンとα-オレフィンに少量のジエン成分を加えることで、主鎖中に二重結合を導入したエチレン-α-オレフィン-ジエン共重合体も含まれる。前記エチレン-α-オレフィン共重合体は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
前記α-オレフィンとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等が挙げられる。
【0023】
前記ジエン成分としては、エチリデンノルボルネン(ENB)、1,4-ヘキサジエン(1,4-HD)、ジシクロペンタジエン(DCP)等が挙げられ、エチリデンノルボルネンが好ましい。
【0024】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体としては、エチレン-プロピレン共重合体(EPM)、エチレン-ブテン共重合体(EBR)、エチレン-オクテン共重合体(EOR)等が挙げられる。また、前記エチレン-α-オレフィン-ジエン共重合体としては、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)、エチレン-ブテン-ジエン共重合体(EBDM)、エチレン-プロピレン-ブテン-ジエン共重合体(EPBDM)等が挙げられる。
【0025】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体のエチレン成分の含有率は、40質量%以上が好ましく、より好ましくは42質量%以上、さらに好ましくは43質量%以上であり、79質量%以下が好ましく、より好ましくは78質量%以下、さらに好ましくは77質量%以下である。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品を入手しやすく、シート搬送ローラ用として好適なゴムが得られる。
【0026】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体として、前記エチレン-αオレフィン-ジエン共重合体を用いる場合、ジエン成分の含有率は、0.5質量%以上が好ましく、より好ましくは0.7質量%以上、さらに好ましくは1.0質量%以上であり、15質量%以下が好ましく、より好ましくは14質量%以下、さらに好ましくは13質量%以下である。ジエン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品を入手しやすく、シート搬送ローラ用として好適なゴムが得られる。
【0027】
前記エチレン-α-オレフィン共重合体は、伸展油を加えて柔軟性を調整した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあり、いずれも使用できる。なお、油展タイプの場合、添加された伸展油の質量は、加工助剤として取り扱うものとする。
【0028】
エチレン-酢酸ビニル共重合体は、構成成分として、エチレンと酢酸ビニルとを含む共重合体である。エチレン-酢酸ビニル共重合体のエチレン成分の含有率は、5質量%以上が好ましく、より好ましくは7質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上であり、70質量%以下が好ましく、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下である。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品を入手しやすいからである。
【0029】
前記基材ゴムが、前記エチレン-α-オレフィン共重合体および/またはエチレン-酢酸ビニル共重合体を含有する場合、基材ゴム100質量%中のエチレン-α-オレフィン共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有率は、25質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは35質量%以上であり、50質量%未満が好ましく、より好ましくは48質量%以下、さらに好ましくは45質量%以下である。エチレン-α-オレフィン共重合体およびエチレン-酢酸ビニル共重合体の含有率が上記範囲内であれば、高い摩擦係数を維持しつつ、耐オゾン性を向上させることができる。
【0030】
(テルペン系樹脂)
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、テルペン系樹脂を含有する。テルペン系樹脂を含有することで、シート搬送ローラの摩擦係数を高めることができる。
【0031】
前記テルペン系樹脂は、テルペン化合物を構成成分とする重合体であれば、特に限定されない。前記テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、およびこれらの水素添加物が挙げられる。これらのテルペン系樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0032】
前記テルペン樹脂は、テルペン化合物を重合して得られるホモポリマーである。前記テルペン化合物は、(C)nの組成で表される炭化水素及びその含酸素誘導体で、モノテルペン(C1016)、セスキテルペン(C1524)、ジテルペン(C2032)などに分類されるテルペンを基本骨格とする化合物である。前記テルペン化合物としては、例えば、α-ピネン、β-ピネン、ジペンテン、リモネン、ミルセン、アロオシメン、オシメン、α-フェランドレン、α-テルピネン、γ-テルピネン、テルピノレン、1,8-シネオール、1,4-シネオール、α-テルピネオール、β-テルピネオール、γ-テルピネオールなどが挙げられる。前記テルペン化合物は、単独もしくは2種以上を混合して使用することができる。
【0033】
前記テルペン樹脂としては、例えば、α-ピネン重合体、β-ピネン重合体、リモネン重合体、ジペンテン重合体、β-ピネン/リモネン重合体が挙げられる。
【0034】
前記芳香族変性テルペン樹脂は、前記テルペン化合物と芳香族化合物との共重合体である。前記芳香族変性テルペン樹脂としては、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、テルペンフェノールスチレン樹脂等が挙げられる。
【0035】
前記テルペンフェノール樹脂は、例えば、前記テルペン化合物とフェノール系化合物との共重合体である。前記フェノール系化合物としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール、カテコール、レゾルシン、ヒドロキノン、ビスフェノールA等が挙げられる。前記テルペンフェノール樹脂としては、テルペン化合物とフェノールとの共重合体が好ましい。
【0036】
前記テルペンスチレン樹脂は、例えば、前記テルペン化合物とスチレン系化合物との共重合体である。前記スチレン系化合物としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレンなどが挙げられる。前記テルペンスチレン樹脂としては、前記テルペン化合物とα-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0037】
前記テルペンフェノールスチレン樹脂は、例えば、前記テルペン化合物と前記フェノール系化合物と前記スチレン系化合物との共重合体である。前記テルペンフェノールスチレン樹脂としては、前記テルペン化合物とフェノールとα-メチルスチレンとの共重合体が好ましい。
【0038】
また、テルペン系樹脂は、前記テルペン樹脂、芳香族変性テルペン樹脂に水素原子を添加した水素添加テルペン系樹脂も使用できる。水素原子を添加することにより、分子中の二重結合が水素化される。水素添加物は、分子中の二重結合が全て水素化された完全水素添加テルペン系樹脂、分子中の二重結合の一部が水素化された部分水素添加テルペン系樹脂のいずれも使用できる。
【0039】
水素添加テルペン系樹脂としては、前記テルペン樹脂を水素添加して得られる水素添加テルペン樹脂、前記テルペンフェノール樹脂を水素添加して得られる水素添加テルペンフェノール樹脂、前記テルペンスチレン樹脂を水素添加して得られる水素添加テルペンスチレン樹脂、前記テルペンフェノールスチレン樹脂を水素添加して得られる水素添加テルペンフェノールスチレン樹脂等が挙げられる。
【0040】
前記テルペン系樹脂としては、テルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂、テルペンスチレン樹脂、テルペンフェノールスチレン樹脂、水素添加テルペンフェノール樹脂、水素添加テルペンスチレン樹脂、および、水素添加テルペンフェノールスチレン樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0041】
前記テルペン系樹脂の軟化点は、50℃以上が好ましく、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは70℃以上であり、150℃以下が好ましく、より好ましくは140℃以下、さらに好ましくは130℃以下である。前記軟化点が50℃以上であれば保管や計量時の取り扱いが容易であり、150℃以下であれば混練時に樹脂が軟化しやすく、練りこみやすい。なお、テルペン系樹脂の軟化点は、JIS K6220-1(2015)の7.7 軟化点に準拠して測定する。
【0042】
前記テルペン系樹脂の水酸基価は、250mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは200mgKOH/g以下、さらに好ましくは150mgKOH/g以下、特に好ましくは100mgKOH/g以下、最も好ましくは50mgKOH/g以下である。なお、前記テルペン系樹脂の水酸基価の下限は、0mgKOH/gである。テルペン系樹脂の水酸基価が250mgKOH/g以下であれば、得られるローラの耐摩耗性がより向上する。水酸基価は、電位差滴定法(JIS K0070(1992))により測定する。
【0043】
前記ゴム組成物中のテルペン系樹脂の含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して、1.0質量部以上が好ましく、より好ましくは1.5質量部以上、さらに好ましくは2.0質量部以上であり、15質量部以下が好ましく、より好ましくは13質量部以下、さらに好ましくは12質量部以下である。テルペン系樹脂の含有量が1.0質量部以上であればシート搬送ローラの摩擦係数がより向上し、15質量部以下であれば混練時に装置内壁に粘着することが抑制され、加工性が良好となる。
【0044】
(加硫剤)
前記ゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。加硫剤を含有することで、得られるシート搬送ローラの耐摩耗性がより向上する。前記加硫剤としては、硫黄系加硫剤、有機過酸化物などが挙げられる。これらの加硫剤は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記硫黄系加硫剤としては単体硫黄、硫黄ドナー型化合物が挙げられる。前記単体硫黄としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド状硫黄、不溶性硫黄が挙げられる。前記硫黄ドナー型化合物としては、4,4’-ジチオビスモルホリンなどが挙げられる。
【0046】
前記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-ジイソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)3,3,5-トリメチルシクロヘキサンなどが挙げられる。
【0047】
本発明のゴム組成物が加硫剤を含有する場合、その含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは0.8質量部以上、さらに好ましくは1.0質量部以上であり、5.0質量部以下が好ましく、より好ましくは4.0質量部以下、さらに好ましくは3.0質量部以下である。前記加硫剤の含有量が0.5質量部以上であれば形成されるローラの耐摩耗性がより向上し、5.0質量部以下であれば形成されるローラの硬度が高くなりすぎず、摩擦係数がより良好となる。
【0048】
(加硫促進剤)
前記ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。前記加硫促進剤としては、無機促進剤、有機促進剤のいずれも使用できる。前記無機促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等が挙げられる。前記有機促進剤としては、例えば、チウラム系促進剤、チアゾール系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等が挙げられる。加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記硫黄系加硫剤と組み合わせる加硫促進剤としては、チウラム系促進剤とチアゾール系促進剤を併用するのが好ましい。
【0049】
前記チウラム系促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられる。
【0050】
前記チアゾール系促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられる。
【0051】
本発明のゴム組成物が加硫促進剤を含有する場合、その含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.5質量部以上が好ましく、より好ましくは1質量部以上、さらに好ましくは2質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは8質量部以下、さらに好ましくは6質量部以下である。前記加硫促進剤の含有量が0.5質量部以上であれば加硫促進効果が高くなり、10質量部以下であれば形成されるローラの物性がより良好となる。
【0052】
前記チウラム系促進剤とチアゾール系促進剤を併用する場合、これらの質量比(チウラム系/チアゾール系)は、0.5以上が好ましく、より好ましくは1.0以上、さらに好ましくは1.2以上であり、5以下が好ましく、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2以下である。質量比(チウラム系/チアゾール系)が前記範囲内であれば形成されるローラの物性がより良好となる。
【0053】
(加硫促進助剤)
前記ゴム組成物は、加硫促進助剤を含有してもよい。前記加硫促進助剤としては、酸化亜鉛等の金属化合物や、ステアリン酸、オレイン酸、綿実脂肪酸等の脂肪酸が挙げられる。これらの加硫促進助剤は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0054】
本発明のゴム組成物が、加硫促進助剤を含有する場合、その含有量は、前記基材ゴム100質量部に対して1質量部以上が好ましく、より好ましくは3質量部以上、さらに好ましくは5質量部以上であり、10質量部以下が好ましく、より好ましくは9質量部以下、さらに好ましくは8質量部以下である。前記加硫促進助剤の含有量が1質量部以上であれば加硫促進助剤による添加効果が高くなり、10質量部以下であれば形成されるローラの物性がより良好となる。
【0055】
また、加硫促進助剤として金属化合物と脂肪酸を併用することも好ましい。この場合、金属化合物と脂肪酸の質量比(金属化合物/脂肪酸)は、1以上が好ましく、より好ましくは2以上、さらに好ましくは3以上であり、10以下が好ましく、より好ましくは8以下、さらに好ましくは6以下である。質量比(金属化合物/脂肪酸)が前記範囲内であれば形成されるローラの物性がより良好となる。
【0056】
本発明のゴム組成物が、加硫剤として硫黄系加硫剤を含有する場合、さらに加硫促進剤および/または加硫促進助剤を含有することが好ましい。一方、本発明のゴム組成物が、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合、加硫促進剤および/または加硫促進助剤を含有しなくてもよい。
【0057】
(その他の成分)
前記ゴム組成物は、充填剤、加工助剤、老化防止剤、しゃくかい剤、顔料、加硫遅延剤などを、本発明の趣旨を害さない範囲で使用してもよい。これらの添加剤は、必要に応じて配合すればよい。
【0058】
前記充填剤としては、例えば、ゴム用充填剤や補強材として知られているカーボンブラック、シリカ、クレー、タルク、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム等が挙げられる。充填剤を配合することにより、得られるローラの機械的強度等を向上することができる。
【0059】
前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して5質量部以上が好ましく、より好ましくは8質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは80質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下である。充填剤の含有量が前記範囲内であれば形成されるローラの物性がより良好となる。
【0060】
前記加工助剤としては、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、炭化水素(パラフィン)、プロセスオイル等が挙げられる。
【0061】
前記老化防止剤としては、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
【0062】
前記ゴム組成物の硬化物の硬度(デュロメータ法、タイプA硬さ)は、10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。硬化物の硬度が10以上であればシート搬送に適した硬度となり搬送力がより向上し、90以下であればローラ軸の圧入がより容易である。
【0063】
<シート搬送ローラ用ゴム組成物の製造>
前記シート搬送ローラ用ゴム組成物は、基材ゴム、テルペン系樹脂、および、必要に応じて他の成分を配合し、ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等で混練することで調製できる。混練の方法および条件は生産スケールによって適宜選択される。
【0064】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、ジエン系ゴムを含有する基材ゴムと、テルペン系樹脂とを、テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混練することが好ましい。
【0065】
基材ゴムとテルペン系樹脂とをテルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混合することで、テルペン系樹脂をゴムに均一に混合することができる。なお、テルペン系樹脂を複数含有する場合は、最も軟化点が高いテルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混合する。前記混合温度は、テルペン系樹脂の軟化点をT℃としたとき、T+3℃以上がより好ましく、さらに好ましくはT+5℃以上である。なお、テルペン系樹脂を複数含有する場合は、最も軟化点が高いテルペン系樹脂の軟化点をT℃とする。前記混合温度の上限は特に限定されないが、通常200℃未満である。
【0066】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物が、加硫剤を含有する場合、シート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法としては、ジエン系ゴムを含有する基材ゴムと、テルペン系樹脂とを、テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得る第1工程と、前記混練物に加硫剤を混合する第2工程とを有することが好ましい。第1工程と第2工程とを有することで、テルペン系樹脂をゴム成分中に均一に分散させることができ、加硫剤によるスコーチを抑制することができる。
【0067】
前記第1工程では、基材ゴムとテルペン系樹脂とを混合して、混合物を調製する。前記基材ゴムとテルペン系樹脂とを混合する際の混合温度(材料温度)は、テルペン系樹脂の軟化点以上であることが好ましい。テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混合することで、テルペン系樹脂を基材ゴムに均一に混合することができる。なお、テルペン系樹脂を複数含有する場合は、最も軟化点が高いテルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混合する。前記第1工程の混合温度は、テルペン系樹脂の軟化点をT℃としたとき、T+3℃以上がより好ましく、さらに好ましくはT+5℃以上である。なお、テルペン系樹脂を複数含有する場合は、最も軟化点が高いテルペン系樹脂の軟化点をT℃とする。前記第1工程の混合温度の上限は特に限定されないが、通常200℃未満である。
【0068】
前記第1工程の混合は、ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等で行うことができ、ニーダーで行うことが好ましい。
【0069】
前記第1工程では、基材ゴムとテルペン系樹脂のみを混合してもよいし、さらに加硫剤や加硫促進剤以外の成分(例えば、上記した加硫促進助剤や、充填剤、加工助剤、老化防止剤などのその他の成分)を混合してもよい。なお、前記第1工程では、加硫剤および加硫促進剤を混合しないことが好ましい。
【0070】
前記第2工程では、前記第1工程で得られた混練物に加硫剤を混合し、ゴム組成物を調製する。前記混練物と加硫剤とを混合する際の混合温度(材料温度)は、30℃以上が好ましく、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上であり、150℃以下が好ましく、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下である。前記混合温度が、30℃以上であればゴムの可塑化により加硫剤を混合しやすくなり、150℃以下であればスコーチを抑制することができる。
【0071】
前記第2工程の混合は、ニーダー、バンバリーミキサー、オープンロール等で行うことができ、オープンロールで行うことが好ましい。
【0072】
本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物が、加硫促進助剤を含有する場合、加硫促進助剤は第2工程で添加することが好ましい。前記ゴム組成物が、上記した加硫促進助剤や、充填剤、加工助剤、老化防止剤などのその他の成分を含有する場合、これらの成分は第1工程で添加することが好ましい。
【0073】
<シート搬送ローラ>
本発明のシート搬送ローラは、本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物から成型されたものである。
【0074】
シート搬送ローラの形状としては、円筒状、円柱状、多角筒状、多角柱状が挙げられる。シート搬送ローラが円筒状、多角筒状の場合、シート搬送ローラはシャフトを有することが好ましい。前記シャフトの材質は特に限定されず、金属、セラミック、樹脂等が挙げられる。
【0075】
図1にシート搬送ローラの一例を示す。図1に記載のシート搬送ローラ1は、上述した本発明のシート搬送ローラ用ゴム組成物を筒状に形成したローラ本体2を備えている。前記ローラ本体2の中心には断面円形の通孔3が設けられており、当該通孔3には、図示しない駆動系に連結されるなどした円柱状のシャフト4が挿通されて、固定されている。ローラ本体2の外周面は、通孔3およびシャフト4と同心の筒状に形成されている。
【0076】
ローラ本体2とシャフト4とは、例えば、ローラ本体2の通孔3に、当該通孔3の内径よりも外径の大きいシャフト4を圧入する等して、空転を生じないように互いに固定されている。つまり、両者間の径差に基づく締め代により、当該両者間で一定の空転トルク(空転が生じない限界のトルク)が確保されている。
【0077】
シャフト4は、例えば、金属、セラミック、硬質樹脂等によって形成されている。ローラ本体2は、必要に応じて複数個を、1本のシャフト4の複数箇所に固定してもよい。
【0078】
ローラ本体2を製造する方法は、ゴム組成物を押出成形法等によって筒状に成形した後、プレス架橋法等によって架橋する方法;トランスファー成形法等によって筒状に成形するとともに架橋する方法等が挙げられる。
【0079】
ローラ本体2は、上記製造の工程の任意の時点で、必要に応じて、外周面を所定の表面粗さになるように研磨したり、ローレット加工、シボ加工等したりしてもよい。また、外周面が所定幅となるようにローラ本体2の両端をカットしてもよい。ローラ本体2の外周面は、任意のコート層で被覆してもよい。
【0080】
またローラ本体2は、外周面側の外層と通孔3側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を上記本発明のゴム組成物によって形成するのが好ましい。ただし、構造を簡略化し、生産性を向上するとともに製造コストを低下させること等を考慮すると、ローラ本体2は、図1に示すように単層構造とするのが好ましい。
【0081】
また、ローラ本体2は多孔質構造としてもよい。しかし、耐摩耗性を向上したり、圧縮永久ひずみを小さくして、1箇所で接触した状態が比較的長期間に亘って続いても変形による凹みを生じにくくしたりするために、ローラ本体2は、実質的に非多孔質構造であるのが好ましい。
【0082】
前記通孔3は、シート搬送ローラ1の用途によっては、ローラ本体2の中心から偏心した位置に設けてもよい。また、ローラ本体2の外周面は筒状ではなく異形形状、たとえば、筒状の外周面の一部が平面状に切欠かれた形状等であってもよい。これら異形形状のローラ本体2を備えたシート搬送ローラ1を製造するには、先に説明した製造方法によって直接に、異形形状のローラ本体2を成形したのち架橋させてもよいし、筒状に成形したローラ本体2を、後加工によって異形形状としてもよい。
【0083】
また筒状に成形したローラ本体2の通孔3に、当該ローラ本体2の異形形状に対応する変形形状とされたシャフト4を圧入して、ローラ本体2を異形形状に変形させてもよい。
この場合、外周面5の研磨やローレット加工、シボ加工などは、変形前の筒状の外周面
5に対して実施できるため加工性を向上できる。
【0084】
<画像形成装置>
本発明のシート搬送ローラは、例えば、レーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置に組み込むことができる。また、本発明のシート搬送ローラは、例えば、インクジェットプリンタやATM等に組み込むこともできる。さらに、本発明のシート搬送ローラは、帳票類のスキャナやソートを行う書類処理装置に組み込むこともできる。
【0085】
本発明のシート搬送ローラは、シートと接触しながら回転して、摩擦によってシートを搬送する。前記シートとしては、枚葉紙等の枚葉シート、連続紙等の連続シートが挙げられる。前記シート搬送ローラは、例えば、給紙ローラ、搬送ローラ、プラテンローラ、排紙ローラ等として用いることができる。
【実施例0086】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明は、下記実施例によって限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本発明の範囲内に含まれる。
【0087】
[評価方法]
(1)硬度
ゴム組成物の硬化物の硬度は、JIS K6253-3(2012)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を用いて、170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚重ねた状態で、タイプAデュロメータの加圧板を接触させ、接触させてから3秒後に数値を読み取った。なお、前記硬度の測定は、高分子計器社製の硬度計を用いて行った。
【0088】
(2)引張強さ、破断伸び
ゴム組成物の硬化物の引張強さ、破断伸び(切断時伸び)は、JIS K6251(2017)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を用いて、170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製し、これをダンベル形状(ダンベル状3号形、平行部分の厚さ2mm、初期の標線間距離20mm)に打ち抜いて試験片を作製した。引張試験測定装置を用いて物性を測定した(測定温度23℃、引張速度500mm/分)。そして、試験片が切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の試験前の断面積で除することで引張強さを算出した。
【0089】
(3)摩擦係数測定
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙(幅60mm、長さ210mm))を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=300gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで回転させた際に、紙11の一端に接続したロードセル12に加わる搬送力F(gf)を測定した。
測定した搬送力Fと鉛直荷重W1(=300gf)とから式(1)によって初期の摩擦係数μを求めた。
μ=F(gf)/W1(gf) (1)
【0090】
(4)強制摩耗試験
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙)を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=500gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで10分間連続回転させた。その後、回転させる前のローラ本体2の質量W0(g)と回転後のローラ本体2の質量W1(g)とから下記式(2)によって摩耗減量率(%)求めた。
摩耗減量率(%)=100×(W0-W1)/W0 (式2)
【0091】
[ゴム組成物の調製]
表1、2に示した配合となるように、各原料を混合し、ゴム組成物を調製した。具体的には、まず基材ゴム、テルペン系樹脂および充填材を、ニーダーを用いて混合し、混合物を調製した。この際、ニーダー槽内の温度(材料温度)が所定の温度に達してから1分間混合した。次いで、得られた混合物を冷却して、表面温度を30℃~50℃に制御したオープンロールを用いて、前記混合物と加硫剤、加硫促進剤および加硫促進助剤を混合し、ゴム組成物を調製した。得られたゴム組成物の硬化物の測定結果を表1、2に示した。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
表1、2で使用した原料は下記のとおりである。
IR:日本ゼオン製、「Nipol(登録商標)IR2200」(イソプレンゴム)
NR:ベトナム製天然ゴム(CV-60)
SBR:日本ゼオン製、「Nipol(登録商標)1502」(スチレンブタジエンゴム、結合スチレン量:23.5質量%)
EPDM:住友化学社製、エスプレン505A(非油展EPDM)(エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン含有率50質量%、ジエン成分含有率9.5質量%)
テルペン系樹脂1:ヤスハラケミカル製、「YSレジンPX1000」(テルペン樹脂、軟化点100℃、水酸基価0mgKOH/g)
テルペン系樹脂2:ヤスハラケミカル製、「YSレジンTO105」(芳香族変性テルペン樹脂、軟化点105℃、水酸基価0mgKOH/g)
テルペン系樹脂3:ヤスハラケミカル製、「YSポリスターU115」(テルペンフェノール樹脂、軟化点115℃、水酸基価40mgKOH/g)
テルペン系樹脂4:ヤスハラケミカル製、「YSポリスターK125」(テルペンフェノール樹脂、軟化点125℃、水酸基価200mgKOH/g)
テルペン系樹脂5:ヤスハラケミカル製、「YSポリスターUH115」(水素添加テルペンフェノール樹脂、軟化点115℃、水酸基価20mgKOH/g)
硫黄:鶴見化学製、5%オイル入り硫黄
有機過酸化物:日油製、「パークミル(登録商標)D」(ジクミルパーオキサイド)
チウラム系加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラー(登録商標)TOT-N」(テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド)
チアゾール系加硫促進剤:大内新興化学工業製、「ノクセラーDM」(ジ-2-ベンゾチアジルジスルフィド)
酸化亜鉛:三井金属鉱業社製、酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油製、ステアリン酸つばき
カーボンブラック:東海カーボン社製、シースト(登録商標)3
炭酸カルシウム:備北粉化工業社製、BF-300
【0095】
[シート搬送ローラの製造]
上記で得たゴム組成物を用いて、トランスファー成形により、170℃、30分間の成形条件で円筒状に成形した。円筒状の成形体に、シャフト(外径12mm)を圧入し、円筒研削盤を用いてゴムローラの外径が22mmとなるように研磨し、ゴムローラ部分の幅を25mmにカットし、シート搬送ローラを作製した。得られたシート搬送ローラの評価結果を、表1、2に示した。
【0096】
ゴム組成物No.1~4は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム(イソプレンゴム(IR))と、テルペン系樹脂と、加硫剤として硫黄を含有する場合である。ゴム組成物No.5は、ジエン系ゴムと硫黄を含有し、テルペン系樹脂を含有しない場合である。ゴム組成物No.1~4から形成されたシート搬送ローラは、テルペン系樹脂を含有しないゴム組成物No.5から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0097】
ゴム組成物No.6~9は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム(イソプレンゴム(IR))と、テルペン系樹脂と、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合である。ゴム組成物No.10は、ジエン系ゴムと有機過酸化物を含有し、テルペン系樹脂を含有しない場合である。ゴム組成物No.6~9から形成されたシート搬送ローラは、テルペン系樹脂を含有しないゴム組成物No.10から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0098】
ゴム組成物No.11~13は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム(天然ゴム)と、テルペン系樹脂と、加硫剤として硫黄を含有する場合である。ゴム組成物No.14は、ジエン系ゴムと硫黄を含有し、テルペン系樹脂を含有しない場合である。ゴム組成物No.11~13から形成されたシート搬送ローラは、テルペン系樹脂を含有しないゴム組成物No.14から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0099】
ゴム組成物No.15~17は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム(イソプレンゴムとスチレンブタジエンゴム)と、テルペン系樹脂と、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合である。ゴム組成物No.18は、ジエン系ゴムと有機過酸化物を含有し、テルペン系樹脂を含有しない場合である。ゴム組成物No.15~17から形成されたシート搬送ローラは、テルペン系樹脂を含有しないゴム組成物No.18から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0100】
ゴム組成物No.19は、基材ゴムとしてのジエン系ゴム(イソプレンゴムとスチレンブタジエンゴム)と、エチレン-α-オレフィン共重合体と、テルペン系樹脂と、加硫剤として有機過酸化物を含有する場合である。ゴム組成物No.20は、ジエン系ゴムとエチレン-α-オレフィン共重合体と有機過酸化物を含有し、テルペン系樹脂を含有しない場合である。ゴム組成物No.19から形成されたシート搬送ローラは、テルペン系樹脂を含有しないゴム組成物No.20から形成されたシート搬送ローラよりも摩擦係数が向上していた。
【0101】
本発明(1)は、基材ゴムとテルペン系樹脂とを含有し、前記基材ゴムが、ジエン系ゴムを含有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0102】
本発明(2)は、前記基材ゴム100質量%中のジエン系ゴムの含有率が、50質量%以上である本発明(1)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0103】
本発明(3)は、前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムを含む本発明(1)または(2)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0104】
本発明(4)は、前記テルペン系樹脂の含有量が、前記基材ゴム100質量部に対して、1質量部~15質量部である本発明(1)~(3)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0105】
本発明(5)は、前記基材ゴムが、さらにエチレン-αオレフィン共重合体を含有する本発明(1)~(4)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0106】
本発明(6)は、前記シートが、枚葉紙である本発明(1)~(5)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
【0107】
本発明(7)は、本発明(1)~(6)のいずれかに記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物から成型されたことを特徴とするシート搬送ローラである。
【0108】
本発明(8)は、基材ゴムとテルペン系樹脂とを含有するシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法であって、ジエン系ゴムを含有する基材ゴムと、テルペン系樹脂とを、テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混練することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法である。
【0109】
本発明(9)は、基材ゴム、テルペン系樹脂および加硫剤を含有するシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法であって、ジエン系ゴムを含有する基材ゴムと、テルペン系樹脂とを、テルペン系樹脂の軟化点以上の温度で混練して混練物を得る第1工程と、前記混練物に加硫剤を混合する第2工程とを有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法である。
【産業上の利用可能性】
【0110】
本発明のシート搬送ローラは、向上した摩擦係数を有することから、搬送性能の向上が期待される。特に、本発明のシート搬送ローラは、摩耗した状態でも高い摩擦係数の維持が要求される、帳票類のスキャナやソートを行う書類処理装置に使用される枚葉類搬送用のローラとしても、有効に使用できる。
【符号の説明】
【0111】
1:シート搬送ローラ、2:ローラ本体、3:通孔、4:シャフト、10:板、11:紙、12:ロードセル
図1
図2