(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024173317
(43)【公開日】2024-12-12
(54)【発明の名称】第1接合部材、第2接合部材及び接合構造体
(51)【国際特許分類】
B62D 25/08 20060101AFI20241205BHJP
【FI】
B62D25/08 J
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023091661
(22)【出願日】2023-06-02
(71)【出願人】
【識別番号】391002498
【氏名又は名称】フタバ産業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】西澤 哲人
(72)【発明者】
【氏名】高橋 実夏子
(72)【発明者】
【氏名】高橋 広太
(72)【発明者】
【氏名】薮押 正人
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203BB37
3D203BB39
3D203BB54
3D203CA53
3D203CA58
3D203DA13
(57)【要約】
【課題】重量の増加を抑制しつつ、剛性を向上させることができる接合部材を提供する。
【解決手段】インパネリインフォースメントを車両のボディに接合するために用いられる第1接合部材は、ボディに締結する、上側ボディ締結面と、下側ボディ締結面と、を備える。第1接合部材は、上側ボディ締結面と下側ボディ締結面との間にインパネリインフォースメントを保持可能に構成されている。上側ボディ締結面と下側ボディ締結面とを結ぶ仮想平面に直交し、かつ、第1接合部材に保持された状態のインパネリインフォースメントの車幅方向に延びる中心軸を通る線を仮想線とする。仮想線に沿った中心軸から仮想平面までの距離は、仮想線に沿った中心軸からインパネリインフォースメントの外周面までの距離以下である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメントを前記車両のボディに接合するために用いられる第1接合部材であって、
前記ボディに締結するための上側ボディ締結面と、
前記上側ボディ締結面の下方に位置し、前記ボディに締結するための下側ボディ締結面と、
を備え、
当該第1接合部材は、前記上側ボディ締結面と前記下側ボディ締結面との間に前記インパネリインフォースメントを保持可能に構成されており、
前記上側ボディ締結面と前記下側ボディ締結面とを結ぶ仮想平面に直交し、かつ、当該第1接合部材に保持された状態の前記インパネリインフォースメントの前記車幅方向に延びる中心軸を通る線を仮想線とし、
前記仮想線に沿った前記中心軸から前記仮想平面までの距離は、前記仮想線に沿った前記中心軸から前記インパネリインフォースメントの外周面までの距離以下である、第1接合部材。
【請求項2】
請求項1に記載の第1接合部材であって、
当該第1接合部材は、前記外周面を周回する周方向において、前記外周面の一部を覆うように構成されており、
前記上側ボディ締結面及び前記下側ボディ締結面に設けられる各第1締結孔の少なくとも一方は、前記インパネリインフォースメントの近傍に位置する、第1接合部材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の第1接合部材であって、
前記上側ボディ締結面及び前記下側ボディ締結面を連結し、前記外周面を保持するための連結部を更に備える、第1接合部材。
【請求項4】
車幅方向に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメントを前記車両のボディに接合するために用いられる第2接合部材であって、
前記インパネリインフォースメントを締結するためのインパネ締結面と、
前記インパネ締結面の縁から延び出す延出面と、
を備え、
前記インパネ締結面には、第2締結孔が設けられ、
前記延出面の縁には、前記延出面と前記ボディとを接合する溶接部が設けられ、
当該第2接合部材において、前記延出面における前記溶接部から前記インパネ締結面における前記第2締結孔までは、略平面状に形成されている、第2接合部材。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の第1接合部材と、
請求項4に記載の第2接合部材と、
を備え、
前記インパネ締結面は、上側インパネ締結面と、前記上側インパネ締結面の下方に位置する下側インパネ締結面と、を有し、
前記上側インパネ締結面及び前記下側インパネ締結面には、それぞれ前記第2締結孔が設けられ、
前記延出面は、前記上側インパネ締結面の縁から延び出す上側延出面と、前記下側インパネ締結面の縁から延び出す下側延出面と、を有し、
前記上側インパネ締結面には、前記上側ボディ締結面が締結され、
前記下側インパネ締結面には、前記下側ボディ締結面が締結される、接合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インパネリインフォースメントと車両のボディとの接合に用いられる接合部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車幅方向に延びるパイプ状の部材であり、ステアリングを支持するインパネリインフォースメントの端部を、車両のボディに接合するために用いられる接合部材であるブラケットが開示されている。このブラケットは、車両のボディに取り付けるための取付面部と、当該取付面部の縁から取付面部に対し垂直に延び出し、取付面部を取り囲むように形成される折曲面部と、を備える。折り曲げ面部は、車幅方向に対向し、インパネリインフォースメントと接合される一対の接合部を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述したブラケットは、剛性を確保するために、取付面部及び折曲面部によってインパネリインフォースメントを取り囲むように形成されているため、重量が増加し、車両の軽量化に不利に働くという問題があった。
【0005】
本開示の一局面は、重量の増加を抑制しつつ、剛性を向上させることができる接合部材を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、車幅方向に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメントを車両のボディに接合するために用いられる第1接合部材であって、上側ボディ締結面と、下側ボディ締結面と、を備える。上側ボディ締結面は、ボディに締結する。下側ボディ締結面は、上側ボディ締結面の下方に位置し、ボディに締結する。当該第1接合部材は、上側ボディ締結面と下側ボディ締結面との間にインパネリインフォースメントを保持可能に構成されている。上側ボディ締結面と下側ボディ締結面とを結ぶ仮想平面に直交し、かつ、第1接合部材に保持された状態のインパネリインフォースメントの車幅方向に延びる中心軸を通る線を仮想線とする。仮想線に沿った中心軸から仮想平面までの距離は、仮想線に沿った中心軸からインパネリインフォースメントの外周面までの距離以下である。
【0007】
このような構成では、インパネリインフォースメントが支持するステアリングからの力が車両のボディまで伝達する伝達経路の一部である、インパネリインフォースメントと、上側ボディ締結面及び下側ボディ締結面と、を繋ぐ経路の長さが短くなりやすい。このため、第1接合部材の剛性を向上させることができる。その結果、第1接合部材の構造を簡略化しやすいため、第1接合部材の重量が増加することを抑制することができる。
【0008】
本開示の一態様では、第1接合部材は、外周面を周回する周方向において、外周面の一部を覆うように構成されていてもよい。上側ボディ締結面及び下側ボディ締結面に設けられる各第1締結孔の少なくとも一方は、インパネリインフォースメントの近傍に位置してもよい。このような構成によれば、第1接合部材が外周面を周方向に全周覆わずにインパネリインフォースメントを保持できるため、外周面を周方向に全周覆う構成と比較して、第1接合部材の重量が増加することを抑制することができる。また、少なくとも1つの第1締結孔がインパネリインフォースメントの近傍に位置するため、伝達経路の一部である、インパネリインフォースメントと、上側ボディ締結面の第1締結孔及び下側ボディ締結面の第1締結孔の少なくとも一方と、を繋ぐ経路の長さが短くなりやすい。このため、第1接合部材の剛性を向上させることができる。
【0009】
本開示の一態様は、上側ボディ締結面及び下側ボディ締結面を連結し、外周面を保持するための連結部を更に備えてもよい。このような構成によれば、第1接合部材を1部品により構成することができる。
【0010】
本開示の一態様は、車幅方向に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメントを車両のボディに接合するために用いられる第2接合部材であって、インパネ締結面と、延出面と、を備える。インパネ締結面は、インパネリインフォースメントを締結する。延出面は、インパネ締結面の縁から延び出す。インパネ締結面には、第2締結孔が設けられる。延出面の縁には、延出面とボディとを接合する溶接部が設けられる。第2接合部材において、延出面における溶接部からインパネ締結面における第2締結孔までは、略平面状に形成されている。
【0011】
このような構成では、伝達経路の一部である、インパネ締結面の第2締結孔と、車両のボディと、を繋ぐ経路の長さが短くなりやすい。このため、第2接合部材の剛性を向上させることができる。その結果、第2接合部材の構造を簡略化しやすいため、例えば、第2接合部材と、インパネリインフォースメントを車両のボディに接合するための他の部材と、を組み合わせた場合に、重量増加を抑制することができる。
【0012】
本開示の一態様は、接合構造体であって、上述した第1接合部材と、上述した第2接合部材と、を備える。インパネ締結面は、上側インパネ締結面と、上側インパネ締結面の下方に位置する下側インパネ締結面と、を有する。上側インパネ締結面及び下側インパネ締結面には、それぞれ第2締結孔が設けられる。延出面は、上側インパネ締結面の縁から延び出す上側延出面と、下側インパネ締結面の縁から延び出す下側延出面と、を有する。上側インパネ締結面には、上側ボディ締結面が締結される。下側インパネ締結面には、下側ボディ締結面が締結される。
【0013】
このような構成では、第1接合部材及び第2接合部材を介する伝達経路の長さが短くなりやすい。このため、接合構造体の剛性を向上させることができる。その結果、接合構造体の構造を簡略化しやすいため、接合構造体の重量の増加を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】接合構造体によりインパネリインフォースメントを車両のボディに接合した状態を模式的に示す斜視図である。
【
図2】接合構造体によりインパネリインフォースメントを車両のボディに接合した状態を模式的に示す上面図である。
【
図3】接合構造体によりインパネリインフォースメントを車両のボディに接合した状態を模式的に示す側面図である。
【
図6】第1接合部材及び第2接合部材が重なった状態を示す斜視図である。
【
図7】第1接合部材及び第2接合部材が重なった状態を示す正面図である。
【
図8】2つの部品により構成される第1接合部材を備える接合構造体を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.構成]
<接合構造体>
図1~
図3に示す接合構造体100は、車幅方向(換言すれば、車両における左右方向)に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメント200を車両のボディに接合するために用いられる。
【0016】
インパネリインフォースメント200は、パイプ状の部材であり、車幅方向に延びる中心軸Aを有する。
図3に示すように、本実施形態では、インパネリインフォースメント200の中心軸Aに直交する断面形状は、略円形である。なお、インパネリインフォースメントの中心軸に直交する断面形状は、円形状に限らず、例えば、角形状であってもよい。インパネリインフォースメント200は、ステアリングを支持する。
【0017】
接合構造体100は、インパネリインフォースメント200の両端部に設けられ、車両のボディを構成する
図1及び
図2に示すピラー300に、例えば、スポット溶接等により形成される複数の溶接部400によって固定される。ピラー300は、例えば、運転席側のピラー及び助手席側のピラーである。以下の説明では、車両における上、下、前、後、右、左を、単に上、下、前、後、右、左と記載する。
図1~
図3に示すように、接合構造体100は、第1接合部材1と、第2接合部材2と、締結部材3と、を備える。接合構造体100は、第1接合部材1及び第2接合部材2が締結部材3によって締結されることによって形成される。
【0018】
<第1接合部材>
第1接合部材1は、例えば、ブラケットであり、インパネリインフォースメント200を保持し、車両のボディ(本実施形態では、後述する第2接合部材2)に締結される。
図4に示すように、第1接合部材1は、上側締結部11と、2つの上側壁112と、下側締結部12と、2つの下側壁122と、連結部13と、を備える。
【0019】
上側締結部11は、矩形状の平板であり、後述する第2接合部材2に締結するための上側ボディ締結面111を有する。上側ボディ締結面111は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。略平面状の面とは、平らな面を意味してもよいし、僅かな湾曲又は僅かな屈曲を有する完全に平らでない面を意味してもよい。上側締結部11には、第1上締結孔113が設けられている。第1上締結孔113は、上側ボディ締結面111を前後方向に貫通する。
【0020】
2つの上側壁112は、上側締結部11の上下方向に延びる左右の縁のそれぞれから後方に向かって、上側ボディ締結面111に対して略垂直に延び出す。2つの上側壁112の下方端部には、それぞれ当該2つの上側壁112の外側に向かって延び出し、インパネリインフォースメント200の外周面201と当接する上側当接部114が設けられる。
【0021】
下側締結部12は、上側締結部11の下方に、当該上側締結部11と間隔を空けて位置する。下側締結部12は、矩形状の平板であり、後述する第2接合部材2に締結するための下側ボディ締結面121を有する。下側ボディ締結面121は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。下側締結部12には、第1下締結孔123が設けられている。第1下締結孔123は、下側ボディ締結面121を前後方向に貫通する。
【0022】
2つの下側壁122は、下側締結部12の上下方向に延びる左右の縁のそれぞれから後方に向かって、下側ボディ締結面121に対して略垂直に延び出す。2つの下側壁122の上方端部には、それぞれ当該2つの下側壁122の外側に向かって延び出し、インパネリインフォースメント200の外周面201と当接する下側当接部124が設けられる。
【0023】
連結部13は、インパネリインフォースメント200の外周面201に沿って湾曲する板状の部材であり、上側締結部11及び下側締結部12を連結する。本実施形態では、連結部13は、前方に向かって突出するように湾曲する。連結部13は、インパネリインフォースメント200の外周面201と当接する。
図3に示すように、連結部13は、インパネリインフォースメント200の外周面201を周回する周方向における中央部分に、略平面状の平面部132を有する。
【0024】
図4及び
図7に示すように、連結部13は、左右方向の長さが、2つの上側壁112間の距離、及び、2つの下側壁122間の距離よりも長い。連結部13は、周方向に延びる左右の縁に、それぞれ周方向に沿って並ぶ2つの切欠き131を有する。これにより、連結部13は、インパネリインフォースメント200の外周面201と中心軸Aに沿って一定の長さで当接しつつ、切欠き131により連結部13全体の面積を小さくできる。その結果、第1接合部材1により安定してインパネリインフォースメント200を保持可能としつつ、第1接合部材1の軽量化に繋がる。
【0025】
図3及び
図7に示すように、第1接合部材1は、インパネリインフォースメント200を上側締結部11と下側締結部12との間に保持可能である。本実施形態では、第1接合部材1は、上側当接部114、下側当接部124及び連結部13によって、インパネリインフォースメント200の外周面201を保持する。第1接合部材1は、中心軸Aに直交する断面上において外周面201を周回する周方向に沿って、インパネリインフォースメント200の外周面201の一部のみを覆う。本実施形態では、上側当接部114、下側当接部124及び連結部13によって、インパネリインフォースメント200の外周面201を周方向において約半周覆う。
【0026】
図3に示すように、第1接合部材1がインパネリインフォースメント200を保持した状態において、仮想線Lに沿った中心軸Aから仮想平面Pまでの距離t1は、仮想線Lに沿った中心軸Aからインパネリインフォースメント200の外周面201までの距離t2以下である。仮想平面Pは、上側ボディ締結面111と下側ボディ締結面121とを結ぶ平面である。仮想線Lは、仮想平面Pに直交し、かつ、第1接合部材1に保持された状態のインパネリインフォースメント200の中心軸Aを通る線である。本実施形態では、距離t2がインパネリインフォースメント200の外周面201により形成される円の半径であるため、距離t1は当該半径以下である。
【0027】
上側締結部11の第1上締結孔113及び下側締結部12の第1下締結孔123の少なくとも一方は、第1接合部材1に保持された状態のインパネリインフォースメント200の近傍に位置する。本実施形態では、
図7に示すように、接合構造体100を前後方向から見た場合に、第1上締結孔113は、上側締結部11の上端と、第1接合部材1に保持された状態のインパネリインフォースメント200の上端と、の中心より下方に、第1上締結孔113の中心点が位置する。すなわち、インパネリインフォースメント200の近傍とは、上述した中心よりも下方に位置することをいう。なお、第1下締結孔123も、下側締結部12の下端と、第1接合部材1に保持された状態のインパネリインフォースメント200の下端と、の中心よりも上方に、第1下締結孔123の中心点が位置してもよい。
【0028】
第1接合部材1がインパネリインフォースメント200を保持した状態において、第1上締結孔113及び第1下締結孔123は、インパネリインフォースメント200の中心軸Aを対称軸として、線対称となる位置に設けられることが好ましいが、線対称とならない位置に設けられてもよい。
【0029】
<第2接合部材>
第2接合部材2は、例えば、車両のボディの一部であるガセットであり、上述した第1接合部材1に締結され、ピラー300に溶接により固定される。
図5に示すように、第2接合部材2は、本体部21と、延出部22と、を備える。
【0030】
本体部21は、上側インパネ締結面211と、第2上締結孔212と、下側インパネ締結面213と、第2下締結孔214と、凹み面215と、2つの傾斜面216と、上面217と、下面218と、側面219と、を有する。
【0031】
上側インパネ締結面211は、第1接合部材1を介してインパネリインフォースメント200を締結するための矩形状の面である。上側インパネ締結面211は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。上側インパネ締結面211には、第2上締結孔212が設けられている。第2上締結孔212は、上側インパネ締結面211を前後方向に貫通する。
図6に示すように、上側インパネ締結面211は、第2上締結孔212が第1接合部材1における上側ボディ締結面111の第1上締結孔113と重なるように、上側ボディ締結面111と当接する。そして、第2上締結孔212及び第1上締結孔113に
図1に示す締結部材3(例えば、ボルト)が挿入されることで、上側インパネ締結面211が上側ボディ締結面111に締結され、第2接合部材2に第1接合部材1が固定される。
【0032】
図5に示すように、下側インパネ締結面213は、上側インパネ締結面211の下方に当該上側インパネ締結面211と間隔を空けて位置する。下側インパネ締結面213は、第1接合部材1を介してインパネリインフォースメント200を締結するための矩形状の面である。下側インパネ締結面213は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。下側インパネ締結面213には、第2下締結孔214が設けられている。第2下締結孔214は、下側インパネ締結面213を前後方向に貫通する。
図6に示すように、下側インパネ締結面213は、第2下締結孔214が第1接合部材1における下側ボディ締結面121の第1下締結孔123と重なるように、下側ボディ締結面121と当接する。そして、第2下締結孔214及び第1下締結孔123に
図1に示す締結部材3(例えば、ボルト)が挿入されることで、下側インパネ締結面213が下側ボディ締結面121に締結され、第2接合部材2に第1接合部材1が固定される。
【0033】
図5に示すように、凹み面215は、上側インパネ締結面211及び下側インパネ締結面213の間に位置する矩形状の面である。凹み面215は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。凹み面215は、上側インパネ締結面211及び下側インパネ締結面213を結ぶ仮想平面よりも前方に位置する。上側インパネ締結面211及び凹み面215と、下側インパネ締結面213及び凹み面215とは、2つの傾斜面216により連結されている。これにより、
図3に示すように、本体部21には、第2接合部材2に第1接合部材1が締結された状態において、第1接合部材1の連結部13を嵌め込み可能な空間Sが形成される。第2接合部材2に第1接合部材1が締結された状態において、凹み面215は、第1接合部材1における連結部13の平面部132と当接する。
【0034】
図5に示すように、上面217は、上側インパネ締結面211の左右方向に延びる上方の縁から前方に延び出す。
下面218は、上面217と対面し、下側インパネ締結面213の左右方向に延びる下方の縁から前方に延び出す。
【0035】
側面219は、上側インパネ締結面211、下側インパネ締結面213、凹み面215及び2つの傾斜面216の右方の縁から前方に延び出し、上面217及び下面218を連結する。側面219は、ピラー300と対面する。
【0036】
延出部22は、本体部21の左方端部に設けられ、ピラー300と当接する。延出部22は、第1延出部221と、第2延出部222と、第3延出部223と、を有する。
第1延出部221は、上側インパネ締結面211、下側インパネ締結面213、凹み面215及び2つの傾斜面216と繋がり、上下方向及び左右方向に延びる板状の部分である。第1延出部221は、上側インパネ締結面211及び下側インパネ締結面213に対して段差を有しないように設けられる。また、第1延出部221は、凹み面215及び2つの傾斜面216と段差を有して設けられる。第1延出部221は、上側延出面224と、下側延出面225と、を有する。
【0037】
上側延出面224は、上側インパネ締結面211の上下方向に延びる左方の縁から延び出す。上側延出面224は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。本実施形態では、上側延出面224は、上側インパネ締結面211に対して、後方に僅かに折れ曲がって延びる。なお、上側延出面224と、上側インパネ締結面211とは、同一平面状に延びてもよい。
図1に示すように、上側延出面224の縁には、延出部22とピラー300とを接合する溶接部400が設けられている。第2接合部材2において、上側延出面224における溶接部400から上側インパネ締結面211における第2上締結孔212までは、略平面状である。
【0038】
図5に示すように、下側延出面225は、下側インパネ締結面213の上下方向に延びる左方の縁から延び出す。下側延出面225は、上下方向及び左右方向に広がり、略平面状である。本実施形態では、下側延出面225は、下側インパネ締結面213に対して、後方に僅かに折れ曲がって延びる。なお、下側延出面225と、下側インパネ締結面213とは、同一平面状に延びてもよい。
図1に示すように、下側延出面225の縁には、延出部22とピラー300とを接合する溶接部400が設けられている。第2接合部材2において、下側延出面225における溶接部400から下側インパネ締結面213における第2下締結孔214までは、略平面状である。
【0039】
図5に示すように、第2延出部222は、上面217及び第1延出部221と繋がり、上下方向及び前後方向に延びる板状の部分である。
第3延出部223は、下面218及び第1延出部221と繋がり、上下方向及び前後方向に延びる板状の部分である。
【0040】
[2.効果]
以上詳述した実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(2a)本実施形態では、第1接合部材1がインパネリインフォースメント200を保持した状態において、仮想線Lに沿った中心軸Aから仮想平面Pまでの距離t1が、インパネリインフォースメント200の外周面201により形成される円の半径以下である。これにより、インパネリインフォースメント200が支持するステアリングからの力がピラー300まで伝達する伝達経路の一部である、インパネリインフォースメント200及び上側ボディ締結面111を繋ぐ経路と、インパネリインフォースメント200及び下側ボディ締結面121繋ぐ経路と、の長さが短くなりやすい。このため、第1接合部材1の剛性を向上させることができる。その結果、第1接合部材1の構造を簡略化しやすいため、第1接合部材1の重量が増加することを抑制することができる。
【0041】
(2b)本実施形態では、第2接合部材2において、上側延出面224における溶接部400から上側インパネ締結面211における第2上締結孔212までと、下側延出面225における溶接部400から下側インパネ締結面213における第2下締結孔214までと、が略平面状である。これにより、伝達経路の一部である、上側インパネ締結面211の第2上締結孔212及びピラー300を繋ぐ経路と、下側インパネ締結面213の第2下締結孔214及びピラー300を繋ぐ経路と、の長さが短くなりやすい。このため、第2接合部材2の剛性を向上させることができる。その結果、第2接合部材2の構造を簡略化しやすいため、第2接合部材2の重量が増加することを抑制することができる。
【0042】
(2c)上述したように、本実施形態では、第1接合部材1及び第2接合部材2における伝達経路がそれぞれ短くなりやすいため、第1接合部材1及び第2接合部材2を介する伝達経路全体の長さが短くなりやすい。このため、接合構造体100全体の剛性を向上させることができる。その結果、接合構造体100の構造を簡略化しやすいため、接合構造体100の重量の増加を抑制することができる。
【0043】
(2d)本実施形態では、第1接合部材1が外周面201を周方向に全周覆わずにインパネリインフォースメント200を保持できるため、外周面201を周方向に全周覆う構成と比較して、第1接合部材1の重量が増加することを抑制することができる。
【0044】
(2e)本実施形態では、少なくとも第1上締結孔113がインパネリインフォースメント200の近傍に位置する。このため、伝達経路の一部である、インパネリインフォースメント200と、上側ボディ締結面111の第1上締結孔113と、を繋ぐ経路の長さが短くなりやすい。このため、第1接合部材1の剛性を向上させることができる。また、第1上締結孔113及び第1下締結孔123の間の長さが短くなりやすい、すなわち、伝達経路の一部である、第1上締結孔113と第1下締結孔123とを繋ぐ経路の長さが短くなりやすいため、第1接合部材1の剛性を向上させることができる。
【0045】
(2f)本実施形態では、上側ボディ締結面111を有する上側締結部11と、下側ボディ締結面121を有する下側締結部12とが、連結部13によって連結されているため、第1接合部材1を1部品により構成することができる。
【0046】
なお、本実施形態では、第1上締結孔113及び第1下締結孔123が第1締結孔の一例に相当し、第2上締結孔212及び第2下締結孔214が第2締結孔の一例に相当する。
【0047】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0048】
(3a)上記実施形態では、インパネリインフォースメント200の端部に接合構造体100が設けられていたが、接合構造体が設けられる位置は端部に限定されるものではない。例えば、接合構造体は、インパネリインフォースメントの端部からステアリングをインパネリインフォースメントに固定する固定部材までの間において、端部よりも固定部材よりの位置に設けられてもよい。
【0049】
(3b)上記実施形態では、第1接合部材1が連結部13を有する構成であったが、第1接合部材1は、連結部を有しない構成であってもよい。例えば、
図8に示すように、第1接合部材1aは、上側ボディ締結面を有する上側締結部11aと、下側ボディ締結面を有する下側締結部12aと、の2つの部品を有してもよい。この場合、インパネリインフォースメント200と第2接合部材2aとは、より接近するように構成されやすい。
【0050】
(3c)上記実施形態では、接合構造体100が第1接合部材1及び第2接合部材2を備える構成を例示した。しかし、例えば、第1接合部材がピラー300に締結されてもよいし、第2接合部材がインパネリインフォースメント200に締結されてもよい。
【0051】
(3d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0052】
[4.本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
車幅方向に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメントを前記車両のボディに接合するために用いられる第1接合部材であって、
前記ボディに締結するための上側ボディ締結面と、
前記上側ボディ締結面の下方に位置し、前記ボディに締結するための下側ボディ締結面と、
を備え、
当該第1接合部材は、前記上側ボディ締結面と前記下側ボディ締結面との間に前記インパネリインフォースメントを保持可能に構成されており、
前記上側ボディ締結面と前記下側ボディ締結面とを結ぶ仮想平面に直交し、かつ、当該第1接合部材に保持された状態の前記インパネリインフォースメントの前記車幅方向に延びる中心軸を通る線を仮想線とし、
前記仮想線に沿った前記中心軸から前記仮想平面までの距離は、前記仮想線に沿った前記中心軸から前記インパネリインフォースメントの外周面までの距離以下である、第1接合部材。
【0053】
[項目2]
項目1に記載の第1接合部材であって、
当該第1接合部材は、前記外周面を周回する周方向において、前記外周面の一部を覆うように構成されており、
前記上側ボディ締結面及び前記下側ボディ締結面に設けられる各第1締結孔の少なくとも一方は、前記インパネリインフォースメントの近傍に位置する、第1接合部材。
【0054】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の第1接合部材であって、
前記上側ボディ締結面及び前記下側ボディ締結面を連結し、前記外周面を保持するための連結部を更に備える、第1接合部材。
【0055】
[項目4]
車幅方向に延びた状態で車両に搭載されるインパネリインフォースメントを前記車両のボディに接合するために用いられる第2接合部材であって、
前記インパネリインフォースメントを締結するためのインパネ締結面と、
前記インパネ締結面の縁から延び出す延出面と、
を備え、
前記インパネ締結面には、第2締結孔が設けられ、
前記延出面の縁には、前記延出面と前記ボディとを接合する溶接部が設けられ、
当該第2接合部材において、前記延出面における前記溶接部から前記インパネ締結面における前記第2締結孔までは、略平面状に形成されている、第2接合部材。
【0056】
[項目5]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の第1接合部材と、
項目4に記載の第2接合部材と、
を備え、
前記インパネ締結面は、上側インパネ締結面と、前記上側インパネ締結面の下方に位置する下側インパネ締結面と、を有し、
前記上側インパネ締結面及び前記下側インパネ締結面には、それぞれ前記第2締結孔が設けられ、
前記延出面は、前記上側インパネ締結面の縁から延び出す上側延出面と、前記下側インパネ締結面の縁から延び出す下側延出面と、を有し、
前記上側インパネ締結面には、前記上側ボディ締結面が締結され、
前記下側インパネ締結面には、前記下側ボディ締結面が締結される、接合構造体。
【符号の説明】
【0057】
1,1a…第1接合部材、2,2a…第2接合部材、3…締結部材、11,11a…上側締結部、12,12a…下側締結部、13…連結部、21…本体部、22…延出部、100…接合構造体、111…上側ボディ締結面、112…上側壁、113…第1上締結孔、114…上側当接部、121…下側ボディ締結面、122…下側壁、123…第1下締結孔、124…下側当接部、131…切欠き、132…平面部、200…インパネリインフォースメント、201…外周面、211…上側インパネ締結面、212…第2上締結孔、213…下側インパネ締結面、214…第2下締結孔、215…凹み面、216…傾斜面、217…上面、218…下面、219…側面、221…第1延出部、222…第2延出部、223…第3延出部、224…上側延出面、225…下側延出面、300…ピラー、400…溶接部、A…中心軸、L…仮想線、P…仮想平面、S…空間。