(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173310
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20241205BHJP
B32B 7/023 20190101ALI20241205BHJP
G02F 1/13363 20060101ALN20241205BHJP
【FI】
G02B5/30
B32B7/023
G02F1/13363
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091648
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003845
【氏名又は名称】弁理士法人籾井特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 暢
(72)【発明者】
【氏名】長田 潤枝
(72)【発明者】
【氏名】菅野 亮
(72)【発明者】
【氏名】松多 楓
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
4F100
【Fターム(参考)】
2H149AA02
2H149AA18
2H149AB02
2H149AB23
2H149BA02
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2H149DA18
2H149EA03
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2H149FA02X
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2H291FA22X
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2H291FB05
2H291FD12
2H291LA28
2H291PA07
2H291PA42
2H291PA44
2H291PA52
2H291PA53
2H291PA54
2H291PA84
2H291PA87
4F100AJ06
4F100AK01B
4F100AK01D
4F100AK02
4F100AK21A
4F100AK25C
4F100AK26C
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4F100GB41
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4F100JN10A
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4F100YY00B
4F100YY00C
4F100YY00D
(57)【要約】
【課題】液晶配向固化層を含み、かつ、画像表示装置に適用された場合に特定の表示ムラを抑制し得る光学積層体を提供すること。
【解決手段】本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子を含む偏光板と、位相差層と、を有する。位相差層は、偏光板側から順に、第1液晶配向固化層と、第1液晶配向固化層に接着層を介して積層された第2液晶配向固化層と、を含む。位相差層は、全体として、円偏光機能または楕円偏光機能を有し、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を有する。第1液晶配向固化層の屈折率n
LC1、第2液晶配向固化層の屈折率n
LC2、および接着層の屈折率n
AD、ならびに、接着層の厚みT
ADおよび厚みバラツキTV
ADは、下記式(1)を満足する:
|{(n
LC1+n
LC2)/2-n
AD}|×(TV
AD/T
AD)×1000≦3.0 ・・・(1)
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光子を含む偏光板と、位相差層と、を有し、
該位相差層が、該偏光板側から順に、第1液晶配向固化層と、該第1液晶配向固化層に接着層を介して積層された第2液晶配向固化層と、を含み、
該位相差層が、全体として、円偏光機能または楕円偏光機能を有し、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を有し、
該第1液晶配向固化層の屈折率nLC1、該第2液晶配向固化層の屈折率nLC2、および該接着層の屈折率nAD、ならびに、該接着層の厚みTADおよび厚みバラツキTVADが、下記式(1)を満足する、光学積層体:
|{(nLC1+nLC2)/2-nAD}|×(TVAD/TAD)×1000≦3.0 ・・・(1)
【請求項2】
前記接着層が粘着剤で構成されている、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記接着層の厚みTADが4μm以上である、請求項2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記接着層が接着剤で構成されている、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記接着層の屈折率nADが1.54以上である、請求項1から4のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項6】
前記第1液晶配向固化層の厚みが1.7μm以下である、請求項1から4のいずれかに記載の光学積層体。
【請求項7】
請求項1から4のいずれかに記載の光学積層体を含む、画像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体および該光学積層体を用いた画像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶表示装置およびエレクトロルミネセンス(EL)表示装置(例えば、有機EL表示装置、無機EL表示装置)に代表される画像表示装置が急速に普及している。画像表示装置には、多くの場合、位相差フィルムを含む光学積層体(例えば、偏光板と位相差フィルムとを一体化した反射防止フィルム)が用いられている。近年、画像表示装置の薄型化への要望が強くなるに伴って、光学積層体についても薄型化の要望が強まっている。光学積層体の薄型化を目的として、厚みに対する寄与の大きい位相差層(位相差フィルム)の薄型化が進んでいる。薄型の位相差フィルムの代表例としては、液晶化合物を配向させてその配向状態を固定したフィルム(以下、液晶フィルムと称する)が挙げられる。液晶化合物は樹脂に比べて複屈折(Δn)が格段に大きいので、液晶フィルムは、所望の面内位相差を得るための厚みを樹脂フィルムの延伸フィルムに比べて格段に小さくすることができる。しかし、液晶フィルムを含む光学積層体を用いた画像表示装置は、視認環境によっては、表示ムラ(具体的には、偏光子の吸収軸方向にピンクの色が特に目立つ細い線が視認される現象)が生じる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その主たる目的は、液晶配向固化層を含み、かつ、画像表示装置に適用された場合に特定の表示ムラを抑制し得る光学積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[1]本発明の実施形態による光学積層体は、偏光子を含む偏光板と、位相差層と、を有し;該位相差層は、該偏光板側から順に、第1液晶配向固化層と、該第1液晶配向固化層に接着層を介して積層された第2液晶配向固化層と、を含み;該位相差層は、全体として、円偏光機能または楕円偏光機能を有し、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を有し;該第1液晶配向固化層の屈折率nLC1、該第2液晶配向固化層の屈折率nLC2、および該接着層の屈折率nAD、ならびに、該接着層の厚みTADおよび厚みバラツキTVADは、下記式(1)を満足する:
|{(nLC1+nLC2)/2-nAD}|×(TVAD/TAD)×1000≦3.0 ・・・(1)
[2]上記[1]において、上記接着層は粘着剤で構成されている。
[3]上記[2]において、上記接着層の厚みTADは4μm以上である。
[4]上記[1]において、上記接着層は接着剤で構成されている。
[5]上記[1]から[4]のいずれかにおいて、上記接着層の屈折率nADは1.54以上である。
[6]上記[1]から[5]のいずれかにおいて、上記第1液晶配向固化層の厚みは1.7μm以下である。
[7]本発明の別の局面によれば、画像表示装置が提供される。該画像表示装置は、上記[1]から[6]の光学積層体を含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明の実施形態によれば、液晶配向固化層を含み、かつ、画像表示装置に適用された場合に特定の表示ムラを抑制し得る光学積層体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の代表的な実施形態について説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。
【0009】
(用語および記号の定義)
本明細書における用語および記号の定義は下記の通りである。
(1)屈折率(nx、ny、nz)
「nx」は面内の屈折率が最大になる方向(すなわち、遅相軸方向)の屈折率であり、「ny」は面内で遅相軸と直交する方向(すなわち、進相軸方向)の屈折率であり、「nz」は厚み方向の屈折率である。
(2)面内位相差(Re)
「Re(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの面内位相差である。例えば、「Re(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの面内位相差である。Re(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Re=(nx-ny)×dによって求められる。
(3)厚み方向の位相差(Rth)
「Rth(λ)」は、23℃における波長λnmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。例えば、「Rth(550)」は、23℃における波長550nmの光で測定したフィルムの厚み方向の位相差である。Rth(λ)は、フィルムの厚みをd(nm)としたとき、式:Rth=(nx-nz)×dによって求められる。
(4)Nz係数
Nz係数は、Nz=Rth/Reによって求められる。
(5)角度
本明細書において角度に言及するときは、特に明記しない限り、当該角度は時計回りおよび反時計回りの両方の方向の角度を包含する。
【0010】
A.光学積層体
図1は、本発明の1つの実施形態による光学積層体の概略断面図である。図示例の光学積層体100は、偏光板10と位相差層20とを有する。偏光板10と位相差層20とは、任意の適切な接着層(例えば、接着剤層、粘着剤層:図示せず)を介して積層されている。偏光板10は、代表的には、偏光子11と、偏光子11の両側に配置された保護層12、13とを含む。目的に応じて、保護層12、13の少なくとも一方は省略されてもよい。したがって、偏光板は、いわゆる両保護偏光板であってもよく、いわゆる片保護偏光板であってもよく、偏光子単独で構成されていてもよい。
【0011】
位相差層20は、偏光板10側から順に、第1液晶配向固化層21と、第1液晶配向固化層21に接着層25を介して積層された第2液晶配向固化層22と、を含む。液晶配向固化層を位相差層として用いることにより、樹脂フィルムの延伸フィルムに比べて格段に薄い厚みで所望の面内位相差を実現することができる。その結果、光学積層体の顕著な薄型化を図ることができる。位相差層20は、全体として(第1液晶配向固化層21と第2液晶配向固化層22との積層体として)、円偏光機能または楕円偏光機能を有し、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を有する。1つの実施形態においては、位相差層は、全体として、そのNz係数が例えば0.30~0.70であり得る。なお、本明細書において「液晶配向固化層」とは、液晶化合物が層内で所定の方向に配向し、その配向状態が固定されている層をいう。「液晶配向固化層」は、液晶モノマーを硬化させて得られる配向硬化層を包含する概念である。
【0012】
本発明の実施形態においては、第1液晶配向固化層の屈折率nLC1、第2液晶配向固化層の屈折率nLC2、および接着層の屈折率nAD、ならびに、接着層の厚みTADおよび厚みバラツキTVADは、下記式(1)を満足する。なお、式(1)の左辺を表示ムラパラメーターと称する場合がある。また、本明細書における液晶配向固化層の「屈折率」は、特段の明示がない限り、偏光子の透過軸方向の屈折率を意味する。接着層は実質的に光学的に等方性であるので、屈折率nADも等方性である。
|{(nLC1+nLC2)/2-nAD}|×(TVAD/TAD)×1000≦3.0 ・・・(1)
表示ムラパラメーターは、好ましくは2.5以下であり、より好ましくは2.0以下であり、さらに好ましくは1.8以下であり、特に好ましくは1.2以下であり、とりわけ好ましくは0.7以下である。表示ムラパラメーター(絶対値)は小さいほど好ましく、例えば0.0であり得る。
【0013】
本発明者らは、位相差層として液晶配向固化層を含む光学積層体のさらなる薄型化を検討するに際し、位相差層として液晶配向固化層を含む光学積層体を用いた画像表示装置は、視認環境によっては、特定の表示ムラが生じる場合があるという新たな課題を見出した。具体的には、3波長光源下における反射において、偏光子の吸収軸方向にピンクの色が特に目立つ細い線が全体にわたって視認される現象(線状ムラと称する場合がある)が発生し得ることを見出した。さらに、本発明者らは、このような線状ムラの抑制について鋭意検討した結果、光学積層体の干渉を抑制することにより線状ムラを抑制し得ることを見出した。加えて、本発明者らは、光学積層体の干渉を抑制するために光学積層体を構成する各層の屈折率、厚み等を個別に調整するのではなく、上記の表示ムラパラメーターを所定値以下とすることにより、目的および/または構成材料等に応じた光学積層体の具体的な構成において線状ムラを包括的に抑制し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明の実施形態によるこのような効果は、位相差層として液晶配向固化層を含む光学積層体のさらなる薄型化を検討するに際して新たに見出された課題を解決するものであり、予期せぬ優れた効果である。なお、本発明の実施形態が、従来から認識されていた表示ムラを抑制し得ることは言うまでもない。
【0014】
接着層25としては、本発明の実施形態による効果が得られる限りにおいて(具体的には、上記の表示ムラパラメーターを所定値以下とすることができる限りにおいて)、任意の適切な構成が採用され得る。例えば、接着層は、粘着剤で構成されていてもよく、接着剤で構成されていてもよい。接着層が粘着剤で構成される場合、厚みを大きくすることができるので、表示ムラパラメーターを所望の値に調整することが容易である。この場合、接着層の厚みTADは、例えば4μm以上、また例えば5μm以上であり得る。接着層が接着剤で構成される場合、非常に薄い厚みで表示ムラパラメーターを所望の値に調整することが可能となり得る。接着層が接着剤層であるか粘着剤層であるかにかかわらず、接着層の屈折率nADは、好ましくは1.54以上である。接着層の屈折率がこのような範囲であれば、表示ムラパラメーターを所定値以下に調整することが容易である。
【0015】
光学積層体において、第1液晶配向固化層から第2液晶配向固化層までの合計厚みは、好ましくは20μm以下であり、より好ましくは3μm~10μmである。本発明の実施形態によれば、非常に薄い液晶配向固化層を含む光学積層体において新たに見出された線状ムラという課題を解決することができる。なお、第1液晶配向固化層から第2液晶配向固化層までの合計厚みが上記のような範囲であれば、偏光板から第2液晶配向固化層までの合計厚み(画像表示パネルに貼り合わせるための粘着剤の厚みを除いた、光学積層体の実質的な合計厚み)は、例えば100μm以下、また例えば30μm~80μmであり得る。
【0016】
実用的には、光学積層体は、第2液晶配向固化層側(画像表示パネル側)の最外層として粘着剤層(図示せず)を有し、画像表示パネルに貼り付け可能とされている。この場合、粘着剤層の表面には、光学積層体が使用に供されるまで、はく離ライナーが仮着されていることが好ましい。はく離ライナーを仮着することにより、粘着剤層を保護するとともに、光学積層体のロール形成が可能となる。
【0017】
以下、光学積層体の構成要素について具体的に説明する。
【0018】
B.偏光板
B-1.偏光子
偏光子11は、代表的には、二色性物質(例えば、ヨウ素)を含むポリビニルアルコール(PVA)系樹脂フィルムで構成されている。PVA系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン―酢酸ビニル共重合体系部分ケン化物が挙げられる。
【0019】
PVA系樹脂は、好ましくはアセトアセチル変性されたPVA系樹脂を含む。このような構成であれば、所望の機械的強度を有する偏光子が得られ得る。アセトアセチル変性されたPVA系樹脂の配合量は、PVA系樹脂全体を100重量%としたときに、好ましくは5重量%~20重量%であり、より好ましくは8重量%~12重量%である。配合量がこのような範囲であれば、より優れた機械的強度を有する偏光子が得られ得る。
【0020】
偏光子は、好ましくは、ヨウ化物または塩化ナトリウム(まとめてハロゲン化物と称する場合がある)を含む。ヨウ化物としては、例えば、ヨウ化カリウム、ヨウ化ナトリウム、ヨウ化リチウムが挙げられる。偏光子におけるハロゲン化物の含有量は、PVA系樹脂100重量部に対して、好ましくは5重量部~20重量部であり、より好ましくは10重量部~15重量部である。ハロゲン化物は、後述の製造方法において、偏光子の前駆体であるPVA系樹脂層を形成する塗布液に配合され、最終的に偏光子に導入され得る。偏光子にハロゲン化物を導入することにより、偏光子におけるPVA分子の配向性を高めることができるので、優れた光学特性(代表的には、高い偏光度と高い単体透過率との両立)を有する偏光子を実現することができる。
【0021】
偏光子は、好ましくは、波長380nm~780nmのいずれかの波長で吸収二色性を示す。偏光子の単体透過率は、好ましくは41.0%~46.0%であり、より好ましくは42.0%~45.0%である。偏光子の偏光度は、好ましくは97.0%以上であり、より好ましくは99.0%以上であり、さらに好ましくは99.9%以上である。本発明の実施形態によれば、単体透過率が上記のような範囲であっても、偏光度をこのような範囲に維持することができる。
【0022】
偏光子の厚みは、例えば12μm以下であり、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは1μm~8μmであり、さらに好ましくは3μm~7μmである。このような薄い偏光子と液晶配向固化層とを組み合わせることにより、光学積層体の顕著な薄型化が可能となる。また、偏光子の厚みが上記のような範囲であれば、加熱時のカールを良好に抑制することができ、および、良好な加熱時の外観耐久性が得られる。
【0023】
偏光子は、任意の適切な方法により作製され得る。例えば、偏光子を形成する樹脂フィルムは、単層の樹脂フィルムであってもよく、二層以上の積層体であってもよい。
【0024】
単層の樹脂フィルムから構成される偏光子の具体例としては、PVA系フィルム、部分ホルマール化PVA系フィルム、エチレン・酢酸ビニル共重合体系部分ケン化フィルム等の親水性高分子フィルムに、ヨウ素や二色性染料等の二色性物質による染色処理および延伸処理が施されたもの、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物等ポリエン系配向フィルム等が挙げられる。好ましくは、光学特性に優れることから、PVA系フィルムをヨウ素で染色し一軸延伸して得られた偏光子が用いられる。
【0025】
上記ヨウ素による染色は、例えば、PVA系フィルムをヨウ素水溶液に浸漬することにより行われる。上記一軸延伸の延伸倍率は、好ましくは3~7倍である。延伸は、染色処理後に行ってもよいし、染色しながら行ってもよい。また、延伸してから染色してもよい。必要に応じて、PVA系フィルムに、膨潤処理、架橋処理、洗浄処理、乾燥処理等が施される。例えば、染色の前にPVA系フィルムを水に浸漬して水洗することで、PVA系フィルム表面の汚れやブロッキング防止剤を洗浄することができるだけでなく、PVA系フィルムを膨潤させて染色ムラなどを防止することができる。
【0026】
積層体を用いて得られる偏光子の具体例としては、樹脂基材と当該樹脂基材に積層されたPVA系樹脂層(PVA系樹脂フィルム)との積層体、あるいは、樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子が挙げられる。樹脂基材と当該樹脂基材に塗布形成されたPVA系樹脂層との積層体を用いて得られる偏光子は、例えば、PVA系樹脂溶液を樹脂基材に塗布し、乾燥させて樹脂基材上にPVA系樹脂層を形成して、樹脂基材とPVA系樹脂層との積層体を得ること;当該積層体を延伸および染色してPVA系樹脂層を偏光子とすること;により作製され得る。本実施形態においては、好ましくは、樹脂基材の片側に、ハロゲン化物とポリビニルアルコール系樹脂とを含むポリビニルアルコール系樹脂層を形成する。延伸は、代表的には積層体をホウ酸水溶液中に浸漬させて延伸することを含む。さらに、延伸は、必要に応じて、ホウ酸水溶液中での延伸の前に積層体を高温(例えば、95℃以上)で空中延伸することをさらに含み得る。加えて、本実施形態においては、好ましくは、積層体は、長手方向に搬送しながら加熱することにより幅方向に2%以上収縮させる乾燥収縮処理に供される。代表的には、本実施形態の製造方法は、積層体に、空中補助延伸処理と染色処理と水中延伸処理と乾燥収縮処理とをこの順に施すことを含む。補助延伸を導入することにより、熱可塑性樹脂上にPVAを塗布する場合でも、PVAの結晶性を高めることが可能となり、高い光学特性を達成することが可能となる。また、同時にPVAの配向性を事前に高めることで、後の染色工程や延伸工程で水に浸漬された時に、PVAの配向性の低下や溶解などの問題を防止することができ、高い光学特性を達成することが可能になる。さらに、PVA系樹脂層を液体に浸漬した場合において、PVA系樹脂層がハロゲン化物を含まない場合に比べて、ポリビニルアルコール分子の配向の乱れ、および配向性の低下が抑制され得る。これにより、染色処理および水中延伸処理など、積層体を液体に浸漬して行う処理工程を経て得られる偏光子の光学特性は向上し得る。さらに、乾燥収縮処理により積層体を幅方向に収縮させることにより、光学特性を向上させることができる。得られた樹脂基材/偏光子の積層体はそのまま用いてもよく(すなわち、樹脂基材を偏光子の保護層としてもよく)、樹脂基材/偏光子の積層体から樹脂基材を剥離した剥離面に、もしくは、剥離面とは反対側の面に目的に応じた任意の適切な保護層を積層して用いてもよい。このような偏光子の製造方法の詳細は、例えば特開2012-73580号公報、特許第6470455号に記載されている。これらの公報は、その全体の記載が本明細書に参考として援用される。
【0027】
B-2.保護層
保護層12および13は、任意の適切な樹脂フィルムで構成される。樹脂フィルムを構成する材料としては、代表的には、トリアセチルセルロース(TAC)等のセルロース系樹脂、ポリノルボルネン等のシクロオレフィン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル系樹脂、ポリエチレン等のポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂が挙げられる。(メタ)アクリル系樹脂の代表例としては、ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂が挙げられる。ラクトン環構造を有する(メタ)アクリル系樹脂は、例えば、特開2000-230016号公報、特開2001-151814号公報、特開2002-120326号公報、特開2002-254544号公報、特開2005-146084号公報に記載されている。これらの公報は、本明細書に参考として援用されている。異形加工の容易性等の観点から、セルロース系樹脂が好ましく、TACがより好ましい。透湿度が低く、耐久性に優れた偏光板が得られるという観点からは、シクロオレフィン系樹脂および(メタ)アクリル系樹脂が好ましい。
【0028】
光学積層体は、代表的には画像表示装置の視認側に配置され、保護層12は、代表的にはその視認側に配置される。したがって、保護層12には、必要に応じて、表面処理が施されていてもよい。表面処理としては、例えば、ハードコート処理、反射防止処理、スティッキング防止処理、アンチグレア処理が挙げられる。さらに/あるいは、保護層12には、必要に応じて、偏光サングラスを介して視認する場合の視認性を改善する処理(代表的には、(楕)円偏光機能を付与すること、超高位相差を付与すること)が施されていてもよい。このような処理を施すことにより、偏光サングラス等の偏光レンズを介して表示画面を視認した場合でも、優れた視認性を実現することができる。したがって、光学積層体は、屋外で用いられ得る画像表示装置にも好適に適用され得る。
【0029】
保護層13は、1つの実施形態においては、光学的に等方性であることが好ましい。本明細書において「光学的に等方性である」とは、面内位相差Re(550)が0nm~10nmであり、厚み方向の位相差Rth(550)が-10nm~+10nmであることをいう。
【0030】
保護層12および13の厚みは、それぞれ、好ましくは10μm~80μmであり、より好ましくは12μm~40μmであり、さらに好ましくは15μm~35μmである。なお、保護層12に表面処理が施されている場合、保護層12の厚みは、表面処理層の厚みを含めた厚みである。
【0031】
C.位相差層
位相差層20は、上記のとおり、偏光板側から順に第1液晶配向固化層21と第2液晶配向固化層22とを含む。さらに上記のとおり、位相差層20は、全体として(第1液晶配向固化層21と第2液晶配向固化層22との積層体として)、円偏光機能または楕円偏光機能を有し、かつ、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を有する。本項における位相差層の説明に関して、単に「位相差層」と称する場合は位相差層全体として説明することを意味し、単に「液晶配向固化層」と称する場合は第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層をまとめて説明することを意味する。
【0032】
位相差層20は、Re(550)が好ましくは100nm~200nmであり、より好ましくは110nm~180nmであり、さらに好ましくは120nm~170nmであり、特に好ましくは130nm~150nmである。位相差層のRe(550)がこのような範囲であれば、位相差層は偏光子と組み合わせて良好な円偏光機能または楕円偏光機能を発現し得る。
【0033】
位相差層20は、Re(450)<Re(550)<Re(650)の関係を有する。すなわち、位相差層20は、好ましくは位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散の波長依存性を示す。このような構成であれば、非常に広い波長帯域において良好な反射防止機能が実現され得る。Re(450)/Re(550)は、例えば0.5を超えて1.0未満であり、好ましくは0.7~0.95であり、より好ましくは0.75~0.92であり、さらに好ましくは0.8~0.9である。Re(650)/Re(550)は、好ましくは1.0以上1.15未満であり、より好ましくは1.03~1.1である。
【0034】
位相差層20は、1つの実施形態においては、Nz係数が上記のとおり例えば0.30~0.70であり得る。したがって、位相差層20は、nx>nz>nyの屈折率特性を示す。このような構成であれば、斜め方向の反射を良好に防止することができ、反射防止機能の広視野角化が可能となる。Nz係数は、好ましくは0.35~0.65であり、より好ましくは0.40~0.60であり、さらに好ましくは0.45~0.55である。
【0035】
液晶配向固化層に用いられる液晶化合物としては、例えば、液晶ポリマーおよび液晶モノマーが挙げられる。液晶化合物は、好ましくは、重合可能(すなわち、液晶モノマー)である。液晶化合物が重合可能であると、液晶化合物を配向させた後に重合させることで、液晶化合物の配向状態を固定できる。ここで、重合により形成されたポリマーは非液晶性である。したがって、形成された液晶配向固化層は、例えば、液晶性化合物に特有の温度変化による液晶相、ガラス相、結晶相への転移が起きることはない。その結果、液晶配向固化層は、温度変化に影響されない、極めて安定性に優れた位相差層となる。
【0036】
液晶配向固化層は、1つの実施形態においては、重合可能な液晶化合物(重合性液晶化合物、すなわち液晶モノマー)を含む組成物を用いて形成され得る。本明細書において組成物に含まれる重合性液晶化合物とは、重合性基を有し、かつ、液晶性を有する化合物をいう。重合性基は、重合反応に関与する基を意味し、好ましくは光重合性基である。ここで、光重合性基とは、光重合開始剤から発生した活性ラジカルや酸等によって重合反応に関与し得る基をいう。液晶モノマーとしては、例えば、特表2002-533742(WO00/37585)、EP358208(US5211877)、EP66137(US4388453)、WO93/22397、EP0261712、DE19504224、DE4408171、およびGB2280445等に記載の重合性メソゲン化合物等が使用できる。このような重合性メソゲン化合物の具体例としては、例えば、BASF社の商品名LC242、Merck社の商品名E7、Wacker-Chem社の商品名LC-Sillicon-CC3767が挙げられる。
【0037】
液晶化合物の液晶性の発現機構は、サーモトロピックであってもよく、リオトロピックであってもよい。また、液晶相の構成としてはネマチック液晶であってもよく、スメクチック液晶であってもよい。製造の容易さという観点から、液晶性はサーモトロピックのネマチック液晶が好ましい。
【0038】
液晶モノマーが液晶性を示す温度範囲は、その種類に応じて異なる。具体的には、当該温度範囲は、好ましくは40℃~120℃であり、さらに好ましくは50℃~100℃であり、最も好ましくは60℃~90℃である。
【0039】
液晶配向固化層の複屈折Δnは、好ましくは0.06以上であり、より好ましくは0.08以上であり、さらに好ましくは0.09以上であり、特に好ましくは0.10以上である。Δnの上限は、例えば0.13であり得、また例えば0.12であり得る。Δnがこのような範囲であれば、非常に薄い厚みで所望の面内位相差を実現することができる。その結果、液晶配向固化層および光学積層体をさらに薄くすることが可能となり、最終的に画像表示装置の顕著な薄型化に貢献し得る。
【0040】
液晶配向固化層は、位相差値が測定光の波長に応じて大きくなる逆分散波長特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長に応じて小さくなる正の波長分散特性を示してもよく、位相差値が測定光の波長によってもほとんど変化しないフラットな波長分散特性を示してもよい。
【0041】
第1液晶配向固化層21は、代表的にはλ/2板として機能し得、第2液晶配向固化層22は、代表的にはλ/4板として機能し得る。具体的には、第1液晶配向固化層のRe(550)は好ましくは150nm~300nmであり、より好ましくは200nm~270nmであり、さらに好ましくは220nm~260nmであり;第2液晶配向固化層のRe(550)は、好ましくは100nm~200nmであり、より好ましくは110nm~160nmであり、さらに好ましくは120nm~140nmである。第1液晶配向固化層の厚みは、λ/2板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。1つの実施形態においては、第1液晶配向固化層の厚みは例えば2.0μm~4.0μmであり得る。別の実施形態においては、第1液晶配向固化層の厚みは、好ましくは1.7μm以下であり、より好ましくは1.6μm以下であり、さらに好ましくは1.5μm以下である。この場合、第1液晶配向固化層の厚みは、例えば1.3μm以上であり得る。このように、本発明の実施形態によれば、第1液晶配向固化層の厚みを従来よりも薄くしつつ、線状ムラを抑制することができる。第2液晶配向固化層の厚みは、λ/4板の所望の面内位相差が得られるよう調整され得る。具体的には、その厚みは例えば0.8μm~2.5μmであり得る。第1液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の透過軸とのなす角度は、好ましくは10°~20°であり、より好ましくは12°~18°であり、さらに好ましくは14°~16°であり;第2液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の透過軸とのなす角度は、好ましくは70°~80°であり、より好ましくは72°~78°であり、さらに好ましくは74°~76°である。なお、第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層の配置順序は逆であってもよく、第1液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の透過軸とのなす角度および第2液晶配向固化層の遅相軸と偏光子の透過軸とのなす角度は逆であってもよい。
【0042】
液晶配向固化層の屈折率は、液晶配向固化層を形成する組成物(実質的には、液晶化合物の種類、添加剤の種類、数、組み合わせ、配合量等)に応じて変化し得る。第1液晶配向固化層の屈折率nLC1と第2液晶配向固化層の屈折率nLC2とは、同一であってもよく、互いに異なっていてもよい(第1液晶配向固化層の屈折率nLC1の方が大きくてもよく、第2液晶配向固化層の屈折率nLC2の方が大きくてもよい)。第1液晶配向固化層の屈折率nLC1は、好ましくは1.55~1.75であり、より好ましくは1.60~1.70である。第2液晶配向固化層の屈折率nLC2は、好ましくは1.45~1.65であり、より好ましくは1.50~1.60である。第1液晶配向固化層の屈折率nLC1と第2液晶配向固化層の屈折率nLC2とは、逆であってもよい。第1液晶配向固化層の屈折率nLC1と第2液晶配向固化層の屈折率nLC2との差の絶対値は、例えば0.00~0.20であり得る。液晶配向固化層の屈折率は、代表的には、所望の光学特性を得るために液晶配向固化層を形成する組成物の構成に準じることとなる。その結果、線状ムラが生じる場合があるところ、本発明の実施形態によれば、表示ムラパラメーターを所定値以下とすることにより、線状ムラを抑制することができる。
【0043】
第1液晶配向固化層および/または第2液晶配向固化層(実質的には、これらを形成する液晶組成物)に、側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーを導入してもよい。側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーを導入することにより、液晶モノマーをホメオトロピック配向(垂直配向)させる作用が生じ得る。その結果、第1液晶配向固化層および/または第2液晶配向固化層のnzを大きくすることができ、結果として、第1液晶配向固化層および/または第2液晶配向固化層のNz係数を上記所望の範囲とすることができる。最終的に、後述のポジティブCプレートを設けることなく位相差層のNz係数を上記所望の範囲とすることができる。
【0044】
側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーとしては、代表的には、サーモトロピック液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットと、非液晶性フラグメント側鎖を含有するモノマーユニットとを有するコポリマーが用いられる。ポリマーが側鎖にサーモトロピック液晶性フラグメントを有することにより、液晶性組成物を所定温度に加熱した際に、側鎖型液晶ポリマーが配向し得る。また、側鎖型ポリマーが側鎖に非液晶性フラグメントを有することにより、非液晶性フラグメントが光重合性液晶モノマーと相互作用して、光重合性液晶モノマーをホメオトロピック配向させる作用が生じ得る。
【0045】
側鎖型サーモトロピック液晶ポリマーとしては、一般式(I)で表される液晶性モノマーユニットと、一般式(II)で表される非液晶性モノマーユニットとを有するコポリマーが好ましく用いられる。
【化1】
【化2】
【0046】
式(I)において、R1は水素原子またはメチル基であり、R2は、シアノ基、フルオロ基、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基であり、X1は-CO2-または-OCO-である。aは1~6の整数であり、bおよびcは、それぞれ独立に1または2である。
【0047】
式(II)において、R
3は水素原子またはメチル基であり、R
4は、炭素数7~22のアルキル基、炭素数1~22のフルオロアルキル基、または下記一般式(III)で表される基である。
【化3】
【0048】
式(III)において、R5は炭素数1~5のアルキル基であり、dは1~6の整数である。
【0049】
側鎖型液晶モノマーにおける液晶性モノマーユニットと非液晶性モノマーユニットの比率は、目的に応じて適切に設定され得る。液晶性モノマーユニットと非液晶性モノマーユニットの合計に対する非液晶性モノマーの割合(モル比)は、好ましくは0.05~0.8であり、より好ましくは0.1~0.6であり、さらに好ましくは0.15~0.5である。このような構成であれば、所望の屈折率特性(Nz係数)を示す液晶配向固化層が得られ得る。
【0050】
液晶組成物中の液晶モノマーと側鎖型液晶ポリマーの比率は、目的に応じて適切に設定され得る。側鎖型液晶ポリマーの含有量が多い場合は、Nz係数が小さくなる傾向があり;液晶モノマーの含有量が多い場合は、Nz係数が小さくなる傾向がある。液晶モノマーの含有量は、側鎖型液晶ポリマーの含有量に対して、好ましくは1.2倍~20倍であり、より好ましくは1.3倍~10倍であり、さらに好ましくは1.4倍~9倍であり、特に好ましくは1.5倍~8倍である。このような構成であれば、所望の屈折率特性(Nz係数)を示す液晶配向固化層が得られ得る。
【0051】
側鎖型液晶ポリマーおよびNz係数が1.0未満である液晶配向固化層の形成方法の詳細は、特許第6769921号に記載されている。当該特許の記載は本明細書に参考として援用される。
【0052】
位相差層20は、ポジティブCプレートをさらに含んでいてもよい。ポジティブCプレートは、屈折率特性がnz>nx=nyの関係を示す。ポジティブCプレートの厚み方向の位相差Rth(550)は、好ましくは-20nm~-300nmであり、より好ましくは-30nm~-250nmであり、さらに好ましくは-40nm~-200nmであり、特に好ましくは-50nm~-150nmである。ここで、「nx=ny」は、nxとnyが厳密に等しい場合のみならず、nxとnyが実質的に等しい場合も包含する。すなわち、ポジティブCプレートの面内位相差Re(550)は10nm未満であり得る。
【0053】
ポジティブCプレートは、例えば、上記の側鎖型液晶ポリマーを含む組成物を用いて形成され得る。ポジティブCプレートの形成方法の具体例としては、特開2002-333642号公報の[0020]~[0028]に記載の方法が挙げられる。この場合、ポジティブCプレートの厚みは、好ましくは0.5μm~10μmであり、より好ましくは0.5μm~8μmであり、さらに好ましくは0.5μm~5μmである。
【0054】
D.接着層
D-1.概要
接着層25としては、表示ムラパラメーターを所定値以下とすることができる限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。具体的には上記のとおり、接着層は、粘着剤で構成されていてもよく、接着剤で構成されていてもよい。接着層が接着剤層であるか粘着剤層であるかにかかわらず、接着層の屈折率nADは、例えば1.45以上であってもよく、また例えば1.50以上であってもよく、また例えば1.52以上であってもよい。接着層の屈折率nADは、好ましくは1.54以上であり、より好ましくは1.55以上であり、さらに好ましくは1.57以上であり、特に好ましくは1.60以上である。一方、接着層の屈折率nADは、例えば1.63以下であり得る。
【0055】
接着層が粘着剤層である場合、接着層の厚みTADは、例えば3μm以上であり、好ましくは4μm以上であり、より好ましくは5μm以上であり、さらに好ましくは10μm以上であり、特に好ましくは15μm以上である。一方、接着層の厚みTADは、例えば30μm以下であり得る。接着層が接着剤層である場合、接着層の厚みTADは、好ましくは0.5μm~2.0μmであり、より好ましくは0.8μm~1.2μmである。接着層の厚みバラツキTVADは、好ましくは0.20μm以下であり、より好ましくは0.18μm以下であり、さらに好ましくは0.16μm以下である。一方、接着層の厚みバラツキTVADは、例えば0.03μm以上であり得る。接着層の屈折率と厚みとを組み合わせて調整することにより、液晶配向固化層の構成に合わせて表示ムラパラメーターを適切な範囲に調整し得る。厚みと厚みバラツキとの関係を考慮すると、接着層は好ましくは粘着剤層であり得る。厚みを大きくして厚みバラつきの影響を小さくすることができるからである。
【0056】
以下、接着層を構成する粘着剤および接着剤をそれぞれ説明する。
【0057】
D-2.粘着剤
粘着剤としては、上記の特性を満足する限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。粘着剤の具体例としては、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ウレタン系粘着剤、エポキシ系粘着剤、およびポリエーテル系粘着剤が挙げられる。粘着剤のベースポリマーを形成するモノマーの種類、数、組み合わせおよび配合比、ならびに、架橋剤の配合量、反応温度、反応時間等を調整することにより、目的に応じた所望の特性を有する粘着剤を調製することができる。粘着剤のベースポリマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。透明性、加工性および耐久性などの観点から、アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)が好ましい。アクリル系粘着剤組成物は、代表的には、ベースポリマーとして(メタ)アクリル系ポリマーを主成分として含む。(メタ)アクリル系ポリマーは、粘着剤組成物の固形分中、例えば50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上の割合で粘着剤組成物に含有され得る。なお、(メタ)アクリレートはアクリレートおよび/またはメタクリレートをいう。
【0058】
(メタ)アクリル系ポリマーは、好ましくは、モノマー成分として芳香環含有モノマー(m1)を含む。モノマー(m1)としては、1分子中に少なくとも1つの芳香環と少なくとも1つのエチレン性不飽和基とを含む化合物が用いられ得る。モノマー(m1)としては、このような化合物を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
エチレン性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、(メタ)アリル基が挙げられる。重合反応性の観点から(メタ)アクリロイル基が好ましく、柔軟性や粘着性の観点からアクリロイル基がより好ましい。粘着剤の柔軟性低下を抑制する観点から、モノマー(m1)としては、1分子中に含まれるエチレン性不飽和基の数が1である化合物(すなわち、単官能モノマー)が好ましく用いられる。
【0060】
モノマー(m1)として用いられる化合物1分子に含まれる芳香環の数は、1でもよく、2以上でもよい。モノマー(m1)に含まれる芳香環の数の上限は特に制限されず、例えば16以下であり得る。いくつかの実施形態において、(メタ)アクリル系ポリマーの調製容易性や粘着剤の透明性の観点から、芳香環の数は、例えば12以下であってよく、8以下であることが好ましく、6以下であることがより好ましく、5以下でもよく、4以下でもよく、3以下でもよく、2以下でもよい。
【0061】
モノマー(m1)として用いられる化合物の有する芳香環は、例えばベンゼン環(ビフェニル構造やフルオレン構造の一部を構成するベンゼン環であり得る。);ナフタレン環、インデン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環の縮合環;等の炭素環であってもよく、例えばピリジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、ピラジン環、トリアジン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、トリアゾール環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、チアゾール環、チオフェン環;等の複素環であってもよい。上記複素環において環構成原子として含まれるヘテロ原子は、例えば窒素、硫黄および酸素からなる群から選択される1または2以上であり得る。いくつかの実施形態において、複素環を構成するヘテロ原子は、窒素および硫黄の一方または両方であり得る。モノマー(m1)は、例えばジナフトチオフェン構造のように、1または2以上の炭素環と1または2以上の複素環とが縮合した構造を有していてもよい。
【0062】
芳香環(好ましくは炭素環)は、環構成原子上に1または2以上の置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基が挙げられる。炭素原子を含む置換基において、該置換基に含まれる炭素原子の数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。いくつかの実施形態において、芳香環は、環構成原子上に置換基を有しないか、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子(例えば臭素原子)からなる群から選択される1または2以上の置換基を有する芳香環であり得る。なお、モノマー(m1)の有する芳香環がその環構成原子上に置換基を有するとは、該芳香環が、エチレン性不飽和基を有する置換基以外の置換基を有することをいう。
【0063】
芳香環とエチレン性不飽和基とは、直接結合していてもよく、リンキング基を介して結合していてもよい。上記リンキング基は、例えば、アルキレン基、オキシアルキレン基、ポリ(オキシアルキレン)基、フェニル基、アルキルフェニル基、アルコキシフェニル基、これらの基において1または2以上の水素原子が水酸基で置換された構造の基(例えば、ヒドロキシアルキレン基)、オキシ基(-O-基)、チオオキシ基(-S-基)、等から選択される1または2以上の構造を含む基であり得る。いくつかの実施形態において、芳香環とエチレン性不飽和基とが、直接結合しているか、またはアルキレン基、オキシアルキレン基およびポリ(オキシアルキレン)基からなる群から選択されるリンキング基を介して結合している構造の芳香環含有モノマーを好ましく採用し得る。アルキレン基およびオキシアルキレン基における炭素原子数は、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。ポリ(オキシアルキレン)基におけるオキシアルキレン単位の繰り返し数は、例えば2~3であり得る。
【0064】
モノマー(m1)として好ましく採用し得る化合物の例として、芳香環含有(メタ)アクリレートおよび芳香環含有ビニル化合物が挙げられる。芳香環含有(メタ)アクリレートおよび芳香環含有ビニル化合物は、それぞれ、1種を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。1種または2種以上の芳香環含有(メタ)アクリレートと、1種または2種以上の芳香環含有ビニル化合物とを組み合わせて用いてもよい。
【0065】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分におけるモノマー(m1)の含有量は、例えば、所望の屈折率と粘着特性(例えば剥離強度、柔軟性等)および/または光学特性(例えば全光線透過性、ヘイズ値等)とを両立する粘着剤層を実現し得るように設定することができる。いくつかの実施形態において、モノマー成分におけるモノマー(m1)の含有量は、例えば30重量%以上であってよく、好ましくは50重量%以上であり、60重量%以上でもよく、70重量%以上でもよい。より高い屈折率を得やすくする観点から、いくつかの実施形態において、モノマー(m1)の含有量は、例えば70重量%超であってよく、75重量%以上でもよく、80重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー成分におけるモノマー(m1)の含有量の上限は100重量%である。高屈折率と粘着特性および/または光学特性とをバランスよく両立する観点から、上記モノマー(m1)の含有量は、100重量%未満とすることが有利であり、例えばおおよそ99重量%以下であることが好ましく、98重量%以下であることがより好ましく、97重量%以下でもよく、96重量%以下でもよい。いくつかの実施形態において、モノマー(m1)の含有量は、93重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。より粘着特性および/または光学特性を重視するいくつかの実施形態において、モノマー成分におけるモノマー(m1)の含有量は、70重量%以下でもよく、60重量%以下でもよく、45重量%以下でもよい。
【0066】
いくつかの実施形態において、モノマー(m1)としては、高い高屈折率化効果が得られやすいことから、1分子中に2以上の芳香環(好ましくは炭素環)を有するモノマーを好ましく採用し得る。1分子内に2以上の芳香環を有するモノマー(以下、「芳香環複数含有モノマー」ともいう。)の例としては、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマー、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有するモノマー、縮合芳香環構造を有するモノマー、フルオレン構造を有するモノマー、ジナフトチオフェン構造を有するモノマー、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマー、等が挙げられる。芳香環複数含有モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0067】
リンキング基は、例えば、オキシ基(-O-)、チオオキシ基(-S-)、オキシアルキレン基(例えば-O-(CH2)n-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、チオオキシアルキレン基(例えば-S-(CH2)n-基、ここでnは1~3、好ましくは1)、直鎖アルキレン基(すなわち-(CH2)n-基、ここでnは1~6、好ましくは1~3)、オキシアルキレン基、チオオキシアルキレン基および直鎖アルキレン基におけるアルキレン基が部分ハロゲン化または完全ハロゲン化された基であり得る。粘着剤の柔軟性等の観点から、リンキング基の好適例として、オキシ基、チオオキシ基、オキシアルキレン基および直鎖アルキレン基が挙げられる。2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有するモノマーの具体例としては、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート(例えば、m-フェノキシベンジル(メタ)アクリレート)、チオフェノキシベンジル(メタ)アクリレート、ベンジルベンジル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を有するモノマーは、例えば、ビフェニル構造含有(メタ)アクリレート、トリフェニル構造含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ビフェニルであり得る。具体例としては、o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、ビフェニルメチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0069】
縮合芳香環構造を有するモノマーとしては、例えば、ナフタレン環含有(メタ)アクリレート、アントラセン環含有(メタ)アクリレート、ビニル基含有ナフタレン、ビニル基含有アントラセンが挙げられる。具体例としては、1-ナフチルメチル(メタ)アクリレート(別名:1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート)、ヒドロキシエチル化β-ナフトールアクリレート、2-ナフトエチル(メタ)アクリレート、2-ナフトキシエチルアクリレート、2-(4-メトキシ-1-ナフトキシ)エチル(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0070】
フルオレン構造を有するモノマーの具体例としては、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(メタ)アクリレートが挙げられる。なお、フルオレン構造を有するモノマーは、2つのベンゼン環が直接化学結合した構造部分を含むため、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造を有するモノマーの概念に包含される。
【0071】
ジナフトチオフェン構造を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基含有ジナフトチオフェン、ビニル基含有ジナフトチオフェン、(メタ)アリル基含有ジナフトチオフェンが挙げられる。具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(例えば、ジナフトチオフェン環の5位または6位にCH2CH(R1)C(O)OCH2-が結合した構造の化合物。ここで、R1は水素原子またはメチル基である。)、(メタ)アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(例えば、ジナフトチオフェン環の5位または6位に、CH2CH(R1)C(O)OCH(CH3)-またはCH2CH(R1)C(O)OCH2CH2-が結合した構造の化合物。ここで、R1は水素原子またはメチル基である。)、ビニルジナフトチオフェン(例えば、ナフトチオフェン環の5位または6位にビニル基が結合した構造の化合物)、(メタ)アリルオキシジナフトチオフェンが挙げられる。なお、ジナフトチオフェン構造を有するモノマーは、ナフタレン構造を含むことにより、またチオフェン環と2つのナフタレン構造とが縮合した構造を有することによっても、縮合芳香環構造を有するモノマーの概念に包含される。
【0072】
ジベンゾチオフェン構造を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリロイル基含有ジベンゾチオフェン、ビニル基含有ジベンゾチオフェンが挙げられる。なお、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマーは、チオフェン環と2つのベンゼン環とが縮合した構造を有することから、縮合芳香環構造を有するモノマーの概念に包含される。なお、ジナフトチオフェン構造およびジベンゾチオフェン構造は、いずれも、2以上の非縮合芳香環が直接化学結合した構造には該当しない。
【0073】
モノマー(m1)として、1分子中に1つの芳香環(好ましくは炭素環)を有するモノマーを使用してもよい。1分子中に1つの芳香環を有するモノマーは、例えば、粘着剤の柔軟性の向上や粘着特性の調整、透明性の向上等に役立ち得る。いくつかの実施形態において、1分子中に1つの芳香環を有するモノマーは、粘着剤の屈折率向上の観点から、芳香環複数含有モノマーと組み合わせて用いることが好ましい。
【0074】
1分子中に1つの芳香環を有するモノマーとしては、例えば、べンジル(メタ)アクリレート、メトキシベンジル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、エトキシ化フェノール(メタ)アクリレート、フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、クレジル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、クロロベンジル(メタ)アクリレート等の、炭素芳香環含有(メタ)アクリレート;2-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、2-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)エチル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-s-ブチルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6-(4,6-ジブロモ-2-イソプロピルフェノキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、2,6-ジブロモ-4-ノニルフェニルアクリレート、2,6-ジブロモ-4-ドデシルフェニルアクリレート等の、臭素置換芳香環含有(メタ)アクリレート;スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブチルスチレン等の、炭素芳香環含有ビニル化合物;N-ビニルピリジン、N-ビニルピリミジン、N-ビニルピラジン、N-ビニルピロール、N-ビニルイミダゾール、N-ビニルオキサゾール等の、複素芳香環上にビニル置換基を有する化合物;が挙げられる。
【0075】
モノマー(m1)としては、上述のような各種芳香環含有モノマーにおけるエチレン性不飽和基と芳香環との間にオキシエチレン鎖を介在させた構造のモノマーを使用してもよい。このようにエチレン性不飽和基と芳香環との間にオキシエチレン鎖を介在させたモノマーは、元のモノマーのエトキシ化物として把握され得る。オキシエチレン鎖におけるオキシエチレン単位(-CH2CH2O-)の繰返し数は、典型的には1~4、好ましくは1~3、より好ましくは1~2であり、例えば1である。エトキシ化された芳香環含有モノマーの具体例としては、エトキシ化o-フェニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エトキシ化クレゾール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0076】
モノマー(m1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上であってよく、25重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。いくつかの実施形態において、より高い屈折率を有する粘着剤を実現しやすくする観点から、モノマー(m1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上であることが好ましく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー(m1)の実質的に100重量%が芳香環複数含有モノマーであってもよい。すなわち、モノマー(m1)として1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーのみを使用してもよい。また、いくつかの実施形態において、例えば高屈折率と粘着特性および/または光学特性とのバランスを考慮して、モノマー(m1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。いくつかの実施形態において、粘着特性および/または光学特性を考慮して、モノマー(m1)における芳香環複数含有モノマーの含有量は、70重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。本発明の実施形態は、モノマー(m1)における芳香環複数含有モノマーの含有量が5重量%未満であっても実施可能であり得る。芳香環複数含有モノマーを使用しなくてもよい。
【0077】
(メタ)アクリル系ポリマーを構成するモノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、特に制限されず、所望の屈折率と粘着特性(例えば剥離強度、柔軟性等)および/または光学特性(例えば全光線透過性、ヘイズ値等)とを両立する粘着剤層を実現し得るように設定することができる。モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、例えば3重量%以上であってよく、10重量%以上でもよく、25重量%以上でもよい。いくつかの実施形態において、より高い屈折率を有する粘着剤を実現しやすくする観点から、モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、例えば35重量%超であってよく、50重量%超であることが好ましく、70重量%超でもよく、75重量%以上でもよく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、100重量%であり得るが、高屈折率と粘着特性および/または光学特性とをバランスよく両立する観点から、100重量%未満とすることが有利であり、おおよそ99重量%以下とすることが好ましく、98重量%以下とすることがより好ましく、96重量%以下でもよく、93重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、85重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、75重量%以下でもよい。いくつかの実施形態において、粘着特性および/または光学特性を考慮して、モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量は、70重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、5重量%以下でもよい。本発明の実施形態は、モノマー成分における芳香環複数含有モノマーの含有量が3重量%未満であっても実施可能であり得る。
【0078】
モノマー(m1)の少なくとも一部として、高屈折率モノマーを好ましく採用し得る。ここで「高屈折率モノマー」とは、その屈折率が、例えば約1.510以上、好ましくは約1.530以上、より好ましくは約1.550以上であるモノマーのことを指す。高屈折率モノマーの屈折率の上限は特に制限されないが、粘着剤組成物の調製容易性や、粘着剤として適した柔軟性との両立容易性の観点から、例えば3.000以下であり、2.500以下でもよく、2.000以下でもよく、1.900以下でもよく、1.800以下でもよく、1.700以下でもよい。高屈折率モノマーは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なお、モノマーの屈折率は、例えばアッベ屈折率計を用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定され得る。アッベ屈折率計としては、ATAGO社製の型式「DR-M4」またはその相当品を用いることができる。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0079】
高屈折率モノマーとしては、芳香環含有モノマー(m1)の概念に包含される化合物(例えば、上記で例示した化合物および化合物群)のなかから、該当する屈折率を有するものを適宜採用することができる。具体例としては、m-フェノキシベンジルアクリレート(屈折率:1.566、ホモポリマーのTg:-35℃)、1-ナフチルメチルアクリレート(屈折率:1.595、ホモポリマーのTg:31℃)、エトキシ化o-フェニルフェノールアクリレート(オキシエチレン単位の繰返し数:1、屈折率:1.578)、ベンジルアクリレート(屈折率(nD20):1.519、ホモポリマーのTg:6℃)、フェノキシエチルアクリレート(屈折率(nD20):1.517、ホモポリマーのTg:2℃)、フェノキシジエチレングリコールアクリレート(屈折率:1.510、ホモポリマーのTg:-35℃)、6-アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTA、屈折率:1.75)、6-メタアクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン(6MDNTMA、屈折率:1.726)、5-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(5EDNTA、屈折率:1.786)、6-アクリロイルオキシエチルジナフトチオフェン(6EDNTA、屈折率:1.722)、6-ビニルジナフトチオフェン(6VDNT、屈折率:1.802)、5-ビニルジナフトチオフェン(略号:5VDNT、屈折率:1.793)が挙げられる。
【0080】
モノマー(m1)における高屈折率モノマー(すなわち、屈折率が約1.510以上、好ましくは約1.530以上、より好ましくは約1.550以上である芳香環含有モノマー)の含有量は、特に制限されず、例えば5重量%以上であってよく、25重量%以上でもよく、35重量%以上でもよく、40重量%以上でもよい。いくつかの実施形態において、より高い屈折率を得やすくする観点から、モノマー(m1)における高屈折率モノマーの含有量は、例えば50重量%以上であってよく、70重量%以上であることが好ましく、85重量%以上でもよく、90重量%以上でもよく、95重量%以上でもよい。モノマー(m1)の実質的に100重量%が高屈折率モノマーであってもよい。また、いくつかの実施形態において、例えば高屈折率と粘着特性および/または光学特性とをバランスよく両立する観点から、モノマー(m1)における高屈折率モノマーの含有量は、100重量%未満であってもよく、98重量%以下でもよく、90重量%以下でもよく、80重量%以下でもよく、65重量%以下でもよい。いくつかの実施形態において、粘着特性および/または光学特性を考慮して、モノマー(m1)における高屈折率モノマーの含有量は、70重量%以下でもよく、50重量%以下でもよく、25重量%以下でもよく、15重量%以下でもよく、10重量%以下でもよい。本発明の実施形態は、モノマー(m1)における高屈折率モノマーの含有量が5重量%未満であっても実施可能であり得る。高屈折率モノマーを使用しなくてもよい。
【0081】
(メタ)アクリル系ポリマーは、モノマー成分として、芳香環含有モノマー(m1)と共重合可能なモノマー(共重合モノマー)を含んでいてもよい。共重合モノマーとしては、例えば、脂肪族アルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル(メタ)アクリレート、カルボキシル基含有モノマー、ヒドロキシル基含有モノマー、アミド基含有モノマーが挙げられる。共重合モノマーの種類、数、組み合わせ、モノマー成分における含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0082】
アクリル系粘着剤(アクリル系粘着剤組成物)は、目的に応じて屈折率向上剤を含んでいてもよい。本明細書において屈折率向上剤とは、その使用により粘着剤層の屈折率を高めることのできる材料をいう。屈折率向上剤としては、該屈折率向上剤を含む粘着剤層の屈折率よりも高屈折率の材料が好ましく用いられ得る。また、屈折率向上剤としては、該屈折率向上剤を含む粘着剤層のベースポリマー(例えば、アクリル系ポリマー)よりも高屈折率の材料が好ましく用いられ得る。屈折率向上剤の適切な使用により、より高い屈折率と、実用的な粘着性能とを好適に両立し得る。いくつかの実施形態において、屈折率向上剤は有機材料であることが好ましい。屈折率向上剤として用いられる有機材料は、重合体であってもよく、非重合体であってもよい。また、重合性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。屈折率向上剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0083】
屈折率向上剤(例えば、後述する添加剤(HRO))の屈折率は、ベースポリマーの屈折率との相対関係で適切な範囲に設定し得るので、特定の範囲に限定されない。屈折率向上剤の屈折率は、例えば1.55超、1.56超または1.57超であって、かつベースポリマーの屈折率より高い範囲から選択し得る。粘着剤の高屈折率化の観点から、いくつかの実施形態において、屈折率向上剤の屈折率は、1.58以上であることが有利であり、1.60以上であることが好ましく、1.63以上であることがより好ましく、1.65以上でもよく、1.70以上でもよく、1.75以上でもよい。より屈折率の高い屈折率向上剤によると、より少量の屈折率向上剤の使用によっても目的の屈折率を達成し得る。このことは粘着特性や光学特性の低下抑制の観点から好ましい。屈折率向上剤の屈折率の上限は特に制限されないが、粘着剤内における相溶性や、高屈折率化と粘着剤として適した柔軟性との両立容易性等の観点から、例えば3.000以下であり、2.500以下でもよく、2.000以下でもよく、1.950以下でもよく、1.900以下でもよく、1.850以下でもよい。
【0084】
いくつかの実施形態において、屈折率向上剤(例えば、後述する添加剤(HRO))の屈折率nbとベースポリマーの屈折率naとの差、すなわちnb-na(以下、「ΔnA」ともいう。)は、0より大きくなるように設定される。いくつかの実施形態において、ΔnAは、例えば0.02以上であり、0.05以上でもよく、0.07以上でもよく、0.10以上でもよく、0.15以上でもよく、0.20以上または0.25以上でもよい。ΔnAがより大きくなるようにベースポリマーおよび屈折率向上剤を選択することにより、屈折率向上剤の使用による屈折率向上効果は高くなる傾向にある。また、粘着剤層内における相溶性や、粘着剤層の透明性等の観点から、いくつかの態様において、ΔnAは、例えば0.70以下であってよく、0.60以下でもよく、0.50以下でもよく、0.40以下または0.35以下でもよい。
【0085】
いくつかの実施形態において、屈折率向上剤(例えば、後述する添加剤(HRO))の屈折率nbと、該屈折率向上剤を含む粘着剤層の屈折率nTとの差、すなわちnb-nT(以下、「ΔnB」ともいう。)は、0より大きくなるように設定される。いくつかの実施形態において、ΔnBは、例えば0.02以上であり、0.05以上でもよく、0.07以上でもよく、0.10以上でもよく、0.15以上でもよく、0.20以上または0.25以上でもよい。ΔnBがより大きくなるように粘着剤層の組成および屈折率向上剤を選択することにより、屈折率向上剤の使用による屈折率向上効果は高くなる傾向にある。また、粘着剤層内における相溶性や、粘着剤層の透明性等の観点から、いくつかの実施形態において、ΔnBは、例えば0.70以下であってよく、0.60以下でもよく、0.50以下でもよく、0.40以下または0.35以下でもよい。
【0086】
ベースポリマー100重量部に対する屈折率向上剤の使用量(複数種の屈折率向上剤を用いる場合は、それらの合計量)は、目的に応じて適切に設定することができる。粘着剤の高屈折率化の観点から、ベースポリマー100重量部に対する屈折率向上剤の使用量は、例えば1重量部以上とすることができ、3重量部以上とすることが有利であり、5重量部以上とすることが好ましく、7重量部以上でもよく、10重量部以上でもよく、15重量部以上でもよく、20重量部以上でもよい。また、いくつかの実施形態において、ベースポリマー100重量部に対する屈折率向上剤の使用量は、例えば80重量部以下とすることができ、粘着剤の高屈折率化と粘着特性や光学特性の低下抑制とをバランスよく両立する観点から、60重量部以下とすることが有利であり、45重量部以下とすることが好ましい。より粘着特性や光学特性を重視するいくつかの実施形態において、ベースポリマー100重量部に対する屈折率向上剤の使用量は、例えば30重量部以下であってよく、20重量部以下でもよく、15重量部以下でもよく、10重量部以下でもよく、5重量部以下でもよく、3重量部以下でもよい。本発明の実施形態は、粘着剤層におけるベースポリマー100重量部に対する屈折率向上剤の使用量が1重量部未満であるか、または屈折率向上剤を実質的に使用しなくても実施可能であり得る。ここで、実質的に使用しないとは、少なくとも意図的には使用しないことをいう。
【0087】
(添加剤(HRO))
いくつかの実施形態において、屈折率向上剤としては、ベースポリマーよりも高屈折率の有機材料を好ましく採用し得る。以下、このような有機材料を「添加剤(HRO)」と表記することがある。ここで、「HRO」は、高屈折率(High Refractive index)の有機材料(Organic material)であることを表す。ベースポリマー(例えばアクリル系ポリマー、好ましくはアクリル系ポリマー(A))と添加剤(HRO)とを組み合わせて用いることにより、屈折率と粘着特性(剥離強度、柔軟性等)および/または光学特性(全光線透過率、ヘイズ値等)とをより好適に両立する粘着剤を実現し得る。添加剤(HRO)として用いられる有機材料は、重合体であってもよく、非重合体であってもよい。また、重合性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。添加剤(HRO)は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0088】
添加剤(HRO)の屈折率は、モノマーの屈折率と同様に、例えばアッベ屈折率計を用いて、測定波長589nm、測定温度25℃の条件で測定され得る。メーカー等から25℃における屈折率の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0089】
添加剤(HRO)として使用する有機材料の分子量は、目的に応じて適切に選択され得る。添加剤(HRO)の分子量は、例えば30000以下の範囲から選択し得る。また、添加剤(HRO)は、ベースポリマーより低分子量の重合体または非重合体であることが好ましい。高屈折率化の効果と他の特性(例えば、粘着剤に適した柔軟性、ヘイズ等の光学特性)とをバランスよく両立する観点から、いくつかの実施形態において、添加剤(HRO)の分子量は、おおよそ10000未満であることが適当であり、5000未満であることが好ましく、3000未満(例えば1000未満)であることがより好ましく、800未満でもよく、600未満でもよく、500未満でもよく、400未満でもよい。添加剤(HRO)の分子量が大きすぎないことは、粘着剤層内における相溶性向上の観点から有利となり得る。また、添加剤(HRO)の分子量は、例えば130以上であってよく、150以上でもよい。いくつかの実施形態において、添加剤(HRO)の分子量は、該添加剤(HRO)の高屈折率化の観点から、170以上であることが好ましく、200以上であることがより好ましく、230以上でもよく、250以上でもよく、270以上でもよく、500以上でもよく、1000以上でもよく、2000以上でもよい。いくつかの実施形態において、分子量が1000~10000程度(例えば1000以上5000未満)の重合体を、添加剤(HRO)として用いることができる。
添加剤(HRO)の分子量としては、非重合体または低重合度(例えば2~5量体程度)の重合体については、化学構造に基づいて算出される分子量、もしくはマトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析法(MALDI-TOF-MS)を用いた測定値を用いることができる。添加剤(HRO)がより重合度の高い重合体である場合は、適切な条件で行われるGPCに基づく重量平均分子量(Mw)を用いることができる。メーカー等から分子量の公称値が提供されている場合は、その公称値を採用することができる。
【0090】
添加剤(HRO)の選択肢となり得る有機材料としては、例えば、芳香環を有する有機化合物、複素環(芳香環でもよく、非芳香族性の複素環でもよい。)を有する有機化合物が挙げられる。
【0091】
添加剤(HRO)として用いられる芳香環を有する有機化合物(以下、「芳香環含有化合物」ともいう。)の有する芳香環は、モノマー(m1)として用いられる化合物の有する芳香環と同様のものから選択され得る。
【0092】
芳香環は、環構成原子上に1または2以上の置換基を有していてもよく、置換基を有していなくてもよい。置換基を有する場合、該置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、アリールオキシ基、水酸基、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等が挙げられる。炭素原子を含む置換基において、該置換基に含まれる炭素原子の数は、例えば1~10であり、有利には1~6であり、好ましくは1~4であり、より好ましくは1~3であり、例えば1または2であり得る。いくつかの実施形態において、芳香環は、環構成原子上に置換基を有しないか、アルキル基、アルコキシ基およびハロゲン原子(例えば臭素原子)からなる群から選択される1または2以上の置換基を有する芳香環であり得る。
【0093】
添加剤(HRO)として用いられ得る芳香環含有化合物としては、例えば:モノマー(m1)として用いられ得る化合物;モノマー(m1)として用いられ得る化合物をモノマー単位として含むオリゴマー;モノマー(m1)として用いられ得る化合物から、エチレン性不飽和基を有する基(環構成原子に結合した置換基であり得る。)または該基のうちエチレン性不飽和基を構成する部分を除き、水素原子またはエチレン性不飽和基を有しない基(例えば、水酸基、アミノ基、ハロゲン原子、アルキル基、アルコキシ基、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシ基、グリシジルオキシ基等)に置き換えた構造の化合物;が挙げられる。添加剤(HRO)として用いられ得る芳香環含有化合物の非限定的な具体例としては、ベンジルアクリレート、m-フェノキシベンジルアクリレート、2-(o-フェニルフェノキシ)エチルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、フェノキシポリエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピルアクリレート、上述したフルオレン構造を有するモノマー、ジナフトチオフェン構造を有するモノマー、ジベンゾチオフェン構造を有するモノマー等の芳香環含有モノマー;3-フェノキシベンジルアルコール、ジナフトチオフェンおよびその誘導体(例えば、ジナフトチオフェン環に、ヒドロキシ基、メタノール基、ジエタノール基、グリシジル基等から選択される1種または2種以上の置換基が、1または2以上結合した構造の化合物)等の、エチレン性不飽和基を有しない芳香環含有化合物;が挙げられる。また、芳香環含有化合物は、このような芳香環含有モノマーをモノマー単位として含むオリゴマー(好ましくは分子量が約5000以下、より好ましくは約1000以下のオリゴマー。例えば2~5量体程度の低重合物)であり得る。オリゴマーは、例えば:芳香環含有モノマーの単独重合体;1種または2種以上の芳香環含有モノマーの共重合体;1種または2種以上の芳香環含有モノマーと他のモノマーとの共重合体;等であり得る。他のモノマーとしては、芳香環を有しないモノマーの1種または2種以上が用いられ得る。
【0094】
いくつかの実施形態において、添加剤(HRO)としては、高い高屈折率化効果が得られやすいことから、1分子中に2以上の芳香環を有する有機化合物(以下、「芳香環複数含有化合物」ともいう。)を好ましく採用し得る。芳香環複数含有化合物は、エチレン性不飽和基等の重合性官能基を有していてもよく、有していなくてもよい。また、芳香環複数含有化合物は、重合体であってもよく、非重合体であってもよい。また、重合体は、芳香環複数含有モノマーをモノマー単位として含むオリゴマー(好ましくは分子量が約5000以下、より好ましくは約1000以下のオリゴマー。例えば2~5量体程度の低重合物)であり得る。オリゴマーは、例えば:芳香環複数含有モノマーの単独重合体;1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーの共重合体;1種または2種以上の芳香環複数含有モノマーと他のモノマーとの共重合体;であり得る。他のモノマーは、芳香環複数含有モノマーに該当しない芳香環含有モノマーでもよく、芳香環を有しないモノマーでもよく、これらの組合せであってもよい。
【0095】
芳香環複数含有化合物の非限定的な例としては、2以上の非縮合芳香環がリンキング基を介して結合した構造を有する化合物、2以上の非縮合芳香環が直接(すなわち、他の原子を介さずに)化学結合した構造を有する化合物、縮合芳香環構造を有する化合物、フルオレン構造を有する化合物、ジナフトチオフェン構造を有する化合物、ジベンゾチオフェン構造を有する化合物が挙げられる。芳香環複数含有化合物は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合せて用いてもよい。
【0096】
フルオレン構造を有する化合物の具体例としては、上述したフルオレン構造を有するモノマーや、かかるモノマーの単独重合体または共重合体であるオリゴマーのほか、9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン(屈折率:1.68)、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン(屈折率:1.73)、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン(屈折率:1.68)、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン(屈折率:1.65)等の、9,9-ビスフェニルフルオレンおよびその誘導体が挙げられる。
【0097】
ジナフトチオフェン構造を有する化合物の具体例としては、上述したジナフトチオフェン構造を有するモノマーや、かかるモノマーの単独重合体または共重合体であるオリゴマーのほか、ジナフトチオフェン(屈折率:1.808);6-ヒドロキシメチルジナフトチオフェン(屈折率:1.766)等のヒドロキシアルキルジナフトチオフェン;2,12-ジヒドロキシジナフトチオフェン(屈折率:1.750)等のジヒドロキシジナフトチオフェン;2,12-ジヒドロキエチルオキシジナフトチオフェン(屈折率:1.677)等のジヒドロキシアルキルオキシジナフトチオフェン;2,12-ジグリシジルオキシジナフトチオフェン(屈折率1.723)等のジグリシジルオキシジナフトチオフェン;2,12-ジアリルオキシジナフトチオフェン(略号:2,12-DAODNT、屈折率1.729)等の、エチレン性不飽和基を2以上有するジナフトチオフェン;等の、ジナフトチオフェンおよびその誘導体が挙げられる。
【0098】
ジベンゾチオフェン構造を有する化合物の具体例としては、上述したジベンゾチオフェン構造を有するモノマーや、かかるモノマーの単独重合体または共重合体であるオリゴマーのほか、ジベンゾチオフェン(屈折率:1.607)、4-ジメチルジベンゾチオフェン(屈折率:1.617)、4,6-ジメチルジベンゾチオフェン(屈折率:1.617)が挙げられる。
【0099】
添加剤(HRO)の選択肢となり得る、複素環を有する有機化合物(以下、複素環含有有機化合物ともいう。)の例としては、チオエポキシ化合物、トリアジン環を有する化合物が挙げられる。チオエポキシ化合物の例としては、特許第3712653号公報に記載のビス(2,3-エピチオプロピル)ジスルフィドおよびその重合物(屈折率1.74)が挙げられる。トリアジン環を有する化合物の例としては、1分子内にトリアジン環を少なくとも1つ(例えば3~40個、好ましくは5~20個))有する化合物が挙げられる。なお、トリアジン環は芳香族性を有するため、トリアジン環を有する化合物は上記芳香環含有化合物の概念にも包含され、また、トリアジン環を複数有する化合物は上記芳香環複数含有化合物の概念にも包含される。
【0100】
いくつかの実施形態において、添加剤(HRO)としては、エチレン性不飽和基を有しない化合物を好ましく採用し得る。これにより、熱や光による粘着剤組成物の変質(ゲル化の進行や粘度上昇によるレベリング性の低下)を抑制し、保存安定性を高めることができる。エチレン性不飽和基を有しない添加剤(HRO)を採用することは、該添加剤(HRO)を含む粘着剤層を有する粘着シートや、該粘着シートを含む積層体等において、エチレン性不飽和基の反応に起因する寸法変化や変形(反り、波打ち等)、光学歪の発生等を抑制する観点からも好ましい。
【0101】
アクリル系粘着剤組成物は、好ましくは、シランカップリング剤および/または架橋剤を含有し得る。シランカップリング剤としては、例えばエポキシ基含有シランカップリング剤が挙げられる。架橋剤としては、例えば、イソシアネート系架橋剤、過酸化物系架橋剤が挙げられる。さらに、アクリル系粘着剤組成物は、添加剤を含有していてもよい。添加剤の具体例としては、酸化防止剤、導電剤、着色剤、顔料などの粉体、染料、界面活性剤、可塑剤、粘着性付与剤、表面潤滑剤、レベリング剤、軟化剤、老化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、重合禁止剤、無機または有機の充填剤、金属粉、粒子状、箔状物が挙げられる。また、制御できる範囲内で、還元剤を加えてのレドックス系を採用してもよい。シランカップリング剤、架橋剤、および/または添加剤の種類、数、組み合わせ、含有量等は、目的に応じて適切に設定され得る。
【0102】
D-3.接着剤
接着剤もまた、上記の特性を満足する限りにおいて任意の適切な構成が採用され得る。接着剤(接着剤組成物)は、代表的には、芳香環骨格を含有する(メタ)アクリレートと金属酸化物粒子とを含有し得る。以下、それぞれについて簡単に説明し得る。なお、接着剤に含まれ得る他の成分(例えば、硬化成分、粘着剤)については周知の構成が採用され得るので、具体的な説明は省略する。
【0103】
接着剤組成物が芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートを含有することにより、本発明の実施形態において所望の屈折率を有する接着剤層が形成され得る。芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートとして、多環式芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートおよび2個以上の芳香環を有する(メタ)アクリレートからなる群より選択される少なくとも1種を含有するものを使用することが好ましい。このような(メタ)アクリレートとしては、例えば、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコールアクリレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、1-ナフタレンメチル(メタ)アクリレート、フェノキシベンジル(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性オルトフェニルフェノール(メタ)アクリレート、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレンと(メタ)アクリル酸との反応物が挙げられる。これらの中でも、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートおよびフェノキシエチル(メタ)アクリレートを使用することがより好ましく、フェノキシベンジル(メタ)アクリレートを使用することが特に好ましい。芳香環骨格を有する(メタ)アクリレートの配合量は、接着剤組成物の全量を100質量%としたとき、20質量%~90質量%であることが好ましく、30質量%~80質量%であることがより好ましい。
【0104】
金属酸化物粒子としては、例えば、酸化ケイ素、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、五酸化アンチモン、酸化スズ、酸化アルミニウム、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、酸化第二鉄、酸化セリウム、酸化イットリウム、酸化マンガン、酸化ホロミウム、酸化銅、酸化ビスマス、酸化コバルト、四三酸化コバルト、四三酸化鉄、酸化マグネシウム、酸化ランタン、酸化プラセオジム、酸化ネオジム、酸化サマリウム、酸化ユウロビウム、酸化ガドリニウム、酸化テルビウム、酸化ジスプロシウム、酸化エルビウム、酸化ツリウム、酸化イッテルビウム、酸化ルテチウム、酸化スカンジウム、五酸化タンタル、五酸化ニオブ、酸化イリジウム、酸化ロジウム、酸化ルテニウムおよびこれらを結合させた複合酸化物が挙げられる。これらの中でも、酸化ジルコニウムおよび酸化チタンが好ましく、酸化ジルコニウムが特に好ましい。なお、金属酸化物粒子は、上記で挙げた金属酸化物のみで構成されてもよく、あるいはその他の成分を含んでもよいが、粒子中の成分として金属酸化物が最大重量を占めることが好ましい。金属酸化物粒子の形状は、球状、楕円球状、立方体状、直方体状あるいはピラミッド形状など任意の形状を取り得る。なお、金属酸化物粒子として、任意の適切な手法により表面処理したものを使用してもよい。
【0105】
接着剤組成物中の金属酸化物粒子の安定性向上と、接着剤層の屈折率向上との見地から、金属酸化物粒子の平均粒子径は、1nm~150nmであることが好ましく、1nm~50nmであることがより好ましい。金属酸化物粒子の平均粒子径は、例えば以下の手法により導出され得る:透過型電子顕微鏡(TEM)、電界放射型透過電子顕微鏡(FE-TEM)および電界放射型走査電子顕微鏡(FE-SEM)などを使用して粒子を拡大観察し、無作為に例えば1000個の粒子を選択し、その最大長さを測定し、その算術平均を求めることにより算出可能である。
【0106】
接着剤組成物中の金属酸化物粒子の安定性向上と、接着剤層の屈折率向上との見地から、金属酸化物粒子の配合量は、接着剤組成物の全量を100質量%としたとき、10質量%~50質量%であることが好ましく、15質量%~40質量%であることがより好ましい。
【0107】
接着剤組成物は、水酸基含有(メタ)アクリレートをさらに含有してもよい。このような構成であれば、接着剤層の接着力がさらに向上し得る。水酸基含有(メタ)アクリレートの配合量は、接着剤組成物の全量を100質量%としたとき、1質量%~30質量%であることが好ましく、3質量%~20質量%であることがより好ましい。
【0108】
E.画像表示装置
上記A項~D項に記載の光学積層体は、画像表示装置に適用され得る。したがって、本発明の実施形態は、そのような光学積層体を用いた画像表示装置も包含する。画像表示装置の代表例としては、液晶表示装置、有機EL表示装置が挙げられる。本発明の実施形態による画像表示装置は、代表的には、その視認側に上記A項~D項に記載の光学積層体を備える。
【実施例0109】
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例によって限定されるものではない。実施例における測定方法および評価方法は以下のとおりである。特に明示がない場合、実施例における「部」および「%」は重量基準である。
【0110】
(1)屈折率
(1-1)粘着剤層
実施例および比較例において形成された粘着剤層について、アッベ屈折率計(ATAGO社製、製品名「DR-M2/1550」) を用いて測定した。測定波長は589nm、測定温度は25℃であった。
(1-2)接着剤層および液晶配向固化層
実施例および比較例に用いた接着剤をシクロオレフィン系ポリマーフィルム(COPフィルム)に塗工し(厚み100μm)、塗工面に同じCOPフィルムを貼り合わせて、活性エネルギー線照射装置により可視光線を照射して、硬化物層(単体膜)を得た。得られた硬化物層について、プリズムカプラー(サイロンテクノロジー社製、製品名「SPA-4000」)を用いて、面内の屈折率および厚み方向の屈折率をそれぞれ測定し、これらの平均値を接着剤層の平均屈折率とした。測定波長は594nm、測定温度は23℃であった。
さらに、液晶配向固化層については、以下のようにして透過軸方向の屈折率を求めた。Axoscan(Axometrics社製)を用いて面内位相差Re(550)および厚み方向位相差Rth(550)を測定した。下記の連立方程式から、nx、nyおよびnzを算出した。
Re(550)=(nx-ny)×d
Nz=Rth(550)/Re(550)=(nx-nz)/(nx-ny)
さらに、楕円の式(x2/a2)+(y2/b2)=1において、aをnx、bをnyとし、xおよびyを楕円上の角度θ方向におけるx方向およびy方向の屈折率とし、y=tanθと上記のnxおよびnyとから連立方程式を解き、過軸方向の屈折率を算出した。
【0111】
(2)厚み
干渉膜厚計(大塚電子社製、「MCPD9800」)で測定した。
【0112】
(3)厚みバラツキ
実施例および比較例で得られた光学積層体における第1液晶配向固化層/接着層/第2液晶配向固化層の積層体について、Ocean Optics社製「USB4H09646」を用いて、10cm×10cmの範囲において1mmピッチで厚みマッピング測定を行った。隣接する3点間の厚みの差が一番大きい箇所の当該厚み差を厚みバラツキとした。
【0113】
(4)線状ムラ
実施例および比較例で得られた光学積層体の第2液晶配向固化層側に通常のアクリル系粘着剤を配置し、当該アクリル系粘着剤を介してV3反射板(NEODIS社製)に貼り合わせ、試験サンプルとした。得られた試験サンプルを、3波長蛍光灯下において目視により観察し、以下の基準で評価した。
1:線状ムラは認められなかった
2:線状ムラがわずかに認められた
3:線状ムラが認められたが、実用上許容可能な程度であった
4:実用上許容不可能な程度の線状ムラが認められた
5:線状ムラが顕著であった
【0114】
[製造例1:偏光板と位相差層とを積層する接着剤1の調製]
ヒドロキシエチルアクリルアミド(商品名「HEAA」、KJケミカルズ社製)10部、2-アセトアセトキシエチルメタクリレート(商品名「AAEM」、三菱ケミカルズ社製)4部、アクリロイルモルフォリン(商品名「ACMO」、KJケミカルズ社製)60部、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名「アロニックスM-220」、4-ビニルフェニルボロン酸(富士フイルム和光純薬社製)1部、東亞合成社製)11部、アクリル系オリゴマー(商品名「 ARUFON UP-1190」、東亞合成社製)10部、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)1部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製)2部、ジエチルチオキサントン(商品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製)1部を50℃で1時間撹拌し、接着剤1を調製した。
【0115】
[製造例2:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤A1の調製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート91部、アクリロイルモルフォリン6部、アクリル酸2.7部および4-ヒドロキシブチルアクリレート0.3部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)270万のアクリル系ポリマーA1の溶液を調製した。
アクリル系ポリマーA1溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物:東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.1部、過酸化物架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド:日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、粘着剤A1を得た。粘着剤A1のポリマー濃度は5%に調整した。
【0116】
[製造例3:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤A2の調製]
ポリマー濃度を6%に調整したこと以外は製造例2と同様にして粘着剤A2を得た。
【0117】
[製造例4:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤A3の調製]
ポリマー濃度を7%に調整したこと以外は製造例2と同様にして粘着剤A3を得た。
【0118】
[製造例5:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤A4の調製]
ポリマー濃度を8%に調整したこと以外は製造例2と同様にして粘着剤A4を得た。
【0119】
[製造例6:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤Bの調製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート94.9部、アクリル酸5部および2-ヒドロキシエチルアクリレート0.1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を55℃付近に保って8時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)220万のアクリル系ポリマーBの溶液を調製した。
アクリル系ポリマーB溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物:東ソー社製、商品名「コロネートL」)0.6部、過酸化物架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド:日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.2部およびエポキシ基含有シランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名「KBM-403」)0.2部を配合して、粘着剤Bを得た。
【0120】
[製造例7:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤C1の調製]
攪拌羽根、温度計、窒素ガス導入管、冷却器を備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート19部、ベンジルアクリレート80部および4-ヒドロキシブチルアクリレート1部を含有するモノマー混合物を仕込んだ。さらに、このモノマー混合物100部に対して、重合開始剤として2,2’-アゾビスイソブチロニトリル0.1部を酢酸エチル100部と共に仕込み、緩やかに攪拌しながら窒素ガスを導入して窒素置換した後、フラスコ内の液温を60℃付近に保って6時間重合反応を行って、重量平均分子量(Mw)190万のアクリル系ポリマーC1の溶液を調製した。
アクリル系ポリマーC1溶液の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物:三井化学社製、商品名「D101E」)0.1部および過酸化物架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド:日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部を配合して、粘着剤C1を得た。
【0121】
[製造例8:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤C2の調製]
ブチルアクリレート30部、m-フェノキシベンジルアクリレート69部および4-ヒドロキシブチルアクリレート1部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は製造例7と同様にして、重量平均分子量(Mw)65万のアクリル系ポリマーC2の溶液を調製した。アクリル系ポリマーC2を用いたこと以外は製造例7と同様にして、粘着剤C2を得た。
【0122】
[製造例9:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤C3の調製]
ブチルアクリレート19部、m-フェノキシベンジルアクリレート80部および4-ヒドロキシブチルアクリレート1部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は製造例7と同様にして、重量平均分子量(Mw)65万のアクリル系ポリマーC3の溶液を調製した。アクリル系ポリマーC3を用いたこと以外は製造例7と同様にして、粘着剤C3を得た。
【0123】
[製造例10:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤C4の調製]
ブチルアクリレート6部、m-フェノキシベンジルアクリレート93部および4-ヒドロキシブチルアクリレート1部を含有するモノマー混合物を用いたこと以外は製造例7と同様にして、重量平均分子量(Mw)65万のアクリル系ポリマーC4の溶液を調製した。アクリル系ポリマーC4を用いたこと以外は製造例7と同様にして、粘着剤C4を得た。
【0124】
[製造例11:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する粘着剤C5の調製]
製造例10のアクリル系ポリマーC4の固形分100部に対して、イソシアネート系架橋剤(トリメチロールプロパン/トリレンジイソシアネート付加物:三井化学社製、商品名「D101E」)0.1部、過酸化物架橋剤(ベンゾイルパーオキサイド:日本油脂社製、商品名「ナイパーBMT」)0.3部および屈折率向上剤(6-アクリロイルオキシメチルジナフトチオフェン:スガイ化学工業株式会社製、商品名「6MDNTA」)10部を配合して、粘着剤C5を得た。
【0125】
[製造例12:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する接着剤D1の調製]
(分散剤の調製)
トリスチレン化フェノール415g(1モル)および水酸化カリウム1g(0.018モル)をオートクレーブに仕込み、均一に混合した。この反応系が130℃の条件で、該反応系にエチレンオキシド(EO)352g(8モル)を滴下した。エチレンオキシドの滴下終了後、引き続き130℃において圧力を0.1MPaに維持して1時間熟成させ、トリスチレン化フェノールのEO8モル付加物を得た。得られたトリスチレン化フェノールEO8モル付加物767g(1モル)およびモノクロロ酢酸ナトリウム152g(1.3モル)を反応器に入れ、均一になるように撹拌した。次いで、反応系が60℃の条件で水酸化ナトリウム52gを添加した後、80℃に昇温させ、3時間熟成させた。熟成後、50℃まで冷却し、同温度で98%硫酸117g(1.2モル)を滴下することにより、白色懸濁溶液を得た。この白色懸濁溶液を蒸留水で洗浄し、溶媒を減圧留去して分散剤を得た。
(ジルコニア分散体の調製)
酸化ジルコニウムのメタノール分散液(堺化学工業製、グレード名「SZR-CM」、動的光散乱法に基づく平均粒子径(D50):8nm、酸化ジルコニウム固形分濃度:30%)100部に対し、上記で得られた分散剤1.5部と、m-フェノキシベンジルアクリレート(共栄社化学製、商品名「ライトアクリレートPOB-A」;以下、「POB-A」と表記する。)28.5部と、を加えて混合した。次いで、ロータリーエバポレータを用いて溶媒を減圧除去することにより、酸化ジルコニウムのモノマー分散体であるジルコニア分散体を得た。このジルコニア分散体は、酸化ジルコニウム/分散剤/POB-Aを、50/2.5/47.5の重量比で含有する。
(接着剤D1の調製)
ジルコニア分散体35部、「POB-A」40部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10部、トリプロピレングリコールジアクリレート(商品名「アロニックスM-220」、東亞合成社製)10部、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)1部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製)2部、および、ジエチルチオキサントン(商品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製)2部を50℃で1時間撹拌し、接着剤D1を調製した。
【0126】
[製造例13:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する接着剤D2の調製]
ジルコニア分散体55部、「POB-A」25部、4-ヒドロキシブチルアクリレート10部、「アロニックスM-220」10部、「Omnirad 819」1部、「Omnirad 184」2部、「KAYACURE DETX-S」2部を50℃で1時間撹拌し、接着剤D2を調製した。
【0127】
[製造例14:第1液晶配向固化層と第2液晶配向固化層とを積層する接着剤Eの調製]
オグソールEA-F5710(大阪ガスケミカル社製)60部、プラクセルFA1DDM(ダイセル社製)10部、アクリロイルモルフォリン(商品名「ACMO」、KJケミカルズ社製)20部、ARFON UP-1190(東亞合成社製)5部、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド(商品名「Omnirad 819」、IGM Resins B.V.社製)1部、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(商品名「Omnirad 184」、IGM Resins B.V.社製)2部、およびジエチルチオキサントン(商品名「KAYACURE DETX-S」、日本化薬社製)2部を50℃で1時間撹拌し、接着剤Eを調製した。
【0128】
[実施例1]
1.偏光板の作製
1-1.偏光子の作製
熱可塑性樹脂基材として、長尺状で、Tg約75℃である、非晶質のイソフタル共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(厚み:100μm)を用い、樹脂基材の片面に、コロナ処理を施した。
ポリビニルアルコール(重合度4200、ケン化度99.2モル%)およびアセトアセチル変性PVA(日本合成化学工業社製、商品名「ゴーセファイマー」)を9:1で混合したPVA系樹脂100重量部に、ヨウ化カリウム13重量部を添加したものを水に溶かし、PVA水溶液(塗布液)を調製した。
樹脂基材のコロナ処理面に、上記PVA水溶液を塗布して60℃で乾燥することにより、厚み13μmのPVA系樹脂層を形成し、積層体を作製した。
得られた積層体を、130℃のオーブン内で縦方向(長手方向)に2.4倍に一軸延伸した(空中補助延伸処理)。
次いで、積層体を、液温40℃の不溶化浴(水100重量部に対して、ホウ酸を4重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(不溶化処理)。
次いで、液温30℃の染色浴(水100重量部に対して、ヨウ素とヨウ化カリウムを1:7の重量比で配合して得られたヨウ素水溶液)に、最終的に得られる偏光子の単体透過率(Ts)が所望の値となるように濃度を調整しながら60秒間浸漬させた(染色処理)。
次いで、液温40℃の架橋浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを3重量部配合し、ホウ酸を5重量部配合して得られたホウ酸水溶液)に30秒間浸漬させた(架橋処理)。
その後、積層体を、液温70℃のホウ酸水溶液(ホウ酸濃度4重量%、ヨウ化カリウム濃度5重量%)に浸漬させながら、周速の異なるロール間で縦方向(長手方向)に総延伸倍率が5.5倍となるように一軸延伸を行った(水中延伸処理)。
その後、積層体を液温20℃の洗浄浴(水100重量部に対して、ヨウ化カリウムを4重量部配合して得られた水溶液)に浸漬させた(洗浄処理)。
その後、約90℃に保たれたオーブン中で乾燥しながら、表面温度が約75℃に保たれたSUS製の加熱ロールに接触させた(乾燥収縮処理)。
このようにして、樹脂基材上に厚み約5μmの偏光子を形成し、樹脂基材/偏光子の構成を有する偏光板を得た。偏光子の単体透過率Tsは43.3%であった。
【0129】
1-2.偏光板の作製
得られた偏光子の表面(樹脂基材とは反対側の面)に、紫外線硬化型接着剤を介して、HC-COPフィルムを貼り合わせた。なお、HC-COPフィルムは、シクロオレフィン系樹脂(COP)フィルム(厚み25μm)にHC層(厚み4μm)が形成されたフィルムであり、COPフィルムが偏光子側となるようにして貼り合わせた。なお、COPフィルムは、Re(550)が135nmであった。次いで、樹脂基材を剥離して、当該剥離面に紫外線硬化型接着剤を介してトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(厚み25μm)を貼り合わせた。このようにして、HC層/COPフィルム(保護層)/偏光子/TACフィルム(保護層)の構成を有する偏光板を得た。
【0130】
2.位相差層の作製
ネマチック液晶相を示す光重合性液晶化合物(BASF社製「Paliocolor LC242」、下記化学式)をシクロペンタノンに溶解して、固形分濃度30重量%の溶液を調製した。この溶液に、界面活性剤(ビック・ケミー社製、「BYK―360」)および光重合開始剤(IGM Resins社製、「Omnirad907」)を添加して、液晶組成物溶液を調製した。界面活性剤および重合開始剤の添加量は、光重合性液晶化合物100重量部に対して、それぞれ、0.01重量部および3重量部とした。基材として、二軸延伸ノルボルネン系フィルム(日本ゼオン製「ゼオノアフィルム」、厚み33μm、Re(550)=135nm)を準備した。この基材上に上記の液晶組成物をRe(550)が240nmとなるようにバーコーターにより塗布し、100℃で3分間加熱して液晶を配向させた。室温に冷却した後、窒素雰囲気下で、積算光量400mJ/cm
2の紫外線を照射して光硬化を行い、基材/第1液晶配向固化層の構成を有する積層体を得た。第1液晶配向固化層はホモジニアス配向しており、その厚みは1.7μmであった。塗布厚みを変更したこと以外は上記と同様にして、基材/第2液晶配向固化層(ホモジニアス配向、厚み0.92μm、Re(550)=130nm)の積層体を得た。
【化4】
【0131】
3.光学積層体の作製
偏光板のTACフィルム表面に、製造例1の接着剤1(厚み1μm)を介して第1液晶配向固化層を貼り合わせた後、基材を剥離した。次いで、第1液晶配向固化層表面に、製造例4の粘着剤A3(厚み5μm)を介して第2液晶配向固化層を貼り合わせ、基材を剥離して、偏光板/第1液晶配向固化層/接着層/第2液晶配向固化層の構成を有する光学積層体を得た。光学積層体において、偏光板の偏光子の透過軸と第1液晶配向固化層の遅相軸とのなす角度は15°であり、偏光板の偏光子の透過軸と第2液晶配向固化層の遅相軸とのなす角度は75°であった。第1液晶配向固化層および第2液晶配向固化層のそれぞれの平均屈折率は1.59であり、偏光子の透過軸方向における第1液晶配向固化層の屈折率nLC1は1.66、第2液晶配向固化層の屈折率nLC2は1.56であった。さらに、接着層の屈折率nADは1.47であり、厚みバラツキTVADは0.1μmであった。その結果、表示ムラパラメーターは2.8であった。得られた光学積層体を上記の「線状ムラ」の評価に供した。結果を表1に示す。なお、表1における「LC層との屈折率差」は、偏光子の透過軸方向における第1液晶配向固化層の屈折率nLC1および第2液晶配向固化層の屈折率nLC2の平均と、接着層の屈折率nADと、の差を意味する。
【0132】
[実施例2~11および比較例1~3]
接着層の構成を表1のように変更したこと以外は実施例1と同様にして光学積層体を得た。得られた光学積層体を実施例1と同様の評価に供した。結果を表1に示す。
【0133】