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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173315
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】金属成型物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22D 18/02 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B22D18/02 C
B22D18/02 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091654
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】兵藤 清岳
(72)【発明者】
【氏名】金武 篤史
(72)【発明者】
【氏名】中尾 拡
(57)【要約】
【課題】金型から金属成型物を良好に取り出す。
【解決手段】金属成型物の製造方法は、上側に位置する凸形状の上型と、下側に位置する凹形状の下型とを接近させることで、半凝固金属材料を押圧し、半凝固金属材料から金属成型物を形成することを備える。下型は、上側に変位可能な少なくとも1つの下型押圧部が内部に収納されている。該製造方法は、下型と上型とにより押圧されている金属成型物を、下型押圧部により上型に向けて押圧することと、下型押圧部が金属成型物を上型に向けて押圧している際に、下型と上型とを離間させることと、を備える。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属成型物の製造方法であって、
上側に位置する凸形状の金型である上型と、下側に位置する凹形状の金型であり、上側に変位可能な少なくとも1つの下型押圧部が内部に収納されている下型とを接近させることで、半凝固金属材料を押圧し、前記半凝固金属材料から金属成型物を形成することと、
前記下型と前記上型とにより押圧されている前記金属成型物を、前記下型押圧部により前記上型に向けて押圧することと、
前記下型押圧部が前記金属成型物を前記上型に向けて押圧している際に、前記下型と前記上型とを離間させることと、
を備える金属成型物の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の金属成型物の製造方法であって、
前記下型と前記上型との離間が開始された時から、前記下型押圧部が前記下型から突出する長さが所定の値に達するまでの間、前記下型押圧部を上側に変位させることで、前記上型に付着した前記金属成型物を前記上型に向けて押圧すること
をさらに備える金属成型物の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の金属成型物の製造方法であって、
前記下型及び前記上型の温度は、前記半凝固金属材料の温度よりも低い
金属成型物の製造方法。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の金属成型物の製造方法であって、
前記上型には、下側に変位可能な少なくとも1つの上型押圧部が内部に収納されており、
前記上型と前記下型とが離間した後、前記上型押圧部を下側に変位させることで、前記上型に付着している前記金属成型物を、前記上型から脱離させること
をさらに備える金属成型物の製造方法。
【請求項5】
請求項4に記載の金属成型物の製造方法であって、
搬出装置により、前記上型から脱離した前記金属成型物を受け取り、搬出する
金属成型物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半凝固金属材料を押圧することによる金属成型物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されているように、凹形状の上型と凸形状の下型とを用いて半凝固金属を成型する成型装置が知られている。該成型装置では、上型と下型とにより半凝固金属を押圧した後、上型に成型品が保持された状態で上型が上昇する。その後、上型に設けられた押出ピンを突出させることで、成型品が上型から脱離する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5465445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1の成型装置は、上型が凹形状であるため、温度の低下による収縮により予期せず成型品が上型から脱離し、落下する恐れがある。
本開示の一態様では、金型から金属成型物を良好に取り出すことが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様は、金属成型物の製造方法である。該製造方法は、上側に位置する凸形状の金型である上型と、下側に位置する凹形状の金型であり、上側に変位可能な少なくとも1つの下型押圧部が内部に収納されている下型とを接近させることで、半凝固金属材料を押圧し、半凝固金属材料から金属成型物を形成することを備える。また、該製造方法は、下型と上型とにより押圧されている金属成型物を、下型押圧部により上型に向けて押圧することと、下型押圧部が金属成型物を上型に向けて押圧している際に、下型と上型とを離間させることと、を備える。
【0006】
上記構成によれば、下型押圧部が金属成型物を上型に向けて押圧している際に、下型と上型との離間が開始される。なお、離間とは、複数の物体の間の距離が広がることを意味する。これにより、金属成型物が下型から脱離し、上型に付着するように促すことができる。このため、金型から金属成型物を良好に取り出すことができる。
【0007】
本開示の一態様は、下型と上型との離間が開始された時から、下型押圧部が下型から突出する長さが所定の値に達するまでの間、下型押圧部を上側に変位させることで、上型に付着した金属成型物を上型に向けて押圧することをさらに備えてもよい。
【0008】
上記構成によれば、下型と上型との離間の開始後、一定期間にわたって下型押圧部により上型に向けて金属成型物が押圧される。このため、金属成型物が下型から脱離し、上型に付着するように促すことができる。したがって、金型から金属成型物を良好に取り出すことができる。
【0009】
本開示の一態様では、下型及び上型の温度は、半凝固金属材料の温度よりも低くてもよい。
上記構成によれば、半凝固金属材料の温度の低下を促すことができ、これにより、金属成型物が収縮して上型に付着するよう促すことができる。このため、金型から金属成型物を良好に取り出すことができる。
【0010】
本開示の一態様は、上型には、下側に変位可能な少なくとも1つの上型押圧部が内部に収納されていてもよい。上型と下型とが離間した後、上型押圧部を下側に変位させることで、上型に付着している金属成型物を、上型から脱離させることをさらに備えてもよい。
【0011】
上記構成によれば、金属成型物を上型から良好に脱離させることができる。
本開示の一態様では、搬出装置により、上型から脱離した金属成型物を受け取り、搬出してもよい。
【0012】
上記構成によれば、金属成型物の搬出を円滑に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】投入工程の成型装置の説明図である。
図2】押圧工程の成型装置の説明図である。
図3】押圧工程における、金属成型物を下型のエジェクトピンで押圧する成型装置の説明図である。
図4】離間工程における連動期間の成型装置の説明図である。
図5】離間工程における連動期間終了後の成型装置の説明図である。
図6】脱離工程の成型装置及び搬出装置の説明図である。
図7】脱離工程における、金属成型物を脱離している成型装置と、搬出装置との説明図である。
図8】脱離工程における、成型装置と、脱離した金属成型物を受け取る搬出装置との説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示の実施形態について図面を用いて説明する。なお、本開示の実施の形態は、下記の実施形態に何ら限定されることはなく、本開示の技術的範囲に属する限り種々の形態を採りうる。
【0015】
[1.成型装置の概要]
本実施形態の成型装置1は、半凝固金属材料のプレス成型を行うことで、金属成型物7を製造するよう構成されている(図1~8参照)。一例として、金属成型物7は、扁平な底部70と、底部70の縁部から突出し、底部70を周回するように設けられる壁部71とを備える。成型装置1は、上型2と、プレススライド3と、油圧シリンダ4と、下型5と、サーボクッション6とを備える。
【0016】
[2.上型の構成]
上型2は、凸形状の金型であり、下型5に対面した状態で上側に配置される(図1~8参照)。上型2は、プレススライド3により上下方向に変位することで、下型5に対し接近又は離間する。また、上型2には温度調整装置が設けられており、上型2の温度を調整可能となっている。上型2は、底面20と、側面21と、上面22と、複数のエジェクトピン23とを備える。
【0017】
底面20は、一例として略水平に広がる。側面21は、底面20の縁部から上方に広がり、底面20を囲むように設けられる。上面22は、側面21の上側の縁部から略水平に外側に広がり、側面21を囲むように設けられる。つまり、底面20及び側面21は、上面22から突出する凸部を形成する。なお、底面20、側面21、及び上面22の形状は、金属成型物7の形状に応じて適宜定められ得る。
【0018】
複数のエジェクトピン23は、上型2の底面20に設けられた円柱状の部位であり、油圧シリンダ4により上型2に対し相対的に上下方向に変位可能となっている。複数のエジェクトピン23は、上下方向に延びた状態で設けられ、収納状態と突出状態とを有する。収納状態である場合、複数のエジェクトピン23は、上型2の内部に収納される。この時、各エジェクトピン23の下端面は、底面20に対し面一となる。一方、突出状態である場合、複数のエジェクトピン23は、上型2の底面20から下方に向かって突出した状態となる。複数のエジェクトピン23を上下方向に変位させることで、複数のエジェクトピン23が底面20から突出する長さ(以後、突出長)を調整可能となっている。
【0019】
本実施形態では、一例として、エジェクトピン23は複数(より好ましくは、多数)設けられている。しかし、これに限らず、1本のエジェクトピン23が上型2に設けられていてもよい。また、各エジェクトピン23の形状は、円柱状に限らず、様々な形状であっても良い。
【0020】
また、油圧シリンダ4は、各エジェクトピン23を一律に変位させるよう構成されており、各エジェクトピン23は、同時に収納状態又は突出状態となると共に、突出状態である場合には、各エジェクトピン23の突出長は同じになる。また、油圧シリンダ4は、突出長が予め定められた最大値に到達するまで、各エジェクトピン23を下方に変位させることができる。
【0021】
[3.下型の構成]
下型5は、凹形状の金型であり、上型2に対面した状態で下側に配置される(図1~8参照)。また、下型5は、予め定められた位置に固定されていると共に、温度調整装置が設けられており、下型5の温度を調整可能となっている。下型5は、底面50と、側面51と、上面52と、複数のエジェクトピン53とを備える。
【0022】
底面50は、一例として、略水平に広がる。側面51は、底面50の縁部から上方に広がり、底面50を囲むように設けられる。上面22は、側面21の上側の縁部から略水平に広がり、側面21を囲むように設けられる。つまり、底面50及び側面51は、上面52から陥没する凹部を形成しており、側面51の上側の端部は開口を形成する。該開口は、上型2の底面20よりも大きく、下型5の側面51の内側の空間には、上型2における底面20及び側面21を形成する部分を収納可能である。なお、底面50、側面51、及び上面52の形状は、金属成型物7の形状に応じて適宜定められ得る。
【0023】
複数のエジェクトピン53は、下型5の底面50に設けられた円柱状の部位であり、サーボクッション6により下型5に対し上下方向に変位可能となっている。複数のエジェクトピン53は、上下方向に延びた状態で設けられ、収納状態と突出状態とを有する。収納状態である場合、複数のエジェクトピン53は、下型5の内部に収納される。この時、各エジェクトピン53の上端面は、底面50に対し面一となる。一方、突出状態である場合、複数のエジェクトピン53は、下型5の底面50から上方に向かって突出した状態となり、複数のエジェクトピン53を上下方向に変位させることで、複数のエジェクトピン53が底面50から突出する長さ(以後、突出長)を調整可能となっている。
【0024】
本実施形態では、一例として、エジェクトピン53は複数(より好ましくは、多数)設けられている。しかし、これに限らず、1本のエジェクトピン53が下型5に設けられていてもよい。また、各エジェクトピン53の形状は、円柱状に限らず、様々な形状であっても良い。
【0025】
また、サーボクッション6は、各エジェクトピン53を一律に変位させるよう構成されており、各エジェクトピン53は、同時に収納状態又は突出状態となると共に、突出状態である場合には、各エジェクトピン53の突出長は同じになる。また、サーボクッション6は、突出長が予め定められた最大値に到達するまで、各エジェクトピン53を上方に変位させることができる。
【0026】
[4.金属成型物の製造方法]
本実施形態の製造方法では、半凝固金属材料の一例である半凝固アルミニウム材料Sをプレス成型することで、金属成型物7が製造される(図1~8参照)。しかし、例えば、アルミ合金や、アルミニウムを含まない他の金属が、半凝固金属材料として用いられてもよい。
【0027】
本実施形態の金属成型物7の製造方法は、所謂温間プレスにより行われ、上述した温度調整装置により、上型2及び下型5は予め定められた温度に設定される。また、上型2には、離型剤が塗布されている。該製造方法では、投入工程と、押圧工程と、離間工程と、脱離工程と、搬出工程とが順次実行される。
【0028】
[(1)投入工程]
投入工程では、カップに注がれた液体のアルミニウムの温度が低下し、半凝固状態(換言すれば、スラリー)になるまで待機する。そして、ロボット等により構成される投入装置により、半凝固状態のアルミニウム(以後、半凝固アルミニウム材料S)が配置されたカップを移動させ、カップ内の半凝固アルミニウム材料Sを下型5に投入する(図1参照)。その後、投入装置は、カップを上型2及び下型5から離れた位置に退避させる。
【0029】
[(2)押圧工程]
押圧工程では、プレススライド3により、上死点に位置する上型2を下方に変位させることで、上型2と下型5とを接近させる(図2参照)。上型2が下死点に到達すると、上型2の上面22と下型の上面52とが当接し、上型2の下降が停止すると共に、下型5の開口は上型2により閉鎖される。この時、上型2における底面20及び側面21は、それぞれ、下型5における底面50及び側面51に対し隙間を空けた状態で対面する。該隙間は、成型空間を形成しており、成型空間は半凝固アルミニウム材料Sにより充填される。半凝固アルミニウム材料Sは上型2と下型5とにより押圧され、成型空間に応じた形状の金属成型物7が形成される。
【0030】
そして、下死点に位置する上型2及び下型5により半凝固アルミニウム材料Sが押圧されている時に、サーボクッション6が起動し、複数のエジェクトピン53が、半凝固アルミニウム材料Sから形成された金属成型物7を上側に(換言すれば、上型2側に)押圧する(図3参照)。つまり、上型2の位置を下死点に保持したまま、複数のエジェクトピン53の上端により半凝固アルミニウム材料Sの下部が押圧される。この時、金属成型物7は、温度が低下して収縮し、上型2に付着する。
【0031】
なお、押圧工程と、後述する離間工程の連動期間とにおいて、複数のエジェクトピン53による押圧力は、押圧工程における上型2及び下型5による押圧力に比べると、非常に小さい。
【0032】
[(3)離間工程]
押圧工程において下型5の複数のエジェクトピン53が金属成型物7を押圧している際に、離間工程が開始する(図4、5参照)。離間工程では、プレススライド3により、上型2は、下死点から上死点まで上側に変位し、下型5から離間する。
【0033】
また、離間工程の開始時を起点とする予め定められた期間は、連動期間となっている。連動期間では、サーボクッション6が下型5の複数のエジェクトピン53を上側に変位させることで、金属成型物7の下部が継続的に押圧される(図4参照)。これにより、金属成型物7は下型5から脱離すると共に上型2に付着するよう促され、上型2が上側に変位することで、金属成型物7は下型5から取り出される。
【0034】
つまり、連動期間では、下型5の各エジェクトピン53は、上型2の上側への変位に連動して上側に変位し、突出長が伸長する。これにより、金属成型物7は、下型5から離間しながら各エジェクトピン53により継続的に上側に押圧される。
【0035】
そして、各エジェクトピン53の突出長が最大値に到達すると、各エジェクトピン53の上側への変位が停止する。しかし、上型2は引き続き上側に変位しており、上型2に付着している金属成型物7は、各エジェクトピン53の上端から離間する(図5参照)。つまり、各エジェクトピン53の突出長が最大値に到達することで、連動期間が終了し、各エジェクトピン53による金属成型物7の押圧が終了する。
【0036】
無論、連動期間を終了する時期は、これに限らず、適宜定められ得る。具体的には、例えば、各エジェクトピン53の突出長が最大値よりも小さい所定の値に到達した際に、各エジェクトピン53の上側への変位を停止させることで、連動期間を終了させてもよい。また、例えば、離間工程の開始後、予め定められた時間が経過した際に、各エジェクトピン53の上側への変位を停止させることで、連動期間を終了させてもよい。このように、時間により連動期間の終了時期を定めることで、より確実に、連動期間に金属成型物7を上型2に付着させることができる。
【0037】
[(4)脱離工程]
脱離工程では、搬出装置8を用いて金属成型物7が搬出される(図6~8参照)。搬出装置8は、一例としてロボットとして構成されており、受取台80とアーム部81とを備える。受取台80は、金属成型物7を受け取るための部位である。また、アーム部81は、図示しないモータにより駆動され、受取台80を変位させるよう構成される。
【0038】
上型2が上死点に到達した後、搬出装置8は、アーム部81により、受取台80を、上型2に付着している金属成型物7の下方まで移動させる(図6参照)。一方、成型装置1では、油圧シリンダ4が起動し、上型2の複数のエジェクトピン23を下方に変位させることで、上型2に付着している金属成型物7を下側に押圧する(図7参照)。これにより、金属成型物7が上型2から脱離し、受取台80は脱離した金属成型物7を受け取る(図8参照)。搬出装置8は、アーム部81により受取台80を移動させ、受取台80に配置されている金属成型物7を、予め定められた場所へと搬出する。なお、搬出装置8による金属成型物7の搬出は、自動的に行われても良いし、作業者による操作に従い行われても良い。
【0039】
[(5)上型及び下型の温度]
本実施形態の製造方法における投入工程及び押圧工程では、上型2及び下型5の温度の各々に設けられた温度調整装置により、上型2及び下型5の温度は、半凝固アルミニウム材料Sの温度よりも低くなるよう調整されている。一例として、上型2及び下型5の温度は、半凝固アルミニウム材料Sの凝固点よりも低く設定されている。また、離間工程の開始時においても、上型2及び下型5の温度は、金属成型物7の温度よりも低くなるよう調整されてもよい。無論、これに限らず、これに限らず、上型2及び下型5の温度は、半凝固アルミニウム材料Sの温度と同じであっても良いし、該温度よりも高くてもよい。
【0040】
[5.効果]
(1)上記実施形態によれば、押圧工程において下型5の複数のエジェクトピン53により金属成型物7を押圧している時に、離間工程に移行し、上型2の上昇が開始される。このため、離間工程への移行直後において、金属成型物7が下型5から脱離し、上型2に付着するように促される。このため、金型から金属成型物7を良好に取り出すことができる。
【0041】
(2)また、離間工程への以降直後に連動期間が到来し、連動期間では、金属成型物7の下部が上型2に向けて継続的に押圧される。このため、離間工程への移行直後において、金属成型物7が下型5から脱離し、上型2に付着するように促される。これにより、金型から金属成型物7を良好に取り出すことができる。
【0042】
(3)また、上型2が凸形状となっており、さらに、下型5及び上型2の温度は、半凝固アルミニウム材料Sの温度よりも低い。このため、金属成型物7の温度の低下を促すことができ、これにより、金属成型物7が収縮して上型2に付着するよう促すことができる。このため、金型から金属成型物7を良好に取り出すことができる。
【0043】
(4)また、脱離工程では、上型2の複数のエジェクトピン23により押圧することで、金属成型物7が上型2から脱離する。このため、金型から金属成型物7を良好に取り出すことができる。
【0044】
(5)また、脱離工程では、上型2から脱離した金属成型物7は、搬出装置8により搬出される。このため、金属成型物7の搬出を円滑に行うことができ、生産性を向上させることができる。
【0045】
(6)また、従来、鋳造用の金属を半凝固状態とすることでスラリーを形成し、該スラリーのダイキャスト成型を行う場合があった。しかし、成型物の肉厚が薄い場合や、成型物が細長い部位を有する場合等には、金型がスラリーにより充填される前にスラリーが凝固し始める可能性があり、ダイキャスト成型が困難であった。これに対し、上記実施形態の製造方法によれば、金属成型物7の肉厚が薄い場合や、金属成型物7が細長い部位を有する場合であっても、金属成型物7を良好に製造できる。
【0046】
[6.他の実施形態]
(1)上記実施形態の成型装置1は、上型2が上下方向に変位するよう構成されているが、下型5は予め定められた位置に固定されており、変位しない。しかし、これに限らず、下型5を上下方向に変位可能とすると共に、上型2を予め定められた位置に固定されるようにしてもよいし、上型2及び下型5を上下方向に変位可能としてもよい。このような構成を有する場合であっても、下型5、又は、上型2及び下型5を変位させることで、上型2と下型5とを接近又は離間させることができ、上記実施形態と同様にしてプレス成型を行うことができる。
【0047】
(2)上記実施形態の製造方法では、温間プレスにより半凝固アルミニウム材料Sのプレス成型が行われる。しかし、これに限らず、例えば、冷間プレスにより半凝固アルミニウム材料Sのプレス成型が行われても良い。
【0048】
(3)上記実施形態における1つの構成要素が有する複数の機能を、複数の構成要素によって実現したり、1つの構成要素が有する1つの機能を、複数の構成要素によって実現したりしてもよい。また、複数の構成要素が有する複数の機能を、1つの構成要素によって実現したり、複数の構成要素によって実現される1つの機能を、1つの構成要素によって実現したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加又は置換してもよい。
【0049】
[7.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
金属成型物の製造方法であって、
上側に位置する凸形状の金型である上型と、下側に位置する凹形状の金型であり、上側に変位可能な少なくとも1つの下型押圧部が内部に収納されている下型とを接近させることで、半凝固金属材料を押圧し、前記半凝固金属材料から金属成型物を形成することと、
前記下型と前記上型とにより押圧されている前記金属成型物を、前記下型押圧部により前記上型に向けて押圧することと、
前記下型押圧部が前記金属成型物を前記上型に向けて押圧している際に、前記下型と前記上型とを離間させることと、
を備える金属成型物の製造方法。
【0050】
[項目2]
項目1に記載の金属成型物の製造方法であって、
前記下型と前記上型との離間が開始された時から、前記下型押圧部が前記下型から突出する長さが所定の値に達するまでの間、前記下型押圧部を上側に変位させることで、前記上型に付着した前記金属成型物を前記上型に向けて押圧すること
をさらに備える金属成型物の製造方法。
【0051】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の金属成型物の製造方法であって、
前記下型及び前記上型の温度は、前記半凝固金属材料の温度よりも低い
金属成型物の製造方法。
【0052】
[項目4]
項目1から項目3のうちのいずれか1項目に記載の金属成型物の製造方法であって、
前記上型には、下側に変位可能な少なくとも1つの上型押圧部が内部に収納されており、
前記上型と前記下型とが離間した後、前記上型押圧部を下側に変位させることで、前記上型に付着している前記金属成型物を、前記上型から脱離させること
をさらに備える金属成型物の製造方法。
【0053】
[項目5]
項目4に記載の金属成型物の製造方法であって、
搬出装置により、前記上型から脱離した前記金属成型物を受け取り、搬出する
金属成型物の製造方法。
【0054】
[8.文言の対応関係]
上型2のエジェクトピン23は上型押圧部の一例に、下型5のエジェクトピン53は下型押圧部の一例にそれぞれ相当する。
【符号の説明】
【0055】
1…成型装置、2…上型、20…底部、21…側部、22…上面、23…エジェクトピン、3…プレススライド、4…油圧シリンダ、5…下型、50…底面、51…側面、52…上面、53…エジェクトピン、6…サーボクッション、7…金属成型物、70…底部、71…壁部、8…搬送装置、80…受取台、81…アーム部、S…半凝固アルミニウム材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8