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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173312
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/12 20060101AFI20241205BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241205BHJP
   G16Y 40/35 20200101ALI20241205BHJP
【FI】
G06F3/12 329
G06F3/12 310
G06F3/12 335
B41J2/175 301
G16Y40/35
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091650
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(72)【発明者】
【氏名】前田 昌雄
(72)【発明者】
【氏名】新村 裕之
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA29
2C056EB20
2C056EB50
2C056EB59
(57)【要約】
【課題】 使用中の消耗品ユニットを別の印刷装置に載せ替えて使用すると、消耗品ユニットの消耗剤残量が正しく管理できなくなるという問題があった。
【解決手段】 装着された消耗品ユニットの識別情報と当該消耗品ユニットについて自装置で使用した消耗剤使用量を対にして記憶する。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着された消耗品ユニットの識別情報と、当該消耗品ユニットについて自装置で使用した消耗剤使用量を対にして記憶することを特徴とする印刷装置。
【請求項2】
消耗品ユニットの識別情報により特定される消耗剤使用量に基づいて消耗品ユニットの消耗剤残量を管理し、印刷装置の制御に用いることを特徴とする請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
ネットワークで接続された他の印刷装置との間で、消耗品ユニットの識別情報を用いて情報を授受することにより、他の印刷装置で使用された消耗剤使用量を取得し、自装置で記憶している消耗剤使用量と加算することで消耗品ユニットの消耗剤残量を管理し、印刷装置の制御に用いることを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項4】
ネットワークで接続された他の印刷装置との間で、消耗品ユニットの識別情報を用いて情報を授受することにより、同一の消耗品ユニットを使用した履歴がある別の印刷装置を第二の印刷装置として特定することを特徴とする請求項1または2に記載の印刷装置。
【請求項5】
第二の印刷装置は、同一の利用者が利用していると判断して印刷装置の制御に用いることを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
装着された消耗品ユニットが印刷装置に最初に装着された時に未使用でなく、かつ第二の印刷装置が存在する場合、装着された消耗品ユニットを第二の印刷装置に戻すよう利用者に促す通知を行うことを特徴とする請求項5に記載の印刷装置。
【請求項7】
ネットワークで接続された他の印刷装置との間で、消耗品ユニットの識別情報を用いて情報を授受するに際して、ローカルエリアネットワークにおけるブロードキャスト通信を用いて他の印刷装置からの応答を取得することを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項8】
ネットワークで接続された他の印刷装置との間で、消耗品ユニットの識別情報を用いて情報を授受するに際して、印刷装置以外のサーバー装置を介して情報の授受を行うことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷装置に関し、特に消耗品の消費量をカウントして記憶し消耗品残量を管理する印刷装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
印刷装置においては、交換可能な消耗品ユニットの消耗剤残量を管理して動作する必要がある。例えばインクジェット方式の印刷装置においては、印刷装置に装着して使用するインクカートリッジに充填されているインク残量を把握して管理する必要がある。インクカートリッジのインク残量を把握する方法としては、例として、インクカートリッジ内のインクが所定量以上あるか否かを検知するインクセンサーを設ける方法がある。また他の例として、インクカートリッジに記憶素子を含むメモリチップを搭載し、消費したインク量をカウントして記憶する方法がある。あるいはセンサーと記憶素子を組合せて残量をより正確に把握して管理する方法も考案されている。しかしながら、インクセンサーやメモリチップを搭載することは、印刷装置本体や、インクカートリッジのコストが増大するというデメリットがある。これを解決するため、例えば特許文献1において、消耗品ユニットを印刷装置に装着した時点からの消耗剤の消費量をカウントして印刷装置本体に記憶し、消耗品ユニットの消耗剤残量を管理する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2006-130812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の技術では、印刷装置に装着した消耗品ユニットの消耗剤使用量を印刷装置本体に記憶するため、使用中の消耗品ユニットを別の印刷装置に載せ替えて使用すると、消耗品ユニットの消耗剤残量が正しく管理できなくなるという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、装着された消耗品ユニットの識別情報と当該消耗品ユニットについて自装置で使用した消耗剤使用量を対にして記憶することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷装置や消耗品のコストを増大することなく、消耗品を別の印刷装置に載せ替えて使用しても、消耗品の残量を正しく管理することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施例である印刷システムの構成を示す図である。
図2】プリンターの構成を示すブロック図である。
図3】プリンターの不揮発メモリに保持される、インクカートリッジ管理テーブルの構造を示す図である。
図4】インクカートリッジのカートリッジメモリに保持される、インクカートリッジ情報の構造を示す図である。
図5】プリンターの電源投入後のCPUの処理内容を示すフローチャートである。
図6】カートリッジ交換時の処理内容を示すフローチャートである。
図7】印刷ジョブ実行時の処理内容を示すフローチャートである。
図8】プリンター間で授受されるパケットの構造を示す図である。
図9】カートリッジチェック時の処理内容を示すフローチャートである。
図10】インク消費時の処理内容を示すフローチャートである。
図11】インク消費量情報要求受信時の処理内容を示すフローチャートである。
図12】カートリッジチェック時のプリンター間の情報のやり取りの様子を示すシーケンス図である。
図13】本発明の実施例2における、カートリッジチェック時の処理内容を示すフローチャートである。
図14】プリンターの操作パネルの表示画面の例を示す図である。
図15】カートリッジチェック時のプリンター間の情報のやり取りの様子を示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、この実施の形態に記載されている構成要素は、本発明の例としての形態を示すものであり、この発明の範囲をそれらのみに限定するものではない。
【実施例0009】
図1は、本発明の一実施例である印刷システム100の構成を示す図である。本システムは、ローカルエリアネットワーク101を介して接続された、複数のプリンター300およびクライアント端末200などのデバイス群102から構成される。ローカルエリアネットワーク101は、ルーター103を介してインターネット104に接続されている。インターネット104にはサーバー105が設けられている。本図においては、クライアント端末200は一つだけ記載されているが、複数のクライアント端末200が接続されていてもよい。また、サーバー105はインターネット104に設置されている例を示しているが、ローカルエリアネットワーク101に設置されている構成であってもよい。
【0010】
図2は、プリンター300の構成を示すブロック図である。プリンター300は装置全体の制御を行うメインボード310と、無線LANユニット301、操作パネル302、印刷機構303などからなる。メインボード310に配置されるマイクロプロセッサ形態のCPU311は、内部バス312を介して接続されているROM形態のプログラムメモリ313に格納されている制御プログラムと、RAM形態のデータメモリ314の内容とに従って動作する。また、装置の電源供給が断たれても記憶内容を保持可能な不揮発メモリ315が設けられている。CPU311は印刷機構制御回路318を制御して印刷機構303を動作させ、データメモリ314中の画像を記録媒体に印刷することができる。
【0011】
印刷機構303にはインクカートリッジ320を装着する機構があり、カートリッジ制御回路319を介して装着されたインクカートリッジ320の制御を行う。インクカートリッジ320には、限定的に書き替えが可能なカートリッジメモリ321が備えられている。CPU311は、カートリッジ制御回路319を介してカートリッジメモリ321に保持されているデータを読み出したり、一部の情報は書き換えたりすることも可能である。CPU311は無線LAN通信制御部316を通じて無線LANユニット301を制御することで、ローカルエリアネットワーク101と接続し、他の装置との通信を行うことができる。CPU311は操作部制御回路318を制御することによって操作パネル302にプリンター300の状態の表示や機能選択メニューの表示を行ったり、利用者からの操作を受け付けたりすることが可能である。
【0012】
図3は、プリンター300の不揮発メモリ315に保持される、インクカートリッジ管理テーブル3100の構造を示す図である。インクカートリッジ管理テーブル3100は、複数のデータ要素3101、3102、3103、3104を格納することができる。そして複数のインクカートリッジ320の情報をテーブルの複数の行3110、3111、3112にそれぞれ格納して記憶することができる。データ要素名ctrgIDはカートリッジ識別子3101であり、装着されたインクカートリッジ320のカートリッジ識別子3201を記憶する。データ要素名consumptionはインク消費量3102であり、当該インクカートリッジ320が当該プリンターに装着されて消費したインク消費量を累積記憶する。
【0013】
データ要素名outsideConsumptionは外部インク消費量3103であり、当該インクカートリッジ320が当該プリンター以外に装着されて消費したインク消費量を記憶する。データ要素名firstUseは初使用フラグ3104であり、当該インクカートリッジ320を始めて使用したのが当該プリンターであるか否かを示すフラグを記憶する。
【0014】
図4は、インクカートリッジ320のカートリッジメモリ321に保持される、インクカートリッジ情報3200の構造を示す図である。データ要素名ctrgIDはカートリッジ識別子3201であり、当該インクカートリッジ320を一意に特定する識別子を記憶する。カートリッジ識別子3201はインクカートリッジ320の製造時に一意の値が書きこまれ、以後書き換えることができない。データ要素名unusedは未使用フラグ3202であり、当該インクカートリッジ320が未使用か使用済みかを示すフラグを記憶する。
【0015】
未使用フラグ3202はインクカートリッジ320の製造時に1が書きこまれ、初めてプリンター300にセットして使用されると0に書き換えられる。0に書き換えられた未使用フラグ3202は、1に書き戻すことができない。このように、カートリッジメモリ321の内容は製造時に書きこまれた値から書き換え不可であったり、限定的にのみ書き換え可能であったりする。これらは、例えば導通の有無で1または0のビットを表すことができ、かつ電気的に切断して導通有り状態から導通無し状態に書き換えることが可能な、いわゆるヒューズROMなどの技術によって実現することができる。
【0016】
図5は、プリンターの電源投入後のCPU311の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、プリンター300の電源がオンされるとプリンター300のCPU311により実行される。プリンター300の電源がオンされると、最初のステップS2001で後述のカートリッジチェック処理を実行する。これは、プリンター300の電源がオフ状態の間にインクカートリッジ320の取り外しや交換が行われている場合を想定して、インクカートリッジ320の交換時に行うものと同じ処理が行われる。続くステップS2002において、電源オン時回復処理を実行する。これは、電源がオフ状態で経過した時間に応じて行われる、インクジェット記録ヘッドやインクカートリッジ320の状態を良好に保つための回復処理である。続くステップS2003では、電源オン時回復処理によってインク消費が発生するため、後述のインク消費時処理を実行する。以後、プリンター300の電源がオンである間、ステップS2004からS2013までの処理が、繰り返し実行される。
【0017】
繰り返しループの最初にプリンター300のCPU311はステップS2005においてイベントの発生待ちを行う。ステップS2005でイベントの発生を検知すると、続くステップS2006においてイベントの種別に応じて必要な処理へ分岐する。ステップS2006においてイベントが操作パネル305に設けられた電源キーの押下であった場合は、ステップS2007へ進み、電源オン状態から電源オフ状態へ移行する。これによって繰り返しループを抜け、次の電源オンまで休止状態に入る。ステップS2006においてイベントが外部からの印刷ジョブの受信であった場合にはステップS2008へ進み、受信したジョブの内容に応じて印刷ジョブ実行処理を行う。
【0018】
ステップS2006においてイベントが操作パネル302に対する操作であった場合にはステップS2009へ進み、行われた操作に応じた処理を実行する。例えば、タッチパネルに対する操作であれば、タッチされた座標に応じて適切な処理が行われる。ステップS2006においてイベントがインクカートリッジ320の交換操作であった場合にはステップS2010へ進み、後述のカートリッジ交換処理を行う。ステップS2006においてイベントが、他のプリンター300からのカートリッジ情報要求パケットの受信であった場合にはステップS2011へ進み、後述のカートリッジ情報応答処理を行う。ステップS2006においてイベントが上記以外のイベントであった場合にはステップS2012へ進み、イベントに応じた処理を適宜行う。
【0019】
図6は、カートリッジ交換時の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、図5のフローチャートのステップS2010のサブフローとして実行される。すなわち、インクカートリッジ320の交換操作が行われた場合に、プリンター300のCPU311によって実行される。最初のステップS2101では、後述のカートリッジチェック処理を実行する。続くステップS2102では、カートリッジエラーが検出されているか否かを判定する。このカートリッジエラーの判定は、ステップS2101の処理により検出されるものの他、インクカートリッジ320の状態を調べて検出されるものや、印刷機構制御回路318やカートリッジ制御回路319を制御した結果得られるものなどを含む。
【0020】
ステップS2102でカートリッジエラーでなく、装着されたインクカートリッジ320が使用可能なものである場合は、ステップS2103へ進み、交換時回復処理を実行する。これは、インクジェット記録ヘッドやインクカートリッジ320の状態を良好に保つための回復処理である。続くステップS2104では、交換時回復処理によってインク消費が発生するため、後述のインク消費時処理を実行する。
【0021】
図7は、印刷ジョブ実行時の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、図5のフローチャートのステップS2008のサブフローとして実行される。すなわち、外部からの印刷ジョブの受信があった場合に、プリンター300のCPU311によって実行される。最初のステップS2201では、外部からの印刷ジョブのジョブデータ全体を受信する。続くステップS2202では、受信したジョブデータに基づいて、印刷動作を実行する。なお、ここでは印刷ジョブデータ全体を受信した後に印刷動作を実行するように説明したが、印刷ジョブデータがプリンター300のデータメモリ314に設けられた所定のバッファメモリより大きい場合がある。このような場合には、印刷ジョブデータを少しずつ受信ながら印刷動作を並行して実施していく場合もある。
【0022】
ステップS2201~ステップS2202の処理により印刷ジョブの実行が終了すると、ステップS203へ進み、印刷ジョブで消費したインクの量に応じて後述のインク消費時処理を実行する。なお、ここでは印刷ジョブの実行終了後にまとめてインク消費時処理を実行するように説明したが、印刷ジョブの実行中にインク消費が発生する都度実行するように構成してもよい。また、印刷ジョブが複数のページで構成される場合、1ページの印刷が終了する都度実行するなど、複数回に分けて実行するように構成してもよい。
【0023】
図8は、プリンター300間で授受されるカートリッジ情報パケットの構造を示す図である。カートリッジ情報パケットはネットワークプロトコルのトランスポート層プロトコルであるUDP(User Datagram Protocol)を使用する。ポート番号としてはユーザポート番号1024~49151のうち所定のものを使用する。UDPパケット3300は、UDPヘッダ部3301とUDPデータペイロード部3302からなる。UDPヘッダ部3301は、送信元ポート番号3303、宛先ポート番号3304、データグラム長3305、チェックサム3306が格納される。送信元ポート番号3303、宛先ポート番号3304はカートリッジ情報パケットとして利用する所定のポート番号を格納する。
【0024】
データグラム長3305は、UDPヘッダ部3301およびUDPデータペイロード部3302を合わせたデータグラム全体のサイズである。チェックサム3206は、UDPパケット3200の値が間違っていないかを確認する値である。UDPデータペイロード部3301は以下の情報を格納する。パケット種別3307は、パケットがカートリッジ情報要求であるか、カートリッジ情報要求に対する応答としてのカートリッジ情報通知であるかを示す。カートリッジ識別子3308は、授受する情報の対象となるカートリッジ識別子を文字列として格納する。インク消費量3309は、パケットがカートリッジ情報通知である場合に用いられ、対象となるカートリッジの、送信元プリンターにおけるインク消費量の値を格納する。初使用フラグ3310は、対象となるカートリッジの、送信元プリンターにおける初使用フラグの値を格納する。プリンター名称3311は、送信元プリンターの名称を文字列として格納する。なお、ここではカートリッジ情報の授受を、UDPにより行う場合を説明したが、UDPでなくTCP(Transmission Control Protocol)を用いるように構成してもよい。また、トランスポート層のプロトコルでなくアプリ層のプロトコルに載せるように構成してもよい。
【0025】
図9は、カートリッジチェック時の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば図5のフローチャートのステップS2001や、図6のステップS2101などのサブフローとして実行される。すなわち、インクカートリッジ320の取り外しや交換が行われている可能性がある場合に、プリンター300のCPU311により実行される。最初のステップS2301において、CPU311は新たに装着されたインクカートリッジ320のカートリッジメモリ321から、インクカートリッジ情報3200を読み出す。続くステップS2302において、読み出したインクカートリッジ情報3200のカートリッジ識別子3201が、自装置のインクカートリッジ管理テーブル3100に格納されているか否かを調べる。格納されていない場合は、自装置では初めて使用されるインクカートリッジ320である。
【0026】
この場合、CPU311はステップS2303へ進み、インクカートリッジ管理テーブル3100に装着されたインクカートリッジ320の情報を登録する。カートリッジ識別子3101フィールドには、インクカートリッジ情報3200に格納されているカートリッジ識別子3201の内容を格納する。初使用フラグ3104フィールドには、インクカートリッジ情報3200に格納されている未使用フラグ3202の値を格納する。ステップS2304において、インクカートリッジ320から読み出した未使用フラグ3202が1であった場合には、ステップS2305へ進む。ステップS2305では、インクカートリッジ320のカートリッジメモリ321の書き換えを行い、カートリッジメモリ321上の未使用フラグ3202を0に書き換える。一方、ステップS2302でインクカートリッジ管理テーブル3100にカートリッジ識別子3201が格納されていた場合は、ステップS2306へ進む。
【0027】
また、ステップS2304で未使用フラグ3202が0であった場合もステップS2306へ進む。これらの場合は、いずれもインクカートリッジ320が今回自装置に装着されるまでの間に、他のプリンター320で使用されている可能性がある。そこでステップS2306では、周囲のプリンター320にカートリッジ情報要求をブロードキャスト送信する。なお、ここではネットワーク層のブロードキャスト送信を利用して送信する例を記載しているが、他の方法を用いて他のネットワーク装置に送るように構成してもよい。例えば、何らかの方法で事前に検出した対象プリンター320をリスト化して管理し、それぞれの装置にユニキャスト送信やマルチキャスト送信で配信してもよい。
【0028】
次のステップS2307において、カートリッジ情報要求の応答としてカートリッジ情報通知を受信したかをチェックする。受信していた場合はステップS2308へ進み、受信したパケットの内容に応じてインクカートリッジ管理テーブル3100の外部インク消費量3103の値を更新する。ステップS2307からステップS2308の処理を、必要なすべてのプリンターから受信が完了するまで繰り返す(S2309)。これにより、インクカートリッジ320のインクが他のプリンター320でどれくらい消費されているかを把握することができる。
【0029】
図10は、インク消費時の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば図5のフローチャートのステップS2003や、図6のステップS2104、図7のステップS2203などのサブフローとして実行される。すなわち、インクカートリッジ内のインクの消費が発生した場合に、プリンター300のCPU311により実行される。最初のステップS2401において、CPU311は消費したインク量に応じてインクカートリッジ管理テーブル3100のインク消費量3101を更新する。続くステップS2402において、インクカートリッジ管理テーブル3100のインク消費量3101の値と外部インク消費量3102の値の和を取ることにより、総インク使用量を取得する。続くステップS2403において、算出した総インク使用量が所定のインクなしエラー閾値を超えているか否かを判定する。超えていた場合はステップS2404へ進み、インクなしエラーを発生させる。なお、ここでは総インク使用量が所定の閾値を超えた場合にインクなしエラーにする場合を説明したが、算出した総インク使用量は、その他のエラー処理や印刷制御に用いるように構成してもよい。
【0030】
図11は、カートリッジ情報応答時の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、図5のフローチャートのステップS2011のサブフローとして実行される。すなわち、他のプリンター300からのカートリッジ情報要求パケットの受信であった場合に、プリンター300のCPU311によって実行される。ステップS2501において、受信したカートリッジ情報要求パケット3300に格納されているカートリッジ識別子3308を取得し、指定されて識別子が自装置のインクカートリッジ管理テーブル3100に格納されているかを判定する。格納されていた場合にはステップS2502へ進み、カートリッジ情報応答パケットを返信する。
【0031】
具体的には、インクカートリッジ管理テーブル3100から対象のカートリッジ識別子3308に対応するインク消費量3102、初使用フラグ3104を取得して、応答パケットのインク消費量3309、初使用フラグ3310に格納する。また、自装置のプリンター名称をプリンター名称3311に格納する。応答パケットは要求パケットの送信元のIPアドレスおよび送信元ポート番号を宛先として送信される。なお、ここでは指定されてカートリッジ識別子3308がインクカートリッジ管理テーブル3100に格納されていない場合は応答を返さない場合を説明したが、インク消費量を0にして応答するように構成してもよい。
【0032】
図12は、カートリッジチェック時のプリンター300間の情報のやり取りの様子を示すシーケンス図である。ここでは、利用者109がインクカートリッジ320をプリンターA300aに装着した場合に、周囲に設置されているプリンターB300b、プリンターC300cと通信を行って総消費量を取得する例を示している。最初のステップS2601において、利用者がプリンターAにインクカートリッジ320を装着する。ここで、カートリッジ識別子3201は「ABCD036914」であり、未使用フラグ3202は0である。プリンターA300aは、これらの情報をインクカートリッジ管理テーブル3100に格納するとともに、次のステップS2602においてカートリッジ情報要求パケット3300をブロードキャスト送信する。この時送られるカートリッジ情報要求パケット3300のカートリッジ識別子3308は、「ABCD036914」を指定する。これを受信したプリンターB300bはステップS2603において、また、プリンターC300cはステップS2604において、それぞれカートリッジ情報通知パケット3300をプリンターA300a宛に返送する。プリンターB300bが返送するカートリッジ情報通知パケット3300のインク消費量3309には、プリンターB300bのインクカートリッジ管理テーブル3100にインク消費量3102として格納されている値「10」がセットされる。
【0033】
プリンターC300cが返送するカートリッジ情報通知パケット3300のインク消費量3309には、プリンターC300cのインクカートリッジ管理テーブル3100にインク消費量3102として格納されている値「3」がセットされる。プリンターB300bおよびプリンターC300cからカートリッジ情報通知パケット3300を受信したプリンターA300aは続くステップS2605へ進む。ステップS2605では、プリンターA300aのインクカートリッジ管理テーブル3100に格納されているカートリッジ識別子3102が「ABCD036914」である要素の、外部インク消費量3103に、値「13」が格納される。この値は、ステップS2603およびステップS2604で受信したカートリッジ情報通知パケット3300で渡されたインク消費量3309の和である。
【0034】
以上のように構成することで、一つのインクカートリッジ320を、複数のプリンターA300a、プリンターB300b、プリンターC300cの間で転用して使用した場合においても、インクカートリッジ320の消費量を正しく管理することができる。また、一つのプリンター300で、複数のインクカートリッジ320を、例えばカートリッジA、カートリッジB、カートリッジAという順に載せ替えた場合も、カートリッジAとカートリッジBそれぞれの消費量を正しく管理することができる。
【実施例0035】
本発明の第2の実施例として、転用カートリッジが載せられた際に、転用元プリンターが見つかる場合は転用元プリンターに戻すよう利用者に促す場合の例を説明する。
【0036】
本実施例における主な処理は実施例1で説明したものと同等であるため説明は省略し、実施例1と相違があるところについてのみ説明する。
【0037】
図13は、本発明の実施例2における、カートリッジチェック時の処理内容を示すフローチャートである。この処理は、例えば図5のフローチャートのステップS2001や、図6のステップS2101などのサブフローとして実行される。すなわち、インクカートリッジの取り外しや交換が行われている可能性がある場合に、プリンター300のCPU311により実行される。最初のステップS2701において、CPU311は新たに装着されたインクカートリッジ320のカートリッジメモリ321から、インクカートリッジ情報3200を読み出す。続くステップS2702において、読み出したインクカートリッジ情報3200のカートリッジ識別子3201が、自装置のインクカートリッジ管理テーブル3100に格納されているか否かを調べる。格納されていない場合は、自装置では初めて使用されるインクカートリッジ320である。
【0038】
この場合、CPU311はステップS2703へ進み、インクカートリッジ管理テーブル3100に装着されたインクカートリッジ320の情報を登録する。カートリッジ識別子3101フィールドには、インクカートリッジ情報3200に格納されているカートリッジ識別子3201の内容を格納する。初使用フラグ3104フィールドには、インクカートリッジ情報3200に格納されている未使用フラグ3202の値を格納する。ここで、初使用フラグ3104が1の場合は、装着されたインクカートリッジ320が、これまで他のプリンターでも使用されたことがない新品であることがわかる。
【0039】
本明細書においては、以降これを「正規カートリッジ」と表現する。初使用フラグ3104が0の場合は、装着されたインクカートリッジ320が、他のプリンターで使用された履歴がある転用品であることがわかる。以降これを「転用カートリッジ」と表現する。また、インクカートリッジ320が初めて装着されて使用されたプリンター300を、「転用元プリンター」、それ以外のプリンター320に載せられて使用される場合はそのプリンター320を「転用先プリンター」と表現する。ステップS2704において、インクカートリッジ320から読み出した未使用フラグ3202が1であった場合には、ステップS2705へ進む。ステップS2705では、インクカートリッジ320のカートリッジメモリ321の書き換えを行い、カートリッジメモリ321上の未使用フラグ3202を0に書き換える。
【0040】
一方、ステップS2702でインクカートリッジ管理テーブル3100にカートリッジ識別子3201が格納されていた場合は、ステップS2706へ進む。また、ステップS2704で未使用フラグ3202が0であった場合もステップS2706へ進む。ステップS2706では、インクカートリッジ管理テーブル3100内で該当するカートリッジ識別子に対する初使用フラグ3104が1であるか否かを判定する。初使用フラグ3104が1である場合には、装着されたインクカートリッジ320が、自装置における正規カートリッジであると判定できるため、カートリッジチェック処理を終了する。初使用フラグ3104が0である場合には、装着されたインクカートリッジ320が、自装置においては転用カートリッジであると判定できるため、以下のステップにおいて転用元プリンターを特定する処理を行う。
【0041】
ステップS2707では、周囲のプリンター320にカートリッジ情報要求をブロードキャスト送信する。次のステップS2708において、カートリッジ情報要求の応答としてカートリッジ情報通知を受信したか否かをチェックする。受信していた場合はステップS2709へ進み、受信したパケットに格納されている初使用フラグ3310の値をチェックする。初使用フラグ3310が1である場合は、そのカートリッジ情報通知を送信したプリンター300が、インクカートリッジ320の転用元プリンターであると特定できる。この場合はステップS2710へ進み、特定した転用元プリンターへインクカートリッジ320を戻すよう促す画面表示を行う。ステップS2709において初使用フラグ3310が0である(1でない)場合はステップS2711へ進み、ステップS2708からステップS2710の処理を、必要なすべてのプリンターから受信が完了するまで繰り返す(S2309)。これにより、インクカートリッジ320に対する転用元プリンターの特定処理が完了する。
【0042】
図14は、プリンター300の操作パネル302の表示画面の例を示す図である。この画面は、図13のフローチャートのステップS2710において、プリンター300の操作パネル302に表示されるもので、転用元プリンターへ載せ替えるよう促す、転用カートリッジエラー画面1000である。転用カートリッジエラー画面1000には、エラーの種別1001として、転用カートリッジが載せられたことを示す文言が表示されている。その下には、エラーの対処方法としての説明文1002が表示されている。また、転用元プリンターを特定する情報として、プリンター名称1003が表示されている。
【0043】
このプリンター名称1003は、図13のフローチャートのステップS2708で受信したカートリッジ情報通知パケット3300に格納されている、プリンター名称3311の内容が用いられる。転用カートリッジエラー画面1000の最下部には、インクカートリッジ320を転用元プリンターに戻すための「戻す」ボタン1004と、そのままインクカートリッジ320を自装置で使用するための「このまま使う」ボタン1005が配置されている。利用者が「戻す」ボタン1004を押すと、インクカートリッジ320を取り外すことができる状態に移行する。また利用者が「このまま使う」ボタン1005を押すと、この画面を終了して印刷ジョブ等を実行することができる。
【0044】
図15は、カートリッジチェック時のプリンター300間の情報のやり取りの様子を示すシーケンス図である。ここでは、利用者109がインクカートリッジ320をプリンターA300aに装着した場合に、周囲に設置されているプリンターB300b、プリンターC300cと通信を行って転用元プリンターを特定する例を示している。最初のステップS2801において、利用者がプリンターAにインクカートリッジ320を装着する。ここで、カートリッジ識別子3201は「ABCD036914」であり、未使用フラグ3202は0である。プリンターA300aは、これらの情報をインクカートリッジ管理テーブル3100に格納するとともに、次のステップS2802においてカートリッジ情報要求パケット3300をブロードキャスト送信する。この時送られるカートリッジ情報要求パケット3300のカートリッジ識別子3308は、「ABCD036914」を指定する。これを受信したプリンターB300bはステップS2803において、また、プリンターC300cはステップS2804において、それぞれカートリッジ情報通知パケット3300をプリンターA300a宛に返送する。
【0045】
ステップS2803でプリンターB300bが返送するカートリッジ情報通知パケット3300の初使用フラグ3310には、プリンターB300bのインクカートリッジ管理テーブル3100に初使用フラグ3104として格納されている値「1」がセットされる。ステップS2804でプリンターC300cが返送するカートリッジ情報通知パケット3300の初使用フラグ3310には、プリンターC300cのインクカートリッジ管理テーブル3100に初使用フラグ3104として格納されている値「0」がセットされる。本図で示した例では、プリンターB300bが転用元プリンターであり、プリンターA300aとプリンターC300cは転用先プリンターということになる。プリンターB300bおよびプリンターC300cからカートリッジ情報通知パケット3300を受信したプリンターA300aは続くステップS2805へ進む。ステップS2805では、プリンターA300aは転用元プリンターであるプリンターB300bから送られたプリンター名称を用いて転用カートリッジエラー画面1000を表示する。
【0046】
以上のように制御することで、他のプリンターで使用された転用カートリッジが載せられた際に、転用元プリンターが見つかる場合は、転用元プリンターに戻すよう利用者に促すことができるようになる。本実施例で示したように、ローカルエリアネットワーク101でのパケット送受信によりインクカートリッジ情報の授受を行うことで、所定の範囲内に転用元プリンターが存在するか否かを判定することができる。
(その他の実施例)
【0047】
上記の実施例1では、一つのインクカートリッジ320を、複数のプリンター300の間で転用して使用した場合においても、インクカートリッジ320のインク消費量を正しく管理できるようにする例を説明した。また、実施例2では、他のプリンター300で使用された転用カートリッジが載せられた際に、転用元プリンターが見つかる場合は、転用元プリンターに戻すよう利用者に促す例を説明した。これらの実施例は個々に実施してもよいが、両者の処理を組み合わせて実施するように構成することも可能である。
【0048】
また、上記の実施例ではインクカートリッジ情報の送受信をローカルエリアネットワークで接続されたプリンター同志で直接パケットの送受信を行って実現する例を説明した。インクカートリッジ情報の送受信方法はこの方法に限定する必要はなく、たとえばローカルエリアネットワーク上やインターネット上に設置されたサーバー装置を経由して情報の授受を行うように構成してもよい。
【0049】
また、別の実施例として、本発明の技術を用いることで、同一のインクカートリッジ320を使用している複数のプリンター300の間で転用して共用していることが把握できるようになる。これを用いれば、複数のプリンター300で同一のカートリッジ320を共用している場合には、それらのプリンター300を同一の利用者、または同一の利用者グループが使用していると想定して制御に反映することができる。例えば、転用元プリンターと転用先プリンターで、プリンター300の制御に用いる設定を共通化する、などの利用方法が考えられる。
【符号の説明】
【0050】
100 印刷システム
101 ローカルエリアネットワーク
102 ネットワークデバイス群
103 ルーター
104 インターネット
図1
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